(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の各実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。また、本発明に係る物品は光透過性物品に限定されず、他の物品も含み得る。
【0044】
[第一の実施形態]
本発明に係る光透過性物品は、光透過性基材の少なくとも一方の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む微細凹凸構造層を備える光透過性物品であって、前記微細凹凸構造層の隣り合う凸部同士の間隔が140〜260nm、前記微細凹凸構造の凸部のアスペクト比が0.7〜1.4であり、且つ前記硬化物の押し込み弾性率(X)[MPa]およびクリープ変形率(Y)[%]が下記式(1)および(2)を満たす。
【0045】
80≦X≦560 (1)
Y≦(0.00022X−0.01)×100 (2)。
【0046】
本発明に係る反射防止物品は、本発明に係る光透過性物品を備える。
【0047】
本発明によれば、耐擦傷性が高く、指紋拭き取り性が良好な光透過性物品を提供できる。
【0048】
本発明に係る光透過性物品は、微細凹凸構造層の耐擦傷性が高く、指紋拭き取り性が良好である。また、本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物によれば、耐擦傷性が高く、指紋拭き取り性が良好な硬化物を形成できる。
【0049】
本発明に係る光透過性物品が備える微細凹凸構造層の微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長(400nm)以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくため、反射防止の手段として有効であることが知られている。
【0050】
前記微細凹凸構造層において、反射防止性能と耐擦傷性とを両立させるためには、隣り合う凸部同士の間隔、および隣り合う凸部同士の間隔と凸部の高さとのバランスであるアスペクト比(凸部の高さ/隣り合う凸部同士の間隔)が特定の範囲内であることが重要である。
【0051】
隣り合う凸部同士の間隔は、可視光の波長(400nm)以下であれば反射防止性能が得られる。該間隔が400nmを超えると、可視光の散乱が起こるため、反射防止物品等の光学用途に適さない。本発明に係る光透過性物品が備える微細凹凸構造層の隣り合う凸部同士の間隔は、140〜260nmであり、150〜240nmであることが好ましく、155nm〜220nmであることがより好ましく、160nm〜200nmがさらに好ましい。140nm〜260nmであれば隣り合う凸部同士が突起合一することもなく好ましい。
【0052】
なお、隣り合う凸部同士の間隔は、電子顕微鏡(商品名:JSM7400F、日本電子製)によって隣り合う凸部同士の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均した値である。
【0053】
隣り合う凸部同士の間隔が前記範囲内である場合、光透過性物品の反射防止性能は概ね突起の高さによって決まる。良好な反射防止性能を得るためには、凸部の高さは、120〜250nmが好ましく、150〜220nmがより好ましく、180〜190nmがさらに好ましい。凸部の高さが120nm以上であれば、反射率が十分低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部の高さが250nm以下であれば、凸部先端同士が密着する現象を抑えやすくなる。
【0054】
なお、凸部の高さは、前記電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を50点測定し、これらの値を平均した値である。
【0055】
本発明に係る光透過性物品が備える微細凹凸構造層の、微細凹凸構造の凸部のアスペクト比(凸部の高さ/隣り合う凸部同士の間隔)は、0.7〜1.4であり、0.8〜1.3が好ましく、0.85〜1.25がより好ましく、0.9〜1.2がさらに好ましい。アスペクト比が0.7未満の場合、十分に反射率が低下しない。アスペクト比が1.4をこえる場合、凸部の十分な耐擦傷性が得られない。
【0056】
本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射することで、重合反応が進行し、硬化する樹脂組成物である。
【0057】
本発明において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物の押し込み弾性率(X)は80MPa以上、560MPa以下であり、100MPa以上、550MPa以下が好ましく、120MPa以上、500MPa以下がより好ましく、140MPa以上、400MPa以下がさらに好ましく、160MPa以上、360MPa以下が特に好ましい。押し込み弾性率(X)が80MPa未満の場合、硬化物が軟らかすぎ、外から力が加えられた際に微細凹凸構造の無い部分まで硬化物が大きく削れたり、えぐれたりして傷付くなど、耐擦傷性が低下する。一方、押し込み弾性率(X)が560MPaをこえる場合、外部から力が加えられることにより微細凹凸構造が変形した際に、凸部が折れたり削れたりして原状回復することできない。
【0058】
本発明において、押し込み弾性率(X)とクリープ変形率(Y)とは前記式(2)の関係を満たす。押し込み弾性率(X)が前記式(1)の範囲内にある場合にも、クリープ変形率(Y)が前記式(2)を満たさない場合、外部から加わる力に対する微細凹凸構造および硬化物の追従性が低く、突起部分が耐え切れずに折れたり削り取られたりする。
【0059】
なお、押し込み弾性率(X)とクリープ変形率(Y)は以下の方法により測定した値である。
【0060】
微細凹凸構造層について、ビッカース圧子(四面ダイアモンド錐体)と、微小硬度計(商品名:フィッシャースコープHM2000XYp、フィッシャーインスツルメンツ製)とを用いて、恒温室(温度23℃、湿度50%)内で測定を行う。測定プログラムは、[押し込み(50mN/10秒)]→[クリープ(50mN、60秒)]→[徐荷(50mN/10秒)]とする。
【0061】
このような方法で測定した結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物の押し込み弾性率(X)を解析ソフト(商品名:WIN−HCU、フィッシャーインスツルメンツ社製)により算出する。
【0062】
または、大型スライドガラス(商品名:S9213、松浪硝子工業(株)製)を基材として用い、該基材に塗膜の厚みが約500μmになるように、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、高圧水銀灯を用いて約3000mJ/cm
2で該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射したものを押し込み弾性率(X)およびクリープ変形率(Y)の測定用サンプルとして用いてもよい。
【0063】
また、前記測定プログラムにおいて、クリープ開始時における押し込み深さをh0、クリープ終了時の押し込み深さをh1とし、これらh0およびh1をもとにクリープ変形率(Y)を次の式で求める。
【0064】
クリープ変形率(%)=(
h1−h0)/h0×100。
【0065】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、そのアクリル当量を調整することにより硬化物の押し込み弾性率(X)を適切な範囲に調整することができる。アクリル当量とは、活性(メタ)アクリロイル基数1モル当たりの分子量で表される数値である。アクリル当量が小さいほど(メタ)アクリロイル基の濃度が大きくなり、架橋密度の高い硬化物が得られる。一方、アクリル当量が大きいほど(メタ)アクリロイル基の濃度は小さくなり、架橋密度の低い硬化物が得られる。
【0066】
本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量は、200以上、320以下が好ましく、215以上、310以下がより好ましく、230以上、285以下がさらに好ましく、240以上、280以下が特に好ましい。
【0067】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量が200以上であることにより、架橋密度が高くなりすぎることによる突起の破損を防ぐことができ、耐擦傷性が向上する。一方、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量が320以下であることにより、架橋密度が低いことによる硬化物の軟化を防ぐことができ、微細凹凸構造の無い部分まで硬化物が大きく削れたり、えぐれたりして傷付くことがなく、耐擦傷性が向上する。
【0068】
微細凹凸構造層の突起を折れにくくすることと、硬化物が削れたりえぐれたりしにくくすることとは互いにトレードオフの関係になりやすい。この相反する二つの特性を合わせ持つ硬化物を設計するためには、押し込み弾性率(X)を適正な範囲に調整しつつ、且つ外部からの応力による変形と回復とのバランスを保つが肝要である。
【0069】
本発明者らは鋭意検討した結果、微細凹凸構造を特定の構造に調整し、且つ活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物の押し込み弾性率(X)とクリープ変形率(Y)を特定の範囲内に調整することにより、微細凹凸構造層に高い耐擦傷性を与えることを見出した。
【0070】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量だけではなく、硬化物が特定の構造を特定の割合で含むことにより、押し込み弾性率(X)とクリープ変形率(Y)の値を前記式(1)および(2)の範囲に調整することができる。
【0071】
本発明者らは鋭意検討の結果、オキシエチレン基(−CH
2CH
2O−)を分子中に多く有するモノマーを、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるモノマーとして使用することで、耐擦傷性に優れる本発明の物性を実現できることを見出した。具体的には、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物におけるオキシエチレン基が占める割合は、55.0質量%以上、74.0質量%以下が好ましく、58.0質量%以上、72.0質量%以下であることがより好ましく、60.0質量%以上、70.0質量%以下であることがさらに好ましく、62.0質量%以上、68.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0072】
硬化物がオキシエチレン基を特定の割合で含むことにより、架橋構造中でも分子の運動性が保たれ、微細凹凸構造の変形と回復を調整することが可能となり、結果として高い耐擦傷性が発現する。
【0073】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、後述する重合性成分(Z)と、光重合開始剤(D)とを含むことが好ましい。また、本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)等の他の成分を含むことができる。
【0074】
本明細書において、ラジカル重合性の官能基とは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を意味する。また、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
【0075】
(重合性成分(Z))
重合性成分(Z)は、重合性を有する化合物であり、特定の多官能アクリレート(A1)、特定の多官能アクリレート(B1)および特定の2官能アクリレート(C1)を含む。また、重合性成分(Z)は、必要に応じて、単官能モノマー(F)、他の重合性成分(多官能アクリレート(A1)、多官能アクリレート(B1)、2官能アクリレート(C1)および単官能モノマー(F)を除く。)を含む。
【0076】
(多官能アクリレート(A1))
多官能アクリレート(A1)は、分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつ該アクリロイル基1個あたりの分子量が110未満の化合物である。
【0077】
アクリロイル基1個あたりの分子量とは、多官能アクリレート(A1)の分子量を1分子中のアクリロイル基の数で除した値である。
【0078】
例えば、代表的な3官能アクリレートであるトリメチロールプロパントリアクリレートは、その分子量は296であり、アクリロイル基の数は3であるため、アクリロイル基1個あたりの分子量は98.67である。したがって、トリメチロールプロパントリアクリレートのアクリロイル基1個あたりの分子量は110未満である。
【0079】
分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつ該アクリロイル基1個あたりの分子量が110未満である多官能アクリレートを用いることで、重合性成分(Z)全体としての架橋密度を確保し、硬化物の弾性率や硬度を向上させることができる。
【0080】
多官能アクリレート(A1)のアクリロイル基1個あたりの分子量は110未満であり、100未満が好ましい。また、多官能アクリレート(A1)のアクリロイル基1個あたりの分子量は85以上が好ましい。
【0081】
多官能アクリレート(A1)は、重合性成分(Z)に含まれなくてもよい。多官能アクリレート(A1)としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。多官能アクリレート(A1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
重合性成分(Z)に含まれる多官能アクリレート(A1)の割合は、重合性成分(Z)全体を100質量%とする場合、0〜20質量%であり、0〜15質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0〜5質量%がさらに好ましい。多官能アクリレート(A1)の割合が20質量%以下であることにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量を適した範囲に調整することができる。
【0083】
(多官能アクリレート(B1))
多官能アクリレート(B1)は、分子内に3個以上のアクリロイル基を有し、かつ該アクリロイル基1個あたりの分子量が110以上である化合物である。
【0084】
多官能アクリレート(B1)は、その他成分とのバランスで活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量を適正な範囲に調整することができる。
【0085】
多官能アクリレート(B1)のアクリロイル基1個あたりの分子量は110以上であり、150以上が好ましい。多官能アクリレート(B1)のアクリロイル基1個あたりの分子量は300以下が好ましく、200以下がより好ましい。また、分子内のアクリロイル基数は、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5個以上がさらに好ましい。
【0086】
また、多官能アクリレート(B1)が分子内にオキシエチレン基を有することにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるオキシエチレン基の量を適正な範囲に調整しやすくなる。
【0087】
多官能アクリレート(B1)としては、例えば、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、アルキレンオキサイド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、アルキレンオキサイド変性グリセリントリアクリレート、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリアクリレート、カプロラクトン変性グリセリントリアクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイド変性としては、エチレンオキサイド変性、プロピレンオキサイド変性等が挙げられる。中でも、オキシエチレン基を付与できる点でエチレンオキサイド変性が好ましい。多官能アクリレート(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
重合性成分(Z)に含まれる多官能アクリレート(B1)の割合は、重合性成分(Z)全体を100質量%とする場合、15質量%以上であり、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、75質量%以下であり、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。多官能アクリレート(B1)の割合が15〜75質量%であることにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量と、その硬化物におけるオキシエチレン基が占める割合を適した範囲に調整することができる。
【0089】
(2官能アクリレート(C1))
2官能アクリレート(C1)は、分子内に2個のアクリロイル基を有し、分子内にオキシエチレン基が連なったポリエチレングリコール構造を含む化合物である。
【0090】
ポリエチレングリコール構造部分の分子量は300以上であり、400以上が好ましい。また、ポリエチレングリコール構造部分の分子量が大きいと結晶化して取り扱い性が低下する場合があるため、ポリエチレングリコール構造部分の分子量は1000以下が好ましい。
【0091】
重合性成分(Z)に含まれる2官能アクリレート(C1)の割合は、重合性成分(Z)全体を100質量%とする場合、20質量%以上であり、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、85質量%以下であり、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。2官能アクリレート(C1)の割合が20〜85質量%であることにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量と、その硬化物におけるオキシエチレン基が占める割合を好ましい範囲に調整することができる。また、微細凹凸構造層の表面を十分に親水化でき、指紋等の油汚れを水拭きで除去することができる。
【0092】
(単官能モノマー(F))
単官能モノマー(F)は、分子内に1個のラジカル重合性の官能基を有し、多官能アクリレート(A1)、多官能アクリレート(B1)および2官能アクリレート(C1)と共重合可能な化合物である。単官能モノマー(F)は必要に応じて重合性成分(Z)に添加される。
【0093】
通常、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を単独で硬化させることは少なく、後述するように基材の上で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させ、基材と一体化させて用いる。光透過性基材と硬化物との密着性を向上させるために、分子量が小さく、光透過性基材への浸透性が高い単官能モノマー(F)を添加することができる。単官能モノマー(F)としては、光透過性基材の材料に応じて、適宜添加するモノマーが選択される。
【0094】
単官能モノマー(F)としては、硬化物の指紋拭き取り性の観点から、親水性のモノマーが好ましい。親水性のモノマーとは、25℃の水100gに1g以上溶解できるモノマーである。
【0095】
単官能モノマー(F)としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等)、ベンジル(メタ)アクリレート、脂環構造を有する(メタ)アクリレート(イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等)、アミノ基を有する(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等)、水酸基を有する(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等)、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。単官能モノマー(F)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
単官能モノマー(F)としては、重合反応性の観点から、あまり嵩高くないモノマーが好ましい。また、防汚性の観点から、疎水性の低いモノマーが好ましい。具体的には、単官能モノマー(F)としては、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート等が好ましい。光透過性基材の材料がアクリル系樹脂の場合、単官能モノマー(F)としては、メチルアクリレート、エチルアクリレートが特に好ましい。
【0097】
重合性成分(Z)に含まれる単官能モノマー(F)の割合は、重合性成分(Z)全体を100質量%とする場合、0〜15質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0〜5質量%がさらに好ましい。単官能モノマー(F)の割合が15質量%以下であることにより、基材との密着性を向上させ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が十分に硬化し、硬化の完結した微細凹凸構造を表面に有する光透過性物品が得られる。また、硬化物内に未反応の単官能モノマー(F)が残存しないため、未反応の単官能モノマー(F)が可塑剤として働き、硬化物の弾性率を低下させ、耐擦傷性を損なうことを防ぐことができる。
【0098】
(他の重合性成分)
重合性成分(Z)は、本発明の効果を損なわない範囲で、多官能アクリレート(A1)、多官能アクリレート(B1)、2官能アクリレート(C1)および単官能モノマー(F)以外の他の重合性成分を含んでもよい。他の重合性成分としては、多官能アクリレート(A1)、多官能アクリレート(B1)および2官能アクリレート(C1)以外の2官能以上のモノマー、ラジカル重合性の官能基を有するオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
【0099】
他の重合性成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ビニルエーテル類、などが挙げられる。他の重合性成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
重合性成分(Z)に含まれる他の重合性成分の割合は、重合性成分(Z)全体を100質量%とする場合、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0101】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)とは、活性エネルギー線を照射することで開裂し、重合反応を開始させるラジカルを発生する化合物である。活性エネルギー線としては、装置コストや生産性の点から、紫外線が好ましい。
【0102】
紫外線によってラジカルを発生する光重合開始剤(D)としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン類(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等)、アセトフェノン類(ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等)、ベンゾインエーテル類(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、アシルホスフィンオキシド類(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等)、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。併用する場合は、吸収波長の異なる2種以上を併用することが好ましい。
【0103】
また、必要に応じて、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、過酸化物(ベンゾイルパーオキシド等)、アゾ系開始剤等の熱重合開始剤を併用してもよい。
【0104】
光重合開始剤(D)の配合量は、重合性成分(Z)全体100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましく、0.2〜3質量部がさらに好ましい。光重合開始剤(D)の割合が0.01質量部以上であることにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が十分に硬化し、十分な機械物性を有する光透過性物品が得られる。また、光重合開始剤(D)の割合が10質量部以下であることにより、硬化物内に未反応の光重合開始剤(D)が残存しないため、残存した光重合開始剤(D)が可塑剤として働き、硬化物の弾性率を低下させ、耐擦傷性を損なうことを防ぐことができる。また、着色の発生を抑制することができる。
【0105】
(紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E))
本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)を含んでもよい。
【0106】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系、トリアジン系の紫外線吸収剤が挙げられる。市販品としては、BASF社製の「チヌビン400」および「チヌビン479」、共同薬品(株)製の「Viosorb110」等が挙げられる。
【0107】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、ベンズイミダゾール系、リン系、イオウ系、ヒンダードアミン系の酸化防止剤が挙げられる。市販品としては、BASF社製の「IRGANOX」シリーズなどが挙げられる。
【0108】
これら紫外線吸収剤および/または酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)の配合量は、重合性成分(Z)全体100質量部に対して、合計で0.01〜5質量部が好ましい。
【0110】
(他の成分)
本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、界面活性剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤等の公知の添加剤を含んでもよい。
【0111】
また、本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ラジカル重合性の官能基を有さないオリゴマーやポリマー、微量の有機溶媒等を含んでもよい。
【0112】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のスタンパ表面の微細凹凸構造への流れ込みやすさの観点から、高すぎないことが好ましい。具体的には、25℃において、回転式B型粘度計で測定した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましい。
【0113】
ただし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が10000mPa・sを超える場合にも、スタンパとの接触の際にあらかじめ加温して粘度を下げることが可能であるならば特に問題はない。この場合、70℃において、回転式B型粘度計で測定した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度は、5000mPa・s以下が好ましく、2000mPa・s以下がより好ましい。
【0114】
一方、10mPa・s以上であれば、濡れ広がらずに、光透過性物品を効率よく製造することができるため好ましい。
【0115】
以上説明した本発明に係る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、特定の多官能アクリレート(A1)、特定の多官能アクリレート(B1)および特定の2官能アクリレート(C1)を特定の割合で含むことにより、高い耐擦傷性を示す。また、特定の2官能アクリレート(C1)を特定の割合で含むことにより、指紋拭き取り性の良好な硬化物を得ることができる。
【0116】
(光透過性物品)
本発明に係る光透過性物品は、光透過性基材の少なくとも一方の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む微細凹凸構造層を備える。本発明に係る光透過性物品の微細凹凸構造の形成方法は特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造の反転構造を表面に有するスタンパと接触、硬化させることによって形成することができる。
【0117】
図1は、本発明に係る光透過性物品の一例を示す断面図である。光透過性物品40は、光透過性基材42と、光透過性基材42の表面に形成された微細凹凸構造層44とを有する。
【0118】
光透過性基材42としては、光を透過する成形体が好ましい。光透過性基材42の材料としては、例えば、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラス等が挙げられる。これらの材料は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0119】
光透過性基材42は、射出成形体でもよく、押出成形体でもよく、キャスト成形体でもよい。光透過性基材42の形状は、シート状でもよく、フィルム状でもよい。光透過性基材42の表面は、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の改良のために、コーティング処理、コロナ処理等が施されていてもよい。
【0120】
微細凹凸構造層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
【0121】
後述する陽極酸化アルミナのスタンパを用いて微細凹凸構造を形成する場合、光透過性物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものである。また、微細凹凸構造層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む複数の凸部46を有する。
【0122】
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0123】
微細凹凸構造層44の屈折率と光透過性基材42の屈折率との差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、微細凹凸構造層44と光透過性基材42との界面における反射が抑えられる。
【0124】
(スタンパ)
前述したように、本発明に係る微細凹凸構造層の微細凹凸構造は、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造の反転構造を表面に有するスタンパと接触、硬化させることによって形成することができる。
【0125】
スタンパは、微細凹凸構造の反転構造を表面に有する。スタンパの材料としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む)、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等が挙げられる。スタンパの形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
【0126】
スタンパの作製方法としては、例えば、下記方法(I−1)、方法(I−2)などが挙げられる。しかしながら、大面積化が可能であり、かつ作製が簡便である観点から、方法(I−1)が好ましい。
(I−1)アルミニウム基材の表面に、複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナを形成する方法。
(I−2)スタンパ基材の表面に、電子ビームリソグラフィ法、レーザ光干渉法等によって微細凹凸構造の反転構造を形成する方法。
【0127】
方法(I−1)としては、下記の工程(a)〜(f)を含む方法が好ましい。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程、
(b)酸化皮膜を除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程、
(c)工程(b)の後、アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程、
(d)工程(c)の後、細孔の径を拡大させる工程、
(e)工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程、
(f)工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の表面に形成されたスタンパを得る工程。
【0128】
<工程(a)>
図2に示すように、アルミニウム基材10を陽極酸化することにより、細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
【0129】
アルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、あらかじめ脱脂処理されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑にするために、電解研磨処理(エッチング処理)されていることが好ましい。アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上がさらに好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりする場合がある。
【0130】
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0131】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.8M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.8M以下であることにより、電流値の上昇を防ぎ、酸化皮膜の表面が粗くなるのを抑制することができる。化成電圧が30〜100Vの時、周期が100nm〜200nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃以下であることにより、いわゆる「ヤケ」と呼ばれる現象の発生を防ぐことができ、細孔の破損や、表面が溶けて細孔の規則性が乱れることを抑制することができる。
【0132】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7M以下であることにより、電流値の上昇を防ぎ、定電圧を維持することができる。化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃以下であることにより、いわゆる「ヤケ」と呼ばれる現象の発生を防ぐことができ、細孔の破損や、表面が溶けて細孔の規則性が乱れることを抑制することができる。
【0133】
<工程(b)>
図2に示すように、酸化皮膜14を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16とすることにより、細孔の規則性を向上させることができる。酸化皮膜14を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜14を選択的に溶解できる溶液に酸化皮膜14を溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0134】
<工程(c)>
図2に示すように、酸化皮膜14を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化することにより、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。陽極酸化は、工程(a)と同様の条件で行うことができる。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0135】
<工程(d)>
図2に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜14を溶解できる溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0136】
<工程(e)>
図2に示すように、再度、陽極酸化を行うことにより、円柱状の細孔12の底部からさらに下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔12がさらに形成される。陽極酸化は、工程(a)と同様の条件で行うことができる。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0137】
<工程(f)>
図2に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すことにより、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。これにより、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するスタンパ18が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が3回以上であることにより、連続的に細孔の直径が減少し、十分な反射率低減効果を有するモスアイ構造が得られる。
【0138】
細孔12の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられる。円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
【0139】
細孔12間の間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔12間の平均間隔は、140〜260nmであり、150〜240nmであることが好ましく、155nm〜220nmであることがより好ましく、160nm〜200nmがさらに好ましい。なお、細孔12間の間隔は、電子顕微鏡(商品名:JSM7400F、日本電子製)によって隣接する細孔12間の間隔(細孔12の中心から隣接する細孔12の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均した値である。
【0140】
細孔12の深さは、120〜250nmが好ましく、150〜220nmがより好ましく、180〜190nmがさらに好ましい。なお、細孔12の深さは、前記電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔12の最底部と、細孔12間に存在する凸部の最頂部との間の距離を測定した値である。
【0141】
細孔12のアスペクト比(細孔12の深さ/細孔12間の間隔)は、0.7〜1.4であり、0.8〜1.3が好ましく、0.85〜1.25がより好ましく、0.9〜1.2がさらに好ましい。
【0142】
スタンパの微細凹凸構造が形成された側の表面は、離型剤で処理されていてもよい。離型剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物、リン酸エステル等が挙げられ、リン酸エステルが好ましい。リン酸エステルとしては、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物が好ましい。市販品としては、JP−506H(商品名、城北化学工業(株)製)、モールドウイズINT−1856(商品名、アクセル社製)、TDP−10、TDP−8、TDP−6、TDP−2、DDP−10、DDP−8、DDP−6、DDP−4、DDP−2、TLP−4、TCP−5、DLP−10(以上、商品名、日光ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。離型剤は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0143】
(光透過性物品の製造方法)
本発明に係る微細凹凸構造層を備える光透過性物品は、例えば、
図3に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
【0144】
表面に微細凹凸構造の反転構造(図示略)を有するロール状スタンパ20と、ロール状スタンパ20の表面に沿って移動する帯状フィルムである光透過性基材42との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。
【0145】
ロール状スタンパ20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、光透過性基材42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をニップする。これにより、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、光透過性基材42とロール状スタンパ20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状スタンパ20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0146】
ロール状スタンパ20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、光透過性基材42を介して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる。これにより、ロール状スタンパ20の表面の微細凹凸構造が転写された微細凹凸構造層44を形成する。
【0147】
剥離ロール30により、表面に微細凹凸構造層44が形成された光透過性基材42をロール状スタンパ20から剥離することによって、
図1に示すような光透過性物品40を得る。
【0148】
活性エネルギー線照射装置28としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましい。光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cm
2が好ましい。
【0149】
光透過性基材42としては、光透過性フィルムを用いることができる。光透過性フィルムの材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。これらの材料は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0150】
(用途)
本発明に係る光透過性物品は、反射防止物品(反射防止フィルム、反射防止膜等)、光学物品(光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子等)、細胞培養シートとしての用途展開が期待できる。この中でも、本発明に係る光透過性物品は、特に反射防止物品としての用途に適している。
【0151】
反射防止物品としては、例えば、画像表示装置(液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置等)、レンズ、ショーウィンドウ、眼鏡等の表面に設けられる反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止シート等が挙げられる。反射防止物品を画像表示装置に用いる場合には、画像表示面に反射防止フィルムを直接貼り付けてもよく、画像表示面を構成する部材の表面に反射防止膜を直接形成してもよく、前面板に反射防止膜を形成してもよい。
【0152】
以上説明した本発明に係る光透過性物品は、特定の微細凹凸構造層を備えるため、微細凹凸構造層の耐擦傷性が高く、指紋拭き取り性が良好である。
【0153】
[第二の実施形態]
突起が折れにくくすることと、樹脂自体が削れたりえぐれたりし難くすることは互いにトレードオフの関係になり易い。この相反する二つの特性を合わせ持つ樹脂の設計には、使用するモノマーの分子設計が重要である。
【0154】
本発明者らは、オキシエチレン基(−CH
2CH
2O−)を分子中に多く有するモノマーを使用することで耐擦傷性に優れた微細凹凸構造が得られることを見出し、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートに関する検討を続けた。そして、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートは、その分子中のポリエチレングリコール鎖の平均分子量が300〜1000程度(エチレンオキサイドのモル数が7〜23程度)であることが耐擦傷性の点で好ましいことが分かった。
【0155】
さらに本発明者らは、鋭意検討の結果、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の重合性成分(Z)に、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、且つ該(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均が5以上である多官能(メタ)アクリレート(A2)を使用することによって、微細凹凸構造に従来に無い高い耐擦傷性を与えることに成功し、本発明を完成した。
【0156】
すなわち本発明は、光透過性基材の少なくとも一方の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む微細凹凸構造層を備える光透過性物品であって、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し且つ該(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値が5以上である多官能(メタ)アクリレート(A2)を含む重合性成分(Z)、及び、光重合開始剤(D)を含むことを特徴とする光透過性物品である。
【0157】
本発明においては、(メタ)アクリレート(A2)の官能基数と(メタ)アクリロイル基1個当たりのエチレンオキサイド変性のモル数を最適化することで、微細凹凸構造に柔軟性を付与して突起の折れを防止することと、摩擦を受けた際に硬化物自身が大きく破壊されることを防止することとを両立させることに成功した。また(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値が大きいので、微細凹凸構造表面を十分に親水化でき、指紋などの油汚れを水拭きで除去可能にすることができる。
【0158】
したがって本発明によれば、耐擦傷性が高く、指紋拭き取り性が良好な微細凹凸構造層を備える光透過性物品を提供できる。
【0159】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する樹脂組成物である。本発明に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、特定の重合性成分(Z)と光重合開始剤(D)とを含むことを特徴とする。
【0160】
(重合性成分(Z))
本発明に用いる重合性成分(Z)は、特定の多官能(メタ)アクリレート(A2)を必須成分として含み、必要に応じて特定の多官能(メタ)アクリレート(B2)、特定の2官能(メタ)アクリレート(C)、単官能モノマー(F)、及び他の重合性成分を含んでいても良い。なお、本発明において(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0161】
(多官能(メタ)アクリレート(A2))
本発明に用いる多官能(メタ)アクリレート(A2)は、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し且つ該(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値が5以上の化合物である。なお、本発明において(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0162】
多官能(メタ)アクリレート(A2)が分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有することで、摩擦を受けた際に硬化物自身が深くえぐられて破壊されることを防ぐことができる。
【0163】
耐擦傷性のさらなる向上の点からは、多官能(メタ)アクリレート(A2)の(メタ)アクリロイル基の数は4個以上が好ましい。ただし(メタ)アクリロイル基の数が多くなると、多官能(メタ)アクリレート(A2)の粘度が高くなる傾向にある。したがって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が低いことが要求される場合は、その(メタ)アクリロイル基の数は、好ましくは9個以下、より好ましくは6個以下である。
【0164】
多官能(メタ)アクリレート(A2)の(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値が5以上であることで、微細凹凸構造に十分な柔軟性を付与できる。また、その平均値が16以下であれば、オキシエチレン基の繰り返し部分の結晶性が高くなり過ぎて多官能(メタ)アクリレート(A2)がワックス状や固体になってしまうことがないので、液体として取り扱い性が良好となり好ましい。したがって、多官能(メタ)アクリレート(A2)の(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値は、好ましくは5〜16、より好ましくは7〜14、特に好ましくは8.37〜14である。
【0165】
多官能(メタ)アクリレート(A2)の(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値とは、代表的には、(メタ)アクリロイル基と結合するポリオキシエチレン鎖中のオキシエチレン基の数(繰返し単位の数)の平均値である。
【0166】
また、オキシエチレン基の繰り返しの途中にオキシプロピレン基やオキシブチレン基などを共重合成分として加えることもできる。この場合、結晶性の改善などが期待できる。しかし、オキシプロピレン基やオキシブチレン基はメチル基を有するため親水性を阻害する傾向がある。したがって、オキシプロピレン基やオキシブチレン基を含まず、オキシエチレン基のみを含む化合物の方が優れている。
【0167】
多官能(メタ)アクリレート(A2)が、オキシエチレン基が連なった構造を有する場合は、下記一般式(1):
【0169】
[式中、Xは有機残基であり、Rは水素原子又はメチル基であり、m≧5、n≧3である。]
で表すことができる。式(1)中、Xは有機残基であり、本発明では特に限定されない。Xの代表例としては、3個以上の水酸基を有するアルコール化合物の水酸基部分が変性された場合の残基、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基部分が変性された場合の残基が挙げられる。mは、多官能(メタ)アクリレート(A2)における(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値に相当する。mは5以上であり、好ましくは5〜16、より好ましくは7〜14が、特に好ましくは8.37〜14である。nは、多官能(メタ)アクリレート(A2)における(メタ)アクリロイル基の数に相当する。nは3以上であり、耐擦傷性向上の点からは4以上が好ましい。一方、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の低粘度化が要求される場合には、nは好ましくは9以下、より好ましくは6以下である。
【0170】
多官能(メタ)アクリレート(A2)は、例えば、3個以上の水酸基を有するアルコール化合物をエチレンオキサイド変性し、(メタ)アクリルエステル化することで得られる。3個以上の水酸基を有するアルコール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ソルビトール、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0171】
さらに多官能(メタ)アクリレート(A2)は、例えば、片末端に水酸基を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を反応させることでで得られる。この場合の多官能(メタ)アクリレート(A2)は、多官能ウレタン(メタ)アクリレートである。
【0172】
片末端に水酸基を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのとしては、例えば、ポリエチレングリコール(EO繰り返し数≒10)モノアクリレート(日油社製、製品名ブレンマーシリーズ:AE−400)が挙げられる。3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(旭化成ケミカルズ社製、製品名デュラネートシリーズ:24A−100)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート(同TPA−100)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト(同P301−75E)が挙げられる。なお、「EO」はエチレンオキサイドの略号である。
【0173】
多官能(メタ)アクリレート(A2)として使用できる市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の製品名NKシリーズ:AT−20E(トリメチロールプロパンEO変性(20モル)トリアクリレート)、A−GLY−20E(グリセリンEO変性(20モル)トリアクリレート)、ATM−35E(ペンタエリスリトールEO変性(35モル)テトラアクリレート)、A−PG5054E(ポリグリセリン(7量体)EO変性(54モル)ポリアクリレート(9官能))が挙げられる。
【0174】
さらに、東邦化学工業社製の製品名T−200EA(トリメチロールプロパンEO変性(45モル)トリアクリレート)、S−130EA(ソルビトールEO変性(30モル)ヘキサアクリレート)が挙げられる。
【0175】
さらに第一工業製薬社製の製品名DPEA−30(ジペンタエリスリトールEO変性(30モル)ヘキサアクリレート、DPEA−36(ジペンタエリスリトールEO変性(36モル)ヘキサアクリレート、DPEA−42(ジペンタエリスリトールEO変性(42モル)ヘキサアクリレート、DPEA−48(ジペンタエリスリトールEO変性(48モル)ヘキサアクリレート、DPEA−54(ジペンタエリスリトールEO変性(54モル)ヘキサアクリレート、PETA−32(ペンタエリスリトールEO変性(32モル)テトラアクリレート、PETA−36(ペンタエリスリトールEO変性(36モル)テトラアクリレート、PETA−40(ペンタエリスリトールEO変性(40モル)テトラアクリレート、PETA−48(ペンタエリスリトールEO変性(48モル)テトラアクリレート、PETA−56(ペンタエリスリトールEO変性(56モル)テトラアクリレートが挙げられる。
【0176】
以上の化合物のうち、多官能(メタ)アクリレート(A2)としては、特に、(ポリ)ペンタエリスリトール、(ポリ)グリセリン及び(ジ)トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド変性(ポリ)(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種類以上の化合物が好ましい。
【0177】
多官能(メタ)アクリレート(A2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0178】
多官能(メタ)アクリレート(A2)の割合は、重合性成分(Z)100質量%中、好ましくは25〜100質量%、より好ましくは50〜90質量%、特に好ましくは60〜86質量%である。これら範囲の下限値は、耐擦傷性の点で意義が有る。
【0179】
(多官能(メタ)アクリレート(B2))
本発明に必要に応じて用いる多官能(メタ)アクリレート(B2)は、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、且つその(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値が5未満である多官能(メタ)アクリレートである。
【0180】
多官能(メタ)アクリレート(B2)を使用する主目的は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の(メタ)アクリル当量を最適な範囲に調整することにある。具体的には、(メタ)アクリル当量が大きい多官能(メタ)アクリレート(A2)と、(メタ)アクリル当量が小さい多官能(メタ)アクリレート(B2)とを組み合わせることで(メタ)アクリル当量を最適な範囲に調整する。多官能(メタ)アクリレート(A2)が多いほうが耐擦傷性に優れる微細凹凸構造が得られるため、多官能(メタ)アクリレート(B2)はその添加量が少なくて済むように(メタ)アクリル当量が小さいほうが好ましい。
【0181】
そのため、多官能(メタ)アクリレート(B2)は、(メタ)アクリル当量320[g/eq]以下が好ましく、200[g/eq]以下がより好ましく、150[g/eq]以下がさらに好ましい。
【0182】
多官能(メタ)アクリレート(B2)の具体例としては、ペンタエリスリトール(トリ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトール(ペンタ)ヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールポリアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、ポリグリセリンポリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートが挙げられる。さらに、これら化合物のアルキレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体が挙げられる。さらに、これら化合物の中で水酸基を有する化合物(例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)を、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物と反応させて合成したウレタンアクリレートが挙げられる。
【0183】
中でも、アクリル当量が特に小さいことから、ペンタエリスリトール(トリ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトール(ペンタ)ヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールポリアクリレートが好ましい。
【0184】
多官能(メタ)アクリレート(B2)として使用できる市販品としては、例えば、東亞合成社製の製品名アロニックスシリーズ:M−309、M−310、M−321、M−350、M−360、M−313、M−315、M−327、M−306、M−305、M−451、M−450、M−408、M−403、M−400、M−402、M−404、M−406、M−405が挙げられる。
【0185】
さらに、新中村化学工業社製の製品名NKシリーズ:A−9300、A−9300−1CL、A−GLY−9E、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、AD−TMP、A−TMMT、A−9550、A−DPH、A−PG5009E、A−PG5027Eが挙げられる。
【0186】
さらに、大阪有機化学工業社製の製品名ビスコートシリーズ:V#295、V#300、V#400、V#360、V#3PA、V#3PMA、V#802、V#1000、V#1020、STAR−501が挙げられる。
【0187】
さらに、日本化薬社製の製品名カヤラッドシリーズ:GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−330、PET−30、T−1420(T)、RP−1040、DPHA、DPEA−12、DPHA−2C、D−310、DPCA−20、DPCA−60が挙げられる。
【0188】
さらに、共栄社化学社製の製品名UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510Hが挙げられる。
【0189】
多官能モノマー(B2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0190】
多官能(メタ)アクリレート(B2)の割合は、重合性成分(Z)100質量%中、0〜75質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。多官能(メタ)アクリレート(B2)の割合が0〜75質量%であることで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量を適した範囲に調整することができる。
【0191】
(2官能(メタ)アクリレート(C))
本発明に必要に応じて用いる2官能アクリレート(C)は、分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ分子内にオキシエチレン基が連なったポリエチレングリコール構造を有する化合物である。
【0192】
2官能(メタ)アクリレート(C)の(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値は4〜12が好ましく、5〜8がより好ましい。これをポリエチレングリコール構造部分の平均分子量で示すと、350以上1000以下が好ましく、400以上700以下がより好ましい。ポリエチレングリコール構造部分の分子量が小さいと、硬化物が脆くなって微細凹凸構造の耐擦傷性が低下するので、平均分子量は350以上が好ましい。また、分子量が大きいと結晶化して取り扱い性が悪化するので、ポリエチレングリコール部分の平均分子量は1000以下が好ましい。
【0193】
2官能(メタ)アクリレート(C)として使用できる市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の製品名NKシリーズ:A−400、A−600、A−1000が挙げられる。さらに、第一工業製薬社製の製品名ニューフロンティアシリーズ:PE−400、PE−600が挙げられる。2官能モノマー(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0194】
2官能(メタ)アクリレート(C)の割合は、重合性成分(Z)100質量%中、0〜50質量%が好ましく、0〜35質量%がより好ましい。2官能(メタ)アクリレート(C)は、多官能(メタ)アクリレート(A2)が発揮する耐擦傷性を阻害しない範囲で添加できる。したがって、添加量は少ないほうが耐擦傷性の点では好ましい。2官能(メタ)アクリレート(C)は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度調整や、添加剤などとの相溶性確保、基材フィルムとの密着性付与、親水性の付与などの効果を発揮する。親水性を付与することで、指紋などの油汚れを水拭きで除去可能にできる。
【0195】
(単官能モノマー(F))
単官能モノマー(F)としては、前記第一の実施形態における単官能モノマー(F)と同様の化合物を同様の配合量で用いることができる。
【0196】
(他の重合性成分)
他の重合性成分としては、前記第一の実施形態における他の重合性成分と同様の化合物を用いることができる。
【0197】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)としては、前記第一の実施形態における光重合開始剤(D)と同様の化合物を用いることができる。
【0198】
(紫外線吸収剤及び/又は酸化防止剤(E))
紫外線吸収剤及び/又は酸化防止剤(E)としては、前記第一の実施形態における紫外線吸収剤及び/又は酸化防止剤(E)と同様の化合物を用いることができる。
【0199】
(他の成分)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、界面活性剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0200】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ラジカル重合性の官能基を有さないオリゴマーやポリマー、微量の有機溶媒等を含んでいてもよい。
【0201】
以上説明した本発明を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にあっては、多官能(メタ)アクリレート(A2)を含んでいるので、耐擦傷性が高い。また、さらに2官能(メタ)アクリレート(C)を特定の割合で含めば、さらに指紋拭き取り性が良好な硬化物を形成できる。
【0202】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、そのアクリル当量を調整することで硬化物の硬さを適切な範囲に調整できる。
【0203】
アクリル当量とは、(メタ)アクリロイル基1個当たりの分子量で表される数値である。アクリル当量が小さいほど(メタ)アクリロイル基の濃度が大きくなり、架橋密度が高い硬化物が得られる。逆に、アクリル当量が大きいほど(メタ)アクリロイル基の濃度は小さくなり、架橋密度の低い硬化物が得られる。
【0204】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量は、各成分の重量比[質量%]W1,W2,W3,・・・と各成分の分子量[g/mol]M1、M2、M3、・・・、各成分の官能基数F1、F2、F3、・・・を用いると次の式1で表される。
【0205】
アクリル当量[g/eq]=1/(F1×W1/M1/100+F2×W2/M2/100+・・・) (式1)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量は、220[g/eq]以上が好ましく、220〜320[g/eq]がより好ましく、230〜300[g/eq]が特に好ましい。
【0206】
微細凹凸構造を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量が小さすぎると架橋密度が高いため突起が脆くなって折たり、削れたりし易くなるため耐擦傷性が低下する。
【0207】
一方、アクリル当量が大きすぎると架橋密度が低いために硬化物自体が軟らかくなりすぎ、微細凹凸構造が無い部分まで硬化物が大きく削れたりえぐれたりして傷付き、耐擦傷性が低下したり、微細凹凸構造によっては突起(凸部)同士が接触して合一しやすくなる。突起同士が合一すると、光を散乱して表面が白く濁って見える場合がある。
【0208】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度は、スタンパの表面の微細凹凸構造への流れ込み易さの点から、高過ぎないことが好ましい。よって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の、25℃における回転式B型粘度計での粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましい。
【0209】
ただし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が10000mPa・sを超えても、スタンパとの接触の際にあらかじめ加温して粘度を下げることが可能であるならば特に問題はない。この場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の、70℃における回転式B型粘度計での粘度は、5000mPa・s以下が好ましく、2000mPa・s以下がより好ましい。
【0210】
粘度があまりに低すぎると、濡れ広がってしまい、製造に支障を来たす場合もある。10mPa・s以上であれば好ましい。
【0211】
<光透過性物品>
本発明の光透過性物品は、光透過性基材の少なくとも一方の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む微細凹凸構造層を備える光透過性物品である。微細凹凸構造層は、例えば活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造の反転構造を表面に有するスタンパと接触、硬化させることによって形成できる。
【0212】
図1は、本発明の微細凹凸構造層を備える光透過性物品の一例を示す模式的断面図である。この光透過性物品40は、光透過性基材42と、光透過性基材42の表面に形成された微細凹凸構造層44とを有する。
【0213】
光透過性基材42としては、光を透過する成形体が好ましい。基材の材料としては、前述した第一の実施形態における材料を用いることができる。
【0214】
光透過性基材42は、射出成形体でもよく、押出成形体でもよく、キャスト成形体でもよい。基材42の形状は、シート状でもよく、フィルム状でもよい。光透過性基材42の表面は、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等改良のために、コーティング処理、コロナ処理等が施されていてもよい。
【0215】
微細凹凸構造層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
【0216】
後述する陽極酸化アルミナのスタンパを用いた場合の光透過性物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
【0217】
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。このモスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造において反射防止性能と耐擦傷性を両立するためには、凸部間の平均間隔と凸部の高さのバランスである凹凸のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)を特定の範囲にすることが重要である。
【0218】
凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下が好ましい。平均間隔が400nmを超えると、可視光の散乱が起こるため、反射防止物品等の光学用途に適さない。凸部間の平均間隔は120〜380nmがより好ましく、140〜260nm以下が特に好ましく、160nm〜200nmが最も好ましい。
【0219】
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0220】
凸部間の平均間隔が上記の好ましい範囲にある場合、反射防止性能は概ね突起(凸部)の高さによって決まる。良好な反射防止性能を得るためには、凸部の平均高さは、100〜300nmが好ましく、120〜250nmがより好ましく、150〜220nmが特に好ましく、160〜190nmが最も好ましい。凸部の高さが100nm以上であれば、反射率が十分低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部の高さが300nm以下であれば、凹凸同士が接触して合一する現象を抑え易くなる。
【0221】
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0222】
凸部のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)は、0.7〜1.4が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。凸部のアスペクト比が0.7以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部のアスペクト比が1.4以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
【0223】
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0224】
微細凹凸構造層44の屈折率と基材42の屈折率との差は0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、微細凹凸構造層44と基材42との界面における反射が抑えられる。
【0225】
(スタンパ)
スタンパ及びその作製方法は、前記第一の実施形態と同様であることができる。
【0226】
(光透過性物品の製造方法)
光透過性物品の製造方法は、前記第一の実施形態と同様であることができる。
【0227】
(用途)
本発明の用途は、前記第一の実施形態と同様であることができる。
【0228】
[第三の実施形態]
本発明者らは、(メタ)アクリロイル構造を有する多官能(メタ)アクリルモノマーの架橋構造に由来する硬化物の耐擦傷性と、ポリアルキレングリコール構造を有する(メタ)アクリルモノマーの硬化物の柔軟性に着目し、これら二つの構造を特定比率で有するモノマーを使用することが耐擦傷性及び柔軟性の付与に非常に効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0229】
すなわち本発明は、光透過性基材と、該光透過性基材の少なくとも一方の表面に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造層とを有する光透過性物品であって、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される重合性化合物が、下記式(a)で表される(メタ)アクリルモノマー(A3)中のポリアルキレングリコール含有率(PAG)が50%以上87%以下である4官能以上の(メタ)アクリルモノマー(A3)を含む光透過性物品である。
【0230】
PAG=M(PAG)/[M(ACR)+M(PAG)]×100 (a)
PAG:ポリアルキレングリコール含有率(%)、
M(PAG):ポリアルキレングリコール構造部分の合計化学式量、
M(ACR):(メタ)アクリロイル構造部分の合計化学式量
また本発明は、上記光透過性物品を用いた反射防止物品である。
【0231】
本発明によれば、(メタ)アクリロイル構造とポリアルキレングリコール構造を特定比率で有する特定のモノマーを使用することにより、耐擦傷性及び反射防止性能に優れた微細凹凸構造層を有する光透過性物品を提供できる。この光透過性物品は、可視光の波長領域全体で反射率が低く、またスチールウール擦傷試験でも傷が付かないような優れた耐擦傷性を示すので、当該性能が必要とされる反射防止物品として、例えば各種ディスプレイ、レンズ、窓材などの用途に非常に有用である。
【0232】
本発明に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば、電子線、紫外線、可視光線などの活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する樹脂組成物である。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリロイル基やビニル基などのラジカル重合性部位を有する重合性化合物、重合反応を開始させる重合開始剤、その他必要に応じて有機溶媒や界面活性剤などの助剤から構成される。
【0233】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される重合性化合物は、ポリアルキレングリコール構造を分子中に1つ以上有する4官能以上の(メタ)アクリルモノマー(A3)であり、(メタ)アクリルモノマー(A3)中のポリアルキレングリコール含有率(PAG)が、50%以上87%以下である。
【0234】
ここで、ポリアルキレングリコール構造とは、アルキレングリコールの分子構造の繰返し単位(−R−O−)[Rはアルキレン基]からなる分子構造(−R−O−)
n[nは平均繰り返し数]を意味する。ポリアルキレングリコール構造(−R−O−)
nは、単一種類の繰返し単位が複数連結する分子構造であってもよいし、複数種類の繰返し単位が混在して連結する分子構造であってもよい。平均繰り返し数とは、繰り返し数が異なるポリアルキレングリコール構造が1分子中に複数存在する場合、その繰り返し数の合計をポリアルキレングリコール構造の数で割って得られる平均値を意味する。
【0235】
この(メタ)アクリルモノマー(A3)は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基やビニル基等のラジカル重合性部位を1分子中に4つ以上有する化合物である。特に、分子中の全ての重合性部位が(メタ)アクリロイル基であること、すなわち4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。なお、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0236】
(メタ)アクリルモノマー(A3)は、前述の式(a)で表されるPAGが、50%以上87%以下である。さらにPAGは、55%以上83%以下が好ましく、70%以上80%以下がより好ましい。PAGを50%以上とすることで高い耐擦傷性を発現できる。また、PAGが87%以下であれば、光透過性物品の架橋密度に由来するマルテンス硬さ及び弾性率を良好に維持することができ、さらに、凹凸構造の突起同士が寄り添う現象による白濁を防止し、光透過性を向上できる。
【0237】
(メタ)アクリルモノマー(A3)としては、4つ以上の水酸基を有するポリオール化合物の当該水酸基部分にポリアルキレングリコール構造を介して(メタ)アクリロイル基が結合した化合物、いわゆる(メタ)アクリルモノマーのアルキレンオキシド変性化合物を使用することが好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートのアルキレンオキシド変性化合物、エポキシ(メタ)アクリレートのアルキレンオキシド変性化合物も使用できる。(メタ)アクリルモノマー(A3)は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。特に付着した汚れを水拭きによって除去し易くなる点から、エチレンオキシド変性化合物(ポリエチレングリコール構造を有する化合物)が好ましい。
【0238】
(メタ)アクリルモノマー(A3)のアルキレングリコールの分子構造の単位(−R−O−)はポリアルキレングリコール構造の柔軟性を付与する点で繰り返し数は5以上が好ましい。架橋密度と柔軟性とを両立させる観点からは繰り返し数が2〜4が好ましい。
【0239】
4官能の(メタ)アクリルモノマー(A3)の好適な具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのEO変性化合物、PO変性化合物、EO・PO変性化合物、ブチレンオキシド変性化合物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのEO変性化合物、PO変性化合物、EO・PO変性化合物、ブチレンオキシド変性化合物が挙げられる。5官能以上の(メタ)アクリルモノマー(A3)の好適な具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのEO変性化合物、PO変性化合物、EO・PO変性化合物、ブチレンオキシド変性化合物が挙げられる。なお、「EO」とは「エチレンオキシド」を意味し、「PO」は「プロピレンオキシド」を意味する。また、「EO変性化合物」とはエチレンオキシドユニットのブロック構造(−CH
2−CH
2−O−)
nを有する化合物を意味し、「PO変性化合物」とはプロピレンオキシドユニットのブロック構造(−CH
2−CH(CH
3)−O−)
nを有する化合物を意味する。
【0240】
(メタ)アクリルモノマー(A3)は、特に、下記式(1)
【0242】
[式(1)中、R
1〜R
6はH又はCH
3であり、l〜qは12≦l+m+n+o+p+q≦48を満たす整数である。]
で表される化合物(ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのEO変性化合物)及び/又は、下記式(2)
【0244】
[式(2)中、R
7〜R
10はH又はCH
3であり、r〜uは8≦r+s+t+u≦32を満たす整数である。]
で表される化合物(ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのEO変性化合物)であることが好ましい。
【0245】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、以上説明した(メタ)アクリルモノマー(A3)と共に、更に(メタ)アクリルモノマー(A3)以外の3官能以上の(メタ)アクリルモノマー(B3)を含むことが好ましい。この(メタ)アクリルモノマー(B3)を併用することにより、耐擦傷性が更に向上する。
【0246】
この(メタ)アクリルモノマー(B3)は、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基やビニル基等のラジカル重合性部位を1分子中に3つ以上有する化合物であって、(メタ)アクリルモノマー(A3)以外の化合物である。特に、分子中の全ての重合性部位が(メタ)アクリロイル基であること、すなわち3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。また、3官能〜9官能の(メタ)アクリルモノマーが好ましい。
【0247】
(メタ)アクリルモノマー(B3)としては、3つ以上の水酸基を有するポリオール化合物の当該水酸基部分に(メタ)アクリロイル基が結合した(メタ)アクリルモノマーを使用することが好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートも使用できる。(メタ)アクリルモノマー(B3)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、(メタ)アクリルモノマーのアルキレンオキシド変性化合物も使用できる。光透過性物品の架橋密度に由来するマルテンス硬さ及び弾性率を良好に維持する点、さらに、凹凸構造の突起同士が寄り添う現象による白濁を防止し、光透過性を向上する点で、(メタ)アクリルモノマー(B3)のアルキレングリコールの分子構造の単位(−R−O−)は繰り返し構造を形成しないこと、すなわち繰り返し数は1であることが好ましい。一方、ポリアルキレングリコール構造の柔軟性を付与する点で、(メタ)アクリルモノマー(B3)のアルキレングリコール構造の平均繰り返し数は5以上が好ましい。(メタ)アクリルモノマー(B3)は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0248】
3官能の(メタ)アクリルモノマー(B3)の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。4官能の(メタ)アクリルモノマー(B3)の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。5官能以上の(メタ)アクリルモノマー(B3)の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。また、ポリオール化合物とイソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得たウレタン(メタ)アクリレートを用いても良い。また、トリメチロールエタンとコハク酸とアクリル酸を2/1/4のモル比で反応させて得た混合物を用いても良い。中でも、重合反応性の点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらのEO変性化合物が好ましい。
【0249】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される重合性化合物100質量部のうち、(メタ)アクリルモノマー(A3)の含有量は、50質量部以上100質量部以下が好ましく、50質量部以上95質量部以下がより好ましく、55質量部以上80質量部以下が特に好ましく、60質量部以上75質量部以下が最も好ましい。50質量部以上であれば、光透過性物品の耐擦傷性及び透明性を良好にすることができる。
【0250】
(メタ)アクリルモノマー(B3)を併用する場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる重合性化合物100質量部のうち、(メタ)アクリルモノマー(B3)の含有量は、5質量部以上50質量部以下が好ましく、20質量部以上45質量部以下がより好ましく、25質量部以上40質量部以下が特に好ましい。5質量部以上であれば、(メタ)アクリルモノマー(B3)自体のハードコート性に起因する耐擦傷性の向上効果やポリアルキレングリコール構造の柔軟性を得ることができる。また50質量部以下であれば、硬化物の靭性が維持され、硬度が高くなり過ぎることによるスタンパからの剥離不良や、凹凸部分の突起が折れて反射率が低下することを防止することができる。
【0251】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含有される重合性化合物は、上述した(メタ)アクリルモノマー(A3)、又は(メタ)アクリルモノマー(A3)及び(メタ)アクリルモノマー(B3)とから実質的に構成される。ここで、実質的に構成されるとは、(メタ)アクリルモノマー(A3)及び/又は(メタ)アクリルモノマー(B3)以外の成分を全く含まないことを意味するのではなく、数質量部程度であれば他のモノマー成分を含有してもよい。好ましくは(メタ)アクリルモノマー(A3)の単独使用又は(メタ)アクリルモノマー(A3)及び(メタ)アクリルモノマー(B3)の2つのみの使用である。
【0252】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、通常、活性エネルギー線を照射することで開裂し重合反応を開始させるラジカルを発生する重合開始剤を添加する。活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線が挙げられる。装置コストや生産性の点から紫外線を利用することが一般的である。
【0253】
この重合開始剤の種類に特に制限はない。その具体例としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジンが挙げられる。
【0254】
重合開始剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。特に、吸収波長の異なる2種以上を併用することが好ましい。また、必要に応じて過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物、アゾ系開始剤などの熱重合開始剤を併用しても良い。
【0255】
重合開始剤の割合は、重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましく、0.2質量部以上3質量部以下が特に好ましい。0.01質量部以上であれば、樹脂組成物の硬化性及びその硬化性に起因する硬化物の機械物性を良好にできる。10質量部以下であれば、残存する未反応の開始剤による硬化物の弾性率及び耐擦傷性への影響や着色を防止することができる。
【0256】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤等の公知の添加剤を配合してもよい。
【0257】
重合性化合物と重合開始剤、及び必要に応じて添加剤を混合する際の混合条件は、特に限定されない。例えば、撹拌時間は1時間以上10時間以下、撹拌温度は室温以上80℃以下にすればよい。
【0258】
本発明の光透過性物品の微細凹凸構造層のマルテンス硬さは、15N/mm
2以上が好ましい。より好ましくは20N/mm
2以上、さらに好ましくは30N/mm
2以上である。15N/mm
2以上であれば、微細凹凸構造の突起同士が寄り添う現象が起こり難いため、光透過性物品表面に白化や白濁が見えない。
【0259】
本発明の光透過性物品は、温度23℃、湿度50%Rhの環境下において20mm角の圧子とスチールウール#0000を用い、荷重25gf/cm
2の条件で、光透過性物品を10往復擦る耐擦傷性試験を行った場合に生じる傷が0〜10本以内であることが好ましい。この範囲であれば耐擦傷性を十分に備えることができる。
【0260】
本発明の光透過性物品は、以上説明した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造層を、光透過性基材の少なくとも一方の表面に形成したものである。
【0261】
光透過性基材は光を透過するものであればよく、その材質は特に限定されない。光透過性基材の材質としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラスが挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、単独で硬化させることもできるが、光透過性基材の上で硬化させ、光透過性基材と一体化させて用いることが一般的である。
【0262】
基材の形状や製造方法は、特に限定されない。例えば、射出成形体、押し出し成形体、キャスト成形体を使用できる。また形状は、シート状、フィルム状、その他の立体形状でもよい。さらに、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の特性の改良を目的として、基材の表面にコーティングやコロナ処理が施されていてもよい。特に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と光透過性基材の密着性を良くする為に、表面に易接着層が設けられた光透過性基材を用いることが好ましい。
【0263】
図4は、本発明の光透過性物品の一例を示す模式的断面図である。この図に示す光透過性物品は、光透過性基材50と、その光透過性基材50の上側の表面に形成された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造層51とを有する。微細凹凸構造層51には可視光の波長以下のサイズの微細な凸部52と凹部53が交互に繰り返されたナノ凹凸構造が形成されている。可視光とは、一般的に波長が380〜780nmの光を指し、可視光波長以下のサイズとは、隣り合う凸部52又は凹部53の間隔(図中の突起幅55)が380nm以下であることを意味する。凹凸の高さ54は特に限定されないが、反射防止特性の点から60nm以上が好ましく、90nm以上がより好ましい。この微細凹凸構造層51は、光透過性基材50の片面又は両面の全体又は一部に形成すればよい。
【0264】
微細凹凸構造層の凹凸形状は特に限定されないが、例えば空気から材料表面まで連続的に屈折率を増大させて低反射率と低波長依存性を両立させた反射防止機能を得るためには、円錐状、角錐状、釣鐘状など、膜面で切断した時の断面積の占有率が連続的に増大するような構造が好ましい。また、より微細な突起が合一して上記の微細凹凸構造層を形成していてもよい。
【0265】
微細凹凸構造層を形成する方法としては、例えば、微細凹凸構造を有するスタンパと光透過性基材の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、活性エネルギー線照射によって硬化させ、その硬化物層からスタンパを剥離することにより、微細凹凸構造が転写された硬化物層(微細凹凸構造層)を得る方法が好ましい。
【0266】
以上の方法に使用するスタンパの製造方法は、特に限定されないが、例えば、電子ビームリソグラフィー法、レーザー光干渉法、陽極酸化法などを用いることができる。例えば適当な支持基板上にフォトレジスト膜を塗布し、紫外線レーザー、電子線、X線等の光を用いて露光し、現像することによって微細凹凸構造層を有する型を作製できる。この型をそのままスタンパとして使用することもできる。また、フォトレジスト層を介して支持基板をドライエッチングにより選択的にエッチングし、レジスト層を除去することで支持基板表面に直接微細凹凸構造を形成して使用することも可能である。
【0267】
陽極酸化ポーラスアルミナをスタンパとして利用することも可能である。例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化して20〜200nmの細孔構造を形成し、これをスタンパとして使用しても良い。この方法では、高純度アルミニウムを定電圧で長時間陽極酸化し、その後一旦酸化皮膜を除去し、再び陽極酸化することで、非常に高規則性の細孔が自己組織化的に形成されることが知られている。更に二回目に陽極酸化する工程で、陽極酸化処理と孔径拡大処理を組み合わせることで、断面が矩形でなく三角形や釣鐘型である微細凹凸構造も形成可能である。
【0268】
また、微細凹凸構造を有する原型から電鋳法等で複製型を作製し、これをスタンパとして使用してもよい。
【0269】
スタンパの形状は特に限定されず、平板状でもロール形状でも良い。特に、ロール形状のスタンパは、連続的に微細凹凸構造層を転写できるので生産性の点から好ましい。
【0270】
重合・硬化に用いる活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線が挙げられる。特に紫外線が好ましい。紫外線を照射するランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、フュージョン社製の無電極UVランプ(各種バルブ)が挙げられる。紫外線照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の重合開始剤の吸収波長や添加量に応じて適宜決定すれば良い。硬化が不十分だと微細凹凸構造層の耐擦傷性が損なわれる場合がある。また照射量が多過ぎると硬化物の着色や光透過性基材の劣化を引き起こす場合がある。特に、400〜4000mJ/cm
2の積算光量で硬化させることが好ましく、400〜2000mJ/cm
2の積算光量で硬化させることがより好ましい。照射強度についても特に制限されないが、光透過性基材の劣化等を招かない程度の出力に抑えることが好ましい。
【0271】
本発明の光透過性成形品は、例えば、反射防止物品(反射防止フィルム、反射防止膜、反射防止シート、及び、その他の反射防止部材)、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子などの光学物品や、細胞培養シートの用途に使用可能である。特に、反射防止物品の用途に適している。反射防止物品としては、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、冷陰極管表示装置などの画像表示装置、レンズ、ショーウィンドー、眼鏡レンズ等の表面で使用される反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止シートが挙げられる。画像表示装置に用いる場合は、最表面上に反射防止フィルムを貼り付けても良いし、最表面となる部材として成形しても良いし、前面板として成形しても良い。
【0272】
[第四の実施形態]
本発明によれば、微細凹凸構造が隣り合う凸部同士の間隔が可視光の波長以下であり、物品が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなるフィルム状の形状であり、且つ支持体を有さないことを特徴とする、微細凹凸構造を表面に有する物品が提供される。
【0273】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記物品の厚さが40μm以上500μm以下であることを特徴とする、前記微細凹凸構造を表面に有する物品が提供される。
【0274】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量が200以上であることを特徴とする、微細凹凸構造を表面に有する物品が提供される。
【0275】
本発明の他の好ましい態様によれば、反射防止物品である、微細凹凸構造を表面に有する物品が提供される。
【0276】
本発明の他の好ましい態様によれば、下記(工程1)〜(工程3)を含むことを特徴とする、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法が提供される。
(工程1)前記微細凹凸構造の反転構造を少なくとも一方の表面に有するスタンパ上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配置する工程
(工程2)活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる工程
(工程3)前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を前記スタンパから剥離する工程。
【0277】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記(工程1)におけるスタンパが、ロール状であることを特徴とする、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法が提供される。
【0278】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品は表面硬度が高く、且つ低コストで製造可能である。
【0279】
<微細凹凸を表面に有する物品の構成>
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品はフィルム状であり、支持体を有さず、単独で取り出し可能である。
【0280】
単独で取り出し可能というのは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物によって形成される表面に微細凹凸構造を有する物品が、他の支持体無しで取り扱い可能な状態である。具体的には、例えば、断面が直径10mm程度の円である円柱状の棒に本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品を巻きつけた際に割れなどが生じないことを確認すること等で単独で取り扱い可能であることが判断可能である。
【0281】
本発明おいては、微細凹凸構造を表面に有する物品が単独で取り出し可能であるため、光透過性基体などで構成される支持体は不要である。そのため、微細凹凸構造を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物と支持体との界面反射に起因する問題が無い。また、より安価に微細凹凸構造を表面に有する物品が得られる。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物が光学的な等方性に優れ、高い光透過性を有するため、映像表示装置等に適した物品が得られる。
【0282】
本発明の物品は単層であっても良いし、複数層であっても良い。単層であれば物品内部において材料間の屈折率差に起因する反射防止性能の低下が起こらないため高い光透過性を有する物品となる。
【0283】
複数層である場合、複数の層はいずれも活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。複数層は、例えば、複数の未硬化状態の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を積層した後に硬化させることによって得ることができる。未硬化の状態で積層させることで各層間の接触部を相溶させ、密着性を確保すると共に、界面反射を最小限に抑えることが可能になる。
【0284】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物によって形成された微細凹凸構造を表面に有す物品は、粘着剤等を介して対象物に貼り付けることができる。
【0285】
また、本発明の微細凹凸を表面に有する物品の厚さは、40μm以上500μm以下が好ましく、60μm以上250μm以下であることがより好ましい。厚みが40μm以上500μm以下であれば、フィルムとしての取り扱い性が良好である。厚みが40μmより厚ければ物品は破損され難く、厚みが500μmより薄ければ物品に割れが生じ難い。また、膜厚は厚くなりすぎると材料コストの面からも好ましくない。
【0286】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
本明細書において、ラジカル重合性の官能基とは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等を意味する。また、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
【0287】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とは、活性エネルギー線を照射することで、重合反応が進行し、硬化する樹脂組成物である。
【0288】
本発明に好ましく用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性成分(Z)と、光重合開始剤(D)とを必須成分とし、必要に応じて、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)等の他の成分等を含むものである。
【0289】
(重合性成分(Z))
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における重合性成分(Z)としては、ラジカル重合性基を有するモノマーやカチオン重合性基を有するモノマーが挙げられる。なかでも、重合速度の点でラジカル重合性基を有するモノマーが好ましい。ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、ビニル基、などが挙げられるが、反応性が高い点や材料の選択肢広い点で(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0290】
ここで、アクリル当量とは、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物1gあたりに含まれる(メタ)アクリロイル基数で表される数値である。アクリル当量が小さいほど(メタ)アクリロイル基の濃度が大きくなり、架橋密度が高い硬化物が得られる。逆に、アクリル当量が大きいほど(メタ)アクリロイル基の濃度は小さくなり、架橋密度の低い硬化物が得られる。
【0291】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量は、200以上が好ましい。200以上400以下がさらに好ましく、220以上300以下が特に好ましい。
【0292】
微細凹凸構造を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量が小さすぎると硬化収縮率が大きくなり、硬化物がカールしたり、生じた歪みによって割れが発生したり原因となる。そのため、硬化物の厚膜化が困難になる。また、架橋密度が高いため表面の微細凹凸構造の突起が脆くなって折れやすくなり、耐擦傷性が低下する。
【0293】
一方、アクリル当量が大きすぎると架橋密度が低いために硬化物自体が軟らかくなりすぎ、フィルムの硬度が低くなる。また、耐擦傷性の面では、表面に有する微細凹凸構造が無い部分まで硬化物が大きく削れたりえぐれたりしやすくなる。
【0294】
ただし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に重合性成分(Z)以外のバインダーポリマーや可塑剤などを使用する場合は、それらの成分の特性に応じてアクリル当量を最適化する必要があり、アクリル当量の最適範囲が上記の好ましい範囲外になることもある。
【0295】
重合性成分(Z)は、上記のアクリル当量を満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば下記の特定の多官能モノマー(A)、特定の多官能モノマー(B)、特定の2官能モノマー(C)、および単官能モノマー(F)の組み合わせが挙げられる。
【0296】
(多官能モノマー(A))
多官能モノマー(A)は、分子内に3個以上のラジカル重合性の官能基を有し、かつ該官能基1個あたりの分子量が110未満の化合物である。
【0297】
官能基1個あたりの分子量とは、多官能モノマー(A)の分子量を1分子中のラジカル重合性の官能基の数で除した値である。
【0298】
例えば、代表的な3官能モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレートの場合、その分子量は296であり、ラジカル重合性の官能基の数は3であるため、官能基1個あたりの分子量が110未満である98.67となる。
【0299】
分子内に3個以上のラジカル重合性の官能基を有し、かつ該官能基1個あたりの分子量が110未満である多官能モノマーを用いることで、重合性成分(Z)全体としての架橋密度を確保し、降下物の弾性率や硬度を高くする役割を果たす。多官能モノマー(A)の官能基1個あたりの分子量は110未満が好ましく、100未満がより好ましい。
【0300】
多官能モノマー(A)としては、官能基1個あたりの分子量が110未満である3官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。活性エネルギー線で硬化させた時の硬化速度の点でメタクリレートよりもアクリレートが優れるため、アクリレートを用いることが好ましい。
【0301】
多官能モノマー(A)として用いることができるアクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0302】
多官能モノマー(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0303】
多官能モノマー(A)の割合は、重合性成分(Z)100質量%のうち、0〜30質量%であり、0〜20質量%が好ましく、用いなくても良い。多官能モノマー(A)の割合が30質量%以下であることで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量を適した範囲に調整することができる。
【0304】
(多官能モノマー(B))
多官能モノマー(B)は、分子内に3個以上のラジカル重合性の官能基を有し、かつ該官能基1個あたりの分子量が110以上である化合物である。
【0305】
この多官能モノマー(B)は、その他のバランスで活性エネルギー線硬化物のアクリル当量を適正な範囲に調整する。
【0306】
多官能モノマー(B)の官能基1個あたりの分子量は110以上が好ましく、150以上がより好ましい。また、分子内のラジカル重合性の官能基数は、3官能以上が好ましく、4官能以上がより好ましく、5官能以上がさらに好ましい。
【0307】
多官能モノマー(B)が分子内にオキシエチレン基を有するほうが活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるオキシエチレン基の量を適正な範囲に調整しやすい。
【0308】
多官能モノマー(B)として用いることができるアクリレートとしては、例えば、アルコキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、アルコキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、アルコキシ化グリセリントリアクリレート、アルコキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルコキシ化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルコキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、カプロラクトン変性イソシアヌル酸トリアクリレート、カプロラクトン変性グリセリントリアクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0309】
ここで、アルコキシ化としては、エトキシ化、ブトキシ化等が挙げられる。中でも、オキシエチレン基を付与できる点でエトキシ化が好ましい。
【0310】
多官能モノマー(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0311】
多官能モノマー(B)の割合は、重合性成分(Z)100質量%のうち、15〜90質量%であり、25〜65質量%がより好ましい。多官能モノマー(B)の割合が15〜90質量%であることで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量とオキシエチレン基の割合を適した範囲に調整することができる。
【0312】
(2官能モノマー(C))
特定の2官能モノマー(C)としては、ポリエチレングリコールジアクリレートが好適に用いられる。ポリエチレングリコールジアクリレートは分子内に2個のアクリロイル基を有し、かつ分子内にオキシエチレン基が連なったポリエチレングリコールを有する化合物である。
【0313】
ポリエチレングリコール構造部分の分子量は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。また、ポリエチレングリコール構造部分の分子量が大きいと結晶化して取り扱い性が低下するため、ポリエチレングリコール部分の分子量は1000以下が好ましい。
【0314】
2官能モノマー(C)の割合は、重合性成分(Z)100質量%のうち、0〜85質量%であり、35〜75質量%がより好ましい。2官能モノマー(C)としてポリエチレングリコールジアクリレートを用いる場合、その割合が0〜85質量%であることで、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物のアクリル当量とオキシエチレン基の割合を適した範囲に調整することができる。
【0315】
また、ポリエチレングリコールジアクリレートを上記の割合で使用することで微細凹凸表面を十分に親水化でき、指紋等の油汚れを水拭きで除去できる。
【0316】
(単官能モノマー(F))
単官能モノマー(F)としては、前記第一の実施形態における単官能モノマー(F)と同様の化合物を同様の配合量で用いることができる。
【0317】
(他の重合性成分)
重合性成分(Z)は、本発明の効果を損なわない範囲で、多官能モノマー(A)、多官能モノマー(B)、2官能モノマー(C)および単官能モノマー(F)以外の他の重合性成分を含んでいてもよい。他の重合性成分としては、多官能モノマー(A)、多官能モノマー(B)、2官能モノマー(C)、および単官能モノマー(F)以外のモノマー、ラジカル重合性の官能基を有するオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
【0318】
他の重合性成分の割合は、重合性成分(Z)100質量%のうち、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下が特に好ましい。すなわち、多官能モノマー(A)、多官能モノマー(B)、2官能モノマー(C)、および単官能モノマー(F)の合計は、重合性成分(Z)100質量%のうち、70質量%以上が好ましい。
【0319】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)としては、前記第一の実施形態における光重合開始剤(D)と同様の化合物を同様の配合量で用いることができる。
【0320】
(紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E))
紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)としては、前記第一の実施形態における紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)と同様の化合物を同様の配合量で用いることができる。
【0321】
(他の成分)
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、界面活性剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0322】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ラジカル重合性の官能基を有さないオリゴマーやポリマー、微量の有機溶媒等を含んでいてもよい。
【0323】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度は、スタンパの表面の微細凹凸構造への流れ込みやすさの点から、高すぎないことが好ましい。よって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の、25℃におけるE型粘度計での粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましい。
【0324】
ただし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が10000mPa・sを超えても、スタンパとの接触の際にあらかじめ加温して粘度を下げることが可能であるならば特に問題はない。この場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の、70℃における回転式B型粘度計での粘度は、5000mPa・s以下が好ましく、2000mPa・s以下がより好ましい。
【0325】
粘度があまりに低すぎると、濡れ広がってしまい、製造に支障を来たす場合もある。10mPa・s以上であれば好ましい。
【0326】
以上説明した、本発明の物品の表面に用いるのに好適な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にあっては、アクリル当量が特定の範囲内にあるため、その硬化物は支持体を有さないフィルム状の形態であってもカールや割れが無く厚膜化が可能であり、且つ高い表面硬度を有する。
【0327】
また、特定の多官能モノマー(A)、特定の多官能モノマー(B)と特定の2官能モノマー(C)とを特定の割合で含んでいるため、微細凹凸構造の耐擦傷性が高い。また、特定の2官能モノマー(C)を特定の割合で含んでいるため、微細凹凸構造の指紋拭き取り性も良好な硬化物を形成できる。
【0328】
<微細凹凸構造を表面に有する物品>
本発明の物品は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、微細凹凸構造の反転構造を表面に有するスタンパと接触、硬化させることによって形成される微細凹凸構造を表面に有する物品である。
【0329】
図1は、本発明の物品の一例を示す断面図である。物品40は、必要に応じて加えられるカバーフィルム42と、微細凹凸構造層44とを有する。物品40は微細凹凸構造層44のみで構成されても良い。
【0330】
微細凹凸構造層44は、表面に微細凹凸構造を有する。
【0331】
後述する陽極酸化アルミナのスタンパを用いた場合の物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
【0332】
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0333】
このモスアイ構造と呼ばれる微細凹凸構造において、反射防止性能と耐擦傷性を両立するためには、凸部間の平均間隔と凸部の高さのバランスである凹凸のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)を特定の範囲にすることが重要である。
【0334】
凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下が好ましい。平均間隔が400nmを超えると、可視光の散乱が起こるため、反射防止物品等の光学用途に適さない。凸部間の平均間隔は140〜260nmがより好ましく、160nm〜200nmが特に好ましい。
【0335】
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0336】
凸部間の平均間隔が上記の好ましい範囲にある場合、反射防止性能は概ね突起の高さによって決まる。良好な反射防止性能を得るためには、凸部の高さは、120〜250nmが好ましく、150〜220nmがより好ましく、180〜190nmが特に好ましい。凸部の高さが120nm以上であれば、反射率が十分低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部の高さが250nm以下であれば、凸部先端同士が密着する現象を抑えやすくなる。
【0337】
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0338】
凸さらに部のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)は、0.7〜1.4が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。凸部のアスペクト比が0.7以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部のアスペクト比が1.4以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
【0339】
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0340】
(スタンパ)
スタンパ及びその作製方法は、前記第一の実施形態と同様であることができる。
【0341】
(物品の製造方法)
微細凹凸構造を表面に有する物品は、下記(工程1)〜(工程3)を含む工程で製造される。
(工程1)前記微細凹凸構造の反転構造を少なくとも一方の表面に有するスタンパ上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配置する工程、
(工程2)活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、
(工程3)前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を前記スタンパから剥離する工程。
【0342】
さらに、前記(工程1)におけるスタンパが、ロール状であることが好ましい。
【0343】
例えば、
図3に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
【0344】
表面に微細凹凸構造の反転構造(図示略)を有するロール状スタンパ20と、ロール状スタンパ20の表面に沿って移動する帯状フィルムのカバーフィルム42との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給する。
【0345】
ロール状スタンパ20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、カバーフィルム42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、カバーフィルム42とロール状スタンパ20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状スタンパ20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0346】
ロール状スタンパ20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、カバーフィルム42を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、ロール状スタンパ20の表面の微細凹凸構造が転写された微細凹凸構造層44を形成する。
【0347】
剥離ロール30により、微細凹凸構造層44とカバーフィルム42をロール状スタンパ20から剥離することによって、
図1に示すような物品40を得る。物品40のカバーフィルム42は、微細凹凸構造層44から剥離可能であり、微細凹凸構造層44は単独で取り扱い可能である。
【0348】
活性エネルギー線照射装置28としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cm
2が好ましい。
【0349】
カバーフィルム42は、光透過性フィルムが好ましい。フィルムの材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリエステル、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。また、このカバーフィルム42は、微細凹凸構造層44と積層された状態では保護フィルムとして機能する。
【0350】
また、カバーフィルム42は必須の構成部材ではない。例えば、塗工装置を使用してロール状スタンパ20に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を直接塗工し、次いで活性エネルギー線を照射して硬化させた後、微細凹凸構造層44をロール状スタンパ20から剥離することで、フィルム状の微細凹凸構造層44を得ることが可能である。この場合、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射される際に周辺から酸素が追い出された状態であることが好ましい。その方法としては、例えば、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを充填、あるいはフローして使用することが挙げられる。
【0351】
ロール状スタンバ20に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する装置としては、ダイコーター、グラビアコーター、リバースコーターなどが挙げられる。
【0352】
その他の製造方法としては、例えば、金属ベルト上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工し、ロール状スタンパ20で形状を転写した後に、活性エネルギー線を照射して微細凹凸構造層44を得る方法などが挙げられる。
【0353】
(用途)
本発明の用途は、前記第一の実施形態と同様であることができる。
【実施例】
【0354】
以下、実施例Aにより本発明をさらに詳細に説明する。
【0355】
(耐擦傷性)
耐擦傷性の評価には、磨耗試験機(商品名:HEiDON TRIBOGEAR TYPE−30S、新東科学(株)製)を用いた。光透過性物品の表面に置かれた2cm四方のスチールウール(商品名:ボンスター#0000、日本スチールウール社製)に400gの荷重をかけ、往復距離:30mm、ヘッドスピード:30mm/秒にて10回往復磨耗を行った。その後、光透過性物品の表面の外観を評価した。外観評価に際しては、透明な2.0mm厚の黒色アクリル板(商品名:アクリライト、三菱レイヨン(株)製)の片面に該光透過性物品を貼り付け、屋内で蛍光灯にかざして目視で評価した。評価は以下の基準で行った。
A:傷が確認されない。
B:確認できる傷が5本未満であり、擦傷部位が白く曇らない。
C:確認できる傷が5本以上、20本未満であり、擦傷部位がやや白く曇る。
D:確認できる傷が20本以上であり、擦傷部位がはっきり白く曇って見える。
【0356】
(指紋拭き取り性)
水道水を1.0cc染込ませたワイパー(商品名:エリエール プロワイプ、大王製紙(株)製)を用い、表面に指紋が付着した光透過性物品の表面を一方向に拭き取った。その後、該光透過性物品の表面の外観を評価した。評価は以下の基準で行った。
A:2回以下のふき取りで指紋が完全に除去できる。
B:3回以上、10回未満のふき取りで指紋が完全に除去できる。
C:10回ふき取り後でも、指紋が残る。
【0357】
(耐水性)
前記指紋拭き取り性と同様の試験を行い、以下の基準で評価した。
A:良好な反射防止性能と透明性を維持している。
B:斜め方向から白色LED光源を照射した際、わずかにフィルムが白く靄がかかる。
C:明らかにフィルムが白濁する。
【0358】
(隣り合う凸部同士の間隔および凸部の高さの測定)
隣り合う凸部同士の間隔は、電子顕微鏡(商品名:JSM7400F、日本電子製)によって隣り合う凸部同士の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均した値とした。また、凸部の高さは、前記電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を50点測定し、これらの値を平均した値とした。
【0359】
(押し込み弾性率(X)、クリープ変形率(Y)の測定)
大型スライドガラス(商品名:S9213、松浪硝子工業(株)製)を基材として用いた。該基材に塗膜の厚みが約500μmになるように、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、高圧水銀灯を用いて約3000mJ/cm
2で該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射した。これを押し込み弾性率(X)およびクリープ変形率(Y)の評価用サンプルとして用いた。
【0360】
ビッカース圧子(四面ダイアモンド錐体)と、微小硬度計(商品名:フィッシャースコープHM2000XYp、フィッシャーインスツルメンツ製)とを用いて塗膜の物性評価を行った。評価は恒温室(温度23℃、湿度50%)内で行った。評価プログラムは、[押し込み(50mN/10秒)]→[クリープ(50mN、60秒)]→[徐荷(50mN/10秒)]とした。
【0361】
このような方法で測定した結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物の押し込み弾性率(X)を解析ソフト(商品名:WIN−HCU、フィッシャーインスツルメンツ社製)により算出した。
【0362】
また、前記評価プログラムにおいて、クリープ開始時における押し込み深さをh0、クリープ終了時の押し込み深さをh1とし、これらh0およびh1をもとにクリープ変形率(Y)を次の式で求めた。
【0363】
クリープ変形率(%)=(
h1−h0)/h0×100。
【0364】
(スタンパの製造)
純度99.99質量%、電解研磨された厚さ2mmのφ65mmアルミニウム円盤をアルミニウム基材として用いた。0.3Mシュウ酸水溶液を15℃に調整し、該アルミニウム基材を浸漬した。直流安定化装置の電源のON/OFFを繰り返すことでアルミニウム基材に間欠的に電流を流して陽極酸化した。30秒おきに80Vの定電圧を5秒間印加する操作を60回繰り返した。これにより、該アルミニウム基材に細孔を有する酸化皮膜を形成した。
【0365】
続いて、酸化皮膜の形成されたアルミニウム基材を、6質量%のリン酸と1.8質量%クロム酸とを混合した70℃の水溶液中に6時間浸漬した。これにより、酸化皮膜を溶解除去した。
【0366】
酸化皮膜が溶解除去されたアルミニウム基材を、16℃に調整した0.05Mのシュウ酸水溶液に浸漬して80Vで7秒間陽極酸化を施した。続いて、32℃に調整した5質量%リン酸水溶液中に20分間浸漬して酸化皮膜の細孔を拡大する細孔径拡大処理を施した。このように陽極酸化と細孔径拡大処理とを交互に繰り返し、合計5回ずつ施した。
【0367】
得られたモールドを、TDP−8(商品名、日光ケミカルズ(株)製)の0.1質量%水溶液に10分間浸漬した。これを引き上げて一晩風乾することにより、モールドに離型処理を施した。以上により、スタンパを製造した。
【0368】
(重合性成分(Z))
重合性成分(Z)として、表1に示す化合物を用いた。
【0369】
【表1】
【0370】
(光重合開始剤(D))
光重合開始剤(D)として、重合性成分(Z)100質量%に対して、IRGACURE184(BASF社製)を1.0質量%、およびIRGACURE819(BASF社製)を0.5質量%用いた。
【0371】
[実施例A1]
DPHA−12Eを70質量%、14EGDAを30質量%混合して、重合性成分(Z)を調製した。該重合性成分(Z)100質量%に対し、光重合開始剤(D)として、IRGACURE184を1.0質量%、IRGACURE819を0.5質量%混合して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0372】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を前記スタンパの表面に数滴垂らした。厚さ:80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:TD80ULM、富士フィルム(株)製、以下フィルムとも示す)で前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を押し広げながら、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をフィルムに被覆した。その後、フィルム側から高圧水銀灯を用いて2000mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からスタンパを離型して、隣り合う凸部同士の間隔:180nm、凸部の高さ:180nm(アスペクト比:1.0)の微細凹凸構造層を備える光透過性物品を得た。耐擦傷性、指紋拭き取り性および耐水性の評価結果を表2に示す。
【0373】
[実施例A2〜A12、比較例A1〜A12]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の組成を表2と表3に示す組成に変更した以外は、実施例A1と同様にして微細凹凸構造層を備える光透過性物品を得た。評価結果を表2と表3に示す。
【0374】
なお、表2及び表3において、実施例1〜12及び比較例1〜12はそれぞれ実施例A1〜A12及び比較例B1〜B12を示す。
【0375】
【表2】
【0376】
【表3】
【0377】
表2と
図5のグラフの結果から明らかなように、実施例A1〜A12で得られた光透過性物品は押し込み弾性率(X)とクリープ変形率(Y)の値が前記式(1)および前記式(2)を満たすため、良好な耐擦傷性、指紋拭取り性、耐水性を示した。また、アクリル当量が215〜300[g/eq]の範囲内であり、オキシエチレン基の占める割合も55.0〜74.0質量%の範囲内であった。
【0378】
一方、表3と
図5のグラフの結果から明らかなように、比較例A1〜A12で得られた光透過性物品は押し込み弾性率(X)とクリープ変形率(Y)の値が前記式(1)および/または前記式(2)の範囲外であった。そのため、良好な耐擦傷性が得られなかった。
【0379】
具体的には、押し込み弾性率(X)が100[MPa]未満である比較例A2、A6およびA9では、硬化物が軟らかすぎたため、耐擦傷性評価において、スチールウールによって樹脂自体がえぐり取られるように傷が付いた。また、微細凹凸構造層の突起が軟らかすぎたため、耐水性評価において、水拭き後に突起同士が合一する現象が確認され、全体的に霞がかかったような外観となり、耐水性が低かった。
【0380】
一方、押し込み弾性率(X)が560[MPa]より大きい比較例A1、A3、A7、A8およびA12では、硬化物が硬すぎたため、耐擦傷性評価において微細凹凸構造層の突起が途中から折れたり、削り取られたりする現象が確認された。
【0381】
また、比較例A4、A5、A10およびA11では、押し込み弾性率(X)が80≦X≦560[MPa]の範囲内ではあるものの、クリープ変形率(Y)が前記式(2)の範囲外であるため、耐擦傷性評価において微細凹凸構造層の突起が途中から折れたり、削り取られたりする現象が確認された。
【0382】
また、以下、実施例Bにより本発明をさらに詳細に説明する。以下の記載において「部」は質量部を示す。
【0383】
(耐擦傷性:耐スチールウール)
磨耗試験機(新東科学社製、製品名HEiDON TRIBOGEAR TYPE−30S)を用い、物品の表面に置かれた2cm
2にカットしたスチールウール(日本スチールウール社製、製品名ボンスター#0000)に400g(100gf/cm
2)及び1kg(250gf/cm
2)の荷重をかけ、往復距離:30mm、ヘッドスピード:平均100mm/秒にて10回往復させ、物品の表面の外観を評価した。外観評価に際しては、2.0mm厚の黒色アクリル板(三菱レイヨン社製、製品名アクリライト)の片面に物品を貼り付け、屋内で蛍光灯にかざして目視で評価した。
・「AA」:傷が確認できない。
・「A」:確認できる傷が10本未満。
・「B」:確認できる傷が10本以上30本未満。
・「C」:確認できる傷が30本以上。
・「D」:擦傷部分の50%以上の面積で反射防止性能が失われる。
【0384】
(指紋拭き取り性)
水道水を1.0cc染込ませたワイパー(大王製紙社製、製品名エリエール プロワイプ)を用い、表面に指紋が付着した物品の表面を一方向に拭いた後、物品の表面の外観を評価した。
・「A」:2回以下のふき取りで指紋が完全に除去できる。
・「B」:3回以上、10回以下のふき取りで指紋が完全に除去できる。
・「C」:10回ふき取り後でも、指紋が残る。
【0385】
(耐水性)
水道水を1.0cc染込ませたワイパー(大王製紙社製、製品名エリエール プロワイプ)を用い、表面に指紋が付着した物品の表面を一方向に拭いた後、物品の表面の外観を評価した。拭いた部分が白濁したサンプルを電子顕微鏡で観察したところ、いずれのサンプルでも微細凹凸構造の突起同士が合一していることが確認された。
・「A」:良好な反射防止性能と透明性を維持している。
・「B」:拭き取った部分が白濁する。
【0386】
(押し込み弾性率(X)、クリープ変形率(Y)の測定)
前記と同様の方法により、押し込み弾性率(X)、クリープ変形率(Y)の測定を行った。
【0387】
(スタンパの製造)
純度99.99質量%、電解研磨した厚さ2mmのφ65mmアルミニウム円盤をアルミニウム基材として用いた。
【0388】
0.3Mシュウ酸水溶液を15℃に調整し、アルミニウム基材を浸漬して、直流安定化装置の電源のON/OFFを繰り返すことでアルミニウム基材に間欠的に電流を流して陽極酸化した。30秒おきに80Vの定電圧を5秒間印加する操作を60回繰り返し、細孔を有する酸化皮膜を形成した。
【0389】
続いて、酸化皮膜を形成したアルミニウム基材を、6質量%のリン酸と1.8質量%クロム酸を混合した70℃の水溶液中に6時間浸漬して、酸化皮膜を溶解除去した。
【0390】
酸化皮膜を溶解除去したアルミニウム基材を、16℃に調整した0.05Mのシュウ酸水溶液に浸漬して80Vで7秒間陽極酸化を施した。続いて、32℃に調整した5質量%リン酸水溶液中に20分間浸漬して酸化皮膜の細孔を拡大する孔径拡大処理を施した。このように陽極酸化と孔径拡大処理を交互に繰り返し、合計5回ずつ施した。
【0391】
得られたモールドを、TDP−8(日光ケミカルズ社製)の0.1質量%水溶液に10分間浸漬し、引き上げて一晩風乾することにより離型処理を施した。
【0392】
[実施例B1]
重合成分(Z)のうち、成分(A2)としてグリセリンEO変性トリアクリレート(オキシエチレン基=約20モル、新中村化学工業社製、製品名NKエステルA−GLY−20E)80部、成分(B2)としてペンタエリスリトール(トリ)テトラアクリレート(第一工業製薬社製、製品名ニューフロンティアPET−3)20部を使用し、重合成分(Z)100部に対して、光重合開始剤(D)としてBASF社製のIRGACURE184(製品名)1.0部、IRGACURE819(製品名)0.5部、離型剤として日光ケミカルズ社製のNIKKOL TDP−2(製品名)0.1部を混合して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0393】
この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をスタンパの表面に数滴垂らし、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、製品名TD80ULM)で押し広げながら被覆し、次いでフィルム側から高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して硬化させた。フィルムからスタンパを離型して、凸部の平均間隔180nm、高さ180nmの微細凹凸構造を表面に有する光透過性物品を得た。評価結果を表4に示す。
【0394】
[実施例B2〜B19、比較例B1〜B6]
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の組成と金型を表4〜6に示すように変更したこと以外は、実施例B1と同様にして微細凹凸構造を表面に有する光透過性物品を得た。評価結果を表4〜6に示す。
【0395】
なお、表4〜6において、実施例1〜19及び比較例1〜6はそれぞれ実施例B1〜B19及び比較例B1〜B6を示す。
【0396】
また、各成分のオキシエチレン基のモル数、(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均値、アクリル当量を表7に示す。
【0397】
【表4】
【0398】
【表5】
【0399】
【表6】
【0400】
【表7】
【0401】
[評価]
実施例B1〜B19では、多官能(メタ)アクリレート(A2)を含むので良好な耐スチールウール擦傷性が得られた。特に、実施例B6、B8、B9、B16、B17、B18、B19では、耐スチールウール擦傷性の試験結果が100gf/cm
2でAA(傷無し)、250gf/cm
2でA(確認できる傷が10本未満)であり、特に高い耐擦傷性を有していた。
【0402】
ただし、実施例B9では金型のピッチが100nmなので、アスペクト比が大きくなり突起同士が合一する現象が確認されたため、耐水性が劣る結果となった。
【0403】
比較例B1〜B6では、多官能(メタ)アクリレート(A2)を含まないので、実施例よりも耐スチールウール擦傷性が劣っていた。比較例B2では、アクリル当量が大きいので硬化物が軟らかく、耐水性が劣っていた。比較例B3では、(メタ)アクリロイル基1個当たりのオキシエチレン基数の平均が小さいので、十分な耐擦傷性が得られず、親水性も不十分で指紋拭取り性も良くなかった。
【0404】
また、以下、実施例Cにより本発明をさらに詳細に説明する。以下の記載において「部」は「質量部」を意味する。また、各物性の評価は以下の方法に従い実施した。
【0405】
<耐擦傷性:スチールウール試験>
往復磨耗試験機(新東科学社製、型名HEIDON Type:30S)を使用し、20mm角の圧子にスチールウール(#0000)を取り付け、温度23℃、湿度50%Rhの環境下において、荷重25gf/cm
2の条件で光透過性物品を10往復擦った。その後、光透過性物品の裏面に黒い紙を置き、光透過性物品に生じた傷の数を確認して、以下の基準に従って目視で評価した。評価がAの場合に耐擦傷性が十分あり、Bの場合に耐擦傷性良好、と判断した。
「A」:傷が0〜10本以内。
「B」:傷が10を超え20本以内。
「C」:圧子の当たった全面に傷有り、又は全面が白く曇っている(傷以外の光透過性低下などの外観変化も含む)。
【0406】
<反射防止性:反射率>
透明アクリル樹脂板に貼り付けた光透過性物品を、日立社製分光光度計U−3300を用いて、入射角5°の条件で波長380nm〜780nmの間の相対反射率を測定し、波長550nmの反射率を以下の基準に従って評価した。
「A」:4.9%以下。
「B」:4.9%を超える。
【0407】
<指紋拭き取り性:水拭き>
微細凹凸構造層の微細凹凸構造面(表面)の反対側の面を、光学粘着層を介して黒色アクリル樹脂板(三菱レイヨン株式会社製、アクリライトEX#502、50mm×60mm)に貼り付け、微細凹凸構造面に人口指紋液(特許第3799025号に記載の評価用分散液)を付着させた物品を作成した。
【0408】
指先で約1kgf/cm
2の力を加えながら、水道水を1.0cc染込ませたワイパー(日本製紙クレシア株式会社、ケイドライワイパー132−S)で微細凹凸構造面を10往復させた後、物品表面の外観を評価した。
A:指紋が完全に除去された。
B:ほぼ指紋は目立たないが、蛍光灯を映り込ませたときの色味が僅かに異なる(指紋が完全には除去できていない)。
C:はっきりと指紋が残る。
【0409】
<指紋拭き取り性:乾拭き>
微細凹凸構造層の微細凹凸構造面(表面)の反対側の面を、光学粘着層を介して黒色アクリル樹脂板(三菱レイヨン株式会社製、アクリライトEX#502、50mm×60mm)に貼り付け、微細凹凸構造面に人口指紋液(特許第3799025号に記載の評価用分散液)を付着させた物品を作成した。
【0410】
指先で力を加えながら(約3kgf/cm
2)、乾燥したワイパー(日本製紙クレシア株式会社、ケイドライワイパー132−S)で微細凹凸構造面を40往復させた後、物品表面の外観を評価した。
A:指紋が完全に除去された。
B:ほぼ指紋は目立たないが、蛍光灯を映り込ませたときの色味が僅かに異なる(指紋が完全には除去できていない)。
C:はっきりと指紋が残る。
【0411】
<外観:透明性(白濁)>
微細凹凸構造層の微細凹凸構造面(表面)の反対側の面を、光学粘着層を介して黒色アクリル樹脂板(三菱レイヨン株式会社製、アクリライトEX#502、50mm×60mm)に貼り付け、次に記載のように物品の外観を評価した。
A:斜め方向から白色LED光源を照射した場合に、表面が均一であり、僅かな白化や白濁などが認められない。
B:室内の蛍光灯下では表面が均一で白濁は認められないが、斜め方向から白色LED光源を照射した場合には、白化や白濁が認められる。
C:室内の蛍光灯下であっても白化や白濁が認められる。
【0412】
<樹脂物性:マルテンス硬さ及び弾性率>
実施例C及び比較例Cに用いた樹脂組成物を、厚さ約200μmのスペーサーを挿入した2枚のスライドガラス(76×52mm、厚さ約1mm)ではさみ、高圧水銀灯を用いて積算光量1200mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して硬化させた。片面のスライドガラスを剥がして、硬化した樹脂表面のマルテンス硬さ及び弾性率を、超微小硬さ試験装置(フィッシャー・インストルメンツ社、商品名:フィッシャー・スコープ・HM2000)を用い、ISO−14577−1に準拠した方法により、次に記載の測定条件で測定した。
【0413】
圧子形状:ビッカース圧子(a=136°)、
測定環境:温度23℃・相対湿度50%、
最大試験荷重:100mN、
荷重速度:100mN/10秒、
最大荷重クリープ時間:10秒、
除荷速度:100mN/10秒。
【0414】
<樹脂組成物のPAG含有率>
PAG含有率[%]=[P(モノマー1)×PAG(モノマー1)+P(モノマー2)×PAG(モノマー2)+・・・+P(モノマーn)×PAG(モノマーn)]/100、
PAG含有率:ポリアルキレングリコール含有率(%)、
PAG(モノマー1):モノマー1のPAG(%)、
P(モノマー1):組成中におけるモノマー1の質量分率(%)。
(但し、モノマー1、モノマー2・・・モノマーnは、(メタ)アクリルモノマー(A3)及び(メタ)アクリルモノマー(B3)、その他のモノマーを含む樹脂組成物を構成する全てのモノマーである。)。
【0415】
<押し込み弾性率(X)、クリープ変形率(Y)の測定>
前記と同様の方法により、押し込み弾性率(X)、クリープ変形率(Y)の測定を行った。
【0416】
(スタンパの作製)
純度99.99%のアルミニウムを、羽布研磨及び過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
【0417】
(a)工程:
このアルミニウム板を、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
【0418】
(b)工程:
上記工程で酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
【0419】
(c)工程:
このアルミニウム板を、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒陽極酸化を行った。
【0420】
(d)工程:
上記工程で酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
【0421】
(e)工程:
前記(c)工程及び(d)工程を合計で5回繰り返し、周期100nm、深さ180nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
【0422】
得られた陽極酸化ポーラスアルミナは脱イオン水で洗浄し、次いで表面の水分をエアーブローで除去し、フッ素系剥離材(ダイキン工業社製、商品名オプツールDSX)を固形分0.1質量%になるように希釈剤(ハーベス社製、商品名HD−ZV)で希釈した溶液に10分間浸漬し、20時間風乾して、表面上に細孔が形成されたスタンパを得た。
【0423】
<参考例1>
(A3)成分として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのEO変性化合物[第一工業製薬(株)製、商品名DPHA−12EO]70部、(B3)成分として、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名NKエステルATM−4E)30部、重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン(株)製、商品名IRGACURE184)1.0部及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、商品名IRGACURE819)0.5部、離型剤(巴工業(株)製、商品名モールドウイズINT−1856)0.1部からなる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0424】
ここで使用した(A3)成分中のポリアルキレングリコール構造(−C
2H
4O−)
n部分の合計化学式量(M(PAG))は、44×12=528であり、アクリロイル構造(CH
2=CHCO−)部分の合計化学式量(M(ACR))は、55×6=330であり、そのポリアルキレングリコール含有率(PAG)は、528/(330+528)×100≒61.5(%)である。
【0425】
以上の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をスタンパ上に数滴垂らし、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、商品名A−4300)で押し広げながら表面を被覆した。次いで、フィルム側から高圧水銀灯を用いて1200mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して硬化させた。次いで、フィルムとスタンパを剥離して、隣り合う凸部又は凹部の間隔が100nm、高さ180nmの微細凹凸構造層を有する光透過性物品を得た。
【0426】
<実施例C1〜C10、比較例C1〜C4、参考例2〜10>
重合性化合物として表8及び表9に示す化合物を用いたこと以外は、実施例C1と同様にして光透過性物品を製造した。
【0427】
以上の各実施例、比較例及び参考例の評価結果を表8及び表9に示す。
【0428】
なお、表8及び表9において、実施例1〜10及び比較例1〜4はそれぞれ実施例C1〜C10及び比較例C1〜C4を示す。
【0429】
【表8】
【0430】
【表9】
【0431】
表中の略号は、下記の通りである。
・「a」:アクリロイル基の数、
・「n」:アルキレングリコールに由来する構造の平均繰り返し数、
・「PAG」:ポリアルキレングリコール含有率(%)、
・「DPHA−12EO」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのEO変性化合物[第一工業製薬(株)製、商品名DPHA−12EO変性、一般式(1)のR
1〜R
6は全てH、かつエチレングリコールの分子構造の繰返し単位の総数(l+m+n+o+p+q)が12の化合物であり、ポリエチレングリコール構造の平均繰り返し数は2(=12/6)]、
・「DPHA−18EO」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのEO変性化合物[第一工業製薬(株)製、商品名DPHA−18EO変性、一般式(1)のR
1〜R
6は全てH、かつエチレングリコールの分子構造の繰返し単位の総数(l+m+n+o+p+q)が18の化合物、ポリエチレングリコール構造の平均繰り返し数は3(=18/6)]、
・「DPHA−24EO」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのEO変性化合物[第一工業製薬(株)製、商品名DPHA−24EO変性、一般式(1)のR
1〜R
6は全てH、かつエチレングリコールの分子構造の繰返し単位の総数(l+m+n+o+p+q)が24の化合物であり、ポリエチレングリコール構造の平均繰り返し数は4(=24/6)]、
・「DPHA−30EO」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのEO変性化合物[第一工業製薬(株)製、商品名DPHA−30EO変性、一般式(1)のR
1〜R
6は全てH、かつエチレングリコールの分子構造の繰返し単位の総数(l+m+n+o+p+q)が30の化合物であり、ポリエチレングリコール構造の平均繰り返し数は5(=30/6)]、
・「ATM−4E」:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名ATM−4E)、
・「DPHA」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製)、
・「A−TMPT−6EO」:トリメチロールプロパントリアクリレートのEO変性化合物(新中村化学工業(株)製、ポリエチレングリコール構造の平均繰り返し数=2)、
・「PE−4A」:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートPE−4A)、
・「ATM−35E」:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、エチレングリコールの分子構造の繰返し単位の総数が35の化合物であり、ポリエチレングリコール構造の平均繰り返し数=8.75(=35/4))、
・「A−GLY−20E」:エトキシ化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製、エチレングリコールの分子構造の繰返し単位の総数が20の化合物であり、ポリエチレングリコール構造の平均繰り返し数=6.67(20/3))、
・「M260」:ポリエチレングリコール(n=約13)ジアクリレート(東亞合成(株)製)、
・「A−1000」:ポリエチレングリコール(n=23)ジアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NK−エステルA−1000)、
・「9EG−A」:ポリエチレングリコール(n=9)ジアクリレート(共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレート9EG−A)、
・「HEA」:ヒドロキシエチルアクリレート、
・「A−SA」:2−アクリロイルオキシエチルサクシネート(新中村化学工業(株)製)。
【0432】
<評価>
表8の結果から明らかなように、参考例1〜7、実施例C1〜C3、C5、C8〜C10の光透過性物品は良好な耐擦傷性と低反射率を有していた。また、マルテンス硬さが15N/mm
2未満である実施例C4、C7、C8の光透過性物品は、耐擦傷性試験により試験部分の一部に目視では目立たない程度の、20本以内の細かなキズが生じた。一方、(メタ)アクリルモノマー(A3)を含まない参考例8の光透過性物品は耐擦傷性試験により20を超える傷が生じ、耐擦傷性試験部分の全面が白く曇っていた。同様に(メタ)アクリルモノマー(A3)を含まない比較例C1、C3、C4及び参考例9、10、(メタ)アクリルモノマー(A3)成分及び(メタ)アクリルモノマー(B3)以外の成分を含む比較例C2、PAG含有率が50%未満である比較例C3、及び、(メタ)アクリルモノマー(B3)の官能基数が3である比較例C4の光透過性物品は圧子の当たった全面に多数の傷が生じた。
【0433】
また、アルキレングリコールに由来する構造の平均繰り返し数が少ない(メタ)アクリルモノマー(B3)のみを含む比較例C3及びC4の光透過性物品は指紋を水拭きで除去できなかった。
【0434】
また、マルテンス硬さが比較的柔らかい実施例C4〜C7では、耐擦傷性は良好なものの、微細凹凸構造の突起同士が寄り添う現象による白濁が観察された。
【0435】
また、実施例C1〜C10及び参考例1〜7の光透過性物品は、水拭き及び乾拭きで、傷が付くことなく、指紋を目立たないレベルで除去できた。参考例8、10及び比較例C1〜C4の光透過性物品は、耐擦傷性に劣るものの、乾拭き又は水拭きにて指紋を目立たないレベルで除去できた。
【0436】
また、以下、実施例Dにより本発明をさらに詳細に説明する。
【0437】
(耐擦傷性)
磨耗試験機(新東科学社製、「HEIDON TRIBOGEAR TYPE−30S」)を用い、物品の表面に置かれた2cm四方のスチールウール(日本スチールウール社製、ボンスター#0000)に400gの荷重をかけ、往復距離:30mm、ヘッドスピード:30mm/秒にて10回往復させ、物品の表面の外観を評価した。外観評価に際しては、透明な2.0mm厚の黒色アクリル板(三菱レイヨン社製、アクリライト)の片面に粘着剤を介して物品を貼り付け、屋内で蛍光灯にかざして目視で評価した。
A:傷が確認できない。
B:確認できる傷が5本未満で擦傷部位が白く曇らない。
C:確認できる傷が5本以上20本未満で擦傷部位がやや白く曇る。
D:確認できる傷が20本以上で擦傷部位がはっきり白く曇って見える。
【0438】
(指紋拭き取り性)
水道水を1.0cc染込ませたワイパー(大王製紙株式会社製、エリエール プロワイプ)を用い、表面に指紋が付着した物品の表面を一方向に拭き取った後、物品の表面の外観を評価した。
A:2回以下のふき取りで指紋が完全に除去できる。
B:3回以上、10回未満のふき取りで指紋が完全に除去できる。
C:10回ふき取り後でも、指紋が残る。
【0439】
(耐水性)
水道水を1.0cc染込ませたワイパー(大王製紙株式会社製、エリエール プロワイプ)を用い、表面に指紋が付着した物品の表面を一方向に拭き取った後、物品の表面の外観を評価した。
A:良好な反射防止性能と透明性を維持している。
B:斜め方向から白色LED光源を照射した際、わずかにフィルムが白く靄がかかる。
C:明らかにフィルムが白濁する。
【0440】
(鉛筆硬度)
鉛筆硬度試験をJIS K5600−5−4(1999)に基づいて実施した。鉛筆は三菱鉛筆(株)製のユニシリーズを使用し、荷重は500gとした。判定は、圧痕を含む傷を肉眼で認めない限界とした。
【0441】
(スタンパの製造)
純度99.99質量%、電解研磨した厚さ2mmのφ65mmアルミニウム円盤をアルミニウム基材として用いた。
【0442】
0.3Mシュウ酸水溶液を15℃に調整し、アルミニウム基材を浸漬して、直流安定化装置の電源のON/OFFを繰り返すことでアルミニウム基材に間欠的に電流を流して陽極酸化した。30秒おきに80Vの定電圧を5秒間印加する操作を60回繰り返し、細孔を有する酸化皮膜を形成した。
【0443】
続いて、酸化皮膜を形成したアルミニウム基材を、6質量%のリン酸と1.8質量%クロム酸を混合した70℃の水溶液中に6時間浸漬して、酸化皮膜を溶解除去した。
【0444】
酸化皮膜を溶解除去したアルミニウム基材を、16℃に調整した0.05Mのシュウ酸水溶液に浸漬して80Vで7秒間陽極酸化を施した。続いて、32℃に調整した5質量%リン酸水溶液中に20分間浸漬して酸化皮膜の細孔を拡大する孔径拡大処理を施した。このように陽極酸化と孔径拡大処理を交互に繰り返し、合計5回ずつ施した。
【0445】
得られたモールドを、TDP−8(日光ケミカルズ株式会社製)の0.1質量%水溶液に10分間浸漬し、引き上げて一晩風乾することにより離型処理を施した。
【0446】
(重合性成分(Z))
実施例Dで用いた重合性成分(Z)は、下記の通りである。
【0447】
DPHA−12EO:エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(オキシエチレン基:12モル)、14EGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート(ポリエチレングリコールの分子量=600、オキシエチレン基:約14モル)。
【0448】
(光重合開始剤(D))
実施例Dおよび比較例Dで用いた光重合開始剤(D)は、重合性成分(Z)100質量%に対して、IRGACURE184(BASF社製)を1.0質量%と、IRGACURE819(BASF社製)を0.5質量%添加した。
【0449】
[実施例D1]
DPHA−12EOを50質量%、14EGDAを50質量%、IRGACURE184を1.0質量%、IRGACURE819を0.5質量%混合して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物は、弾性率(X)が220MPaであり、クリープ変形率(Y)が2.9%であった。
【0450】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をスタンパの表面に1.0cc程度垂らし、厚さ100μmのシムテープをスペーサーとして挟み、カバーフィルムとして厚さ38μmのPETフィルム(三菱樹脂(株)製:T600)で押し広げながら被覆した後、カバーフィルム側から高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm
2のエネルギーで紫外線を照射して硬化させた。カバーフィルムを剥離し、続いてスタンパから硬化物層を離型して、凸部の平均間隔:180nm、高さ:180nmの微細凹凸構造を表面に有し、硬化物の厚みが100μmであるフィルム状の物品を得た。また、断面が直径10mmの円である円柱状の棒に得られた物品を巻きつけ、割れが生じないことを確認した。単独で取り出し可能なフィルム状の物品を得た。評価結果は、耐擦傷性がA、指紋拭取り性がA、耐水性がA、鉛筆硬度が2Hであった。
【0451】
[実施例D2]
スペーサーの厚みを200μmとした以外は実施例D1と同様にして微細凹凸構造を有する物品を得た。得られた物品は、凸部の平均間隔:180nm、高さ:180nmの微細凹凸構造を表面に有し、硬化物の厚みが200μmのフィルム状であった。また、断面が直径10mmの円である円柱状の棒に得られた物品を巻きつけ、割れが生じないことを確認した。評価結果は、耐擦傷性がA、指紋拭取り性がA、耐水性がA、鉛筆硬度が2Hであった。