(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂とポリオレフィンとの組成比率が、前記熱可塑性樹脂とポリオレフィンの合計質量に対して、前記熱可塑性樹脂が1〜73質量%の範囲であり、前記ポリオレフィンが99〜27質量%の範囲である請求項1記載の微多孔膜。
熱可塑性樹脂とポリオレフィンと相溶化剤との組成比率が、前記熱可塑性樹脂とポリオレフィンと相溶化剤との合計質量に対し、熱可塑性樹脂とポリオレフィンの合計質量が90〜97質量%の範囲、かつ相溶化剤が10〜3質量%の範囲である請求項1記載の微多孔膜。
融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)と相溶化剤(c)とを、前記熱可塑性樹脂(a)の融点以上の温度で溶融混練して、樹脂組成物(α)を得る工程(1)、得られた樹脂組成物(α)と孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)とを、前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度で溶融混練して、溶融混練物(β)を得る工程(2)、前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度に加熱した溶融混練物(β)をシート化して、針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含むシート(γ)を得る工程(3)、得られたシート(γ)を多孔質化する工程(4)、を有する微多孔膜の製造方法であって、
前記融点が220℃以上の熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂であり、かつ、前記ポリオレフィンがポリプロピレンであることを特徴とする微多孔膜の製造方法。
融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)と相溶化剤(c)とを、先端にダイを取り付けた押出機内で前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度で溶融混練した後、ダイ穴径/ストランド径が1.1以上となるよう引き取りながらストランドを形成した後、切断して、針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含む樹脂組成物(α’)を得る工程(1’)、得られた樹脂組成物(α’)と孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)とを、前記ポリオレフィン(b)の融点以上の温度且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度で混練して、混練物(β’)を得る工程(2’)、前記ポリオレフィン(b)の融点以上の温度且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度に加熱した混練物(β’)をシート化して針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含むシート(γ)を得る工程(3’)、得られたシート(γ)を多孔質化する工程(4)、を有する微多孔膜であって、
前記融点が220℃以上の熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂であり、かつ、前記ポリオレフィンがポリプロピレンであることを特徴とする微多孔膜の製造方法。
前記工程(1)または(1’)において、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)の仕込比率が、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)の合計質量に対して、前記熱可塑性樹脂(a)が1〜73質量%の範囲であり、かつポリオレフィン(b)が99〜27質量%の範囲である請求項8または9記載の微多孔膜の製造方法。
前記工程(2)または(2’)において、前記樹脂組成物(α)または前記樹脂組成物(α’)と孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)とに、さらにポリオレフィン(e)を加えて溶融混練する請求項8または9記載の微多孔膜の製造方法。
前記工程(2)または(2’)において、前記樹脂組成物(α)中に含まれる前記熱可塑性樹脂(a)と、ポリオレフィン(b)とポリオレフィン(e)の合計質量(a+b+e)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)が1〜73質量%であり、前記ポリオレフィン(b)とポリオレフィン(e)の合計量(b+e)が99〜27質量%の範囲となるようポリオレフィン(e)を加える請求項12記載の微多孔膜の製造方法。
前記工程(2)が、得られた樹脂組成物(α)と孔形成剤(d1)とを、前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度で溶融混練して、溶融混練物(β)を得る工程、または、前記工程(2’)が、得られた樹脂組成物(α’)と孔形成剤(d1)とを、前記ポリオレフィン(b)の融点以上の温度且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度で混練して、混練物(β’)を得る工程であって、かつ、
前記工程(4)が、該シート(γ)を延伸した後に孔形成剤(d1)を除去する工程(4a)、前記シート(γ)から前記孔形成剤(d1)を除去した後に延伸する工程(4b)、または前記シート(γ)を延伸した後に前記孔形成剤(d1)を除去しさらに延伸する工程(4c)である請求項8または9記載の微多孔膜の製造方法。
前記工程(1)または(1’)において、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)と相溶化剤(c)の合計質量(a+b+c)に対して、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)の合計質量(a+b)が90〜97質量%の範囲であり、かつ相溶化剤(c)が10〜3質量%の範囲である請求項8または9記載の微多孔膜の製造方法。
前記工程(1)または(1’)において、前記熱可塑性樹脂(a)と前記ポリオレフィン(b)に加え、さらに酸化防止剤を該ポリオレフィン(b)100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲で加えて溶融混練する請求項8または9記載の微多孔膜の製造方法。
融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)と相溶化剤(c)とを、先端にダイを取り付けた押出機内で前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度で溶融混練した後、ダイ穴径/ストランド径が1.1以上となるよう引き取りながらストランドを形成した後、切断して得られる非水電解質二次電池セパレータ用樹脂組成物(α’)であって、熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)との組成比率が、熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)との合計質量(a+b)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)が1〜73質量%の範囲であり、かつポリオレフィン(b)が99〜27質量%の範囲であり、
前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)と相溶化剤(c)との組成比率が、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)と相溶化剤(c)との合計質量(a+b+c)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)との合計質量(a+b)が90〜97質量%の範囲であり、かつ相溶化剤(c)が10〜3質量%の範囲であり、
さらに前記熱可塑性樹脂(a)が針状構造を有すること、
前記融点が220℃以上の熱可塑性樹脂がポリアリーレンスルフィド樹脂であり、かつ、前記ポリオレフィンがポリプロピレンであることを特徴とする非水電解質二次電池用セパレータ用樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の微多孔膜は、融点が220℃以上の熱可塑性樹脂とポリオレフィンと含む微多孔膜であって、前記熱可塑性樹脂が針状構造を有する。
【0017】
・融点が220℃以上の熱可塑性樹脂
本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、融点が220℃以上、好ましくは220〜390℃の範囲の、いわゆる汎用エンジニアリングプラスチックないしスーパーエンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的にはポリアミド6(6−ナイロン)、ポリアミド66(6,6−ナイロン)またはポリアミド12(12−ナイロン)などの脂肪族骨格を有するポリアミドや、ポリアミド6T(6T−ナイロン、ポリアミド9T(9T−ナイロン)などの芳香族骨格を有するポリアミドなど融点が220℃以上、好ましくは220〜310℃の範囲であるポリアミドや、ポリブチレンテレフタレート、ポリイソブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリシクロヘキセンテレフタレートなどの融点が220℃以上、好ましくは220〜280℃の範囲であるポリエステル樹脂や、融点が265℃以上、好ましくは265〜350℃の範囲、さらに好ましくは280〜300℃の範囲であるポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィドや、融点が300〜390℃の範囲であるポリエーテルエーテルケトンや、パラヒドロキシ安息香酸を骨格中に有する融点が300℃以上、好ましくは300℃〜熱分解温度(380℃)未満である液晶ポリマーや、融点が220以上、好ましくは220〜280℃の範囲であるシンジオタクチックポリスチレン等の融点が220〜390℃の範囲の熱可塑性樹脂が挙げられ、このうち、優れた難燃性や寸法安定性を有するポリアリーレンスルフィドが好ましい。
【0018】
本発明において該熱可塑性樹脂の分子量は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、溶融混練時に、該樹脂成分のガス化やブリードアウトを抑えることができる点から、該樹脂の溶融粘度に換算した値として、5〔Pa・s〕以上の範囲であることが好ましく、一方、溶融粘度の上限は特に問題ないものの、流動性、成形性の観点から3000〔Pa・s〕以下の範囲であることが好ましく、さらに20〜1000〔Pa・s〕の範囲であることが最も好ましい。なお、「溶融粘度」は、該熱可塑性樹脂の融点プラス20℃において、フローテスター(島津製作所製高化式フローテスター「CFT−500D型」)を用いて、荷重1.96MPa、オリフィス長とオリフィス径との、前者/後者の比が10/1であるオリフィスを使用して6分間保持後の溶融粘度を指すものとする。また、「融点」は、JIS 7121(1999年) 9.1(1)の方法に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融解ピーク温度を指すものとする。
【0019】
ここで、好ましい熱可塑性樹脂として挙げたポリアリーレンスルフィド樹脂についてさらに詳述する。
【0020】
本発明に使用するポリアリーレンスルフィド樹脂は、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記式(1)
【0021】
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)で表される構造部位を繰り返し単位とする樹脂である。
【0022】
ここで、前記式(1)で表される構造部位は、特に該式中のR
1及びR
2は、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記式(2)で表されるパラ位で結合するものが好ましいものとして挙げられる。
【0023】
【化2】
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記構造式(2)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐熱性や結晶性の面で好ましい。
【0024】
また、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂は、前記式(1)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(3)〜(6)
【0025】
【化3】
で表される構造部位を、前記式(1)で表される構造部位との合計の30モル%以下で含んでいてもよい。特に本発明では上記式(3)〜(6)で表される構造部位は10モル%以下であることが、ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐熱性、機械的強度の点から好ましい。前記ポリアリーレンスルフィド樹脂中に、上記式(3)〜(6)で表される構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
【0026】
また、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂は、その分子構造中に、下記式(7)
【0027】
【化4】
で表される3官能性の構造部位、或いは、ナフチルスルフィド結合などを有していてもよいが、他の構造部位との合計モル数に対して、3モル%以下が好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
【0028】
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、300℃で測定した溶融粘度(V6)が5〜3,000〔Pa・s〕の範囲であることが好ましく、さらに流動性および機械的強度のバランスが良好となることから20〜1000〔Pa・s〕の範囲がより好ましい。また、ポリアリーレンスルフィド樹脂の非ニュートン指数は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、0.90〜2.00の範囲であることが好ましい。リニア型ポリアリーレンスルフィド樹脂を用いる場合には、非ニュートン指数が0.90〜1.20の範囲であることが好ましく、さらに0.95〜1.15の範囲であることがより好ましく、特に0.95〜1.10であることが特に好ましい。このようなポリアリーレンスルフィド樹脂は機械的物性、流動性、耐磨耗性に優れる。ただし、非ニュートン指数(N値)は、キャピログラフを用いて300℃、オリフィス長(L)とオリフィス径(D)の比、L/D=40の条件下で、剪断速度及び剪断応力を測定し、下記式を用いて算出した値である。
【0029】
【数1】
[ただし、SRは剪断速度(秒
−1)、SSは剪断応力(ダイン/cm
2)、そしてKは定数を示す。]N値は1に近いほどPPSは線状に近い構造であり、N値が高いほど分岐が進んだ構造であることを示す。
【0030】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、特に限定されないが、例えば1)ジハロゲノ芳香族化合物と、更に必要ならばその他の共重合成分とを、硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、2)p−クロルチオフェノールと、更に必要ならばその他の共重合成分とを自己縮合させる方法、3)有機極性溶媒中で、スルフィド化剤とジハロゲノ芳香族化合物と、更に必要ならばその他の共重合成分とを反応させる方法、4)ジヨード芳香族化合物と単体硫黄と必要に応じて重合禁止剤とを、重合触媒の存在下で溶融重合する方法等が挙げられる。これらの方法のなかでも、3)の方法が汎用的であり好ましい。反応の際に、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリを添加しても良い。上記3)方法のなかでも、加熱した有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物を含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、有機極性溶媒中でジハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールすることによりPAS樹脂を製造する方法(特開平07−228699号公報参照。)や、固形のアルカリ金属硫化物及び非プロトン性極性有機溶媒の存在下でポリハロ芳香族化合物、アルカリ金属水硫化物及び有機酸アルカリ金属塩を、硫黄源1モルに対して0.01〜0.9モルの有機酸アルカリ金属塩および反応系内の水分量を非プロトン性極性有機溶媒1モルに対して0.02モルの範囲にコントロールしながら反応させる方法(WO2010/058713号パンフレット参照。)で得られるものが特に好ましい。
【0031】
本発明の微多孔膜において、前記熱可塑性樹脂は針状構造を有し、微多孔膜に対してより優れた耐熱収縮性を付与可能であることから特にアスペクト比が1.1〜100の範囲であることが好ましく、1.5〜50の範囲であることがより好ましく、さらに2〜30の範囲のものであるものが特に好ましい。さらに、針状構造を有する熱可塑性樹脂は、耐熱収縮性が優れるだけでなく、樹脂組成物中の当該熱可塑性樹脂の分散性も良好となるため、長辺および短辺のうち、短辺の長さが10〜5000nmの範囲であることが好ましく、50〜2000nmの範囲であることがより好ましく、さらに80〜500nmの範囲であることが特に好ましい。
【0032】
なお、本発明において熱可塑性樹脂の構造は、走査型電子顕微鏡写真の画像解析結果をもとにしていることから、実際には、針状構造だけでなく、板状構造や棒状構造のものも含まれており、本発明においてはこれらも針状構造に含まれるものとする。
【0033】
・ポリオレフィン
本発明の微多孔膜に用いるポリオレフィンとしてはその種類に限定はなく、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテン等のモノマーを原料として重合して得られるホモ重合体、共重合体または多段重合体等が挙げられ、また、2種以上の異なるホモ重合体、共重合体または多段重合体を混合して用いることもできる。
【0034】
例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレンを用いる場合、その質量平均分子量は5×10
5 以上、15×10
6以下の範囲であるのが好ましい。ポリエチレンの種類としては、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンが挙げられる。中でも超高分子量ポリエチレンが好ましい。超高分子量ポリエチレンの質量平均分子量は1×10
6 〜15×10
6 であるのが好ましく、1×10
6 〜5×10
6であるのがより好ましい。質量平均分子量を15×10
6以下にすることにより、溶融押出を容易にすることができる。また、質量平均分子量が5×10
5 以上のポリエチレンに、質量平均分子量1×10
4 以上 〜5×10
5 未満のポリエチレン、質量平均分子量1×10
4 〜4×10
6 のポリプロピレン、質量平均分子量1×10
4 〜4×10
6 のポリブテン−1、質量平均分子量1×10
3 以上 〜1×10
4未満のポリエチレンワックス、及び質量平均分子量1×10
4 〜4×10
6 のエチレン・α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも一種を混合することも好ましい。
【0035】
ポリオレフィンとしてポリプロピレンを用いる場合、その質量平均分子量に特に制限はないが、1×10
4 〜4×10
6 の範囲であるものが好ましい。
【0036】
ポリオレフィン、特に質量平均分子量が5×10
5 以上のポリエチレンと伴にエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合、α−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が好適である。
【0037】
これらのうち本発明に用いるポリオレフィン(b)としては、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、またはポリプロピレンが好ましく、さらに孔形成剤(d1)を用いて微多孔質膜を製造する場合には高密度ポリエチレンが、またβ晶核剤(d2)を用いて微多孔質膜を製造する場合にはポリプロピレンがより好ましい。
【0038】
本発明の微多孔膜において、前記熱可塑性樹脂とポリオレフィンとの組成比率は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、前記熱可塑性樹脂とポリオレフィンとの合計質量に対し、前記熱可塑性樹脂が1〜73質量%の範囲で、かつポリオレフィンが99〜27質量%の範囲であることが好ましく、さらに前記熱可塑性樹脂が10〜60質量%の範囲で、かつポリオレフィンが90〜40質量%の範囲であることがより好ましい。当該範囲で、ポリオレフィンに対する熱可塑性樹脂の分散性が良好なものとなる。
【0039】
・相溶化剤
本発明は、必要に応じて相溶化剤を使用することができ、これによりポリオレフィンと熱可塑性樹脂の相溶性を向上させることができ好ましい。相溶化剤としては前記熱可塑性樹脂の末端と反応性を有する官能基を有する熱可塑性エラストマーが好ましい。さらに、融点が300℃以下であり、室温でゴム弾性を有する熱可塑性エラストマーがより好ましい。中でも、耐熱性、混合の容易さの点で、ガラス転移点が−40℃以下の熱可塑性エラストマーが低温でもゴム弾性を有するため好ましい。前記ガラス転移点は、低いほど好ましい傾向にあるものの、通常、−180〜−40℃の範囲のものが好ましく、−150〜−40℃の範囲のものが特に好ましい。
【0040】
本発明に用いる前記熱可塑性エラストマーの具体例としては、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、酸無水物基及びエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する熱可塑性エラストマーであることが好ましく、これらの中でもエポキシ基あるいは酸無水物基、カルボキシル基、エステル基等のカルボン酸誘導体に起因する官能基を有するものが特に好ましい。これらの官能基を有する熱可塑性エラストマーは、特に熱可塑性樹脂としてポリアリーレンスルフィド樹脂を用いた場合、該熱可塑性樹脂とポリオレフィン双方との親和性が良好となるため好適に使用できる。
【0041】
本発明に用いる前記熱可塑性エラストマーは、1種または複数種類のα−オレフィン類と前記官能基を有するビニル重合性化合物とを共重合させて得られる。前記α−オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素原子数2〜8のα−オレフィン類などが挙げられる。前記官能基を有するビニル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のα,β−不飽和カルボン酸類及びそのアルキルエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他の炭素原子数4〜10の不飽和ジカルボン酸類とそのモノ及びジエステル類、その酸無水物等のα、β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、その分子内にエポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、ビニル基、酸無水基及びエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン−プロピレン共重合体あるいはエチレン−ブテン共重合体が好ましく、カルボキシル基を有するエチレン−プロピレン共重合体あるいはエチレン−ブテン共重合体がさらに好ましい。これらの熱可塑性エラストマー(c1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0043】
本発明において、相溶化剤の使用する場合、前記熱可塑性樹脂とポリレフィンと相溶化剤との組成比率は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、前記熱可塑性樹脂とポリレフィンと相溶化剤との合計質量に対し、前記熱可塑性樹脂とポリレフィンの合計質量が97〜90質量%の範囲であり、かつ相溶化剤が3〜10質量%の範囲であることが好ましく、当該範囲であれば、ポリオレフィン中に熱可塑性樹脂を高濃度(例えば40〜73質量%)で含有させた場合であっても、ポリオレフィンに対する熱可塑性樹脂の相溶性、分散性が良好なものとなるため好ましい。
【0044】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、前記熱可塑性樹脂とポリレフィンと相溶化剤の他に滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤等の公知慣用の添加剤を適宜配合することもできる。特に、本発明の微多孔膜はその製造工程において、熱可塑性樹脂の融点以上で溶融混練することから、ポリオレフィンの焼き付きを防ぐために酸化防止剤をポリオレフィン100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0045】
本発明の微多孔膜は、例えば、
(製法1)融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(以下、製法1および製法2において 融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(a) と記す)とポリオレフィン(以下、製法1および製法2において ポリオレフィン(b) と記す)とを、先端にダイを取り付けた押出機内で前記熱可塑性樹脂(a)の融点以上の温度で溶融混練して、樹脂組成物(以下、製法1において 樹脂組成物(α) 記す)を得る工程(1)、得られた樹脂組成物(α)と孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)とを前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度で溶融混練して、溶融混練物(β)を得る工程(2)、前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度の溶融混練物(β)をシート化して、針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含むシート(γ)を得る工程(3)、得られたシート(γ)を多孔質化する工程(4)、を有する微多孔膜の製造方法によって、または、
(製法2)融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)とを、先端にダイを取り付けた押出機内で前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度で溶融混練した後、ダイ穴径/ストランド径が1.1以上となるよう引き取りながらストランドを形成した後、切断し針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含む樹脂組成物(以下、製法2において 樹脂組成物(α’) と記す)を得る工程(1’)、得られた樹脂組成物(α’)と孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)とを前記ポリオレフィン(b)の融点以上の温度且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度で混練して、混練物(以下、製法2において 混練物(β’) と記す)を得る工程(2’)、前記ポリオレフィン(b)の融点以上の温度且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度の混練物(β’)をシート化して針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含むシート(γ)を得る工程(3’)、得られたシート(γ)を多孔質化する工程(4)、を有する微多孔膜の製造方法によって得られる。
【0046】
(製法1)
工程(1)
本発明は、融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)とを、前記熱可塑性樹脂(a)の融点以上の温度で溶融混練して、樹脂組成物(α)を得る工程(1)、を有する。
【0047】
工程(1)は、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)とを、更に必要に応じてその他の配合成分とを、均一に分散させる必要があるため、前記熱可塑性樹脂の融点+10℃以上で、より好ましくは設定温度を融点+10℃〜融点+100℃の範囲、さらに好ましくは融点+20〜融点+50℃の範囲の温度条件下で溶融混練することが好ましい。
【0048】
工程(1)において、溶融混練に用いる装置は特に限定されないが、先端にダイを取り付けた押出機内で行うことが好ましい。該溶融混練は、前記配合成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.02〜2.0(kg/hr/rpm)の範囲、好ましくは0.05〜0.8(kg/hr/rpm)の範囲、さらに好ましくは0.07〜0.2(kg/hr/rpm)の範囲となる条件下に行う。これにより、ポリオレフィン(b)をマトリックスとして前記熱可塑性樹脂(a)を均一に微分散させた海島構造のモルフォロジーを形成させることができ、その結果、シート化工程における膜厚が均一となる。
【0049】
工程(1)において、溶融混練後、ダイから吐出させた樹脂組成物(α)は、公知の方法でペレット状、粉末状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム又はシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形することができるが、貯蔵や運搬等の取り扱い性の点から、また、工程(2)における混練時に容易に均一分散可能である点からも、ペレット状であることが好ましい。
【0050】
工程(1)において、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)との仕込比率は、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)との合計質量(a+b)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)が1〜73質量%の範囲であり、かつポリオレフィン(b)が99〜27質量%の範囲であることが好ましく、さらに前記熱可塑性樹脂(a)が10〜60質量%の範囲であり、かつポリオレフィン(b)が90〜40質量%の範囲であることがより好ましい。当該範囲で、ポリオレフィン(b)に対する熱可塑性樹脂(a)の分散性が良好なものとなるため好ましい。
【0051】
また、工程(1)において、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)に、さらに相溶化剤(c)を加えて溶融混練する場合、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)と相溶化剤(c)との仕込比率は、前記熱可塑性樹脂(a)とポリレフィン(b)と相溶化剤(c)との合計質量(a+b+c)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)とポリレフィン(b)の合計質量(a+b)が97〜90質量%の範囲、かつ相溶化剤(c)が3〜10質量%の範囲であることが好ましい。当該範囲であれば、ポリオレフィン(b)中に熱可塑性樹脂(a)を高濃度(例えば40〜73質量%)で含有させた場合であっても、ポリオレフィン(b)に対する熱可塑性樹脂(a)の相溶性、分散性が良好なものとなるため好ましい。
【0052】
なお、工程(1)において、その他の配合成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(a)〜(c)の他に滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤等の公知慣用の添加剤を適宜配合することもできる。特に、工程(1)では、熱可塑性樹脂(a)の融点以上で溶融混練することから、ポリオレフィンの焼き付きを防ぐために酸化防止剤をポリオレフィン(b)100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0053】
工程(2)
本発明は、得られた樹脂組成物(α)と孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)とを前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度で溶融混練して、溶融混練物(β)を得る工程(2)、を有する。
【0054】
・孔形成剤(d1)
孔形成剤(d1)としては、公知慣用のものを使用できるが、後述する該シート(γ)を多孔質化する工程(4)において使用する溶媒に対して溶解するものであれば特に限定されることなく、例えば、炭酸カルシウムの微粒子が好ましいが、硫酸マグネシウムの微粒子、酸化カルシウムの微粒子、水酸化カルシウムの微粒子、シリカの微粒子などの無機微粒子や、室温で固体または液体の溶剤を用いることもできる。
【0055】
室温で液体の溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられ、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いることが好ましい。
【0056】
また、室温で固体の溶剤としては、加熱溶融混練状態ではポリオレフィンと混和状態になるが、室温では固体状の溶剤が挙げられ、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等を使用することができる。なお固体溶剤のみを使用すると、延伸むら等が発生する恐れがあるため、液体溶剤を併用することが好ましい。
【0057】
工程(2)において、孔形成剤(d1)を使用する際、前記樹脂組成物(α)と孔形成剤(d1)との仕込比率は、前記樹脂組成物(α)と孔形成剤(d1)との合計質量(α+d1)に対し、前記樹脂組成物(α)が30〜80質量%の範囲、かつ孔形成剤(d1)が70〜20質量%の範囲であることが好ましく、さらに前記樹脂組成物(α)が50〜70質量%、孔形成剤(d1)が50〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0058】
孔形成剤(d1)は工程(2)における溶融混練開始前に添加しても、溶融混練中に押出機の途中から添加してもよいが、溶融混練開始前に添加して予め溶液化するのが好ましい。溶融混練にあたってはポリオレフィンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ましい。
【0059】
・β晶核剤(d2)
本発明で用いるβ晶核剤としては、以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
【0060】
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸と周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩とからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。このようなβ晶核剤の市販品としては新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
【0061】
工程(2)においてβ晶核剤(d2)を使用する際、樹脂組成物(α)中のβ晶核剤(d2)の仕込比率は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されるものではないが、シートや多孔質膜の強度・靭性を考慮すると、樹脂組成物(α)中のポリオレフィン(b)100質量部に対して、0.0001〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.001〜5質量部の範囲がより好ましく、さらに0.01〜1質量部の範囲が最も好ましい。0.0001質量部以上であれば、β晶を生成・成長させることができ、セパレータとした際にも十分なβ活性が確保でき、所望の透気性能が得られるため好ましく、一方、10質量部以下であれば、β晶核剤のブリードを抑制できるため好ましい。
【0062】
・ポリオレフィン(e)
工程(2)において、工程(1)で得られた樹脂組成物(α)に対し、さらにポリオレフィン(以下、ポリオレフィン(e)と記す)を配合し、希釈することもできる。ポリオレフィン(e)としてはその種類に限定はなく、前記ポリオレフィン(b)と同様のものを用いることができる。
【0063】
工程(2)において、ポリオレフィン(e)を使用する場合、その仕込比率は、前記樹脂組成物(α)中に含まれる前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)とポリオレフィン(e)との合計質量(a+b+e)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)が1〜73質量%の範囲、かつ前記ポリオレフィン(b)と前記ポリオレフィン(e)の合計質量(b+e)が99〜27質量部の範囲であることが好ましく、前記熱可塑性樹脂(a)が5〜60質量%の範囲、前記合計質量(b+e)が95〜40質量%の範囲であることがより好ましく、前記熱可塑性樹脂(a)が20〜40質量%に対し、前記合計質量が(b+e)が80〜60質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0064】
また、工程(2)おいて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(α)、(d1)又は(d2)、および(e)の他に滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核材、充填剤等の公知慣用の添加剤を適宜配合することもできる。
【0065】
工程(2)において、溶融混練温度は前記熱可塑性樹脂の融点+10℃以上で、より好ましくは設定温度を融点+10〜融点+100℃の範囲、さらに好ましくは融点+20〜融点+50℃の範囲で行う。
【0066】
工程(2)において、溶融混練の方法は特に限定されないが、押出機中で均一に混練することにより行うことが好ましく、さらに続く、工程(3)を連続して行うことができることから、先端にTダイなどシート用ダイを取り付けた押出機内で行うことがより好ましい。
【0067】
工程(2)における溶融混練は、前記配合成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が、好ましくは0.02〜2.0(kg/hr/rpm)の範囲、より好ましくは0.05〜0.8(kg/hr/rpm)の範囲、さらに好ましくは0.07〜0.2(kg/hr/rpm)の範囲となる条件下に行う。これにより、ポリオレフィン(b)およびポリオレフィン(e)をマトリックスとして前記熱可塑性樹脂(a)を、さらに孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)を添加した場合には孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)が均一に微分散させた海島構造のモルフォロジーを形成させることができ、その結果、シート化工程における膜厚が均一となるだけでなく、孔分布が均質でかつ孔径が微細な微多孔膜を形成することができる。
【0068】
工程(2)において、溶融混練後、溶融混練物(β)は、ペレット状、粉末状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム又はシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形するなど、一旦冷却してペレット化することもできるが、生産性の観点から、先端にTダイを取り付けた押出機を用いて溶融混練することにより、直接に又は別の押出機を介して、続く工程(3)を連続して行うことが好ましい。
【0069】
工程(3)
本発明は、前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上に加熱した溶融混練物(β)をシート化してシート(γ)を得る工程(3)、を有する。
【0070】
工程(3)において、溶融混練した溶融混練物(β)を一旦冷却してペレット化等した後、再度押出機を介して、或いは直接に又は別の押出機を介してダイから押し出し、キャストロール又はロール引取機等のロールで、ダイのリップ部のギャップ(リップ幅)/シート厚みが1.1〜40の範囲となるよう引き取ることが好ましく、さらに2〜20の範囲となるよう引き取ることがより好ましい。ダイとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイを用いることが好ましいが、二重円筒状の中空状ダイ、インフレーションダイ等も用いることができる。シート用ダイの場合、ダイのリップ部のギャップ(リップ幅)は通常0.1〜5mmであることが好ましく、押し出し時にはこれを前記熱可塑性樹脂(a)の融点+10℃以上の温度、より好ましくは設定温度を融点+10〜融点+100℃の範囲、さらに好ましくは融点+20〜50℃の範囲の温度に加熱する。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜50(m/分)の範囲であるのが好ましい。
【0071】
このようにしてダイから押し出した溶融混練物(β)を冷却することによりシート(γ)を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。また25℃以下まで冷却するのが好ましい。このようにしてポリオレフィンからなる相がゲル化するとともに、熱可塑性樹脂(a)がポリオレフィン相に分散した相分離構造を固定化することができる。冷却速度が50℃/分未満では結晶化度が上昇し、延伸に適したシートが得られにくい傾向となる。冷却方法としては冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等を用いることができる。ロールで引き取る時のドラフト比((ロールの引き取り速度)/(密度から換算されるダイリップから流出する樹脂の流速))は、透気性や成形性の観点から好ましくは1〜600倍、より好ましくは1〜200倍、更に好ましくは1〜100倍である。
【0072】
なお、その際、孔形成剤(d1)を用いる場合は25℃以下まで冷却するのが好ましい。一方、β晶核剤(d2)を用いる場合は、ポリオレフィン(b)のβ晶の比率を20〜100%の範囲、好ましくは50〜100%の範囲に調整するため、80〜150℃の範囲に冷却することが好ましく、さらに90〜140℃の範囲に冷却することが好ましい。ただし、当該β晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリオレフィン(b)のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100(%)で計算される比率(%)を言うものとする。
【0073】
工程(4)
本発明は、工程(3)で得られたシート(γ)を多孔質化する工程(4)、を有する。
【0074】
工程(4)の多孔質化工程は、孔形成剤(d1)を用いる場合と、β晶核剤(d2)を用いる場合に大別される。始めに、孔形成剤(d1)を用いる場合について説明する。
【0075】
孔形成剤(d1)を用いる場合、工程(4)は酸性水溶液を用いて、孔形成剤(d1)を溶出することによって微多孔質を形成する、いわゆる湿式法と呼ばれる微多孔質膜の製造工程であり、具体的には、該シート(γ)を延伸した後に前記孔形成剤(d1)を除去する工程(4a)、前記シート(γ)から前記孔形成剤(d1)を除去した後に延伸する工程(4b)、または前記シート(γ)を延伸した後に前記孔形成剤(d1)を除去しさらに延伸する工程(4c)などが挙げられる。
【0076】
工程(4a)〜(4c)のいずれの方法においても、延伸は、シート(γ)を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また二軸延伸の場合は、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、特に逐次二軸延伸が好ましい。延伸により機械的強度が向上する。
【0077】
該延伸倍率はシート(γ)の厚みによって異なるが、一軸延伸を行う場合は2倍以上とするのが好ましく、3〜30倍とするのがより好ましい。二軸延伸ではいずれの方向でも少なくとも2倍以上とし、面倍率で4倍以上とするのが好ましく、面倍率で6倍以上とするのがより好ましい。面倍率で4倍以上とすることにより、突刺強度を向上させることができる。一方、面倍率を100倍超とすると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる傾向となる。
【0078】
該延伸温度は、ポリオレフィンがホモポリマーの場合、その融点+10℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度から結晶融点未満の範囲にするのがより好ましい。延伸温度が融点+10℃を超えるとポリオレフィンが溶融し、延伸による分子鎖の配向ができない。また延伸温度が結晶分散温度未満ではポリオレフィンの軟化が不十分で、延伸において破膜しやすく、高倍率の延伸ができない。但し逐次延伸又は多段延伸を行う場合は、一次延伸を結晶分散温度未満で行ってもよい。ここで結晶分散温度とは、ASTM D 4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求められる値を言う。ポリエチレンの結晶分散温度は、一般的に90℃である。
【0079】
ポリオレフィンがポリエチレンを含む場合、延伸温度は、係るポリエチレンの結晶分散温度以上〜結晶融点+10℃以下の範囲にするのが好ましい。ポリオレフィンとしてポリエチレン又はそれを含む組成物を用いる場合、本発明では延伸温度を通常は100〜130℃とすることが好ましく、110〜120℃とすることがより好ましい。
【0080】
所望の物性に応じて、膜厚方向に温度分布を設けて延伸したり、比較的低温で一次延伸した後さらに高温で二次延伸する逐次延伸又は多段延伸をしたりすることができる。膜厚方向に温度分布を設けて延伸することにより一般的に機械的強度に優れた微多孔膜が得られる。その方法としては、例えば特開平7−188440号に開示の方法を適用することができる。
【0081】
孔形成剤(d1)の除去には、孔形成剤(d1)を溶解することができる溶媒(以下、除去溶剤という)を用いる。該除去溶剤を用いて均一に微分散された孔形成剤(d1)を除去することによって、多孔質の膜が得られる。除去溶剤の具体例としては、例えば、塩酸などの酸性水溶液、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒が挙げられる。また除去溶媒としては、上記の他に、特開2002−256099号に開示されている、25℃における表面張力が24mN/m以下になる溶媒を用いることができる。このような表面張力を有する溶媒を用いることにより、孔形成剤(d1)を除去した後の乾燥時に微多孔内部で生じる気−液界面の表面張力によって起る網状組織の収縮緻密化を抑制することができ、その結果微多孔膜の空孔率及び透過性が一層向上する。
【0082】
孔形成剤(d1)の除去方法は、延伸後の膜又はシート(γ)を除去溶媒に浸漬する方法、延伸後の膜又はシート(γ)に除去溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。除去溶媒は、シート(γ)100質量部に対し300 〜30000質量部使用するのが好ましい。除去溶媒による除去処理は、残留した孔形成剤がその添加量に対して1質量%未満になるまで行うのが好ましい。
【0083】
一方、β晶核剤(d2)を用いる場合、工程(4)は、β晶を有するポリオレフィン、特に好ましくはポリプロピレン系樹脂を含むシートを延伸処理をすることによって微多孔質を形成する、いわゆる乾式法と呼ばれる微多孔質膜の製造工程であり、例えば、該シート(γ)を延伸する工程(4d)等が挙げられる。
【0084】
工程(4d)において、延伸は、シート(γ)を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また二軸延伸の場合は、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、特に逐次二軸延伸が好ましい。延伸により機械的強度が向上する。
【0085】
該延伸倍率はシート(γ)の厚みによって異なるが、一軸延伸を行う場合は2倍以上とするのが好ましく、3〜30倍とするのがより好ましい。二軸延伸ではいずれの方向でも少なくとも2倍以上とし、面倍率で4倍以上とするのが好ましく、面倍率で6倍以上とするのがより好ましい。面倍率で4倍以上とすることにより、突刺強度を向上させることができる。一方、面倍率を100倍超とすると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる傾向となる。
β晶核剤(d2)を用いる場合において、延伸工程においては、縦方向又は横方向に一軸延伸してもよいし、二軸延伸であってもよい。また、二軸延伸を行う場合は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。本発明のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを作製する場合には、各延伸工程で延伸条件を選択でき、かつ多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時変える必要があるが、縦延伸での延伸温度は概ね0〜130℃が好ましく、より好ましくは10〜120℃、更に好ましくは20〜110℃の範囲で制御される。また、縦延伸倍率は2〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
【0086】
一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、好ましい横延伸倍率は2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
【0087】
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がさらに好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
【0088】
・その他の処理工程
工程(4)を経て得られた膜は、乾燥処理、熱処理、架橋処理または親水化処理などといった公知の後処理工程を施すことができる。
乾燥処理としては、加熱乾燥法又は風乾法等により乾燥する方法を挙げることができる。乾燥温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度以下の温度であるのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度であるのが好ましい。
【0089】
該乾燥処理により、微多孔膜中に残存する前記除去溶媒の含有量を5質量%以下にすることが好ましく(乾燥後の膜質量を100質量%とする)、3質量%以下にするのがより好ましい。乾燥が不十分で膜中に前記除去溶媒が多量に残存していると、後の熱処理で空孔率が低下し、透過性が悪化するので好ましくない。
【0090】
また、本発明においては後処理として熱処理を行うことが好ましい。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラ層が均一化される。熱処理方法としては、熱延伸処理、熱固定処理又は熱収縮処理のいずれの方法を用いてもよく、これらは微多孔膜に要求される物性に応じて適宜選択される。これらの熱処理は、微多孔膜のポリオレフィンの結晶化温度以上、融点以下で行うことが好ましく、さらに結晶化温度と融点の中間温度で行うことがより好ましい。
【0091】
熱延伸処理は、通常用いられるテンター方式、ロール方式又は圧延方式により行い、少なくとも一方向に延伸倍率1.01 〜2.0倍の範囲で行うのが好ましく、1.01 〜1.5倍の範囲で行うのがより好ましい。
【0092】
熱固定処理は、テンター方式、ロール方式又は圧延方式により行う。また熱収縮処理は、テンター方式、ロール方式若しくは圧延方式により行うか、又はベルトコンベア若しくはフローティングを用いて行ってもよい。なお熱収縮処理は、少なくとも一方向に50%以下の範囲で行うのが好ましく、30%以下の範囲で行うのがより好ましい。
【0093】
なお上述の熱延伸処理、熱固定処理及び熱収縮処理を多数組み合せて行ってもよい。特に熱固定処理後に熱延伸処理を行うと、得られる微多孔膜の透過性が向上するとともに、孔径が拡大する。また熱延伸処理後に熱収縮処理を行うと、低収縮率で高強度の微多孔膜が得られるため好ましい。
【0094】
さらに、架橋処理としては電離放射線としてはα線、β線、γ線、電子線等が用いられ、電子線量0.1 〜100 Mrad、加速電圧100 〜300 kVにて電離放射し、微多孔膜を架橋することができる。これによりメルトダウン温度を向上させることができる。
【0095】
また、親水化処理としては、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電処理等を行い、微多孔膜を親水化することができる。なおモノマーグラフト処理は電離放射後に行うのが好ましい。
【0096】
親水化処理として界面活性剤を使用する界面活性剤処理を行う場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又は両イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、ノニオン系界面活性剤を使用するのが好ましい。界面活性剤を使用する場合、界面活性剤を水溶液にするか又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールの溶液にして、ディッピングするか、又はドクターブレードを用いる方法により親水化する。親水化処理を行った微多孔膜は次いで乾燥する。このとき透過性を向上させるため、微多孔膜の融点以下の温度で収縮を防止しながら熱処理するのが好ましい。収縮を防止しながら熱処理する方法としては、例えば延伸しながら熱処理する方法が挙げられる。
【0097】
さらに、本発明の微多孔膜は、コロナ処理機、プラズマ処理機、オゾン処理機、火炎処理機などの公知の表面処理を施すことも可能である。
【0098】
(製法2)
工程(1’)
本発明は、融点が220℃以上の熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)とを、先端にダイを取り付けた押出機内で前記熱可塑性樹脂(a)の融点以上の温度で溶融混練した後、ダイ穴径/ストランド径が1.1以上となるよう引き取りながらストランドを形成した後、切断し針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含む樹脂組成物(α’)を得る工程(1’)、を有する。
【0099】
工程(1’)は、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)とを、更に必要に応じてその他の配合成分とを、均一に分散させる必要があるため、前記熱可塑性樹脂の融点+10℃以上で、より好ましくは設定温度を融点+10〜融点+100℃の範囲、さらに好ましくは融点+20〜融点+50℃の範囲の温度条件下で溶融混練することが好ましい。
【0100】
工程(1’)において、溶融混練に用いる装置は、先端にダイを取り付けた押出機内で行うことが好ましい。該溶融混練は、前記配合成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が、好ましくは0.02〜2.0(kg/hr/rpm)の範囲、より好ましくは0.05〜0.8(kg/hr/rpm)の範囲、さらに好ましくは0.07〜0.2(kg/hr/rpm)の範囲となる条件下に行う。これにより、ポリオレフィン(b)をマトリックスとして前記熱可塑性樹脂(a)を均一に微分散させた海島構造のモルフォロジーを形成させることができ、その結果、シート化工程における膜厚が均一となる。
【0101】
工程(1’)において、溶融混練後、ダイ穴径/ストランド径が、好ましくは1.1以上の範囲、より好ましくは1.1〜3の範囲、さらに好ましくは1.5〜2の範囲となるよう引き取りながらストランドを形成した後、公知の方法で切断して、ペレット状、粉末状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム又はシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形することにより、針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含む樹脂組成物(α’)を得ることができる。前記形状は貯蔵や運搬等の取り扱い性の点から、また、工程(2’)における混練時に容易に均一分散可能である点からも、ペレット状であることが好ましい。なお、本発明においてダイ穴径とはダイの吐出ノズルの径を指すものとする。
【0102】
工程(1’)において、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)との仕込比率は、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)との合計質量(a+b)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)が1〜73質量%の範囲、かつポリオレフィン(b)が99〜27質量%の範囲であることが好ましく、さらに前記熱可塑性樹脂(a)が10〜60質量%の範囲であり、かつポリオレフィン(b)が90〜40質量%の範囲であることがより好ましい。当該範囲で、ポリオレフィン(b)に対する熱可塑性樹脂(a)の分散性が良好なものとなるため好ましい。
【0103】
また、工程(1’)において、前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)に、さらに相溶化剤(c)を加えて溶融混練する場合において、相溶化剤(c)の仕込割合は、前記熱可塑性樹脂(a)とポリレフィン(b)と相溶化剤(c)との合計質量(a+b+c)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)とポリレフィン(b)の合計質量(a+b)が97〜90質量%の範囲、かつ相溶化剤(c)が3〜10質量%の範囲であることが好ましい。当該範囲であれば、ポリオレフィン(b)中に熱可塑性樹脂(a)を高濃度(例えば40〜73質量%)で含有させた場合であっても、ポリオレフィン(b)に対する熱可塑性樹脂(a)の相溶性、分散性が良好なものとなるため好ましい。
【0104】
なお、工程(1’)において、その他の配合成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(a)〜(c)の他に滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、充填剤等の公知慣用の添加剤を適宜配合することができる。特に、工程(1’)では、熱可塑性樹脂(a)の融点以上で溶融混練することから、ポリオレフィンの焼き付きを防ぐために酸化防止剤をポリオレフィン(b)100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0105】
工程(2’)
本発明は、工程(1’)で得られた樹脂組成物(α’)と孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)とを前記ポリオレフィン(b)の融点以上の温度且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度で、溶融したポリオレフィン(b)と針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)とを混練して、混練物(β’)を得る工程(2’)、を有する。
【0106】
・孔形成剤
孔形成剤(d1)としては、前記製法1で用いたものと同様のものを用いることができる。
【0107】
工程(2’)において、孔形成剤(d1)を使用する際、前記樹脂組成物(α’)と孔形成剤(d1)との仕込比率は、前記樹脂組成物(α’)と孔形成剤(d1)との合計質量(α’+d1)に対し、前記樹脂組成物(α’)が30〜80質量%の範囲であり、かつ孔形成剤(d1)が70〜20質量%の範囲であることが好ましく、さらに前記樹脂組成物(α’)が50〜70質量%の範囲であり、かつ、孔形成剤(d1)が50〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0108】
孔形成剤(d1)は工程(2’)における混練開始前に添加しても、混練中に押出機の途中から添加してもよいが、混練開始前に添加して予め溶液化するのが好ましい。混練にあたってはポリオレフィンの酸化を防止するために酸化防止剤を添加するのが好ましい。
【0109】
・β晶核剤(d2)
本発明で用いるβ晶核剤としては、前記製法1で用いたものと同様のものを用いることができる。
【0110】
工程(2’)においてβ晶核剤(d2)を使用する際、樹脂組成物(α’)中のβ晶核剤(d2)の仕込比率は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されるものではないが、シートや多孔質膜の強度・靭性を考慮すると、樹脂組成物(α’)中のポリオレフィン(b)100質量部に対して、0.0001〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.001〜5質量部の範囲がより好ましく、さらに0.01〜1質量部の範囲が最も好ましい。0.0001質量部以上であれば、β晶を生成・成長させることができ、セパレータとした際にも十分なβ活性が確保でき、所望の透気性能が得られるため好ましく、一方、10質量部以下であれば、β晶核剤のブリードを抑制できるため好ましい。
【0111】
・ポリオレフィン(e)
工程(2’)において、工程(1’)で得られた樹脂組成物(α’)に対し、さらにポリオレフィン(e)を配合し、希釈することもできる。
【0112】
工程(2’)において、ポリオレフィン(e)を使用する場合、その仕込比率は、前記樹脂組成物(α’)中に含まれる前記熱可塑性樹脂(a)とポリオレフィン(b)とポリオレフィン(e)との合計質量(a+b+e)に対し、前記熱可塑性樹脂(a)が1〜73質量%の範囲、かつ前記ポリオレフィン(b)と前記ポリオレフィン(e)の合計質量(b+e)が99〜27質量部の範囲であることが好ましく、前記熱可塑性樹脂(a)が5〜60質量%の範囲、前記合計質量(b+e)が95〜40質量%の範囲であることがより好ましく、前記熱可塑性樹脂(a)が20〜40質量%に対し、前記合計質量が(b+e)が80〜60質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0113】
また、工程(2’)おいて、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(α’)、(d)および(e)の他に滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核材、充填剤等の公知慣用の添加剤を適宜配合することもできる。
【0114】
工程(2’)において、混練温度はポリオレフィン(b)の融点以上且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度で、溶融したポリオレフィン(b)と針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)とを混練すればよいが、ポリオレフィン(b)の融点プラス10℃以上から前記熱可塑性樹脂(a)の融点マイナス10℃以下の範囲内で行うことが好ましい。また、ポリオレフィン(e)を配合する場合には、ポリオレフィン(b)およびポリオレフィン(e)のいずれか高い方の融点以上であれば良いが、ポリオレフィン(b)およびポリオレフィン(e)のいずれか高い方の融点プラス10℃以上から前記熱可塑性樹脂(a)の融点マイナス10℃以下の範囲内で行うことが好ましい。
【0115】
工程(2’)において、混練の方法は特に限定されないが、押出機中で均一に混練することにより行うことが好ましく、さらに続く、工程(3)を連続して行うことができることから、先端にTダイなどシート用ダイを取り付けた押出機内で行うことがより好ましい。
【0116】
工程(2’)における混練は、前記配合成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が、好ましくは0.02〜2.0(kg/hr/rpm)の範囲、より好ましくは0.05〜0.8(kg/hr/rpm)の範囲、さらに好ましくは0.07〜0.2(kg/hr/rpm)の範囲となる条件下に行う。これにより、ポリオレフィン(b)およびポリオレフィン(e)をマトリックスとして前記熱可塑性樹脂(a)を、さらに孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)を添加した場合には孔形成剤(d1)又はβ晶核剤(d2)が均一に微分散させた海島構造のモルフォロジーを形成させることができ、その結果、シート化工程における膜厚が均一となるだけでなく、孔分布が均質でかつ孔径が微細な微多孔膜を形成することができる。
【0117】
工程(2’)において、溶融混練後、溶融混練物(β’)は、ペレット状、粉末状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム又はシート状、パイプ状、中空状、箱状等の形状に成形するなど、一旦冷却してペレット化することもできるが、生産性の観点から、先端にTダイを取り付けた押出機を用いて溶融混練することにより、直接に又は別の押出機を介して、続く工程(3’)を連続して行うことが好ましい。
【0118】
工程(3’)
本発明は、前記ポリオレフィン(b)の融点以上に加熱した混練物(β’)をシート化して、針状構造を有する熱可塑性樹脂(a)を含むシート(γ)を得る工程(3’)、を有する。
【0119】
溶融混練した溶融混練物(β’)を一旦冷却してペレット化等した後、再度押出機を介して、或いは直接に又は別の押出機を介してダイから押し出し、キャストロール又はロール引取機等のロールで引き取る。ダイとしては、通常は長方形の口金形状をしたシート用ダイを用いることが好ましいが、二重円筒状の中空状ダイ、インフレーションダイ等も用いることもできる。シート用ダイの場合、ダイのギャップは通常0.1〜5mmであることが好ましく、押出し時にはこれをポリオレフィン(b)の融点以上且つ前記熱可塑性樹脂(a)の融点以下の温度、より好ましくはポリオレフィン(b)の融点プラス10℃以上から前記熱可塑性樹脂(a)の融点マイナス10℃以下の範囲内で行うことが好ましい。また、ポリオレフィン(e)を配合する場合には、ポリオレフィン(b)およびポリオレフィン(e)のいずれか高い方の融点以上であれば良いが、ポリオレフィン(b)およびポリオレフィン(e)のいずれか高い方の融点プラス10℃以上から前記熱可塑性樹脂(a)の融点マイナス10℃以下の範囲内で行うことが好ましい。具体的には140〜250℃の範囲に加熱することが好ましい。加熱溶液の押し出し速度は0.2〜15(m/分)の範囲であるのが好ましい。
【0120】
このようにしてダイから押し出した溶融混練物(β’)を冷却することによりシート(γ)を形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。また25℃以下まで冷却するのが好ましい。このようにしてポリオレフィンからなる相がゲル化するとともに、熱可塑性樹脂(a)がポリオレフィン相に分散した相分離構造を固定化することができる。冷却速度が50℃/分未満では結晶化度が上昇し、延伸に適したシートが得られにくい。冷却方法としては冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法等を用いることができる。ロールで引き取る時のドラフト比((ロールの引き取り速度)/(密度から換算されるダイリップから流出する樹脂の流速))は、透気性や成形性の観点から好ましくは10〜600倍、より好ましく20〜500倍、更に好ましくは30〜400倍である。
【0121】
なお、その際、孔形成剤(d1)を用いる場合は25℃以下まで冷却するのが好ましい。一方、β晶核剤(d2)を用いる場合は、ポリオレフィン(b)のβ晶比率を20〜100%の範囲、好ましくは50〜100%の範囲に調整するため、80〜150℃の範囲に冷却することが好ましく、さらに90〜140℃の範囲に冷却することが好ましい。
なお、工程(4)およびその後のその他の処理工程は、製法1と同様に行うことができる。
【0122】
<微多孔膜>
本発明の微多孔膜は、上記の製法1および製法2いずれの場合も、熱可塑性樹脂(a)およびポリオレフィンを熱可塑性樹脂(a)の融点よりも10℃以上高い温度で溶融混練し、さらに溶融状態にあるポリオレフィンと熱可塑性樹脂(a)に応力を加えることによって熱可塑性樹脂(a)の針状化を図ることができる。本発明の微多孔膜は、ポリオレフィンをマトリックスとして針状構造の熱可塑性樹脂(a)が均一に分散している点に特徴を有するが、さらに、マトリックスと針状構造の熱可塑性樹脂(a)の界面が密着したモルフォロジーを形成させることが微多孔膜の熱収縮を抑制し、耐熱収縮性をより一層向上させることが可能となるため好ましい。
【0123】
本発明の好ましい実施態様による微多孔膜は、次の物性を有する。
(1)本発明の製造方法により得られた微多孔膜の厚さは特に制限はなく、その用途において求められる厚さ5〜200μmの範囲であればよいが、一般的には、5〜50μm、より好ましくは8〜40μm、更に好ましくは10〜30μmである。
(2)ガーレー透気度が50〜800s/100mlの範囲である。
(3)シャットダウン温度が、130〜150℃の範囲である。
このような微多孔膜を得るためには、微多孔を形成する前の中間材料であるシート材料として、
(4)200℃における熱収縮率が熱セット前で30%以下、熱セット後で25%以下である。
(5)機械的強度として、例えば、引張強さが20MPa以上である。
(6)シートの膜厚ムラが少なく、熱延伸時の破断を防ぐことができる。
【0124】
本発明の微多孔膜は、耐圧縮性、耐熱性及び透過性のバランスに優れているので、リチウムイオン二次電池などの非水電解質系二次電池に用いられるセパレータとして好適に使用でき、さらに非水電解質系二次電池用単層セパレータとしてより好適に使用できる。
【実施例】
【0125】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
以下の方法で、孔形成剤(d1)分を除いた組成分でシートを調製し、熱収縮率および機械的強度を以下の方法で測定した。これにより、微多孔膜には含まれない孔形成剤(d1)の種類や使用量による因子、さらには孔形成剤によって形成される微多孔の形状、密度といった構造的因子に因らない、樹脂組成物(α)自身の樹脂組成に関する性能を評価した。
【0126】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
下記表1〜3に示したポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂−1、熱可塑性エラストマーをタンブラーで均一に混合し、配合材料とした。その後、ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−30」)に前記配合材料を投入し、溶融混練(樹脂成分吐出量20kg/hr、スクリュー回転数350rpm、樹脂成分の吐出量0.057(kg/hr/rpm)の割合で、最大トルク60(A)、設定樹脂温度は下表1〜3「工程1:シリンダ温度」参照、ダイ穴径は3mm)し、続いて、ダイの穴径(ノズル径)とストランドの直径(すなわちストランド径)とが、表1〜3「ダイ穴径/ストランド径」となるよう引き取りながらストランドを調製し、切断して樹脂組成物のペレットを得た。なお、ストランド径は、切断後のペレットの直径をノギスを使用して測定した値である。
【0127】
続いて、前記工程で得られた樹脂組成物のペレットと表1〜3に記載したポリオレフィン樹脂−2とを、Tダイを取り付けたベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−30」)に投入し、溶融混練(樹脂成分吐出量15kg/hr、スクリュー回転数200rpm、樹脂成分の吐出量0.075(kg/hr/rpm)、最大トルク60(A)、設定樹脂温度は下表1〜3「工程2:シリンダ温度」参照)して溶融混練物を調製した。続いて、膜厚0.1mmとなるようTダイ押出成形を行い、80℃に温調された冷却ロールで、Tダイのリップ部のギャップ(リップ幅)とゲル状シートの膜厚とが、表1〜3「リップ幅/シート厚み」となるよう引き取りながら冷却して、ゲル状シートを作製した。なお、シートないし膜の厚みは膜厚計(株式会社ミツトヨ製デジマチックインジケータ 「ID−130M」)を使用して測定した。
【0128】
続いて、得られたゲル状シートを、60mm×60mmに切り出し、2軸延伸試験装置にセットし、室温から温度120℃まで加熱した後、シート化した際の流れ方向(MD)およびMDと垂直方向(TD)ともに3倍の延伸倍率となるよう同時二軸延伸し、延伸シートを得た。得られた延伸シートを、テンター延伸機で保持しながら125℃で10分間熱固定処理することにより、膜厚0.03mmのシート試験片を製造した。
【0129】
(引張強さ)
実施例1〜8および比較例1〜3で得られたシート試験片を、JIS−K7127「プラスチック−引張特性の試験方法」に準拠し、試験片タイプ5のダンベル形状に打ち抜き、引張強さを測定した。その結果を、表1〜3に示した。
【0130】
(熱収縮率)
実施例1〜8および比較例1〜3で得られたシート試験片を50mm×50mmに裁断し、JIS−K7133「プラスチック−フィルム及びシート−加熱寸法変化測定方法」に準拠した方法で熱収縮率を測定した。その結果を、表1〜3に示した。
【0131】
(PPS樹脂の形状確認およびアスペクト比の算出)
シート試験片を、シート化した際の流れ方向(MD)と垂直方向(TD)にクライオミクロトームにて切削した後、この切削断面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製SEM−EDS「JSM−6360A」)にて観察し、画像中の任意の10点を抽出して形状を観察した。その際、PPS樹脂粒子の最も長い部分を長辺とし、長辺の半分の距離において長辺と垂直方向の長さを短辺として、長辺/短辺の数平均をアスペクト比として算出した。
【0132】
【表1】
※表中の各組成成分の配合割合に関する数値は質量部を表す。以下同じ。
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
続いて、以下の方法で微多孔膜を作成し、膜厚、透気度およびシャットダウン温度を以下の方法で測定した。
【0136】
(実施例9〜16、比較例4〜6)
下記表4〜6に示したポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂−1、熱可塑性エラストマーをタンブラーで均一に混合し、配合材料とした。その後、ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−30」)に前記配合材料を投入し、溶融混練(樹脂成分吐出量20kg/hr、スクリュー回転数350rpm、樹脂成分の吐出量0.057(kg/hr/rpm)の割合で、最大トルク60(A)、設定樹脂温度は下表4〜6「工程1:シリンダ温度」参照、ダイ穴径は3mm)し、続いて表4〜6「ダイ穴径/ストランド径」となるよう引き取りながらストランドを調製し、切断して樹脂組成物のペレットを得た。
【0137】
続いて、前記工程で得られた樹脂組成物のペレットと表4〜6に記載したポリオレフィン樹脂−2と孔形成剤(流動パラフィンおよびフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)を等量ずつ配合したもの)とを、Tダイを取り付けたベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−30」)に投入し、溶融混練(樹脂成分吐出量15kg/hr、スクリュー回転数200rpm、樹脂成分の吐出量0.075(kg/hr/rpm)、最大トルク60(A)、設定樹脂温度は下表4〜6「工程2:シリンダ温度」参照)して溶融混練物を調製した。続いて、膜厚0.1mmとなるようTダイ押出成形を行い、80℃に温調された冷却ロールで表4〜6「リップ幅/シート厚み」となるよう引き取りながら冷却して、ゲル状シートを作製した。
【0138】
続いて、得られたゲル状シートを、60mm×60mmに切り出し、2軸延伸試験装置にセットし、室温から温度120℃まで加熱した後、シート化した際の流れ方向(MD)およびMDと垂直方向(TD)ともに3倍の延伸倍率となるよう同時二軸延伸し、延伸シートを得た。得られた延伸シートを20cm×20cmのアルミニウム製の枠に固定した後、25℃に温調された塩化メチレン(表面張力27.3mN/m(25℃)、沸点40.0℃)を含有する孔形成剤除去漕中に含浸し、100rpmで10分間揺動させながら、孔形成剤を除去し、さらに、室温で風乾した後、テンター延伸機で保持しながら125℃で10分間熱固定処理することにより、膜厚0.03mmの微多孔膜を製造した。
【0139】
(ガーレー透気度)
JIS−P8117「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に準拠し、微多孔膜のガーレー透気度を測定した。その結果を、表4〜6に記載した。
【0140】
(シャットダウン温度)
微多孔膜を所定の温度に設定した熱風乾燥機中に1分間さらし、ガーレー透気度が10000s/100ml以上になる温度をシャットダウン温度とした。その結果を、表4〜6に記載した。
【0141】
【表4】
※表中の各組成成分の配合割合に関する数値は質量部を表す。以下同じ。
【0142】
【表5】
【0143】
【表6】
【0144】
表1〜6中の各組成分は以下の通り。
PPS(a1) DIC株式会社製「MA−520」、リニア型、V6溶融粘度150〔Pa・s〕
PPS(a2) DIC株式会社製「MA−505」、リニア型、V6溶融粘度45〔Pa・s〕
ポリオレフィン(b1) プライムポリマー株式会社製「HI−ZEX 5305EP」、MI=0.8(g/10min)
ポリオレフィン(b2) プライムポリマー株式会社製「HI−ZEX 3600F」、MI=1.0(g/10min)
相溶化剤(c1) 住友化学株式会社製「ボンドファースト−E」(エチレン/グリシジルメタクリレート(88/12質量%)共重合体からなる熱可塑性エラストマー)
相溶化剤(c2) 日油株式会社製「モディパーA4100」(エチレン/グリシジルメタクリレート(85/15質量%)共重合体に対し、ポリスチレンを質量比で7:3の割合でグラフトさせた共重合体からなる熱可塑性エラストマー)
ポリオレフィン(e1) プライムポリマー株式会社製「HI−ZEX 5305EP」、MI=0.8(g/10min)