(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
過酸化水素を含む硫酸廃液を加熱する熱分解用加熱部を備えるとともに、前記熱分解用加熱部による加熱によって前記硫酸廃液に含まれる前記過酸化水素を熱分解し、前記熱分解によって発生する分解ガスを含むガスを前記硫酸廃液から分離する熱分解気液分離部と、
前記熱分解気液分離部で前記ガスの分離を行った前記硫酸廃液を加熱する蒸留用加熱部を備えるとともに、前記蒸留用加熱部で加熱された前記硫酸廃液を減圧下で蒸留する蒸留部と、を有し、
前記熱分解用加熱部は、過酸化水素を含む前記硫酸廃液を沸騰しない温度でかつ150℃以上の温度に加熱するものであり、
前記熱分解気液分離部は、減圧を行うことなく前記ガスの分離を行うものであり、
前記熱分解気液分離部は、前記硫酸廃液が滞留して気液分離が行われる熱分解気液分離部本体を有し、さらに該熱分解気液分離部本体内の前記硫酸廃液の一部を取り出して、加熱後、前記熱分解気液分離部本体内に戻す熱分解用加熱循環ラインを有し、
前記熱分解用加熱循環ラインに前記熱分解用加熱部が介設されていることを特徴とする硫酸廃液処理装置。
前記熱分解気液分離部のガス排出側に気液分離凝縮器が接続されており、該気液分離凝縮器の凝縮液を前記熱分解気液分離部に環流する凝縮液環流ラインを備えることを特徴とする請求項1に記載の硫酸廃液処理装置。
前記蒸留部は、前記硫酸廃液の蒸発が行われる蒸留部本体と、該蒸留部本体内を減圧する減圧部と、前記蒸留部本体で蒸発した蒸気を凝縮する凝縮部とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の硫酸廃液処理装置。
前記蒸留部により濃縮された硫酸廃液の顕熱によって前記熱分解気液分離部で加熱される前記硫酸廃液を予熱する予熱部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硫酸廃液処理装置。
前記熱分解気液分離部で分離されて該熱分解気液分離部から排出された前記ガスに空気を混合して前記ガスを希釈するガス希釈部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の硫酸廃液処理装置。
前記蒸留部を多段に備え、前段側の蒸留部で蒸留によって気相中の硫酸蒸気濃度が低減された前記硫酸廃液を、後段側の蒸留部で蒸留してさらに濃縮された前記硫酸廃液を得ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の硫酸廃液処理装置。
過酸化水素を含む硫酸廃液を沸騰させることなく、150℃以上の温度に加熱して前記硫酸廃液中の過酸化水素を熱分解しつつ、前記熱分解により生成された分解ガスを含むガスを減圧することなく前記硫酸廃液から気液分離する熱分解気液分離工程と、
前記ガスが分離された前記硫酸廃液を加熱して減圧下で蒸留し、前記硫酸廃液を濃縮する蒸留工程と、を有し、
前記熱分解気液分離工程では、前記硫酸廃液が滞留して気液分離が行われ、さらに該熱分解気液分離部本体内の前記硫酸廃液の一部を取り出して、加熱後、前記熱分解気液分離部本体内に戻すことを特徴とする硫酸廃液処理方法。
前記蒸留工程によって、前記硫酸廃液を硫酸濃度80質量%以上96質量%以下に濃縮することを特徴とする請求項9または10のいずれか1項に記載の硫酸廃液処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1、2に記載された技術は、極めて小規模の廃液処理に適したものであり、工業規模の廃液処理に適用した場合には種々の問題点がある。例えば、マントルヒータは、実験用フラスコ内の加熱対象を加熱するのに用いられるが、規模が大きくなると、容量のわりに伝熱面積が小さく、十分な伝熱速度を得ることが困難になる。また、疎水性膜を有するフィルタを用いる技術は、大型の装置に適用することが困難であり、また、フィルタの目詰まりなどのために例えば24時間のような長時間にわたる連続運転に適さないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、過酸化水素を含む硫酸廃液を工業規模で長時間連続して処理することができる硫酸廃液処理装置および硫酸廃液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の硫酸廃液処理装置のうち、第1の本発明は、過酸化水素を含む硫酸廃液を加熱する熱分解用加熱部を備えるとともに、前記熱分解用加熱部による加熱によって前記硫酸廃液に含まれる前記過酸化水素を熱分解し、前記熱分解によって発生する分解ガスを含むガスを前記硫酸廃液から分離する熱分解気液分離部と、
前記熱分解気液分離部で前記ガスの分離を行った前記硫酸廃液を加熱する蒸留用加熱部を備えるとともに、前記蒸留用加熱部で加熱された前記硫酸廃液を減圧下で蒸留する蒸留部と、を有し、
前記熱分解用加熱部は、過酸化水素を含む前記硫酸廃液を沸騰しない温度でかつ150℃以上の温度に加熱するものであり、
前記熱分解気液分離部は、減圧を行うことなく前記ガスの分離を行うものであり、
前記熱分解気液分離部は、前記硫酸廃液が滞留して気液分離が行われる熱分解気液分離部本体を有し、さらに該熱分解気液分離部本体内の前記硫酸廃液の一部を取り出して、加熱後、前記熱分解気液分離部本体内に戻す熱分解用加熱循環ラインを有し、
前記熱分解用加熱循環ラインに前記熱分解用加熱部が介設されていることを特徴とする。
【0014】
第2の本発明の硫酸廃液処理装置は、前記第1の本発明のいずれかにおいて、前記熱分解気液分離部のガス排出側に気液分離凝縮器が接続されており、該気液分離凝縮器の凝縮液を前記熱分解気液分離部に環流する凝縮液環流ラインを備えることを特徴とする。
【0015】
第3の本発明の硫酸廃液処理装置は、前記第1または第2の本発明のいずれかにおいて、前記蒸留部は、前記硫酸廃液の蒸発が行われる蒸留部本体と、該蒸留部本体内を減圧する減圧部と、前記蒸留部本体で蒸発した蒸気を凝縮する凝縮部とを有することを特徴とする。
【0016】
第4の本発明の硫酸廃液処理装置は、前記第3の本発明において、前記蒸留部本体が棚段を有するものであることを特徴とする。
【0017】
第5の本発明の硫酸廃液処理装置は、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、前記蒸留部は、前記蒸留用加熱部による前記硫酸廃液の加熱によって発生する蒸気を断熱圧縮して凝縮液を得る断熱圧縮部を有し、前記蒸留用加熱部は、前記凝縮液の顕熱を熱源の一部または全部とすることを特徴とする。
【0018】
第6の本発明の硫酸廃液処理装置は、前記第1〜第5の本発明のいずれかにおいて、前記蒸留部により濃縮された硫酸廃液の顕熱によって前記熱分解気液分離部で熱分解される前記硫酸廃液を予熱する予熱部を備えることを特徴とする。
【0019】
第7の本発明の硫酸廃液処理装置は、前記第1〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記熱分解気液分離部で気液分離されて該熱分解気液分離部から排出された前記ガスに空気を混合して前記ガスを希釈するガス希釈部を有することを特徴とする。
【0020】
第8の本発明の硫酸廃液処理装置は、前記第1〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記蒸留部を多段に備え、前段側の蒸留部で蒸留によって気相中の硫酸蒸気濃度が低減された前記硫酸廃液を、後段側の蒸留部で蒸留してさらに濃縮された前記硫酸廃液を得ることを特徴とする。
【0021】
第9の本発明の硫酸廃液処理方法は、過酸化水素を含む硫酸廃液を沸騰させることなく、150℃以上の温度に加熱して前記硫酸廃液中の過酸化水素を熱分解しつつ、前記熱分解により生成された分解ガスを含むガスを減圧することなく前記硫酸廃液から気液分離する熱分解気液分離工程と、前記ガスが分離された前記硫酸廃液を加熱して減圧下で蒸留し、前記硫酸廃液を濃縮する蒸留工程と、を有し、前記熱分解気液分離工程では、前記硫酸廃液が滞留して気液分離が行われ、さらに該熱分解気液分離部本体内の前記硫酸廃液の一部を取り出して、加熱後、前記熱分解気液分離部本体内に戻すことを特徴とする。
【0024】
第10の本発明の硫酸廃液処理方法は、前記第9の本発明のいずれかにおいて、前記蒸留工程では、250〜350Torrの減圧下で前記蒸留を行うことを特徴とする。
【0025】
第11の本発明の硫酸廃液処理方法は、前記第9または第10の本発明のいずれかにおいて、前記蒸留工程によって、前記硫酸廃液を硫酸濃度80質量%以上96質量%以下に濃縮することを特徴とする。
【0026】
すなわち本発明によれば、過酸化水素を含む硫酸廃液が加熱されて硫酸廃液中の過酸化水素が熱分解する。熱分解により生成された分解ガスは気液分離され、一方、ガスが分離された硫酸廃液は減圧下で蒸留され硫酸廃液の濃縮がなされる。
硫酸廃液の蒸留に先立ち分解ガスを硫酸廃液から分離するため、ガスの発泡により蒸留操作が妨げられることはなく、また、減圧下で蒸留するため、比較的低温の蒸留温度で高濃度に硫酸を濃縮することができる。
【0027】
本発明が処理対象とする硫酸廃液は、過酸化水素を含む硫酸廃液であれば特に限定されるものではない。例えば、処理対象の硫酸廃液としては、半導体製造プロセスにおけるバッチ洗浄工程その他の洗浄工程で使用された後の硫酸と過酸化水素水との混合液であるSPMの廃液を挙げることができる。なおSC1洗浄廃液(アンモニア+過酸化水素)、SC2洗浄廃液(塩酸+過酸化水素)が混合していると、熱分解に伴ってアンモニアや塩素が揮発するのでSPM廃液単独であることが無難である。
【0028】
本発明の硫酸廃液処理装置は、上記分解ガスの分離を実現するため、過酸化水素を含む硫酸廃液を加熱する熱分解用加熱部を備える熱分解気液分離部を有している。なお、硫酸廃液に含まれる過酸化水素の熱分解によって発生する分解ガスとしては、酸素ガス、オゾンガスが挙げられる。
【0029】
上記熱分解気液分離部は、減圧を行うことなくガスの分離を行うものが好ましい。減圧下で分解ガスを含むガスの分離を行った場合、分解ガスにより大きな気泡が発生し、液面が不安定になるおそれがある。このような状態になると、硫酸ミストが発生したり、気液分離障害になるという問題がある。減圧を行うことなく気液分離を行うことにより、分解ガスによる気泡の発生を抑えることができる。圧力の高い方が気泡は小さくなり、泡立ちが少ない。雰囲気圧力としては常圧でよい。
【0030】
また、熱分解気液分離部に備える熱分解用加熱部は、硫酸廃液を沸騰しない温度に加熱するものが好ましい。硫酸廃液を沸騰させると発生するガス量が増えて、加熱・冷却に要するエネルギーを大きくなる上に気液分離がより困難になる。硫酸廃液を沸騰させない上限温度は、硫酸廃液の沸点未満であるが、硫酸廃液の沸点−10℃以下が望ましい。
さらに、硫酸廃液の加熱温度は、150℃以上であることが好ましい。150℃未満では、過酸化水素の熱分解の反応速度が小さいため反応容積を大きくする必要がある。
【0031】
硫酸廃液は、過酸化水素の熱分解と気液分離のため熱分解気液分離部に滞留させるのが望ましい。
例えば、過酸化水素を含む硫酸廃液として、硫酸濃度70質量%、過酸化水素濃度2質量%のSPMの廃液を想定する。このSPMの廃液を150℃に加熱すると、下記式にしたがって過酸化水素が熱分解する。
H
2O
2→H
2O+(1/2)O
2
過酸化水素の半減期は、150℃では1分以下であるので、上記滞留の滞留時間を10分間とすれば、過酸化水素濃度は、(1/2)
10<(1/1000)となり、0.002質量%程度まで低下すると考えられる。
したがって、熱分解用加熱部における硫酸廃液の加熱温度は、150℃以上が好ましい。また、熱分解気液分離部に硫酸廃液が滞留する滞留時間は、5分間以上であれば十分であるが、10分間以上が好適である。
【0032】
なお、過酸化水素の熱分解の反応熱は、98.05kJ/molである。例えばSPMの廃液に含まれる2質量%の過酸化水素の全量が熱分解したとすると、その際の熱量は、SPMの廃液の液温を30℃上昇させる熱量に相当する。この熱を利用して硫酸廃液をさらに昇温させることができる。
【0033】
熱分解用加熱部の設置箇所や加熱方法は、本発明としては、特定のものに限定されるものではない。硫酸廃液が滞留して気液分離が行われる熱分解気液分離部本体から硫酸廃液の一部を取り出し、加熱後、熱分解気液分離部本体内に戻す熱分解用加熱循環ラインを設け、熱分解用加熱循環ラインに熱分解用加熱部を介設して、硫酸廃液を加熱するようにしてもよい。この構成によれば、硫酸廃液を高温に保持することができるとともに、循環によって温度の均等化、ガス分離の効率化を図ることができる。
【0034】
また、熱分解気液分離部のガス排出側には、気液分離凝縮器を接続し、気液分離凝縮器の凝縮液を熱分解気液分離部に環流する凝縮液環流ラインを設けるようにしてもよい。熱分解気液分離部から排出されるガスには、過酸化水素の熱分解によって発生する分解ガスのみならず、蒸気などが含まれている。熱分解気液分離部から排出されるガスを気液分離凝縮器で凝縮して凝縮液を凝縮液環流ラインを通して熱分解気液分離部に環流することで、熱分解気液分離部から排出されるガスに含まれる蒸気成分を回収することができる。
【0035】
また、本発明の硫酸廃液処理装置は、熱分解気液分離部で分離され、熱分解気液分離部から排出されるガスに空気を混合してガスを希釈するガス希釈部を設けてもよい。熱分解気液分離部で排出されるガスには、過酸化水素の分解により発生した酸素ガス、オゾンガスが含まれている。酸素は、燃焼や爆発を促進する性質を有している。また、オゾンは、強い酸化力を有しており、高濃度で毒性を示す。排出ガスに空気を混合して該ガスを希釈、冷却することにより、安全性を高めることができる。
【0036】
また、熱分解気液分離部でガスを分離した硫酸廃液は、蒸留部において減圧下で蒸留される。この際に、硫酸廃液は蒸留用加熱部で加熱される。
上記蒸留部は、硫酸廃液の蒸発が行われる蒸留部本体と、蒸留部本体内を減圧する減圧部と、蒸留部本体で蒸発した蒸気を凝縮する凝縮部とを有するもので構成できる。
蒸留部本体の構造は、特定の構造に限定されるものではないが、硫酸の回収効率や凝縮液処理の容易性の観点から、蒸留部本体は棚段を有するものが好ましい。減圧部により減圧しつつ蒸留部本体内で硫酸廃液の蒸留を行うことにより、比較的低温で、硫酸廃液の硫酸濃度を高くして硫酸の回収効率を向上するとともに、凝縮液の硫酸濃度を低くして凝縮液の処理を容易にすることができる。
【0037】
また、蒸留部において蒸留を行う際の圧力は、250〜350Torrに設定するのが望ましい。この程度の圧力に減圧すれば、例えば170〜180℃の実現容易な蒸留温度で硫酸廃液を80質量%以上に濃縮することができる。
【0038】
また、蒸留部は、濃縮液の再利用を可能にする観点から、硫酸濃度80質量%以上に硫酸廃液を濃縮するものであることが好ましい。
【0039】
また、蒸留部は、蒸留用加熱部による硫酸廃液の加熱によって発生する蒸気を断熱圧縮して凝縮液を得る断熱圧縮部を有するものとしてもよい。この場合、蒸留用加熱部は、断熱圧縮部により得られた凝縮液の顕熱を、硫酸廃液を加熱するための熱源の一部または全部とすることができる。硫酸廃液を加熱するための熱源の一部または全部として凝縮液の顕熱を用いることにより、高いエネルギー効率で硫酸廃液を処理することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0040】
また、本発明の硫酸廃液処理装置は、蒸留部により濃縮された硫酸廃液の顕熱によって熱分解気液分離部で加熱される硫酸廃液を予熱する予熱部を備えるようにしてもよい。蒸留部において濃縮された硫酸廃液は、蒸留温度に応じて高い温度になっているため、その顕熱を熱源として硫酸廃液を予熱することができる。
【0041】
また、上記蒸留部を多段に設けて、前段側の蒸留部で気相中の硫酸濃度を低くして凝縮液中の硫酸濃度を下げ、後段側の上流部で液相中の硫酸濃度を高くして濃縮された硫酸廃液を得ることもできる。これにより、高純度の硫酸を凝縮液として回収することができる。
【発明の効果】
【0042】
以上、説明したように、本発明によれば、過酸化水素を含む硫酸廃液を工業規模で長時間連続して処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(実施形態1)
以下、本発明の一実施形態の硫酸廃液処理装置を
図1に基づいて説明する。
硫酸廃液処理装置は、熱分解気液分離部1と、蒸留部2とを有し、熱分解気液分離部1で処理した硫酸廃液を蒸留部2に導入可能になっている。
熱分解気液分離部1は、硫酸廃液を収容する密閉容器形状の熱分解気液分離部本体10と、熱分解気液分離部本体10内の硫酸廃液を熱分解気液分離部本体10の底部側から取り出して熱分解気液分離部本体10の中央部に戻して硫酸廃液を環流させる熱分解用加熱循環ライン11と、熱分解用加熱循環ライン11に介設されて熱分解用加熱循環ライン11を流れる硫酸廃液を加熱するリボイラ12とを備えている。リボイラ12は、本発明の熱分解用加熱部に相当する。
【0045】
熱分解気液分離部本体10内の上部側には、スプレーノズル15が設置されており、スプレーノズル15に熱分解気液分離部本体10の外部から硫酸廃液が供給される廃液供給ライン13が接続されている。廃液供給ライン13には、バルブ14が介設され、バルブ14下流側に、廃液供給ライン13を流れる硫酸廃液の流量を検知して前記バルブ14の開度を調節する流量指示調節計16が設けられている。
熱分解気液分離部本体10内のスプレーノズル15の上部側には、ミスト分離板17が配設されている。ミスト分離板17は多孔板や網などにより構成することができる。
【0046】
熱分解用加熱循環ライン11では、リボイラ12の上流側に循環ポンプ20が介設されている。リボイラ12は、加熱媒体が導入されて熱交換によって熱分解用加熱循環ライン11の硫酸廃液を加熱する。この実施形態では、加熱媒体としてスチームが用いられている。リボイラ12には、スチームが供給されるスチーム供給ライン21が熱交換可能に接続されており、スチーム供給ライン21には、リボイラ12の上流側でバルブ22が介設されている。また、熱分解気液分離部本体10の貯液位置には、熱分解気液分離部本体10内の硫酸廃液の液温を検知してバルブ22の開度を調節する温度指示調節計23が接続されている。
【0047】
熱分解気液分離部本体10の頂部にはガス排出ライン24が接続されており、ガス排出ライン24には、凝縮器25が接続されている。凝縮器25は、本発明の気液分離凝縮器に相当し、冷却液との熱交換によって排出ガスを冷却し凝縮液を得る。凝縮器25の凝縮液排出側には、凝縮液環流ライン26とガス排出ライン28が接続されている。凝縮液環流ライン26は、下方に伸長してU字状に配設されており、U字状の下端側で、向きを変えて熱分解気液分離部本体10の上部側に接続されている。また、凝縮液環流ライン26が熱分解気液分離部本体10に接続されるように向きを変える位置には、上方に伸長してガス排出ライン24の上流端近傍部に接続される均圧ライン27が分岐している。
【0048】
ガス排出ライン28は上方に伸長し、空気供給ライン29が合流している。空気供給ライン29は、本発明のガス希釈部を構成する。合流点よりも下流側でガス排出ライン28に、オゾンを分解するオゾン分解反応器30が介設されている。
【0049】
熱分解用加熱循環ライン11では、循環ポンプ20の上流側で硫酸廃液移送ライン3が分岐しており、硫酸廃液移送ライン3の下流側は蒸留部2側に接続されている。したがって、熱分解用加熱循環ライン11の上流側は、硫酸廃液移送ラインと兼用されている。なお、熱分解用加熱循環ライン11の一部を兼用することなく硫酸廃液移送ラインを直接熱分解気液分離部本体10に接続してもよい。
硫酸廃液移送ライン3には、バルブ5が介設されており、熱分解気液分離部本体10の貯液位置には、熱分解気液分離部本体10内の硫酸廃液の液面の検知を行い、バルブ5の開度を調整する液面指示調節計4が設けられている。
【0050】
蒸留部2は、上記硫酸廃液移送ライン3から供給される硫酸廃液を収容する塔形状の蒸留部本体31と、蒸留部本体31内の硫酸廃液を蒸留部本体31の底部側から取り出して蒸留部本体31の下方部に戻して硫酸廃液を環流させる蒸留用加熱循環ライン32と、蒸留用加熱循環ライン32に介設されて蒸留用加熱循環ライン32を流れる硫酸廃液を加熱するリボイラ33と、蒸留部本体31から排出される蒸気を冷却して凝縮させる凝縮器34と、蒸留部本体31内を減圧する真空ポンプ35とを有している。リボイラ33は本発明の蒸留用加熱部に相当し、凝縮器34は本発明の凝縮部に相当し、真空ポンプ35は本発明の減圧部に相当する。
【0051】
蒸留部本体31の塔中段には、硫酸廃液移送ライン3の下流端が接続されており、蒸留部本体31の内部に複数の理論棚段36(棚段+リボイラ段)が配設されている。蒸留用加熱循環ライン32には、リボイラ33の上流側に循環ポンプ41が介設されている。リボイラ33は、加熱媒体が導入されて熱交換によって蒸留用加熱循環ライン32の硫酸廃液を加熱する。この実施形態では、加熱媒体としてスチームが用いられている。リボイラ32には、スチームが供給されるスチーム供給ライン42が熱交換可能に接続されており、スチーム供給ライン42には、バルブ43が介設されている。
蒸留部本体31の貯液位置には、蒸留部本体31内の硫酸廃液の液温を検知してバルブ43の開度を調節する温度指示調節計44が接続されている。
【0052】
蒸留部本体31の塔頂には、蒸気排出ライン45が接続され、蒸気排出ライン45の他端は凝縮器34に接続されている。凝縮器34には、上方に伸長する排気ライン46を介して真空ポンプ35が接続されている。凝縮器34は冷却液と蒸気との間で熱交換して凝縮液を得る。凝縮器34の排液側には、凝縮液排出ライン47が接続されており、凝縮液排出ライン47は系外に伸長している。
【0053】
蒸留用加熱循環ライン32では、循環ポンプ41の上流側で濃縮液移送ライン37が分岐している。したがって、蒸留用加熱循環ライン32の上流側は、濃縮液移送ラインと兼用されている。なお、蒸留用加熱循環ライン32の一部を兼用することなく濃縮液移送ラインを直接蒸留部本体31に接続してもよい。
濃縮液移送ライン37には、移送ポンプ38、バルブ39が上流側から下流側にかけてこの順に介設されており、蒸留部本体31の貯液位置には、蒸留部本体31内の硫酸廃液の液面の検知を行い、バルブ39の開度を調整する液面指示調節計40が設けられている。
【0054】
次に、上記硫酸廃液処理装置の動作について説明する。
処理対象として、例えば、半導体製造プロセスにおけるバッチ式洗浄工程で使用されたSPM廃液が用いられる。ただし、本発明としては過硫酸を含む硫酸廃液の発生源が特に限定されるものではない。
熱分解気液分離部1では、廃液供給ライン13を通じてSPM廃液(以下、硫酸廃液という)が供給され、スプレーノズル15によって熱分解気液分離部1内に散液される。この際に廃液供給ライン13を流れる硫酸廃液の流量は、流量指示調節計16によって検知され、流量指示調節計16は所定の流量となるようにバルブ14の開度を調整する制御を行う。
【0055】
熱分解気液分離部本体10内は減圧することなく初期には常圧になっており、循環ポンプ20により熱分解気液分離部本体10に収容した硫酸廃液を熱分解用加熱循環ライン11を通じて循環させる。熱分解用加熱循環ライン11を流れるSPM廃液は、リボイラ12によって沸騰しない温度、例えば150℃以上に加熱される。硫酸廃液の液温は、温度指示調節計23によって検知され、温度指示調節計23によって所定の液温となるようにバルブ22の開度によってスチーム供給ライン21からリボイラ12に供給されるスチーム量を調整する制御を行う。所定の液温としては、150℃〜180℃かつ硫酸廃液の沸点より10℃以上低い温度が好適である。
【0056】
熱分解気液分離部本体10内の硫酸廃液が加熱されると、硫酸廃液に含まれる過酸化水素が熱分解され、分解ガスとして酸素ガスやオゾンガスが発生する。発生した分解ガスを含むガスは、熱分解気液分離部本体10内で液相の硫酸廃液から気相に放出されて分離される。
一方、液面指示調節計4によりバルブ5の開度が制御されて、熱分解気液分離部本体10内の硫酸廃液の液面が一定に維持される。液面調整によって、熱分解気液分離部本体10内の液深を0.7以上とするのが望ましく、1.0以上とするのが一層望ましい。液深は、液面指示調節計18による液面調整によって調整することができる。ここで液深とは、熱分解気液分離部本体10内での液深さ(L)/熱分解気液分離部本体10の内径(d)を意味している。
【0057】
上記熱分解気液分離部本体10内では、熱分解気液分離部本体10内における気相でのガス空塔速度は7mm/秒以下であることが好ましく、液相での液空塔速度は5.5mm/秒以下であることが好ましい。これらは、廃液供給ライン13による硫酸廃液の供給流量やリボイラ12による加熱温度、液面指示調節計4による液面調整などによって調整できる。
また、熱分解気液分離部本体10内には、硫酸廃液が好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上滞留するのが望ましい。滞留時間は、廃液供給ライン13による硫酸廃液の供給流量と液面指示調節計4によるバルブ5における廃液流量によって調整できる。
【0058】
硫酸廃液から分離された分解ガスを含むガスは、ミスト分離板17で可及的に同伴ミストが分離され、ガス排出ライン24を通じて熱分解気液分離部本体10外に排出され、凝縮器25に導入される。凝縮器25では、導入されたガスが冷却され凝縮液が得られる。凝縮液は、凝縮液環流ライン26を通して熱分解気液分離部本体10内に戻される。
凝縮器25で分離、冷却されたガスは、ガス排出ライン28を通じて排出され、空気供給ライン29から供給される空気が混合されて希釈、冷却される。その後、オゾン分解反応器30でガスに含まれるオゾンが分解され、大気中に排出される。
【0059】
分解ガスを含むガスが分離された硫酸廃液は、過酸化水素濃度が例えば0.002質量%以下と極めて低濃度になっており、硫酸廃液移送ライン3を介して蒸留部2の蒸留部本体31に連続して供給される。
蒸留部本体31内は、真空ポンプ35により、例えば250〜350Torrに減圧される。
【0060】
硫酸廃液が供給された蒸留部本体31では、塔底液として塔底に溜まる硫酸廃液が、循環ポンプ41により蒸留用加熱循環ライン32を通じて循環される。蒸留用加熱循環ライン32を流れる硫酸廃液は、リボイラ33で蒸留可能な温度に加熱される。硫酸廃液の液温は、温度指示調節計44によって検知され、温度指示調節計44は所定の液温が得られるようにバルブ43によってスチーム供給ライン42からリボイラ33に供給されるスチーム量を調整することで制御する。所定の液温としては、170〜180℃の温度が好適である。
なお、熱分解気液分離部1から蒸留部本体31に供給される硫酸廃液は、硫酸廃液に含まれる過酸化水素の熱分解の反応熱により例えば180℃程度の高温になっており、リボイラ33により硫酸廃液を加熱するために要するエネルギーを低減することができる。
【0061】
蒸留部本体31では、硫酸廃液がリボイラ33により加熱されつつ蒸留される。
硫酸廃液は、熱分解気液分離部1において分解ガスが十分に分離されており、蒸留部本体31内の真空度が分解ガス等で低下して蒸留速度が低下するのを回避できる。
【0062】
蒸留部本体31内で生成された蒸気は、蒸気排出ライン45から排出され、凝縮器34に導入される。凝縮器34では、導入された蒸気が冷却水との熱交換によって冷却されて凝縮液が得られる。凝縮器34で得られた凝縮液は、凝縮液排出ライン47から排出される。凝縮液は、水を主成分とし、その硫酸濃度は低濃度になっている。このため、凝縮液は、容易に排水処理することができる。その他のガス成分は、排気ライン46を通じて真空ポンプ35で排気される。
【0063】
蒸留部本体31の塔底に溜まる塔底液は、蒸留の進行に従って硫酸が濃縮され、例えば硫酸濃度80質量%以上となる。濃縮液は、液面指示調節計40で液面が検知されており、液面指示調節計40は所定の液面となるようにバルブ39の開度を調整する制御を行う。濃縮液は、移送ポンプ38によって濃縮液移送ライン37を通じて移送され、廃棄したり再利用したりすることができる。
【0064】
(実施形態2)
次に、本発明の他の実施形態の硫酸廃液処理装置を
図2に基づいて説明する。
本実施形態の硫酸廃液処理装置は、蒸留部で得られる濃縮液の顕熱により、熱分解気液分離部に供給される硫酸廃液を予熱するとともに、蒸留部において蒸気を断熱圧縮して得られた凝縮液の顕熱を、蒸留部本体の硫酸廃液を加熱する熱源として利用して、装置全体の省エネルギー化を図ったものである。その他の構成は、前記実施形態1と同様であり、簡略に説明する。
【0065】
この実施形態の熱分解気液分離部1aは、硫酸廃液を収容する密閉容器状の熱分解気液分離部本体48と、熱分解気液分離部本体48に供給される硫酸廃液を加熱する加熱器49とを有している。加熱器49は、本発明の熱分解用加熱部に相当する。
【0066】
熱分解気液分離部本体48の硫酸廃液導入側には廃液供給ライン50が接続されており、廃液供給ライン50には、上流側から下流側にかけて送液ポンプ51、予熱器52、加熱器49が介設されている。予熱器52は、本発明の予熱部に相当する。
加熱器49は、スチームを熱源として廃液供給ライン50を流れる硫酸廃液を熱交換によって加熱する。なお、加熱器49では、加熱器49の下流側で廃液供給ライン50を流れる硫酸廃液の温度を検知して加熱器49に供給されるスチーム供給量を調整して硫酸廃液の加熱温度をフィードバック制御してもよい。
【0067】
熱分解気液分離部本体48の硫酸廃液排出側には、硫酸廃液移送ライン3aが接続されており、硫酸廃液移送ライン3aの移送側には蒸留部2aが接続されている。
なお、熱分解気液分離部本体48内の液面を検知して、該液面が一定のレベルとなるように廃液廃液移送ライン3aで移送される硫酸廃液の流量をバルブなどによって制御するようにしてもよい。
【0068】
また熱分解気液分離部本体48の塔頂にはガス排出ライン59が接続されており、ガス排出ライン59は、凝縮器60に接続されている。凝縮器60は、本発明の気液分離凝縮器に相当する。凝縮器60の凝縮液排出側には、凝縮液排出ライン61が接続され、凝縮器60のガス排出側には、ガス排出ライン62が接続されている。ガス排出ライン62には、本発明のガス希釈部の一部を構成する空気供給ライン63が合流している。
【0069】
蒸留部2aは、硫酸廃液移送ライン3aが接続される塔形状の蒸留部本体64と、蒸留部本体64から取り出された硫酸廃液を加熱するリボイラ65と、蒸留部本体64に接続された蒸気圧縮機66とを有している。蒸留部本体64は、本発明の蒸留部本体に相当する。リボイラ65は、本発明の蒸留用加熱部に相当する。蒸気圧縮機66は、本発明の断熱圧縮部および減圧部に相当する。
【0070】
蒸留部本体64は棚段を有するものとしてもよい。蒸留部本体64の塔底には、送液ポンプ69を介設した塔底液排出ライン68が接続されている。なお、蒸留部本体64内の液面を検知して、該液面が一定のレベルとなるように塔底液排出ライン68で移送される硫酸廃液の流量をバルブなどによって制御するようにしてもよい。
塔底液排出ライン68は送液ポンプ69の下流側で、予熱器52に熱交換可能に接続され、その下流側で濃縮液が系外に排出される。
【0071】
また、蒸留部本体64の塔底に蒸留部本体64内の塔底液を取り出す塔底液循環ライン72の一端が接続され、蒸留部本体64の側壁部に塔底液循環ライン72内の塔底液を蒸留部本体64内に戻す塔底液循環ライン72の他端が接続されている。塔底液循環ライン72には、循環ポンプ73とリボイラ65が介設されている。
【0072】
蒸留部本体64の塔頂には、蒸気排出ライン74が接続され、蒸気排出ライン74の下流端は蒸気圧縮機66の蒸気導入側に接続されている。
蒸気圧縮機66の圧縮蒸気排出側には、圧縮蒸気排出ライン75が接続されており、圧縮蒸気排出ライン75にリボイラ65が熱交換可能に介設されている。なお、蒸留部本体64内の硫酸廃液の液温を検知して、液温が設定値となるように圧縮蒸気排出ライン75を通してリボイラ65に供給される圧縮蒸気量を調整して蒸留部本体64内の液温を制御するようにしてもよい。
【0073】
次に、上記硫酸廃液処理装置の動作について説明する。
送液ポンプ51によって過酸化水素を含む硫酸廃液が廃液供給ライン50を通じて送液され、予熱器52による予熱および加熱器49による加熱を経て、熱分解気液分離部1aの熱分解気液分離部本体48に供給される。
【0074】
予熱器52では、廃液供給ライン50を流れる硫酸廃液が、塔底液排出ライン68を流れる濃縮液と熱交換されて予熱される。また、加熱器49では、廃液供給ライン50を流れる硫酸廃液がスチームなどによって熱交換されて加熱される。
予熱器52および加熱器49による加熱により、硫酸廃液は沸騰しない温度である例えば150℃〜180℃かつ沸点未満(例えば沸点より10℃以上低い温度)に加熱される。予熱器52では、蒸留部本体64内の濃縮液の顕熱を利用するので、エネルギー効率を高めることができる。
【0075】
熱分解気液分離部本体48内は、供給された硫酸廃液に含まれる過酸化水素が熱分解して、分解ガスとして酸素ガスやオゾンガスが発生する。発生した分解ガスを含むガスは、熱分解気液分離部本体48内で液相の硫酸廃液から気相に放出されて分離される。
なお、上記熱分解およびガス分離を十分に行うためには、上記実施形態1と同様に、熱分解気液分離部本体48内における気相でのガス空塔速度は7mm/秒以下であることが好ましく、液相での液空塔速度は5.5mm/秒以下であることが好ましい。また、熱分解気液分離部本体48内の硫酸廃液の液深Lと熱分解気液分離部本体48の横断面の直径dとの比L/dは、0.7以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。
【0076】
硫酸廃液から分離された分解ガスや蒸気を含むガスは、ガス排出ライン59から排出されて、凝縮器60のガス導入側に導入され、冷却水などで冷却されて蒸気が凝縮して凝縮水が生成され、凝縮水は凝縮液排出ライン61を通じて系外に排出される。凝縮によって蒸気が除かれたガスは、ガス排出ライン62を通して排出され、空気供給ライン63から供給される空気が混合されて希釈、冷却され、大気に放出される。
【0077】
熱分解気液分離部本体48内でガスが分離された硫酸廃液は硫酸廃液移送ライン3aを通じて蒸留部本体64に供給される。
なお、熱分解気液分離部本体48内では、硫酸廃液が好ましくは5分間以上、より好ましくは10分間以上滞留するように、硫酸廃液移送ライン3aから移送される硫酸廃液の流量を調整する。
【0078】
蒸留部本体64内は、本発明の減圧部を兼ねる蒸気圧縮機66により減圧されており、例えば250〜350Torrの減圧状態に維持される。
蒸留部本体64では、供給された硫酸廃液が循環ポンプ73により塔底液循環ライン72を通して循環されるとともに、リボイラ65で加熱される。
蒸留部本体64内では、リボイラ65による加熱によって硫酸廃液の一部が蒸発し、蒸気排出ライン74を通して蒸気が排出され、蒸気圧縮機66に吸引されて断熱圧縮される。 蒸気圧縮機66では、断熱圧縮により高温の圧縮蒸気が生成され、圧縮蒸気排出ライン75を通じてリボイラ65に供給され、硫酸廃液との熱交換後、凝縮液として排出される。
リボイラ65により、蒸留部本体64内の硫酸廃液が、170〜180℃に加熱されており、熱源として、蒸気圧縮機66での断熱圧縮により得られた凝縮液の顕熱を利用するため、エネルギー効率を高めることができる。
【0079】
蒸留部本体64の塔底に溜まる塔底液は、蒸留の進行に従って硫酸が濃縮され、例えば硫酸濃度80質量%以上となる。濃縮液は、過酸化水素濃度が例えば0.002質量%以下と極めて低濃度になっている。このため、産業廃棄物として安価に廃棄することができる。
【0080】
(実施形態3)
次に、本発明のさらに他の実施形態の硫酸廃液処理装置を
図3に基づいて説明する。
なお、上記実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略しまたは簡略化する。
本実施形態の硫酸廃液処理装置は、熱分解気液分離部の後段に、複数段の蒸留部を設けたものである。
【0081】
本実施形態の硫酸廃液処理装置は、上記実施形態1と同様の熱分解気液分離部1を有している。
すなわち、熱分解気液分離部1に備える熱分解気液分離部本体10は、SPM廃液(以下硫酸廃液という)が、廃液供給ライン13を通じて供給され、スプレーノズル15によって熱分解気液分離部本体10内に散液される。熱分解気液分離部本体10内は減圧することはなく、硫酸廃液は、加熱循環ライン19で循環されつつ、リボイラ12によって沸騰しない温度、例えば150℃〜180℃かつ沸点未満(例えば沸点より10℃以上低い温度)とされる。
【0082】
熱分解気液分離部本体10内で過酸化水素が熱分解され、分解ガスは気液分離される。熱分解気液分離部本体10内の液深を0.7以上が望ましく、1.0以上が一層望ましい。
熱分解気液分離部本体10内では、ガス空塔速度は7mm/秒以下、液空塔速度は5.5mm/秒以下が望ましい。
【0083】
硫酸廃液から分離された分解ガスを含むガスは、ガス排出ライン24を通じて熱分解気液分離部本体10外に排出され、凝縮器25で冷却されて凝縮液が得られる。凝縮液は、凝縮液環流ライン26を通して熱分解気液分離部本体10内に戻される。
凝縮器25で冷却されたガスは、ガス排出ライン28を通じて排出され、空気供給ライン29から供給される空気が混合されて希釈、冷却され、オゾン分解反応器30でガスに含まれるオゾンが分解され、大気中に排出される。
【0084】
過酸化水素を熱分解して分解ガスを分離した硫酸廃液は、熱分解気液分離部1の後段に設けられた第1蒸留部2−1に導入される。
第1蒸留部2−1では、理論棚段36a(棚段+リボイラー段)を有する真空蒸留部本体31aを備えている。
真空蒸留部本体31a内の圧力は真空ポンプ35aによって350Torrに減圧調整される。真空蒸留部本体31a内の硫酸廃液は、循環ポンプ41aにより、蒸留用加熱循環ライン32aを通じて循環され、リボイラ33aで蒸留可能な温度である180℃に加熱される。蒸留部本体31aで生成された蒸気は、蒸気排出ライン45aを通じて凝縮器34aに導入され、凝縮液が得られる。凝縮液は凝縮液排出ライン47aから排出され、その他のガス成分は、排気ライン46aを通じて真空ポンプ35aで排気される。
【0085】
蒸留部本体31aの塔底液は、蒸留の進行に従って硫酸が濃縮され、硫酸濃度80質量%に濃縮される。濃縮された濃縮液は、バルブ39aで移送量が調整されつつ濃縮液移送ライン37aを通じて移送ポンプ38aで移送される。後段でのさらなる濃縮等が必要でなければ、濃縮された硫酸溶液は産業廃棄物として廃棄することができる。また、濃縮された硫酸溶液の一部を廃棄するようにしてもよい。さらに濃縮する硫酸廃液は、後段の蒸留部に移送される。
【0086】
第1蒸留部2−1の後段には、棚段36b(棚段+リボイラー段)を有する第2蒸留部2−2が接続されている。
真空蒸留部本体31b内の圧力は真空ポンプ35bによって25Torrに減圧調整される。真空蒸留部本体31b内の硫酸廃液は、循環ポンプ41bにより、蒸留用加熱循環ライン32bを通じて循環され、リボイラ33bで蒸留可能な温度である200℃に加熱される。硫酸廃液は第1蒸留部2−1で硫酸が濃縮されており、より高い蒸留温度が選定される。
蒸留部本体31bで生成された蒸気は、蒸気排出ライン45bを通じて凝縮器34bに導入され、凝縮液が得られる。凝縮液は凝縮液排出ライン47bから排出され、その他のガス成分は、排気ライン46bを通じて真空ポンプ35bで排気される。
【0087】
蒸留部本体31bの塔底液は、蒸留の進行に従って硫酸が濃縮され、硫酸濃度96質量%に濃縮される。硫酸廃液に硫酸および過酸化水素以外の物質である高沸点の物質を含んでいると濃縮液中に不純物として残る。不純物として残存する高沸点物質としては、レジスト残渣やドーパントなどが挙げられる。
濃縮された濃縮液は、バルブ39bで移送量が調整されつつ濃縮液移送ライン37bを通じて移送ポンプ38bで移送される。なお、低純度の硫酸を使用可能な用途であれば、濃縮された硫酸溶液は、そのまま再利用することが可能になる。また、濃縮された硫酸溶液の一部を再利用するようにしてもよい。高純度化が必要な硫酸廃液は、後段の蒸留部に移送される。
【0088】
第2蒸留部2−2の後段には、第3蒸留部2−3が接続されている。
真空蒸留部本体31c内の圧力は真空ポンプ35cによって25Torrに減圧調整される。真空蒸留部本体31c内の硫酸廃液は、加熱部33cによって硫酸を蒸留可能な温度である230℃に加熱される。
蒸留部本体31cで生成された蒸気は、蒸気排出ライン45cを通じて凝縮器34cに導入され、凝縮液が得られる。凝縮液は凝縮液排出ライン47cから排出され、その他のガス成分は、排気ライン46cを通じて真空ポンプ35cで排気される。凝縮液は、蒸留によって蒸発した硫酸が凝縮したものであり、96質量%の硫酸濃度を有している。また、高沸点の不純物物質は、蒸留部本体31b内の塔底液に残存しており、凝縮液は高純度な硫酸溶液となる。したがって、凝縮液は、高純度の硫酸溶液として再利用することが可能になる。
残存した塔底液(残渣)は、廃液移送ライン37cを通じて移送され、廃棄される。その量は少量であり、廃棄処理も容易に行うことができる。
【0089】
(実施形態4)
次に、熱分解気液分離部100および蒸留部200を備える処理システム全体について
図4に基づいて説明する。
処理システムは、SPM廃液(以下硫酸廃液という)が導入される廃液タンク110を有し、廃液タンク110に一端が接続された廃液供給ライン111の他端が熱分解気液分離部100の熱分解気液分離部本体101に接続されている。廃液供給ライン111には、送液ポンプ112、バルブ113、加熱器114が上流側から下流側にかけてこの順に介設されている。加熱器114は、スチームが供給されてスチームと硫酸廃液との間で熱交換をする。
また、廃液供給ライン111には、廃液供給ライン111を流れる硫酸廃液の流量を検知して、バルブ113の開度を制御する流量指示調節計115が設けられている。さらに、廃液供給ライン111には、廃液供給ライン111を流れる硫酸廃液の液温を加熱器114の下流側で検知して、加熱器114に供給するスチームの流量を調整するバルブ116の開度を制御する温度指示調節計117が設けられている。
【0090】
熱分解気液分離部本体101の塔頂には、バルブ121を介設したガス排出ライン120が接続され、ガス排出ライン120の他端に凝縮器123が接続されている。なお、熱分解気液分離部本体101には、熱分解気液分離部本体101内部の圧力を測定し、バルブ121の開度を調整する圧力指示調節計122が設けられている。
凝縮器123では冷却水(CW)とガスとの間で熱交換が行われる。凝縮器123には、凝縮液排出ライン124と分離排ガスライン125とが接続されている。凝縮液排出ライン124は、凝縮液タンク240に接続され、分離排ガスライン125は、空気供給ライン126が合流して、混合ガス排気ライン127に接続されており、混合ガス排気ライン127を通して混合ガスを大気に放出(ベント)する。
【0091】
熱分解気液分離部本体101には、バルブ103を介設した廃液排出ライン102が接続されており、廃液排出ライン102の他端は蒸留部200側に接続されている。
熱分解気液分離部本体101には、内部の硫酸廃液の液面を検知してバルブ103の開度を調整する液面指示調節計104が設けられている。
上記各構成によって熱分解気液分離部100が構成されている。
【0092】
蒸留部200では、棚段202を有する蒸留部本体201を有しており、廃液排出ライン102が接続されている。
蒸留部本体202の塔底には、蒸留用加熱循環ライン203の一端が接続され、他端が蒸留部本体202の下方部に接続されている。蒸留用加熱循環ライン203には、循環ポンプ(図示しない)、リボイラ204が上流側から下流側にかけてこの順に介設されている。リボイラ204には、スチームが供給されるスチーム供給ラインが熱交換可能に接続されており、スチーム供給ラインには、バルブ205が介設されている。
蒸留部本体201の貯液位置には、蒸留部本体201内の硫酸廃液の液温を検知してバルブ205の開度を調節する温度指示調節計206が接続されている。
【0093】
蒸留部本体201の塔頂に蒸気排出ライン210が接続され、蒸気排出ライン210の他端は凝縮器211に接続されている。凝縮器211には、上方に伸長する排気ライン213を介して真空ポンプ214が接続されている。凝縮器211は冷却液(CW)と蒸気との間で熱交換して凝縮液を得る。凝縮器211の排液側には、凝縮液排出ライン212が接続されており、凝縮液排出ライン212は凝縮液タンク240が接続されている。凝縮液タンク240には、ポンプ242を介設した凝縮液排液ライン241が接続されており、凝縮液タンク240内の凝縮液は、ポンプ242によって凝縮液排液ライン241を通じて系外に排液される。排気ライン213は、真空ポンプ214の下流側で混合ガス排気ライン127に合流している。
【0094】
蒸留部本体202の塔底には、濃縮液移送ライン220が接続されている。濃縮液移送ライン220には、移送ポンプ221、バルブ222、冷却器224が上流側から下流側にかけてこの順に介設されており、濃縮液移送ライン220の下流端は、濃縮液タンク230に接続されている。濃縮液タンク230には、ポンプ232を介設した濃縮液排液ライン231が接続されている。
また、蒸留部本体202の貯液位置には、蒸留部本体202内の硫酸廃液の液面の検知を行い、バルブ222の開度を調整する液面指示調節計223が設けられている。
【0095】
次に、上記硫酸廃液処理装置の動作について説明する。
SPM廃液(以下硫酸廃液という)は、廃液タンク110に導入され、送液ポンプ112で廃液供給ライン111を通じて熱分解気液分離部本体101に供給される。この際に、廃液供給ライン111を流れる硫酸廃液は流量指示調節計115で流量が検知され、流量指示調節計115は所定の流量が得られるようにバルブ113の開度を調整する制御を行う。また、廃液供給ライン111を流れる硫酸廃液は、加熱器114で加熱され、加熱された硫酸廃液は、温度指示調節計117で液温が検知される。温度指示調節計117は、加熱器114で加熱された硫酸廃液が所定の液温となるように、加熱器114に供給するスチームの流量をバルブ116の開度によって調整する制御を行う。この加熱によって硫酸廃液は150℃〜180℃かつ沸点未満(例えば沸点より10℃以上低い温度)の温度となる。
【0096】
加熱された硫酸廃液は熱分解気液分離部本体101内に導入される。熱分解気液分離部本体101内では過酸化水素が熱分解され、分解ガスは気液分離される。熱分解気液分離部本体101内の液深を0.7以上が望ましく、1.0以上が一層望ましい。熱分解気液分離部本体101内では、ガス空塔速度は7mm/秒以下、液空塔速度は5.5mm/秒以下が望ましい。
【0097】
硫酸廃液から分離された分解ガスを含むガスは、ガス排出ライン120を通じて排出され、凝縮器123で冷却されて凝縮液が得られる。
この際に熱分解気液分離部本体101の圧力は、圧力指示調節計122で検知されており、熱分解気液分離部本体101内が所定圧力に維持されるようにバルブ121の開度を調整する制御を行う。所定圧力としては0.2MPa以下で設定されることが好ましい。
凝縮液は、凝縮液環流ライン124を通して凝縮液タンク240に貯留される。
凝縮器123で冷却されたガスは、ガス排出ライン125を通じて排出され、空気供給ライン126から供給される空気が混合されて希釈、冷却され、混合ガス排気ライン127を通して大気中に排出(ベント)される。
【0098】
過酸化水素を熱分解して分解ガスを分離した硫酸廃液は、廃液排出ライン102を通じて蒸留部200側に導入される。この際に、熱分解気液分離部本体101内の液面が液面指示調節計104で検知されており、液面指示調節計104は硫酸廃液が所定の液面となるように、バルブ103の開度を調整する制御を行なう。
【0099】
硫酸廃液は廃液排出ライン102を通じて蒸留部200の蒸留部本体201に供給される。蒸留部本体201は、真空ポンプ214によって100〜350Torrに減圧される。真空蒸留部本体201内の硫酸廃液は、蒸留用加熱循環ライン203を通じて循環され、リボイラ204で蒸留可能な温度である180℃以上に加熱される。この際に、蒸留部本体201内の硫酸廃液は温度指示調節計206で液温が検知されており、温度指示調節計206は前記液温が所定の温度となるようにリボイラ204にスチームを供給するバルブ205の開度を調整する制御を行う。
蒸留部本体201で生成された蒸気は、蒸気排出ライン210を通じて凝縮器211に導入され、凝縮液が得られる。凝縮液は凝縮液排出ライン212から排出され凝縮液タンク240に貯留される。その他のガス成分は、排気ライン213を通じて真空ポンプ214によって混合ガス排気ライン127に送られてベントされる。
【0100】
蒸留部本体201の塔底液は、蒸留の進行に従って硫酸が濃縮され、硫酸濃度80質量%以上に濃縮される。濃縮された濃縮液は、移送ポンプ221により濃縮液移送ライン220を通じて移送される。この際に、蒸留部本体201の液面は液面指示調節計223で検知されており、液面指示調節計223は液面が所定レベルとなるようにバルブ222の開度を調整する制御を行う。
濃縮液移送ライン220を移送される濃縮液は、冷却器224で冷却水(CW)によって冷却され、濃縮液タンク230に収容される。その後、濃縮液タンク230内の濃縮液は、必要に応じてポンプ232によって濃縮液排液ライン231を通じて系外に排液される。
【0101】
以上、本発明について上記各実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は、上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。
[実施例1]
硫酸濃度70質量%、過酸化水素濃度2.0質量%のSPM廃液を、60m
3/dayの流量で
図5に示す熱分解気液分離部を用いて24時間連続で処理した。
熱分解気液分離部は、塔頂および塔底がそれぞれ外方に凸状の曲面に形成され、その間が円筒部で構成された中空の熱分解気液分離部本体を有している。熱分解気液分離部本体の円筒部の内径は、1600mm、円筒部の高さは3360mmであり、そのうち、SPMの廃液で満たされる円筒部における液相深さは1120mm、円筒部における気相部分の高さは2240mmである。
なお、運転温度は150℃、熱分解気液分離部本体内の圧力は常圧とした。
【0103】
上記過酸化水素の熱分解により発生する酸素ガスの流量は26.4Nm
3/hであり、ガス空塔速度は、5.6mm/秒であり、ガス空塔速度の好ましい上限値である7mm/秒の約80%であった。
また、リボイラによる廃液の循環回数が5回であったとすると、廃液の液空塔速度は、2.2mm/秒であり、液空塔速度の好ましい上限値である5.5mm/秒の約40%であった。
熱分解気液分離部本体における廃液の滞留時間は54分であり、過酸化水素の分解率は100%であった。また、廃液側へのガスの同伴はほとんどなく、ガスの分離効率はほぼ100%であった。
【0104】
[比較例1]
実施例1と同じ組成を有するSPM廃液を150℃に加熱した後に、テフロン(登録商標)製の気液分離膜を用いて気液分離を行った。気液分離膜に供給する際の廃液の流量は1L/分とした。その結果、ガスの分離効率は95%であった。また、2.5m
3/時の流量の廃液を処理するためには、必要となる気液分離膜の面積が過大となり、工業規模で処理を行う装置としては実用性に乏しいことが分かった。
【0105】
(実施例2)
図1に示す実施形態において、蒸留部本体31内の運転圧を変えてプロセス計算を行った。結果を表1に示した。
350torr以下の運転圧にすれば硫酸濃度を80質量%以上に濃縮できることがわかる。
【0106】
【表1】
【0107】
(実施例3)
以下に示すSPMの廃液について、
図4に示すシステムを用いて処理した。
SPM廃液の組成:硫酸濃度70質量%、過酸化水素濃度2.0質量%
廃液の温度:25℃
廃液の流量:40L/分(2.4m
3/時)
熱分解気液分解部 温度150℃
蒸留部 温度180℃、圧力350torr
【0108】
この結果、蒸留部本体の塔底から過酸化水素を含まない、硫酸濃度が80質量%以上の液を得ることができ、産業廃棄物業者が容易に引き取ることができる状態となった。
【0109】
(比較例2)
実施例3と同様のSPM廃液について、苛性ソーダ水溶液により中和を行い、続いて工業用水により希釈する通常の廃液処理をした。この結果、35質量%苛性ソーダ水溶液で中和するとともに、過酸化水素濃度を0.2質量%以下に下げるために、工業用水で10倍希釈したので、廃液量が原液量の10倍に増加した。