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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954701
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】液晶・高分子複合素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/141 20060101AFI20160707BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20160707BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   G02F1/141
   C09K19/38
   G02F1/1334
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2012-17164(P2012-17164)
(22)【出願日】2012年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-156449(P2013-156449A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年10月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 ▲1▼ 日本液晶学会、2011年 日本液晶学会討論会 予稿集 PB57、平成23年9月10日(発行日 平成23年8月29日) ▲2▼ 平成24年1月12日、http://www.scphys.kyoto−u.ac.jp/education/graduate/2011 nendo/H23_M2_abstract.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 潤
(72)【発明者】
【氏名】川本 道久
(72)【発明者】
【氏名】高西 陽一
(72)【発明者】
【氏名】西山 伊佐
【審査官】 弓指 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−184522(JP,A)
【文献】 特開2008−107634(JP,A)
【文献】 特開2010−014869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/141
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板間に挟持された液晶組成物と高分子を含有する液晶・高分子複合材料層を有する液晶・高分子複合素子であって、該基板の少なくとも一方には、該液晶・高分子複合材料層を制御する電極を有し、該液晶・高分子複合材料層において液晶相が傾斜スメクチック相を有し、該傾斜スメクチック相のC−ダイレクターの配向が外場の規制力によらず一様に配向しており、前記液晶・高分子複合材料層において、構成する該液晶組成物単独の傾斜スメクチック相の層間隔が、該液晶・高分子複合材料層の傾斜スメクチック相の層間隔より小さいことを特徴とする液晶・高分子複合素子。
【請求項2】
前記液晶・高分子複合材料層において、傾斜スメクチック相を有する液晶の層間に高分子層を有する請求項1に記載の液晶・高分子複合素子。
【請求項3】
前記液晶組成物が、強誘電性液晶、反強誘電性液晶、又はフェリ誘電性液晶である請求項1又は2記載の液晶・高分子複合素子。
【請求項4】
前記液晶・高分子複合材料のC−ダイレクターの配向の方向が、液晶・高分子複合材料をその傾斜スメクチック相の上限温度を越えて加熱したのち傾斜スメクチック相を示す温度に冷却しても加熱前の配向が保持されている請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶・高分子複合素子。
【請求項5】
前記液晶・高分子複合材料の示す傾斜スメクチック相の層法線が基板に対して略水平となるよう液晶分子が配向し、電場を基板に対して略垂直となるように印加することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶・高分子複合素子。
【請求項6】
前記液晶・高分子複合材料の示す傾斜スメクチック相の層法線が基板に対して略垂直となるよう液晶分子が配向し、電場を基板に対して略水平となるように印加することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶・高分子複合素子。
【請求項7】
前記傾斜スメクチック相が、液晶分子のC−ダイレクタ―の配向を維持している請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶・高分子複合素子。
【請求項8】
駆体である重合性官能基を有する化合物を、前記液晶と混合したのちに重合することにより前記液晶・高分子複合材料層を得る、請求項1〜のいずれか一項に記載の液晶・高分子複合素子の製造方法
【請求項9】
前記重合を、外場によりC−ダイレクターを特定の方向に配向した状態で行う請求項に記載の液晶・高分子複合素子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶TV等の構成部材として有用な液晶・高分子複合素子に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性液晶は現在のネマチック液晶に代わる、次世代高速液晶ディスプレイに用いられる新物質として、1979年R.B.Meyerによる強誘電性の設計・強誘電性液晶発見、1980年初頭、Clark-Lagerwallによる表面安定化による双安定性の報告に始まり、1980〜1990年代、多くの企業がその実現に向けて研究を行ってきた。しかし残念ながら、液晶表示セルとして、電極つきガラス基板間に水平配向を強制した状態での配向不良、動作不良の問題が解決せず、現在ではほとんど撤退を余儀なくされている。
【0003】
a) 強誘電性液晶の研究の流れの中で、「高分子安定化強誘電性液晶」という、山口東京理科大:小林駿介先生により発明された技術がある。この技術は、強誘電性液晶中に液晶骨格を持つアクリレートモノマーを混合しておき、水平配向セルを作成した後、UV光を照射することによって、強誘電性液晶の持つ双安定性を潰して、単安定にすることにより配向の乱れが現れることを妨げようとしたものである。双安定性という特徴を失うが、代わりに一様な配向が実現しやすいという利点を持つ(例えば非特許文献1参照)。この場合には、液晶材料が本来有するC−ダイレクターの配列を安定化したのではなく、高分子安定化により強制的に本来とは異なるC−ダイレクターの配向分布を安定化したものであるということがいえる。
一方、近年、日立により開発されたネマチック液晶の水平方向電場による駆動方式(IPS)により、強誘電性液晶もあえて、問題が解決できない水平配向ではなくスメクチックの層がガラス基板に平行になる、垂直配向を用いようとする試みがいくつか試行され始めている。
【0004】
b) 東京工業大学の竹添秀男研究室、ドイツ国ハレ大学のチェルスケ研究室等では、バナナ型(東京工業大学の渡邊順次研究室で発見された。)液晶と呼ばれる液晶分子が作るSmA(スメクチックA)相において、水平配向電場をかけることにより複屈折を誘起しようとする試みがなされている。バナナ型分子のSmA相では、バナナ型分子のバナナの曲がり方向は様々な方向を向いているが、バナナ型分子はバナナの曲がり方向に自発分極を持っている(例えば非特許文献2参照)。したがって、ある程度強い電場をかけると、電場方向に上記の分極が偏在することで、同時にバナナ型分子の持っている屈折率異方性(分子長軸方向ではなく、バナナの曲りに沿った2軸性の短軸側)を誘起し、複屈折による光透過を電場で制御することができる。
問題点としては、バナナ型分子の短軸方向の向きは、基本的にSmA相では熱的にランダムな方向を向こうとしている(=液体、無秩序相である)。これに対してSmC*(カイラルスメクチックC)相の場合は、自発的に同じ方向を向こうとしている(=液晶層、秩序相)協同的に小さな力で変化が誘起される。つまり、駆動力は自発分極を使っているので大きいが、基本的には液体中で分子の配向を外場によって誘起するカー効果の変形であるため大きな電場を必要とする。同時に、バナナ型液晶の短軸方向の異方性(バナナの屈曲による)は、分子形状からそれほど大きくなく、誘起される屈折率異方性も小さいのが現状である。また、大きな複屈折を稼ぐためには、大きな駆動電圧を必要としていて実用上に難点がある。
【0005】
c) 反強誘電性液晶の螺旋維持状態で常誘電性駆動を用いた方法として、京都大学の高西准教授(本発明の共同研究者)と株式会社日立製作所の共同研究により発明された方法で、2010年に特許出願されている(非特許文献3参照)。強・反強誘電性液晶を液晶セル中に垂直配向にして封入すると、層間でC−ダイレクター(層内での液晶分子が傾いている方向を示すベクトル)が螺旋を描くように回転する(Clark-Lagerwallの方法では、水平配向にすることにより螺旋をほどいていた)。この性質は、コレステリック相と同様に、カイラルな液晶が持つ本質的な性質である。このため、液晶セルを上から見た場合複屈折性を示さない。前述b)のバナナ型液晶の原理では、この状態(電場0)を黒の状態として用いる。ここで前述a)の高分子安定化強誘電性液晶の方法と同様に水平電場を印加すると、反強誘電相では、隣り合う層で自発分極が打ち消されているので、C−ダイレクター方向に向いて傾いている液晶分子の常誘電性の異方性によって、電場方向にC−ダイレクターをそろえるようなトルクが働き、この結果セルを上から見たときに、屈折率の異方性を生じて複屈折により透過光が現れる。本方法では、さらに電場強度を強くすると強誘電状態に転移して、C−ダイレクターが電場と垂直になるようにさらに回転が起こるが、この変形は螺旋をほどくモードとなるため、変形速度が遅くなり液晶表示素子としては、反強誘電性を保った電場強度の領域を用いる。螺旋を維持するねじり力と、電場との力のバランスで連続的なリターデーション変化を調整できる。また、この領域では、10〜100μsecと現在のディスプレイの10〜1000倍の駆動速度を実現できる。
問題点としては、螺旋を維持したまま螺旋の歪を利用して複屈折を発生させているため、バナナ型液晶同様に複屈折の絶対値が小さく、液晶層の厚みを十分にとらないと完全な白・黒を実現できないが、液晶層の厚みを厚くすると、既存のIPS電極では十分な電場がかからない。また、F(強誘電)状態への転移が起きる電場強度以下で駆動しなければならないので、電場によって駆動力を増強することができない。また、駆動電圧も、バナナ型液晶同様、螺旋を歪ませることができるような十分に高い電圧を必要とする。
【0006】
d) 高分子安定化ブルー相とは、2002年に九州大学の菊池裕嗣氏により発明された技術(例えば特許文献1や、菊池裕嗣、梶山千里・「光学変調素子用液晶材料」、独立行政法人科学技術振興機構を参照)で、ブルー相内にある液晶秩序の欠陥に、重合性の分子を自発的に凝集させ、ブルー相の状態で光重合させることで、ブルー相の温度幅を数十℃も拡大して安定化することに成功したものである。前述a)の高分子安定化液晶相と異なり、重合により高分子化された物質が、液晶相の中で局在的に存在することを特徴とする。しかしながら、高分子安定化ブルー相では、液晶秩序の「欠陥」という、ブルー相など特殊な液晶相にしか存在しない場所をターゲットにして高分子化を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3779937号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】東京理科大学 古江研究室、“高分子安定化液晶”、[online]、2006年、[平成24年1月13日検索]、インターネット<URL: http://www.rs.noda.tus.ac.jp/~furuelab/introduction/ps.html>
【非特許文献2】東京工業大学 竹添・石川研究室、“バナナ形液晶で理想的なディスプレイを開発”、[online]、2006年、[平成24年1月13日検索]、インターネット<URL: http://www.op.titech.ac.jp/lab/Take-Ishi/Japanese/Research/Highlight/jjap.html>
【非特許文献3】京都大学 ソフトマター物理学研究室、“反強誘電性液晶の電場応答”、[online]、2011年9月11日、[平成24年1月13日検索]、インターネット<URL: http://softmatter.scphys.kyoto-u.ac.jp/studySCA.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
b,cの方法ともセル上面から見たときに、電場0での系の特質として分子配向がランダム化された状態を、黒状態として用いている。しかし、この方法では、本来の強誘電性相の特徴である、すべての分子のC−ダイレクターが同じ方向を向き協同的に運動するという特徴とは、異なる駆動原理を利用せざる得なくなっている。このことが、実効的な複屈折の減少や、駆動電圧の上昇を招いている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、傾斜スメクチック相におけるすべての液晶分子のC−ダイレクターを一様に配向することが可能な液晶・高分子複合素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために液晶配向の基本原理に基づき種々の方法を検討した結果、重合性化合物をスメクチック液晶相の層間に局在させ、外場を印加して液晶分子のC−ダイレクターを一様に配向させた後、層間の重合性化合物を重合させることにより、基板に近いものと基板から遠いものとを含む、すべての液晶分子の配向を維持することができることを見出し本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、第一の基板と、第二の基板と、前記第一の基板と第二の基板間に挟持された液晶組成物と高分子を含有する液晶・高分子複合材料層を有する液晶・高分子複合素子であって、該基板の少なくとも一方には、該液晶・高分子複合材料層を制御する電極を有し、該液晶・高分子複合材料層において液晶相が傾斜スメクチック相を有し、該傾斜スメクチック相のC−ダイレクターの配向が外場の規制力によらず一様に配向しており、前記液晶・高分子複合材料層において、構成する該液晶組成物単独の傾斜スメクチック相の層間隔が、該液晶・高分子複合材料層の傾斜スメクチック相の層間隔より小さいことを特徴とする液晶・高分子複合素子である。
また、本発明は、前駆体である重合性官能基を有する化合物を、前記液晶と混合したのちに重合することにより前記液晶・高分子複合材料層を得る、前記液晶・高分子複合素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、傾斜スメクチック相におけるすべての液晶分子のC−ダイレクターを一様に配向することが可能になる。なお、本明細書中でいうC−ダイレクターの「一様配向」あるいは「同じ方向に向いている」に関しては、すべてのC−ダイレクターがまったく同じ方向に揃っているというわけではなく、一般的な液晶物理の概念どおりに、C−ダイレクターが平均的にある特定の方向に一様に配向している(あるいは、同じ方向に向いている)ということを意味する。また、C−ダイレクターが同じ方向でなく逆方向を向いている場合も、その配列が平均的にある特定の向きに揃っているときは、同様に「一様配向」していると考えるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】傾斜スメクチック相を有する液晶相の電場に対する応答の一例を示す模式図である。
図2】本発明の液晶・高分子複合素子に用いられる液晶・高分子複合材料層の一例を示す模式図である。
図3】実施例における重合前後のセルを観察した偏光顕微鏡写真を示し、(a)は重合前で電場E=0、(b)は重合前でE<Eth、(c)は重合前でE>Eth、(b’)は重合後でE<Eth、(c’)は重合後でE>Ethの場合である。
図4】実施例における重合後のAF−Fスイッチングの様子を示す偏光顕微鏡写真を示し、(a)はリターダーなしで電場E=0、(b)はリターダーなしでE>Eth、(a’)はリターダーありでE=0、(b)はリターダーありでE>Ethの場合である。
図5】実施例における層間隔の温度依存性を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態に基づいて、本発明を説明する。
傾斜スメクチック相とは、分子の重心の位置に関して一次元の併進周期性(すなわち層構造)を有する液晶相(スメクチック相)のうち、分子の配向ベクトル(ダイレクター)が層(レイヤー)の法線の方向に対して傾斜して配向したものであり、SmC、SmF、SmG、SmH、SmI、SmJ(SmG′)、SmK(SmH′)等が知られている。これらの傾斜スメクチック相がカイラル分子を含みラセミでない系は、SmC*、SmF*、SmG*、SmH*、SmI*、SmJ*(SmG′*)、SmK*(SmH′*)等である。
【0015】
例えば、反強誘電性(antiferroelectric)を示すSmC*相で層に平行な電場を印加した際の応答を図1に示す。反強誘電相から強誘電相への相転移閾値電場をEthとすると、図1(a)に示すように電場0の状態(E=0)では液晶分子(図中、符号としてLCを付す。)が螺旋構造を取る。図1(b)に示すように、E<Ethの電場印加では常誘電異方性により、反傾秩序を保ったまま徐々に螺旋が歪み、やがて完全にほどけた反傾構造(AF状態)を取り、C−ダイレクターが電場方向を向く。図1(c)に示すように、E>Ethの電場印加により、自発分極を電場方向に揃え、強誘電相(F状態)に相転移してC−ダイレクターは電場と垂直となる。
【0016】
図2に、本発明の液晶・高分子複合素子に用いる液晶・高分子複合材料層の一例を示す。図2に示すように、傾斜スメクチック相を有する液晶の層間に、アンカリング層となる高分子(図中、符号としてAを付す。)を有すると、層ごとに高分子Aと液晶分子LCとの相互作用によりアンカリングが得られ、電場0の状態(E=0)でも、液晶分子LCの配向を保持することができる。上述のように液晶組成物と高分子を含有する液晶・高分子複合材料層は、傾斜スメクチック相のC−ダイレクターの配向が、外場の規制力によらず、一様に配向したものとなる。例えば、液晶が強誘電相にある場合は、液晶・高分子複合材料層の全体にわたって、すべての分子のC−ダイレクターを同じ方向を向けることができる。また、液晶が反強誘電相にある場合は、液晶・高分子複合材料層の全体にわたって、反強誘電性に従い、隣り合う層のC−ダイレクターが互いに反対方向を向くように配列して自発分極を打ち消す構造が生じる。また、液晶がフェリ誘電相にある場合は、反強誘電相と同様に隣り合う層のC−ダイレクターが互いに反対方向を向くように配列するが、その一の方向の双極子モーメントと反対方向の双極子モーメントとの大きさとが異なるために、巨視的に有限の自発分極を有する構造が生じる。
【0017】
液晶が例えば反強誘電性を示すものである場合、図2(a)に示すように、E<Ethの電場印加では反傾構造(AF状態)を取り、図2(b)に示すように、E>Ethの電場印加により、強誘電相(F状態)に相転移する。
図1の場合、E=0からE<Ethの間では、螺旋構造を取る状態から、螺旋が歪んだ状態、さらには螺旋がほどけた状態まで、徐々に変化するものであり、一般に液晶は高粘度であることから応答速度には制約が生じる。これに対し、図2の場合は、驚くべきことに、電場Eを、Ethから0まで低下させ、あるいは0からEthまで上昇させる間、反傾構造(AF状態)を保持することができる。したがって、電場E=0からE>Ethの電場を印加し、またはE>Ethの電場を切ることにより、反強誘電―強誘電状態間の応答が可能である。しかも、螺旋をほどいた状態から直ちに相転移させることができるため、高速な応答が期待できる。
【0018】
上述の液晶・高分子複合材料層を第一の基板と第二の基板間に挟持し、該基板の少なくとも一方には、該液晶・高分子複合材料層を制御する電極を有する液晶・高分子複合素子によれば、外場の規制力によらず一様に配向した状態と、電極から発生させた外場(電場や磁場等)によって配向を制御した状態とからなる2つの状態を取ることができる。したがって、今日ネマチック液晶で使われているフレデリクス転移の原理により光バルブを構成することができる。
液晶・高分子複合材料の示す傾斜スメクチック相の層法線が基板に対して略水平となるよう液晶分子が配向している場合、電場を基板に対して略垂直または斜め(例えば45°)となるように印加することにより、E=0のときとは異なる配向を取るように液晶分子を回転させることができる。
また、液晶・高分子複合材料の示す傾斜スメクチック相の層法線が基板に対して略垂直となるよう液晶分子が配向している場合、電場を基板に対して略水平または斜め(例えば45°)となるように印加することにより、E=0のときとは異なる配向を取るように液晶分子を回転させることができる。
【0019】
従来、水平配向の状態を用いたClark-Lagerwallによる表面安定化は、すべてのC−ダイレクターが基底状態で同じ方向を向いているという意味では本発明と同様であるが、表面安定化の場合、双安定性を持つ点で異なり、配向不良や動作不良の問題が大きい。また、表面安定化では、表面となる界面に分子が並行に配列する状態が安定化されるので、任意の方向にC−ダイレクターを安定化することはできない。また、表面による安定化を利用しているので、その表面の効果が十分に発揮されるためには薄いセルであるという制限があることは良く知られている。薄いセルは製造上も困難を伴い、また、セルの厚さに制限があるということは、セルの光学的・力学的などの諸特性を調整する範囲にも限界があることを示している。本発明によれば、傾斜スメクチック相のC−ダイレクターの配向が外場の規制力によらず一様に配向させることができることから、配向不良を抑制することができ、C−ダイレクターを任意の方向に安定化でき、原理的にセルの厚さに制限がないので、自由にセルの光学的・力学的などの諸特性に影響を与えるパラメーターを設定できるという利点がある。
【0020】
一方、垂直配向の状態では原理的にC−ダイレクターを固定する方法がこれまで見つかっておらず、C−ダイレクターのアンカリングは、これまで実現されたことがない。本発明によれば、液晶が基板に対して垂直配向している場合でも、層間のアンカリング層によりC−ダイレクターを固定することができる。特に、界面部分だけでなく、液晶のバルク部分にも配向規制力を発生していることが本発明の特徴で、そのため、液晶全体に均一な配向規制力が働くことになり、均一性による安定な配向と共同的運動による高速応答が期待できる。小林駿介先生により提唱された「高分子安定化」は、従来、C−ダイレクターが配列すべき方向ではなく、表面(基板)に水平でスメクチック層に垂直な、特定の方向に分子を安定化することを目的としており、そのため、一様な配向、および、安定化された一様配向に基づくグレースケール表示が得られるが、任意の方向にC−ダイレクターを配列しうる方法論はなく、また、ある特殊な方向(表面(基板)に水平でスメクチック層に垂直)に配列するために、固定化条件に種々の制約があり、また、うまく固定化できない場合もある。
本発明では、C−ダイレクターの配列の方向に特定の制約がなく、そのため、固定化条件の制約が少なく、また、製造も容易であるという利点がある。この方法では、液晶・高分子複合材料層の厚み方向のすべての液晶分子の自発分極を駆動力として液晶分子を回転でき、また複屈折も液晶・高分子複合材料層の厚み方向のすべての液晶分子の寄与を総和して用いることができる。分子の傾き角としては、45°以上の材料もあるので、ネマチック液晶の長短軸の屈折率異方性と比べても遜色ない。
なお、本発明では、液晶・高分子複合材料層の液晶を基板に対し水平配向として用いることもできるが、表面安定化による双安定状態とは異なり、基板からのアンカリング力を必要としないことから、セル厚をスメクチック液晶の螺旋ピッチ以上に厚くすることが可能である。
【0021】
垂直配向でのC−ダイレクターのアンカリングが達成されたので、従来のb),c)の方法とは異なり、電場0の状態で、すべての分子のC−ダイレクターが、偏光板の消光位方向に向くようにアンカリングしておくことで、黒状態を実現することができる。これに、垂直あるいは45°の水平電場と組み合わせることによって、現存のネマチック液晶に比べて10〜1000倍(液晶試料と駆動電圧に依存)の応答速度を実現する、液晶光バルブが動作することになる。実際に測定した応答速度もこの予測を満足している。
【0022】
傾斜スメクチック相を有する液晶の層間に、アンカリング層となる高分子層を形成する方法としては、前駆体である重合性官能基を有する化合物(重合性化合物)を液晶と混合し、液晶の層間に重合性化合物の層を形成したのち、外場によりC−ダイレクターを特定の方向に配向した状態で重合性化合物の層を重合する方法が挙げられる。重合性化合物は、液晶性を有する化合物でも、非液晶性の化合物でもよいが、液晶の母体となる液晶化合物に対して非相溶性であることが好ましい。従来の高分子安定化液晶とは異なり、高分子は三次元のネットワークを構成せず、スメクチック層間において二次元的な層を形成する。このようにして得られた液晶・高分子複合材料層においては、構成する該液晶組成物(重合性化合物及び高分子以外の成分からなる組成物)単独の傾斜スメクチック相の層間隔が、該液晶・高分子複合材料層の傾斜スメクチック相の層間隔より小さいものとなる。なお、重合性化合物を配合する量を変えると、重合性化合物を多くするほどスメクチック液晶の層間隔が拡大することから、重合性化合物は層間に局在して液晶を膨潤させていると考えられる。
【0023】
薄く柔軟な高分子層が得られるため、液晶分子がスメクチックA相やスメクチックB相等、ダイレクターが層の法線の方向に対して平行に配向する状態となっても、構造を維持することができる。これにより、液晶・高分子複合材料のC−ダイレクターの配向の方向が、液晶・高分子複合材料をその傾斜スメクチック相の上限温度を越えて加熱したのち傾斜スメクチック相を示す温度に冷却しても、加熱前の配向を保持することができる。
【0024】
液晶材料を基板間に充填する方法としては、従来の真空注入法、液晶滴下注入法(One Drop Fill)、フレキソ印刷法等が挙げられる。液晶材料を等方相やネマチック相等(より高温で安定な相)に加熱してから注入した後、必要なときに徐冷してネマチック相やスメクチック相等(より低温で安定な相)に相転移させることが好ましい。
【0025】
液晶分子を配向させるために使用可能な外場としては、磁場、電場、偏光(レーザー又は大光量ランプ)等の光場、せん断力等の流動(流動場)などが挙げられる。これらは、ラビングローラーのように基板表面に接触させる必要がなく、遠隔的に作用させることができるので、巨大な液晶ディスプレイパネルでも容易に配向処理できることになる。
外場に磁場を用いる場合、液晶分子の異方軸を磁場方向に揃えることができる。外場に偏光を用いる場合も、液晶分子の異方軸を偏光の振動面に揃えることができる。光照射による配向回転トルクを与えるには、例えば、アゾ基やクマリン基などの吸光性基を持つ分子を液晶材料中に混合して行うこともできる。吸光性基を持つ液晶材料に偏光を照射すると、光異性化や再配列等の作用により、液晶分子が回転トルクを受け、配向する。
【0026】
液晶材料としては、傾斜スメクチック相を有する液晶として、従来公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、フェニルビシクロヘキサン、ビフェニリルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、シクロヘキシル安息香酸フェニルエステル、シクロヘキシル安息香酸シクロヘキシルエステル、フェニルピリミジン、ビフェニリルピリミジン、2,5−ジフェニルピリミジン、フェニルジオキサン、ビフェニリルジオキサン、ジフェニルアセチレン(別名トラン)、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニリルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニリルエタン、シアノフェニルエステル、シアノビフェニルエステル、アルキルシアノビフェニル、アルキルシアノターフェニル、アゾキシベンゼンなどを骨格とし、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素など)、シアノ基、エーテル基、エステル基、アリール基等の置換基を有していてもよい液晶化合物などが挙げられる。液晶材料は、誘電率異方性が正のもの、負のもの、いずれも使用可能であり、誘電率異方性が正の液晶化合物と負の液晶化合物を併用することもできる。誘電率異方性を液晶の駆動の源とする場合には、C−ダイレクターの一様な配向が電界印加により変化するように、C−ダイレクターの一様な配向の方向、印加する電界の方向、及び、液晶材料の誘電率異方性の正負を選定することが好ましい。C−ダイレクターの一様な配向の方向と印加する電界の方向が略平行な場合には液晶材料の誘電率が負であることが好ましく、C−ダイレクターの一様な配向の方向と印加する電界の方向が略垂直な場合には液晶材料の誘電率が正であることが好ましい。また、液晶材料は、強誘電性液晶やフェリ誘電性液晶のように自発分極を有するか、あるいは、反強誘電性液晶のように電界印加により自発分極が誘起される材料を用いることが好ましい。自発分極を液晶の駆動の源とする場合には、電界は自発分極の向きを変える、あるいは反転させる向きに印加することが好ましい。印加する電界がC−ダイレクターの一様な配向に平行な成分を有する場合は自発分極の向きを変える駆動力が働き、また、印加する電界がC−ダイレクターの一様な配向に垂直な場合には、自発分極の極性を反転するような電界の極性を与えれば液晶材料を駆動することができる。また、液晶の駆動の源として、誘電率異方性と自発分極の双方を用いてもよい。また、これらの誘電率異方性、自発分極の作用は、液晶の駆動だけでなく、C−ダイレクターの一様な配向を得るための外場としても同様に用いることができる。
【0027】
前記重合性官能基を有する液晶材料を含有する組成物、または後述する重合性化合物(モノマー)を含有する組成物を用いる場合には、その組成物中に重合開始剤を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。重合開始剤は、本発明の重合性液晶組成物を効率よく重合させるために有用な化合物である。重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、具体的には以下の物が好ましい。
BASF社のイルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア127、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02、ルシリンTPO、ダロキュア1173。LAMBSON社のエサキュア1001M、エサキュアKIP150、スピードキュアBEM、スピードキュアBMS、スピードキュアPBZ、ベンゾフェノン。
これらの重合開始剤は、1種類でも良いが、2種類以上用いても良く、増感剤等を添加しても良い。
【0028】
液晶材料は、アキラルの液晶化合物でも、キラルの液晶化合物でもよい。キラルな液晶相(キラルネマチック相、キラルスメクチックA相、キラルスメクチックC相など)を得るため、キラルの液晶化合物を用いることもでき、また、アキラルの液晶化合物に非液晶性のキラル化合物を添加することもできる。傾斜スメクチック相、特にスメクチックC相を有する液晶が強誘電性、反強誘電性、又はフェリ誘電性液晶を示すためには、ラセミでない、キラルな系が好ましく、キラルの液晶化合物(液晶性のキラル化合物)又は非液晶性のキラル化合物を含有することが好ましい。これらのキラル化合物に不斉を導入するには、例えばメソゲンの末端の一方又は両方に連結する側鎖のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルコキシカルボニル基等を、分枝又は置換基を有する構造としたり、環式構造中に不斉原子や軸不斉、面不斉を含むものが挙げられる。
【0029】
液晶材料としてはスメクチックC相を用いることが好ましく、キラルなスメクチックC相の場合には、強誘電性液晶、フェリ誘電性液晶、反強誘電性液晶を用いることができる。その中でも、強誘電性液晶、反強誘電性液晶を用いることが材料入手の点から好ましい。強誘電性液晶としては、ホスト液晶(母体液晶)にキラル化合物(ドーパント)を含んだものを用いることが好ましい。
【0030】
<液晶性化合物>
ホストとなる液晶性化合物としては、下記の一般式
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Aは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
nは1、2、3、4又は5である。)で表される液晶性化合物(LC−0)が好ましい。
【0033】
また、下記の一般式
【0034】
【化2】
【0035】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
Xは各々独立にハロゲン原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFを表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−I)〜(LC−III)が好ましい。
【0036】
ここで、Cycloはシクロヘキサン(シクロへキシレン基)であることが好ましく、例えば下記一般式
【0037】
【化3】
【0038】
(式中、Rは各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−O−SO−、−SO−O−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
Xは各々独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
nは各々独立に0〜4の整数を表し、
、n、n及びnは、各々独立に0又は1を表すが、n+n+n+n=1〜4である。)で表される液晶性化合物(LC−I′)〜(LC−III′)が好ましい。
【0039】
液晶性を発現するためには、環に対して1,4−置換であることが好ましい。すなわち該液晶性化合物に含まれる環式2価基が1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2,5−ピリミジンジイル基などであることが好ましい。
例えば下記一般式
【0040】
【化4】
【0041】
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
11〜X22は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
11〜L14は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
、b、c、dは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、cが1の場合はaは0であり、b=c=1の場合はa=d=0であり、
Cycloは各々独立に炭素原子数3〜10のシクロアルカンを表し、任意に二重結合を有していてもよい。)で表される液晶性化合物(LC−Ia)〜(LC−IIIa)が好ましい。
また、下記一般式
【0042】
【化5】
【0043】
(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
環Aは各々1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、又は、1,4−シクロヘキシレン基を表し、
環Bは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基を表し、
環Cは1〜4つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−シクロヘキシレン基を表し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
Yは各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上の水素原子は各々独立にハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよく、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a、b及びcの合計は1、2または3を表す。)で表される液晶性化合物(LC−IV)、
【0044】
【化6】
【0045】
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又はフッ素原子を表すが、R21とR22が同時にフッ素原子となることはなく、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X27は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、又はOCF基を表し、
21〜L24は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
、b、c及びdは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0であり、b=c=1の場合はa=d=0である。)で表される液晶性化合物(LC−V)が好ましい。
【0046】
フェニルピリミジン系化合物のうち、強誘電性の発現に必要な傾いたスメクチック相を得るため、あるいは、分子の傾き角を大きくするため、もしくは融点を低下させるためには分子の環の部分に置換基として、少なくとも1つ以上のフッ素原子、CF基、あるいはOCF基が導入されることが好ましい。置換基としては形状の小さなフッ素を導入することが、液晶相を安定に保ち、また、高速応答性も保持する面で好ましい。置換基の数は1〜3が好ましい。
粘度が低く高速応答するため、環をつなぐ連結基(−Z−Y−Z−、又は−Y−L−Y−)としては、単結合、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、又は、−C≡C−からなるより選択されることが好ましく、特に、単結合であることが好ましい。分子の局部的な分極を抑制しスイッチング挙動への悪影響を少なくする面でも単結合が好ましい。一方、層構造の安定性を保つための材料としては粘度が高い方が好ましく、その場合には、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−からなるより選択されることが好ましく用いられ、特に、−CO−O−、−O−CO−が好ましく用いられる。
一方、融点を低下させる効果を大きくするという点では、側鎖(R、R11、R12、R21、R22)の一方または両方に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、イソプロピル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニルオキシ基を用いることが好ましい。
【0047】
Δnを大きくするのに適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
【0048】
【化7】
【0049】
(式中、R21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、水素原子、又はフッ素原子を表し、
該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−SO−、−SO−O−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はCN基で置き換えられていてもよく、
21〜X24は各々独立に水素原子、ハロゲン、シアノ基、メチル基、メトキシ基、CF基、又はOCF基を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を示し、
Lは各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、又は−C≡C−を表し、
は0、1、又は2を表し、b、及びcは0、1、又は2の整数を表し、a+b+cの合計は1又は2を表し、a=1のときc=0であり、c=1のときa=0である)で表される液晶性化合物(LC−VI)が好ましい。
【0050】
上記一般式(LC−I)〜(LC−VI)におけるYは、好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜7のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1つ又は2つ以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとして各々独立に−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0051】
TFT駆動に適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式
【0052】
【化8】
【0053】
(式中、eは0又は1を示し、
21〜X26は各々独立に水素原子、又はフッ素原子基を表すが、eが0のときX21〜X24の少なくとも1つはフッ素原子で、eが1のときX21〜X26の少なくとも1つはフッ素原子であり、
21及びR22は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の、1つの−CH−基が−O−で置き換えられてもよく、
25は単結合、−CHO−、又は−OCH−を表し、
環Aはフェニレン基またはシクロヘキシレン基を表す。)で表される液晶性化合物(LC−VII)が特に好ましい。
【0054】
液晶組成物に用いられる液晶性化合物は、上記の(LC−0)、(LC−I)〜(LC−III)、(LC−IV)、(LC−V)、(LC−VI)、(LC−VII)等のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。
【0055】
<キラル化合物>
本発明に用いられる液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、不斉原子をもつ化合物、軸不斉をもつ化合物、面不斉をもつ化合物、アトロプ異性体のいずれでもよく、該キラル化合物は重合性基を有するものでも、重合性基を有しないものでもよい。
不斉原子をもつ化合物において、不斉原子は不斉炭素原子であると立体反転が起こりにくく好ましいが、ヘテロ原子が不斉原子となっていてもよい。不斉原子は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていてもよい。
【0056】
該液晶組成物が、不斉原子をもつ化合物として、一般式(IV)
【0057】
【化9】
【0058】
(式(IV)中、R及びRは各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
及びRのうちいずれか一方又は両方が不斉原子をもつ基であり、
Zは各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、
及びAは各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
mは1、2、3、4又は5である。)で表される光学活性化合物が好ましい。
【0059】
上記一般式(IV)においてR及びRの両方がキラルな基である、ジキラル化合物がより好ましい。ジキラル化合物の具体例として、下記一般式(IV−a1)から(IV−a11)で表される化合物が挙げられる。
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
一般式(IV−a1)から(IV−a11)において、Rは、各々独立に炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよい。重合性基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
また、X及びXは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、フェニル基(該フェニル基の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。)、メチル基、メトキシ基、−CF、又は−OCFであることが好ましい。ただし、一般式(IV−a3)及び(IV−a8)において、*を付した位置が不斉原子となるためには、XはXと異なる基が選択される。
また、nは0〜20の整数である。
一般式(IV−a4)及び(IV−a9)におけるRは、水素原子又はメチル基が好ましい。
一般式(IV−a5)及び(IV−a10)におけるQは、メチレン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基などの二価の炭化水素基が挙げられる。
一般式(IV−a11)におけるkは、0〜5の整数である。
【0064】
より好ましい例示として、R=C,C13,C17などの炭素原子数4〜8の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基が挙げられる。また、XとしてはCHが好ましい。
【0065】
一般式(IV)及び(IV−a1)〜(IV−a11)における部分構造式、−A−(Z−A−は、より好ましくは、下記一般式(IV−b)
【0066】
【化13】
【0067】
(式中、環A、B、Cは、各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基又はナフタレンジイル基であり、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)であり、さらに好ましくは、下記一般式(IV−b1)〜(IV−b6)
【0068】
【化14】
【0069】
(ただし、これらの式(IV−b1)〜(IV−b6)においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。Zの定義は式(IV)におけるのと同じである。)が挙げられる。信頼性の面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環よりもベンゼン環やシクロヘキサン環の方が好ましい。誘電率異方性を大きくするという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことが良いが、その場合には化合物の持つ分極性が比較的大きく、ベンゼン環やシクロヘキサン環等の炭化水素環である場合には、化合物の持つ分極性が低い。このため、キラル化合物の分極性に応じて、適切な含有量を選択することが好ましい。
【0070】
また、液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、軸不斉を有する化合物又はアトロプ異性体を用いることもできる。
軸不斉とは、下記に示すアレン誘導体や、
【0071】
【化15】
【0072】
下記に示すビフェニル誘導体など、
【0073】
【化16】
【0074】
結合軸の回転が妨げられている化合物中、軸の一端側で置換基X及びYが互いに異なり、軸のもう一端側でも置換基X及びYが互いに異なることで発現する。なお、ビフェニル誘導体など、結合軸の回転が立体障害などの影響によって妨げられる場合をアトロプ異性という。
【0075】
キラル化合物に用いられる軸不斉をもつ化合物としては、例えば、
【0076】
【化17】
【0077】
が挙げられる。式(IV−c1)及び(IV−c2)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。
【0078】
また、式(IV−c1)において、R61及びR62は、各々独立に、アルキル基、アルコキシル基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基を表し、
63、R64、R65、R66、R67及びR68は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、又はジアルキルアミノ基を示し、
63、R64及びR65のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよく、
66、R67及びR68のうちの2つが、置換基を有していてもよいメチレン鎖又は置換基を有していてもよい、モノ又はポリメチレンジオキシ基を形成していてもよい。
ただし、R65とR66が共に水素原子の場合は除く。
【0079】
また、液晶組成物に用いられるキラル化合物としては、面不斉を有する化合物を用いることもできる。
面不斉を有する化合物としては、例えば下記に示すヘリセン(Helicene)誘導体
【0080】
【化18】
【0081】
(式(IV−c3)中、X61とY61、X62とY62は、それぞれ、いずれか少なくとも一方が存在し、X61、X62、Y61、Y62は、各々独立にCH、C=O、O、N、S、P、B、Siのいずれかを表す。また、N、P、B、Siである場合は、所要の原子価を満足するように、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基と結合されていてもよい。
61及びE62は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アリル基、ベンジル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基、アルキルケトン基、複素環基又はこれらの誘導体のいずれかを表す。)
【0082】
が挙げられる。このようなヘリセン誘導体においては、前後に重なり合う環の前後関係が自由に変換することができないため、環が右向きの螺旋構造をとる場合と左向きの螺旋構造をとる場合とが区別され、キラリティーを発現する。
【0083】
液晶組成物に含まれるキラル化合物としては、螺旋構造のピッチが小さくなるように、ねじり力(Helical Twisting Power)が大きい化合物が好ましい。特に400nm以下となる螺旋ピッチの短いDHFLCを調整する際は、ねじり力が大きい化合物を使用することが好ましい。ねじり力が大きい化合物は所望のピッチを得るために必要な添加量が少なくできるので、原料コストの高いキラル化合物を最小限に抑えることができ、コスト削減の観点から好ましい。この観点から、好ましいキラル化合物として、不斉原子を有する化合物である、一般式(IV−d1)〜(IV−d3)で表される化合物
【0084】
【化19】
【0085】
や、軸不斉を有する化合物である、一般式(IV−d4)〜(IV−d5)で表される化合物
【0086】
【化20】
【0087】
が挙げられる。式(IV−d1)〜(IV−d5)中、R71及びR72は各々独立に、水素、ハロゲン、シアノ(CN)基、イソシアネート(NCO)基、イソチオシナネート(NCS)基又は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、このアルキル基中の任意の1つ又は2つ以上の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、このアルキル中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく、
71及びA72は各々独立に、芳香族性あるいは非芳香族性の3ないし8員環、又は、炭素原子数9以上の縮合環を表すが、これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素原子数1〜3のアルキル基又はハロアルキル基で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH−は−O−、−S−、又は−NH−で置き換えられてもよく、環の1つ又は2つ以上の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、
71及びZ72は各々独立に、単結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基を表すが、任意の−CH−は、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−CSO−、−OCS−、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−N(O)=N−、−N=N(O)−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
71及びX72は各々独立に単結合、−COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、又は−CHCH−を表し、
71及びm72は各々独立に1〜4の整数を表す。ただし、式(IV−d5)におけるm71及びm72のいずれか一方は0でもよい。
式(IV−d2)中、Ar71及びAr72は各々独立にフェニル基又はナフチル基を表し、これらの基においてベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよい。
【0088】
キラル化合物としては、メソゲンを有するキラル化合物を用いることもできる。このようなキラル化合物として、例えば
【0089】
【化21】
【0090】
が挙げられる。式(IV−e1)〜(IV−e3)中、
81、R82、R83及びY81は、各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
81、Z82、Z83、Z84及びZ85は各々独立に炭素原子数が1〜40個であるアルキレン基を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上のCH基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−CF−又は−C≡C−により置き換えられていてもよく、
81、X82及びX83は、各々独立に−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−CHCH−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CF=CF−、−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−C≡C−、又は単結合を表し、
81、A82及びA83は各々独立にフェニレン基、シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、ナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基から選択される環式基を表し、前記フェニレン基、ナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つ以上の−CH=基が窒素原子で置き換えられてもよく、前記シクロヘキシレン基、ジオキソランジイル基、シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、テトラヒドロナフタレンジイル基、又はインダンジイル基は環内の1つ又は2つの隣接していない−CH−基が、−O−及び/又は−S−で置き換えられてもよく、前記環式基の1つ又はそれ以上の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、CN基、NO基、あるいは、1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子又は塩素原子で置き換えられてもよい、炭素原子数1〜7の有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基又はアルコキシカルボニル基で置き換えられていてもよく、
81、m82、m83はそれぞれ0又は1であり、m81+m82+m83は1、2又は3である。
CH*81及びCH*82は各々独立にキラルな2価の基を表し、
CH*83はキラルな3価の基を表す。
【0091】
ここで、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価の基としては、不斉原子を有する次の2価基
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】
【0094】
や、軸不斉を有する次の2価基
【0095】
【化24】
【0096】
が好ましい。ただし、CH*81及びCH*82に用いられるこれらの2価基において、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の任意の水素原子はハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、メチル基、メトキシ基、−CF、−OCFで置換されていてもよく、ベンゼン環の任意の1つ又は2つ以上の炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよい。
CH*83に用いられるキラルな3価の基としては、CH*81及びCH*82に用いられるキラルな2価基の任意の位置に、−X83(Z8383)m8383が結合できることにより3価の基となればよい。
【0097】
さらに好ましくは、キラルな2価基としてイソソルビド骨格を有する、次の化合物が挙げられる。
【0098】
【化25】
【0099】
式中、R91及びR92は各々独立に炭素原子数1〜30の直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、水素原子又はフッ素原子を表し、該アルキル基の1つ又は2つ以上の隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−NH−、−N(CH)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−O−SO−、−SO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、重合性基をもっていてもよく、前記アルキル基が縮合又はスピロ環式系を含むものでもよく、前記アルキル基が1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むことができる1つ又は2つ以上の芳香族又は脂肪族の環を含むものでもよく、またこれらの環はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンで任意に置換されていてもよく、
91及びZ92は各々独立に−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R)−、−N(R)−CO−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−又は単結合を表し、−CO−N(R)−又は−N(R)−CO−におけるRは水素原子又は炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝状のアルキル基を表す。
【0100】
液晶組成物中に、必要に応じて顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。
【0101】
液晶材料と複合させる高分子材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などが挙げられる。光硬化性樹脂としては、光硬化性アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂などが挙げられる。(熱又は光)硬化性樹脂を用いる場合、外場を印加する際は未硬化の液状樹脂又は重合性化合物(モノマー)であり、所望の配向状態が得られた後に該樹脂を硬化させることができる。
【0102】
例えばアクリル樹脂の場合、アクリレートを主成分とする狭義のアクリル樹脂でも、メタクリレートを主成分とするメタクリル樹脂でもよく、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル類(アクリレート又はメタクリレート。以下、両者を総称して「(メタ)アクリレート」という。)の1種からなる単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートからなる共重合体、1種以上の(メタ)アクリレートと1種以上の他のコモノマーからなる共重合体が挙げられる。重合性化合物(モノマー)としては、例えば次のものが挙げられる。
【0103】
1分子に重合性官能基を1つ有する、単官能性(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート;その他の脂肪族(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基含有(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0104】
1分子に重合性官能基を2つ有する、二官能性(メタ)アクリレートとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7−ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;その他の脂肪族ジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール類またはそのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド(EO)やプロピレンオキサイド(PO)等)変性体のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0105】
1分子に重合性官能基を3つ以上有する、多官能性アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
他のコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0106】
本発明で液晶・高分子複合材料層を形成するのに使用する組成物として、好ましくは、スメクチック液晶と非液晶性アクリルモノマーの混合系が挙げられる。非液晶性モノマーの液晶に対する非相溶性を利用し、非液晶性モノマーをスメクチック層間に局在化させることにより、局所的に高分子化した状態の実現と、それによるC−ダイレクターの配向制御を実現することができる。
従来、高分子化を用いた液晶の安定化には、高分子安定化強誘電性液晶や液晶ゲル/エラストマーなどのように、試料中に3次元的な高分子ネットワークを均一に形成させたものと、高分子安定化ブルー相のように、構造に特異な欠陥構造を選択的かつ局所的に高分子化する2種類の方法があると理解されている。本発明の「高分子安定化」は、選択的かつ局所的に高分子化することを意図したものであるが、ブルー相のように特異な欠陥構造を利用したものではなく、一般的なスメクチック相の液晶材料に適用することができる。したがって、本発明は、様々な液晶秩序の新しい状態制御の概念として、普遍的に応用するための基礎的なモデル系となる。この意味では、高分子安定化ブルー相は、液晶秩序の「欠陥」という、ブルー相など特殊な液晶相にしか存在しない場所をターゲットにして、高分子化を行っているのに対して、本発明は、スメクチック層の層間という、スメクチック相に普遍的に存在する動的構造をターゲットにしている点が本質的に異なる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
試料は、(1)反強誘電性液晶として、4−(1−メチルヘプチルオキシカルボニル)フェニル−4’−オクチルオキシビフェニル−4−カルボキシレート(MHPOBC)、(2)非液晶性モノアクリル化合物として、ドデシルアクリレート(dodecyl acrylate)、(3)非液晶性ジアクリル化合物として、1,6−ビス(アクリロイルオキシ)ヘキサン[1,6-bis(acryloyloxy)hexane]、(4)重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMPAP)を用いて、重量比(1):(2):(3)=97:1.5:1.5((4)は0.1%以下)の混合試料を調製し、垂直配向処理した櫛歯電極セル(電極間距離15μm、セル厚4〜10μm)に注入した。櫛歯電極セルは、垂直配向下でスメクチック層に平行な電場を印加するために用いた。
【0108】
混合試料にEth以下の電場を印加し、螺旋の十分ほどけたAF構造(図1(b))状態で2mW/cmの紫外光を1分間照射して、層間に局在したアクリルモノマーの高分子化を行った。重合前後の偏光顕微鏡写真を図3に示す。図3中、十字線は偏光子の方向を表し、矢印は電場印加方向を表す。左上から右下に向かう黒いパターンは櫛歯電極である。電場印加方向は偏光子の透過容易軸に対して45°傾けて配置している。
図3(b)でAF状態による複屈折が確認できた。また、重合後に電場を切った状態が図3(b’)であり、電場を0にしても図3(a)(分子配列は図1(a))の螺旋状態(暗視野)には戻らず、図1(b)ないし図2(a)のAF状態が保持された。このことより、高分子化によるC−ダイレクターの配向方向が固定(メモリ化)されていることを確認することができた。
【0109】
さらに重合後、Ethを越える電場印加により、図2(a)と図2(b)に示す反強誘電―強誘電状態間の応答が可能か試みた。重合後のAF−Fスイッチングの様子を図4の偏光顕微鏡写真に示す。図4中、十字線は偏光子の方向を表し、長い矢印は電場印加方向を表し、短い矢印はC−ダイレクターの方向を表す。左上から右下に向かう黒いパターンは櫛歯電極である。
リターダーなしの場合、AF状態とF状態の二つはC−ダイレクターの方向が90°異なるが、クロスニコル下では偏光子とのなす角は共に45°であるため、明確に区別が付かない(図4(a)と図4(b)参照)。そこでリターダー(Δnd=530nm)を遅相軸が電場方向と平行になるように試料と検光子の間に配置し、AF状態とF状態を区別できるようにした。願書に添付の図面代用写真ではグレースケールとせざるを得ないため、カラー情報を含めることができなかったものの、図4(a’)はC−ダイレクターとリターダーの遅相軸が平行となり青色(図4(a)、図4(b)と同系統の色)を、図4(b’)は垂直となり赤橙色を呈している。このことから、重合後E>Ethの電場印加により図2(b)のF状態へ電場誘起相転移し、電場を切ると再び図2(a)のAF状態に戻ることが確認できた。
【0110】
C−ダイレクターの配向制御(メモリ化)が、層間に高分子が入り込むことによるものだとすると、アクリル化合物の混合により層間隔の膨潤が生じている可能性が高いと考えられる。そこで、小角X線回折実験を行い層間隔の温度変化を測定した。各試料の層間隔の温度依存性を図5に示す。図5よりアクリル化合物混合系ではMHPOBC単体に比べ層間隔が増加しており、その膨潤率は重合前SmC*相ではアクリル添加率とほぼ一致するので、アクリルは層間に一次元的に入り込んでいると推測できる。なお重合後は重合前に比べると層間隔は少し収縮しているが、これは高分子化による密度の上昇によるのではないかと考えられる。
以上のことからSmC*相のAF状態で、層間の局所的高分子化により、AF状態のC−ダイレクターの配向メモリと、電場ON/OFFによるAF−F状態間のC−ダイレクター一様配向状態のスイッチング制御が可能であることを実証した。
【0111】
なお、現時点では本発明の主要技術であるスメクチック層間の高分子安定化による、C−ダイレクターのアンカリングは、実現されているがそのメカニズムが理解できていない。層間でC−ダイレクターはアンカリングされていると考えられるが、十分強い電場に対してはC−ダイレクターは回転できることから、スメクチックC相における、見かけのコーン上の回転角方向の自由度は残存しているし、その応答速度も重合前と変わらない。また、温度を上昇させた場合、スメクチックA相に相転移することから、極角(チルト)方向の自由度も凍結されていない。さらに温度を上昇させ、次いで下降させて、スメクチックC相→スメクチックA相→スメクチックC相と転移させた場合、最初のスメクチックC相で向いていた回転角方向に液晶分子はチルトして、C−ダイレクターはスメクチックA相を経由してもメモリ(アンカリング)されている。このように、極角、回転角の2つの自由度は完全に凍結されていないにも関わらず、いずれも重合時の方向を保存しているのである。このメカニズムについては、今後の研究により明らかにすべき事項である。
ミクロな層構造については、X線回折実験により、重合性モノマーの添加前の状態、重合性モノマー添加後の状態、モノマー重合後の状態は、若干重合後にシュリンクのあるものの、溶媒であるモノマーによる層間の膨潤が起こって重合性モノマーの局在が実現できていることと、重合が層間にモノマーが局在した状態を保存して、重合が起こっていることを確認できる。一方で層周期の温度依存性も保存されており、温度によってスメクチックA−スメクチックC相転移が起こって液晶分子が傾くことにより、層周期がシュリンクすることも確認できている。ミクロな測定からも、図2に示すような発明者の設計通りの物質制御ができていると確認できていて、かつ傾きの自由度は凍結されていないことがわかる。
【符号の説明】
【0112】
A…高分子、LC…液晶分子。
図1
図2
図5
図3
図4