【実施例】
【0076】
〔1.材料および方法〕
〔1.1.試薬〕
特異的PAFアンタゴニストとして、TCV−309(武田薬品工業,大阪より譲渡)、BN 50739(Institute Henri Beaufour, Le Plessis Robinson, Franceより譲渡)、およびWEB 2086(Tocris Cookson Limited, Bristol UK) を使用した(
図1)。作用機序の異なる比較対照として、ガバペンチン(Sigma/RBI, Natick, MA)を用いた。
【0077】
BN 50739を、45% 2-hydroxypropyl-β-cyclodextrin(Sigma/RBI, Natick, MA)に溶解し、1M NaOHでpH6.0に調整(5mg/mL)した後に、人工脳脊髄液(ACSF)または生理食塩水で希釈した。その他の試薬は、ACSFまたは生理食塩水に溶解した。ACSFの組成は、NaCl 142mM、KCl 5mM、CaCl
2・2H
2O 2mM、MgCl
2・6H
2O 2mM、NaH
2PO
4 1.25mM、D−glucose 10mM、HEPES 10mMで、pH7.4に調整した。試薬を、静脈内投与、経口投与または脊髄くも膜下腔内投与した。静脈内投与(i.v.投与)について、各種試薬(5mL/kg体重)をマウス尾静脈より投与した。経口投与(p.o.投与)について、マウス用経口針を用いて各種試薬(5mL/kg体重)を胃腔内に直接投与した。脊髄くも膜下腔内投与(i.t.投与)について、ACSF 5μLに溶解した各種試薬(5mL/kg体重)を、Hamilton micro syringe(27ゲージ1/2の注射針)でマウスの第5、第6腰椎間からゆっくり投与した。針が脊髄くも膜下腔内へ刺入されたことを、マウスの尾の反射性の速い動き「flick」によって確認した。脊髄腔内投与した薬物の分布については、malachit greenまたはcommassie brilliant blueの脊髄腔内投与による染色分布から脊髄の腰椎部分に限定されることが示されている。
【0078】
〔1.2.動物〕
実験には、生後6週齢、25〜30gのC3H/HeN系雄性マウスを用いた。1ケージ当たり5匹の状態で、室温22±1℃、湿度55±10%、12時間の明暗サイクル(明期:午前8時〜午後8時)の環境下で飼育した。飼料および水を自由に摂取させた。実験は。明サイクルの間に実施した。動物の取り扱いは全て、日本薬理学会動物取り扱いガイドラインおよび広島大学動物取り扱いガイドラインに準拠して行った。短期間での体重の著しい減少(20%以上)、或いは、摂水や摂食が困難となり衰弱の著しいマウスは、苦痛軽減をはかるため、安楽死処置した。
【0079】
〔1.3.マウス大腿骨癌モデルの作製〕
マウス大腿骨癌モデル(FBCマウス)を、C3H/HeNマウス左大腿骨骨髄内に骨溶解性肉腫細胞NCTC2472を移植して作製した。C3H/HeNマウスをsodium pentobarbital (50mg/kg、腹腔内投与)麻酔下にて皮膚を切開し、大腿骨を露出させた。歯科用リーマー(25号)を用いて、大腿骨の遠位部に注入口を作製した。2×10
7個/mL(HBSS)に調整した細胞浮遊液を5μL、30G注射針およびマイクロシリンジを用いて注入口から注入した。歯科用セメント(キャビトン)で注入口を塞ぎ、皮膚を縫合した。Shamマウスは、細胞の代わりにHBSSを5μL注入して作製した。各種処置群への無作為化および薬物投与を、術後11日目に行った。
【0080】
〔1.4.細胞培養〕
NCTC2472細胞を、10%ウシ胎児血清、100unit/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンを含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM)を用いて、5%CO
2、95%空気の環境下にて37℃で培養した。
【0081】
〔1.5.癌性疼痛の強度の評価〕
癌性疼痛の重篤度は以下の[1]〜[4]によって評価した:
[1]アロディニアスコア(Allodyina score);ペイントブラシで軽く患部を撫でる触覚刺激に対する逃避行動(疼痛関連行動)の程度をスコア化して評価した.すなわち、「0: 反応なし,1: 軽く鳴く,筆から逃れようとする,2: 激しく鳴く,筆にかみつこうとする,筆から激しく逃れようとする」を基準とした.
[2]アロディニア閾値(Withdrawal threshold);von Frey hairsフィラメントによる患肢足蹠刺激に対するマウス後足の逃避行動閾値より評価した.刺激強度閾値剛性はグラムで表した.
[3]Guarding behavior(安静時に患肢を持ち上げる行動);マウスを底が金網のプラスチックケージ内で自由に行動させ、2分間の観察中に患肢の防御行動(guarding behavior)、すなわち、患肢を床から持ち上げている防御行動の時間を測定して評価した.
[4]Limb-use abnormality(体動時に患肢を不自然に使う行動);マウスの歩行異常の程度をスコア化して評価した.すなわち、「0: 正常な歩行,1: 軽い跛行,2: 明らかな跛行,3: 患肢を一部使用せずに歩行,4: 患肢を使用せずに歩行」を基準とした。
【0082】
評価を、薬物の投与前、および投与後の所定の時点で行った。研究は観察者に処置群を判別し得ない環境下にて行った。
【0083】
〔1.6.脊髄PAF受容体ノックダウンマウスの作製〕
RNA干渉によるin vivoでの標的遺伝子のノックダウンを、マウスPAF受容体遺伝子に特異的な配列からPAF受容体特異的2本鎖RNA(small interfering RNA,siRNA)を作製し、hemagglutinating virus of Japan envelope vector system(HVJ-Envelope Vector Kit GenomeONE; Ishihara Sangyo Kaisha, Ltd., Osaka, Japan)に封入した後に、マウスの第5、第6腰椎間から脊髄腔内投与することによって行った.標的タンパク質の発現を、免疫ブロット法および免疫組織化学分析によって確認した。同一量のmutant siRNAおよびHVJ-Envelope Vectorのみを投与したものを、対照群とした。
【0084】
〔1.7.便秘の評価〕
モルヒネ投与による便秘を、脱糞量の減少、および肛門括約筋と膀胱括約筋の収縮により生じるとされるマウスの挙尾反応の亢進によって評価した。マウスを薬物投与24時間前からテストケージ(床が格子状のアクリルケージに濾紙を敷いた)の中で飼育することによって環境に順化させた。飼料および水を自由に摂取させた。モルヒネ(0.1〜10 mg/kg)を皮下投与した後に、脱糞量と挙尾反応の有無について1時間観察した。観察中は試料および水を与えなかった。1時間の脱糞量を、マウスの体重で補正した。挙尾反応は実験時間中に尾を45°以上に挙上したマウスの割合で評価した。マウスを、1回の実験にのみ使用した。
【0085】
〔1.8.統計処理〕
有意差検定を、Dunnett’s Post-hoc Procedure によって行った(*P<0.05)。
【0086】
〔2.結果〕
〔2.1.PAFアンタゴニストによるFBCマウスにおける疼痛緩和作用〕
NCTC2472細胞の移植11日後のFBCマウスに、TCV−309(0.01〜3mg/kg)、WEB2086(0.1mg/kg)、およびBN50739(0.1mg/kg)、またはビヒクルとして生理的食塩水、2−hydroxypropyl−β−cyclodextrin溶液を、静脈内投与した。アロディニアスコア、アロディニア閾値、Guarding behavior、Limb-use abnormalityについて、投与後10日間にわたって経時的にモニタリングした。
【0087】
癌細胞の移植11日後には、アロディニアスコア(触刺激に対する逃避行動)は最大(スコア2)に達した。TCV−309の静脈内投与によって、アロディニアスコアは顕著に減少し、0.1mg/kg以上の用量で、投与1〜3日後にはほとんどアロディニア反応を示さなかった(
図2A)。この効果は、0.01mg/kgから0.3mg/kgまでにおいて用量依存的に認められた。また、この効果は、投与5〜6日後まで持続した。TCV−309静脈内投与は、アロディニア閾値(痛覚閾値(gm))を上昇させ、この効果はアロディニアスコアと同様に長期間にわたって持続した(
図2B)。癌細胞の移植後のマウスが、安静時に患肢を持ち上げる行動(Guarding behavior)は、疼痛の1つの指標と考えられる。Guarding behavior時間は、TCV−309の静脈内投与によって、用量依存的に短縮し(0.01mg/kgから0.3mg/kg)、投与3日後までほとんどGuarding behaviorは見られなくなった。この効果は、投与7日後まで観察され、10日後には回復していた(
図2C)。マウスの歩行異常を指標とするLimb-use abnormalityスコアもまた、他の結果と同様に、用量依存的に抑制された(0.01mg/kgから0.3mg/kg;
図2D)。
【0088】
同様の疼痛緩和作用が、経口投与(TCV−309、0.3mg/kg)によって認められ、この効果は、投与後8日間にわたって認められた(
図3A〜D)。FBCマウスにおいては、癌細胞の移植3日後から疼痛反応が発現し、10日後には最大反応となった(
図4)。癌細胞の移植と同時にTCV−309投与を開始することによって、疼痛の発現が抑制され、TCV−309を4日毎に8回にわたって連続投与することによって28日間にわたって疼痛反応が全くみられなかった。また、その鎮痛効果に耐性を生じることはなかった(
図4)。これらの結果は、癌性疼痛の発生前に、あるいはごく初期段階に、TCV−309を用いることによって、痛みの増悪反応を回避することができること、および、より効果的な疼痛緩和効果が得られることを示唆する。
【0089】
このように、PAFアンタゴニストTCV−309は、極めて少量で、長期間持続する疼痛緩和作用を発揮することが示された。このTCV−309による作用が、PAF受容体に対して特異的に拮抗的阻害作用を及ぼすことによって発現していることを確認するために、化学構造の異なる他のPAFアンタゴニストを用いて検討した。WEB2086(0.1mg/kg)またはBN50739(0.1mg/kg)を静脈内投与した場合もまた、TCV−309と同様の疼痛緩和作用が認められた(
図5A〜D)。このことから、PAFアンタゴニストによる疼痛緩和作用は、個々の化合物の構造に起因するのでなく、PAF受容体を阻害することに起因しているということが強く示唆された。
【0090】
PAFアンタゴニストの作用点を明確にするために、TCV−309を脊髄腔内に投与した時の影響について検討した(
図6A〜D)。極めて微量のTCV−309(10pg/マウス)を脊髄腔内投与した場合に、3〜4日間持続する強力な疼痛緩和作用が惹起された。したがって、TCV−309の作用点には少なくとも脊髄が含まれることが示唆された。
【0091】
しかし、どのような化合物であっても、目的の作用以外の非特異的作用を有している可能性を完全に否定することはできない。そこで、化学物質が生体分子に直接結合して何らかの作用を発現する可能性を排除するために、PAF受容体のmRNAに特異的なsiRNAを用いて、脊髄PAF受容体タンパク質の発現を抑制したマウスにおける効果を検討した。FBCマウスにおいて、siRNAを用いて脊髄PAF受容体をノックダウンした。siRNAの投与2〜3日後をピークとする疼痛緩和作用が観察された。具体的には、アロディニアスコア、アロディニア閾値、Guarding behavior、Limb-use abnormalityのいずれの疼痛指標においても、同様の経時的な変化が認められた(
図7A〜D)。このタイムコースは、PAF受容体タンパク質の発現消長の経時的な変化と対応していた(図示せず)。これらの結果より、PAFアンタゴニストの疼痛緩和作用の機序には、少なくとも脊髄のPAF受容体の特異的阻害が含まれる可能性が示唆された。
【0092】
〔2.2.FBCマウスにおけるモルヒネの疼痛緩和作用の、PAFアンタゴニストによる増強〕
TCV−309(0.01 mg/kg)の投与1日後のFBCマウスにモルヒネ(0.3mg/kgまたは10mg/kg)を投与し、その20分後または4時間後の疼痛緩和作用を検討した。TCV−309単独投与(モルヒネなし)の場合、アロディニスコアは約50%抑制され、モルヒネ単独投与(TCV−309なし)の場合、アロディニアスコアを全く抑制されなかったが、TCV−309とモルヒネとを併用することによって、モルヒネ投与20分後のアロディニアスコアはほぼ完全に抑制された(
図8A左)。アロディニア閾値(
図8B左)、Guarding behavior(
図8C左)、Limb-use abnormality(
図8D左)についても、TCV−309とモルヒネとを併用することによって、顕著な疼痛緩和作用が認められた。このことは、TCV−309が、モルヒネの本来の作用持続時間内でモルヒネの効果を増強したこと、あるいはモルヒネの存在がTCV−309の効果を増強したことを示している。しかし,モルヒネ投与4時間後に観察した疼痛緩和作用は、TCV−309単独投与(モルヒネなし)の場合と同程度であった(
図8A右〜8D右)。このことは、モルヒネの鎮痛作用が投与4時間後には消失していること、および、TCV−309がモルヒネの作用持続時間を延長しないことを示している。
【0093】
種々の濃度のTCV−309(0.01mg/kg〜0.3mg/kg)の投与7日後のFBCマウスにモルヒネ(0.3mg/kg)を投与し、その20分後の疼痛緩和作用を検討した。TCV−309単独投与による疼痛緩和作用は、投与7日後にほぼ消失していた(
図9A)。TCV−309(0.01mg/kg)にモルヒネ(0.3mg/kg)を併用しても抗アロディニア作用がみられなかったが、TCV−309(0.03mg/kg〜0.3mg/kg)にモルヒネ(0.3mg/kg)を併用した場合、TCV−309の用量依存的に強い抗アロディニア作用が認められた(
図9A)。アロディニア閾値(
図9B)、Guarding behavior(
図9C)、Limb-use abnormality(
図9D)のいずれにおいても、同様の増強作用が認められた。これらの効果は、TCV−309の代りにWEB2086またはBN50739を用いた場合においても、観察された(
図10A〜D)。これらのことは、PAFアンタゴニストによる疼痛緩和作用が持続性であることを示すとともに、モルヒネの作用を増強する効果もまた持続性であることを示している。
【0094】
図11に、FBCマウスにおける、モルヒネ単独投与の疼痛緩和作用の経時的変化を示す。モルヒネは10mg/kg以上の皮下投与で鎮痛効果を示し、鎮痛効果の持続時間は2〜3時間であった。しかし、モルヒネの用量依存性は、von Frey test (B)以外では認められなかった。これは、モルヒネの用量が10mg/kg以上の場合に、自発運動が用量依存的に著明な亢進したために、疼痛強度を正当に評価することができなかったためであると推測される。
【0095】
このことを確認するために、TCV−309(3μg/kg、10μg/kg)の投与1日後のFBCマウスに種々の用量のモルヒネを投与し、その20分後の疼痛緩和作用を調べた。TCV−309(3μg/kgおよび10μg/kg)を予め投与しておくことによってモルヒネの鎮痛作用が強力に増強され、しかも、低用量のモルヒネ(0.1mg/kg)によってほぼ完全な鎮痛効果が得られることがわかった(
図12A〜D)。さらに、種々の用量のTCV−309(0.1μg/kg〜10μg/kg)の投与1日後のFBCマウスにモルヒネ(0.3mg/kg)を投与し、その20分後の疼痛緩和作用を調べた。低用量(1μg/kg)であってもTCV−309を予め投与しておくことによってモルヒネの鎮痛作用が強力に増強されることがわかった(
図13A〜D)。
【0096】
図14に、TCV−309をモルヒネと併用した場合の、FBCマウスにおける疼痛緩和作用の経時的変化を示す。高用量のモルヒネ(10mg/kg以上)の単独投与の場合(
図11)と同様に、鎮痛効果の持続時間は2〜3時間であった。このことは、TCV−309をモルヒネと併用することによってモルヒネの鎮痛作用が強力に増強されるものの、持続時間には影響しないことがわかった。
【0097】
上述した、疼痛緩和作用がPAFアンタゴニストに特異的な効果であることを検証するために、難治性疼痛の緩和に期待されているガバペンチン(抗痙攣薬)の作用を調べた(
図15A〜D)。ガバペンチンは、短時間(2時間以内)での鎮痛効果を用量依存的に示したが、その作用は高用量の静脈内投与(30mg/kg)であっても弱かった。また、高用量のガバペンチンの静脈内投与(30mg/kg)によってマウス自発運動量が亢進し、1.5時間程度持続した。さらに、ガバペンチン(10mg/kg)を静脈内投与した30分後にモルヒネ(1mg/kg)を皮下投与しても、さらなる鎮痛効果は得られなかった。このことは、有望なガバペンチンであっても、有効な疼痛緩和作用を示すことはなく、また、モルヒネの鎮痛作用を増強しないことを示す。図中の各測定値は、6〜7例の平均値±標準誤差で示している。
【0098】
〔2.3.モルヒネによって誘発される排便抑制に対する効果〕
モルヒネの副作用として、便秘がよく知られており、モルヒネの有効量の2%程度を用いるだけで便秘が生じる。そこで、モルヒネの副作用に対するPAFアンタゴニストによる効果を検証した。
【0099】
TCV−309(10μg/kg)の静脈内投与3時間後のFBCマウスにモルヒネ(0.01−10mg/kg)の皮下投与を行い、その脱糞量および挙尾反応を調べた(
図16)。高用量のモルヒネ(0.3mg/kg以上)を投与した場合は、脱糞量の減少が、モルヒネの用量依存的に観察された。しかし、低用量のモルヒネ(0.03mg/kgおよび0.01mg/kg)を投与した場合は、脱糞量に差異はなかった(便秘が認められなかった)(
図16A)。TCV−309はモルヒネの挙尾反応には影響しなかった(
図16B)。
【0100】
〔2.4.PAFアンタゴニストによるFBCマウスの延命効果〕
FBCマウスに、NCTC2472細胞の移植直後から4日間隔でTCV−309(0.3mg/kg)を静脈内投与した。対照群として生理食塩水を4日間隔で移植の1日後〜16日後まで投与した。
図16C・Dに、FBCマウスにおけるPAFアンタゴニストの延命効果を示す。縦軸は死亡率(がん死亡および安楽死を含む。)を示す。生理食塩水投与群(n=46)において、移植17日後からマウスは摂水/摂食が困難になる例が出現し始め、移植26日後では50%以上のマウスが、移植60日後では全てのマウスが極度の衰弱に陥り、生命維持が困難な状態(安楽死の対象)となった。しかし、TCV−309投与群(n=32)では、移植30日後でも全てのマウスの摂食状態は良好であった。なお、移植32日後から衰弱が観察され初め、52日後に50%のマウスが、79日後に全てのマウスが生命維持が困難な状態となった(
図16C)。TCV−309を1日1回で6〜7日間にわたって連続的に頻回静脈内投与(n=14〜21)することによって、癌のステージにかかわらず(すなわち癌細胞移植直後であっても、疼痛が顕著になった後であっても、癌細胞移植55日後であっても)、全てのマウスの状態は良好であった。なお、移植60日後前後から衰弱が観察され始め、90日後で36〜41%のマウスが生命維持が困難な状態となった(
図16D)。このことよりPAFアンタゴニストによる延命効果が期待される。
【0101】
〔2.5.PAFアンタゴニストのin vivoでの阻害様式および受容体の内在化〕
種々の濃度のPAFを脊髄腔内投与することによって発症させたアロディニアに対するPAFアンタゴニストの阻害動態に基づいて、PAFアンタゴニストのin vivoでの阻害様式を評価した。PAF(10pg、0.1ng、1ng)の脊髄腔内投与によりアロディニアを発症させた後、TCV−309(0.1mg/kg)の静脈内投与による抗アロディニア作用を経時的に評価した。また、TCV−309の抗アロディニア作用のキネティクスを、各濃度のPAFを脊髄腔内に投与したことによるアロディニアの強度に対する、TCV−309(0.1mg/kg)の静脈内投与による20分間前処置および3日間前処置の作用から求めた。
【0102】
無処置マウスにおけるPAF(10pg、0.1ng、1ng)の脊髄腔内投与によるアロディニア発症の30分後にTCV−309(0.1mg/kg)を静脈内投与した際の抗アロディニア効果を検討した。TCV−309投与後直ちにアロディニアスコアは減少し10〜20分後には抗アロディニア作用は最高値に達し、その作用はPAFの投与量に依存しており、10pg、0.1ngおよび1ngのPAFに対してそれぞれ97%、37%、10%の阻害を示した。TCV−309の抗アロディニア作用は、その後6時間後まで強度が一定していたが、6〜12時間後の間に急速に強まり、12時間後にはPAFの作用を完全に拮抗した。対照的にvehicle(溶剤)処置群ではPAFのアロディニア強度は投与6時間までは一定に推移したが、6時間後以降に軽度の減少を示した(
図17A)。
【0103】
TCV−309(0.1mg/kg)の20分間前処置では、PAF誘発アロディニア反応の用量−作用曲線を右に平行移動(競合的拮抗阻害)させた。TCV−309を3日間前処置するとPAFの用量−作用曲線は右にシフトし、かつ、その最大反応は顕著に抑制(非競合的拮抗阻害)された(
図17B)。PAFアンタゴニストはin vivoにおいて投与後短時間ではPAF受容体をPAFと競合拮抗の様式で阻害するが、長時間経過すると非可逆的な阻害様式に推移することが明らかになった。
【0104】
PAFアンタゴニストの阻害様式が時間経過とともに競合的な拮抗阻害から非競合的な拮抗阻害に様式を変化させる可能性として、長時間作用することで非可逆的な阻害様式に変化する可能性、および、PAF受容体の細胞内移行(内在化)が促進される可能性が考えられる。PAF受容体は7回膜貫通型のG蛋白質共役型受容体であり、アゴニストが作用することによって受容体内在化が起こることが知られている。そこで、PAF受容体内在化におけるPAFアンタゴニストの影響について検討した。
【0105】
PAF受容体は、脊髄において、神経細胞、ミクログリアおよび脊髄後角神経節細胞に発現しているが、その発現量が少ない。よって、細胞膜上に発現するPAF受容体の量をウエスタンブロットによって解析することは困難であった。ミクログリアはPAF受容体を高発現しており、PAF刺激によって強力に活性化され、種々の細胞機能が亢進される。また、本発明者らは脊髄でPAF誘発のアロディニア反応にミクログリアの活性化が関与することを示している。これらの観点から、脊髄から単離培養したミクログリアを用いて、PAF受容体の内在化に対するPAFアンタゴニストの作用を検討した。
【0106】
新生児のマウス脊髄から単離培養したミクログリアを、TCV−309(0.15μM)と培養した後に、細胞膜表面のタンパク質をビオチン標識した。さらに、細胞を溶解した後に、細胞表面タンパク質をストレプトアビジンによって回収した。細胞膜表面に発現するPAF受容体の量をウエスタンブロット法によって解析し、細胞膜に発現するPAF受容体の量の減少に基づいて、受容体内在化に対するTCV−309の作用を評価した。
【0107】
〔1〕マウス脊髄ミクログリアの単離培養
マウス脊髄ミクログリアを、新生児マウス(生後1〜2日目)の脊髄の初代培養細胞から得た(Motoyoshi et al., Neurochem Int 52(6):1290-1296, 2008)。ミクログリアの純度は、CD11b(OX−42)免疫細胞化学染色において98%以上であった。
【0108】
〔2〕細胞膜表面蛋白質画分標品の調製
ミクログリアを、PAFアンタゴニストTCV−309(0.15μM)で6〜24時間、37℃でインキュベートした後、氷冷したPBSで洗浄し、次いで、Sulfo-SS-NHS-biotin EZ-linkと4℃で30分間反応させ、細胞膜表面タンパク質をビオチン標識した(Altin et al., Anal Biochem 224:382-389, 1995)。ビオチン標識された細胞膜表面タンパク質画分をウエスタンブロット解析に使用した。
【0109】
ビオチン化した細胞膜画分に含まれるPAF受容体の量を、細胞表面に発現するPAF受容体の量としてウエスタンブロット法により測定した。ミクログリアをTCV−309(0.15μM)の存在下で8時間または24時間にわたって培養すると、細胞膜表面に発現する受容体の量は、対照群のそれぞれ60%および41%であり、経時的に著明に減少した(
図17C)。全細胞画分におけるPAF受容体の量に変化は認められなかった(データ示さず)。
【0110】
このように、PAFアンタゴニストがPAF受容体の内在化を促進することを見出した。PAFアンタゴニストによるPAF受容体の内在化の亢進が阻害薬の長い作用持続時間に関与する可能性が示唆される。
【0111】
〔2.6.活性化アストロサイトの脊髄移植によるアロディニア発現とPAFアンタゴニストの影響〕
PAF受容体はミクログリアやアストロサイトに発現しており、PAF受容体刺激によって活性化された細胞が、サイトカイン、活性酸素種等の炎症/疼痛に関連する物質を産生/遊離するとともにPAFを産生/遊離する。PAFアンタゴニストが癌性疼痛の発症初期から後期に至る全てのステージにおいて鎮痛作用を発揮することを示した。これらの疼痛の際にはPAFの産生遊離が亢進している可能性が示唆される。疼痛時のPAFの供給源の候補としてミクログリアおよびアストロサイトが考えられる。そこで、活性化アストロサイトの脊髄移植により、疼痛が惹起される可能性並びに疼痛発症におけるPAFの関与について検討した。
【0112】
〔1〕アストロサイト培養法
ddY系新生児マウス(生後0〜3日目)の脊髄を用いて、マウス脊髄アストロサイトの初代培養を行った(Takano et al., Neurochem Int 57(7):812-818, 2010)。この細胞をアストロサイトとして実験に供した純度はGFAPを用いた免疫細胞化学染色によって96%以上であった。
【0113】
〔2〕アストロサイトの脊髄移植実験
継代したアストロサイトを非コートシャーレに4.0×10
5cells/wellの密度で播種し、48時間培養した後、アストロサイトをPAF(0.4nM)またはATP(100μM)、Escherichia coli LPS(1μg/mL)で2時間培養することによって活性化(炎症反応性を獲得)させた。活性化アストロサイトを、ddY系正常マウスの脊髄くも膜下腔内に移植した。アストロサイトを移植されたマウスのアロディニアスコアおよびアロディニア閾値を経時的に評価した。また、上記活性化アストロサイトを洗浄した後にfresh mediumで12時間培養した後、培養mediumを採取し、遠心分離にて細胞上清を分離しアストロサイトconditioned mediumとした。これを正常マウスの脊髄腔内に投与し、アロディニアスコア、アロディニア閾値を経時的に評価した。
【0114】
マウス脊髄から単離培養したアストロサイトをPAF、ATPまたはLPSで刺激した後に、正常マウスの脊髄腔に移植することによって、移植6時間後にはアロディニア応答を惹起した。アロディニア応答は、12時間後にピークに達し、4ヶ月以上持続した(
図18AおよびB)。また、このアロディニア応答はアストロサイト活性化阻害薬Fluoro citrateにより抑制された(
図18C)。活性化アストロサイトの移植により脊髄アストロサイトの持続した活性化が惹起され、このことが疼痛の維持に寄与することを明らかにした。
【0115】
活性化アストロサイト移植1日後のマウスにPAFアンタゴニストを投与するとアロディニアは消失し、以降120日以上経過しても疼痛は発現しなかった(
図18A〜C)。移植28日後のマウスにPAFアンタゴニストを投与するとアロディニア応答は一過性の抑制に留まった(
図19C)。活性化アストロサイトの培養上清を脊髄腔内投与しても一過性のアロディニア応答を惹起し、PAFアンタゴニストで抑制された(
図19AおよびB)。これらのことから、活性化アストロサイトがin vivo、 in vitroにおいてPAFを産生/遊離することが明らかとなった。移植された活性化アストロサイトによる脊髄アストロサイトの活性化が起こる前にPAFアンタゴニストを投与することで活性化が阻害され、疼痛の維持機構が成立しなくなった可能性が考えられる。
【0116】
〔2.7.PAFアンタゴニスト連続頻回投与による癌性疼痛の永続的な緩和作用〕
活性化アストロサイト移植実験の結果から、神経障害により産生されたPAFがミクログリアやアストロサイトを活性化し、PAF系の活性化を誘導して、持続的にPAF産生を促進する。この positive feedback loopが疼痛の発症と維持に寄与するという作業仮説が考えられる。
【0117】
そこで、PAF系の誘導を妨げるような処置によって、癌性疼痛の発症および維持を抑制することが出来る可能性を検討した。すなわち、疼痛の永続的な緩和治療が可能ではないかとの考えに基づいて、「PAF受容体を長期間阻害する→アストロサイトの活性化を長期間抑える→PAF系の活性化を阻止する→永続的な疼痛緩和治療が可能となる」と考えた。そこで、PAFアンタゴニストを連続的に頻回投与することの影響を詳細に検討した。
【0118】
図20に、癌性疼痛モデルマウスにおいて、種々の様々なタイミングでTCV−309の連続的な頻回静脈内投与を行った際の疼痛緩和作用を示す。図は、投与時期に関わらず30日前後までアロディニアスコアの増加が抑制され、その後ゆっくりとしたスコアの増加が認められたこと、投与時期に関わらず30日前後までアロディニア閾値の低下を抑制し、その後ゆっくりとした閾値の低下が認められたこと、投与時期に関わらず30日前後まで安静時痛の発現を抑制し、その後ゆっくりとした疼痛の発現が認められたこと、そして、投与時期に関わらず30日前後まで体動痛の発現を抑制し、その後ゆっくりとした疼痛の発現が認められたことを示す。具体的には、以下のとおりである。
【0119】
癌性疼痛モデル(FBCモデル)において、NCTC2472溶骨性骨肉腫細胞の移植によって移植3〜6日後からアロディニア応答(
図20AおよびB)およびGuarding behavior発症時間(体動痛の指標、
図20C)、Limb−use abnormalityの程度(安静時痛の指標、
図20D)の発症が認められ、以降経時的に増悪が認められた。PAFアンタゴニスト(TCV−309、0.3mg/kg i.v.)を癌細胞の移植直後(すなわち、3時間後)および1日1回で6日間連続投与することによって、アロディニアおよびGuarding behavior、 Limb−use abnormalityの発症は移植後30日前後まで認められず、その後ゆっくりとした疼痛反応の発現が認められた。1〜6日連続投与、3〜8日連続投与の場合であっても同様に癌性疼痛の発症は移植後30日前後まで抑制された。さらに、移植7日後、12日後(癌性疼痛の発症後)においてもTCV−309連続投与によって、投与直後から疼痛反応が消失し、移植30日前後まで疼痛反応を抑制することができた(
図20A〜D)。
【0120】
このように、PAFアンタゴニストを連続頻回投与することによって、持続的な「PAF系の活性化」経路の形成を中断し、癌性疼痛の永続的な緩和治療が可能になるこがを明らかになった。
【0121】
〔3.考察〕
PAFアンタゴニストは、FBCマウスにおいて、極めて少量で疼痛緩和作用を示し、この効果は、モルヒネと比較してはるかに長期間持続した。癌細胞移植後の疼痛発生の前にPAF受容体拮抗薬を投与し、引き続き反復投与することによって、疼痛の発生を抑制することができた。また、その効果に耐性を生じることはなかった。
【0122】
PAFアンタゴニストの鎮痛作用の機序には、少なくとも脊髄のPAF受容体の特異的阻害が含まれる可能性が示唆された。
【0123】
FBCマウスにおいて、PAFアンタゴニストとモルヒネとの併用は、モルヒネの疼痛緩和作用を著しく増強し、モルヒネの疼痛緩和作用をもたらす必要量を大幅に減少させた。
【0124】
PAFアンタゴニストとモルヒネとの併用は,モルヒネの投与量を軽減できることにより、モルヒネの便秘作用を軽減することができた。
【0125】
PAFアンタゴニストの反復投与により,延命効果が認められた。癌性疼痛患者での予後の改善が期待される。
【0126】
このように、本発明は以下のような態様であり得る:
[1]PAFアンタゴニストを含有している、癌性疼痛を処置するための組成物。
[2]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子をさらに含有している、1に記載の組成物。
[3]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の作用を増強させるために用いられる、1〜2に記載の組成物。
[4]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の副作用を抑制するために用いられる、1〜2に記載の組成物。
[5]疼痛を処置するための組成物であって、
PAFアンタゴニストを含有しており、
脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子と併用される、組成物。
[6]前記疼痛が癌性疼痛である、5に記載の組成物。
[7]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子を適用する前に被験体に適用される、5〜6に記載の組成物。
[8]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の作用を増強させるために用いられる、5〜7に記載の組成物。
[9]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の副作用を抑制するために用いられる、5〜7に記載の組成物。
[10]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子をさらに含有している、5〜9に記載の組成物。
[11]PAFアンタゴニスト、および、必要に応じて、脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子を備えている、キット。
[12]疼痛を処置するための使用手順が記載された指示書を備えている、11に記載のキット。
[13]前記疼痛が癌性疼痛である、12に記載のキット。
[14]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の作用を増強させるための使用手順が記載された指示書を備えている、11に記載のキット。
[15]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の副作用を抑制するための使用手順が記載された指示書を備えている、11に記載のキット。
[16]1〜10に記載の組成物を調製する手順が記載されている、11に記載のキット。
[17]有効量のPAFアンタゴニストを被験体に投与する工程を包含する、疼痛を処置する方法。
[18]有効量のPAFアンタゴニストを被験体に投与する工程を包含する、脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の作用を増強させる方法。
[19]有効量のPAFアンタゴニストを被験体に投与する工程を包含する、脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の副作用を抑制する方法。
[20]脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子を被験体に投与する工程をさらに包含する、17〜19に記載の方法。
[21]PAFアンタゴニストを被験体に投与する工程を、前記因子を被験体に投与する工程よりも前に行う、17〜20に記載の方法。
[22]候補化合物がPAFの作用を阻害するか否かを調べる工程を包含する、癌性疼痛を処置し得る化合物をスクリーニングする方法。
[23]候補化合物がPAFの作用を阻害するか否かを調べる工程を包含する、脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の作用を増強させる化合物をスクリーニングする方法。
[24]候補化合物がPAFの作用を阻害するか否かを調べる工程を包含する、脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子の副作用を抑制する化合物をスクリーニングする方法。
[25]PAFまたはPAFアナログのPAF受容体に対する結合を、候補化合物が拮抗的に阻害するか否かを調べる工程をさらに包含する、22〜24に記載の方法。
[26]疼痛モデル動物に対して疼痛抑制作用を有している候補化合物を選択する工程をさらに包含する、22〜25に記載の方法。
【0127】
なお、1〜26において、PAFアンタゴニストは、例えば、〔2:PAFアンタゴニストによる癌性疼痛の処置〕の項にて列挙した化合物が好ましく用いられる。
【0128】
このような本発明による具体的な効果としては、以下が挙げられる:
(1)癌性疼痛(特に骨癌性の疼痛)を、強く、長時間にわたって抑制することができる。
(2)骨癌移植動物に対する延命効果を示したことから、原発性骨癌患者または骨転移癌患者に対する延命効果も期待することができる。
(3)1日1回で6〜7日間にわたる頻回連続投与が、癌のステージにかかわらず(すなわち癌細胞移植直後であっても、疼痛が顕著になった後であっても)、投薬終了の30日後以降であっても疼痛反応を発現させなかったことから、癌性疼痛の発症を予防し、疼痛緩和効果を長期(12時間、24時間、1〜30日間)にわたって持続することができる。
(4)モルヒネ等の脊髄における下行性疼痛抑制系経路の機能を増強する因子との併用により、上記因子の鎮痛作用を著しく増強することができる。
(5)PAFアンタゴニストと上記因子との併用は、PAFアンタゴニスト単独または上記因子単独にて疼痛緩和効果をもたらす用量よりも低い用量で癌性疼痛を緩和することができる。
(6)低用量にて使用することが可能であるため、PAFアンタゴニストおよび/または上記因子の副作用を軽減することができる。特に、モルヒネ等のオピオイド系鎮痛剤で問題となる便秘、嘔吐、眠気、体の不安感、錯乱、発汗、ミオクローヌス、狡猾、うつ状態、および身体的依存等を軽減することができる。これにより、QOL(生活の質)を保持することができる。
(7)活性化アストロサイト移植により触刺激誘発疼痛反応(アロディニア)が誘発され、PAFアンタゴニスト(TCV−309,0.3mg/kg,i.v.)を投与するとアロディニアは消失した。癌性疼痛モデルマウスにおいて,TCV−309を癌細胞移植直後および術後1〜6日(1日1回)連続投与し,以後薬物投与を中断してもアロディニアの発現は30日以降まで遅延させることができた。このことから、PAFアンタゴニストを連続頻回投与することで、アストロサイトを介した持続的な「PAF」活性化経路(PAF受容体刺激‐PAF遊離の誘導を介したfeedback loop)の形成を中断して,癌の慢性疼痛の永続的な緩和治療が可能になり得る。
(8)PAFアンタゴニストであるか否かを指標にすることによって、癌性疼痛(特に骨癌性の疼痛)を処置し得る化合物を容易に得ることができる。
【0129】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。