(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施において好適な超音波医用装置(本超音波医用装置)の全体構成図である。本超音波医用装置は、複合型の超音波振動子10を有しており、超音波振動子10は、HIFU用振動子10Hと診断用振動子10Dを備えている。
【0022】
HIFU用振動子10Hは、強力集束超音波(HIFU)を送波する振動子であり、例えば二次元的に配列された複数の振動素子を備えている。HIFU用振動子10Hは、例えば癌や腫瘍などの治療部位Pに向けて治療用超音波ビームTBを形成して強力集束超音波を送波し、その治療部位Pを加熱して治療するために利用される。
【0023】
また、HIFU用振動子10Hは、治療部位Pに向けて変位用超音波ビームEBを形成して変位発生用の超音波を送波し、治療部位Pにおいて放射力を発生させ組織を変位させる。変位用超音波ビームEBは、治療部位Pにおいて有効な放射力を発生させる程度の強度で形成されるビームであり、例えば、治療用超音波ビームTBを変位用超音波ビームEBとして利用してもよい。もちろん、治療用超音波ビームTBとは異なる変位用超音波ビームEBが利用されてもよい。
【0024】
一方、診断用振動子10Dは、例えば二次元的に配列された複数の振動素子を備えており、例えば治療部位Pを有する被検体(患者)に対して、超音波画像を形成するための比較的弱い超音波を送受する。つまり、公知の一般的な超音波診断装置と同じ程度の強度(エネルギー)の超音波を送受する。
【0025】
また、診断用振動子10Dは、治療部位Pに向けて測定用超音波ビームMBを形成して測定用の超音波を送受し、測定用超音波ビームMBに沿って受信信号を得る。測定用超音波ビームMBに沿って得られる受信信号は、変位用超音波ビームEBの放射力による治療部位Pにおける変位の測定に利用される。
【0026】
なお、超音波振動子10は、例えば、お椀(どんぶり)状に凹ませた内部の表面を振動子面とする。そして、例えば、お椀状に凹んだ内部の中央に位置する底の部分に診断用振動子10Dが設けられ、診断用振動子10Dを取り囲むようにHIFU用振動子10Hが設けられる。なお、超音波振動子10の振動子面の形状は、お椀状に限定されず、例えば治療の用途等に応じた形状とされることが望ましい。また、全ての振動素子またはいくつかの振動素子が、HIFU用と診断用の両用途に併用されてもよい。
【0027】
測定診断ブロック20は、診断用振動子10Dの送受信を制御する送受信部22を備えている。送受信部22は、診断用振動子10Dを構成する複数の振動素子の各々に対応した送信信号を出力することにより、診断用振動子10Dを制御して送信ビームを形成し、さらに、それら複数の振動素子の各々から得られる受信信号に対して整相加算処理などを施すことにより、受信ビームに沿って受信信号を得る。つまり、送受信部22は、送信部(送信ビームフォーマ)の機能と、受信部(受信ビームフォーマ)の機能を備えている。
【0028】
送受信部22は、治療部位Pを含んだ三次元空間内または断面内で診断用の超音波ビームを走査させて画像用の受信信号を収集する。そして、収集された受信信号に基づいて、超音波画像形成部28が三次元の超音波画像または二次元の断層画像の画像データを形成し、その画像データに対応した超音波画像が表示部50に表示される。
【0029】
ユーザ(検査者)は、表示部50に表示される超音波画像から、治療部位Pの位置等を確認し、図示しない操作デバイス等を利用して治療部位Pの位置情報を本超音波医用装置に入力する。もちろん、本超音波医用装置が、超音波画像に対する画像解析処理等により治療部位Pの位置を確認して位置情報を得るようにしてもよい。
【0030】
また、送受信部22は、診断用振動子10Dを制御して測定用超音波ビームMBを形成し、測定用超音波ビームMBに沿って受信信号を得る。そして、変位測定部24は、測定用超音波ビームMBに沿って得られる受信信号に基づいて、治療部位Pにおける変位を測定する。また、変位マップ形成部25は、変位測定部24において測定された変位に基づいて、その変位の周期的な変化を示す変位データを得る変位処理部として機能する。変位マップ形成部25は、変位データとして、後に詳述する変位マップを形成する。そして、凝固測定部26は、変位マップに基づいて治療部位Pにおける組織の凝固を測定する。変位測定部24と変位マップ形成部25と凝固測定部26における具体的な処理については後に詳述する。
【0031】
一方、治療放射ブロック30は、治療用送信部32を備えており、治療用送信部32はHIFU用振動子10Hを構成する複数の振動素子の各々に対応した送信信号を出力することにより、HIFU用振動子10Hを制御して治療用超音波ビームTBを形成する。治療用送信部32は、制御部40によって制御され、例えば治療部位P内に焦点を設定した治療用超音波ビームTBが形成される。
【0032】
また、治療放射ブロック30は、変位用送信部34を備えており、変位用送信部34はHIFU用振動子10Hを構成する複数の振動素子の各々に対応した送信信号を出力することにより、HIFU用振動子10Hを制御して変位用超音波ビームEBを形成する。変位用超音波ビームEBは変調処理を施され、その変調処理における変調周波数は、変調周波数制御部36によって制御される。なお、変調周波数制御部36は、制御部40により制御される。
【0033】
治療用超音波ビームTBに沿って強力集束超音波(HIFU)が送波されて治療部位Pが加熱されると治療部位Pの組織が凝固する。その凝固の前後において、組織の弾性率(ヤング率)が増大することが知られている。そして、組織の弾性率の変化を知るために、本超音波医用装置は、変位用超音波ビームEBに沿って超音波を送波して放射力を発生させ、その放射力による治療部位Pにおける組織の変位を測定する。その変位の測定は、測定用超音波ビームMBに沿って得られる受信信号に基づいて行われる。
【0034】
なお、測定診断ブロック20内の各部と治療放射ブロック30内の各部は、それぞれ、例えばプロセッサや電子回路等のハードウェアを利用して実現することができる。制御部40は、例えば、演算機能を備えたハードウェアとその動作を規定するソフトウェア(プログラム)によって構成される。表示部50は、例えば液晶ディスプレイなどである。
【0035】
また、測定診断ブロック20は、一般的な超音波診断装置により実現されてもよい。そして、治療放射ブロック30に対応した超音波治療装置と、測定診断ブロック20に対応した超音波診断装置とを組み合わせたシステムにより、本超音波医用装置が具現化されてもよい。
【0036】
本超音波医用装置の全体構成は以上のとおりである。次に、本超音波医用装置により実現される機能等について説明する。なお、
図1に示した構成(符号を付した各部)については、以下の説明において
図1の符号を利用する。
【0037】
図2は、
図1の超音波医用装置(本超音波医用装置)の動作を示すタイミングチャートである。
【0038】
メイントリガは、強力集束超音波(HIFU)による治療の開始タイミングを示す信号であり、例えば、ユーザ(検査者)による治療開始の操作に応じて、制御部40から本超音波医用装置内の各部へ出力される。
【0039】
フレームトリガは、測定用超音波ビームMBのフレーム開始を示す信号である。送受信部22は、例えばフレームトリガの立ち上がりのタイミングから、治療部位Pに向けて複数本の測定用超音波ビームMBを順に形成する。例えば、2つのフレームトリガの間において、治療部位Pに向けて10本の送信ビームが形成され、1つの送信ビームにつき2本ずつ、20本の受信ビームが形成される。もちろん、送信ビームと受信ビームの本数は上記の具体例に限定されない。
【0040】
加熱期間信号は、治療用超音波ビームTBによる治療部位Pの加熱処理期間を示す信号であり、加熱期間信号の立ち上がりから立下りまでの期間において、例えば治療部位Pを焦点として治療用超音波ビームTBが形成される。
【0041】
測定期間トリガは、変位測定の期間を示す信号であり、測定期間トリガの立ち上がりから立下りまでの期間が変位の測定期間となる。
【0042】
変調信号は、治療用超音波ビームTBの変調処理に利用される変調信号であり、例えば変調周波数制御部36から変位用送信部34へ出力される。
【0043】
HIFU信号は、治療用超音波ビームTBの送信信号であり、変位用送信部34が、例えば周波数2MHz程度の連続波を変調信号に従って振幅変調して得られる。
【0044】
変調信号は、測定期間トリガの立ち上がりから立下りまでの測定期間において、振幅が0(ゼロ)とされ、その結果、測定期間においてHIFU信号の振幅も0となり、測定期間において治療用超音波ビームTBの送信が停止される。
【0045】
なお、測定期間トリガは、フレームトリガに対して遅延量(Delay)を伴って出力される。この遅延量は、例えば、ユーザによって適宜に調整される。これにより、2つのフレームトリガの間において形成される複数本の測定用超音波ビームMB(例えば20本の受信ビーム)のうち、測定期間内に収まる1本又はいくつかの測定用超音波ビームMBが選択的に測定に利用される。
【0046】
本超音波医用装置は、変位を発生させる変位用超音波ビームEBを変調周波数f
Mで振幅変調し、放射力の強度を変動させることにより、焦点部位の組織に振動を励起させ、その振動の変位を測定用超音波ビームMBを利用して測定する。その際に、変調周波数制御部36により、変位用超音波ビームEBの変調周波数f
Mが制御される。なお、振幅変調に代えて、変調周波数f
Mの周波数変調が利用されてもよい。
【0047】
図3は、変調周波数の設定の具体例を説明するための図である。本超音波医用装置においては、例えば次式により変調周波数を決定する。
【0048】
[数1]変調周波数(Hz)={フレームレート(Hz)/素数}×自然数N
【0049】
数1式におけるフレームレート(Hz)と素数は、例えば装置の仕様や治療対象等に応じて適宜に設定される。以下においては、フレームレートを500Hz、素数を13とした具体例について説明する。
【0050】
フレームレートが500Hzであり素数を13とすると、数1式により得られる変調周波数(Hz)は、自然数Nをその変調周波数の識別番号(変調周波数N)とすると、変調周波数1(38.46Hz),変調周波数2(76.92Hz),・・・,変調周波数5(192.30Hz),・・・となる。
【0051】
フレームレートは、フレームトリガ(
図2)の周期であり、これは測定用超音波ビームMBにより同じ位置において変位の測定が繰り返しされる周期である。つまり、フレームレートが変位の測定におけるサンプリングレートとなる。
【0052】
図3において、<A>は、変調信号の1周期の位相を示しており、位相番号(位相1〜位相13)は、変調信号の1周期を素数13により等分した場合の位相位置(位相角度)に対応している。<B>は、各変調周波数ごとに、位相番号(位相1〜位相13)とデータの取得順であるサンプリング番号(SP1〜SP13)の対応関係を示している。
【0053】
素数が13であれば、数1式により、変調周波数1(38.46Hz)は、フレームレート(500Hz)の1/13となる。つまり、変位の測定におけるサンプリングレートは変調周波数1の13倍となる。したがって、<A>に示す位相番号の配置で、位相1においてサンプリング番号1(SP1)のデータが得られると、位相2においてサンプリング番号2(SP2)のデータが得られ、その後も<B>に示すように、位相3,位相4,位相5,・・・の順にデータが得られ、位相13においてサンプリング番号13(SP13)のデータが得られて、1周期分の13個のデータが収集される。この様子を
図4(I)に示す。
【0054】
図3に戻り、変調周波数2(76.92Hz)は、フレームレート(500Hz)の2/13となる。つまり、変位の測定におけるサンプリングレートは、変調周波数2の13/2倍となる。したがって、<A>に示す位相番号の配置で、位相1においてサンプリング番号1(SP1)のデータが得られると、位相3においてサンプリング番号2(SP2)のデータが得られ、その後も<B>に示すように、位相5,位相7,位相9,・・・の順にデータが得られ、位相13においてサンプリング番号7(SP7)のデータが得られると、次の周期の位相2においてサンプリング番号8(SP8)のデータが得られる。さらに、その後も<B>に示すように、位相4,位相6,位相8,・・・の順にデータが得られ、位相12においてサンプリング番号13(SP13)のデータが得られる。つまり<B>に示すように、サンプリング番号1〜13(SP1〜SP13)までのデータを得ることにより、位相1から位相13までの1周期分のデータ(波形上は2周期分)が収集される。この様子を
図4(II)に示す。
【0055】
図3に戻り、変調周波数5(192.30Hz)は、フレームレート(500Hz)の5/13となる。つまり、変位の測定におけるサンプリングレートは、変調周波数5の13/5倍となる。したがって、<A>に示す位相番号の配置で、位相1においてサンプリング番号1(SP1)のデータが得られると、その後も<B>に示すように順にデータが得られて、サンプリング番号1〜13(SP1〜SP13)までのデータを得ることにより、位相1から位相13までの1周期分のデータが収集される。
【0056】
同様に、
図3に例示していない他の変調周波数においても、サンプリング番号1〜13(SP1〜SP13)までのデータを得ることにより、位相1から位相13までの1周期分のデータを収集することができる。
【0057】
図3に示す変調周波数の設定の具体例によれば、比較的少ないサンプリング数(例えば13)で位相の偏りの無いデータの収集が可能になり、また、エリアシングの問題も回避できる。なお、位相偏りの無いデータの収集により、RMS(Root Mean Squre)の値が十分に細かくサンプリングした時のRMSの値と大きく乖離しない値となる。
【0058】
本超音波医用装置においては、例えば上述した数1式により変調周波数が決定され、決定された変調周波数を用いて変位用超音波ビームEBが変調処理される。
【0059】
図5は、
図1の超音波医用装置(本超音波医用装置)の動作の具体例を示すフローチャートである。まず、フレームレートが設定される(S501)。例えば診断範囲の深さを15cmとすると、超音波の往復に要する時間が15(cm)×2/1500(m/s)=100μs(マイクロ秒)となる。測定用超音波ビームMBが例えば20本の場合にはフレームレートは1/(20×100μs)=500Hzとなる。なお、測定用超音波ビームMBの20本のうち、例えば4本の測定用超音波ビームMBが利用される。例えば、
図2に示したように、測定用超音波ビームMBが20本あり、そのうち測定用に4本の測定用超音波ビームMBが用いられる場合、温度が上昇する時間と下降する時間の比率が16:4となり、上昇する時間が下降する時間の4倍あるので、効率的に温度上昇させることが出来る。(実際には変調波の位相によっては必ずしも上記の上昇と下降の比率とはならない時もあるが、治療時間全体をみれば、大よそ上記の関係が成立している。)
【0060】
次に、変調周波数が設定される(S502)。変調の周期を測定期間(
図2参照)よりも十分に低くすることにより、測定期間が振動に与える影響を軽減または回避できる。例えば、測定期間が400μsであると、変調周波数を2.5kHzよりも十分に低くする必要がある。また、秒オーダーの時間分解能を確保するためには、1秒間に複数回以上の振動を繰り返すことが望ましいため変調周波数は数Hz以上となる。以上の条件を満たしつつ、
図3を利用して説明した具体例に従って、例えば、変調周波数が38.46Hz,76.92Hz,192.30Hzのいずれかに設定される。
【0061】
そして、変調周波数で変調処理された変位用超音波の送信信号に基づく変位用超音波ビームEBにより治療部位Pの組織に振動を与え、測定用超音波ビームMBを介して変位測定用の受信信号データが得られる(S503)。例えば
図3を利用して説明したように、時間方向(周期方向)においてサンプリング番号1〜13(SP1〜SP13)のデータが収集される。なお、サンプリング番号1〜13の1セットのデータのみでも変調周波数の1周期分のデータを得ることができるものの、例えば、ノイズ等の影響を低減または除去するために、2セット分のデータが収集される。もちろん、2セット以上のデータが収集されてもよい。
【0062】
変位測定用の受信信号データが得られると、変位測定部24により、受信信号データに基づいて変位が測定される(S504)。変位は、例えば測定用超音波ビームMBの深さ方向に並ぶ複数のサンプリング点について、各サンプリング点(各深さ)ごとに測定される。また、各サンプリング点ごとに、例えば、1つのデータセット26点(26時相)の中の隣り合うデータ同士(nとn+1,n=1,2,・・・,25)が相互相関演算等により比較され、各サンプリング点(各深さ)ごとに変位が算出される。例えば、深さ方向に並ぶ1024個のサンプリング点について、相関演算の相関窓を64サンプリング点として、各サンプリング点ごとに変位が算出される。なお、例えば加熱治療前の基準となる時相と最新時相との比較により変位が算出されてもよい。また、変位の算出に先立って、必要に応じて、ベースバンド除去処理やノイズ除去処理などが行われてもよい。
【0063】
変位が測定されると、変位マップ形成部25は、測定された変位に基づいて、その変位の周期的な変化を示す変位マップを形成する(S505)。さらに、凝固測定部26は、変位マップに基づいて、治療部位Pにおける組織の凝固を測定する(S506)。
【0064】
そして、治療部位Pに対して強力集束超音波(HIFU)が照射される(S507)。例えば、治療用超音波ビームTBにより0.5〜1.0秒間程度HIFUが照射される。さらに、加熱期間(
図2参照)が終了していなければ(S508)、次の測定期間(
図2参照)において、S503〜S506までの測定処理が実行され、測定期間後にS507においてHIFUが照射される。なお、治療用超音波ビームTBが変位用超音波ビームEBとして利用される場合には、S507において、変調処理されたHIFUが照射され、HIFU照射後に残る振動成分がS503〜S506において測定される。
【0065】
一方、加熱期間(
図2参照)が終了したならば(S508)、治療部位Pにおける治療が終了する。また、S506における凝固の測定において、目標とする凝固の大きさが確認された時点で、治療部位Pにおける治療を終了してもよい。治療部位Pにおける治療が終了したならば、別の位置にある治療部位Pに対して治療を行うようにしてもよい。
【0066】
図6は、変位マップの具体例を示す図である。変位マップ形成部25は、変位測定部24において測定された変位に基づいて、例えば、
図6に示す変位マップを形成する。
図6には、横軸を時間として縦軸を深さとした変位マップが図示されている。
【0067】
図6の縦軸方向には、測定用超音波ビームMBの深さ方向に並ぶ複数のサンプリング点(例えば1024個のサンプリング点)が並べられ、各サンプリング点(各深さ)ごとに2周期分(
図3のサンプリング番号SP1〜SP13のセットが2セット分)の変位が
図6の横軸方向に並べられる。
【0068】
なお、変位マップを形成する際には、時間軸方向において変位の並べ替えが行われる。例えば、変調周波数として
図3において説明した192.30Hz(変調周波数5)を利用した場合には、サンプリング番号SPnの取得順、つまりSP1,SP2,SP3,・・・,SP13の順と、位相番号の順番がずれているため、
図3に示すように、位相番号の順となるように、サンプリング番号SPnが時間方向において並べ替えられて、
図6の横軸に対応付けられる。
【0069】
そして、
図6においては、深さ方向の各サンプリング点ごとに、つまり各深さごとに、時間軸方向の2周期に亘る変位の大きさ(変位量)が輝度の大きさに対応付けてマッピングされている。つまり、
図6において、正方向に大きな変位ほど高い輝度で明るく表現され、負方向に大きな変位ほど低い輝度で暗く表現されている。なお、輝度に代えて、例えば色等により変位の大きさが表現されてもよい。また、変位マップが表示部50に表示されてもよい。
【0070】
図6の具体例において、破線で示す深さrにおける変位の変化を時間軸方向に見ると、変位が2周期に亘って正弦波状に変化している。例えば、深さrの位置を焦点として、変調処理されたHIFU(変調処理された変位用超音波)が照射されると、そのHIFUの振動に追従するように深さrの位置における組織が変位し、
図6に示す具体例のような変位マップが得られる。
【0071】
なお、変位マップに対して、有効振動領域が設定されてもよい。例えばメディアンフィルタ等の処理を施した変位マップ内において、変位が2周期分存在し且つ変位の大きさが閾値以上となる領域が有効振動領域とされる。そして、変位マップに基づく後述する凝固の測定において、例えば、有効振動領域内におけるデータのみを利用するようにしてもよい。これにより、有効振動領域外のデータに伴う測定精度の悪化を抑えることができる。
【0072】
HIFUの照射により組織の凝固が進行すると変位マップに変化が現れる。凝固測定部26は、変位マップに基づいて組織の凝固を測定する。
【0073】
図7は、凝固の進行に伴う変位マップの変化を説明するための図である。
図7(A)には、HIFUの照射開始直後における変位マップの具体例が図示されている。例えば、深さ方向のビーム長がHL(例えば焦点領域がHL)であるHIFUを照射した直後において、
図7(A)の変位マップが得られる。ビーム長HLの領域(例えば焦点領域)においては、HIFUの振動に追従するように組織が変位する。
【0074】
また、HIFUの照射開始直後の
図7(A)では、組織が凝固していない又は凝固が小さいため、ビーム長HLの領域外において、ビーム長HLから離れるに従って、HIFUの振動から徐々に遅れて組織が変位する。つまり、HIFUの振動により、ビーム長HLの領域においてせん断波(ずり波)が発生し、そのせん断波が深さ方向に(浅い方と深い方のそれぞれに向かって)進み、変位マップ内においてせん断波の伝播Saに伴う変位の傾きが現れる。
【0075】
これに対し、
図7(B)には、凝固後における変位マップの具体例が図示されている。例えば、
図7(A)に示すビーム長HLのHIFUを照射し続けると、ビーム長HLの領域から凝固が進行し、例えば
図7(B)に示す凝固部分Cの範囲まで組織が凝固する。凝固部分Cにおいては、凝固により組織が硬く、せん断波が即伝播するため、例えば
図7(B)に示すように、凝固部分Cが全体的にHIFUの振動に追従するように変位する。また、
図7(B)において、凝固していない部分では、せん断波の伝播Sbに伴う変位が現れる。
【0076】
図8は、変位マップに基づいた凝固サイズVsの測定例を示す図である。
図8(a)には、変位マップの具体例が図示されている。凝固測定部26は、変位マップを時間軸方向に周波数解析することにより、変位用超音波(HIFU)に対する変調処理の周期に対応した周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分に基づいて組織の凝固サイズVsを導出する。
【0077】
図8(b)は、
図8(a)の変位マップに対する時間軸方向の周波数解析により得られる処理結果の具体例である。凝固測定部26は、
図8(a)の変位マップにおいて、深さ方向に並ぶ複数のサンプリング点について、各サンプリング点ごとに時間軸方向にFFT処理を行って、
図8(b)の処理結果を得る。
【0078】
図8(b)の縦軸は、
図8(a)と同じ深さに対応しており、
図8(b)の横軸は周波数を示している。そして、
図8(b)内における輝度がFFT処理後の絶対値に対応している。
【0079】
凝固測定部26は、
図8(b)の処理結果において、変位用超音波(HIFU)の変調処理における変調周波数に対応した周波数成分(変調周波数成分)を抽出する。そして、凝固測定部26は、深さ方向に並ぶ複数のサンプリング点において変調周波数成分を抽出し、変調周波数成分のサンプリング方向における位相の変化に基づいて、組織のサンプリング方向の凝固サイズVsを導出する。
【0080】
図8(c)には、FFT処理により得られる変調周波数成分の位相が図示されている。
図8(c)の横軸は、深さ方向つまり
図8(a)(b)の縦軸に対応しており、
図8(c)の縦軸は、位相をラジアン単位で示している。
【0081】
せん断波の伝播速度が早い部分、つまり組織が凝固している部分においては、その部分内でほぼ同位相で組織が振動するため、
図8(c)に示す位相波形の傾きが小さくなる。一方、せん断波の伝播速度が遅い部分、つまり組織が凝固していない部分においては、せん断波の伝播に時間がかかるため、場所ごとに(深さごとに)位相にずれが生じて、
図8(c)に示す位相波形の傾きが大きくなる。
【0082】
そこで、凝固測定部26は、
図8(c)に示す位相波形に基づいて、HIFUの焦点位置を含む波形部分において、波形の傾きが小さい部分(例えば閾値よりも傾きが小さい部分)を凝固領域と判定する。これにより、例えば、
図8(c)に示すように、HIFUの焦点位置を含む凝固領域が判定され、深さ方向の凝固サイズVsが導出される。
【0083】
なお、
図8に示す具体例においては、FFT処理を行っているため信号対雑音比の向上が期待される。また、
図8に示す具体例においては、凝固部分の凹凸を、この区間を構成するデータ点の標準偏差または分散等の統計的な指標等を用いて、推定精度を評価すること等も可能であり、その推定精度を後に詳述する総合判定に利用してもよい。
【0084】
また、凝固測定部26は、変位マップに基づいて、深さ方向の各サンプリング点ごとに変位の減少率を算出し、複数のサンプリング点についての変位の減少率に基づいて、組織の凝固サイズArを測定してもよい。
【0085】
図9は、変位マップに基づいた凝固サイズArの測定例を示す図である。
図9のフローチャートは、例えば、治療部位Pに対する強力集束超音波(HIFU)の照射と並行して実行される。
【0086】
まず、初期の診断時刻において変位マップが形成される(S901)。例えば、強力集束超音波(HIFU)の照射直前または照射直後が初期の診断時刻とされ、変位マップ(
図6参照)が形成される。
【0087】
さらに、次の診断時刻において変位マップが形成される(S902)。例えば、初期(1時刻前)の診断時刻から一定時間Tが経過した次の診断時刻において、変位マップ(
図6参照)が形成される。
【0088】
そして、S902の診断時刻における変位マップ内の変位量最大値が、それよりも1時刻前の診断時刻における変位マップの変位量最大値よりも小さいか否かが確認される(S903)。例えば、変位マップの有効振動領域(
図6参照)内において最も大きな変位が変位量最大値とされる。
【0089】
1時刻前の診断時刻における変位マップの変位量最大値よりも小さくない場合には、S902に戻り、さらに次の診断時刻において変位マップが形成され、S903において変位量最大値が確認される。S902とS903における処理は、1時刻前の診断時刻における変位マップの変位量最大値よりも小さくなるまで繰り返し実行される。
【0090】
S903において1時刻前の診断時刻における変位マップの変位量最大値よりも小さいことが確認されると、リファレンスとなる変位マップが決定される(S904)。例えばS903において確認された1時刻前の診断時刻における変位マップ、つまり変位がピークに到達した時刻における変位マップがリファレンスとされる。なお、例えば、変位がピークに到達した時刻とその前後の時刻における変位マップを平均化して、リファレンスとなる変位マップが決定されてもよい。
【0091】
治療組織の初期温度や組織性状等によっては、HIFUが照射されることにより、変位量最大値が上昇してから減少する場合もある(下記文献1参照)。つまり、HIFUの照射直前または直後に変位量最大値のピークがあるとは限らない。S902からS904までの処理によれば、HIFUが照射されることにより変位量最大値が上昇してから減少する場合においても、変位量最大値がピークに到達した時刻における変位マップをリファレンスとすることができる。
文献1「E Sapin-de Brosses, J Gennisson, M Pernot, M Fink and M Tanter, “Temperature dependence of the shear modulus of soft tissues assessed by ultrasound.” Phys Med Biol. 2010 Mar 21; 55(6):1701-18」(文献1には、生体組織の温度を変化させたときの横弾性係数を測定した結果が記載されている。生体組織によっては、温度を上昇させていくと、ある温度までは横弾性係数が徐々に小さくなり(組織が柔らかくなる=組織の変位量が大きくなる)、ある温度から高温になるにつれて横弾性係数が大きくなる(組織が硬くなる=組織の変位量が小さくなる)という結果が文献1に示されている。)
【0092】
そして、複数の診断時刻に亘って各診断時刻において変位マップが形成され(S905)、各診断時刻における変位マップとリファレンスとなる変位マップとの比較から得られる変位の減少率に基づいて、治療部位Pにおける組織の凝固サイズArが測定される(S906)。凝固サイズArの測定において、凝固測定部26は、変位減少率マップを形成することが望ましい。
【0093】
図10は、変位減少率マップの具体例を示す図である。凝固測定部26は、例えば、
図10に示す変位減少率マップを形成する。
図10には、HIFUが照射される時間つまり診断時刻を横軸とし、縦軸を深さとした変位減少率マップが図示されている。縦軸の深さは、変位マップ(
図6)の縦軸に対応している。
【0094】
凝固測定部26は、各診断時刻ごとに得られる変位マップについて、その変位マップの各深さごとにその深さに対応した変位量を導出する。例えば、各診断時刻ごとに得られる変位マップ内において、各深さごとに2周期分(
図6の横軸)に亘る変位の変化から、その変位の二乗平均平方根(RMS)つまり実効値を算出し、その実効値をその深さの変位量とする。もちろん、二乗平均平方根以外の演算により各深さの変位量が決定されてもよい。
【0095】
また、凝固測定部26は、リファレンスとなる変位マップに基づいて、各深さごとにその深さのリファレンスとなる変位量を導出する。例えば、リファレンスとなる変位マップの各深さごとに2周期分(
図6の横軸)に亘る変位の変化から、その変位の二乗平均平方根(RMS)つまり実効値を算出し、その実効値をその深さにおけるリファレンスの変位量とする。もちろん、二乗平均平方根以外の演算により各深さにおけるリファレンスの変位量が決定されてもよい。
【0096】
そして、凝固測定部26は、各診断時刻において、各深さごとに得られる変位量(Dm)と、その深さにおけるリファレンスの変位量(Dr)との比率(Dm/Dr)を算出して、その深さの変位減少率とする。そして、複数の深さについて複数の診断時刻に亘って変位減少率が算出され、変位減少率に応じた大きさの輝度をマッピングすることにより、
図10の変位減少率マップが形成される。なお、輝度に代えて、例えば色等により変位減少率が表現されてもよい。また、変位減少率マップが表示部50に表示されてもよい。
【0097】
図10の変位減少率マップは、リファレンスの変位量からの減少が小さいほど、つまりリファレンスの変位量に近いほど、高い輝度で明るく表現され、リファレンスの変位量からの減少が大きいほど、つまりリファレンスの変位量よりも小さいほど、低い輝度で暗く表現されている。
図10において暗く表現される部分は、凝固の進行により組織が硬くなり、変位量が減少していることが予想される。つまり、
図10において暗く表現される部分において組織が凝固していると考えられる。
【0098】
なお、変位減少率マップに対して、有効振動領域が設定されてもよい。例えば変位マップの有効振動領域(
図6参照)を変位減少率マップに適用してもよいし、変位減少率マップ内において減少率の有効性を判定するなどして有効な減少率が得られる領域を有効振動領域としてもよい。
【0099】
凝固測定部26は、変位減少率マップに基づいて、各診断時刻ごとに、組織の深さ方向の凝固サイズArを導出する。例えば、
図10に示す変位減少率マップの有効振動領域内において減少率が小さい部分(例えば閾値よりも減少率が小さい部分)を凝固領域と判定し、凝固領域の深さ方向の長さを凝固サイズArとする。
【0100】
以上に説明したように、凝固測定部26は、変位マップに基づいて、凝固サイズVs(
図8参照)と凝固サイズAr(
図10参照)を導出する。さらに、凝固測定部26は、複数の診断時刻において、各診断時刻ごとに凝固サイズVsと凝固サイズArの両方を算出し、各診断時刻において凝固サイズVsと凝固サイズArに基づく総合的な判定により組織の凝固サイズCoagを決定してもよい。例えば、凝固サイズVsと凝固サイズArの各々に対する重み付け係数W1とW2(W1+W2=1)を用いて、総合的な組織の凝固サイズCoagが「Coag=W1・Vs+W2・Ar」とされる。
【0101】
重み付け係数W1とW2は、例えば、デフォルト値をW1=W2=0.5とし、以下に説明する条件に応じて適宜変更されてもよい。
【0102】
<条件1>HIFUの深さ方向のビーム長よりも小さな凝固サイズを計測する場合
凝固サイズVsは、HIFUの深さ方向のビーム長HL(
図7)よりも凝固サイズが大きくならないと信頼性が低いため、条件1の場合には、凝固サイズArの方を尊重する。例えば「Coag=Ar(W1=0,W2=1)」とする。
【0103】
<条件2>HIFUが照射される目標部位の隣接部位が既に凝固している場合
HIFUを利用した治療においては、治療の対象となる領域において、複数の治療部位Pに対して次々にHIFUが照射される場合があり、治療部位Pの近傍において既に凝固した部位があると、治療部位Pにおける変位の減少率の導出において信号対雑音比が低くなる可能性がある。
【0104】
図11は、治療領域内における治療部位Pの具体例を示す図である。
図11(a)においては、これからHIFUの照射を予定している治療部位Pに隣接する部位が既に凝固(凝固部位)している。そのため、治療部位Pにおいて減少率に基づいて得られる凝固サイズArよりも凝固サイズVsの方を尊重する。例えば「Coag=Vs(W1=1,W2=0)」とする。
【0105】
一方、
図11(b)においては、これからHIFUの照射を予定している治療部位Pが凝固部位から比較的離れているため、治療部位Pにおいて、凝固サイズVsと凝固サイズArの両方を利用し、例えば「Coag=W1・Vs+W2・Ar(W1+W2=1)」とする。
【0106】
なお、治療部位Pと凝固部位との間の距離Lに応じて、重み付け係数W1とW2が変更されてもよい。例えば、距離Lが小さいほどW2を0.5よりも小さくしてW1を0.5よりも大きくする。また、距離LがHIFUビームの方位方向におけるビーム幅の何倍かに応じて重み付け係数W1とW2が変更されてもよい。
【0107】
また、複数の治療部位Pに対して次々にHIFUを照射するにあたり、常に凝固部位に隣接する治療部位Pを対象とする場合には、最初の治療部位Pに対する照射において、例えば「Coag=W1・Vs+W2・Ar(W1+W2=1)」とし、2つ目以降の治療部位Pに対する照射において常に「Coag=Vs(W1=1,W2=0)」としてもよい。
【0108】
<条件3>凝固サイズVsと凝固サイズArについて信頼性が評価できる場合
凝固サイズVsと凝固サイズArの少なくとも一方について、計測結果の信頼性が評価できる場合には、その信頼性に応じて、重み付け係数W1とW2が変更されてもよい。
【0109】
例えば、
図8を利用して説明した具体例においては、凝固部分の凹凸を、この区間を構成するデータ点の標準偏差または分散等の統計的な指標等を用いて、凝固サイズVsの推定精度を評価すること等も可能であるため、その推定精度に応じて、重み付け係数W1とW2が設定されてもよい。
【0110】
また、
図10を利用して説明した具体例においては、減少率が小さい部分(例えば閾値よりも減少率が小さい部分)を凝固領域と判定し、凝固領域の深さ方向の長さを凝固サイズArとして計測しているが、減少率の変化の度合いに応じて、凝固サイズArの信頼性が評価されてもよい。
【0111】
図12は、凝固サイズArの信頼性を説明するための図である。
図12には、変位減少率マップの具体例が図示されている。つまり、HIFUが照射される時間(診断時刻)を横軸とし、縦軸を深さとした変位減少率マップが図示されている。この変位減少率マップの時刻Tにおける変位減少率の具体例が(a)(b)に図示されている。(a)(b)には、横軸を深さとして縦軸を変位減少率とした波形A,波形Bが示されている。
【0112】
波形Aは、凝固部分とそれ以外の部分の境界における変位減少率の変化が比較的急峻であり、例えば閾値により比較的高い精度で境界を検出することができる。そのため、波形Aに基づいて測定される凝固サイズArの信頼性が高い。
【0113】
これに対し、波形Bは、凝固部分とそれ以外の部分の境界における変位減少率の変化が緩やかであり、例えば閾値の大きさに応じて境界の位置が比較的大きく変動する。そのため、波形Bに基づいて測定される凝固サイズArは、閾値の大きさに応じて比較的大きく変動してしまい信頼性が低い。
【0114】
そこで、凝固測定部26は、変位減少率マップの診断時刻における深さ方向の変位減少率の変化の度合い、例えば、凝固部分とそれ以外の部分の境界付近における変化の急峻さに応じて、凝固サイズArの信頼性を評価し、その信頼性に応じて、重み付け係数W1とW2を変更するようにしてもよい。例えば、境界付近における変化が急峻であるほど、凝固サイズArの信頼性が高いと判定され、重み付け係数W2の値が大きくされる。
【0115】
また、凝固測定部26は、組織の凝固サイズCoagを決定するにあたり、治療対象に応じて凝固サイズCoagを決定するようにしてもよい。
【0116】
例えば、治療対象が癌の場合には、癌細胞(癌組織)を確実に凝固壊死させることが望ましいため、「Coag=Vs∩Ar」とする。つまり、凝固サイズVsの範囲と凝固サイズArの範囲の積集合(両方に属する領域)を凝固サイズCoagとする。なお、凝固サイズVsと凝固サイズArのうちのいずれか小さい方の値を凝固サイズCoagとしてもよい。これにより、癌細胞の残存を低減して望ましくは癌細胞の残存を無くして、治療の安全性と信頼性を高めることが可能になる。
【0117】
これに対し、治療対象が子宮筋腫のような良性腫瘍においては、癌の場合とは異なり、治療領域を縮小することが望ましい場合がある。つまり、癌細胞の場合のように確実に凝固壊死に導く必要性が低く、また、まばらに照射点を設定してHIFUを照射することも考えられる。そこで、治療対象が例えば良性腫瘍の場合には「Coag=Vs∪Ar」とする。つまり、凝固サイズVsの範囲と凝固サイズArの範囲の和集合(少なくとも一方に属する領域)を凝固サイズCoagとする。なお、凝固サイズVsと凝固サイズArのうちのいずれか大きい方の値を凝固サイズCoagとしてもよい。
【0118】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。なお、本発明に係る超音波医用装置を利用した治療等は、医師等の専門家の指導の下で十分に慎重に行われるべきことは言うまでもない。