特許第5954914号(P5954914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5954914リガンド化合物、オレフィンオリゴマー化用触媒系、およびこれを用いたオレフィンオリゴマー化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5954914
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】リガンド化合物、オレフィンオリゴマー化用触媒系、およびこれを用いたオレフィンオリゴマー化方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/46 20060101AFI20160707BHJP
   C07F 11/00 20060101ALI20160707BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20160707BHJP
   C07C 2/32 20060101ALI20160707BHJP
   C08F 4/78 20060101ALI20160707BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20160707BHJP
【FI】
   C07F9/46CSP
   C07F11/00 A
   C07C11/02
   C07C2/32
   C08F4/78
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-550348(P2015-550348)
(86)(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公表番号】特表2016-503815(P2016-503815A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】KR2014011078
(87)【国際公開番号】WO2015072812
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0139995
(32)【優先日】2013年11月18日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0160180
(32)【優先日】2014年11月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】サ、ソク−ピル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ−ス
(72)【発明者】
【氏名】シン、ウン−ジ
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103285926(CN,A)
【文献】 国際公開第2008/014139(WO,A1)
【文献】 JIANG Tao et al.,Chinese Science Bulletin,2012年 5月,57(13),pp.1510-1515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で示される化合物:
【化10】
上記の式において、
Aは、下記の化学式2で示され、
【化11】
Xは、C1-20アルキレンまたはC6-14アリーレンであり、
1乃至R4は、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C6-14アリール、C1-4アルキルで置換されたC6-14アリール、C6-14アリールで置換されたC1-4アルキルまたはC1-4アルコキシで置換されたC6-14アリールであり、
5乃至R14は、それぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C6-14アリール、C1-4アルキルで置換されたC6-14アリール、C6-14アリールで置換されたC1-4アルキルまたはC1-4アルコキシで置換されたC6-14アリールである。
【請求項2】
前記Xは、メチレンまたはフェニレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R1乃至R4は互いに同一なものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記R1乃至R4はフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記R5およびR6は水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記R7およびR8は、互いに同一であり、水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記R9は、水素またはイソ−プロピルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記R10は水素である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記R11乃至R13は水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記R14は水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物は、下記の化合物から構成される群より選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物:
【化12】
【請求項12】
請求項1乃至11のうちのいずれか一項の化合物、遷移金属供給源および助触媒を含む、オレフィンオリゴマー化用触媒系。
【請求項13】
前記遷移金属供給源は、クロム(III)アセチルアセトナート、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン、クロム(III)−2−エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、クロム(III)ベンゾイルアセトナート、クロム(III)ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナートおよびクロム(III)アセテートヒドロキシドからなる群より選択されるいずれか一つ以上である、請求項12に記載のオレフィンオリゴマー化用触媒系。
【請求項14】
前記助触媒は、下記の化学式3乃至5で示される化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上である、請求項12に記載のオレフィンオリゴマー化用触媒系:
[化学式3]
−[Al(R15)−O]c
上記化学式3において、
15は、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキルまたはC1-20ハロアルキルであり、
cは2以上の整数であり、
[化学式4]
D(R163
上記化学式4において、
Dはアルミニウムまたはボロンであり、
16はC1-20アルキルまたはC1-20ハロアルキルであり、
[化学式5]
[L−H]+[Q(E)4-
上記化学式5において、
Lは中性ルイス塩基であり、
[L−H]+はブレンステッド酸であり、
QはBr3+またはAl3+であり、
Eは、それぞれ独立して、C6-20アリールまたはC1-20アルキルであり、ここで前記C6-20アリールまたはC1-20アルキルは非置換されるか、またはハロゲン、C1-20アルキル、C1-20アルコキシおよびフェノキシから構成される群より選択される一つ以上の置換基で置換される。
【請求項15】
請求項12のオレフィンオリゴマー化用触媒系存在下にオレフィンを多量化反応させる段階を含む、オレフィンオリゴマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンド化合物、オレフィンオリゴマー化用触媒系、およびこれを用いたオレフィンオリゴマー化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線状アルファ−オレフィン(Linear alpha−olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに用いられる重要な物質として商業的に広く使用され、特に1−ヘキセンと1−オクテンは線状低密度ポリエチレン(Linear Low−Density Polyethylene、LLDPE)の製造時にポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用される。
【0003】
従来のLLDPEの製造過程にはエチレンと共にポリマー骨格(polymer backbone)に分枝(branch)を形成して密度を調節するためにアルファ−オレフィン、例えば1−ヘキセン、1−オクテンのような共単量体と共重合が行われるようにした。
【0004】
したがって、共単量体の含量の高いLLDPEの製造において、共単量体の価格が製造費用の大きな部分を占めるという問題点があった。このような問題点を解決するための多様な試みがあった。
【0005】
また、アルファ−オレフィンは種類によって応用分野や市場規模が異なるため特定のオレフィンを選択的に生産できる技術は商業的に大きく重要であり、最近、選択的なエチレンオリゴマー化(ethylene oligomerization)を通じて1−ヘキセンまたは1−オクテンを高い選択度で製造するクロム触媒技術に対する研究が多く行われている。
【0006】
1−ヘキセンまたは1−オクテンを製造する既存の商業的製造方法としては、シェルケミカル(Shell Chemical)のSHOPプロセス(SHOP process)、シェブロンフィリップス(Chevron Philips)のZieglerプロセス(Ziegler Process)などがあり、これを用いればC4-20の広い分布のアルファ−オレフィンを生成することができる。
【0007】
エチレンの三量化触媒として一般式(R1)(R2)X−Y−X(R3)(R4)のリガンドを用いたクロム系触媒が提示された。上記の式において、Xはリン、砒素またはアンチモンであり、Yは−N(R5)−のような連結基であり、R1、R2、R3およびR4のうちの少なくとも一つが極性または電子供与置換体を有する。
【0008】
また、触媒条件下に1−ヘキセンに対して触媒活性を示さないリガンドとしてR1、R2、R3およびR4のうちの少なくとも一つに極性置換体を有していない化合物である(o−エチルフェニル)2PN(Me)P(o−エチルフェニル)2に対する研究が成されてきた(Chem.Commun.、2002、858)。
【0009】
しかし、前述の従来の技術のヘテロ原子を含むリガンドは、1−オクテンまたは1−ヘキセン製造反応時、反応中に一貫して持続する多量化反応活性と高い選択性に対する要求が依然として持続しているのが実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chem.Commun.、2002、858
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、高い触媒活性、選択度でオレフィンをオリゴマー化することができる新規なリガンド化合物、これを含むオレフィンオリゴマー化用触媒系、およびこれを用いたオレフィンオリゴマー化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、下記の化学式1で示される化合物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
上記の式において、
Aは、下記の化学式2で示され、
【0015】
【化2】
【0016】
Xは、C1-20アルキレンまたはC6-14アリーレンであり、
1乃至R4は、それぞれ独立して、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C6-14アリール、C1-4アルキルで置換されたC6-14アリール、C6-14アリールで置換されたC1-4アルキルまたはC1-4アルコキシで置換されたC6-14アリールであり、
5乃至R14は、それぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C6-14アリール、C1-4アルキルで置換されたC6-14アリール、C6-14アリールで置換されたC1-4アルキルまたはC1-4アルコキシで置換されたC6-14アリールである。
【0017】
好ましくは、前記Xは、メチレンまたはフェニレンである。
【0018】
また、好ましくは、前記R1乃至R4は互いに同一である。より好ましくは、前記R1乃至R4はフェニルである。
【0019】
また、好ましくは、前記R5およびR6は水素である。
【0020】
また、好ましくは、前記R7およびR8は、互いに同一であり、水素またはメチルである。
【0021】
また、好ましくは、前記R9は、水素またはイソ−プロピルである。また、好ましくは、前記R10は水素である。
【0022】
また、好ましくは、前記R11乃至R13は水素である。
【0023】
また、好ましくは、前記R14は水素またはメチルである。
【0024】
また、好ましくは、Xはメチレンまたはフェニレンであり、R1乃至R4はフェニルであり、R5およびR6は水素であり、R7およびR8は互いに同一であり、水素またはメチルであり、R9は水素またはイソ−プロピルであり、R10乃至R13は水素であり、R14は水素またはメチルである。
【0025】
前記化学式1で示される化合物の代表的な例は下記の通りである:
【0026】
【化3】
【0027】
前記化学式1で示される化合物は、可能な光学異性体を全て含む。
【0028】
また、本発明は、下記反応式1のように前記化学式1で示される化合物の製造方法を提供する。
【0029】
【化4】
【0030】
上記反応式1において、A、XおよびR5乃至R14は先に定義した通りである。
【0031】
上記段階1は、上記出発物質のアミン基にA置換基を置換する反応であって、前記出発物質とPR12Clを反応させる段階である。トリエチルアミンを共に反応させるのが好ましく、溶媒はジクロロメタンを使用するのが好ましい。
【0032】
万一、A置換基のR1およびR2の構造(PR12)とR3およびR4の構造(PR34)が同一であれば、前記段階1によって前記化学式1で示される化合物を製造することができる。万一、A置換基のR1およびR2の構造(PR12)とR3およびR4の構造(PR34)が相異していれば、前記段階2を行って前記化学式1で示される化合物を製造することができる。前記段階2は、反応物質としてPR34Clを使用することを除いては、前記段階1と同一である。
【0033】
また、本発明は、前記化学式1で示される化合物、遷移金属供給源および助触媒を含む、オレフィンオリゴマー化用触媒系を提供する。
【0034】
本発明で使用する用語‘オレフィンオリゴマー化’とは、オレフィンが低重合されることを意味する。三つのオレフィンが重合される時は三量化(trimerization)と、四つのオレフィンが重合される時は四量体化(tetramerization)と呼ばれ、このようにオレフィンが低重合されて低分子量の物質を作る過程を総称して多量化(multimerization)という。特に、本発明では、エチレンからLLDPEの主要共単量体である1−ヘキセンおよび1−オクテンを選択的に製造することを意味する。
【0035】
選択的なオレフィンオリゴマー化反応は、使用する触媒システムと密接な関連がある。オレフィンオリゴマー化反応時に使用される触媒系は、主触媒役割を果たす遷移金属供給源と、助触媒を含み、この時、リガンドの化学構造によって活性触媒の構造を変化させることができ、これによるオレフィン選択度と活性が異なるようになる。
【0036】
よって、本発明によるオレフィンオリゴマー化用触媒系はリガンドとして前記化学式1で示される化合物を使用し、1−ヘキセンおよび1−オクテンを選択的に製造することができる。理論的に制限されるわけではないが、前記化学式1で示される化合物は、主触媒に配位できるA置換基を2つ有しており、化合物内のA置換基がシクロヘキサン−X構造のリンカーで連結されている構造を有しており、このような柔軟なリンカーによってオリゴマー化反応が起こる活性点である2個のA置換基が効果的に相互作用して触媒の活性と選択度を高めると判断される。
【0037】
前記遷移金属供給源は、主触媒役割を果たすものであって、クロム(III)アセチルアセトナート、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン、クロム(III)−2−エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、クロム(III)ベンゾイルアセトナート、クロム(III)ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナートおよびクロム(III)アセテートヒドロキシドからなる群より選択されるいずれか一つ以上であるのが好ましい。
【0038】
前記助触媒は、13族金属を含む有機金属化合物であって、一般に遷移金属化合物の触媒下にオレフィンを多量化する時に用いることができるものであれば、特に限定されるのではない。具体的に、前記助触媒は、下記の化学式3乃至5で示される化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上のものを使用することができる。
【0039】
【化5】
【0040】
上記化学式3において、
15は、それぞれ独立して、ハロゲン、C1-20アルキルまたはC1-20ハロアルキルであり、
cは2以上の整数であり、
【0041】
【化6】
【0042】
上記化学式4において、
Dはアルミニウムまたはボロンであり、
16はC1-20アルキルまたはC1-20ハロアルキルであり、
【0043】
【化7】
【0044】
上記化学式5において、
Lは中性ルイス塩基であり、
[L−H]+はブレンステッド酸であり、
QはBr3+またはAl3+であり、
Eは、それぞれ独立して、C6-20アリールまたはC1-20アルキルであり、ここで前記C6-20アリールまたはC1-20アルキルは非置換されるか、またはハロゲン、C1-20アルキル、C1-20アルコキシおよびフェノキシから構成される群より選択される一つ以上の置換基で置換される。
【0045】
前記化学式3で示される化合物の例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンまたはブチルアルミノキサンが挙げられる。
【0046】
前記化学式4で示される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジメチルイソブチルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−s−ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロンまたはトリブチルボロンが挙げられる。
【0047】
前記化学式5で示される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボロン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボロン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p−トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N−ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルカルボニウムテトラフェニルボロン、トリフェニルカルボニウムテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルカルボニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロンまたはトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボロンが挙げられる。
【0048】
本発明によるオレフィンオリゴマー化用触媒系は、線状アルファ−オレフィンに対する選択度を高め多量化反応活性を高めるために、前記化学式1で示される化合物:遷移金属供給源:助触媒のモル比は約1:1:1乃至約10:1:10,000であり得、好ましくは約1:1:100乃至約5:1:3,000であり得る。但し、本発明がこれに限定されるのではない。
【0049】
前記化学式1で示される化合物、遷移金属供給源および助触媒を含むオレフィンオリゴマー化用触媒系において、前記三成分は同時にまたは任意順序で順次に、任意の適した溶媒で単量体の存在または不在下に共に添加されて活性のある触媒として収得できる。適した溶媒としては、ヘプタン、トルエン、1−ヘキセン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、メタノール、アセトンなどが含まれ、これに制限されない。
【0050】
また、本発明は、前記オレフィンオリゴマー化用触媒系の存在下にオレフィンを多量化反応させる段階を含むオレフィンオリゴマーの製造方法を提供する。本発明によるオレフィンオリゴマー化用触媒系を用いると、反応の活性度および選択度の向上したオレフィンのオリゴマー化方法を提供することができる。前記オレフィンはエチレンであるのが好ましい。
【0051】
本発明によるオレフィンオリゴマー化は、前記オレフィンオリゴマー化用触媒系と通常の装置および接触技術を用いて不活性溶媒の存在または不在下で均質液状反応、触媒システムが一部溶解しないか全部溶解しない形態であるスラリー反応、2相液体/液体反応、または生成物オレフィンが主媒質として作用するバルク相反応またはガス相反応で可能であり、均質液状反応が好ましい。
【0052】
前記オレフィンオリゴマー化反応は、触媒化合物および活性剤と反応しない任意の不活性溶媒中で遂行できる。適した不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ヘキサン、ペンタン、ブタン、イソブタンなどがあり、これに限られない。この時、前記溶媒は少量のアルキルアルミニウムで処理することによって触媒毒として作用する少量の水または空気などを除去して使用することができる。
【0053】
前記オレフィンオリゴマー化反応は、約5℃乃至約200℃の温度、好ましくは約30℃乃至約150℃の温度で遂行できる。また、前記オレフィンオリゴマー化反応は、約1bar乃至約300barの圧力で、好ましくは約2bar乃至約150barの圧力で遂行できる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で示される化合物をリガンドとして用いた触媒系でエチレンをオリゴマー化した結果、1−ヘキセンと1−オクテンを選択的に合成することができるのが確認された。
【発明の効果】
【0055】
本発明による化学式1で示される化合物およびこれを含む触媒系を用いると、既存の触媒系に比べて高い触媒活性および選択度でオレフィンをオリゴマー化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、下記の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらのみに限定されるのではない。
【0057】
以下で、全ての反応はシュレンクテクニック(Schlenk tenchnique)またはグローブボックス(Glove box)を用いてアルゴン環境下で行った。合成された化合物は、バリアン500MHzスペクトロメーター(Varian 500MHz spectrometer)を用いて1H(500MHz)と31P(202MHz)NMRスペクトル(NMR spectra)で分析した。シフト(Shift)は残留溶媒ピーク(residual solvent peak)をレファレンス(reference)にしてTMSからダウンフィールド(downfield)でppmで示した。Phosphorous probeは水性(aqueous)H3PO4でキャリブレーション(calibration)した。
【実施例】
【0058】
実施例1
【0059】
【化8】
【0060】
アルゴン環境下に、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(5mmol)とトリエチルアミン(3〜10当量)をジクロロメタン(80mL)に溶かした。フラスコをウォーターバス(water bath)に浸した状態で、クロロジフェニルホスフィン(20mmol)を徐々に入れ、一晩攪拌した。真空下に溶媒を除去した後、THFを入れ十分に攪拌し、エアフリーガラスフィルタ(air−free glass filter)でトリエチルアンモニウムクロライド塩を除去した。ろ過液の溶媒を除去して目的化合物を得た。
【0061】
31P NMR:45.6(br s)、56.2(br s)。
【0062】
比較例1
【0063】
【化9】
【0064】
前記実施例1と同一に製造し、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミンの代わりに2−アミノプロパン(10mmol)を使用して、目的化合物を得た。
【0065】
31P NMR:48.4(br s)。
【0066】
実験例1
段階1
アルゴンガス下でCr(acac)3(17.5mg、0.05mmol)と、前記実施例で製造した化合物(0.025mmol)をフラスコに入れ、シクロヘキサン(10mL)を添加し攪拌して5mM溶液を製造した。
【0067】
段階2
600mL容量のParr反応器を準備し120℃で2時間真空にした後、内部をアルゴンで置換し、温度を45℃に下げた。シクロヘキサン(270g)およびMMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=300)2mLを注入し、前記5mM溶液2mL(10umol)を反応器に注入した。2分間500rpmで攪拌後、45barに合わされたエチレンラインのバルブを開けて反応器の中をエチレンで満たした後、500rmで15分間攪拌した。エチレンラインバルブを閉め、反応器をドライアイス/アセトンバスで0℃に冷ました後、未反応エチレンを徐々に排出(vent)した後、ノナン(GC internal standard)を0.5mL入れた。10秒間攪拌した後、反応器の液体部分を2mL取って水で冷まし(quench)、有機部分をPTFEシリンジフィルターでフィルタリングしてGCサンプルを作った。前記GCサンプルをGCで分析した。
【0068】
段階3
残った反応液にエタノール/HCl(10vol%)400mLを入れ、攪拌しフィルタリングしてポリマーを得た。収得したポリマーを65℃真空オーブンで一晩乾燥し、重量を測定した。
【0069】
実験例2
前記実験例1と同様な方法で実施し、前記実験例1の段階2で、前記MMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=300)2mLの代わりに1mLを使用し、また前記5mM溶液2mL(10umol)の代わりに1mL(5umol)を使用して、実施した。
【0070】
実験例3
前記実験例1と同様な方法で実施し、前記実験例1の段階2で、前記MMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=300)2mLの代わりにMMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=1200)4mLを使用し、また前記5mM溶液2mL(10umol)の代わりに1mL(5umol)を使用して、実施した。
【0071】
実験例4
前記実験例1と同様な方法で実施し、前記実験例1の段階2で、前記MMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=300)2mLの代わりにMMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=1200)4mLを使用し、また前記5mM溶液2mL(10umol)の代わりに1mL(5umol)を使用して、実施した。また、既存の条件であるエチレン45barおよび45℃の条件の代わりに、エチレン60barおよび60℃の条件で実施した。
【0072】
実験例5
前記実験例1と同様な方法で実施し、前記実験例1の段階2で、シクロヘキサンを270gの代わりに70gを使用し、前記MMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=300)2mLの代わりにMMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=1200)2mLを使用し、また前記5mM溶液2mL(10umol)の代わりに0.5mL(2.5umol)を使用して、実施した。
【0073】
実験例6
前記実験例4と同様な方法で実施し、Cr(acac)3の代わりに三塩化クロムトリステトラヒドロフラン(18.7mg、0.05mmol)を使用して、実施した。
【0074】
実験例7
前記実験例4と同様な方法で実施し、Cr(acac)3の代わりにクロム(III)−2−エチルヘキサノエート(24.1mg、0.05mmol)を使用して、実施した。
【0075】
実験例8
前記実験例4と同様な方法で実施し、Cr(acac)3の代わりにクロム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)(30.1mg、0.05mmol)を使用して、実施した。
【0076】
実験例9
前記実験例4と同様な方法で実施し、Cr(acac)3の代わりにクロム(III)ベンゾイルアセトナート(26.8mg、0.05mmol)を使用して、実施した。
【0077】
実験例10
前記実験例4と同様な方法で実施し、Cr(acac)3の代わりにクロム(III)ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナート(33.7mg、0.05mmol)を使用して、実施した。
【0078】
実験例11
前記実験例4と同様な方法で実施し、Cr(acac)3の代わりにクロム(III)アセテートヒドロキシド(Cr3(CH3CO27(OH)2、26.8mg、0.05mmol)を使用して、実施した。
【0079】
比較実験例1
前記実験例1と同様な方法で実施し、前記実験例1の段階1で、実施例で製造した化合物の代わりに比較例で製造した化合物(0.1mmol)を使用し、前記実験例1の段階2で、前記MMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=300)2mLの代わりに1mLを使用し、また前記5mM溶液2mL(10umol)の代わりに1mL(5umol)を使用して、実施した。
【0080】
比較実験例2
前記実験例1と同様な方法で実施し、前記実験例1の段階1で、実施例で製造した化合物の代わりに比較例で製造した化合物(0.1mmol)を使用し、前記実験例1の段階2で、前記MMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=300)2mLの代わりにMMAO(イソヘプタン溶液、Al/Cr=1200)4mLを使用し、また前記5mM溶液2mL(10umol)の代わりに1mL(5umol)を使用して、実施した。
【0081】
前記実験例1乃至11および比較実験例1および2の結果を下記表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
上記表1に示されているように、比較実験例に比べて本発明による化合物を用いた実験例は非常に高い多量化反応活性を示し、非常に少ない固形副産物を生成し、アルファ−オレフィン(1−ヘキセンおよび1−オクテン)に対する選択度が顕著に向上したのを確認することができた。