(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分(B)の熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、および、スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のカバーレイフィルムは、フレキシブルプリント配線板への適用を意図したものであり、上記した高度な難燃性、すなわち、「UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足すること」が要求されるとは記載されていない。
したがって、特許文献1の段落[0040]に記載の難燃剤の含有量は、「UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足すること」等の高度な難燃性を達成することを意図したものではない。
「UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足すること」等の高度な難燃性を達成するためには、難燃剤の含有量を増加する必要がある。
【0008】
しかしながら、「UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足すること」等の高度な難燃性を達成可能な量のリン系難燃剤を含有させた場合、周波数1〜10GHzの高周波領域における誘電率(ε)、誘電正接(tanδ)が上昇し、高周波領域での電気信号損失が問題となることが明らかになった。
【0009】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するため、高周波領域、具体的には、周波数1〜5GHzの領域での低誘電率化および低誘電損失化を達成することができ、かつ、UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足することができる電気・電子用途の接着フィルムおよびカバーレイフィルム、ならびに、それらの作成に用いる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、
(A)下記一般式(1)で示される、質量平均分子量(Mw)が500〜4000のビニル化合物、
【化1】
(式中、R
1,R
2,R
3,R
4,R
5,R
6,R
7は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基またはフェニル基である。−(O−X−O)−は下記構造式(2)で示される。
【化2】
R
8,R
9,R
10,R
14,R
15は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
11,R
12,R
13は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。−(Y−O)−は下記構造式(3)で定義される1種類の構造、または下記構造式(3)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものである。
【化3】
R
16,R
17は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
18,R
19は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。Zは、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含むこともある。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜300の整数を示す。c,dは、0または1の整数を示す。)
(B)熱可塑性エラストマー、
(C)前記一般式(1)で示されるビニル化合物以外の熱硬化性樹脂、
(D)硬化剤、および、
(E)有機ホスフィン酸アルミニウムを含有し、
前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)、前記成分(D)、および、前記成分(E)の合計100質量部に対し、前記成分(E)を10〜50質量部含有することを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明の樹脂組成物において、前記成分(A)の−(O−X−O)−が、下記構造式(4)で示され、前記成分(A)の−(Y−O)−が下記構造式(5)、若しくは、下記構造式(6)で示される構造、または、下記構造式(5)で示される構造および下記構造式(6)で示される構造がランダムに配列した構造を有することが好ましい。
【化4】
【化5】
【0012】
本発明の樹脂組成物において、前記成分(A)の−(Y−O)−が前記構造式(6)で示される構造を有することが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂組成物において、前記成分(B)の熱可塑性エラストマーが、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、および、スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物において、前記成分(C)の熱硬化性樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスマレイミド、および、カルボジイミドおよびからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂組成物において、前記成分(B)の熱可塑性エラストマーの含有量が、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)、前記成分(D)、および、前記成分(E)の合計100質量部に対し、10〜60質量部であることが好ましい。
【0016】
本発明の樹脂組成物において、前記成分(C)の熱硬化性樹脂の含有量が、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)、前記成分(D)、および、前記成分(E)の合計100質量部に対し、0.5〜40質量部であることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、さらに、(F)フィラーを含有してもよい。この場合、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)、前記成分(D)、前記成分(E)、および、前記成分(F)の合計100質量部に対し、前記成分(F)を10〜60質量部含有する。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、さらに、(G)有機過酸化物を含有してもよい。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の硬化物の周波数1〜10GHzの領域における、誘電率(ε)が3.0以下であり、誘電正接(tanδ)が0.006以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、本発明の樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムを提供する。
【0022】
また、本発明は、本発明の樹脂組成物を用いて作成されるカバーレイフィルムを提供する。
【0023】
また、本発明は、本発明の樹脂組成物を含むワニスを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、加熱硬化後において、高周波領域で優れた電気特性、具体的には、周波数1〜10GHzの領域で低誘電率(ε)、および、低誘電正接(tanδ)を示すので、高周波領域での低誘電率化および低誘電損失化を達成することができ、かつ、UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足する。
また、本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、加熱硬化後において、ポリイミド、液晶ポリマー、セラミックなどのプリント配線板に用いられる有機材料または無機材料に対して優れた接着強度を示す。
また、本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、加熱硬化後において、可撓性に優れているので、フレキシブルプリント配線板用の接着フィルムおよびカバーレイフィルムとして好適である。なお、本発明のフィルムは、加熱硬化前においても可撓性に優れているため、フィルムの加工工程における作業性が良好である。
本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、本発明の樹脂組成物を用いて作成することができる。
本発明では、予めフィルムの形態にしたものを用いる代わりに、本発明の樹脂組成物を含むワニスをフィルム形成面に塗布した後、乾燥させてフィルム化させてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、以下に示す成分(A)〜成分(E)を必須成分として含有する。
【0026】
成分(A):下記一般式(1)で示される、質量平均分子量(Mw)が500〜4000のビニル化合物、
【化6】
【0027】
一般式(1)中、R
1,R
2,R
3,R
4,R
5,R
6,R
7は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基またはフェニル基である。これらの中でも、R
1,R
2,R
3,R
4,R
5,R
6,R
7が水素原子であることが好ましい。
式中、−(O−X−O)−は下記構造式(2)で示される。
【化7】
構造式(2)中、R
8,R
9,R
10,R
14,R
15は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。これらの中でも、R
8,R
9,R
10,R
14,R
15が炭素数6以下のアルキル基であることが好ましい。
R
11,R
12,R
13は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。これらの中でも、R
11,R
12,R
13は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基であることが好ましい。
一般式(1)中、−(Y−O)−は下記構造式(3)で定義される1種類の構造、または下記構造式(3)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものである。これらの中でも、−(Y−O)−は下記構造式(3)で定義される1種類の構造が配列したものであることが好ましい。
【化8】
構造式(3)中、R
16,R
17は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。これらの中でも、R
16,R
17が炭素数6以下のアルキル基であることが好ましい。
R
18,R
19は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。これらの中でも、R
18,R
19が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であることが好ましい。
一般式(1)中、Zは、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含むこともある。これらの中でも、Zがメチレン基であることが好ましい。
a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜300の整数を示す。
c,dは、0または1の整数を示す。これらの中でも、c,dが1であることが好ましい。
これらのなかでも好ましくは、R
8,R
9,R
10,R
14,R
15は炭素数3以下のアルキル基、R
11,R
12,R
13は水素原子または炭素数3以下のアルキル基、R
16,R
17は炭素数3以下のアルキル基、R
18,R
19は水素原子である。
【0028】
また、上記一般式(1)中の−(O−X−O)−は、下記構造式(4)で示されることが好ましい。
【化9】
また、一般式(1)中の−(Y−O)−が下記構造式(5)、若しくは、下記構造式(6)で示される構造、または、下記構造式(5)で示される構造および下記構造式(6)で示される構造がランダムに配列した構造を有することが好ましい。これらの中でも、−(Y−O)−は下記構造式(6)で定義される構造が配列した構造を有することが好ましい。
【化10】
【0029】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)は該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの熱硬化性、耐熱性、および、高周波での優れた電気特性、すなわち、周波数1〜10GHzの領域での低誘電率(ε)、および、低誘電正接(tanδ)に寄与する。
また、成分(A)は、後述する成分(B)〜成分(E)の相溶化剤として作用する。
【0030】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)として、一般式(1)で示されるビニル化合物のうち、質量平均分子量(Mw)が500〜4000のものを用いる理由は以下の通り。
質量平均分子量(Mw)が500未満だと、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの柔軟性がなくなり、もろく割れやすいフィルムになる。また、熱圧着時や加熱硬化時に溶融粘度が低下しすぎるため、フィルムの膜厚の均一性が損なわれるおそれがある。
一方、質量平均分子量(Mw)が4000超だと、溶解性が低下するため、樹脂組成物の調製時に問題となる。具体的には、樹脂組成物を溶剤で希釈したワニスの調製時に熱トルエン中での長時間の混合溶解が必要となる。また、フィルムを作成するためにワニスを室温に戻すと再結晶し始め、ワニスの保存安定性が悪くなる。また、フィルム化後に結晶化するため、フィルムとしての形状の維持が難しくなる。このため、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムが割れやすくなる。また、薄膜のフィルムを作成することができなくなる。さらにまた、フィルム表面の平滑性が悪化する。
成分(A)として、一般式(1)で示されるビニル化合物のうち、質量平均分子量(Mw)が800〜3500のものを用いることが好ましく、1000〜3000のものを用いることがより好ましい。
【0031】
上記一般式(1)で表されるビニル化合物の製法は、特に限定されず、いかなる方法で製造してもよい。例えば、下記一般式(7)で示される化合物に対してクロロメチルスチレンを水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムエトキサイド等のアルカリ触媒存在下で、必要に応じてベンジルトリn−ブチルアンモニウムブロマイド、18−クラウン−6−エーテル等の相間移動触媒を用いて反応させることにより得ることができる。
【化11】
一般式(7)中の−(O−X−O)、および、−(Y−O)−については、一般式(1)について上述した通りである。
【0032】
成分(B):熱可塑性エラストマー
本発明の樹脂組成物において、成分(B)は特に該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの高周波での優れた電気特性(周波数1〜10GHzの領域での低誘電率(ε)、および、低誘電正接(tanδ))、フィルム性状、および、耐熱性に寄与する。
【0033】
本発明の樹脂組成物において、成分(B)のエラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、および、スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。これらのうち、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらのうち、いずれを用いるかは、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムに付与する特性に応じて適宜選択することができる。
例えば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体は、−エチレン/ブチレン−の部分の結晶性が高いため耐熱性が高く、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムに耐熱性を付与するうえで好ましい。
一方、スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体は、−(エチレン−エチレン/プロピレン)−の部分の結晶性が、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体の対応する部分(−エチレン/ブチレン−の部分)に比べて低いため、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体に比べて基材に対する接着強度が高い。
また、スチレンーブタジエンブロック共重合体は、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの弾性率が低くなり、かつ、フィルムの熱圧着時において、被接着面に存在する凹凸の埋め込み性がよいため、該フィルムの接着強度が高くなる。また、フィルムの硬化後の柔軟性も優れる。
【0034】
本発明の樹脂組成物において、成分(B)の含有量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、10〜60質量部であることが好ましい。
成分(B)の含有量が10質量部未満だと、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムのフィルム性状、具体的には、フィルム単体での耐折性に劣る。また、熱圧着時のしみ出し量が大きくなり、フィルムの厚さが不均一になりやすい。
一方、成分(B)の含有量の60質量部超だと、樹脂組成物の他の成分、特に、成分(A)の含有量が少なくなることから、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの耐熱性が低下する。また、樹脂組成物の他の成分との相溶性が低下するので、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの組成が不均一になり、接着フィルムおよびカバーレイフィルムの接着性や機械的強度が低下する。
本発明の樹脂組成物において、成分(B)の含有量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、12〜55質量部であることがより好ましく、13〜45質量部であることがさらに好ましい。
【0035】
成分(C):上記一般式(1)で示されるビニル化合物以外の熱硬化性樹脂、
本発明の樹脂組成物において、成分(C)は該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの熱硬化性、および、接着性に寄与する。
【0036】
成分(C)として使用する熱硬化性樹脂は、成分(A)として上記一般式(1)で示されるビニル化合物以外の熱硬化性樹脂であれば特に限定されない。
成分(C)として使用する熱硬化性樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスマレイミド、および、カルボジイミドおよびからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。
なお、上記の熱硬化性樹脂のうち、いずれか1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、いずれを用いるかは、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムに付与する特性に応じて適宜選択することができる。
ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂といったエポキシ樹脂は、樹脂組成物の他の成分との相溶性に優れ、また、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムが耐湿信頼性に優れる。上記のエポキシ樹脂の中では、樹脂自体の誘電特性が比較的良いため、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。
また、ビスマレイミドを使用した場合、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの硬化後の線膨張係数が低くなる。
【0037】
本発明の樹脂組成物において、成分(C)の熱硬化性樹脂の含有量が、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、0.5〜40質量部であることが好ましい。
成分(C)の含有量が0.5質量部未満だと、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの接着性が不十分となる等の問題がある。
成分(C)の含有量が40質量部超だと、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの熱圧着時のしみ出し量が過剰に大きくなる。また、全成分中に占める成分(C)の割合が多くなるため、耐熱性に劣る成分(C)の特性が、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルム全体に影響する。そのため、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの耐熱性や硬化性が低下するおそれがある。
本発明の樹脂組成物において、成分(C)の含有量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、1.0〜30質量部であることがより好ましく、1.5〜15質量部であることがさらに好ましい。
【0038】
成分(C)として使用する熱硬化性樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、または、カルボジイミドの場合、数平均分子量(Mn)が150〜2500であることが該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの熱硬化性、接着性、硬化後の機械的特性の理由から好ましい。
成分(C)として使用する熱硬化性樹脂が、ビスマレイミドの場合、数平均分子量(Mn)が150〜3500であることが該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの熱硬化性、接着性、硬化後の機械的特性の理由から好ましい。
【0039】
成分(D):硬化剤
本発明の樹脂組成物は、成分(D)として硬化剤を有効量含有する。
成分(D)として使用する硬化剤は特に限定されない。(D)成分としては、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、および、酸無水物系硬化剤からなる群から選択される少なくとも1種の硬化剤を用いることが好ましい。
【0040】
フェノール系硬化剤の具体例としては、フェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0041】
アミン系硬化剤の具体例としては、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン等のトリアジン化合物、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の第三級アミン化合物が挙げられる。中でも、2,4−ジアミノ−6−〔2’―メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンが好ましい。
【0042】
イミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−イミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。中でも、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、および、1−シアノエチル−2−エチル−4−イミダゾールが好ましい。
【0043】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルバン酸二無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0044】
なお、上記の硬化剤のうち、いずれか1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、イミダゾール系硬化剤が、添加量が少なくても効果を発揮するなどの理由から好ましく、特に、2−フェニル−4,5ジヒドロキシメチルイミダゾールが、樹脂組成物を溶剤で希釈したワニスのポットライフや、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムのシェルフライフが向上することから好ましい。
【0045】
硬化剤の有効量は硬化剤の種類によって異なる。硬化剤の種類ごとに、その有効量を以下に示す。
フェノール系硬化剤の場合、その有効量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
アミン系硬化剤の場合、その有効量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることがさらに好ましい。
イミダゾール系硬化剤の場合、その有効量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることがより好ましく、0.2〜3質量部であることがさらに好ましい。
酸無水物系エポキシ硬化剤の場合、その有効量は、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、1〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
また、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、酸無水物系硬化剤のうち、2種以上を併用する場合、個々のエポキシ硬化剤が上記の有効量になるように添加する。
【0046】
成分(E):有機ホスフィン酸アルミニウム
本発明の樹脂組成物において、成分(E)は該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの難燃性に寄与する。
成分(E)として用いる有機ホスフィン酸アルミニウムは下記一般式で表される。
【化12】
上記一般式中、R
1およびR
2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基またはナフチル基を示す。アルキル基は直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基である。
成分(E)として用いる有機ホスフィン酸アルミニウムは、ジアルキルホスフィン酸アルミニウムであることが好ましく、ジエチルホスフィン酸アルミニウムであることがより好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、成分(E)として有機ホスフィン酸アルミニウムを用いることにより、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムが、UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足する。
難燃剤として、有機ホスフィン酸アルミニウムを用いた場合に、UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足することは、特開2009−179774号、特開2011−225883号にも記載されている。
しかしながら、前者の場合、高周波領域での電気信号損失は問題視されておらず、高周波領域での電気特性は全く検討されていなかった。一方、後者の場合、1GHz以上の周波数における比誘電率が2.9以下の樹脂を含むため、樹脂組成物の1GHz以上の周波数における比誘電率を3.0以下にすることができるが、使用する1GHz以上の周波数における比誘電率が2.9以下の樹脂の質量平均分子量(Mw)が、1,000〜300,000と高いため、接着フィルムやカバーレイフィルム用の樹脂組成物として使用した場合、溶解性が低下するため、樹脂組成物の調製時に問題となる。具体的には、樹脂組成物を溶剤で希釈したワニスの調製時に熱トルエン中での長時間の混合溶解が必要となる。また、フィルムを作成するためにワニスを室温に戻すと再結晶し始め、ワニスの保存安定性が悪くなる。また、フィルム化後に結晶化するため、フィルムとしての形状の維持が難しくなる。このため、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムが割れやすくなる。また、薄膜のフィルムを作成することができなくなる。さらにまた、フィルム表面の平滑性が悪化する。
【0048】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、成分(E)を10〜50質量部含有する。
成分(E)の含有量が10質量部未満だと、該樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの難燃性が低下し、UL94に基づく難燃性がV−0またはVTM−0を満足しない。
成分(E)の含有量が50質量部超だと、該樹脂組成物を用いて接着フィルムおよびカバーレイフィルムを作成する際にフィルム化できなくなる。
本発明の樹脂組成物において、成分(A)〜成分(E)の合計100質量部に対し、成分(E)を15〜48質量部含有することが好ましく、18〜45質量部含有することがより好ましい。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、成分(A)〜成分(E)に加えて、以下の成分(F)、成分(G)を必要に応じて含有してもよい。
【0050】
成分(F):フィラー
本発明の樹脂組成物は、上記成分(A)〜成分(E)に加えて、成分(F)としてフィラーを含有してもよい。
成分(F)として、フィラーを含有させることで、本発明の樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムに、所望のレオロジー特性、電気的特性、または、物理的特性、あるいはその両方を付与することができる。成分(F)として用いるフィラーは、本発明の樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの用途に応じて適宜選択されるが、例えば、熱伝導性物質、不要輻射吸収性物質、セラミック誘電体物質などが挙げられる。
【0051】
熱伝導性物質としては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの窒化物が挙げられる。
不要輻射吸収物質としては、例えば、フェライトなどの酸化鉄が挙げられる。
セラミック誘電体物質としては、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタンなどが挙げられる。
【0052】
成分(F)としてフィラーを含有させる場合、本発明の樹脂組成物への含有量は、所望の特性を発揮させるのに必要な量であって、かつ、フィルム形成が可能な量であれば、特に制限されるものではないが、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、および、成分(F)の合計100質量部に対して、10〜60質量部であることが、樹脂組成物に対する分散性や樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの加工性の点から好ましく、20〜55質量部であることがより好ましく、25〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0053】
また、成分(F)としてフィラーを含有させる場合、その形状は特に限定されず、例えば、粒状、粉末状、りん片状等であってよいが、その平均粒径(粒状以外の場合、その平均最大径)が0.5μm以下であることが、樹脂組成物に対する分散性や樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの加工性の点から好ましい。
【0054】
また、成分(F)としてフィラーを含有させる場合、必要に応じて表面処理を施したフィラーを用いてもよい。このようなフィラーの具体例としては、粒子表面に酸化皮膜を形成させたものが挙げられる。
【0055】
成分(G):有機過酸化物
本発明の樹脂組成物は、上記成分(A)〜成分(E)(成分(F)を含むこともある)に加えて、成分(G)として有機過酸化物を含有してもよい。
成分(G)として、有機過酸化物を含有させることで、本発明の樹脂組成物を用いて作成される接着フィルムおよびカバーレイフィルムの加熱硬化時において、成分(A)として用いるビニル化合物の反応が促進される。
【0056】
成分(G)の有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、イソノナノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドなどのジアシルパーオキサイド類;2,2−ジ(4,4−ジ−(ジ−tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類;イソプロピルパージカーボネート、ジ−sec−ブチルパージカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパージカーボネート、ジ−1−メチルヘプチルパージカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパージカーボネート、ジシクロヘキシルパージカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;tert−ブチルパーベンゾエート、tert−ブチルパーアセテート、tert−ブチルパー−2−エチルへキサノエート、tert−ブチルパーイソブチレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルジパーアジペート、キュミルパーネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、tert−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−tert−ヘキシルパーオキサイド、ジ(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキサイド類;キュメンヒドロキシパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類等を使用することができる。これらの中でも、tert−ブチルパーオキシベンゾエートが、活性温度が最適であること、すなわち、フィルム化の乾燥工程の60〜120℃の温度域や、接着フィルムやカバーレイフィルムの転写時の80℃前後の温度域では活性化せず、接着フィルムやカバーレイフィルムの加熱硬化時の180〜210℃の温度域で活性化すること、および、接着フィルムやカバーレイフィルムのシェルフライフが良好であることから好ましい。
【0057】
成分(G)として有機過酸化物を含有させる場合、本発明の樹脂組成物への含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、(含有する場合は(F)成分)、および、成分(G)の合計100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、0.1〜1質量部であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、上記成分(A)〜成分(G)以外の成分を必要に応じて含有してもよい。このような成分の具体例としては、シランカップリング剤、消泡剤、流動調整剤、成膜補助剤、分散剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の樹脂組成物は、慣用の方法により製造することができる。例えば、溶剤の存在下または非存在下で、上記成分(A)〜成分(E)(樹脂組成物が上記成分(F),(G)や他の任意成分を含有する場合はさらにこれらの任意成分)を加熱真空混合ニーダーにより混合する。
上記成分(A)〜成分(E)が所望の含有割合となるように、(樹脂組成物が上記成分(F),(G)や他の任意成分を含有する場合はさらにこれらの任意成分)、所定の溶剤濃度に溶解し、それらを10〜80℃に加温された反応釜に所定量投入し、回転数100〜1000rpmで回転させながら、常圧混合を3時間行った後、真空下(最大1Torr)でさらに30〜60分混合攪拌することができる。
【0060】
本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、本発明の樹脂組成物から公知の方法により得ることができる。例えば、本発明の樹脂組成物を溶剤で希釈してワニスとし、これを支持体の少なくとも片面に塗布し、乾燥させた後、支持体付のフィルム、または、支持体から剥離したフィルムとして提供することができる。
【0061】
ワニスとして使用可能な溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等の高沸点溶剤等が挙げられる。溶剤の使用量は特に限定されず、従来から使用されている量とすることができるが、好ましくは、固形分に対して20〜90質量%である。
【0062】
支持体は、フィルムの製造方法における所望の形態により適宜選択され、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム等の金属箔、ポリエステル、ポリエチレン等の樹脂のキャリアフィルム等が挙げられる。本発明の接着フィルムを、支持体から剥離したフィルムの形態として提供する場合、支持体は、シリコーン化合物等で離型処理されていることが好ましい。
【0063】
ワニスを塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、スロットダイ方式、グラビア方式、ドクターコーター方式等が挙げられ、所望のフィルムの厚みなどに応じて適宜選択されるが、特に、グラビア方式がフィルムの厚みを薄く設計しうることから好ましい。塗布は、乾燥後に形成されるフィルムの厚みが、所望の厚みになるように行われる。このような厚みは、当業者であれば、溶剤含有量から導くことができる。
【0064】
本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムの厚みは、用途に応じて要求される機械的強度などの特性に基づいて適宜設計されるが、一般に1〜100μmであり、薄膜化が要求される場合、1〜30μmであることが好ましい。
【0065】
乾燥の条件は、ワニスに使用される溶剤の種類や量、ワニスの使用量や塗布の厚みなどに応じて適宜設計され、特に限定されるものではないが、例えば、60〜120℃であり、大気圧下で行うことができる。
【0066】
使用前の本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、異物が付着することを防止するため、保護フィルムではさんだ状態で保管される。保護フィルムとしては、基材として記載したものを用いることができる。
【0067】
本発明の接着フィルムの使用手順は以下の通り。
本発明の接着フィルムを用いて接着する対象物のうち、一方の対象物の被接着面に本発明の接着フィルムを載置した後、もう一方の対象物をその被接着面が接着フィルムの露出面と接するように載置する。ここで、支持体付の接着フィルムを用いる場合、接着フィルムの露出面が一方の対象物の被接着面に接するように接着フィルムを載置して、被着面上に該接着フィルムを転写する。ここで、転写時の温度は例えば80℃とすることができる。
次に、転写時に支持体を剥離することによって露出した接着フィルムの面上にもう一方の対象物をその被接着面が接着フィルムの露出面と接するように載置する。これらの手順を実施した後、所定温度及び所定時間熱圧着させ、その後、加熱硬化させる。
熱圧着時の温度は好ましくは100〜200℃である。熱圧着の時間は好ましくは0.5〜10分である。
加熱硬化の温度は、好ましくは180〜210℃である。加熱硬化時間は、好ましくは30〜120分である。
本発明のカバーレイフィルムの使用手順も基本的に同様であり、本発明のカバーレイフィルムを、プリント配線板の所定の位置、すなわち、カバーレイフィルムで被覆する位置に載置した後、所定温度及び所定時間熱圧着させ、その後、加熱硬化させればよい。
また、予めフィルム化したものを使用する代わりに、本発明の樹脂組成物を溶剤で希釈したワニスを、一方の接着対象物の被接着面(カバーレイフィルムの場合、フィルムで被覆する位置)に塗布し、乾燥させた後に、上記した一方の対象物を載置する手順(カバーレイフィルムの場合、熱圧着)を実施してもよい。
【0068】
以下、本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムの特性について述べる。
【0069】
本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、加熱硬化後において、高周波での電気特性に優れている。具体的には、加熱硬化後のカバーレイフィルムは、周波数1〜10GHzの領域での誘電率(ε)が3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。また、周波数1〜10GHzの領域での誘電正接(tanδ)が0.01以下であることがより好ましく、0.0025以下であることがより好ましい。
周波数1〜10GHzの領域での誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)が上記の範囲であることにより、周波数1〜10GHzの領域での電気信号損失を低減することができる。
【0070】
本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、加熱硬化後において、十分な接着強度を有している。具体的には、加熱硬化後の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、JIS C6471に準拠して測定した銅箔粗化面に対するピール強度(180度ピール)が5N/cm以上あることが好ましく、より好ましくは8N/cm以上あり、さらに好ましくは10N/cm以上である。
【0071】
本発明の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、加熱硬化後において、十分な難燃性を有している。具体的には、加熱硬化後の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、UL94Vの難燃性規格に準拠して実施される難燃性試験において、難燃性クラスV−0で合格することが好ましい。また、加熱硬化後の接着フィルムおよびカバーレイフィルムは、UL94VTMの難燃性規格に準拠して実施される難燃性試験において、難燃性クラスVTM−0で合格することが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(
例1〜7、10〜12、実施例8〜9、比較例1〜6)
各成分を下記表に示す配合割合(質量部)になるように計量配合した後、トルエンを加え、80℃に加温された反応釜に投入し、回転数150rpmで回転させながら、常圧混合を3時間行った。
このようにして得られた樹脂組成物を含むワニスを、基材(離型処理をほどこしたPETフィルム)の片面に塗布し、100℃で乾燥させることにより、支持体付の接着フィルムを得た。
表中の略号はそれぞれ以下を表わす。
成分(A)
OPE2200:オリゴフェニレンエーテル(上記一般式(1)で示されるビニル化合物)(Mn=2200)、三菱ガス化学株式会社製
成分(A´)
S202A:変性ポリフェニレンエーテル(Mn=16000)、旭化成ケミカルズ株式会社製
成分(B)
SEPTON8007:スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製
SEPTON4044:スチレン−(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製
TR2003:スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、JSR株式会社製
PB810:ポリブタジエン、JSR株式会社製
成分(C)
NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製
828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製
HP4032D:ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製
BMI−70:ビスマレイミド、ケイ・アイ化成株式会社製
V−03:カルボジイミド、日清紡績株式会社製
成分(D)
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製
2PHZ−PW:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製
成分(E)
OP935:有機ホスフィン酸アルミニウム、クラリアントジャパン株式会社製
成分(E´)
FP2200:リン酸塩系難燃剤、株式会社ADEKA製
PX-200:リン酸エステル系難燃剤、大八化学工業製
成分(F)
SE2050:シリカフィラー、株式会社アドマテックス
成分(G)
パーブチルZ:tert−ブチルパーオキシベンゾエート、日油株式会社
その他の成分
KBM403:シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製
DISPERBYK2009:分散剤、ビックケミー・ジャパン株式会社製
【0074】
作成した接着フィルムについて以下の評価を実施した。
【0075】
誘電率(ε)、誘電正接(tanδ):接着フィルムを180℃で加熱硬化させ、支持体から剥離した後、該接着フィルムから試験片(40±0.5mm×100±2mm)を切り出し、厚みを測定した。試験片を長さ100mm、直径2mm以下の筒状に丸めて、空洞共振器摂動法(10GHz)にて、誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)を測定した。
【0076】
ガラス転移点Tg:動的粘弾性測定(DMA)にて測定した。接着フィルムを180℃で加熱硬化させ、支持体から剥離した後、該接着フィルムから試験片(10±0.5mm×40±1mm)を切り出し、試験片の幅、厚みを測定した。その後、DMS6100にて測定を行った(3℃/min 25−220℃)。tanDのピーク温度を読み取り、Tgとした。
【0077】
ピール強度:接着フィルムの両面に、粗化面を内側にして銅箔を貼りあわせ、プレス機で熱圧着させた(180℃60min、10kgf)。この試験片を10mm幅にカットし、オートグラフで引きはがし、ピール強度を測定した。測定結果について、各N=5の平均値を計算した。
【0078】
線膨張係数:熱分析装置(TMA)にて測定した。接着フィルムを180℃で加熱硬化させ、支持体から剥離した後、該接着フィルムから試験片(5±0.5mm×20±1mm)を切り出しTMA4000Sにて測定を行った(5℃/min 25−230℃)。90−100℃のC.T.Eの平均をα1、170−180℃のC.T.Eの平均をα2とした。
【0079】
難燃性評価:接着フィルムを180℃で加熱硬化させ、支持体から剥離した後、該接着フィルムから試験片(50±0.5mm×200±0.5mm)を切り出し、厚みを測定した。試験片を長さ200mm、直径約15mmの筒状に丸めてスタンドに固定した。ガスバーナーの炎を高さ約20mmに調整し、フィルムの下端に3sec接炎後、燃焼時間を測定した。1サンプルにつき3回接炎を繰返した。
各燃焼時間が10sec以下であり、3回の合計燃焼時間が30sec以下のものを合格と判断した。各N=3で試験を行い、すべて合格したものをVTM−0相当とした。
【0080】
ワニス安定性:上記の手順で得られた樹脂組成物を含むワニスをガラス瓶に密閉して25℃で静置し、溶液の安定性を確認した。結晶、沈殿物の発生、溶液の分離等が起こるまでの日数を比較し、1週間以上安定なものを○、3日程度のものを△とした。
【0081】
溶解性:上記の手順で得られた樹脂組成物を含むワニスを、常温で放置し、樹脂組成物の成分が再結晶しなかったものを○、再結晶したものを×と評価した。
【0082】
埋め込み性:表面にパターン形成された基板(L/S=30/30μm、配線高さ20μm)にフィルムを加熱ラミネートし、パターン間の凹凸を埋め込むことができるか、確認した。問題なく埋め込みできたものを○、一部不十分だったものは△、埋め込みできなかったものは×とした。
【0083】
フィルム化:上記の手順で支持体付の接着フィルムを作成した際に、均一なフィルムが得られたものを○、混合物の均一化が図れないため、フィルム化時にまだら模様が発生したり、割れが発生してフィルム化できなかったものを×とした。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
例1〜7、10〜12、実施例8〜9では、均一な接着フィルムが得られ、熱圧着時の埋め込み性が優れていた。また、接着フィルムが、加熱硬化後において、高周波領域の電気特性(誘電率ε、誘電正接Tanδ)、ピール強度、難燃性のいずれも優れていた。また、ワニスの溶解性および安定性も優れていた。
(E)成分の含有量が10質量部未満の比較例1では、得られた接着フィルムの難燃性が劣っていた。
(E)成分の含有量が50質量部超の比較例2では、フィルム化時にまだら模様が発生した。また、得られた接着フィルムの熱圧着時の埋め込み性が劣っていた。また、ワニスの安定性も劣っていた。
(E)成分の代わりに、リン酸塩系の難燃剤を使用した比較例3では、得られた接着フィルムの難燃性が劣っていた。
(E)成分の代わりに、リン酸エステル系の難燃剤を使用した比較例4では、得られた接着フィルムの難燃性が劣っていた。
(E)成分の代わりに、リン酸塩系の難燃剤を使用し、該難燃剤の配合量を増やした比較例5では、得られた接着フィルムの難燃性は優れていたが、フィルム化時にまだら模様が発生した。また、得られた接着フィルムの熱圧着時の埋め込み性が劣っていた。また、ワニスの安定性も劣っていた。
(A)成分として、質量平均分子量(Mw)が4000超のポリフェニレンエーテルを使用した比較例6では、上記の手順で得られた樹脂組成物を含むワニスを常温で放置した際に、樹脂組成物の成分が再結晶してしまい、フィルム化することができなかった。