【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記に示すとおりの、(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンおよびその製造方法、ならびに(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの製造方法を提供するものである。
【0009】
1.一般式(1);
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン。
【0012】
2.一般式(1)中のRがメチル基である上記項1に記載の(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン。
【0013】
3.一般式(2);
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを溶媒に溶解した溶液を、25℃以下に保持して晶析させ、析出した結晶から粒径が100μm以下の結晶を分取することを特徴とする一般式(1);
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、Rは、前記と同様である。)で表される(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの製造方法。
【0018】
4.溶媒がメチルtert−ブチルエーテルである上記項3に記載の方法。
【0019】
5.一般式(3);
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、Mは、アルカリ金属原子を示す。)で表されるβ−オキソ−β−(2−チエニル)プロパナールのアルカリ金属塩と、一般式(4);
H
2N−R (4)
(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるモノアルキルアミン化合物とを反応させて得られる反応液に、水不溶性有機溶媒を添加し、分液して得た有機層に、一般式(1);
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、Rは、前記と同様である。)で表される(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを含む種晶を添加して、25℃以下に保持することを特徴とする(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの製造方法。
【0024】
6.水不溶性有機溶媒がメチルtert−ブチルエーテルである上記項5に記載の方法。
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンは、一般式(1);
【0027】
【化6】
【0028】
で表される新規な化合物である。
【0029】
一般式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。これらの中で、メチル基が好ましい。
【0030】
上記(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの具体例としては、(E)−N−モノメチル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン、(E)−N−モノエチル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン、(E)−N−モノ(n−プロピル)−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン、(E)−N−モノイソプロピル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン、(E)−N−モノ(n−ブチル)−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン、(E)−N−モノ(tert−ブチル)−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)で表される(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンは、一般式(2);
【0032】
【化7】
【0033】
(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表される(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを溶媒に溶解した溶液を、25℃以下に保持して晶析させ、析出した結晶から粒径が100μm以下の結晶を分取することにより得ることができる。
【0034】
上記一般式(2)で表される(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンは、例えば、一般式(3);
【0035】
【化8】
【0036】
(式中、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等のアルカリ金属原子を示す。)で表されるβ−オキソ−β−(2−チエニル)プロパナールのアルカリ金属塩と、一般式(4);
H
2N−R (4)
(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるモノアルキルアミン化合物とを、メタノール等の反応溶媒中で反応させることにより得られる。
【0037】
上記β−オキソ−β−(2−チエニル)プロパナールのアルカリ金属塩の製造方法としては、特に限定されず、例えば、2−アセチルチオフェンとアルカリ金属メトキシドを、ギ酸エチル中で反応させる方法(特開平2−202865号)等が挙げられる。
【0038】
上記モノアルキルアミン化合物の具体例としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノ(n−プロピル)アミン、モノイソプロピルアミン、モノ(n−ブチル)アミン、モノ(tert−ブチル)アミン等が挙げられる。また、モノアルキルアミン化合物として、上記モノアルキルアミン類の塩酸塩や硫酸塩を使用することもできる。
【0039】
モノアルキルアミン化合物の使用量は、β−オキソ−β−(2−チエニル)プロパナールのアルカリ金属塩に対して1〜5倍モルであるのが好ましい。反応溶媒の使用量は、β−オキソ−β−(2−チエニル)プロパナールのアルカリ金属塩100重量部に対して10〜3000重量部であるのが好ましい。反応温度は、0〜100℃であるのが好ましい。反応時間は、1〜30時間であるのが好ましい。
【0040】
反応終了後、反応溶媒を留去した後、反応液に、水不溶性有機溶媒、および必要に応じて、反応生成物の安定化を目的とした水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を、添加して分液し、有機層を得る。上記水不溶性有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル等が挙げられ、中でも、メチルtert−ブチルエーテルが好ましい。得られた有機層の温度を25℃を超える温度に保持した状態で水不溶性有機溶媒を留去して、析出した結晶を洗浄、乾燥することにより、(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを単離することができる。なお、反応終了後において、例えば、上記水不溶性有機溶媒を添加する際に、反応生成物の安定化を目的として、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を用いて、反応液のpHを7以上にすることが好ましい。
【0041】
本発明の(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンは、例えば、上記のようにして得た(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを溶媒に溶解した溶液を、25℃以下に保持して晶析させ、析出した結晶から粒径が100μm以下の結晶を分取することにより得ることができる。
【0042】
(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを溶解する上記溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素;メチルtert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル等が挙げられる。これらの中でも、メチルtert−ブチルエーテルが好ましい。
【0043】
上記溶媒の使用量は、(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン100重量部に対して10〜3000重量部であるのが好ましく、50〜2000重量部であるのがより好ましい。溶媒の使用量が10重量部未満の場合には、収率が低下するおそれがある。一方、溶媒の使用量が3000重量部を超える場合には、容積効率が悪化するおそれがある。
【0044】
(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを溶媒に溶解した溶液から結晶を析出させる際には、当該溶液を撹拌するのが好ましい。撹拌方法としては、撹拌機等を用いる通常の方法を用いることができる。撹拌時間は、特に限定されるものではないが、5〜30時間であるのが好ましい。
【0045】
(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを析出させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、減圧法や冷却法等を挙げることができる。なお、(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの使用量が上記溶媒に対する溶解度より多く、過飽和の状態であって、例えば、固体の(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを含む溶液を撹拌している場合であっても、25℃以下においては、(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンが析出する。
【0046】
本発明における特定の条件において(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンが析出する理由は定かではないが、(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの特定の溶媒に対する溶解度が、(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンのそれよりも小さいためであると考えられる。
【0047】
(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの溶液を晶析させて得られた析出物は、通常、(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンおよび(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンからなる(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンである。このとき、(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの結晶は、通常、(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの結晶に比較して小さいため、例えば、目開き100μmの篩で分級することにより、(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンに含まれる(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを分取することができる。
【0048】
本発明は、さらに、β−オキソ−β−(2−チエニル)プロパナールのアルカリ金属塩とモノアルキルアミン化合物とを反応させて得られる反応液に、水不溶性有機溶媒を添加し、分液して得た有機層に、(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを含む種晶を添加して、25℃以下に保持することにより、(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを、容易に効率よく製造する方法を提供する。上記水不溶性有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル等が挙げられ、中でも、メチルtert−ブチルエーテルが好ましい。
【0049】
また、前もって製造した(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを溶媒に溶解させた溶液に、(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを含む種晶を添加して、25℃以下に保持することにより、(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを、容易に効率よく製造することができる。(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを溶解させる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル等の水不溶性有機溶媒が挙げられ、中でも、メチルtert−ブチルエーテルが好ましい。溶媒の使用量は、(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミン100重量部に対して10〜3000重量部であるのが好ましく、50〜2000重量部であるのがより好ましい。
【0050】
種晶を添加して(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを析出させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、減圧法や冷却法等を挙げることができる。
【0051】
種晶の使用量は、溶媒に溶解している(Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンに対して0.01〜0.5モル%であるのが好ましく、0.01〜0.1モル%であるのがより好ましい。種晶としての(E)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンの使用量が0.01モル%未満の場合には、種晶としての効果が出ず収率が低下するおそれがある。一方、0.5モル%を超える場合には、使用量に見合う効果がなく経済的でなくなるおそれがある。
【0052】
上記のようにして得られた(E,Z)−N−モノアルキル−3−オキソ−3−(2−チエニル)プロペンアミンを還元することにより、N−モノアルキル−3−ヒドロキシ−3−(2−チエニル)プロパンアミンを製造することができる。
【0053】
還元する際に用いる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウムおよびシアン化水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。反応溶媒としては、例えば、トルエン等が挙げられる。反応温度は、20〜100℃であるのが好ましい。反応時間は、1〜30時間であるのが好ましい。また、必要に応じて、酢酸等のプロトン供給源を用いてもよい。反応溶媒として水不溶性溶媒を使用した場合には、反応終了後、水を添加して分液し、分液により得られた有機層の溶媒を留去し、析出した結晶を再結晶することにより、N−モノアルキル−3−ヒドロキシ−3−(2−チエニル)プロパンアミンを単離することができる。