特許第5955372号(P5955372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955372
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】極端紫外光源装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 2/00 20060101AFI20160707BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H05G2/00 K
   H01L21/30 531S
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-255747(P2014-255747)
(22)【出願日】2014年12月18日
(62)【分割の表示】特願2009-25645(P2009-25645)の分割
【原出願日】2009年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-62202(P2015-62202A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2015年1月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構「極端紫外線(EUV)露光システムの開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】薮 隆之
(72)【発明者】
【氏名】染谷 浩
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 幸雄
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07378673(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0048133(US,A1)
【文献】 特開2008−027623(JP,A)
【文献】 特開2007−142306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 2/00
H01L 21/30 ,21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光源装置であって、
極端紫外光の生成が行われるチャンバと、
溶融されて、不活性ガスにより圧力を加えられたターゲット物質を、前記圧力によって前記チャンバ内に供給する、微細孔が形成されたノズル部を備えたターゲット物質供給部と、
前記ノズル部に配置され、前記ノズル部に振動を伝えるピエゾ素子と、
レーザ光源から出射されたレーザ光をターゲット物質に照射させる光学系と、
前記ピエゾ素子に接続された第1の面と、前記ノズル部に接続された第2の面と、を有し、前記ピエゾ素子を前記ノズル部に押し当てる押し当て部材と、
を具備する極端紫外光源装置。
【請求項2】
前記押し当て部材は、前記ピエゾ素子を囲って前記ノズル部に固定された、請求項1記載の極端紫外光源装置。
【請求項3】
前記ピエゾ素子を冷却する冷却機構をさらに具備する、請求項1又は請求項記載の極端紫外光源装置。
【請求項4】
前記冷却機構は、前記押し当て部材の外部に配置された冷却管と、前記冷却管に冷媒を通す構造とを含む、請求項記載の極端紫外光源装置。
【請求項5】
前記冷却機構は、前記押し当て部材の内部に配置された冷却管と、前記冷却管に冷媒を通す構造とを含む、請求項記載の極端紫外光源装置。
【請求項6】
前記押し当て部材と前記ノズル部との間に配置された断熱部材をさらに具備する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項7】
前記ピエゾ素子は、前記ノズル部のうちの、前記ノズル部から供給されたターゲット物質の供給方向を向いた面に配置された、請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の極端紫外光源装置。
【請求項8】
前記ノズル部が突起部を有し、前記ピエゾ素子は前記突起部に配置された、請求項6記載の極端紫外光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを露光するためなどに用いられる極端紫外光を発生するLPP(laser produced plasma)型EUV(extreme ultra violet:極端紫外)光源装置に関し、特にターゲット物質を極端紫外光発生チャンバ内に噴射するターゲット物質供給部を改良した極端紫外光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路は回路パターンの微細化が急速に進み、今後数年以内に30nmノード以下の微細加工が必要とされる。その要求を満たすための露光光源の有力候補として13.5nmの光を使用したEUV光源がある。EUV光はターゲットと呼ばれる物質をプラズマ化することにより得られる。ターゲットをプラズマ化する方式は、放電によって生成するプラズマを用いたDPP(discharge produced plasma)と、レーザビームによって生成するプラズマを用いたLPP(laser produced plasma)の2種類がある。LPP方式ではレーザを高密度に集光し、そのエネルギーによりターゲットをプラズマ化する。
【0003】
図12は、従来のLPP型EUV光源装置の一例についてその概要を示す図である。図12に示すように、このEUV光源装置は、ドライバーレーザ101と、EUV光発生チャンバ102と、ターゲット物質供給部103と、レーザ光集光光学系104とを主要な構成要素として構成される。
【0004】
ドライバーレーザ101は、ターゲット物質を励起させるために用いられる駆動用のレーザ光を発生する発振増幅型レーザ装置である。
EUV光発生チャンバ102は、EUV光の生成が行われるチャンバであり、ターゲット物質のプラズマ化を容易にするとともにEUV光の吸収を防止するため、真空ポンプ105によって真空引きされている。また、EUV光発生チャンバ102には、ドライバーレーザ101から発生したレーザ光120を導入するためのウインドウ106が取り付けられている。さらに、EUV光発生チャンバ102の内部には、ターゲット噴射ノズル103aと、ターゲット回収筒107と、EUV光集光ミラー108とが配置されている。
【0005】
ターゲット物質供給部103は、EUV光を発生するために用いられるターゲット物質を、ターゲット物質供給部103の一部であるターゲット噴射ノズル103aを介して、EUV光発生チャンバ102内に供給する。供給されたターゲット物質の内、レーザ光が照射されずに不要となったものは、ターゲット回収筒107によって回収される。
【0006】
レーザ光集光光学系104は、ドライバーレーザ101から出射したレーザ光120をEUV光発生チャンバ102の方向に反射するミラー104aと、ミラー104aの位置及び角度(アオリ角)を調整するミラー調整機構104bと、ミラー104aによって反射されたレーザ光120を集光する集光素子104cと、集光素子104cをレーザ光の光軸に沿って移動させる集光素子調整機構104dとを含んでいる。レーザ光集光光学系104によって集光されたレーザ光120は、ウインドウ106、及びEUV光集光ミラー108の中央部に形成された孔を通過して、ターゲット物質の軌道上に達する。このように、レーザ光集光光学系104は、レーザ光120をターゲット物質の軌道上に焦点を形成するように集光する。それにより、ターゲット物質109が励起してプラズマ化し、EUV光121が発生する。
【0007】
EUV光集光ミラー108は、例えば、13.5nmの光を高反射率で反射するMo/Si膜がその表面に形成された凹面鏡であり、発生したEUV光121を反射することによりIF(中間集光点)に集光する。EUV光集光ミラー108によって反射されたEUV光121は、EUV光発生チャンバ102に設けられたゲートバルブ110、及びプラズマから発生した光の内の不要な光(EUV光より波長が短い電磁波(光)、EUV光より波長が長い光(例えば、紫外線、可視光線、赤外線等))を除去して所望のEUV光(例えば、波長13.5nmの光)のみを透過させるフィルタ111を通過する。IF(中間集光点)に集光されたEUV光121は、その後、伝送光学系を介して露光機等へ導かれる。
【0008】
ターゲットは、SnやLiなどの溶融金属が用いられる。そのようなターゲット材料をターゲット生成装置で溶融し、Arなどの不活性ガスにより数十μm程度の微細な孔から押し出し、レーザの集光点へ搬送する。微細孔から押し出された溶融金属は、初めは筋状の状態であるが、ある距離から大きさの一定でない塊となる。ところが、筋状の溶融金属柱にある振動を与えると、微細孔から押し出された溶融金属柱は、ある距離から一定の大きさを有する球状の塊(ドロップレットと呼ばれる)に変化する。そこで、微細孔に適当な振動を与えることにより、所望の溶融金属ドロップレットが形成され、集光点においてCO2レーザなどに照射されてプラズマが生成される。生成されたプラズマから放射した光を、13.5nmの波長の光を選択的に反射する集光ミラーで反射すると、選択された極端紫外(EUV)光が露光機側へ伝播する。
【0009】
EUV光は酸素などに吸収されるので、上記の過程は真空チャンバ内で行われる。
なお、レーザに照射された溶融金属は、中性またはイオンの状態でデブリとなり四方へとび散る。このデブリの発生を最小限に抑えるために、レーザに照射される溶融金属の量を所望のEUV光を得られるだけの量とすることが好ましい。
【0010】
特許文献1には、ターゲット噴射ノズルの側壁にピエゾ素子の振動を伝えることにより、粒のそろったドロップレットを生成するようにしたターゲット生成装置が開示されている。図13図14は、特許文献1に開示されたターゲット噴射ノズルの断面を示す立面図と平面図である。開示されたターゲット生成装置のターゲット容器200に溶融金属などのターゲットが充填され、ターゲット容器下端の細孔204からターゲットが真空チャンバへと射出される。ターゲット容器200の側壁202の腹部分には、複数のピエゾ素子206が断熱材210を挟んで対称の位置に当接されており、ピエゾ素子206を振動させることにより、その振動がターゲット容器200の側壁202に伝わる。細孔204から射出されたターゲットは、ターゲット容器200の振動により、ある距離垂下した位置からほぼ同じ大きさの球状をしたドロップレットとなる。
【0011】
ターゲット容器200の側壁202の外側には、モリブデンなどの抵抗体膜が形成され、ターゲットの溶融温度を維持する加熱体214となっている。なお、スズをターゲットとするときには、ターゲット温度を300℃から400℃の範囲に維持する必要がある。一方、多くのピエゾ素子はキュリー点が100℃あるいはそれ以下であるため、ピエゾ素子206とターゲット容器200の間に断熱材210を介装して、ターゲット容器200の熱がピエゾ素子206の機能を損なわないようにしている。また、ターゲット噴射ノズルを構成する部品を定位置に把持すると共にピエゾ素子206の振動を確実に側壁202に伝達するために、ピエゾ素子206の外側を囲んで与圧を与えながら支持する把持部材218を備えている。把持部材218には、冷却媒体を内部に循環させる冷却路220が設けられていて、ピエゾ素子206を冷却する。
【0012】
特許文献1に開示されたターゲット生成装置は、ピエゾ素子206がそれぞれ独立に駆動できるようになっていて、ターゲット容器側壁202に異物が付着したときに、対称位置にある任意のピエゾ素子206を伸縮が逆になるように駆動することにより、周方向の任意の位置でターゲット容器側壁202を激しく動かして、異物の剥離と排出を容易に行わせることができる。
【0013】
開示された発明によれば、ピエゾ素子206とターゲット容器200の加熱体214との間に断熱材210を介装し、ピエゾ素子206の外側に冷却路220を備えた把持部材218を密接させるので、キュリー点の低いピエゾ素子を使ってもピエゾ素子の性能を損ねることなく、ターゲット容器200に強い振動を与えて、内壁に固着物が生じても容易に剥離させて排除することができる。しかし、ターゲット容器200とピエゾ素子206の間に断熱材210を介装しているため、ターゲット容器200に伝わる振動が減衰し振動波形が崩れる。また、減衰を補って十分な振動を伝えるため、ピエゾ素子206の振動を大きくする必要が生じて、ピエゾ素子の劣化が促進される。
【0014】
また、図15は、出願人が使用してきた従来のドロップレット生成装置の振動部分を示す構成図である。ターゲット噴射ノズルの先端に設けたノズル部301は、内部に、図外のターゲット貯留部から供給されるターゲットの流路となる細管303が備えられており、細管303の先端に微細な孔があいた細孔板304を設ける。ノズル部301はターゲット材料の融点もしくはそれ以上の温度に加熱されている。また、細孔板304を振動させるために、細孔板304の近傍にピエゾ素子306が配置されている。ピエゾ素子306は、キュリー温度以上になると振動が起こらなくなるので、温度を少なくともキュリー点以下、望ましくはキュリー点の1/2以下の温度に保持する必要がある。そこで、断熱材305により高温のノズル部301からの熱流を遮断し、冷却水管320を通して水などで冷却できる冷却材308によりピエゾ素子306で発生する熱を除去する。
【0015】
断熱材305は、熱伝導率の低い樹脂系かセラミック系の材料で形成される。樹脂系材料を用いて形成した断熱材305は、金属と比べて剛性が低いため、断熱材にピエゾ素子306の振動が吸収されて、細孔板304に伝達される振動の振幅が小さくなる。一方、セラミック系材料を用いて形成した断熱材305は、脆性があり取扱いが難しく、また、細孔板304に伝わる振動が減衰し波形が歪むことになる。
【0016】
図16は、ピエゾ素子306近傍で測定した振動と細孔板304近傍で測定した振動における変位量を示すグラフである。図に見られるように、ピエゾ素子306から細孔板304に振動が伝達する過程で、振幅の減衰と振動波形の歪みが生じる。ドロップレット生成にはある程度の振幅が必要であり、したがって伝達による減衰が大きくなるとピエゾ素子の振動を大きくする必要がある。これにより、ピエゾ素子の劣化が速くなる。また、振動波形が歪むことにより、ドロップレットの形状や生成タイミングが不安定になるなどの問題が明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7,378,673号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、振幅の減衰や波形の歪みを抑制しながら、ピエゾ素子の振動をノズル部に伝達して、ターゲット物質のドロップレットを的確に生成させる極端紫外光源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る極端紫外光源装置は、レーザ光をターゲット物質に照射することにより、ターゲット物質をプラズマ化して極端紫外光を生成する極端紫外光源装置であって、極端紫外光の生成が行われるチャンバと、溶融されて、不活性ガスにより圧力を加えられたターゲット物質を、圧力によってチャンバ内に供給する、微細孔が形成されたノズル部を備えたターゲット物質供給部と、ノズル部に配置され、ノズル部に振動を伝えるピエゾ素子と、レーザ光源から出射されたレーザ光をターゲット物質に照射させる光学系と、ピエゾ素子に接続された第1の面と、ノズル部に接続された第2の面と、を有し、ピエゾ素子をノズル部に押し当てる押し当て部材と、を具備する。
【0020】
なお、底面に突起を設けてピエゾ素子を突起した面に直接接触させるようにしてもよい。さらに、ピエゾ素子を挟んで底面と反対の位置に、冷却機構を備えた部材を配置することが好ましい。ピエゾ素子の振動面に剛性部材を接合し、剛性部材を底面に接合することにより振動を伝えるようにしてもよい。また、この剛性部材は、ピエゾ素子との接触面積の方が底面との接触面積より大きいことが好ましい。さらに、剛性部材に冷却機構を備えるようにしても良い。また、ピエゾ素子は、PZT、AlN薄膜、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、リン酸ガリウム、ランガサイト、および、酸化亜鉛のいずれか1つを含むものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の1つの観点によれば、ピエゾ素子に対向する底面にピエゾ素子の振動を直接的に伝達るので、振動の振幅が減衰したり波形の歪みが生じたりすることを抑制することができる。したがって、ドロップレットが規則的に生成し、プラズマが一定の位置で生成され、IFにおけるEUV強度の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る極端紫外光源装置(EUV光源装置)の概要を示す模式図である。
図2】第1実施形態のノズル部末端部分の拡大図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
図5】本発明の第4実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
図6】本発明の第5実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
図7】本発明の第6実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
図8】本発明の第7実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
図9】本発明の第8実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す模式図である。
図10】本発明の第9実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す平面模式図である。
図11】本発明の第10実施形態に係るEUV光源装置の概要を示す平面模式図である。
図12】従来のLPP型のEUV光源装置の概要を示す図である。
図13】特許文献に開示されたターゲット噴射ノズルの立面断面図である。
図14】特許文献1に開示されたターゲット噴射ノズルの平面断面図である。
図15】従来のドロップレット生成装置の振動部分を示す構成図である。
図16】ピエゾ素子近傍で測定した振動と細孔板近傍で測定した振動における変位量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の1実施形態に係る極端紫外光源装置(以下において、「EUV光源装置」とも言う)のEUV光発生チャンバ部分について概要を示す構成図、図2はノズル部末端部分の拡大図である。
このEUV光源装置は、ドライバーレーザと、レーザ光集光光学系と、EUV光発生チャンバと、ターゲット物質供給部と、EUV光集光光学系とを主要な構成要素として構成される。
【0025】
ドライバーレーザ13は、ターゲット物質を励起させるために用いられる駆動用のレーザ光を発生する発振増幅型レーザ装置である。EUV光発生チャンバ11は、EUV光の生成が行われるチャンバである。また、EUV光発生チャンバ11には、ドライバーレーザ13から発生したレーザ光を導入するためのウインドウ15が取り付けられている。また、EUV光発生チャンバ11の内部には、レーザ光集光光学系と、ターゲット噴射ノズルと、EUV光集光ミラー19とが配置されている。
【0026】
レーザ光集光光学系は、ドライバーレーザ13から出射したレーザ光をEUV光発生チャンバ11の方向に反射する集光ミラー17を含んでいる。レーザ光集光光学系によって集光されたレーザ光は、EUV光集光ミラー19の中央部に形成された孔を通過して、ターゲット物質の軌道上に焦点を形成するように集光する。それにより、ノズル部21から供給されるターゲット物質のドロップレット29が励起してプラズマ化し、EUV光が発生する。
【0027】
ターゲット物質供給部は、EUV光を発生するために用いられるターゲット物質を、ターゲット噴射ノズルを介して、EUV光発生チャンバ11内に供給する。ターゲット噴射ノズルの先端に設けたノズル部21には、内部にターゲットとなる溶融金属の流路となる細管28が形成され、細管28の先端に微細孔24をあけた細孔板23が設けられている。ターゲット材を溶融状態に維持するため、ノズル部21の本体はターゲット材の融点近くもしくはそれ以上の温度に加熱される。
【0028】
また、細管28もしくは細孔板23を振動させるために、細孔板23の近傍のピエゾ素子25に対向する底面22に振動面を直接に接触してピエゾ素子25が配置されている。ピエゾ素子25の振動をノズル部21に確実に伝達させるため、押し当て部材27がピエゾ素子25を囲って底面22に固定され、ピエゾ素子25に押し付け圧力を与えている。ピエゾ素子25は、キュリー温度以上になると圧電効果が起こらなくなるので、キュリー点がターゲットの溶融温度より高いピエゾ素子、望ましくは溶融温度の2倍以上のキュリー点を持つピエゾ素子を使うことが好ましい。
【0029】
ターゲットには、SnやLiなどの溶融金属が用いられる。そのようなターゲット材料をターゲット生成装置で溶融し、Arなどの不活性ガスにより細孔板23の数十μm程度の微細孔24から押し出し、レーザの集光点へ搬送する。微細孔24から押し出された溶融金属は、初めは筋状柱体30を形成するが、ある距離からドロップレット29となる。ここで、ピエゾ素子25で高周波振動を発生させると、微細孔24から押し出された溶融金属柱体30は、ある距離から一定の大きさを有する球状のドロップレット29に変化する。
【0030】
ドロップレット29は、集光点においてCO2レーザに照射されてプラズマ31を生成する。生成されたプラズマ31から放射した光を、13.5nmの波長の光を選択的に反射するEUV光集光ミラー19で反射すると、選択されたEUV光がIF(中間集光点)33に集光して、露光機側へ伝播する。
なお、レーザに照射された溶融金属は、中性またはイオンの状態でデブリとなり四方へとび散る。このデブリの発生を最小限に抑えるために、レーザに照射されるドロップレット29の大きさを調整して、所望のEUV光を得られるだけのターゲット量とすることが好ましい。
【0031】
本実施形態のEUV光源装置は、ピエゾ素子25を含むノズル部21が真空状態のEUVチャンバ11内に設置されている。細孔板23から射出したターゲット材はレーザの集光点でプラズマ31となる。プラズマ31から発生した光は、EUV光集光ミラー19によりIF33へ送られ、その後、露光機側へと導かれる。図1では、ピエゾ素子25は高温のノズル部21のEUVチャンバ11に面する底面22に直接設置されていて、振動を吸収する断熱材などを介装していない。したがって、伝達した振動における振幅の減衰や波形のひずみは極力抑えられる。これにより、安定して一定の位置でプラズマ31が生成されるため、IF33でのEUV強度の安定性が向上する。なお、ノズル部21本体における振動の減衰やひずみを抑えるために、ノズル部21本体はステンレス鋼などの剛性の高い金属を用いて構成することが好ましい。
【0032】
図1では、ノズル部21本体の温度やピエゾ素子25の自己発熱を考慮すると、ピエゾ素子25はかなりの高温となる。そのためキュリー点が高く、高温で正常に動作できるピエゾ素子が必要となる。ピエゾ素子として最も普及しているPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)は、キュリー点が組成により150℃から350℃程度の範囲にあるので、キュリー点が低いPZTは、溶融温度232℃のスズなど溶融金属を扱う高温のノズル部21に直接設置して使用することは好ましくない。
【0033】
本実施形態においては、例えば、1200℃で使用可能な窒化アルミニウム(AlN)薄膜や、キュリー点が573℃の水晶、キュリー点が1210℃のニオブ酸リチウム、キュリー点が490℃のチタン酸鉛、キュリー点が570℃のメタニオブ酸鉛、950℃まで安定しているリン酸ガリウムや、キュリー点が1400℃のランガサイトなどで構成されるピエゾ素子が好ましい。なお、キュリー点の高い組成を持ったPZTも使用可能で、さらに、300℃まで使用可能な酸化亜鉛などを利用することもできる場合がある。
また、ピエゾ素子25を駆動するための給電部あるいは電極は、温度の関係からはんだ付けにすることはできないので、機械的に接点を設けるか、ろう付けにする必要がある。
【0034】
なお、ピエゾ素子25で高周波振動を発生させたときに、微細孔24から流下する溶融金属柱体30が、ある距離から規則的な球状のドロップレット29に変化する現象は、必ずしも大きな振幅の振動を与える必要はなく、一定周期の滑らかな正弦波形を持つ振動を与えることによって、生起されることが分かっている。たとえば、600〜800pmの振幅があれば、十分有効なドロップレットが形成できる。本実施形態のEUV光源装置では、ピエゾ素子25とノズル部21の底面22の間に、振動伝搬中に波形を崩しがちな介装物が存在しないようにしたため、ピエゾ素子25で発生する振動波形をそのままノズル部21に伝達するので、所定のサイズのドロップレットを所定の間隔で生成することができる。
【0035】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、第1の実施形態のノズル部21に対して、高振動伝達部材を付加したことが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0036】
圧電素子25の保持などに使うため、圧電素子25とノズル部21の間に構成部品が必要となる場合がある。その際、従来のように断熱材を使用せずに振動が伝達しやすい高振動伝達部材35を圧電素子25とノズル部21の底面22との間に介装することにより、振動の減衰や波形のひずみを抑えることができ、規則的にドロップレットを発生して、安定したEUV光を生成することができる。振動を伝達しやすい材質としては剛性の高い金属があげられる。例えば、ステンレス鋼系合金、炭素鋼などの鉄系金属、インコネル、ハステロイなどのNi系合金などである。ただし、ピエゾ素子25は強制的な冷却をおこなっていないので、第1実施形態で用いたような高温で使用できるピエゾ素子を用いることが望ましい。
【0037】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、第1の実施形態のノズル部21に対して、冷却管39を仕込んだ冷却プレート37を付加したことが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0038】
本実施形態では、ピエゾ素子25の高温のノズル部21と反対の側を冷却プレート37で冷却することにより、ノズル部21を冷やすことなく、ピエゾ素子25の作動温度を低下させるので、ピエゾ素子25としてキュリー点の低いPZTを含めた各種の素子を利用することができるようになる。冷却プレート37は、熱伝導率が高く、剛性が高い材質からなり、内部に冷却管39が仕込まれていて、温度調整装置などで温度管理された水などの冷媒が流通するようになっている。さらに冷却の効果を高めるためには、ピエゾ素子25を囲ってピエゾ素子に圧力を与えている押し当て部材27の、高温構造物に接触していない全ての面を覆うように冷却プレート37を設置することにより、冷却プレート37との接触面積を増加させて効果的に冷却することができる。
【0039】
冷却プレート37の温度は、(1)ピエゾ素子25が動作可能な温度以下、(2)高温構造物であるノズル部21本体が所望の温度以上、という2つの要求を満たす温度とする。また、温度管理を実施するため、高温構造物のノズル部21、ピエゾ素子25、冷却プレート37は、熱電対や測温抵抗体、ファイバー温度計などで温度を測定する必要がある。代表的なケースとして、ピエゾ素子にPZT、ターゲット材にスズSnを用いた場合は、高温構造物は260℃以上、ピエゾ素子は100℃以下になるように、冷却プレート37の温度を管理する。また、第1実施形態の記載において列挙した、高温で使用可能なピエゾ素子でもよい。ただし、ピエゾ素子25に接触している高温構造物部分の温度が260℃以下でも、溶融金属がその部分からある程度離れている場合は接触部分の温度の影響が小さいため(溶融金属が固化しないので)より低く設定できる。例えば、前述の260℃は200℃でもよい場合もある。
【0040】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、第1の実施形態のノズル部21に対して、押し当て部材27に冷却管43を仕込み、高温構造物が冷却しないように断熱部材45を設けたことが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0041】
本実施形態のノズル部は、ピエゾ素子25に与圧を与える押し当て部材に冷却管43を設けて直に冷媒を通す構造に特徴を有する。これにより、ピエゾ素子25の冷却効率が上がる。なお、冷却付き押し当て部材41とノズル部21が近くなったため、ノズル部21が余分に冷却されるおそれがある。そこで、冷却付き押し当て部材41とノズル部21の間に断熱部材45を入れることで、ノズル部21などの高温物の温度が高温に保たれるようにする。
【0042】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、図4に表した第3の実施形態のノズル部21に対して、ノズル部21の底面22にピエゾ素子25振動を伝達する突起部47を設けて、その突起部47にピエゾ素子25を当接させたことが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0043】
図6に表した通り、本実施形態では、ピエゾ素子25と接触して振動伝達するノズル部21の突起部47が、底面22に近いほど断面積が減少するように側面形状がくさび形に形成されていて、底面22に接続する位置で熱流速を制限するようにくびれている。これにより、ピエゾ素子25の振動をノズル部21に効率よく伝えると共に、ピエゾ素子25からの熱の流入・流出を抑えることができる。さらに、冷却管39を備えた冷却プレート37をピエゾ素子に与圧を与える押し当て部材27の後ろに接触するように配置して、ピエゾ素子25を押し当て部材27の側から冷却することにより、ピエゾ素子25の温度管理を容易に行うことができる。
【0044】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、図6に表した第5実施形態のノズル部21に対して、押し当て部材27とノズル部21の底面22の間に断熱部材51を入れて、ノズル部21の温度低下および押し当て部材27の温度上昇を抑制することが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。断熱部材51により、金属を溶融する高温なノズル部21の温度低下を抑制し、かつピエゾ素子25を加熱しないため冷却が必要な押し当て部材27の温度上昇を抑制することができる。
【0045】
(第7実施形態)
図8は、本発明の第7の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、図3に表した第2実施形態のノズル部21に対して、圧電素子25とノズル部21の底面22との間に介装した高振動伝達部材35に冷却管53を付設したことが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0046】
高振動伝達部材35を低温化することにより、PZTなどの比較的低温で使用するピエゾ素子を利用することができる。高振動伝達部材35の温度は、(1)ピエゾ素子25が動作可能な温度以下、(2)高温構造物であるノズル部21本体が所望の温度以上、という2つの要求を満たす温度とする。また、温度管理を実施するため、高温構造物のノズル部21、ピエゾ素子25、高振動伝達部材35は、熱電対や測温抵抗体、ファイバー温度計などで温度を測定する必要がある。
【0047】
(第8実施形態)
図9は、本発明の第8の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、図8に表した第7実施形態のノズル部21に対して、冷却管39を仕込んだ冷却プレート37を付加したことが異なるだけで、その他の構成要素はほぼ同じである。第7実施形態に加えて、押し当て部材27の側からも冷却することでよりピエゾ素子25を効率よく冷却することができる。この場合、高振動伝達部材35と冷却プレート37の温度は同じでもよいが、冷却プレート温度<高振動伝達部材温度、というような温度差をつけることにより、ノズル部21に影響を与えずピエゾ素子25を冷却することができる。
【0048】
(第9実施形態)
図10は、本発明の第9の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、図6に表した第5実施形態のノズル部21に対して、ノズル部21の底面22に一体に形成された突起部47と同等の高振動伝達部材55を、ピエゾ素子25の振動面に接合して、底面22とピエゾ素子25振動面との間に介装したことが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0049】
ピエゾ素子25のノズル部と反対の側は押し当て部材27を介して冷却プレート37に冷却されている。また、高振動伝達部材55とノズル部21の接地面積を小さくすると、高振動伝達部材55を通過する熱流束を低くすることができる。例えば、高振動伝達部材55(熱伝導度 20[W/(m・K)])が断熱材(熱伝導度 0.1[W/(m・K)])と同じ熱流束をもたらすようにするならば、設置面積を200分の1にすればよい。接地面の形状が円形であるなら、半径を14分の1程度にすればよい。冷却プレート37の構成や設定温度に関しては、第3実施形態と同じである。
【0050】
(第10実施形態)
図11は、本発明の第10の実施形態に係るEUV光源装置におけるノズル部の概要を示す構成図である。本実施形態のEUV光源装置は、図10に表した第9実施形態のノズル部21に対して、底面22とピエゾ素子25の間に介装した高振動伝達部材55に冷却管57を組み込んだことが異なるだけで、その他の構成はほぼ同じである。
【0051】
ピエゾ素子25は、ノズル部21の側も高振動伝達部材55により冷却される。高振動伝達部材55の温度は、第7の実施形態におけると同様、(1)ピエゾ素子25が動作可能な温度以下、(2)高温構造物であるノズル部21本体が所望の温度以上、という2つの要求を満たす温度とする。本実施形態のEUV光源装置は、高振動伝達部材55とノズル部21の熱伝導が悪いために、高振動伝達部材55の冷却温度を下げてもノズル部21への影響は小さいので、ピエゾ素子25の温度をさらに下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、半導体ウエハ等を露光する極端紫外光を発生するLPP型EUV光源装置に適用することにより、振幅の減衰や波形の歪みを十分に抑制しながら、ピエゾ素子の振動を細孔板に伝達して、規則的なドロップレットを生成させて、効率の良い極端紫外光発光をすることができる。
【符号の説明】
【0053】
11…EUV光発生チャンバ、13…ドライバーレーザ、15…ウインドウ、17…集光ミラー、19…EUV光集光ミラー、21…ノズル部、22…底面、23…細孔板、24…微細孔、25…ピエゾ素子、27…押し当て部材、28…細管、29…ドロップレット、30…筋状柱体、31…プラズマ、33…IF(中間集光点)、35…高振動伝達部材、37…冷却プレート、39…冷却管、43…冷却管、45…断熱部材、47…突起部、51…断熱部材、53…冷却管、55…高振動伝達部材、57…冷却管、101…ドライバーレーザ、102…EUV光発生チャンバ、103…ターゲット物質供給部、103a…ターゲット噴射ノズル、104…レーザ光集光光学系、104a…ミラー、104b…ミラー調整機構、104c…集光素子、104d…集光素子調整機構、105…真空ポンプ、106…ウインドウ、107…ターゲット回収筒、108…EUV光集光ミラー、109…ターゲット物質、110…ゲートバルブ、111…フィルタ、120…レーザ光、121…EUV光、200…ターゲット容器、202…側壁、204…細孔、206…ピエゾ素子、210…断熱材、214…加熱体、218…把持部材、301…ノズル部、303…溶融金属流路、304…細孔板、305…断熱材、308…冷却材。
図1
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