(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給する工程では、前記木質材下に配置され、かつ上面が多孔状である通風部の内部に前記ガスを通す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の木質材の水分調整方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の通気発酵による乾燥方法は、畜糞、下水処理汚泥、粉砕生ゴミ類等の有機廃棄物の堆肥化を目的としているので、二次発酵終了時でも含水率は50〜65%である。この特許文献1の技術を木質材に適用すると、熱利用設備の燃料としては、含水率が高く、不適当である。このため、熱利用設備において、含有される水分を蒸発するための熱エネルギーが余分に必要となる。
また、通気の風量が大きすぎると発酵が進まないため温度が上昇しない、逆に風量が少なすぎると発酵は進んで温度は上昇するが、内部に湿気がこもって外部に揮散しにくく乾燥が進まない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、付加的な熱エネルギーの投入を低減し、かつ短時間で木質材中の水分を調整するに適する条件による、木質材の水分調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の木質材の水分調整方法は、木質材を準備する工程と、木質材の下方から木質材に向けて木質材1m
3当たり10L/分以上1000L/分以下の風量で酸素を含むガスを供給する工程とを備えている。
【0011】
本発明の木質材の水分調整方法によれば、木質材1m
3当たりの風量が1000L/分以下になるように木質材に向けてガスを供給するので、菌が発酵できる温度未満になることを抑制できる。木質材中に存在する菌が発酵すると発熱するので、この熱を利用して木質材中の水分を蒸発・乾燥することができる。このため、本発明で用いるガスの風量は、発熱を利用しない場合に供給するガスの風量に比べて、低減することができる。また、木質材1m
3当たり10L/分以上の風量で木質材にガスを供給するので、木質材中の湿気を外部に揮散させることができる。したがって、付加的な熱エネルギーの投入を低減し、かつ短時間で木質材中の水分を調整することができる。
【0012】
上記木質材の水分調整方法において好ましくは、上記供給する工程では、風速が0.01m/秒以上16m/秒以下となるようにガスを供給する。
【0013】
風速が16m/秒以下になるように木質材に向けてガスを供給すると、菌が発酵できる温度未満になることをより抑制できる。風速が0.01m/秒以上になるように木質材に向けてガスを供給すると、木質材中の湿気を外部により揮散させることができる。
【0014】
上記木質材の水分調整方法において好ましくは、上記準備する工程では、含水率が10%以上の木質材を準備する。
【0015】
本発明の木質材の水分調整方法は、木質材中に存在する菌の発酵による発熱を利用できるので、木質材の含水率が高くても、小さいエネルギーで、かつ短時間で水分を調整することができる。また、木質材の含水率が10%以上であれば、菌の活動が活発となり発酵が進む。このため、本発明において、含水率が10%以上の木質材が好適に用いられる。
【0016】
本発明の木質材の水分調整方法において好ましくは、上記ガスを供給する工程では、木質材下に配置され、かつ上面が多孔状である通風部の内部にガスを通す。
【0017】
これにより、通風部の内部にガスを通すことにより、通風部の上面の孔から木質材にガスを供給することができる。このため、所定の風量のガスを木質材に容易に供給できる。
【0018】
上記木質材の水分調整方法において好ましくは、上記供給する工程では、連続して、または間欠的にガスを供給する。なお、ガスの供給条件は、内部温度、乾燥状況などにより適宜選択される。
【0019】
これにより、木質材中の菌を効果的に発酵できるので、付加的な熱エネルギーをより低減して木質材中の水分を調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、木質材中の菌の発酵による発熱を利用して水分を調整できるので、付加的な熱エネルギーを低減し、かつ短時間で水分を調整することが可能な木質材の水分調整方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0023】
(実施の形態1)
始めに、
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施の形態である木質材の水分調整装置について説明する。
【0024】
図1〜
図3に示すように、水分調整装置10は、台座11と、背板12と、通風部14と、接続部15と、送風部16とを備えている。
【0025】
台座11は、例えば土間コンクリートである。背板12は、この台座11の端部に直交して接続されている。台座11及び背板12は、別部材であってもよく、一体成形されていてもよい。一体成形されている場合の台座11及び背板12は、例えばL型コンクリート板である。
【0026】
台座11上に複数の通風部14が配置されている。通風部14は、台座11における背板12側の一方端部から反対側の他方端部に延びるように配置されている。なお、通風部14の配置は、特に限定されず、区画された複数の領域にそれぞれ配置されていてもよい。また、通風部14は複数に限定されず、単数であってもよい。
【0027】
通風部14は、内部に酸素を含むガスを通すものであり、上面14aを有する。
図2に示すように、上面14aは多孔状であり、上方に酸素を含むガスを供給する。通風部14は、上面14aのみが多孔状であってもよく、全体が多孔状であってもよい。上面14aのみが多孔状である場合には、例えば多孔板を用いる。通風部14全体が多孔状である場合には、例えば多孔箱を用いる。
【0028】
ここで、多孔状とは、穴あき状、または細かい空隙の開いたものであり、複数の孔が形成されている形状を意味する。
【0029】
通風部14の上面14aは、孔径の最大径が20mm以下で、かつ開口率が0.3%以上90%以下であることが好ましく、開口率は0.6%以上90%以下であることがより好ましい。この場合、木質材に均一性を高めてガスを供給することができる。このため、木質材中の水分のばらつきを抑制することができる。
【0030】
通風部14において背板12と反対側の端部のそれぞれには、接続部15が接続されている。接続部15は、通風部14と送風部16とを接続するものであり、例えば配管である。送風部16は、通風部14の内部に酸素を含むガスを送り込むものであり、例えばブロアである。
【0031】
水分調整装置10は、定置式であっても、移動式であってもよい。本実施の形態における水分調整装置10は、小規模な現場では、伐採木を破砕事業所に持ち込み、乾燥処理が可能な定置式の装置として用いることができ、大規模の現場では、一定期間に現地で破砕された木質材を、その場で乾燥処理できる移動式の設備として用いることができる。
【0032】
水分調整装置が移動式である場合は、例えば通風部14及び接続部15が車両に搭載される。この場合、台座11及び背板12は車両の一部であり、水分調整装置は、台座11の側端に直交して接続された壁をさらに備えていてもよい。移動式の装置としては、例えばトラックの固定式荷台、またはアームロール式と呼ばれる分離式荷台の床面に、通風部14として多孔筒及び/または多孔箱を設置する構成が挙げられる。
【0033】
続いて、
図1〜
図5を参照して、本実施の形態における木質材の水分調整方法について説明する。本実施の形態では、
図1〜
図3に示す水分調整装置10を用いて木質材中の水分を調整する。
【0034】
まず、
図4に示すように、木質材Wを準備する。そして、準備した木質材Wを通風部14の上面14a上に載置する。
【0035】
準備する木質材Wは特に限定されず、例えば剪定、伐採樹木、間伐材など生木や、濡れた建築系木質材などを用いることができる。木質材Wは、破砕された破砕物であることが好ましい。
【0036】
木質材Wの大きさは特に限定されないが、0.1cm以上20cm以下の長さに破砕されていることが好ましい。破砕物の長さが0.1cm以上である場合、通気が良好であるため、乾燥が促進されるとともに、局所的に熱が蓄積されることによる発火の危険性を低減できる。破砕物の長さが20cm以下である場合、木質材Wの内部からの水分が抜けやすく、乾燥時間を短縮することができる。なお、木質材Wが破砕物である場合、破砕された枝葉、根、幹などが混在してもよい。
【0037】
この工程では、一般に含水率が10%以上の木質材Wを準備してもよい。含水率が高い木質材Wについても、本発明の水分を調整する対象物である。なお、木質材Wの含水率が低い場合には、発酵しにくいため、10%未満程度の含水率の木質材Wについては、乾燥させずに、そのまま燃料、製紙原料、家畜敷き藁、木質ボード原料などとして利用してもよい。
【0038】
この工程では、木質材W内に存在する菌による発酵を促進することを目的として、木質材Wに有機性汚泥等の発酵促進材を混入してもよい。この場合、全体の50%以下の範囲内で発酵促進材を混入することが好ましい。また、この工程では、木質材Wに発酵菌をさらに添加してもよい。
【0039】
次に、
図4及び
図5に示すように、木質材Wの下方から木質材Wに向けて酸素を含むガスGを供給する。この工程では、風量が木質材1m
3当たり10L/分以上1000L/分以下となるようにガスGを供給することが好ましい。風量は、50L/分以上800L/分以下が好ましい。この場合、木質材Wに安定してガスを供給することができるとともに、木質材Wの内部の湿気を外部に排出することを促進できる。このため、木質材W中の菌の発酵による発熱を利用して外部に水分を蒸発、揮散できるので、付加的な熱エネルギーを低減し、かつ短時間で木質材Wを乾燥できるので、ガス供給に要する電力を低減できる。
【0040】
この工程では、風速が0.01m/秒以上16m/秒以下となるように木質材WにガスGを供給することが好ましい。風速は0.02m/秒以上15m/秒以下がより好ましい。風量を上記範囲内とし、かつ風速をこの範囲内とすると、ガスが木質材Wの全体に当たるように供給できるので、木質材Wの乾燥の均一性を高めることができる。
【0041】
なお、風速は、通風部14の開口率で調整できる。具体的には、風速を上げるためには通風部14の開口率を小さくすることが必要であるが、開口率が小さすぎると風量が上記範囲外となると共に、ガスが木質材全体に当たらず、乾燥が不均一になりやすい。一方、通風部14の開口率を大きく多孔質にするとガスが木質材W全体に当たり乾燥を促進できる。この観点から、最大径が20mm以下で、かつ開口率が0.3%以上90%以下の上面14aを有する通風部14にガスを通すことが好ましい。
【0042】
本実施の形態では、
図1及び
図2に示すように、木質材W下に配置され、かつ上面14aが多孔状である複数の通風部14の内部にガスGを通すことにより、ガスGを木質材Wに向けて供給している。この場合、複数の通風部14の上面14aの開口率をx%(0<x<100)とし、複数の通風部14内のガスの通風量をA(m
3/秒)とし、通風部14の上面14aの面積をS(m
2)とすると、風速は、A×100/(S×x)(m/秒)となり、風量はA(m
3/秒)となる。木質材の体積をV(m
3)とすると、木質材1m
3当たりの風量は、A/V(m
3/秒・m
3)となる。
なお、木質材Wに供給するガスの風速及び風量は、風速計及び風量計で測定してもよい。
【0043】
この工程では、木質材Wに、間欠的にガスGを供給してもよく、連続してガスGを供給してもよい。供給条件は、内部温度の低下、乾燥状況により適宜選択することができる。
【0044】
この工程で供給するガスGは、酸素を含むガスであれば特に限定されず、例えば空気を用いる。供給するガスが酸素を含んでいると、木質材Wに存在する好気性菌の発酵を可能にする。また、ガスGの温度は菌の活動を阻害しない限り特に限定されないが、乾燥時間を短縮できる観点から、ガスとして温熱排気(廃熱から得られる温風)を利用することが好ましい。
【0045】
この工程は、木質材Wの乾燥を均一化するために、重機等で定期的に攪拌する工程を含んでいてもよい。
【0046】
続いて、
図1〜
図7を参照して、本実施の形態における木質材Wの水分調整装置10及び水分調整方法の効果について説明する。水分の調整として、木質材Wを乾燥する場合を例に挙げて説明する。
【0047】
<送風による乾燥>
木質材の下方から木質材に向けた風量が木質材1m
3当たり1000L/分を超えるようにガスを供給すると、ガスの風量が大きいので、
図6に示すように、木質材の温度が上昇しない。このため、木質材中に存在する菌の発酵が可能な温度Tを早期に下回る。したがって、供給するガスのみに起因して木質材中の水分を乾燥させる。送風による乾燥は、
図7のように時間の経過とともに、木質材中の含水率を徐々に低下させることができるが、ガスを供給する風量が多いため、大きな電力エネルギーが必要である。
【0048】
<発酵による乾燥>
風量が木質材1m
3当たり10L/分未満になるようにガスを供給すると、ガスの風量が小さいため、
図6に示すように、木質材の温度は低下しにくい。このため、木質材中に存在する菌の発酵が可能な温度Tを維持できる。しかし、発酵により発熱しても、ガスの風量が少ないため、内部の湿気が木質材の外部に揮散しにくいので、
図7に示すように、時間が経過しても含水率が低くならない。このため、木質材を乾燥させるためには、長時間を要する。
【0049】
<本実施の形態による乾燥>
一方、本実施の形態における木質材Wの水分調整方法は、風量が木質材1m
3当たり10L/分以上1000L/分以下となるようにガスを供給する。風量が1000L/分以下になるようにガスGを供給すると、
図6に示すように、木質材W中に存在する菌の発酵が可能な温度Tを維持できる。木質材W中に存在する菌が発酵すると発熱するので、この熱を利用して木質材W中の水分を蒸発・乾燥することができ、風量が10L/分以上になるようにガスGを供給することで、内部の湿気を外部に揮散させることができる。このため、本実施の形態における乾燥では、
図7に示すように、上記の送風による乾燥と同程度以下の時間で木質材W中の水分を同程度以下まで低減することができる。その上、本実施の形態で用いるガスの風量は、上記の送風による乾燥で供給するガスの風量に比べて、少ない。したがって、本実施の形態によれば、低い電力エネルギーで、かつ短時間で木質材W中の水分を乾燥することができる。
【0050】
それに加えて、本実施の形態では発酵による発熱を利用しているので、送風部16の容量を大きくする必要がない。このため、本実施の形態の木質材Wの水分調整方法に用いられる水分調整装置10の小型化を図ることができる。
【0051】
また、短時間で木質材W中の水分を乾燥できるので、木質材Wの腐敗を抑制できるため、悪臭等の発生も抑制できる。
【0052】
このように、本実施の形態における水分調整方法は、新たな熱源を必要とせずに、短時間で木質材中の水分を調整できる。このため、熱利用設備の燃料や、製紙原料、家畜敷き藁、木質ボード原料などとして用いられる木質材の水分調整方法として、本実施の形態は好適に用いられる。
【0053】
(実施の形態2)
図8及び
図9を参照して、本発明の実施の形態2における木質材の水分調整装置について説明する。
図8及び
図9に示すように、本実施の形態における水分調整装置は、基本的には実施の形態1と同様の構成であるが、通風部14の間に配置された補強部13をさらに備えている点において異なる。
【0054】
具体的には、
図8及び
図9に示すように、複数の補強部13は、台座11上に、台座11における背板12側の一方端部から反対側の他方端部に延びるように配置されている。複数の補強部13は、互いに略並行に、かつ間隔を隔てて配置されている。補強部13は、通風部14と略同一の厚みを有している。補強部13は、例えば鉄枠である。
【0055】
なお、補強部13は、通風部14の間に配置される構成に限定されず、通風部14の上面14a上に配置されてもよい(図示せず)。この場合の補強部は、例えば、通風部14の延在方向と交差する方向に延在するように配置されている。補強部が複数ある場合には、互いに略並行に、かつ間隔を隔てて配置されている。この補強部上には、水分を調整する対象である木質材を載置可能である。なお、通風部14が十分に圧縮耐久性を有している場合や、後述する実施の形態3のように床面に埋め込まれている場合には、補強部は省略されてもよい。
【0056】
本実施の形態における木質材の水分調整方法は、基本的には実施の形態1と同様であるが、
図8及び
図9に示す水分調整装置を用いる点において異なる。具体的には、準備した木質材を、通風部14及び補強部13上に配置する点が実施の形態1と異なる。
【0057】
(実施の形態3)
図10を参照して、本発明の実施の形態3における木質材の水分調整装置について説明する。
図10に示すように、本実施の形態における水分調整装置は、基本的には実施の形態1と同様の構成であるが、通風部14の形状及び支持部18をさらに備えている点において異なる。
【0058】
具体的には、
図10に示すように、支持部18に複数の溝18aが形成されており、この溝18aの内部に、複数の通風部14が配置されている。
【0059】
支持部18は、台座11上に配置され、例えばコンクリートや固い樹脂からなる。支持部18の溝18aは、通風部14の径よりも大きな深さを有する。このため、通風部14の全体を収容できると共に、内部に配置する通風部14の上面が露出するように形成されている。溝18aは、互いに略並行に間隔を隔てて形成されている。
【0060】
通風部14は、多孔の円筒である。この多孔の円筒は、孔径の最大径が20mm以下で、かつ開口率が0.3%以上90%以下であることが好ましく、開口率は0.6%以上90%以下であることがより好ましい。この場合、木質材に均一性を高めてガスを供給することができるため、木質材中の水分のばらつきを抑制することができる。なお、通風部14は、単独で用いられてもよく、複数束ねて用いられてもよい。
【0061】
本実施の形態における木質材の水分調整方法は、基本的には実施の形態1と同様であるが、
図10に示す水分調整装置を用いる点において異なる。具体的には、準備した木質材を支持部18及び通風部14上に配置する点が実施の形態1と異なる。
【0062】
(実施の形態4)
図11を参照して、本発明の実施の形態4における木質材の水分調整装置について説明する。
図11に示すように、本実施の形態における水分調整装置は、基本的には実施の形態3と同様の構成であるが、支持部18の形状において実施の形態3と異なる。
【0063】
具体的には、
図11に示すように、多孔の円筒である通風部14が箱状の支持部18に収容されている。支持部18は、連結部19で互いに連結されている。連結部19は、例えばトラックの荷台に固定する役割も有する。このため、本実施の形態の木質材の水分調整装置は、通風部14が車両に搭載された移動式の装置であることが好ましい。
【0064】
本実施の形態における木質材の水分調整方法は、基本的には実施の形態1と同様であるが、
図11に示す水分調整装置を用いる点において異なる。具体的には、準備した木質材を、通風部14及び支持部18上、及びその間に配置する点が実施の形態1と異なる。
【実施例】
【0065】
本実施例では、風量が木質材1m
3当たり10L/分以上1000L/分以下となるように酸素を含むガスを木質材に向けて供給することの効果について調べた。
【0066】
(実施例1〜3)
実施例1〜3については、上述した
図10に示す実施の形態3における水分調整装置を用いて、木質材の水分調整を行った。
【0067】
具体的には、通風部14として、上面14aの孔の開口率が下記の表1に記載の多孔筒を用いた。
【0068】
実施例1〜3の木質材の水分調整方法は、まず、木質材Wとして200mm以下に破砕された生木チップを準備し、この木質材Wを1.5mの高さまで通風部14の上面14a上に積んだ。木質材Wの体積Vは15(m
3)であり、含水率及び温度は下記の表1の開始に記載の通りであった。
【0069】
次に、通風部14の上面14a上に木質材Wを載置した状態で、通風部14にガスGとして空気を流した。実施例1〜3の水分調整装置による送風条件は下記の表1に記載の通りとした。表1における風量は、木質材1m
3当たりの値である。ガスGは、下記の通風量及び風速で14日間連続して供給した。
【0070】
(実施例4〜7)
実施例4〜7は、基本的には実施例1〜3と同様に行ったが、水分調整装置として、
図1〜
図3に示す実施の形態1における通風部14を備えた水分調整装置を用いて、下記の表1に記載の送風条件で木質材の水分を調整した。
【0071】
(比較例1、2)
比較例1の水分調整装置は、実施例1〜3と同様であった。比較例2の水分調整装置は、実施例4〜7と同様であった。比較例1、2の水分調整方法は、基本的には実施例1〜7と同様であったが、下記の表1に記載の送風条件で木質材の水分を調整した。
【0072】
(評価方法)
実施例1〜7、比較例1、2の木質材Wについて、開始時、1日後、4日後、7日後及び14日後の温度と含水率とを測定した。温度は、木質材Wの2点を温度計にて測定し、その平均値とした。含水率は、木質材Wの表面から0.5m及び1mの地点からサンプリングして測定した。これらの結果を下記の表1に記載する。
また、実施例1〜9の14日後の木質材について、乾燥が均一であったかについて調べた。下記の表1において、○とは全体にほぼ均一に乾燥していた状態を意味し、△とは乾燥にやや偏りがあった状態を意味し、×とは乾燥不良を意味する。
【0073】
【表1】
【0074】
(評価結果)
表1に示すように、実施例1〜7は、風量が木質材1m
3当たり10L/分以上1000L/分以下の範囲内である50L/分以上800L/分以下となるように酸素を含むガスを木質材Wに向けて供給することによって、木質材Wの温度が下がりすぎなかったので、木質材W中に存在する菌が発酵することによる発熱を利用できたため、少ない風量で、かつ短時間で木質材中の水分を低減することができた。
【0075】
また、0.07m/秒以上1.4m/秒以下の風速でガスを供給した実施例4〜7は、乾燥の均一性を高めることができた。
【0076】
一方、比較例1は、ガスの風量が木質材1m
3当たり10L/分未満であったので、木質材中の水分を外部に揮散することが十分にできなかったので、時間をかけても木質材中の水分を低減できなかった。
【0077】
また、比較例2は、ガスの風量が木質材1m
3当たり1000L/分を超えていたので、発酵による温度上昇は認められず、単なる送風乾燥と考えられた。ガスの風量が実施例1〜7に比べて多かったので、実施例1〜7よりも使用した電力エネルギーも多かった。
【0078】
以上より、本実施例によれば、ガスの風量が木質材1m
3当たり10L/分以上1000L/分以下となるように酸素を含むガスを木質材に向けて供給することにより、付加的な熱エネルギーを低減し、かつ短時間で木質材の水分を調整できることが確認できた。
【0079】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。