(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最大ドーズ量を入力し、前記最大ドーズ量が閾値以下かどうかを検査する最大ドーズ量検査部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画システムの構成を示す概念図である。
図1において、描画システムは、描画装置100、及び描画データ変換装置500を有している。その他、図示しないパラメータ情報作成ツール等を有してもよい。
【0016】
描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0017】
制御部160は、制御計算機110、メモリ112、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144,146を有している。制御計算機110、メモリ112、制御回路120、及び記憶装置140,142,144,146は、図示しないバスを介して接続されている。制御計算機110内には、電荷量検査部60、検索部61,63、ドーズ量検査部62、ショットデータ生成部64、描画制御部66、照射量演算部68、及び補正部69が配置される。電荷量検査部60、検索部61,63、ドーズ量検査部62、ショットデータ生成部64、描画制御部66、照射量演算部68、及び補正部69といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。電荷量検査部60、検索部61,63、ドーズ量検査部62、ショットデータ生成部64、描画制御部66、照射量演算部68、及び補正部69に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0018】
描画データ変換装置500は、制御計算機50、メモリ51、及び磁気ディスク装置等の記憶装置141を有している。制御計算機50、メモリ51、及び記憶装置141は、図示しないバスを介して互いに接続されている。制御計算機50内には、データ変換部52、ドーズ変調率設定部51、変調ドーズ表作成部54、電荷量マップ作成部56、及び最大ドーズ量演算部58が配置される。データ変換部52、ドーズ変調率設定部51、変調ドーズ表作成部54、電荷量マップ作成部56、及び最大ドーズ量演算部58といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。データ変換部52、ドーズ変調率設定部51、変調ドーズ表作成部54、電荷量マップ作成部56、及び最大ドーズ量演算部58に入出力される情報および演算中の情報はメモリ51にその都度格納される。また、記憶装置141には、ユーザ側が作成された設計データであるレイアウトデータ(例えば、CADデータ等)が格納されている。
【0019】
また、描画装置100の制御計算機110には、図示しないネットワーク等を介して、描画データ変換装置500、及びその他の磁気ディスク装置等の記憶装置148に接続されている。記憶装置148には、対象となるレイアウトデータを描画する際のプロセスパラメータが格納される。プロセスパラメータとして、例えば、使用するレジスト等が定義される。
【0020】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100、描画データ検査装置300、及び描画データ変換装置500にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、1段の偏向器或いは3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。また、
描画装置100、及び描画データ変換装置500には、マウスやキーボード等の入力装置、モニタ装置、及び外部インターフェース回路等が接続されていても構わない。
【0021】
描画装置100で描画処理を行うためには、かかるレイアウトデータを描画装置100へ入力可能な描画データにデータ変換する必要がある。また、描画装置100では、図示しないが、一般に、その内部で近接効果補正等のドーズ量補正計算を行うが、描画装置内での計算されたドーズ量を使用しても補正残差等が残る場合もある。そのため、ユーザは、特に、一部のパターン或いは局所的な領域について他のパターンや領域とは区別して、さらに付加的にドーズ量を制御したい場合がある。かかる場合、変調ドーズ量は、描画装置へのデータ入力前の段階で、ユーザ或いは補正ツール等によって設定される必要がある。
【0022】
図2は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図2に示すように、描画データ変換装置500内にて、ドーズ変調率設定工程(S102)と、変調ドーズ表作成(S104)と、データ変換工程(S106)と、電荷量マップ作成工程(S108)と、最大ドーズ量演算工程(S110)と、とを実施する。次に、描画装置100内で、閾値Q’検索工程(S114)と、検査工程(S116)と、閾値D’検索工程(S122)と、検査工程(S124)と、ショットデータ生成工程(S130)と照射量演算工程(S132)と、補正工程(S134)と、描画工程(S136)と、を実施する。
【0023】
図3は、実施の形態1における図形パターンの一例を示す図である。
図3では、例えば、レイアウトデータ内に、複数の図形パターンA〜Kが配置される。そして、図形パターンA,Kと、図形パターンB〜E,G〜Jと、図形パターンFと、について、異なるドーズ量で描画したい場合がある。そのため、図形パターンA,Kに対する変調ドーズ率と、図形パターンB〜E,G〜Jに対する変調ドーズ率と、図形パターンFに対する変調ドーズ率とが、予め設定される。変調後のドーズ量は、例えば、描画装置100内で近接効果補正等の計算後の照射量dにかかる変調ドーズ率を乗じた値で算出される。そのため、以下の変調ドーズ表が作成される。
【0024】
図4は、実施の形態1における変調ドーズ表の一例を示す図である。
図3に示すように、レイアウトデータ内の複数の図形パターンについて、図形毎に、指標番号(識別子)が付与される。そして、変調ドーズ表は、
図4に示すように、各指標番号に対するドーズ量変調量として、変調ドーズ率が定義される。
図4では、例えば、指標番号20の図形パターンについて、変調ドーズ率が100%と定義される。指標番号21の図形パターンについて、変調ドーズ率が120%と定義される。指標番号22図形パターンについて、変調ドーズ率が140
%と定義される。
【0025】
しかし、かかる変調ドーズの区分を多数設定するとなると、ユーザ自身での手作業では限界がある。例えば、図形パターン毎に、20階調程度に区分してドーズ変調を行う。そこで、実施の形態1では、描画データ変換装置500において、変調ドーズ率の設定も行う。
【0026】
そこで、ドーズ変調率設定工程(S102)において、ドーズ変調率設定部51は、レイアウトデータに定義される複数の図形パターンについて、それぞれ、ドーズ変調率を設定する。ドーズ変調率の設定は、従来からの実績データやシミュレーション等によって最適化されればよい。
【0027】
そして、変調ドーズ表作成(S104)において、変調ドーズ表作成部54は、設定された変調ドーズ率の変調率データとそれぞれ対応する図形パターンの指標番号を入力し、対応させた変調ドーズ表を作成する。変調ドーズ表は出力され、記憶装置144に格納される。
【0028】
そして、データ変換工程(S106)において、データ変換部52は、記憶装置141から複数の図形パターンが定義されたレイアウトデータ(設計データ)を読み出し、描画装置100に入力可能なフォーマットの描画データにデータ変換する。生成された描画データは出力され、記憶装置140に格納される。
【0029】
ここで、生成される描画データにおいて、各図形パターンには、
図3で示したように、変調ドーズ率(変調率)を特定するための指標番号(識別子)が付加データとして定義される。或いは、かかる変調ドーズ率が定義された図形パターンと、変調ドーズ率が定義されていない図形パターンとが混在してもよい。混在するケースでは、変調ドーズ率が定義されていない図形パターンに対しては、予め定められた所定の変調ドーズ率が用いられる。例えば、100%の変調ドーズ率が用いられればよい。
【0030】
また、1つの試料101には、複数のチップが配置される場合がある。このように、レイアウトデータは、複数のチップデータを含む。その際、変調ドーズ率は、チップ毎に設定されても好適である。かかる場合、生成される描画データにおいて、チップ毎に変調ドーズ率(変調率)を特定するための指標番号(識別子)が付加データとして定義される。かかる場合においても、変調ドーズ率が定義されたチップと、変調ドーズ率が定義されていないチップとが混在してもよい。混在するケースでは、変調ドーズ率が定義されていないチップに対しては、予め定められた所定の変調ドーズ率が用いられる。例えば、100%の変調ドーズ率が用いられればよい。或いは、チップを構成する図形パターン毎に指標番号が付加データとして定義されてもよいことは言うまでもない。
【0031】
電荷量マップ作成工程(S108)において、電荷量マップ作成部56は、レイアウトデータ10の配置領域を所定のサイズのメッシュ領域に分割する。そして、メッシュ領域毎に、電子ビームの照射によって座標(i,j)のメッシュ領域内に蓄積する電荷量Qを演算する。そして、電荷量マップ作成部56は、各メッシュ領域の電荷量Qをまとめた電荷量マップを作成する。各メッシュ領域の電荷量Qは、例えば、かかるメッシュ領域内の各図形パターンについて、図形パターンの面積M
(i,j)と指標番号Nが示す変調ドーズ率R
Nと基準照射量Dbaseとを乗じた値を演算し、メッシュ領域内の各図形パターンの演算結果を合計すればよい。基準照射量Dbaseの代わりに、補正された照射量D
0(i,j)を用いてもよい。例えば、座標(i,j)のメッシュ領域毎に、メッシュ領域内の総面積M
tot(i,j)と近接効果補正係数ηとを用いて基準照射量Dbaseを補正した照射量D
0(i,j)を用いてもよい。照射量D
0(i,j)は、次の式(1)で定義される。
(1) D
0(i,j)=Dbase・(0.5+η)/(0.5+M
tot(i,j)・η)
【0032】
或いは、座標(i,j)のメッシュ領域毎に、メッシュ領域内の各図形パターンの面積に対応する変調ドーズ率R
Nを乗じることで重み付けされた面積値の合計面積値M’
(i,j)と近接効果補正係数ηとを用いて基準照射量Dbaseを補正した照射量D’
0(i,j)を用いてもよい。照射量D’
0(i,j)は、次の式(2)で定義される。
(2) D’
0(i,j)=Dbase・(0.5+η)/(0.5+M’
(i,j)・η)
【0033】
或いは、その他の計算手法でメッシュ領域の電荷量Qを求めてもよい。以上のようにして、電荷量マップを作成し、記憶装置142に格納する。
【0034】
かかるデータ変換工程と電荷量マップ作成工程とは、並列して実施されると好適である。一般に、レイアウトデータから描画データへの変換処理には、数10時間が必要となる。例えば、20時間程度が必要となる。そして、電荷量マップ作成には、数時間、例えば、5時間程度が必要となる。そこで、データ変換工程と電荷量マップ作成工程とを並列して実施することで、電荷量マップ作成時間をレイアウトデータから描画データへのデータ変換処理時間に重ねることができる。すなわち、電荷量マップ作成時間を従来の描画作業時間に追加せずに済ますことができる。
【0035】
また、最大ドーズ量演算工程(S110)において、最大ドーズ量演算部58は、設定されたドーズ変調率で描画した場合の最大ドーズ量Dmaxを演算する。例えば、変調ドーズ率R
Nの最大値と基準照射量Dbaseとを乗じた値を演算する。或いは、その他の計算手法で最大ドーズ量Dmaxを求めてもよい。最大ドーズ量Dmaxの値は、記憶装置142に格納される。
【0036】
ここで、ドーズ変調率設定部51の演算結果の変調ドーズ率に不備があった場合、かかる値が描画装置に入力され、そのままかかる値が描画装置で使用されてしまうと異常なドーズ量のビームが照射されてしまうことになる。かかる異常なドーズ量のビーム照射は、メッシュ領域内に異常な電荷量の蓄積を引き起こす。それにより、パターン寸法CDの異常を引き起こす。さらに、極端な異常値である場合には、レジストの蒸発、ひいてはかかる蒸発による描画装置汚染(或いは描画装置故障)を引き起こす可能性もある。そこで、実施の形態1では、描画装置100内でデータ変換処理を行う前、或いは、データ変換処理が終了する前に、かかる電荷量が異常値でないかどうかを検査する。同様に、そもそも照射される最大ドーズ量自体が異常値でないかどうかを検査する。
【0037】
まず、閾値Q’検索工程(S114)において、検索部61は、プロセスパラメータを記憶する記憶装置148からプロセスパラメータを読み出し、描画装置100からは装置仕様を読み出し、記憶装置146に格納された電荷量閾値Q’データベース(相関データ)を参照して、かかるプロセスパラメータ及び装置仕様に対して使用可能な最大電荷量を示す電荷量閾値Q’を検索する。描画装置100の装置仕様によって、使用可能な最大電荷量は異なる。装置仕様は、使用する描画装置によって異なる場合がある。例えば、機種によって異なる。同じ機種でも使用可能な最大電荷量にばらつきが存在する場合もあり得る。同様に、プロセスパラメータ、例えば、レジスト種によって、使用可能な最大電荷量は異なる。そこで検索部61は、これらのプロセスパラメータ及び装置仕様の情報(例えば、検索キーワード)を使って、使用可能な最大電荷量を示す電荷量閾値Q’を検索する。
【0038】
そして、検査工程(S116)において、電荷量検査部60は、記憶装置142から電荷量マップを読み出し、メッシュ領域毎に、電荷量Qが、電荷量閾値Q’以下かどうかを検査(判定)する。検査の結果、いずれかのメッシュ領域において、電荷量Qが、電荷量閾値Q’より大きい場合には、描画NGとして、エラー情報を出力する。すべてのメッシュ領域において、電荷量Qが、電荷量閾値Q’以下の場合には、描画装置100で描画処理可能として、描画制御部66にok情報を出力すればよい。このように、電荷量検査部60は、電荷量マップを用いて、試料にパターンを描画する際のメッシュ領域(所定の領域)毎の電荷量を検査する。
【0039】
また、閾値D’検索工程(S122)において、検索部63は、プロセスパラメータを記憶する記憶装置148からプロセスパラメータを読み出し、描画装置100からは装置仕様を読み出し、記憶装置146に格納された最大ドーズ量閾値D’データベース(相関データ)を参照して、かかるプロセスパラメータ及び装置仕様に対して使用可能な最大ドーズ量を示す最大ドーズ量閾値D’を検索する。描画装置100の装置仕様によって、使用可能な最大ドーズ量は異なる。装置仕様は、使用する描画装置によって異なる場合がある。例えば、機種によって異なる。同じ機種でも使用可能な最大ドーズ量にばらつきが存在する場合もあり得る。同様に、プロセスパラメータ、例えば、レジスト種によって、使用可能な最大ドーズ量は異なる。そこで検索部63は、これらのプロセスパラメータ及び装置仕様の情報(例えば、検索キーワード)を使って、使用可能な最大ドーズ量閾値D’を検索する。
【0040】
そして、検査工程(S124)において、ドーズ量検査部62(最大ドーズ量検査部)は、記憶装置142から最大ドーズ量を読み出し、最大ドーズ量Dmaxが、最大ドーズ量閾値D’以下かどうかを検査(判定)する。検査の結果、最大ドーズ量が、最大ドーズ量閾値D’より大きい場合には、描画NGとして、エラー情報を出力する。最大ドーズ量が、最大ドーズ量閾値D’以下の場合には、描画装置100で描画処理可能として、描画制御部66にok情報を出力すればよい。このように、ドーズ量検査部62は、外部から入力された最大ドーズ量データを用いて、試料にパターンを描画する際のメッシュ領域(所定の領域)毎の最大ドーズ量を検査する。
【0041】
以上の検査処理により、描画装置100内にて描画データをデータ変換処理前に描画データの異常を検査できる。これにより、以降の描画装置100内での無駄な作業時間を回避できる。かかる検査処理は、数分で終了できる。そのため、早期に描画データの異常を検査できる。もし、描画装置100で電荷量マップを作成する場合には、さらに、電荷量マップ作成時間が追加されてしまうので、その分、検査時間が長くかかってしまう。これに対して、実施の形態1では、描画装置100ではなく、その上流の描画データ変換装置500で描画データの生成と同時期に電荷量マップを作成しているので、描画データの検査に、かかる検査処理の数分で済ますことができる。そして、描画データが異常でないと検査された場合に、描画装置100において描画処理が行われる。
【0042】
ここで、上述した例では、プロセス情報と装置仕様情報との両方が一致する場合の電荷量閾値Q’および最大ドーズ量閾値D’を用いたが、これに限るものではない。プロセス情報と装置仕様情報との少なくとも一方が一致する場合の電荷量閾値Q’および最大ドーズ量閾値D’を用いる場合であってもよい。
【0043】
ショットデータ生成工程(S130)として、ショットデータ生成部64は、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズに描画データに定義された各図形パターンを分割する必要がある。そこで、ショットデータ生成部112は、実際に描画するために、各図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、及び照射位置といった図形データが定義される。
【0044】
照射量演算工程(S132)として、照射量演算部68は、所定のサイズのメッシュ領域毎の照射量dを演算する。照射量dは、例えば、基準照射量Dbaseに補正係数を乗じた値で演算できる。補正係数として、例えば、近接効果補正照射係数Dpを用いると好適である。近接効果補正照射係数Dpの演算は、従来と同様の手法で構わない。
【0045】
補正工程(S134)として、補正部69は、ショット図形毎に、対応する照射量dにショット図形の基となる図形パターンに定義された指標番号が示す変調ドーズ率を乗じて補正した補正照射量を演算する。
【0046】
描画工程(S136)として、描画制御部66は、制御回路120に描画処理を行うように制御信号を出力する。制御回路120は、ショットデータと各補正照射量のデータを入力し、描画制御部66から制御信号に従って描画部150を制御し、描画部150は、電荷量マップと組みになる描画データに基づいて、電子ビーム200を用いて、当該図形パターンを試料100に描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0047】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形させる)ことができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でストライプ領域をさらに仮想分割したサブフィールド(SF)の基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。
【0048】
以上のように、実施の形態1によれば、描画装置に入力される描画データによって異常なドーズ量のビーム照射が行われてしまうことを回避できる。その結果、異常なドーズ量のビーム照射に起因する、パターン寸法CDの異常、レジストの蒸発、及び描画装置汚染(或いは描画装置故障)を回避できる。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態1では、描画装置100内で、電荷量と最大ドーズ量との検査を行ったが、これに限るものではない。実施の形態2では、検査処理を実施する機能部分をオフラインに配置し、描画装置100とは別な検査装置として構成する場合について説明する。
【0050】
図5は、実施の形態2における描画システムの構成を示す概念図である。
図5において、描画システムは、描画装置100、検査装置300及び描画データ変換装置500を有している。その他、図示しないパラメータ情報作成ツール等を有してもよい。
図5において、検査装置300は、制御計算機310、及びメモリ312を備える。また、記憶装置142,146は、描画装置100の構成から検査装置300の構成へと変更する。また、電荷量検査部60、検索部61,63、及びドーズ量検査部62を描画装置100の構成から検査装置300の構成へと変更する。よって、制御計算機310内に、電荷量検査部60、検索部61,63、及びドーズ量検査部62が配置される。制御計算機310内には、さらに、照会部65が配置される。電荷量検査部60、検索部61,63、ドーズ量検査部62、及び照会部65といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。電荷量検査部60、検索部61,63、ドーズ量検査部62、及び照会部65に入出力される情報および演算中の情報はメモリ312にその都度格納される。
【0051】
また、制御計算機110内には、さらに、照合部67が配置される。ショットデータ生成部64、描画制御部66、照合部67、照射量演算部68、及び補正部69といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。ショットデータ生成部64、描画制御部66、照合部67、照射量演算部68、及び補正部69に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0052】
図5において、その他の構成は、
図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
【0053】
図6は、実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図2に示すように、描画データ変換装置500内にて、ドーズ変調率設定工程(S102)と、変調ドーズ表作成(S104)と、データ変換工程(S106)と、電荷量マップ作成工程(S108)と、最大ドーズ量演算工程(S110)とを実施する。次に、検査装置300内で、照合工程(S112)と、閾値Q’検索工程(S114)と、検査工程(S116)と、閾値D’検索工程(S122)と、検査工程(S124)とを実施する。次に、描画装置100内で、ショットデータ生成工程(S130)と照射量演算工程(S132)と、補正工程(S134)と、描画工程(S136)と、を実施する。
【0054】
ここで、実施の形態2では、検査装置300と描画装置100とが分離されたので、検査装置300で電荷量Q及び最大ドーズ量Dmaxを検査する際、使用する描画装置100の装置仕様を把握できない。そこで、実施の形態2では、使用する描画装置100が予定する装置なのかどうかを照会する。
【0055】
まず、閾値Q’検索工程(S114)において、検索部61は、プロセスパラメータを記憶する記憶装置148からプロセスパラメータ及び装置仕様を読み出し、記憶装置146に格納された電荷量閾値Q’データベースを参照して、かかるプロセスパラメータ及び装置仕様に対して使用可能な最大電荷量を示す電荷量閾値Q’を検索する。
【0056】
同様に、閾値D’検索工程(S122)において、検索部3は、プロセスパラメータを記憶する記憶装置148からプロセスパラメータ及び装置仕様を読み出し、記憶装置146に格納された最大ドーズ量閾値D’データベースを参照して、かかるプロセスパラメータ及び装置仕様に対して使用可能な最大ドーズ量を示す最大ドーズ量閾値D’を検索する。
【0057】
一方、照合工程(S112)において、照会部65は、記憶装置148から入力された装置仕様が、今回使用する描画装置100と一致するかどうかを照会する。具体的には、照会部65は、記憶装置148から入力された装置仕様を描画装置100内の照合部67に出力する。そして、描画装置100内では、照合部67が、検査装置300から入力された装置仕様の情報と、記憶装置149に格納した装置仕様の情報とが一致するかどうかを照合する。一致する場合には、検査装置300にokデータを返送する。一致しない場合には、NGとして、エラー出力を送信する。
【0058】
ここで、装置仕様の照合がNGの場合には、描画中止とする。或いは、検索部61は、描画装置100から装置仕様の情報を入力し、電荷量閾値Q’データベースを参照して、かかるプロセスパラメータ及び描画装置100からの装置仕様に対して使用可能な最大電荷量を示す電荷量閾値Q’を検索してもよい。同様に、検索部63は、描画装置100から装置仕様の情報を入力し、電荷量閾値Q’データベースを参照して、かかるプロセスパラメータ及び描画装置100からの装置仕様に対して使用可能な最大ドーズ量を示す最大ドーズ量閾値D’を検索してもよい。
【0059】
電荷量検査部60及びドーズ量検査部62がそれぞれ行う検査処理の内容は、実施の形態1と同様である。
【0060】
以上のように、検査機能を描画装置100と切り離しても好適である。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態1,2では、変調ドーズ率を用いて、照射量を補正したが、これに限るものではない。実施の形態3では、各図形パターンを照射する際のドーズ量そのものを予め設定する場合について説明する。
【0062】
図7は、実施の形態3における描画システムの構成を示す概念図である。
図7において、ドーズ変調率設定部51、及び変調ドーズ表作成部54の代わりに、ドーズ量演算部53を配置した点、記憶装置144及び補正部69を削除した点以外は、
図1と同様である。なお、記憶装置140に格納される描画データでは、各図形パターンにドーズ量が付加データとして定義される。また、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。また、実施の形態3における描画方法の要部工程を示すフローチャート図は、ドーズ変調率設定工程(S102)と変調ドーズ表作成工程(S104)の代わりに、ドーズ量演算工程を追加する点以外は、
図2と同様であるため、省略する。
【0063】
まず、描画データ変換装置500において、ドーズ量演算工程としてドーズ量演算部53は、レイアウトデータに定義される複数の図形パターンについて、それぞれ、ドーズ量を演算する。ドーズ量の演算は、従来からの実績データやシミュレーション等によって最適化されればよい。
【0064】
そして、データ変換部52によって、生成される描画データにおいて、各図形パターンには、
図3で示した変調ドーズ率(変調率)を特定するための指標番号(識別子)の代わりに、ドーズ量が付加データとして定義される。或いは、かかるドーズ量が定義された図形パターンと、ドーズ量が定義されていない図形パターンとが混在してもよい。混在するケースでは、ドーズ量が定義されていない図形パターンに対しては、予め定められた所定のドーズ量が用いられる。例えば、基準照射量が用いられればよい。
【0065】
電荷量マップ作成部56は、レイアウトデータ10の配置領域を所定のサイズのメッシュ領域に分割する。そして、メッシュ領域毎に、電子ビームの照射によって座標(i,j)のメッシュ領域内に蓄積する電荷量Qを演算する。そして、電荷量マップ作成部56は、各メッシュ領域の電荷量Qをまとめた電荷量マップを作成する。各メッシュ領域の電荷量Qは、例えば、かかるメッシュ領域内の各図形パターンについて、図形パターンの面積M
(i,j)と当該図形パターンについて演算されたドーズ量とを乗じた値を演算し、メッシュ領域内の各図形パターンの演算結果を合計すればよい。以上のようにして、電荷量マップを作成し、記憶装置142に格納する。
【0066】
また、最大ドーズ量演算部58は、演算されたドーズ量のうちの、最大ドーズ量Dmaxを演算する。最大ドーズ量Dmaxの値は、記憶装置142に格納される。
【0067】
以下、電荷量と最大ドーズ量についての描画装置内での検査手法は、実施の形態1と同様である。
【0068】
照射量演算工程として、照射量演算部68は、所定のサイズのメッシュ領域毎の照射量dを演算する。照射量dは、ショット図形毎に、ショット図形の基となる図形パターンに定義されたドーズ量を用いればよい。
【0069】
以上のように、描画データの各図形にドーズ量が付加データとして定義される場合でも、描画装置に入力される描画データによって異常なドーズ量のビーム照射が行われてしまうことを回避できる。その結果、異常なドーズ量のビーム照射に起因する、パターン寸法CDの異常、レジストの蒸発、及び描画装置汚染(或いは描画装置故障)を回避できる。
【0070】
実施の形態4.
実施の形態3では、描画装置100内で、電荷量と最大ドーズ量との検査を行ったが、これに限るものではない。実施の形態4では、検査処理を実施する機能部分をオフラインに配置し、描画装置100とは別な検査装置として構成する場合について説明する。
【0071】
図8は、実施の形態4における描画システムの構成を示す概念図である。
図8において、描画システムは、描画装置100、検査装置300及び描画データ変換装置500を有している。その他、図示しないパラメータ情報作成ツール等を有してもよい。
図8において、検査装置300は、制御計算機310、及びメモリ312を備える。また、記憶装置142,146は、描画装置100の構成から検査装置300の構成へと変更する。また、電荷量検査部60、検索部61,63、及びドーズ量検査部62を描画装置100の構成から検査装置300の構成へと変更する。よって、制御計算機310内に、電荷量検査部60、検索部61,63、及びドーズ量検査部62が配置される。制御計算機310内には、さらに、照会部65が配置される。電荷量検査部60、検索部61,63、ドーズ量検査部62、及び照会部65といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。電荷量検査部60、検索部61,63、ドーズ量検査部62、及び照会部65に入出力される情報および演算中の情報はメモリ312にその都度格納される。
【0072】
また、制御計算機110内には、さらに、照合部67が配置される。ショットデータ生成部64、描画制御部66、照合部67、及び照射量演算部68といった機能は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。照合部67が配置される。ショットデータ生成部64、描画制御部66、照合部67、及び照射量演算部68に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0073】
図8において、その他の構成は、
図7と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態3と同様である。また、実施の形態4における描画方法の要部工程を示すフローチャート図は、ドーズ変調率設定工程(S102)と変調ドーズ表作成工程(S104)の代わりに、ドーズ量演算工程を追加する点以外は、
図6と同様であるため、省略する。
【0074】
ここで、実施の形態4では、検査装置300と描画装置100とが分離されたので、検査装置300で電荷量Q及び最大ドーズ量Dmaxを検査する際、使用する描画装置100の装置仕様を把握できない。そこで、実施の形態4では、実施の形態2と同様、使用する描画装置100が予定する装置なのかどうかを照会する。装置仕様の紹介の手法は、実施の形態2と同様である。
【0075】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0076】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0077】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。