【実施例】
【0036】
以下実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。各実施例で得られた吸水性樹脂の、中位粒子径、生理食塩水吸水能、残存モノマー含量および水溶解分を、以下に示す方法により評価した。
【0037】
<中位粒子径>
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩および受け皿の順に組み合わせ、組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0038】
<生理食塩水吸水能>
500mL容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを量り取り、600rpmで撹拌させながら、吸水性樹脂2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。撹拌させた状態で60分間放置し、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。その後、予め目開き75μm標準篩の質量Wa(g)を測定しておき、これを用いて、前記ビーカーの内容物をろ過し、篩いを水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で、30分間放置することにより余剰の水分をろ別した。吸水ゲルの入った篩いの質量Wb(g)を測定し、以下の式により、生理食塩水吸水能を求めた。
式:生理食塩水吸水能(g/g)=[Wb−Wa](g)/吸水性樹脂の質量(g)
【0039】
<吸水性樹脂の残存モノマー含量>
500mL容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを量り取り、これに吸水性樹脂2.0gを添加して60分間撹拌した。前記ビーカーの内容物を、目開き75μmのJIS標準篩、さらに、ろ紙(ADVANTEC社製、No.3)によりろ過して、吸水ゲルと抽出液を分離した。得られた抽出液中に溶解しているモノマー含量を、高速液体クロマトグラフィーにより測定した。測定値を、吸水性樹脂質量あたりの値に換算して残存モノマー含量(ppm)とした。
【0040】
<水溶解分>
500mL容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500±0.1gを量り取り、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリングなし)を投入し、マグネチックスターラー〔イウチ(Iuchi)社製、品番:HS−30D〕の上に配置した。引き続きマグネチックスターラーバーを600rpmで回転するように調整し、さらに、マグネチックスターラーバーの回転により生ずる渦の底部は、マグネチックスターラーバーの上部近くになるように調整した。
【0041】
次に、吸水性樹脂2.0±0.002gを、ビーカー中の渦中央とビーカー側面の間に素早く流し込み分散させ、3時間撹拌した。3時間撹拌後の吸水性樹脂分散水を、標準篩(目開き75μm)でろ過し、得られたろ液をさらに桐山式ロート(ろ紙No.6)を用い吸引ろ過した。
【0042】
得られたろ液を恒量化した100mL容のビーカーに80±0.1g量り取り、140℃の熱風乾燥機〔アドバンテック(ADVANTEC)社製〕で恒量になるまで乾燥させ、ろ液固形分の質量Wd(g)を測定した。
一方、吸水性樹脂を用いずに上記操作と同様に行ない、ろ液固形分の質量We(g)測定し、式:溶解分(質量%)=〔[(Wd−We)×(500/80)]/2〕×100
に基づいて、溶解分を算出した。
【0043】
実施例1
撹拌機、還流冷却器、温度計、および窒素ガス導入管を備えた500mlの四つ口フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)、イオン交換水2.16gを仕込み、液温が30℃を超えないように外部より氷冷しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液104.2g(0.78モル)を徐々に滴下してアクリル酸の76モル%を中和した。次に、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム73.6mg(0.387ミリモル)、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル10.1mg(0.058ミリモル)およびイオン交換水37.1gを加えて溶解し水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。
【0044】
これとは別に、マイクロ波反応装置(四国計測工業(株)製、商品名:μReactorEX)の中に、撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、および窒素ガス導入管を付した四つ口フラスコを設置し、この四つ口フラスコにn−へプタン290gと高分子保護コロイドとして無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)製、商品名:ハイワックス1105A)0.736gと界面活性剤HLB3としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:サーフホープSS−3)0.736gを添加し、n−へプタンに溶解させ炭化水素溶媒組成物を調製した。
【0045】
続いて、上記の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の全量を炭化水素溶媒組成物に加え、30℃に保ち撹拌下で懸濁させた。その時同時に、充分な窒素ガスを吹き込んで残存酸素を追い出した。
この時の、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液と、炭化水素溶媒との質量比(W/O比)は、0.81であった。
【0046】
引き続き、マイクロ波反応装置により、周波数2.45GHzのマイクロ波を出力1kWで照射し逆相懸濁重合を行った。重合は速やか、かつ穏やかに進行し80秒の照射後、内温が70℃に達した時にマイクロ波の照射を止めた。
重合終了後、マイクロ波反応装置よりフラスコを取り出し、水およびn−へプタンを蒸留により留去し、乾燥することにより吸水性樹脂90.9gを得た。
得られた吸水性樹脂は、中位粒子径60μm、生理食塩水吸水能54g/g、残存モノマー含量207ppm、水溶解分7.6質量%であった。
【0047】
実施例2
実施例1において、n−へプタンの使用量を160gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。この時の、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液と、炭化水素溶媒との質量比(W/O比)は、1.46であった。
重合は速やか、かつ穏やかに進行し69秒の照射後、内温が70℃に達した時にマイクロ波の照射を止めた。重合終了後、マイクロ波反応装置よりフラスコを取り出し、水およびn−へプタンを蒸留により留去し、乾燥することにより吸水性樹脂90.5gを得た。
得られた吸水性樹脂は、中位粒子径61μm、生理食塩水吸水能64g/g、残存モノマー含量220ppm、水溶解分9.6質量%であった。
【0048】
実施例3
撹拌機、還流冷却器、温度計、および窒素ガス導入管を備えた3Lの四つ口フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液920g(10.3モル)、イオン交換水21.6gを仕込み、液温が30℃を超えないように外部より氷冷しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液1042.3g(7.8モル)を徐々に滴下してアクリル酸の76モル%を中和した。次に、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム736mg(3.87ミリモル)、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル101mg(0.58ミリモル)およびイオン交換水371gを加えて溶解し水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。
【0049】
これとは別に、撹拌機、還流冷却器、温度計、および窒素ガス導入管を備えた7Lの四つ口フラスコにn−へプタン2900gと高分子保護コロイドとして無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)製、商品名:ハイワックス1105A)7.36g、界面活性剤HLB3としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:サーフホープSS−3)7.36gを添加し、炭化水素溶媒組成物を調製した。
【0050】
続いて、上記の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の全量に炭化水素溶媒組成物を加え、30℃に保ち撹拌下で懸濁させた。その時同時に、充分な窒素ガスを吹き込んで残存酸素を追い出した。この混合液を懸濁液1とした。
この時の、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液と、炭化水素溶媒との質量比(W/O比)は、0.81であった。
【0051】
マイクロ波反応装置(四国計測工業(株)製、商品名:μReactorEX)に内径10mm、長さ50cmのガラス製U字型連続反応管(反応管の体積は39ml)を設置し、前記ガラス製U字型連続反応管に懸濁液1を毎分78gの速さで通液させた。懸濁液の反応管内の滞留時間は30秒である。
通液5分後、周波数2.45GHzのマイクロ波を出力1kWで照射して、逆相懸濁重合を行った。反応管内の通液はマイクロ波照射後もスムースであった。マイクロ波照射開始5分後から10分間の懸濁重合液を採取し、水およびn−へプタンを蒸留により留去し、乾燥することにより吸水性樹脂135gを得た。
得られた吸水性樹脂は、中位粒子径68μm、生理食塩水吸水能51g/g、残存モノマー含量210ppm、水溶解分10.4質量%であった。
【0052】
実施例4
実施例3において、n−へプタンの使用量を1600gに変更した以外は、実施例3と同様の操作を行った。この時の、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液と、炭化水素溶媒との質量比(W/O比)は、1.46であった。
重合終了後、マイクロ波反応装置よりフラスコを取り出し、水およびn−へプタンを蒸留により留去し、乾燥することにより吸水性樹脂178gを得た。
得られた吸水性樹脂は、中位粒子径73μm、生理食塩水吸水能52g/g、残存モノマー含量220ppm、水溶解分10.9質量%であった。
【0053】
【表1】
【0054】
比較例1
実施例1において、マイクロ波反応装置の代わりにウォーターバスにより加熱することによりフラスコ内の逆相懸濁液を昇温した。逆相懸濁液が70℃に達すると急激に重合が起こり、水相部がゲル状の塊状となり、粒子状の吸水性樹脂は得られなかった。
【0055】
比較例2
比較例1において、n−へプタンの使用量を160gに変更した以外は比較例1と同様の操作を行った。この時の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液と、炭化水素溶媒との質量比(W/O比)は、1.46であった。
逆相懸濁液の温度が70℃に達すると急激に重合が起こり、水相部がゲル状の塊状となり、粒子状の吸水性樹脂は得られなかった。