特許第5956817号(P5956817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956817
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】磁場計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20160714BHJP
   H01L 43/06 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   G01R33/06 H
   H01L43/06 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-98992(P2012-98992)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-228222(P2013-228222A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】角田 勝巳
【審査官】 西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−071381(JP,A)
【文献】 特開平09−045974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/07
H01L 43/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形形状のシリコン基板と、該シリコン基板の面上に形成され、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる第1の端子対及び第2の端子対を有し、かつ、前記第1の端子対の軸及び前記第2の端子対の軸がお互いに直交する少なくとも1つのホール素子と、前記シリコン基板の面上に設けられた磁気収束板とを備えた磁場計測装置において、
前記シリコン基板の長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であり、
前記シリコン基板及び前記磁気収束板を平面視したときに、前記ホール素子の前記第1の端子対の軸が、前記ホール素子の中心を円中心とする前記磁気収束板の外縁に接する最小半径円と前記磁気収束板の外縁との接点の前記磁気収束板の前記外縁上における接線方向に平行であり、かつ、
前記第1の端子対の軸が、前記シリコン基板の長手方向又は短手方向と45度の角度をなすように、前記ホール素子が前記シリコン基板の面上に形成され、
前記ホール素子に発生するオフセット電圧が、
Voffset=r0・(πL−πT)・(σx−σy)・I/2
の関係にあることに着目し(なお、Iはホール素子に流れる電流、r0は応力がかからないときのピエゾ抵抗値、πLは長手方向のピエゾ抵抗係数、πTは短手方向のピエゾ抵抗係数、σx及びσyは、一方がピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力であり、他方はピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力である。)、
前記ホール素子が、前記ピエゾ抵抗のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、前記端子対間のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と短手方向のピエゾ抵抗係数の差が小さくなるように、配置されているとともに、前記磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、ピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力とピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力の差が小さくなるように、前記磁気収束板の縁に平行に配置されていることを特徴とする磁場計測装置。
【請求項2】
矩形形状のシリコン基板と、該シリコン基板の面上に形成され、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる第1の端子対及び第2の端子対を有し、かつ、前記第1の端子対の軸及び前記第2の端子対の軸がお互いに直交する少なくとも1つのホール素子と、前記シリコン基板の面上に設けられた磁気収束板とを備えた磁場計測装置において、
前記シリコン基板の長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であり、
前記シリコン基板及び前記磁気収束板を平面視したときに、前記ホール素子の前記第1の端子対の軸が、前記ホール素子の中心を円中心とする前記磁気収束板の外縁に接する最小半径円と前記磁気収束板の外縁との接点の前記磁気収束板の前記外縁上における接線方向に平行であり、かつ、
前記第1の端子対の軸が、前記シリコン基板の長手方向又は短手方向と45度の角度をなすように、前記ホール素子が前記シリコン基板の面上に形成され、
演算処理によって前記ホール素子の出力を前記シリコン基板の長手方向もしくは、短手方向に平行な方向を基準とした出力に変換することを特徴とする磁場計測装置。
【請求項3】
前記磁気収束板が、前記シリコン基板及び前記磁気収束板を平面視したときに、前記第2の端子対の軸を対称軸として線対称な形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁場計測装置。
【請求項4】
前記磁気収束板が、円形状、多角形形状、楕円形状、半円形状の何れかであることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の磁場計測装置。
【請求項5】
手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であるシリコン基板と、該シリコン基板上に設けられたホール素子と、該ホール素子が端部に配置されるように、該ホール素子上に設けられた磁気収束板とを備えた磁場計測装置において、
前記ホール素子が、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる一方の端子対と他方の端子対とを有し、
前記ホール素子に発生するオフセット電圧が、
Voffset=r0・(πL−πT)・(σx−σy)・I/2
の関係にあることに着目し(なお、Iはホール素子に流れる電流、r0は応力がかからないときのピエゾ抵抗値、πLは長手方向のピエゾ抵抗係数、πTは短手方向のピエゾ抵抗係数、σx及びσyは、一方がピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力であり、他方はピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力である。)、
前記ホール素子が、前記ピエゾ抵抗のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、前記端子対間のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と短手方向のピエゾ抵抗係数の差が小さくなるように、配置されているとともに、前記磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、ピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力とピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力の差が小さくなるように、前記磁気収束板の縁に平行に配置されていることを特徴とする磁場計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気収束板を有する磁場計測装置に関し、より詳細には、ホール素子と基板と磁気収束板との位置関係を考慮することでオフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、磁場計測装置として、ホール素子の素子オフセット電圧による影響を低減し、かつ、増幅器において生じる入力オフセット電圧による影響をも低減し得るような磁気センサは知られている。
磁界の強さに応じた正確な比較結果を得るためには、増幅器から出力される信号に含まれるオフセット信号成分を抑制して、増幅器から出力される信号のばらつきを小さく抑える必要がある。そのオフセット信号成分が生じる主要な要因は、ホール素子の出力電圧に含まれるオフセット信号成分(素子オフセット電圧)と、増幅器の入力端子において存在するオフセット信号成分(入力オフセット電圧)である。素子オフセット電圧は、主に、ホール素子本体がパッケージから受ける応力などによって発生する。また、入力オフセット電圧は、主に、増幅器の入力回路を構成する素子の特性のばらつきなどによって発生する。
【0003】
図1は、オフセット電圧による影響を低減するようにした従来の磁気センサを示す回路図である。磁気センサに用いられるホール素子は、4つの端子A,C,B,Dに関して幾何学的に等価な形状の板状に形成されている。ここで、幾何学的に等価な形状とは、四角形のホール素子1のように、4つの端子A−C,B−Dを90度回転させた状態(A−Cが、B−Dに一致するように回転した状態)での形状とが同一であることを意味している。このようなホール素子1の端子A−C間に電源電圧を印加したときに端子B−D間に生じる電圧と、端子B−D間に電源電圧を印加したときに端子A−C間に生じる電圧とでは、磁界の強さに応じた有効信号成分は同相で、素子オフセット電圧は逆相となる。
【0004】
まず、第1のタイミングでは、スイッチ回路2を介して、ホール素子1の端子A−C間に電源電圧が印加されるとともに、端子B−D間の電圧が電圧増幅器3に入力される。そこで、電圧増幅器3からは、端子B−D間の電圧と電圧増幅器3の入力オフセット電圧との和に比例した電圧V1が出力される。また、この第1のタイミングでは、スイッチ5が閉じることにより、キャパシタ4がその電圧V1に充電される。
【0005】
次に、第2のタイミングでは、スイッチ回路2を介して、ホール素子1の端子B−D間に電源電圧が印加されるとともに、第1のタイミングとは逆極性となるように端子C−A間の電圧が電圧増幅器3に入力される。そこで、電圧増幅器3からは、端子C−A間の電圧と電圧増幅器3の入力オフセット電圧との和に比例した電圧V2が出力される。
入力オフセット電圧の影響は、入力電圧の極性に係らず、第1のタイミングと同じなので、電圧増幅器3の出力電圧V2は、第1のタイミングとは逆極性の端子C−A間の電圧と入力オフセット電圧との和に比例した電圧となる。
【0006】
また、この第2のタイミングでは、スイッチ5が開き、出力端子6−7の間で、電圧増幅器3の反転出力端子3a及び非反転出力端子3bとキャパシタ4とが直列に接続された状態となる。このとき、キャパシタ4の充電電圧は、第1のタイミングでの電圧増幅器3の出力電圧V1に保持されたまま変化しない。出力端子6−7間の電圧(磁界センサの出力電圧)Vは、電圧増幅器3の反転出力端子3aを基準としたときの非反転出力端子3bの電圧V2と、キャパシタ4の端子4bを基準としたときの端子4aの電圧−V1との和、すなわち、電圧V2から電圧V1を減じたものとなる。したがって、入力オフセット電圧の影響を相殺した電圧Vが磁界センサの出力電圧として得られる。
【0007】
また、例えば、特許文献1には、磁気収束板の位置ずれなどの影響による磁気センサの感度特性のばらつきの問題を解決した高精度で安定的な磁気センサが提案されている。この特許文献1のものは、磁気収束板と感磁部との位置関係に着目したもので、特に、磁気収束板の形状を円形にすることで応力あるいは熱応力による感度やオフセットのドリフトを低減させるようにしたものである。また、例えば、特許文献2には、磁気収束板を有する磁気センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−47708号公報
【特許文献2】米国特許6545462号明細書(B2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、ホール素子のオフセットを低減するために各種の工夫がなされているが、従来技術では、磁気収束板がホール素子に与える応力に対して大きなオフセット電圧が生じてしまうという問題があった。また、磁気収束板からの応力によるオフセット電圧への影響が小さくなるようなホールの配置ではなかったため、オフセットが大きく生じていた。
【0010】
また、上述した特許文献1には、オフセット電圧による影響を低減するようにした磁気センサについては開示されているものの、上述した本発明のように、ピエゾ抵抗係数と応力とを勘案した構成になっていない。また、上述した各特許文献2についても同様である。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係を考慮することでオフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、矩形形状のシリコン基板と、該シリコン基板の面上に形成され、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる第1の端子対及び第2の端子対を有し、かつ、前記第1の端子対の軸及び前記第2の端子対の軸がお互いに直交する少なくとも1つのホール素子と、前記シリコン基板の面上に設けられた磁気収束板とを備えた磁場計測装置において、前記シリコン基板の長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であり、前記シリコン基板及び前記磁気収束板を平面視したときに、前記ホール素子の前記第1の端子対の軸が、前記ホール素子の中心を円中心とする前記磁気収束板の外縁に接する最小半径円と前記磁気収束板の外縁との接点の前記磁気収束板の前記外縁上における接線方向に平行であり、かつ、前記第1の端子対の軸が、前記シリコン基板の長手方向又は短手方向と45度の角度をなすように、前記ホール素子が前記シリコン基板の面上に形成され、前記ホール素子に発生するオフセット電圧が、Voffset=r0・(πL−πT)・(σx−σy)・I/2の関係にあることに着目し(なお、Iはホール素子に流れる電流、r0は応力がかからないときのピエゾ抵抗値、πLは長手方向のピエゾ抵抗係数、πTは短手方向のピエゾ抵抗係数、σx及びσyは、一方がピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力であり、他方はピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力である。)、前記ホール素子が、前記ピエゾ抵抗のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、前記端子対間のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と短手方向のピエゾ抵抗係数の差が小さくなるように、配置されているとともに、前記磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、ピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力とピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力の差が小さくなるように、前記磁気収束板の縁に平行に配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、矩形形状のシリコン基板と、該シリコン基板の面上に形成され、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる第1の端子対及び第2の端子対を有し、かつ、前記第1の端子対の軸及び前記第2の端子対の軸がお互いに直交する少なくとも1つのホール素子と、前記シリコン基板の面上に設けられた磁気収束板とを備えた磁場計測装置において、前記シリコン基板の長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であり、前記シリコン基板及び前記磁気収束板を平面視したときに、前記ホール素子の前記第1の端子対の軸が、前記ホール素子の中心を円中心とする前記磁気収束板の外縁に接する最小半径円と前記磁気収束板の外縁との接点の前記磁気収束板の前記外縁上における接線方向に平行であり、かつ、前記第1の端子対の軸が、前記シリコン基板の長手方向又は短手方向と45度の角度をなすように、前記ホール素子が前記シリコン基板の面上に形成され、演算処理によって前記ホール素子の出力を前記シリコン基板の長手方向もしくは、短手方向に平行な方向を基準とした出力に変換することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記磁気収束板が、前記シリコン基板及び前記磁気収束板を平面視したときに、前記第2の端子対の軸を対称軸として線対称な形状であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記磁気収束板が、円形状、多角形形状、楕円形状、半円形状の何れかであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であるシリコン基板と、該シリコン基板上に設けられたホール素子と、該ホール素子が端部に配置されるように、該ホール素子上に設けられた磁気収束板とを備えた磁場計測装置において、前記ホール素子が、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる一方の端子対と他方の端子対とを有し、前記ホール素子に発生するオフセット電圧が、Voffset=r0・(πL−πT)・(σx−σy)・I/2の関係にあることに着目し(なお、Iはホール素子に流れる電流、r0は応力がかからないときのピエゾ抵抗値、πLは長手方向のピエゾ抵抗係数、πTは短手方向のピエゾ抵抗係数、σx及びσyは、一方がピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力であり、他方はピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力である。)、前記ホール素子が、前記ピエゾ抵抗のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、前記端子対間のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と短手方向のピエゾ抵抗係数の差が小さくなるように、配置されているとともに、前記磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、ピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力とピエゾ抵抗の短手方向にかかる応力の差が小さくなるように、前記磁気収束板の縁に平行に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係を考慮することで、ピエゾ抵抗素子のホイートストンブリッジ回路でモデル化されるホール素子のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と、ピエゾ抵抗の短手方向のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧及びホール素子が磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】オフセット電圧による影響を低減するようにした従来の磁界センサを示す回路図である。
図2】(a),(b)は、本発明に係る磁場計測装置のホール素子を構成するピエゾ抵抗のブリッジ回路を示す図である。
図3】Si基板の結晶方位<110>に対するピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と、長手方向に垂直な方向(短手方向)のピエゾ抵抗係数との関係を示す図である。
図4】本発明に係る磁場計測装置のホール素子における応力とオフセットの関係を説明するためのブリッジ回路を示す図である。
図5】(a),(b)は、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を平行又は垂直に配置した時と、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を45度傾けて配置した時の一方の応力と他方の応力との温度特性をシミュレーションした結果を示す図である。
図6】本発明に係る磁場計測装置のホール素子における応力とオフセットの関係を説明するためのブリッジ回路を示す図である。
図7】本発明に係る磁場計測装置の実施例1を説明するための構成図である。
図8図7における接線方向についての説明及び実施例1の変更例を示す構成図である。
図9図7に示す実施例1の更なる変更例を示す構成図である。
図10図7に示す実施例1の更に他の変更例を示す構成図である。
図11】演算処理によって、ホール素子の出力をシリコン基板の辺に平行な方向を基準とした出力に変換することを説明するための図である。
図12】本発明に係る磁場計測装置の実施例2を説明するための構成図である。
図13図12における接線方向についての説明のための図である。
図14】本発明に係る磁場計測装置の実施例3を説明するための構成図である。
図15図14における接線方向についての説明のための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。尚、本発明の実施形態では、Si基板の長手方向をX軸方向、Si基板の短手方向をY軸方向とする。
図2(a),(b)は、本発明に係る磁場計測装置のホール素子を構成するピエゾ抵抗のブリッジ回路を示す図で、図2(a)はブリッジ回路、図2(b)はホール素子の端子形状を示している。図中符号Aはホール素子の励起電流が端子から感磁部に流れ入る点、Bはホール素子の励起電流が感磁部から端子に流れ入る点を示している。端子対の軸は、AとBとを結んだ直線である。
【0018】
図2(a)に示したホール素子10は、ピエゾ抵抗R1乃至R4で構成するブリッジ回路でモデル化される。ピエゾ抵抗R1乃至R4のピエゾ抵抗係数πは、ピエゾ抵抗R1乃至R4の長手方向のピエゾ抵抗係数πと長手方向に垂直な方向(短手方向)のピエゾ抵抗係数πがあり、結晶方位によって図3のような変化を見せる。
図3は、Si基板の結晶方位<110>に対するピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と、長手方向に垂直な方向(短手方向)のピエゾ抵抗係数との関係を示す図である。ピエゾ抵抗R1乃至R4の長手方向のピエゾ抵抗係数πと短手方向のピエゾ抵抗係数πは、Si基板の結晶方位<110>からの角度が0度(又は90度)傾けた方向において、ピエゾ抵抗係数πとピエゾ抵抗係数πとの差は小さくなり、45度傾けた方向において、ピエゾ抵抗係数πとピエゾ抵抗係数πとの差は大きくなる。
【0019】
したがって、ホール素子を構成するピエゾ抵抗のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧を低減するためには、ピエゾ抵抗係数πとピエゾ抵抗係数πとの差が小さくなるように、ホール素子を構成するピエゾ抵抗の方向をSi基板の結晶方位<110>の方向に選ぶとよく、ピエゾ抵抗の方向をSi基板の結晶方位<110>の方向に選ぶためには、ホール素子の端子の方向をSi基板の結晶方位<110>から45度傾けた方向に選べばよい。
【0020】
ピエゾ抵抗R1乃至R4は、ピエゾ抵抗係数π及びπによって変化するとともに、ピエゾ抵抗R1乃至R4の長手方向に対して平行な応力σと、垂直な応力σによって(式1)のように変化する。
R=R0×(1+π・σ+π・σ)・・・(1)
なお、R0は応力がかからないときのピエゾ抵抗値、πは長手方向のピエゾ抵抗係数、πは短手方向のピエゾ抵抗係数、σはピエゾ抵抗が受ける長手方向の応力、σはピエゾ抵抗が受ける短手方向の応力を示している。
【0021】
図4は、本発明に係る磁場計測装置のホール素子における応力とオフセットの関係を説明するためのブリッジ回路を示す図である。図4のようにホール素子10の各ピエゾ抵抗R1乃至R4に応力がかかると、このピエゾ抵抗R1乃至R4は、それぞれ以下の(式2)のように変化し、電流Iを流すと(式3)のようにオフセットを生じる。
R1=R3=R0×(1+π・σ1+π・σ2)
R2=R4=R0×(1+π・σ2+π・σ1)・・・(2)
Voffset=(R2−R3)・I/2
=R0・(π−π)・(σ2−σ1)・I/2・・・(3)
なお、σ1は一方の対向するピエゾ抵抗R1とR3の長手方向にかかる応力(R2とR4の短手方向にかかる応力)、σ2は他方の対向するピエゾ抵抗R2とR4の長手方向にかかる応力(R1とR3の短手方向にかかる応力)を示している。
【0022】
(式3)よりπとπの差を小さくすることで、オフセット低減が図れることが分かるが、それは図3よりピエゾ抵抗の長手方向がSi基板の結晶方位<110>方向となる。したがって、ホール素子の受ける応力を低減するためには、ホール素子を構成するピエゾ抵抗の長手方向をSi基板の結晶方位<110>方向に配置することにより実現できることが理解できる。つまり、このことは、ホール素子の端子をSi基板の長手方向及び短手方向に平行なXY軸方向に対して45度の角度となるように配置すればよく、ホール素子の端子をSi基板の結晶方位<110>に対して45度の角度を持って配置すればよいことになる。
【0023】
また、従来からホール素子と磁気収束板を組み合わせたホールセンサがあったが、ホール素子と磁気収束板の熱膨張係数の違いによってホール素子に応力が発生してオフセット発生の原因となっていた。
本発明は、磁気収束板に対して、ホール素子の向きを最適な向きとすることで(式3)の応力の差(σ2−σ1)を小さくすることができることをシミュレーションから明らかにした。これによって、(式3)よりオフセットを低減することができる。
【0024】
図5(a),(b)は、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を平行に配置した時と、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を45度傾けて配置した時の一方の応力σ1と他方の応力σ2との温度特性をシミュレーションした結果を示す図で、図5(a)は、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を平行に配置した時の一方の応力σ1と他方の応力σ2との温度特性を示し、図5(b)は、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を45度傾けて配置した時の一方の応力σ1と他方の応力σ2との温度特性を示している。つまり、(式3)よりオフセットを低減するためには、応力の差(σ2−σ1)を小さくすることであり、そのためには、図5(a)から分かるように、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を平行に配置することである。
【0025】
このように、本発明の目的を達成させるためには、1)ホール素子を構成するピエゾ抵抗のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、ピエゾ抵抗係数πとピエゾ抵抗係数πとの差が小さくなるように、ホール素子を構成するピエゾ抵抗の方向をSi基板の結晶方位<110>の方向となるようにホール素子を配置する、つまり、ホール素子の端子の方向がSi基板の結晶方位<110>から45度傾けた方向となるようにホール素子を配置し、かつ、2)ホール素子が磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、一方の対向するピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力σ1と他方の対向するピエゾ抵抗の長手方向にかかる応力σ2の差が小さくなるように、磁気収束板の縁に対してホール素子の端子対を平行に配置することが必要である。
【0026】
以下に、本発明に係る磁場計測装置の各実施例について説明する。まず、ホール素子を構成するピエゾ抵抗とホール素子の受ける応力の関係について説明する。
図6は、本発明に係る磁場計測装置のホール素子における応力とオフセットの関係を説明するためのブリッジ回路を示す図である。図4におけるブリッジ回路を45度傾けたものである。図6のようにホール素子20の各ピエゾ抵抗r1乃至r4に応力がかかると、このピエゾ抵抗r1乃至r4は、それぞれ(式4)のように変化し、電流Iを流すと(式5)のようにオフセット電圧を生じる。
r1=r3=r0×(1+π・σy+π・σx)
r2=r4=r0×(1+π・σx+π・σy)・・・(4)
Voffset=(r2−r3)・I/2
=r0・(π−π)・(σx−σy)・I/2・・・(5)
【0027】
なお、r0は応力がかからないときのピエゾ抵抗値、πは長手方向のピエゾ抵抗係数、πは短手方向のピエゾ抵抗係数であることは、図4の説明と同様である。σxは一方の対向するピエゾ抵抗r1及びr3の短手方向(r2及びr4の長手方向)にかかる応力、σyは他方の対向するピエゾ抵抗r2及びr4の短手方向(r1及びr3の長手方向)にかかる応力を示している。また、符号21は第1の端子対、21aは第1の端子対の軸、22は第2の端子対、22aは第2の端子対の軸を示している。
【実施例1】
【0028】
図7は、本発明に係る磁場計測装置の実施例1を説明するための構成図である。図中符号31はシリコン(Si)基板、32は磁気収束板を示している。なお、図6に示したホール素子が45度回転されて磁気収束板の端部に配置されている。また、本実施例1では、ホール素子の略中心部まで磁気収束板が重なっている。
本発明の実施例1に係る磁場計測装置は、略矩形形状のシリコン基板31と、このシリコン基板31の面上に形成され、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる第1の端子対21及び第2の端子対22を有し、かつ、第1の端子対の軸21a及び第2の端子対の軸22aがお互いに直交する少なくとも1つのホール素子20と、シリコン基板31の面上に設けられた円形状の磁気収束板32とを備えている。
【0029】
また、シリコン基板31の長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であり、シリコン基板31及び磁気収束板32を平面視したときに、ホール素子20の第1の端子対の軸21aが、ホール素子20の中心Mを円中心とする磁気収束板32の外縁に接する最小半径円と磁気収束板32の外縁との接点の磁気収束板32の外縁上における接線方向Nに略平行であり、かつ、第1の端子対の軸21aが、シリコン基板31の長手方向又は短手方向と45度の角度をなすように、ホール素子20がシリコン基板31の面上に形成されている。
【0030】
磁気収束板32の形状に関しては特に限定はないが、シリコン基板31及び磁気収束板32を平面視したときに、第2の端子対の軸22aを対称軸として線対称な形状であると、応力σxと応力σyの差がより小さくなり好ましい。本実施例では、磁気収束板32は、シリコン基板31及び磁気収束板32を平面視したときに、第2の端子対の軸22aを対称軸として線対称な形状であるとして説明する。
【0031】
本発明の実施例1に係る磁場計測装置は、所定の結晶方位を有する基板31と、この基板31上に設けられたホール素子20と、このホール素子20が端部に配置されるように、ホール素子20上に設けられた磁気増幅機能を有する磁気収束板32とを備えており、ホール素子20は、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる一方の端子対21と他方の端子対22とを有している。これらの両端子間に重ねて図示されているピエゾ抵抗r1乃至r4はホール素子を等価回路でモデル化したものである。
【0032】
また、ホール素子20は、ピエゾ抵抗r1乃至r4のピエゾ抵抗係数π,πの相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、端子対間のピエゾ抵抗r1乃至r4の長手方向のピエゾ抵抗係数πと短手方向のピエゾ抵抗係数πの差が小さくなるように、ホール素子の端子対の向きが基板31の所定の結晶方位からの角度が45度傾けた方向に配置されているとともに、磁気収束板32から受ける応力σx,σyの相違によって発生するオフセット電圧を低減するために、応力σxと応力σyとの差が小さくなるように、磁気収束板32の縁に平行方向に配置されている。つまり、このことは、ホール素子の端子をSi基板の長手方向及び短手方向に平行なXY軸方向に対して45度の角度となるように配置すればよく、ホール素子の端子をSi基板の結晶方位<110>に対して45度の角度を持って配置すればよいことになる。
【0033】
図8は、図7における接線方向についての説明及び実施例1の変更例を示す構成図で、ホール素子20の第1の端子対の軸21aが、ホール素子20の中心Mを円中心とする磁気収束板32の外縁に接する最小半径円と磁気収束板32の外縁との接点の磁気収束板32の外縁上における接線方向Nに略平行であることについての他の例を説明するための図である。図8においては、ホール素子と磁気収束板とは一部重なっている。
【0034】
図中符号Pは最小半径円と磁気収束板32の外縁との接点、Qはホール素子20の中心Mを円中心とする磁気収束板32の外縁に接する最小半径円を示している。
このような構成により、ホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係を考慮することで、ホール素子を構成するピエゾ抵抗のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧及びホール素子が磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を実現することができる。
【0035】
図9は、図7に示す実施例1の更なる変更例を示す構成図で、ホール素子が磁気収束板に重なっていない例を示している。図8においては、ホール素子20の一部が磁気収束板32に重なっているが、図9においては、ホール素子20は磁気収束板32と重なっていない場合である。
このような場合でも、図7に示した本実施例1におけるホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係が満たされているので、オフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を実現することができる。
【0036】
図10は、図7に示す実施例1の更に他の変更例を示す構成図で、図9においては、ホール素子20は磁気収束板32に重なっていないが、図10においては、ホール素子20は磁気収束板32の内側に配置されている。つまり、ホール素子20の中心Mを円中心とする磁気収束板32の外縁に接する最小半径円Qが、円形状の磁気収束板32の外縁に内接していて、ホール素子20が完全に磁気収束板32に重なっている。
【0037】
このような場合でも、図7に示した本実施例1におけるホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係が満たされているので、オフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を実現することができる。
このような構成により、ホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係を考慮することで、ピエゾ抵抗素子のホイートストンブリッジ回路でモデル化されるホール素子のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と、ピエゾ抵抗の短手方向のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧及びホール素子が磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を実現することができる。
【0038】
図11は、演算処理によって、ホール素子の出力をシリコン基板の辺に平行な方向を基準とした出力に変換することを説明するための図で、本発明に係る磁場計測装置を用いた磁場方向計測装置を説明するための図である。
シリコン基板31の面上の中央部には、円板状の磁気収束板100が設置されている。磁気収束板100の円周上には、X’軸用ホール素子111a及び111b、Y’軸用ホール素子113a及び113bが、それぞれ円中心点119に対して点対称の位置に設置されている。すなわち、X’軸用ホール素子111同士及びY’軸用ホール素子113同士を結ぶ2つの線分は、円中心点119で交わる。さらに、円中心点119からX’軸用ホール素子111aまでの距離と円中心点119からX’軸用ホール素子111bまでの距離は等しく、円中心点119からY’軸用ホール素子113aまでの距離と円中心点119からY’軸用ホール素子113bまでの距離は等しい。X’軸用ホール素子111bから111aの向き及びY’軸用ホール素子113bから113aの向きを、それぞれX’軸の正方向及びY’軸の正方向とする。
【0039】
次に、回転角度の検出方法を説明する。図11のように磁場(図11の矢印点線)が印加された際、各ホール素子111a、111b、113a、113bからの出力差動電圧V(X’+)、V(X’−)、V(Y’+)、V(Y’−)は、次式(6)のような正弦波電圧及び余弦波電圧である。
V(X’+)= A×cosθ1
V(X’−)=−A×cosθ1
V(Y’+)= A×sinθ1
V(Y’−)=−A×sinθ1 ・・・(6)
【0040】
ここで、Aは比例定数、θ1は図11におけるX’軸方向と磁場(図11の矢印点線)の方向との時計回りのなす角度(磁場印加角度)である。 これらの出力電圧を次式(7)のように差分をとることにより、X’軸方向、Y’軸方向の出力電圧Vx’、Vy’を導出する。
Vx’=V1(X’+)−V2(X’−)=2A×cosθ1
Vy’=V1(Y’+)−V2(Y’−)=2A×sinθ1 ・・・(7)
【0041】
ここで作り出される出力電圧Vx’、Vy’を用いて相対角度を算出する。
信号処理としては、次式(8)のように除算し、アークタンジェントをとることにより磁場印加角度θ1を算出できる。
tanθ1=Vy’/Vx’
θ1=arctan(Vy’/Vx’) ・・・(8)
本発明に係る磁場計測装置を用いた磁場方向計測装置は算出した磁場印加角度θ1をSi基板の長手方向(結晶方位<110>に等価な方向)を基準とした角度に変換する。即ち、Si基板の長手方向をX軸方向、X軸方向とX’軸方向とのなす角度をθ2とした時に、本発明に係る磁場方向計測装置は磁場印加角度をθ1+θ2であると算出し、Si基板の長手方向を基準とした角度に変換して算出する。磁場印加角度の変換方法は特に限定はないが演算処理(ソフト変換)で行うことが好ましい。
【0042】
演算処理(ソフト変換)前で角度θ1であったものをソフト変換により変換後の角度θ1+θ2となるようにしておけば、つまり、磁場印加角度の基準をソフトでSi基板の長手方向(結晶方位<110>に等価な方向)に変換するようにしておけば、ユーザは使いやすくなる。なお、本実施例では、Si基板の長手方向をX軸方向としたが、短手方向をX軸方向としてもよい。
【実施例2】
【0043】
図12は、本発明に係る磁場計測装置の実施例2を説明するための構成図で、図13は、図12における接線方向についての説明のための図である。図中符号41はシリコン(Si)基板、42は磁気収束板を示している。なお、ホール素子の構成は、図7と同様である。上述した実施例1との相違は、本実施例2における磁気収束板が長方形である点である。
【0044】
本発明の実施例2に係る磁場計測装置は、略矩形形状のシリコン基板41と、このシリコン基板41の面上に形成され、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる第1の端子対21及び第2の端子対22を有し、かつ、第1の端子対の軸21a及び第2の端子対の軸22aがお互いに直交する少なくとも1つのホール素子20と、シリコン基板41の面上に設けられた略長方形の磁気収束板42とを備えている。
【0045】
また、シリコン基板41の長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であり、シリコン基板41及び磁気収束板42を平面視したときに、ホール素子20の第1の端子対の軸21aが、ホール素子20の中心Mを円中心とする磁気収束板42の外縁に接する最小半径円Qと磁気収束板42の外縁との接点Pの磁気収束板42の外縁上における接線方向Nに略平行であり、かつ、第1の端子対の軸21aが、シリコン基板41の長手方向又は短手方向と45度の角度をなすように、ホール素子20がシリコン基板41の面上に形成されている。
【0046】
なお、磁気収束板42の形状は正方形であってもかまわない。つまり、このことは、ホール素子の端子をSi基板の長手方向及び短手方向に平行なXY軸方向に対して45度の角度となるように配置すればよく、ホール素子の端子をSi基板の結晶方位<110>に対して45度の角度を持って配置すればよいことになる。
このような構成により、ホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係を考慮することで、ピエゾ抵抗素子のホイートストンブリッジ回路でモデル化されるホール素子のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と、ピエゾ抵抗の短手方向のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧及びホール素子が磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を実現することができる。
【実施例3】
【0047】
図14は、本発明に係る磁場計測装置の実施例3を説明するための構成図で、図15は、図14における接線方向についての説明のための図である。図中符号51はシリコン(Si)基板、52は磁気収束板を示している。なお、ホール素子の構成は、図7と同様である。上述した実施例1との相違は、本実施例3における磁気収束板が多角形形状である点である。
【0048】
本発明の実施例3に係る磁場計測装置は、略矩形形状のシリコン基板51と、このシリコン基板51の面上に形成され、互いに対向する位置に設けられた2つの端子からなる第1の端子対21及び第2の端子対22を有し、かつ、第1の端子対の軸21a及び第2の端子対の軸22aがお互いに直交する少なくとも1つのホール素子20と、シリコン基板51の面上に設けられた略多角形形状の磁気収束板52とを備えている。
【0049】
また、シリコン基板51の長手方向及び短手方向の結晶方位が<110>に等価な方向であり、シリコン基板51及び磁気収束板52を平面視したときに、ホール素子20の第1の端子対の軸21aが、ホール素子20の中心Mを円中心とする磁気収束板52の外縁に接する最小半径円Qと磁気収束板52の外縁との接点Pの磁気収束板52の外縁上における接線方向Nに略平行であり、かつ、第1の端子対の軸21aが、シリコン基板51の長手方向又は短手方向と45度の角度をなすように、ホール素子20がシリコン基板51の面上に形成されている。
【0050】
つまり、このことは、ホール素子の端子をSi基板の長手方向及び短手方向に平行なXY軸方向に対して45度の角度となるように配置すればよく、ホール素子の端子をSi基板の結晶方位<110>に対して45度の角度を持って配置すればよいことになる。
このような構成により、ホール素子と基板及び磁気収束板との位置関係を考慮することで、ピエゾ抵抗素子のホイートストンブリッジ回路でモデル化されるホール素子のピエゾ抵抗の長手方向のピエゾ抵抗係数と、ピエゾ抵抗の短手方向のピエゾ抵抗係数の相違によって発生するオフセット電圧及びホール素子が磁気収束板から受ける応力の相違によって発生するオフセット電圧を低減するようにした磁場計測装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,10 ホール素子
2 スイッチ回路
3 電圧増幅器
4 キャパシタ
5 スイッチ
21 第1の端子対
21a 第1の端子対の軸
22 第2の端子対
22a 第2の端子対の軸
31,41,51 シリコン(Si)基板
32,42,52 磁気収束板
100 磁気収束板
111(111a,111b) X軸用ホール素子
113(113a,113b) Y軸用ホール素子
119 円中心点
A ホール素子の励起電流が端子から感磁部に流れ入る点
B ホール素子の励起電流が感磁部から端子に流れ入る点
M ホール素子の中心
N 接線方向
P 最小半径円と磁気収束板の外縁との接点
Q ホール素子の中心を円中心とする磁気収束板の外縁に接する最小半径円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15