(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄工程は、前記切断装置から前記帯鋸を取り外した後、前記帯鋸を前記洗浄液中に浸漬することで、前記帯鋸の刃を洗浄する工程である、請求項1記載の洗浄方法。
前記洗浄工程は、前記切断装置に前記帯鋸を装着したまま、前記帯鋸の刃を前記洗浄液に接触させることで、前記帯鋸の刃を洗浄する工程である、請求項1記載の洗浄方法。
前記洗浄工程において、前記帯鋸の一部を覆うカバー部材と当該カバー部材に取り付けた洗浄液噴射ノズルとを備えた清掃装置を用い、前記帯鋸の刃に前記洗浄液を噴射することで前記帯鋸の刃を洗浄する、請求項3記載の洗浄方法。
前記洗浄工程は、前記切断装置内に前記洗浄液を充填した洗浄槽を設置し、前記帯鋸を前記切断装置に装着したまま駆動させ、前記洗浄液に前記帯鋸の刃を接触させることで、前記帯鋸の刃を洗浄する工程である、請求項1記載の洗浄方法。
前記除去工程は、前記帯鋸に付着した前記洗浄液を常温又はそれよりも高い温度で乾燥させることで除去する工程である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
まず、ハニカム構造体について説明する。
図1は、ハニカム構造体の斜視図である。
図2は、
図1中のII−II線に沿う断面図である。
図1及び2に示されるハニカム構造体100は、多孔質(例えば、平均細孔直径20μm以下)のセラミックス材料等からなる円柱状部材であり、複数のセル110を有している。セル110のそれぞれは、ハニカム構造体100の端面100aから端面100bにかけて、ハニカム構造体100の軸線方向に沿って形成された孔である。セル110同士の間には、多孔質の隔壁112が形成されている。
図2に示されるように、端面100a側では、複数のセル110のうち所定のセル110aが封口材114によって封口されている。端面100b側では、セル110のうちセル110a以外のセル110bが封口材114によって封口されている。なお、セル110の断面形状は、正方形には限定されず、矩形、六角形、三角形等の多角形や、円形、楕円形等であってもよい。
【0019】
ハニカム構造体100は、内燃機関から排出されるガスGを浄化するフィルタとして用いられる。具体的には、端面100aから端面100bにガスGが通される。ガスGは、端面100aでセル110b内に導入され、隔壁112を透過してセル110aに進入し、端面100bでセル110aから排出される。この過程で、ガスGに含まれていた粒子(すす等)が隔壁112によって補足されるため、ガスGが浄化される。
【0020】
ハニカム構造体100は、グリーンハニカム成形体Pを焼成することで製造される。グリーンハニカム成形体Pは、セラミックス原料粉末を含む円柱状の成形体である。グリーンハニカム成形体Pには、その軸線L1に沿って複数のセル110が形成されている。グリーンハニカム成形体Pは、軸線L1と交差する面M1,M2で切断された後に焼成され、面M1がハニカム構造体100の端面100aとなり、面M2がハニカム構造体100の端面100bとなる。
【0021】
グリーンハニカム成形体Pに含まれるセラミックス原料粉末は、焼成することによりセラミックスとなるものである。セラミックスとしては、例えば、コージェライト系セラミックス、チタン酸アルミニウム系セラミックス等が挙げられる。セラミックスは、チタン酸アルミニウム系セラミックスであることが好ましい。本発明の洗浄方法は、チタン酸アルミニウム系セラミックスの原料粉末を含むグリーンハニカム成形体Pの切断に用いた帯鋸に対して、特に優れた洗浄効果を発揮する。なお、チタン酸アルミニウム系セラミックスは、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことが好ましい。
【0022】
グリーンハニカム成形体Pは、セラミックス原料粉末である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含むことができる。
【0023】
例えば、チタン酸アルミニウム系セラミックスのグリーンハニカム成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末、及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0024】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。有機バインダの含有量は、無機化合物源粉末100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、6質量部であることがさらに好ましい。また、有機バインダの含有量は、無機化合物源粉末100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。
【0025】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒等が挙げられる。
【0026】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物源粉末100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましい。
【0027】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物源粉末100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0028】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物源粉末100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、2〜8質量部であることがより好ましい。
【0029】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。溶媒の使用量は、無機化合物源粉末100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましい。また、グリーンハニカム成形体P全体の質量に対する溶媒の質量の割合は特に限定されないが、10〜30質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。
【0030】
このようなグリーンハニカム成形体Pは例えば以下のようにして製造することができる。まず、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物とを用意する。そして、これらを混練機等により混合して原料混合物を得、得られた原料混合物を隔壁の形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出せばよい。押出機から押し出したグリーンハニカム成形体は、あらかじめ、ある程度の長さに粗切断してから、乾燥して十分に溶媒を除去しておくことが好ましい。
【0031】
続いて、グリーンハニカム成形体Pの切断装置について説明する。切断装置の説明において、「前後左右」とは、切断時のグリーンハニカム成形体Pの移動方向を前方向とした場合の方向を示すものとする。
【0032】
図3は、グリーンハニカム成形体の切断装置の一例を示す正面図である。
図4は、
図3中の切断装置の平面図、
図5は、
図3中の移動台の側面図、
図6は、
図3中の帯鋸の側面図である。
図3に示されるように、切断装置1は、搬送装置2と、切断ユニット3,4と、を備えている。
【0033】
搬送装置2は、テーブル5と、テーブル5を下方から支持すると共に、前後方向に沿って移動させるテーブル駆動装置6と、を有している。テーブル駆動装置6の上部には、前後方向に沿って延在する一対のレール7,7が設けられている。各レール7には、滑動部10が設置されている。滑動部10は、レール7に沿って滑動可能となっている。レール7,7の間には、前後方向に沿って延在するボールネジ8が設けられている。テーブル駆動装置6の上部の後側には、ボールネジ8を回転させるモータ等の動力源9が設けられており、ボールネジ8の後端部が動力源9に接続されている。
【0034】
テーブル5は、滑動部10,10の上に取り付けられており、滑動部10,10と共に前後方向に沿って移動可能となっている。テーブル5の下部には、ボールネジ8と螺合した移動ナット11が設けられている。移動ナット11は、ボールネジ8の回転に伴って前後に移動する。このため、ボールネジ8を回転させることで、移動ナット11と共にテーブル5を前後方向に沿って移動させることが可能となっている。
【0035】
図4に示されるように、テーブル5は、前後方向に長い長方形の平面形状を呈し、テーブル5の前側部分はテーブル駆動装置6よりも前側に張り出している。テーブル5には、前後方向に沿って上下に開口する2箇所の開口5a,5bが形成されている。開口5a,5bには、後述の刃部B1,B2が通される。
【0036】
テーブル5の上部のうち、開口5a,5bの間の部分には、テーブル5と共に前後に移動する複数の移動台12,12が設けられている。すなわち、搬送装置2は、前後方向に沿って移動する移動台12,12を有している。複数の移動台12,12は、前後方向に沿って並べられている。各移動台12の上部には、V字状の溝12aが左右方向に沿って形成されている。各移動台12の上には、軸線L1を左右方向に沿わせた状態でグリーンハニカム成形体Pが設置される。グリーンハニカム成形体Pの下側は溝12a内に落ち込み、グリーンハニカム成形体Pの外周面が溝12aの内面に接する。これにより、グリーンハニカム成形体Pが移動台12に対して位置決めされる(
図5参照)。
【0037】
移動台12には、左右方向に沿って並び、グリーンハニカム成形体Pを移動台に固定する2個の保持部A1が設けられている。すなわち、搬送装置2は、グリーンハニカム成形体Pを移動台12に固定する保持部A1を有している。各保持部A1は、溝12aの前後の部分で移動台12から上方に突出する一対の柱13,13と、一対の柱13,13の間に架け渡された保持板14と、を有している。
図5に示されるように、保持板14は、移動台12上に設置されたグリーンハニカム成形体Pを上方から押さえる。これにより、グリーンハニカム成形体Pが移動台12に固定される。
【0038】
図4に示されるように、テーブル5の上部のうち、各移動台12の左右の部分には、補助移動台30,31が設けられている。すなわち、搬送装置2は、補助移動台30,31を有している。補助移動台30,31と移動台12との間には、後述の刃部B1,B2との接触を避けるための隙間が形成されている。補助移動台30,31のそれぞれの上部には、溝12aと対応するように、V字状の溝30a,31aが左右方向に沿って形成されている。補助移動台30,31の上には、移動台12の上に設置されたグリーンハニカム成形体Pの両端部が設置される。グリーンハニカム成形体Pの両端部の下側は、溝30a,31a内に落ち込む。
【0039】
切断ユニット3,4は、テーブル駆動装置6の前方において、テーブル5の左右に配置されている。また、切断ユニット3,4は、前後方向において同じ位置に配置されている。
図3に示されるように、切断ユニット3は、テーブル5の左側に立設された支柱部15と、支柱部15の上部から右側に膨出した上側膨出部16と、支柱部15の下部から右側に膨出した下側膨出部17と、を有している。上側膨出部16は、テーブル5の開口5aの上方にかかり、下側膨出部17は、テーブル5の開口5aの下方にかかっている。
【0040】
上側膨出部16には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ18が内蔵され、下側膨出部17には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ19が内蔵されている。プーリ18の外周とプーリ19の外周とには、帯線からなる環状の帯鋸20が架け渡されている。
【0041】
図6(a)及び(b)に示されるように、帯鋸20の帯線の後側の縁(端面)には、砥粒を電着して形成された砥石状の刃20aが形成されている。砥粒としては、ダイヤモンド砥粒、cBN砥粒、アルミナジルコニア砥粒等が挙げられる。また、砥石状の刃20aが形成される帯鋸20の帯線の後側の縁の形状は、特に限定されず、鋸刃形状などであってもよい。
【0042】
帯鋸20には、プーリ18とプーリ19とを互いに遠ざけるようにして張力がかけられている。これにより、帯鋸20のうち、プーリ18とプーリ19との間に位置する一対の帯線部20b,20cは、上下方向に沿って直線状に延在している。左側の帯線部20bは、上側膨出部16と下側膨出部17との間に露出し、テーブル5の開口5aに通されている。
【0043】
切断ユニット3には、モータ等の動力源21が内蔵されている。動力源21は、プーリ18又はプーリ19を、前側から見て反時計回りに回転させる。動力源21がプーリ18又はプーリ19を回転させると、帯鋸20の帯線は反時計回りに駆動され、帯線部20bは連続的に下方に駆動される。このように、プーリ18,19及び動力源21は、帯鋸20を駆動する駆動装置E1を構成している。すなわち、切断ユニット3は、直線状の帯線部20b,20cを有する帯鋸20と、帯鋸20の駆動装置E1とを有している。
【0044】
切断ユニット4は、テーブル5の右側に立設された支柱部22と、支柱部22の上部から左側に膨出した上側膨出部23と、支柱部22の下部から左側に膨出した下側膨出部24と、を有している。上側膨出部23は、テーブル5の開口5bの上方にかかり、下側膨出部24は、テーブル5の開口5bの下方にかかっている。
【0045】
上側膨出部23には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ25が内蔵され、下側膨出部24には、前後方向に沿って延びる軸線回りに回転可能なプーリ26が内蔵されている。プーリ25とプーリ26とには、帯線からなる環状の帯鋸27が架けられている。
【0046】
図6(a)及び(b)に示されるように、帯鋸27の帯線の後側の縁(端面)には、砥粒を電着して形成された砥石状の刃27aが形成されている。砥粒としては、ダイヤモンド砥粒、cBN砥粒、アルミナジルコニア砥粒等が挙げられる。また、砥石状の刃27aが形成される帯鋸27の帯線の後側の縁の形状は、特に限定されず、鋸刃形状などであってもよい。
【0047】
帯鋸27には、プーリ25とプーリ26とを互いに遠ざけるようにして張力がかけられている。これにより、帯鋸27のうち、プーリ25とプーリ26との間に位置する一対の帯線部27b,27cは、上下に直線状に延在している。右側の帯線部27bは、上側膨出部23と下側膨出部24との間に露出し、テーブル5の開口5bに通されている。
【0048】
切断ユニット4には、モータ等の動力源28が内蔵されている。動力源28は、プーリ25又はプーリ26を、前側から見て時計回りに回転させる。動力源28がプーリ25又はプーリ26を回転させると、帯鋸27の帯線は時計回りに駆動され、帯線部27bは連続的に下方に駆動される。このように、プーリ25,26及び動力源28は、帯鋸27を駆動する駆動装置E2を構成している。すなわち、切断ユニット4は、直線状の帯線部27b,27cを有する帯鋸27と、帯鋸27の駆動装置E2とを有している。
【0049】
切断ユニット4は、間隔調節機構29の上に設置されている。間隔調節機構29は、左右方向における切断ユニット4の位置を変更可能とすることで、切断ユニット3と切断ユニット4との左右方向での間隔を変更可能とする。左右方向における切断ユニット4の位置を変更すると、帯線部27bの位置も変わる。これに対応するために、テーブル5の開口5bの幅は、開口5aの幅よりも大きくなっている。
【0050】
切断ユニット3,4を前側から見ると、切断ユニット3の帯線部20bと切断ユニット4の帯線部27bとは、移動台12に設置されたグリーンハニカム成形体Pと交差するように、上下方向に沿ってに直線状に延在する。すなわち、帯線部20b,27bは、グリーンハニカム成形体Pの移動方向から見て、軸線L1と交差するように延在する刃部B1,B2に相当する。また、帯鋸20,27は、刃部B1,B2を有する切断部材に相当する。帯鋸20,27の駆動装置E1,E2は、刃部B1,B2よりも外側に配置されている。このため、刃部B1と刃部B2とを近づけ易く、刃部B1と刃部B2との間隔の設定可能範囲が広い。なお、
図4に示されるように、切断ユニット3,4は前後方向において同じ位置に配置されていることから、刃部B1,B2も前後方向において同じ位置に配置されている。
【0051】
続いて、切断装置1を用いたグリーンハニカム成形体Pの切断方法について説明する。まず、軸線L1を左右方向に沿わせた状態で、グリーンハニカム成形体Pを各移動台12の溝12aの上に設置し、保持部A1によってグリーンハニカム成形体Pを移動台12に固定する。また、駆動装置E1,E2を起動することで、帯鋸20,27を駆動し、刃部B1,B2を連続的に下方に駆動する。
【0052】
次に、動力源9によってボールネジ8を回転させ、テーブル5を前方に移動させる。すると、グリーンハニカム成形体Pが移動台12と共に前方に移動する。すなわち、グリーンハニカム成形体Pが軸線L1に垂直な移動方向Fに移動する。テーブル5の開口5a,5bは前後方向に沿って形成されていることから、テーブル5が移動しても、刃部B1,B2は開口5a,5bの内面に接触しない。また、移動台12と補助移動台30,31との間には隙間が形成されていることから、テーブル5が移動しても、刃部B1,B2は移動台12又は補助移動台30,31に接触しない。
【0053】
テーブル5が移動すると、グリーンハニカム成形体Pが刃部B1,B2に近づき、刃部B1,B2の砥石状の刃20a,27aがグリーンハニカム成形体Pの外周面に接触する。なお、刃部B1,B2は、前後方向において同じ位置に配置されているため、刃部B1,B2の砥石状の刃20a,27aはグリーンハニカム成形体Pの外周面に同時に接触する。
【0054】
テーブル5が更に移動すると、刃部B1によってグリーンハニカム成形体Pが面M1で切断され、刃部B2によってグリーンハニカム成形体Pが面M2で切断される。このように、グリーンハニカム成形体Pを一方向に移動させる過程で、複数の面M1,M2でグリーンハニカム成形体Pが切断されるため、グリーンハニカム成形体Pを効率よく切断することができる。特に、刃部B1,B2の砥石状の刃20a,27aはグリーンハニカム成形体Pの外周面に同時に接触し、刃部B1による切断と、刃部B2による切断とが同時に進行するため、グリーンハニカム成形体Pを更に効率よく切断することができる。
【0055】
切断されたグリーンハニカム成形体Pの面M1と面M2との間隔は、刃部B1と刃部B2との間隔によって定まる。このため、左右方向におけるグリーンハニカム成形体Pの設置位置がずれたとしても、面M1と面M2との間隔には影響しない。従って、グリーンハニカム成形体Pを精度よく切断することができる。また、移動方向Fは、軸線L1に垂直な方向であり、刃部B1及び刃部B2は、軸線L1及び移動方向Fに垂直な方向に延在しているため、軸線L1に対する面M1,M2の直角度を高めることができる。
【0056】
刃部B1,B2は連続的に下方に駆動されているため、下方にもグリーンハニカム成形体Pを切断する力が作用し、グリーンハニカム成形体Pを更に効率よく切断することができる。特に、刃部B1,B2は互いに平行であり、いずれも同じ向きに駆動されている。これにより、刃部B1からグリーンハニカム成形体Pにかかる切断負荷と、刃部B2からグリーンハニカム成形体Pにかかる切断負荷とは、移動方向Fから見て異なる位置で同じ向きに作用する。このため、移動方向Fから見て、グリーンハニカム成形体Pが傾動しにくく、グリーンハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0057】
また、グリーンハニカム成形体Pは、移動台12によって下方から支持されている。すなわち、グリーンハニカム成形体Pは、刃部B1,B2が駆動されている向きに対向するように支持されている。これにより、刃部B1,B2からグリーンハニカム成形体Pにかかる切断負荷によって、移動台12側にグリーンハニカム成形体Pが押し付けられ、移動方向Fから見てグリーンハニカム成形体Pの位置や姿勢が安定する。このため、グリーンハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0058】
また、グリーンハニカム成形体Pのうち、面M1と面M2との間の部分は、保持部A1によって移動台12に固定されている。これにより、グリーンハニカム成形体Pのうち、面M1と面M2との間の部分の位置や姿勢が安定するため、グリーンハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0059】
また、この切断方法では、切断ユニット3,4を移動させずにグリーンハニカム成形体Pを移動させている。グリーンハニカム成形体Pを移動させる場合、切断ユニット3,4の大きさや質量はグリーンハニカム成形体Pの位置決め精度に影響しない。このため、切断ユニット3,4を移動させるのに比べ、グリーンハニカム成形体Pと刃部B1,B2との相対的な位置決め精度が向上する。特に、複数の切断ユニット3,4を備えた切断装置1では、切断ユニット3,4全体での大きさや質量が大きいため、位置決め精度の向上がより顕著となる。従って、グリーンハニカム成形体Pを更に精度よく切断することができる。
【0060】
なお、切断装置1では、間隔調節機構29によって、切断ユニット3と切断ユニット4との間隔を変更することが可能である。これにより、製造すべきハニカム構造体100の長さに応じて、刃部B1と刃部B2との間隔を変更し、面M1と面M2との間隔を変更することができる。
【0061】
切断されたグリーンハニカム成形体Pのうち、面M1,M2よりも外側の部分は、保持部A1によって固定されている部分から切り離されるが、補助移動台30,31によって支持されるため脱落しない。このため、これらの部分をハニカム構造体100の製造に有効活用することができる。
【0062】
テーブル5が更に移動すると、後続の移動台12に設置されたグリーンハニカム成形体Pが切断される。全てのグリーンハニカム成形体Pの切断を完了すると、テーブル5を停止し、切断されたグリーンハニカム成形体Pを回収する。全てのグリーンハニカム成形体Pの回収を完了すると、ボールネジ8を逆回転させてテーブル5を後退させ、元の位置に戻す。以後、同じ手順でグリーンハニカム成形体Pの切断を繰り返す。
【0063】
切断されたグリーンハニカム成形体Pのうち、面M1と面M2との間の部分は、ハニカム構造体100の母材として用いられる。切断されたグリーンハニカム成形体Pのうち、面M1よりも外側の部分及び面M2よりも外側の部分の少なくとも一方は、母材に所定の処理を行う際の台座として用いられる。具体的には、例えば、母材を焼成する際の台座として用いられる。これにより、グリーンハニカム成形体Pの余剰部分を、ハニカム構造体100の製造に有効活用することができる。
【0064】
以上、グリーンハニカム成形体Pの切断装置及び切断方法の一例について説明したが、切断装置及び切断方法は上記のものに限定されない。例えば、上述した切断装置1は、二つの切断ユニット3,4を備えているが、いずれか一方の切断ユニットのみを備えた切断装置を用いてもよい。この場合、グリーンハニカム成形体Pを面M1で切断した後、グリーンハニカム成形体Pを移動させて面M2で切断すればよい。
【0065】
続いて、帯鋸の洗浄方法について説明する。帯鋸20(27)によるグリーンハニカム成形体Pの切断を繰り返し行うと、砥石状の刃20a(27a)にグリーンハニカム成形体Pの切粉が徐々に付着し、切断性能の低下を招くこととなる。なお、切粉は砥石状の刃20aの場合に特に堆積しやすいが、砥石状の刃以外の刃の場合でも、刃の表面に切粉が付着し、切断性能の低下が生じる。そのため、本発明において刃の形状等は特に限定されない。本発明は、グリーンハニカム成形体Pの切断を行った後の帯鋸20(27)の刃20a(27a)の洗浄方法として、以下の方法を提供する。なお、以下の説明中、帯鋸20及びその刃20aは、帯鋸27及びその刃27aであってもよい。
【0066】
(第1実施形態)
第1実施形態の洗浄方法は、帯鋸20の刃20aを、水を含む洗浄液に接触させることで洗浄する洗浄工程と、帯鋸20に付着した洗浄液を除去する除去工程と、を有し、洗浄工程が、切断装置1から帯鋸20を取り外した後、帯鋸20を洗浄液中に浸漬することで、帯鋸20の刃20aを洗浄する工程である、方法である。
【0067】
洗浄液は、水のみであってもよく、水以外の成分を含んでいてもよい。水以外の成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。洗浄液における水の含有量は、帯鋸20に対する良好な洗浄効果を得る観点から、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0068】
洗浄工程は、切断装置1から取り外した帯鋸20を、所定の容器に充填した洗浄液に浸漬することで行うことができる。帯鋸20は全体が洗浄液に浸かるようにすることが好ましい。容器の大きさ及び形状は、帯鋸20が入る大きさ及び形状であればよい。帯鋸20は、コイル状に畳んで洗浄液に浸漬してもよい。
【0069】
浸漬時間は、帯鋸20に対する良好な洗浄効果を得る観点から、1〜50時間とすることが好ましく、6〜20時間とすることがより好ましい。洗浄液の温度は、帯鋸20に対する良好な洗浄効果を得る観点から、5〜50℃とすることが好ましく、15〜30℃とすることがより好ましい。
【0070】
また、洗浄効果を高めるために、洗浄液に帯鋸20を浸漬した状態で、超音波洗浄及び/又は高圧洗浄を行ってもよい。また、洗浄効果を高めるために、洗浄液に浸漬中又は浸漬後の帯鋸20の刃20aにブラシ掛けを行ってもよい。ブラシ掛けを行うことにより、帯鋸20の刃20aに付着した切粉を掻き取ることができる。
【0071】
除去工程は、帯鋸20を洗浄液から出した後、帯鋸20に付着した洗浄液を除去する工程である。帯鋸20からの洗浄液の除去は、スポンジ又は布等で洗浄液を拭き取る方法、帯鋸20の刃20aに圧縮空気を吹き付ける方法、常温又はそれよりも高い温度で乾燥させる方法等により行うことができる。常温よりも高い温度で乾燥させる方法としては、温風、熱風、ヒータ、又はランプ(例えば赤外線ランプ)等で加熱乾燥させる方法が挙げられる。
【0072】
(第2実施形態)
第2実施形態の洗浄方法は、帯鋸20の刃20aを、水を含む洗浄液に接触させることで洗浄する洗浄工程と、帯鋸20に付着した洗浄液を除去する除去工程と、を有し、洗浄工程が、切断装置1に帯鋸20を装着したまま、帯鋸20の刃20aを洗浄液に接触させることで、帯鋸20の刃20aを洗浄する工程である、方法である。ここで、洗浄液としては、第1実施形態の洗浄液と同様のものを使用することができる。
【0073】
洗浄工程は、切断装置1に帯鋸20を装着したまま、帯鋸20の刃20aに洗浄液を滴下したり、吹き付けたりすること等により行うことができる。洗浄液の吹き付けは、例えば、洗浄液の飛散を防止するために、帯鋸20の一部を覆うカバー部材と、当該カバー部材に取り付けた洗浄液噴射ノズルとを備えた清掃ヘッド(清掃装置)を用いて行うことが好ましい。この清掃ヘッドを帯鋸20の洗浄する部位に配置し、当該部位を洗浄した後、切断装置1を駆動させて帯鋸20の上記部位をずらすことにより、帯鋸20全体を洗浄することができる。このとき、洗浄ヘッド自体を移動させてもよい。なお、上記部位の洗浄時には、切断装置1における帯鋸20の駆動は停止することが好ましい。
【0074】
また、洗浄効果を高めるために、洗浄液を付着させた帯鋸20の刃20aに対し、ブラシ掛けを行ってもよい。ブラシ掛けを行うことにより、帯鋸20の刃20aに付着した切粉を掻き取ることができる。
【0075】
除去工程は、切断装置1に帯鋸20を装着したまま、帯鋸20に付着した洗浄液を除去する工程である。帯鋸20からの洗浄液の除去は、スポンジ又は布等で洗浄液を拭き取る方法、帯鋸20の刃20aに圧縮空気を吹き付ける方法、常温又はそれよりも高い温度で乾燥させる方法等により行うことができる。常温よりも高い温度で乾燥させる方法としては、温風、熱風、ヒータ、又はランプ(例えば赤外線ランプ)等で加熱乾燥させる方法が挙げられる。これらの中でも、帯鋸20の刃20aに圧縮空気を吹き付ける方法は、切断装置1に帯鋸20を装着したまま短時間で効率よく洗浄液を除去できるとともに、残存した切粉を圧縮空気により吹き飛ばすことができて洗浄効果が向上することから、特に好ましい。また、上述した清掃ヘッドにさらに圧縮空気噴射ノズルを取り付け、洗浄液噴射ノズルからの洗浄液の噴射を終えた後、続けて圧縮空気噴射ノズルから圧縮空気を噴射して洗浄液の除去を行ってもよい。清掃ヘッド内で洗浄工程及び除去工程の両方を行うことにより、切断装置1を汚さずに帯鋸20を洗浄することができる。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態の洗浄方法は、帯鋸20の刃20aを、水を含む洗浄液に接触させることで洗浄する洗浄工程と、帯鋸20に付着した洗浄液を除去する除去工程と、を有し、洗浄工程が、洗浄液を充填した洗浄槽を切断装置1内に設置し、帯鋸20を切断装置1に装着したまま駆動させ、洗浄液に帯鋸20の刃20aを接触させることで、帯鋸20の刃20aを洗浄する工程である、方法である。ここで、洗浄液としては、第1実施形態の洗浄液と同様のものを使用することができる。
【0077】
図7は、第3実施形態の洗浄方法を行うための切断装置の一実施形態を示す概略図である。
図7に示されるように、切断装置1は、
図3に示した切断ユニット3,4と基本構成は同じであるが、洗浄液41を充填した洗浄槽40と、帯鋸20に向けて圧縮空気51を噴射する圧縮空気噴射器50とを更に備えている。圧縮空気噴射器50の設置場所は、図中の位置に限定されない。切断装置1を駆動させると、帯鋸20は洗浄槽40に充填された洗浄液41に浸かって洗浄され、続いて圧縮空気51が吹き付けられて洗浄液41が除去される。この方法では、洗浄工程と除去工程とが並行して行われることとなる。
【0078】
また、第3実施形態の洗浄方法は、グリーンハニカム成形体Pの切断を行いながら帯鋸20の洗浄を行うインプロセス洗浄方法とすることができる。すなわち、先に説明した切断装置及び切断方法において、帯線部20bでのグリーンハニカム成形体Pの切断を行いながら、洗浄槽40による帯鋸20の刃20aの洗浄、及び、圧縮空気噴射器50による帯鋸20からの洗浄液41の除去を並行して行うことができる。
【0079】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第3実施形態の洗浄方法において、帯鋸20に付着した洗浄液41の除去を、圧縮空気噴射器50を用いて行う場合を説明したが、他の方法で洗浄液41の除去を行ってもよい。例えば、第3実施形態の洗浄方法においても、第1及び2実施形態の洗浄方法の場合と同様に、スポンジ又は布等で洗浄液を拭き取る方法、或いは、常温又はそれよりも高い温度で乾燥させる方法等により、洗浄液41の除去を行ってもよい。常温よりも高い温度で乾燥させる方法としては、温風、熱風、ヒータ、又はランプ(例えば赤外線ランプ)等で加熱乾燥させる方法が挙げられる。
【0080】
また、本発明の洗浄方法は、上述した第1〜第3実施形態以外の方法で行ってもよい。例えば、帯鋸20を切断装置1から取り外した後、洗浄液中に帯鋸20を浸漬することなく、洗浄液を帯鋸20に滴下又は吹き付けること等により帯鋸20の洗浄を行ってもよい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
<グリーンハニカム成形体の作製>
焼成することによりチタン酸アルミニウムとなるセラミックス原料粉末、及び、バインダとしてのヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む原料混合物を成形し、
図1に示した形状を有するグリーンハニカム成形体を作製した。
【0083】
<切断試験>
図3に示した切断装置により、作製したグリーンハニカム成形体の切断を繰り返し行った。帯鋸は、
図6に示したように、帯鋸の帯線の後側の縁にダイヤモンド砥粒を電着して形成した砥石状の刃を備えるものを用いた。グリーンハニカム成形体を150本、300本、550本、800本及び2250本切断した後の帯鋸を、デジタル顕微鏡(倍率:200倍)により撮影した。撮影した写真を
図8に示す。
図8には、
図6(b)中の方向Fを正面方向、方向Sを側面方向として、それぞれの方向から撮影した写真を示している。
図8から、切断本数の増加に伴って、帯鋸の刃にグリーンハニカム成形体の切粉が徐々に堆積し、刃の砥粒が徐々に埋没していくことが分かる。2250本切断後の帯鋸であっても、グリーンハニカム成形体の切断は可能であったが、グリーンハニカム成形体の切断面の全面にバリが生じ、切断品位が低下することが確認された。
【0084】
上記切断試験によりグリーンハニカム成形体を2250本切断した後の帯鋸の洗浄を、以下の方法で行った。
【0085】
(実施例1)
切断装置に装着したまま停止させた帯鋸に水を滴下した後、ブラシ掛けを行った。その後、帯鋸に圧縮空気を吹き付けて水を除去した。その結果を
図9に示す。
図9は、洗浄前、水滴下後、ブラシ掛け後、及び、圧縮空気を吹き付け後の帯鋸の側面を、デジタル顕微鏡(倍率:200倍)により撮影した写真である。
図9から、水滴下により切粉が浮いてきており、ブラシ掛けにより切粉が帯鋸の刃から掻き取られていることが分かる。圧縮空気の吹き付けにより水を除去した帯鋸は、堆積していた切粉のほとんどが除去されたものとなった。
【0086】
(実施例2)
切断装置から取り外した帯鋸をコイル状に畳み、容器に充填した水に浸漬して室温で12時間放置した。その後、帯鋸を水から出し、帯鋸に圧縮空気を吹き付けて付着した水を除去した。その結果を
図10に示す。
図10は、水に浸漬中の帯鋸の状態、並びに、圧縮空気吹き付け後の帯鋸の正面及び側面を、デジタル顕微鏡(倍率:200倍)により撮影した写真である。
図10に示した通り、上記方法によって帯鋸に堆積していた切粉のほとんどを除去することができることができた。
【0087】
(比較例1)
切断装置に装着したまま回転させた帯鋸に対し、スティック砥石(WA #100)を用いてドレッシングした。その結果を
図11に示す。
図11に示した通り、スティック砥石を用いたドレッシングでは、切粉の除去にほとんど効果がなかった。
【0088】
(比較例2)
切断装置に装着したまま停止させた帯鋸に対し、ブラシ掛け及び圧縮空気の吹き付けを行った。その結果を
図11に示す。
図11に示した通り、ブラシ掛け及び圧縮空気の吹き付けだけでは、切粉の除去にほとんど効果がなかった。