特許第5956904号(P5956904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956904
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】テープ化材除去工具
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/245 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   G02B6/245
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-234400(P2012-234400)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-85511(P2014-85511A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102783
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 高明
(72)【発明者】
【氏名】伊佐地 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】佐島 由恵
(72)【発明者】
【氏名】松澤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】八木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中根 久彰
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】角田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】浜口 真弥
(72)【発明者】
【氏名】柴田 征彦
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−185718(JP,A)
【文献】 特開2002−101513(JP,A)
【文献】 特許第3774184(JP,B2)
【文献】 特開2004−145080(JP,A)
【文献】 実開昭57−001018(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00− 6/02
G02B 6/245−6/25
G02B 6/46− 6/54
H02G 1/12
B08B 1/00− 1/04
B08B 5/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線をテープ化材で一体化した光ファイバテープ心線の単心分離後に、前記単心分離された光ファイバ心線を挟み込んで長手方向にしごくことにより光ファイバ心線表面の前記テープ化材を除去するテープ化材除去工具であって、
前記光ファイバ心線を挟み込むように開閉可能な把持部と、
前記把持部に取り付けられ、弾性を有する一対の土台と、
前記一対の土台に取り付けられ、前記把持部が閉じた時に前記光ファイバ心線と接触する一対のヤスリ部
とを備え、
前記把持部が閉じた時に加わる圧力により前記一対の土台が変形し、前記一対のヤスリ部が前記光ファイバ心線の全周を包み込み、
前記把持部が閉じた時の前記一対のヤスリ部同士の接触面積が、前記一対の土台のそれぞれと前記把持部との接触面積よりも小さいことを特徴とするテープ化材除去工具。
【請求項2】
前記把持部が開いた状態において、前記一対の土台のそれぞれの前記光ファイバ心線をしごく方向に平行であり、且つ前記ヤスリ部が取り付けられた面に垂直な面の断面形状が、台形、半円形又は三角形であることを特徴とする請求項1に記載のテープ化材除去工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線の単心分離後に、単心分離された光ファイバ心線表面に残留するテープ化材を除去するテープ化材除去工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)の拡充から、光ファイバケーブルの接続工事において光ファイバテープ心線を単心分離し、単心の光ファイバ心線同士を接続することが多くなっている。この接続作業において、従来からの融着接続に代わり、簡易な工具で作業が可能なメカニカルスプライスや現場組み立てコネクタ等を用いて接続することが多くなってきている。
【0003】
この接続作業をする上で、単心分離した光ファイバ心線の表面にテープ化材が残留していると、光ファイバ心線の被覆外径がメカニカルスプライスや現場組み立てコネクタの穴径よりも大きくなってしまうため、穴部に挿入できない事態が生じる。したがって、この接続作業をする場合、単心分離後に光ファイバ心線表面に残留しているテープ化材を除去する工程が必要となる。
【0004】
テープ化材の除去については、光ファイバ心線の着色層の表面性及び硬化性、又は着色層とテープ化材との密着性を適切にすることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。特許文献1及び2では、除去には特別な工具は用いられず、手作業でテープ化材の除去が可能であるかどうかを判断している。
【0005】
また、テープ化材を除去する工具を用いて、狭い隙間の空いた面で光ファイバ心線をしごくことで、テープ化材と着色層を剥離させることが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3の場合でも、側圧としごき摩擦のみでテープ化材と着色層とを剥離させるので、光ファイバ心線を構成する石英ガラスと被覆部との間で剥離が生じ、低温下での損失増加が考えられる。
【0006】
また、特許文献1〜3のいずれも、単心の光ファイバ心線同士が互いに接する状態でテープ化された光ファイバテープ心線を対象とするものである。このタイプの光ファイバテープ心線は、テープ化材が光ファイバ心線の周囲を完全には覆っていないため、単心分離したときに着色層とテープ化材との界面に剥離を生じさせ、テープ化材を除去することができる。
【0007】
一方、隣接する光ファイバ心線が離間して並列に並べられ、各光ファイバ心線の周囲をテープ化材で完全に覆ったものを連結する光ファイバテープ心線の場合、単心分離してもテープ化材が光ファイバ心線の周囲を完全に覆っているため、着色層とテープ化材との密着度合いを低くしても、テープ化材の除去は困難である。また、特許文献3に記載の工具を使用した場合、単にテープ化材と着色層との間に剥離は生じる可能性はあるものの、テープ化材が光ファイバ心線の周囲を覆っているため、テープ化材の除去は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4292025号公報
【特許文献2】特許第4845007号公報
【特許文献3】特許第3774184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、光ファイバテープ心線の単心分離後に、単心分離された光ファイバ心線表面に残留するテープ化材を容易に除去することが可能なテープ化材除去工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、複数本の光ファイバ心線をテープ化材で一体化した光ファイバテープ心線の単心分離後に、単心分離された光ファイバ心線を挟み込んで長手方向にしごくことにより光ファイバ心線表面に残留するテープ化材を除去するテープ化材除去工具であって、光ファイバ心線を挟み込むように開閉可能な把持部と、把持部に取り付けられ、弾性を有する一対の土台と、一対の土台に取り付けられ、把持部が閉じた時に光ファイバ心線と接触する一対のヤスリ部とを備え、把持部が閉じた時に加わる圧力により一対の土台が変形し、一対のヤスリ部が光ファイバ心線の全周を包み込むことを特徴とするテープ化材除去工具が提供される。
【0011】
本発明の一態様において、把持部が閉じた時の一対の土台同士の接触面積が、一対の土台のそれぞれと把持部との接触面積よりも小さくても良い。
【0012】
本発明の一態様において、把持部が開いた状態において、一対の土台のそれぞれの光ファイバ心線をしごく方向に平行な断面形状が、台形、半円形又は三角形であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバテープ心線の単心分離後に、単心分離された光ファイバ心線表面に残留するテープ化材を容易に除去することが可能なテープ化材除去工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具の一例を示す斜視図である。
図2図1に示したテープ化材除去工具が光ファイバ心線を挟み込んだ状態を示す斜視図である。
図3図1に示したテープ化材除去工具が光ファイバ心線を挟み込んだ状態を示す側面図である。
図4図4(a)〜図4(c)は、本発明の実施の形態に係る光ファイバテープ心線の単心分離時の一例を示す長手方向に垂直な断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、本発明の実施の形態に係る光ファイバテープ心線の単心分離時の他の一例を示す長手方向に垂直な断面図である。
図6】比較例に係るテープ化材除去工具の部分断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具の部分断面図である。
図8図8(a)は、本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具の他の一例を示す斜視図である。図8(b)は、図8(a)に示したテープ化材除去工具が光ファイバ心線を挟み込んだ状態を示す斜視図である。
図9図9(a)は、本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具の更に他の一例を示す斜視図である。図9(b)は、図9(a)に示したテープ化材除去工具が光ファイバ心線を挟み込んだ状態を示す斜視図である。
図10図10(a)は、本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具の更に他の一例を示す斜視図である。図10(b)は、図10(a)に示したテープ化材除去工具が光ファイバ心線を挟み込んだ状態を示す斜視図である。
図11】第1の実施例の試験結果を表す表である。
図12】第2の実施例の試験結果を表す表である。
図13】第3の実施例の試験結果を表す表である。
図14】本発明のその他の実施の形態に係るテープ化材除去工具の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具は、複数本の光ファイバ心線をテープ化材で一体化した光ファイバテープ心線の単心分離後に、単心分離された光ファイバ心線を挟み込んで長手方向にしごくことにより光ファイバ心線表面に残留するテープ化材を除去するための工具であって、図1に示すように、光ファイバ心線を挟み込むように開閉可能な把持部11a,11bと、把持部11a,11bに取り付けられ、弾性を有する一対の土台12a,12bと、一対の土台12a,12bに取り付けられ、把持部11a,11bが閉じた時に光ファイバ心線と接触する一対のヤスリ部(研磨部)13a,13bとを備える。
【0018】
把持部11a,11bとしては、例えば樹脂を成形したものや、金属板が使用可能である。把持部11a,11bの内側の互いに対向する位置には、光ファイバ心線を過度に挟み込みすぎないようにストッパ14a,14bが設けられている。把持部11a,11bは、連結部15a,15b,16a,16b,17で連結されており、更には図示を省略したばね部を備える。本発明の実施の形態においては、把持部11a,11bは使用しないときは図1に示すように開いた状態となっている。
【0019】
一対の土台12a,12bとしては、発泡ポリエチレン、発泡ゴム又は発泡ウレタン等のスポンジ状の材料が使用可能である。一対の土台12a,12bの厚さは2mm程度である。一対の土台12a,12bのそれぞれと把持部11a,11bとは例えば両面テープや接着剤により接着されている。
【0020】
一対の土台12a,12bは、図2及び図3に示すように、把持部11a,11bが閉じた時に加わる圧力により、一対のヤスリ部13a,13bが光ファイバ心線10の全周を包み込むように変形可能である。把持部11a,11bが開くと、一対の土台12a,12bは弾性変形して元の形状に戻る。
【0021】
一対のヤスリ部13a,13bとしては、サンドペーパーが使用可能であり、その他にも(株)光陽社製のポリネットシート、東洋アルミエコプロダクツ(株)製の電磁調理器掃除用シート等のヤスリ状の可撓性を有する材料が使用可能である。一対のヤスリ部13a,13bと一対の土台12a,12bとは、例えば両面テープや接着剤により接着されている。
【0022】
本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具を用いたテープ化材の除去作業において、図2及び図3に示すように、作業者は把持部11a,11bを閉じるように握り、一対のヤスリ部13a,13bで光ファイバ心線10を挟圧する。この状態で、光ファイバ心線10の長手方向(図2の矢印方向)に、一対のヤスリ部13a,13bと光ファイバ心線10とを相対的に繰り返し移動し、光ファイバ心線10をしごく。これにより、一対のヤスリ部13a,13bがテープ化材表面を傷つけ、テープ化材を剥ぎ取ることができる。
【0023】
図4(a)に、単心の光ファイバ心線10同士が互いに接する状態でテープ化材20により一体化された光ファイバテープ心線を示す。光ファイバ心線10のそれぞれは、コア101及びクラッド102と、クラッド102の外周に設けられた被覆層103を有する。被覆層103の外周に着色層が更に設けられていても良い。このような光ファイバテープ心線の場合、一般的な単心分離工具でしごくことにより、図4(b)に示すように単心分離することができる。更に、テープ化材20が単心分離された光ファイバ心線10の全周を覆っていないため、続けて単心分離工具でしごくことにより、図4(c)に示すように光ファイバ心線10の表面に残存していたテープ化材20を除去することができる。
【0024】
一方、図5(a)に、隣接する光ファイバ心線10が離間して並列に並べられ、各光ファイバ心線10の周囲をテープ化材20で完全に覆ったものを連結する光ファイバテープ心線を示す。このような光ファイバテープ心線の場合、図5(b)に示すように単心分離してもテープ化材20が光ファイバ心線10の周囲を完全に覆っているため、一般的な単心分離工具ではテープ化材20の除去は困難である。
【0025】
ここで、比較例として、図6(a)に示すように、一対のヤスリ部31a,31bを取り付けた一対の土台32a,32bとして金属片等の硬質な材料を使用してテープ化材20の除去作業を行うと、一対のヤスリ部31a,31bがテープ化材20と触れる部分は光ファイバ心線10の上下だけに限られる。このため、光ファイバ心線10を何回しごいても、図6(b)に示すように全周囲のテープ化材20を上手く除去することができない。この場合、全周囲のテープ化材20を除去するためには、しごく度にテープ化材20が付いている部分が一対のヤスリ部31a,31bに当たるよう光ファイバ心線10の向きを変えて作業をする必要がある。しかしながら、光ファイバ心線10は一般的に直径250μmと細く、向きを決めて挟むのは困難であるし、同じ向きで何回もしごいた場合、光ファイバ心線10表面を傷付け、最悪の場合断線に到る可能性がある。
【0026】
これに対して、本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具によれば、スポンジ状の一対の土台12a,12bを使用することにより、テープ化材20の除去を行うため把持部11a,11bを閉じた際に、一対の土台12a,12bに圧力が加わり、図7(a)に示すように一対の土台12a,12bが変形して一対のヤスリ部13a,13bが光ファイバ心線10の全周に接触し、全周に均一な接触圧力がかかる。よって、しごく度に光ファイバ心線10の向きを変える必要がなく、一度に全周囲のテープ化材20を図7(b)に示すように剥ぎ取ることができるので、除去に必要なしごき回数を低減させることができる。
【0027】
また、本発明の実施の形態において、一対の土台12a,12bのそれぞれの光ファイバ心線10をしごく方向に平行な断面形状が矩形の場合を説明したが、特にこれに限定されない。
【0028】
例えば、図8(a)及び図8(b)に示すように、一対の土台12a,12bのそれぞれの光ファイバ心線10をしごく方向に平行な断面形状が台形であっても良い。
【0029】
また、図9(a)及び図9(b)に示すように、一対の土台12a,12bのそれぞれの光ファイバ心線10をしごく方向に平行な断面形状が半円形(かまぼこ型)であっても良い。
【0030】
また、図10(a)及び図10(b)に示すように、一対の土台12a,12bのそれぞれの光ファイバ心線10をしごく方向に平行な断面形状が三角形であっても良い。
【0031】
一対の土台12a,12bのそれぞれの光ファイバ心線10をしごく方向に平行な断面形状が台形、半円形又は三角形の場合、把持部11a,11bが閉じた時の一対の土台12a,12b同士の接触面積が、一対の土台12a,12bのそれぞれと把持部11a,11bとの接触面積よりも小さい。このため、テープ化材20を剥離させるための力が集中して光ファイバ心線10に加わるので、一対の土台12a,12bのそれぞれの光ファイバ心線10をしごく方向に平行な断面形状が矩形の場合と比較して、テープ化材20を容易に除去することが可能となる。
【0032】
(第1の実施例)
第1の実施例において、一対の土台の材質を変更して、その表面に一対のヤスリ部として#1000のサンドペーパーを貼り付けて、テープ化材除去工具を作製した。作製したテープ化材除去工具を用いてテープ化材の除去試験を実施した。
【0033】
この試験では、テープ化材で被覆された単心の光ファイバをテープ化材除去工具で挟んで10cmしごき、テープ化材が完全に除去されるまでのしごき回数を数えた。また、除去試験で使用する光ファイバ心線としては、着色光ファイバの上層にヤング率800MPaのテープ材を10μm程度の厚さでコーティングしたものを用意した。この試験は100回行い、光ファイバ心線を構成する石英ガラスと被覆の剥離又は断線が発生した回数を数え、剥離又は断線が1回でも発生した場合には「×」、1回も発生しなかった場合には「○」と判定した。試験結果を図11に示す。
【0034】
図11の試料No.1〜3に示すように、比較例に係る一対の土台として硬質の材料を使用したテープ化材除去工具では、被覆除去に必要なしごき回数が多くなる。また、余分なしごきを加えることもあるため、光ファイバ心線を構成する石英ガラスと被覆の剥離又は断線も発生する可能性がある。
【0035】
一方、図11の試料No.4〜6に示すように、本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具では、一対の土台にスポンジ状の材料を使用することにより、必要なしごき回数も少なく、光ファイバの損傷も全くないことが分かる。
【0036】
(第2の実施例)
第2の実施例として、一対の土台の材質を変更して、その表面に一対のヤスリ部として#1000以外のサンドペーパー、(株)光陽社製のポリネットシート、東洋アルミエコプロダクツ(株)製の電磁調理器掃除用シートをそれぞれ貼り付けてテープ化材除去工具を作製し、第1の実施例と同様の試験を行った。試験結果を図12に示す。
【0037】
図12の試料No.1〜8に示すように、比較例に係る一対の土台として硬質の材料を使用したテープ化材除去工具では、一対のヤスリ部の材質に関わらず、被覆除去に必要なしごき回数が多くなる。また、余分なしごきを加えることもあるため、光ファイバ心線を構成する石英ガラスと被覆の剥離又は断線も発生する可能性がある。
【0038】
一方、図12の試料No.9〜15,17〜23に示すように、一対の土台の材質がスポンジ状のものであれば、一対のヤスリ部は#400〜#2000のサンドペーパーでも、#1000のサンドペーパーを用いたときと同様の効果が得られた。
【0039】
また、図12の試料No.16,24に示すように、サンドペーパー以外でも、(株)光陽社製のポリネットシート、東洋アルミエコプロダクツ(株)製の電磁調理器掃除用シート等のヤスリ状のものであれば、しごき回数が10回以内でテープ化材を除去可能であり、光ファイバ心線の剥離・断線等は発生させないという良好な結果を得た。
【0040】
(実施例3)
一対の土台の材質と、光ファイバ心線をしごく方向に平行な断面形状を矩形と台形に変更してテープ化材除去工具をそれぞれ作製し、実施例1と同様の試験を行った。一対のヤスリ部には#1000のサンドペーパーを使用した。試験結果を図13に示す。
【0041】
図13の試料No.4〜6に示す一対の土台の断面形状が台形の方が、試料No.1〜3に示す一対の土台の断面形状が矩形の場合よりもしごき回数が少ないことが分かる。一対の土台の断面形状が台形の場合、テープ化材を剥離させるための力が集中して光ファイバ心線に加わるためと考えられる。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0043】
例えば、本発明の実施の形態に係るテープ化材除去工具は、把持部11a,11bを閉じた時に一対の土台12a,12bが変形して一対のヤスリ部13a,13bが光ファイバ心線10を包み込む構造であれば、把持部11a,11bの構造は特に限定されない。例えば、図14に示すように把持部11の形状がV字状であり、連結部を有さない構造であっても良い。
【0044】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0045】
10…光ファイバ心線
11,11a,11b…把持部
12a,12b…土台
13a,13b…ヤスリ部
14a,14b…ストッパ
15a,15b,16a,16b,17…連結部
20…テープ化材
101…コア
102…クラッド
103…被覆層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14