(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956937
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20160714BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20160714BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20160714BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20160714BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
H01L33/00 432
B29C45/02
H01L23/08 A
H01L23/30 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-19536(P2013-19536)
(22)【出願日】2013年2月4日
(62)【分割の表示】特願2006-198489(P2006-198489)の分割
【原出願日】2006年7月20日
(65)【公開番号】特開2013-138221(P2013-138221A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2013年3月5日
【審判番号】不服2015-11780(P2015-11780/J1)
【審判請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2006-26961(P2006-26961)
(32)【優先日】2006年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 直之
【合議体】
【審判長】
恩田 春香
【審判官】
山口 裕之
【審判官】
星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−311314(JP,A)
【文献】
特開2003−277479(JP,A)
【文献】
特開平11−340517(JP,A)
【文献】
特開2005−333069(JP,A)
【文献】
特開2005−203748(JP,A)
【文献】
特開2000−169557(JP,A)
【文献】
特開2001−234073(JP,A)
【文献】
特開2002−212450(JP,A)
【文献】
特開2005−101296(JP,A)
【文献】
特開2005−100799(JP,A)
【文献】
特開2005−100800(JP,A)
【文献】
特開2003−218398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子搭載用パッケージ基板を製造する方法であって、
該光半導体素子搭載用パッケージ基板は、配線基板及び光反射用熱硬化性樹脂組成物層を備え、光半導体素子搭載領域となる凹部を9個以上有し、
配線基板上に、光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成型により光反射用熱硬化性樹脂組成物層を形成する工程を含み、
前記光反射用熱硬化性樹脂組成物が、無機充填剤及び白色顔料を70体積%〜85体積%含有し、
分割してSMD型半導体装置を得るために用いられる、光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項2】
前記光反射用熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、及びカップリング剤を更に含有し、熱硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が80%以上である、請求項1に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項3】
前記無機充填剤が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1又は2に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項4】
前記白色顔料が、無機中空粒子を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項5】
前記白色顔料の平均粒径が、1μm〜50μmの範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【請求項6】
前記配線基板が、リードフレーム、プリント配線板、フレキシブル配線板、又はメタルベース配線板のいずれかである、請求項1〜5のいずれかに記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子と蛍光体などの波長変換手段とを組み合わせた光半導体装置を製造するのに有用な光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化、多機能化に伴い、電子部品を基板上に高密度に実装することが行われている。高密度に実装するための電子部品としては、例えば、基板上の配線パターンにリフロー半田付け等により接続することが可能なSMD(Surface mounted device)が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電子部品の一例であるLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)は、光半導体素子と蛍光体を組み合わせた光半導体装置であり、省電力で寿命が長い発光装置として注目されている。
【0004】
SMD型LEDのパッケージ基板について、図面に基づいてその概要を説明する。
図4は一般的なSMD型LEDの斜視図である。
図4において、1はLED素子搭載用パッケージ基板であり、配線基板2、樹脂層4およびこれらを固着させるための接着シート5からなる。配線基板2の上面には搭載されるLED素子10を接続するための一対の接続端子が形成されており、各端子には銀めっき等の表面処理が施されている。また、樹脂層4には、LED素子10の搭載領域となるカップ形状の貫通穴4d(上部開口4a、下部開口4bおよび側面4cからなる凹部)が形成されており、当該穴の内周面は、その底面に搭載されたLED素子10が発する光を反射させ上方へ導くリフレクタ−としての役割を果たす。また、接着シート5は上記貫通穴4dの下部開口4bに対応する部分が取り除かれている。
【0005】
また、このようなSMD型LEDは、通常、
図5に示すように、複数のLED素子がマトリックス状に実装された配線基板12上に、当該複数のLED素子の搭載位置に対応したカップ形状の貫通穴を有する樹脂層板(リフレクタ−)14を、当該複数のLED素子の搭載位置に対応した穴15aが形成されている接着シート15をはさんで、加熱加圧して接着した後、
図6に示す2方向のダイシングライン20に沿って複数のSMD型LEDを個片に切り離すことで得ることができる。このような製造法によれば、SMD型LEDを多数個同時に作製することができる。
【0006】
しかしながら、上記した従来のSMD型LEDの製造方法では、貫通穴を有する樹脂層板を作製する工程、穴を有する接着シートを作製する工程、樹脂層板と接着シートとLED素子を搭載した配線基板を位置合わせして一体化する工程といった複数の工程やこれに伴う複数の部材が必要となる。
【0007】
また、LED用パッケージ基板における樹脂層板を、耐熱性の高い熱可塑性樹脂を用い、射出成型により製造することが、例えば、特許文献2〜4に開示されているが、400mm
2のマトリックス状の大型の樹脂層板を一括成型した場合、線膨張率の違いによる応力で反りが発生し易く、その後の実装工程を進めることが困難となる場合がある等の課題があった。また、一般に使用されているリフレクター材料は、酸化チタンを顔料として用いているため、発光波長が短波長領域になると急激にその反射率が低下してしまう。また、紫外線による劣化が原因で可視領域の光に対しても反射率の低下が起こることが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−218398号公報
【特許文献2】特開2005−194513号公報
【特許文献3】特開2004−277539号公報
【特許文献4】特開2004−075994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記を鑑みて、本発明は、リードタイムの短縮、使用する部材や工程の低減による生産性の向上、低コスト化が可能な光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法およびこれを用いた光半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、硬化後の、可視光から近紫外光の反射率が高い光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法およびこれを用いた光半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記(1)〜(10)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0011】
(1)光半導体素子搭載領域となる凹部が2つ以上形成された光反射用熱硬化性樹脂組成物層を配線基板上に有する光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法であって、前記光反射用熱硬化性樹脂組成物層をトランスファー成型により形成することを特徴とする、光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【0012】
(2)前記光反射用熱硬化性樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)白色顔料及び(F)カップリング剤を必須成分として含み、熱硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が80%以上であり、熱硬化前には室温(25℃)で加圧成型可能なものであることを特徴とする、上記(1)に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【0013】
(3)前記(D)無機充填剤が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする、上記(2)に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【0014】
(4)前記(E)白色顔料が、無機中空粒子であることを特徴とする、上記(2)または(3)に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【0015】
(5)前記(E)白色顔料の平均粒径が、1μm〜50μmの範囲にあることを特徴とする、上記(2)〜(4)のいずれか1項に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【0016】
(6)前記(D)無機充填剤と前記(E)白色顔料の合計量が、前記光反射用熱硬化性樹脂組成物全体に対して70体積%〜85体積%の範囲であることを特徴とする上記(2)〜(5)のいずれか1項に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【0017】
(7)前記配線基板が、リードフレーム、プリント配線板、フレキシブル配線板、およびメタルベース配線板のいずれかであることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法。
【0018】
(8)上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる光半導体素子搭載用パッケージ基板に形成された2つ以上の凹部の各底面に、光半導体素子を搭載する工程、および前記光半導体素子を封止樹脂により覆う工程、を有することを特徴とする光半導体装置の製造方法。
【0019】
(9)前記樹脂封止工程後、前記光半導体素子を1つ有する光半導体装置単体に分割する工程、をさらに有することを特徴とする、上記(8)に記載の光半導体装置の製造方法。
【0020】
(10)前記分割する工程が、ダイシングにより行われることを特徴とする、上記(9)に記載の光半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来必要であった複数の工程をトランスファー成型の一つの工程で行うことが可能となるため、リードタイムの短縮、使用する部材や工程の低減による生産性の向上、低コスト化が可能な光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法および半導体装置の製造方法を提供することが可能となり、また、反りが少ない光半導体素子搭載用パッケージ基板や半導体装置を提供することが可能となる。
また、上記(2)〜(6)に記載したような光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて凹部を形成することで、硬化後の、可視光から近紫外光の反射率が特に優れた光半導体素子搭載用パッケージ基板や光半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のマトリックス状光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造工程を示す概略図である。
【
図2】本発明により得られる光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明により得られる光半導体装置(封止樹脂除く)の一実施形態を示す斜視図である。
【
図4】一般的なSMD型LEDの構造を示す斜視図である。
【
図5】従来のマトリックス状光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造工程の概略図である。
【
図6】マトリックス状光半導体素子搭載用パッケージ基板のダイシング前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、配線基板と、当該配線基板上に形成され、光半導体素子搭載領域となる凹部(貫通孔)が所定位置に2つ以上形成されている光反射用熱硬化性樹脂組成物層とを有する光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法であって、上記光反射用熱硬化性樹脂組成物層をトランスファー成型により一括形成することをその特徴とするものである。
【0024】
上記トランスファー成型による形成について、より具体的には、例えば、上記配線基板として、
図1(a)に示すような、金属配線401を有するプリント配線板400を用い、これを
図1(b)に示すように、所定形状の金型411内に配置し、金型411の樹脂注入口410から光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入する。ついで、注入した光反射用熱硬化性樹脂組成物を好ましくは、金型温度170℃〜190℃で60秒〜120秒、アフターキュア温度120℃〜180℃で1時間〜3時間の条件で熱硬化させた後、金型411を外すことで、凹部(光半導体素子搭載領域)420が2つ以上形成された光反射用熱硬化性樹脂組成物層(リフレクター)421を配線基板上に有する光半導体素子搭載用パッケージ基板430を得ることができる(
図1(c)、(d))。また、凹部底面の、光半導体素子が接続される端子表面に電気めっき等によりNi/Agめっき104を施すこともできる。また、凹部の形状は、特に限定されないが、搭載されたLED素子10が発する光を反射させて上方へ導くようなカップ形状(円錐台形状)であることが望ましい。
【0025】
上記光反射用熱硬化性樹脂組成物としては、公知のものを使用することも可能であるが、好ましくは、熱硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が80%以上であり、熱硬化前には室温(25℃)で加圧成型可能な光反射用熱硬化性樹脂組成物を用い、より好ましくは、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤、(E)白色顔料及び(F)カップリング剤を必須成分として含み、かつ熱硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が80%以上であり、熱硬化前には室温(25℃)で加圧成型可能な光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いる。上記光反射率が80%未満であると、光半導体装置の輝度向上に十分寄与できない傾向がある。より好ましくは、光反射率が90%以上である。また、上記加圧成形は、例えば、室温(約25℃)において、0.5MPa〜2MPaの圧力で、1秒〜5秒程度の条件下で行うことができればよい。また、本発明において用いる光反射用熱硬化性樹脂組成物の熱伝導率は、1W/mK以上であることが好ましい。この熱伝導率が1W/mK未満であると光半導体素子から発生する熱を十分に逃がすことができず、封止樹脂等を劣化させてしまう恐れがある。
【0026】
上記(A)エポキシ樹脂としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができ、特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビフェノール等のジグリシジエーテル、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる鎖状脂肪族エポキシ樹脂及び脂環族エポキシ樹脂などがあり、これらは単独でも、2種以上併用してもよい。また、使用するエポキシ樹脂は、比較的着色のないものであることが好ましく、そのようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0027】
上記(B)硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するものであれば、特に制限はないが、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などが挙げられ、比較的着色のないものであることが好ましい。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、中でも、無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。また、用いる酸無水物系硬化剤は、その分子量が140〜200程度のものであることが好ましく、また、無色ないし淡黄色の酸無水物であることが好ましい。また、これら硬化剤は単独で用いても、二種以上併用して用いてもよい。エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、硬化剤におけるエポキシ基と反応可能な活性基(酸無水基又は水酸基)が0.5当量〜1.5当量となるような割合であることが好ましく、0.7当量〜1.2当量となるような割合であることがより好ましい。活性基が0.5当量未満の場合は、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなる場合があり、一方、1.5当量を超える場合は、耐湿性が低下する場合がある。
【0028】
上記(C)硬化促進剤としては、特に制限はなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、又は併用して用いてもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。硬化促進剤の含有率は、エポキシ樹脂に対して、0.01重量%〜8.0重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1重量%〜3.0重量%であることがより好ましい。硬化促進剤の含有率が、0.01重量%未満では、充分な硬化促進効果を得られない場合があり、また、8.0重量%を超えると、得られる硬化体に変色が見られる場合がある。
【0029】
上記(D)無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等を挙げることができ、これらは単独でも、併用して用いてもよい。熱伝導性、光反射特性、成型性、難燃性の点からは、シリカ、アルミナ、酸化アンチモン、水酸化アルミニウムのうちの2種以上の混合物であることが好ましい。また、無機充填材の粒径は、特に制限はないが、白色顔料とのパッキング効率を考慮すると、平均粒径が1μm〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0030】
上記(E)白色顔料としては、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、無機中空粒子等を挙げることができ、これらは単独でも、併用して用いてもよい。無機中空粒子としては、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、ホウケイ酸ソーダガラス、シラス等がある。熱伝導性、光反射特性の点からは、アルミナ、酸化マグネシウム、無機中空粒子又はそれらの混合物であることが好ましい。また、白色顔料の粒径は、平均粒径が1〜50μmの範囲にあることが好ましい。平均粒径が1μm未満であると粒子が凝集しやすく、分散性が悪くなる傾向があり、50μmを超えると反射特性が十分に得られなくなる傾向がある。
【0031】
上記(D)無機充填材と上記(E)白色顔料の合計量は、光反射用熱硬化性樹脂組成物全体に対して、70〜85体積%の範囲であることが好ましい。この合計量が70体積%未満であると熱伝導性や光反射特性が不十分になる恐れがあり、85体積%を超えると樹脂組成物の成型性が悪くなり、光半導体素子搭載用基板の作製が困難となる傾向がある。
【0032】
上記(F)カップリング剤としては、特に制限はないが、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を用いることができ、シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系などを用いることができる。カップリング剤の種類や処理条件は特に制限はないが、カップリング剤の配合量は、光反射用熱硬化性樹脂組成物全体に対して、5重量%以下であることが好ましい。
【0033】
また、上記光反射用熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤、イオン補足剤等の添加剤を添加してもよい。
【0034】
また、本発明において用いる上記配線基板としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、上記プリント配線のほかに、リードフレーム、フレキシブル配線板、メタルベース配線板等を用いることができる。
【0035】
上記プリント配線は、例えば、銅箔付プリプレグに対して、公知の手法を用いて回路となる配線を形成した後、絶縁用の樹脂を回路上に形成して得ることができる。その際、絶縁用の樹脂及びプリプレグに含浸する樹脂には、LED素子からの光を効率よく反射できるように白色の絶縁樹脂を用いることが望ましい。また、上記リードフレームは、例えば、銅、42アロイ等の基板を公知の手法を用いて回路を形成して得ることができる。その際、基板表面にはLED素子からの光を効率よく反射できるように銀めっきを施しておくことが望ましい。また、上記フレキシブル配線板は、例えば、銅箔付のポリイミド基板を公知の手法を用いて回路となる配線を形成した後、絶縁用の樹脂を回路上に形成して得ることができる。その際、絶縁用の樹脂にはLED素子からの光を効率よく反射できるように白色の絶縁樹脂を用いることが望ましい。また、上記メタルベース配線板は、例えば、銅やアルミニウムの基板に絶縁層を形成し、公知の手法を用いて回路となる配線を形成した後、絶縁用の樹脂を回路上に形成して得ることができる。その際、金属基板上の絶縁層及び回路絶縁用の樹脂にはLED素子からの光を効率よく反射できるように白色の絶縁樹脂を用いることが望ましい。
【0036】
本発明の光半導体装置の製造方法は、上記本発明の光半導体素子搭載用パッケージ基板の製造方法により得られた光半導体素子搭載用パッケージ基板に形成された2つ以上の凹部の各底面に、光半導体素子を搭載する工程、および当該光半導体素子を透明な封止樹脂により覆う工程、を有することをその特徴とするものである。
【0037】
より具体的には、例えば、
図1(c)および(d)に示す光半導体素子搭載用パッケージ基板430の凹部420の各底面の所定位置に、例えば、
図2および
図3に示すように、光半導体素子100を搭載し、該光半導体素子100と金属配線105とをボンディングワイヤ102、はんだバンプ107等の公知の方法で電気的に接続した後、公知の蛍光体106を含む透明な封止樹脂101により該光半導体素子100を覆うことで本発明の光半導体装置を製造する。なお、
図1(c)および(d)には、光半導体素子を搭載する凹部が9箇所形成された場合について示されているが、本発明がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0038】
また、上記樹脂封止工程後に、マトリックス状である上記光半導体装置を、ダイシング、レーザ加工、ウォータージェット加工、金型加工等の公知の方法により分割することで、光半導体素子を1つ有する光半導体装置単体(SMD型光半導体装置)を得ることができる。好ましくは、
図6に示すような、マトリックス状の光半導体装置にダンシングラインを形成し、これに沿ってダイシングする。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
<プリント配線板>
基板厚さ0.6mm及び銅箔厚さ18μmのガラス布−エポキシ樹脂含浸両面銅張り積層板であるMCL−E−679(日立化成工業(株)製、商品名)に、穴あけ、無電解めっきを行い、通常のサブトラクト法によって回路を形成し、銅の回路の保護にソルダーレジストを形成し、プリント配線板を作製した。
【0040】
<光反射用熱硬化性樹脂組成物>
下記組成の材料を混練温度20〜30℃、混練時間10分の条件でロール混練を行い、光反射用熱硬化性樹脂組成物を作製した。
【0041】
(A)エポキシ樹脂:トリグリシジルイソシアヌレート
100重量部(エポキシ当量100)
(B)硬化剤:ヘキサヒドロ無水フタル酸
140重量部
(C)硬化促進剤:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート
2.4重量部
(D)無機充填剤:溶融シリカ(平均粒径20μm)
600重量部
アルミナ(平均粒径1μm)
890重量部
(E)白色顔料:ホウケイ酸ソーダガラス中空粒子(3M製、S60HS、平均粒径27μm)
185重量部
(F)カップリング剤:エポキシシラン
19重量部
(G)酸化防止剤:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド
1重量部
【0042】
<光半導体素子搭載用パッケージ基板の成型>
上記で得たプリント配線板を
図1(b)に示すような形状の金型に位置あわせして取り付け、上記で得た光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入した後、金型温度180℃、90秒間、6.9MPaの条件でトランスファー成型機(藤和精機(株)製、TEP150)により加熱加圧成型し、複数の凹部を有する、1600mm
2のマトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板を作製した。
【0043】
<光半導体装置の製造>
上記で得た光半導体素子搭載用パッケージ基板に形成された各凹部底面の回路上に、LED素子をダイボンド材(日立化成工業(株)製、EN4620K)にて固定し、150℃で1時間加熱することによりLED素子を端子上に固着させた。ついで、金線でLED素子と端子を電気的に接続した後、下記組成の透明封止樹脂をポッティングにより各凹部に流し込み、150℃で2時間加熱硬化し、LED素子を樹脂封止した。
【0044】
(透明封止樹脂組成)
・水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂:デナコールEX252(ナガセケムテックス社製)
90重量部
・脂環式エポキシ樹脂:CEL−2021P(ダイセル化学社製)
10重量部
・4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物HN−5500E(日立化成工業製)
90重量部
・2、6ジターシャルブチル−4−メチルフェノールBHT
0.4重量部
・2−エチル−4−メチルイミダゾール
0.9重量部
【0045】
<ダイシング>
上記透明封止樹脂を硬化させた後、マトリックス状の光半導体装置をダイシング装置((株)ディスコ製、DAD381)により個片化し、LED素子を1つ有する単体の光半導体装置(SMD型LED)を複数製造した。
【0046】
(実施例2)
プリント配線板の代わりにリードフレームを用いた以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を製造した。
【0047】
(実施例3)
プリント配線板の代わりにメタルコア基板を用いた以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を製造した。
【0048】
(実施例4)
プリント配線板の代わりにフレキシブル基板を用いた以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を製造した。
【0049】
(実施例5)
プリント配線板の代わりに、複数のLED素子をマトリックス状態で動作させるための回路を形成した配線基板を用い、また、樹脂封止後のダイシングを行わなかった以外は、実施例1と同様にして、マトリックス状の光半導体装置を製造した。
【0050】
(比較例1)
光反射用樹脂組成物として、熱可塑性のポリフタルアミドを用い、これを射出成型することにより(金型温度100〜220℃、射出圧力490〜1120kg/cm
2、保持時間10〜40秒、背圧7〜70kg/cm
2、サイクル時間20〜60秒、押出器ノズル温度330〜360℃、バレル先端温度320〜350℃、スクリュー回転速度20〜60回転/分)、凹部を有する樹脂層板(リフレクター)を作製した。
【0051】
(比較例2)
光反射用樹脂組成物として、熱可塑性のポリフタルアミドを用い、これを比較例1と同様の条件で射出成型することにより作製した複数の凹部を有する樹脂層板(リフレクター)と、複数のLEDを所定位置に搭載したプリント配線板との間に、上記樹脂基板の貫通穴の位置に合わせて穴開けした接着シート(日立化成工業(株)製、AS−3000)を位置合わせして挟み、これを170℃、0.2MPa、60分の条件で加熱加圧硬化することより一体化し、光半導体装置を製造した。
【0052】
実施例1〜5により製造された光半導体素子搭載用パッケージ基板は、その反りが0.5mm未満であり、また、当該パッケージ基板に形成された複数の凹部底面に光半導体素子を搭載し、これを樹脂封止して製造したマトリックス状の半導体装置からは、そのダイシングによりSMD型LEDを効率的に多数製造することが可能であった。
【0053】
一方、比較例1で製造した凹部を有する樹脂層板は、大きな反りが発生し、マトリックス状樹脂層板(リフレクター)とプリント配線板の間に剥離が生じ、その後の実装工程等を行うことが困難であった。また、比較例2においては、実施例と同様の光半導体装置を製造することができたが、複数の工程と複数の部材を用いる必要があるため、実施例と比較して効率が悪く、経済的ではない。
【符号の説明】
【0054】
1 LED素子搭載用パッケージ基板
2 配線基板
4 樹脂層(リフレクタ−)
4a 上部開口
4b 下部開口
4c 側面
4d 貫通穴
5 接着シート
10 LED素子
12 LED素子実装済み配線基板
14 樹脂層板(リフレクタ−)
15 接着シート
15a 穴
20 ダイシングライン
100 光半導体素子(LED素子)
101 封止樹脂
102 ボンディングワイヤ
103 リフレクター
104 Ni/Agめっき
105 金属配線
106 蛍光体
107 はんだバンプ
110 光半導体装置
400 プリント配線板
401 金属配線
402 層間接続穴
403 ソルダーレジスト
410 樹脂注入口
411 金型
420 凹部(光半導体素子搭載領域)
421 光反射用熱硬化性樹脂硬化物(リフレクター)
430 マトリックス状の光半導体素子搭載用パッケージ基板