【実施例1】
【0016】
以下、本発明に係る実施例の光ファイバケーブルを図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る実施例1の光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
図1に示す実施例1の光ファイバケーブルは、自己支持型光ファイバケーブルであり、ケーブル本体部1と、支持線9が内部に収納された支持線部2と、ケーブル本体部1及び支持線部2を繋ぐ首部3とで構成されている。
【0017】
ケーブル本体部1の中央には、SZ撚りされた複数の光ファイバ心線4からなる光ファイバユニットが設けられている。SZ撚りとは、複数本の線条を一方向に捻回し、長さ方向にある距離を隔ててから捻回の方向を逆転し、さらに長さ方向に同じある距離を隔ててから捻回の方向を元に戻し、これを繰り返すという状態を言う。
【0018】
なお、SZ撚りされた複数の第1光ファイバ心線4からなる光ファイバユニットを用いる代わりに、一方向撚りされた複数の光ファイバ心線4からなる光ファイバユニットを用いても良い。SZ撚り又は一方向撚りのピッチは、例えば800mmである。
【0019】
さらに、複数の光ファイバ心線4の外周には押さえ巻き5が縦添えして施されている。押さえ巻き5としては、例えば、不織布などからなる押さえ巻きテープが巻かれている。押さえ巻き5は、例えば、熱可塑性樹脂からなる。押さえ巻き5の外周にはシース8が施されている。シース8は、例えば、PE(ポリエチレン)などからなる。
【0020】
シース8の中には2つの抗張力体(テンションメンバ)6が互いに略180度の位置に配置されている。また、シース6の中には2つの抗張力体(テンションメンバ)6と略直交する方向に引き裂き紐7が設けられている。
【0021】
(実施例1の光ファイバケーブルの特徴的な構成)
次に、実施例1の光ファイバケーブルの特徴的な構成について説明する。まず、ケーブルに対する光ファイバ余長率、ケーブル解体時のケーブル長に対する押さえ巻き余長率との差分、即ち押さえ巻き5に対する光ファイバ心線4の相対余長が大きいほど、中間分岐時に光ファイバ心線4が飛び出し易くなる。つまり、ケーブルを解体すると、光ファイバ心線4の外被と押さえ巻き5間の密着が開放され、押さえ巻き5の歪みが解放されて縮み、光ファイバ心線4の相対余長率が増加して飛び出す力が生じる。
【0022】
ここで、押さえ巻き5のコア(光ファイバユニット)に対するラップ率が高ければ、飛び出そうとして膨らんだコアを保持するための周長が確保されて飛び出しの発生を防ぐことができる。しかし、ラップ率が低ければ、コアが飛び出してしまう。なお、このコアの膨らみは光ファイバ心線4の撚り方に影響され、SZ撚りの場合、S撚りとZ撚りの反転部が解放されることから、一方向撚りよりもコアの膨らみが大きくなり、コアが飛び出し易くなる。即ち、押さえ巻き5からの光ファイバユニットの飛び出しは、光ファイバユニット上に縦添えした押さえ巻き5のラップ率にも依存する。
【0023】
そこで、本出願人の発明者らは、ケーブル解体時のケーブル長に対する光ファイバ余長率をBとし、ケーブル解体時のケーブル長に対する押さえ巻き余長率をAとし、押さえ巻き5の光ファイバユニットに対するラップ率をRとし、光ファイバ余長率B、押さえ巻き余長率A、ラップ率Rを変化させたときの、一方向撚りしたケーブルの中間分岐時の光ファイバ心線4の押さえ巻き5からの飛び出しの有無、SZ撚りしたケーブルの中間分岐時の光ファイバ心線4の押さえ巻き5からの飛び出しの有無、及び製造性について、確認した。この確認結果を
図2に示す。
【0024】
なお、光ファイバ余長率Bは、(光ファイバ長さ平均値−ケーブル長さ)/ケーブル長さ×100〔%〕である。押さえ巻き余長率Aは、(押さえ巻き長さ−ケーブル長さ)/ケーブル長さ×100〔%〕である。ラップ率Rは、押さえ巻き幅/(光ファイバユニット直径×π)〔周〕である。
【0025】
また、この例では、厚さ25μm、ヤング率4GPaのポリエステルフィルムを押さえ巻き5とし、撚り合わせた光ファイバユニット上に縦添えしながらシース8を被覆し、200心ケーブル、及び60心ケーブルを試作した。また、光ファイバ心線4には間欠的接着型4心テープ心線を用い、200心ケーブルについては、20心毎にバンチングを施し、合計で10個の光ファイバユニットとし、60心構造は3個の光ファイバユニットとしてそれぞれSZ撚り、一方向撚りした。
【0026】
ケーブル外径は、200心構造でケーブル本体部外径をφ10.5mm、60心構造でケーブル本体部外径をφ8.5mmとした。集合ユニット径は200心構造で5.5mm、60心構造で3.0mmとした。
【0027】
また、光ファイバ余長は、製造時の光ファイバ心線4のバックテンションをコントロールし、押さえ巻き余長は、製造時の押さえ巻き5のバックテンションをコントロールし、ラップ率は、押さえ巻き幅を変えて行った。
【0028】
ケーブルの中間分岐時の光ファイバ4の押さえ巻き5からの飛び出しの有無の確認については、ケーブルに1%のたるみを持たせた状態でケーブルを架台に取り付け、ケーブルの中間部700mmの外被(シース)を剥ぎ取り(中間分岐)、10分後に押さえ巻き5からの光ファイバ心線4の飛び出しの有無を確認した。光ファイバ心線4の飛び出しがあった場合には「有」、光ファイバ心線4の飛び出しがなかった場合には「無」とした。
【0029】
図2に示す確認結果に基づき、ラップ率が1.5周〜2.1周において、SZ撚りでは、B−Aが0.25〜0.60であり、一方向撚りでは、B−Aが0.25〜0.70であるときに、ケーブル中間分岐時に押さえ巻き5の収縮による光ファイバ心線4の飛び出しの発生はなかった。
【0030】
また、押さえ巻き5のラップ率が高くなると、ラップした押さえ巻き5の内側と外側にかかる張力に差が生じ易く、長い条長での試作時に押さえ巻きが折れたり、反転したりする。この場合、6000m長の試作を行い、押さえ巻き5の折れや反転が生じ、特性異常が生じた場合に×とした。製造性については、ラップ率が2.1周では、製造時に押さえ巻き5の折れが発生し、伝送特性の劣化が確認された。
【0031】
以上のことから、SZ撚りでは、0.25≦(B−A)≦0.60、一方向撚りでは、0.25≦(B−A)≦0.70、SZ撚り及び一方向撚りでは、1.5≦R≦2.0である必要がある。また、
図2に示すように、ケーブル解体時のケーブル長に対する光ファイバ余長率Aが0.05%以上であり、ケーブル解体時のケーブル長に対する押さえ巻き余長率Bが−0.2%以下である必要がある。
【0032】
また、押さえ巻き5を熱可塑性樹脂で構成することにより、ケーブル製造時の外被被覆時の熱でその形状を保持し、ケーブル分岐時においても特に粗巻き等のバインドが無くても光ファイバユニットを覆うことができる。
【0033】
このように実施例1に係る光ファイバケーブルによれば、複数の光ファイバ心線4をSZ撚りした光ファイバユニットを用いた場合に、押さえ巻き5の光ファイバユニットに対するラップ率が光ファイバユニットの直径に対して1.5周以上2.0周以下であり、ケーブル解体時のケーブル長に対する光ファイバ余長率をBとし、ケーブル解体時のケーブル長に対する押さえ巻き余長率をAとした場合に、0.25≦(B−A)≦0.60の関係を有するので、ケーブル中間分岐時に押さえ巻き5の収縮による光ファイバ心線4の飛び出しを抑制できる。
【0034】
また、複数の光ファイバ心線4を一方向撚りした光ファイバユニットを用いた場合に、光ファイバユニットに対するラップ率が光ファイバユニットの直径に対して1.5周以上2.0周以下であり、ケーブル解体時のケーブル長に対する光ファイバ余長率をBとし、ケーブル解体時のケーブル長に対する押さえ巻き余長率をAとした場合に、0.25≦(B−A)≦0.70の関係を有するので、ケーブル中間分岐時に押さえ巻き5の収縮による光ファイバ心線4の飛び出しを抑制できる。
【0035】
ここで、SZ撚り及び一方向撚りの場合の(B−A)の下限を0.25とした理由を説明する。長期間ドラム等にケーブルを巻いた状態にすると、光ファイバ単体に伸び歪みが加わり、断線が発生する可能性がある。このため、この状態を想定した光ファイバ余長率Bの下限は、0.05%となる。また、ポリエステルフィルムを用いた押さえ巻きは、それ単体が延伸により成形されているため、押し出し成型時の熱により少なくともA=−0.20%の収縮が発生する。このため、安価且つ高信頼性のケーブルを製造するためには、B−Aの下限は0.25となる。言い換えれば、安価且つ高信頼性のケーブルを製造するためには、ケーブル解体時のケーブル長に対する光ファイバ余長率Bが0.05%以上であり、ケーブル解体時のケーブル長に対する押さえ巻き余長率Aが−0.2%以下であることが望ましい。
【0036】
なお、(B−A)の下限は、0(ゼロ)であっても良い。コストの高い光ファイバや押さえ巻きを用いれば、A及びBの値をそれぞれ0%にすることが可能であるため、(B−A)の下限を0にすることが理論的に可能である。