特許第5956987号(P5956987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5956987柱状化ケイ酸塩化合物及びその製造方法、並びに柱状化ケイ酸塩化合物の利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5956987
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】柱状化ケイ酸塩化合物及びその製造方法、並びに柱状化ケイ酸塩化合物の利用
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/20 20060101AFI20160714BHJP
【FI】
   C01B33/20
【請求項の数】27
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-517646(P2013-517646)
(86)(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公表番号】特表2013-533842(P2013-533842A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】IB2011052913
(87)【国際公開番号】WO2012001663
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2010/074920
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】イルマズ,ビルジ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】デ ベルデメカー,トレース
(72)【発明者】
【氏名】ギース,ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】シヤオ,フォン−ショウ
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 敬
(72)【発明者】
【氏名】パオ,シンホー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェイピン
(72)【発明者】
【氏名】デ フォス,ディルク
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−301712(JP,A)
【文献】 特開平05−139720(JP,A)
【文献】 特開昭54−016386(JP,A)
【文献】 特開昭54−005884(JP,A)
【文献】 特開昭61−295222(JP,A)
【文献】 特開平10−338516(JP,A)
【文献】 特開2008−056545(JP,A)
【文献】 特開平09−100116(JP,A)
【文献】 P. WU et al.,Methodology for Synthesizing Crystalline Metallosilicates with Expanded Pore Windows Through Molecular Alkoxysilylation of Zeolitic Lamellar Precursors,J. Am. Chem. Soc.,2008, 130, 8178-8187.,Published on Web 06/04/2008.
【文献】 理化学辞典,第5版,1031ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層ケイ酸塩構造と、該ケイ酸塩構造の隣接するケイ酸塩層間に位置する架橋金属原子とからなり、
該架橋金属原子が隣接するケイ酸塩層のそれぞれに少なくとも一個の共有結合を形成している柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項2】
上記積層ケイ酸塩構造がゼオライト型層からなる群から選ばれるケイ酸塩層を含む請求項1の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項3】
上記積層ケイ酸塩構造が、一種以上の積層ケイ酸塩化合物を起源とする及び/又は一種以上の積層ケイ酸塩化合物に由来し、
該一種以上の積層ケイ酸塩化合物が、MCM−22とPREFER、Nu−6(2)、CDS−1、PLS−1、MCM−47、ERS−12、MCM−65、RUB−15、RUB−18、RUB−20、RUB−36、RUB−38、RUB−39、RUB−40、RUB−42、RUB−51、BLS−1、BLS−3、ZSM−52、ZSM−55、カネマイト、マカタイト、マガジイト、ケニヤイト、レブダイト、モンモリロナイト、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の積層ケイ酸塩を含む請求項1または2の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項4】
上記積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層が同形置換される請求項1〜3のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項5】
上記架橋金属原子が、
LiとBe、Mg、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の金属を含む請求項1〜4のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項6】
上記架橋金属原子が、AlとBとTiからなる群から選ばれる一種以上の元素を含まない請求項1〜5のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項7】
回折試験でCu−K(α1)線を用いる場合、上記柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターン中の最大ピーク(100%強度)の2θ回折角度が、上記積層ケイ酸塩化合物のX線回折パターン中の相当する最大ピーク(100%強度)の2θ回折角より0.05〜1.45°2θ低い請求項3〜6のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項8】
回折試験でCu−K(α1)線を用いる場合、X線回折パターンの最大ピーク(100%強度)が、2θ回折角で3〜14°2θの範囲にある請求項1〜7のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項9】
DIN66135により測定したBET表面積が50〜950m/gの範囲である請求項1〜8のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項10】
(1)一種以上の積層ケイ酸塩化合物と一種以上の金属化合物と一種以上の溶媒を含む酸性混合物を与える工程と
(2)工程(1)で得られた混合物を反応させて少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩化合物を得る工程とを含み、
工程(2)での混合物の反応が、自生圧力下での上記混合物の100℃以上の温度での加熱を含むものである請求項1〜9のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法。
【請求項11】
工程(2)での上記混合物の反応が上記混合物のソルボサーマル条件下での加熱を含むものである請求項10の方法。
【請求項12】
工程(2)での加熱が、110〜250℃の範囲の温度で行われる請求項10又は11の方法。
【請求項13】
上記酸性混合物中に含まれる一種以上の溶媒が水を含む請求項10から12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
工程(1)でさらに一種以上の酸が与えられる請求項10から13のいずれか一項の方法。
【請求項15】
上記一種以上の金属化合物が一種以上のルイス酸を含み、該ルイス酸性度が上記一種以上の溶媒に対するものである請求項10から14のいずれか一項の方法。
【請求項16】
工程(1)で与えられる混合物のpHが−0.5〜5の範囲である請求項10から15のいずれか一項の方法。
【請求項17】
上記一種以上の積層ケイ酸塩化合物が、MCM−22とPREFER、Nu−6(2)、CDS−1、PLS−1、MCM−47、ERS−12、MCM−65、RUB−15、RUB−18、RUB−20、RUB−36、RUB−38、RUB−39、RUB−40、RUB−42、RUB−51、BLS−1、BLS−3、ZSM−52、ZSM−55、カネマイト、マカタイト、マガジイト、ケニヤイト、レブダイト、モンモリロナイト、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の積層ケイ酸塩を含む請求項10から16のいずれか一項の方法。
【請求項18】
上記一種以上の積層ケイ酸塩化合物の一種以上が同形置換される請求項10から17のいずれか一項の方法。
【請求項19】
上記一種以上の金属化合物が、LiとBe、Mg、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の金属を含む請求項10から18のいずれか一項の方法。
【請求項20】
上記一種以上の金属化合物が、金属塩、金属錯体、有機金属化合物、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の金属化合物を含む請求項10から19のいずれか一項の方法。
【請求項21】
上記の金属塩の群が、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属リン酸塩、金属亜リン酸塩、金属ホスホン酸塩、金属ホスフィン酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩、金属スルホン酸塩、金属アルコキシド、金属錯体、およびこれらの二つ以上の組合せ及び/または混合物、からなる群から選ばれる一種以上の化合物を含む請求項20の方法。
【請求項22】
上記有機金属化合物の群が、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機マンガン化合物、有機鉄化合物、有機コバルト化合物、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機パラジウム化合物、有機銀化合物、有機スズ化合物、有機白金化合物、有機金化合物、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる一種以上の有機金属化合物を含む請求項20または21の方法。
【請求項23】
上記混合物を工程(2)で1〜72時間反応させる請求項10から22のいずれか一項の方法。
【請求項24】
さらに、
(3)工程(2)で得られる混合物から柱状化ケイ酸塩を分離する工程;及び/又は
(4)工程(3)から得られる柱状化ケイ酸塩を洗浄及び/又は乾燥する工程を含む請求項10から23のいずれか一項の方法。
【請求項25】
さらに、
(5)工程(2)及び/又は(3)及び/又は(4)で得られる柱状化ケイ酸塩を焼成する工程を含む請求項10から24のいずれか一項の方法。
【請求項26】
成型物中に含まれている請求項1〜9のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物。
【請求項27】
請求項1〜9と請求項26のいずれか一項の柱状化ケイ酸塩化合物の、モレキュラーシーブ、触媒、触媒成分、触媒担体またはそのバインダーしての、吸収材としての、イオン交換のための、セラミックスの製造のための又はポリマー中での利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ケイ酸塩構造と、該ケイ酸塩構造の隣接するケイ酸塩層間に位置する架橋金属原子とからなる柱状化ケイ酸塩化合物と、このような柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法に関し、また上記プロセス方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物に関する。また本発明は、柱状化ケイ酸塩化合物のいろいろな用途での利用に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒の分野では、また例えば吸着または吸着プロセスの分野では、新しい空孔構造をもつ新規の骨格構造の提供は、新しい反応性及び/又は改善された性能を示す触媒や触媒成分、触媒担体材料の開発にきわめて重要な役割を果たす。この点で、過去ならびに現在の研究において、トポタクティクな手法での積層ケイ酸塩の縮合による新しいゼオライト系骨格の形成が熱心に調べられている。
【0003】
このため、MWW型やFER型、CDO型の層をもついくつかの積層ケイ酸塩とジエトキシジメチルシランの反応による生成物の合成とその特性評価がP. Wuetal.; J.Am. Chem. Soc、130,2008、pp. 8178−8187に開示されている。特に、ここに記載のシリル化生成物は、特定の積層ケイ酸塩前駆体を硝酸中で還流させ、次いで焼成する方法により得られている。この方法により、積層ケイ酸塩構をもつ造柱状化ケイ酸塩化合物であって、そのケイ酸塩層が相互に架橋ケイ素原子を経由して共有結合し三次元骨格を形成しているものを得ることができる。
【0004】
J. Ruan et al.; Chem. Mater.、21,2009、pp. 2904−2911で検討されているように、FER板状前駆体(PREFER)のアルコキシシリル化に関して、この柱状化ケイ酸塩生成物を焼成すると、架橋ケイ素基の相互の他の反応がおこり、これらが架橋酸素原子を経由して相互に架橋される。また、Ruanらは、アルコキシシリル化法を、シリル化を誘導するための水熱法の使用にまで拡大させる。
【0005】
したがって、積層ケイ酸塩構造を含む柱状化ケイ酸塩化合物で、ケイ酸塩構造のケイ酸塩層がケイ素基で架橋されているものは公知である。また、上記柱状化ケイ酸塩化合物の焼成で、架橋ケイ素基の縮合による他の架橋が起こり、層間空間にさらにSi−O−Si架橋が形成されることが知られている。このため、積層ケイ酸塩化合物の共有柱状化がアルコキシシリル化法で可能で、三次元的なゼオライト系材料を与えることが先行技術から知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Am. Chem. Soc、130,2008、pp. 8178−8187
【非特許文献2】J. Ruan et al.; Chem. Mater.、21,2009、pp. 2904−2911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、新規の性質を示す、特に物理的性質と触媒活性において新規の性質を示す新規の柱状化ケイ酸塩化合物を提供することである。特に本発明の目的は、柱状化の概念を新しい種類の柱状化構造に広げることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明の柱状化ケイ酸塩化合物により、また本発明のこのような化合物の製造方法により達成される。また上記目的はまた、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物で達成される。
【0009】
したがって、本発明は、積層ケイ酸塩構造と該ケイ酸塩構造の隣接するケイ酸塩層間に位置する架橋金属原子とからなり、該架橋金属原子が隣接するケイ酸塩層のそれぞれに少なくとも一個の共有結合を形成している柱状化ケイ酸塩化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の意味する範囲内では、また特にその具体的な実施様態において、
「含む」は、好ましくは「からなる」を意味するものとする。
【0011】
したがって本発明によれば、驚くべきことに、その柱状化ケイ酸塩化合物の隣接するケイ酸塩層間にある架橋元素が隣接するケイ酸塩層に共有結合を形成する金属原子を含む柱状化ケイ酸塩化合物が与えられる。本発明の意味の範囲内では、「隣接する」層または「近接する」層は、積層構造中で互いに直接積み重なり、その間に他の層が存在しない層をいう。
【0012】
特に、驚くべきことに、積層ケイ酸塩構造中に、ケイ酸塩層中にある共有架橋元素として触媒活性中心を導入することができることが分った。より具体的には、驚くべきことに、積層ケイ酸塩構造中の極めて特異な環境を示す正確に決められた位置に触媒活性中心を有する柱状化ケイ酸塩化合物が提供される。したがって、含浸法等でケイ酸塩担体材料への触媒活性金属を塗布する先行技術の触媒と異なり、本発明の化合物は、驚くべきことに、触媒活性金属を決められた様態で非常に特異的に導入させることができる。例えば、本発明によれば、事実、ケイ酸塩中の所定の位置で、即ち所定環境内に単原子金属を特異的に導入することができる。
【0013】
強調すべきは、このケイ酸塩化合物が、金属が統計的に導入される、即ち金属が実際ケイ酸塩基材の無数の可能な位置上に散らばっている先行技術のケイ酸塩化合物と較べて、特に各金属原子の実際全ての位置で見出される異なる環境の点で異なっていることである。また、既知の含浸法等を使用すると、金属クラスターや類似の凝集物の形成を避けることができない。これは金属の負荷プロセス自体に悪影響を与えるばかりか、このような金属負荷後のケイ酸塩の利用、例えば高温で厳しい化学的条件下(拡散処理が上記の極めて望まざる影響を強める)での触媒としての利用に悪影響を与える。したがって、本発明によれば、上記金属原子が極めて均一で正確に所定位置に存在しており、隣接ケイ酸塩層との共有結合で高度に安定化された金属原子を含むケイ酸塩構造を提供することができる。特に理論に拘泥するのではないが、隣接ケイ酸塩層の架橋金属原子へのキレート効果が、驚くほど高い位置安定性を与え、これが本発明の効果に寄与している、特にその触媒的利用における効果に寄与していると考えられている。
【0014】
したがって、驚くべきことに本発明によれば、金属中心の触媒活性が極めて最適化された能率をもつため、また高秩序ケイ酸塩構造中の特定位置に金属原子が存在して触媒活性が極めて均一となるため、極めて好ましい、まったく新規な極めて設計可能な柱状化ケイ酸塩化合物を提供することができる。
【0015】
したがって、既存の方法(ランダムな付着とクラスター成形がおこるため、非常に高い活性値と選択性の両方を示す触媒構造を提供する可能性が低く、上記活性を得るために塗布すべき金属の量に関する効率が大きく低下する)では決してできなかった触媒設計が提供される。この結果、触媒サイトが高度に適正化されているため、また比較可能な活性を与えるためには、担持触媒構造中で通常使用される、高価なことの多い金属の量のほんの一部のみが必要となるため、本発明はまた、極めて経済的な触媒設計を可能とする。また、触媒自体が極めて高効率であるためその量を大きく減らすことができ、このため、従来の触媒よりかなり少量で使用可能であり、使用時の老化に対して高い耐性を有する、特に触媒用途で遭遇するクラスター形成の増加や他の形の失活に対して高い耐性を有する極めて経済的な触媒が提供される。
【0016】
本発明の意味の範囲内では、「柱状化ケイ酸塩化合物」は、一般的には考えうるいずれかの積層ケイ酸塩構造であって、そのケイ酸塩層が、架橋元素としての適当な化学基により相互に共有結合されているものをいう。また、上記定義によると、架橋は積層ケイ酸塩構造の隣接するケイ酸塩層の表面間で起こり、それぞれの表面の十分な部分が上記架橋元素と共有結合を形成する。本発明の意味の範囲内では、好ましくは上記架橋元素と共有結合を形成可能なケイ酸塩層表面上にある原子または化学基の10%以上が実際このような化学結合に加わり隣接するケイ酸塩層の共有結合の架橋をしているなら、表面の十分な部分が架橋元素に共有結合している。好ましくは、この十分な部分のケイ酸塩層は、各ケイ酸塩層表面の30%以上の上記表面原子または化学基がこのような共有結合に加わっている柱状化ケイ酸塩化合物を、より好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.99%以上の上記表面原子または化学基がこのような共有結合に加わっている柱状化ケイ酸塩化合物をいう。
【0017】
また、本発明で用いられる「積層ケイ酸塩構造」は、一般的には平行に積み重ねられた通常配列のケイ酸塩シート層を含む構造をいう。本発明において、上記積層ケイ酸塩構造中に含まれる層は、このため「ケイ酸塩層」と呼ばれる。したがって、本発明の意味の範囲内では、積層ケイ酸塩構造は、フィロケイ酸塩に見られるようなケイ酸塩層配列または層状ゼオライト構造に見られるような通常の積重ねケイ酸塩層とこのような層状ゼオライト構造の積層前駆体をいい、本発明の特に好ましい実施様態においては、この積層ケイ酸塩構造は、層系のゼオライト構造及び/又は層状ゼオライト構造の積層前駆体から選ばれ、具体的にはMCM−22やPREFER、Nu−6(2)、CDS−1、PLS−1、MCM−47、ERS−12、MCM−65、RUB−15、RUB−18、RUB−20、RUB−36、RUB−38、RUB−39、RUB−40、RUB−42、RUB−51、BLS−1、BLS−3、ZSM−52、ZSM−55、およびこれらの二つ以上の組合せから選ばれる。
【0018】
また、化学結合の性質を定義するのに、特にケイ酸塩層と架橋元素の間に存在する化学結合を定義するのに本発明で用いられる「共有結合」は、二個の実質的に非イオン性元素の間の化学結合相互作用をいう。より詳細には、共有結合は、電荷の違い及び/又は極性相互作用による静電的相互作用ではなく、主にそれぞれの原子軌道及び/又は分子軌道の相互作用により形成される上記元素間の結合相互作用をいう。好ましくは本発明の意味の範囲内では、共有結合は、10%以上が化学的に非イオン性である結合をいい、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、andさらに好ましくは95%以上が非イオン性である結合をいう。
【0019】
したがって、上述のように上記層の共有架橋が、実質的に架橋金属原子でもたらされるこれらの層間の共有結合によるものであるなら、本発明の柱状化ケイ酸塩化合物は、一定量の、隣接するケイ酸塩層間に存在するイオン性相互作用及び/又は極性相互作用による同層間の架橋相互作用及び/又は非金属原子による隣接するケイ酸塩層の共有架橋による架橋相互作用を排除するものではない。特に本発明の意味の範囲内では、それぞれのケイ酸塩層表面の十分な部分が架橋金属原子と共有結合しているなら、好ましくは上記架橋金属原子と共有結合を形成可能なケイ酸塩層表面上にある原子または化学基の10%以上がこのような化学結合に実際参加して隣接するケイ酸塩層に共有結合架橋をしているなら、架橋金属原子での共有結合による上記の層の架橋が「実質的に」であるという。本発明の好ましい実施様態においては、ケイ酸塩層の必須の部分とは、それぞれのケイ酸塩層表面の30%以上の上記表面原子または化学基が架橋金属原子との共有結合に参加している柱状化ケイ酸塩化合物を、より好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.99%以上が参加している柱状化ケイ酸塩化合物をいう。なお、本発明の意味の範囲内では、「非金属」原子は一般的には、半金属のSiとAs、Se、Sb、Te、Po、Atが含まれる。
【0020】
したがって、本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の好ましい実施様態においては、柱状化ケイ酸塩化合物中のケイ酸塩層間の共有架橋は、実質的に架橋金属原子とケイ酸塩層の間で形成された共有結合によるものである。
【0021】
一般に本発明によれば、架橋金属原子とケイ酸塩層の間で形成されるこの種の共有結合は特に限定されず、特に金属が上記共有結合を形成するケイ酸塩層の元素または化学基の点で限定されない。本発明の特に好ましい実施様態においては、上記架橋金属原子の共有結合は、金属とそれぞれのケイ酸塩層中に含まれる一個以上の酸素原子の間の共有結合をいう。
【0022】
また、架橋金属原子が隣接するケイ酸塩層を相互に共有的に結合させるなら、即ち架橋金属原子が挟まれて位置している二つの隣接するケイ酸塩層のそれぞれと架橋金属原子との間で、少なくとも一個の共有結合がそれぞれの形成されるのなら、架橋金属原子と隣接するケイ酸塩層間で形成される共有結合の数と種類は特に限定されない。したがって、特定の実施様態では、架橋金属原子は、挟まれる二つの隣接するケイ酸塩層の一方または両方に2つ以上の共有結合を形成していてもよい。本発明の好ましい意味の範囲内では、2個以上の共有結合は、2個以上の一重結合、一個以上の二重結合または三重結合、または一重結合、二重結合及び/又は三重結合の組合せをいうことがある。
【0023】
本発明によれば、上記の層が上記ケイ酸塩層間に位置する架橋金属原子への共有結合形成に適しているなら、この柱状化ケイ酸塩化合物がいずれの種類のケイ酸塩層を含んでいてもよい。上記ケイ酸塩層がゼオライト構造及び/又は層状ゼオライト構造の前駆化合物に見出されるような層を含む本発明の好ましい実施様態においては、上記ケイ酸塩層がゼオライト型層からなる群から選ばれることがさらに好ましい。一般に、このようなゼオライト型層は、これらが積層ケイ酸塩構造の形成に適当であり、両界面間に位置する架橋金属原子に共有結合で適当に結合できるなら、考えうるいずれかの種類のゼオライト構造から選ばれてもよく、なお、上記ゼオライト型層は、好ましくはHEU型層、FER型層、MWW型層、RWR型層、CAS型層、SOD型層、RRO型層、または2以上の異なる種類の上記の特定ゼオライト型層の組合せからなる群から選ばれる。特に好ましい実施様態においては、この柱状化ケイ酸塩化合物がFER型層を含む。
【0024】
したがって、本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の好ましい実施様態では、この積層ケイ酸塩構造が、ゼオライト型層からなる群から選ばれるケイ酸塩層、好ましくはHEU型層、FER型層、MWW型層、RWR型層、CAS型層、SOD型層、RRO型層、または2つ以上の異なる種類のこれらのゼオライト型層の組合せからなる群から選ばれるケイ酸塩層であり、さらに好ましくはこの積層ケイ酸塩構造がFER型層を含む。
【0025】
本発明の好ましい実施様態においては、この柱状化ケイ酸塩化合物の積層ケイ酸塩構造が、実際、一種以上の積層ケイ酸塩化合物からできたものであり、好ましくは製造に用いられた積層ケイ酸塩化合物からできたものである。一般に本発明で用いられる「積層ケイ酸塩化合物」は、天然または合成のいずれかの積層ケイ酸塩を意味し、好ましくはこの用語は、工業用プロセスにおいて触媒及び/又は触媒担体として用いられる積層ケイ酸塩である。これに代えてあるいはこれに加えて、この積層ケイ酸塩構造は、一種以上の積層ケイ酸塩化合物からできていることが好ましい。これから柱状化ケイ酸塩化合物の積層ケイ酸塩構造が形成される及び/又は由来する上記積層ケイ酸塩化合物について、これらは、もし層間に存在する架橋金属原子に共有結合を形成するのに適当で及び/又はその誘導体がこれを行うことができるのなら、一種以上の考えうるいずれの積層ケイ酸塩化合物を含んでいてもよい。本発明の好ましい実施様態においては、この一種以上の積層ケイ酸塩化合が一種以上のゼオライトを含む。本発明の意味の範囲内では、柱状化ケイ酸塩化合物の積層ケイ酸塩構造が好ましくは由来するあるいは由来可能な積層ケイ酸塩化合物には、積層ケイ酸塩化合物の誘導体が含まれる。なお、積層ケイ酸塩化合物の誘導体は、一般的には一つ以上の物理的及び/又は化学的修飾を受けた、好ましくは本発明の意味の範囲内で架橋金属原子に共有結合する適性を改善するための化学的及び/又は物理的修飾を一つ以上の受けた積層ケイ酸塩化合物である。
【0026】
本発明の特に好ましい実施様態においては、上記一種以上の積層ケイ酸塩化合物は、MCM−22とPREFER、Nu−6(2)、CDS−1、PLS−1、MCM−47、ERS−12、MCM−65、RUB−15、RUB−18、RUB−20、RUB−36、RUB−38、RUB−39、RUB−40、RUB−42、RUB−51、BLS−1、BLS−3、ZSM−52、ZSM−55、カネマイト、マカタイト、マガジイト、ケニヤイト、レブダイト、モンモリロナイト、およびこれらの二つ以上の組合せ、からなる群から選ばれる一種以上の積層ケイ酸塩を含み、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物は、好ましくはRUB−36及び/又はRUB−39を含み、さらに好ましくはRUB−36を含む。
【0027】
したがって、本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の好ましい実施様態では、この積層ケイ酸塩構造が一種以上の積層ケイ酸塩化合物からできるものであり及び/又は一種以上の積層ケイ酸塩化合物に由来するあるいは由来可能なものである。なお、上記の一種以上の積層ケイ酸塩化合物は、MCM−22とPREFER、Nu−6(2)、CDS−1、PLS−1、MCM−47、ERS−12、MCM−65、RUB−15、RUB−18、RUB−20、RUB−36、RUB−38、RUB−39、RUB−40、RUB−42、RUB−51、BLS−1、BLS−3、ZSM−52、ZSM−55、カネマイト、マカタイト、マガジイト、ケニヤイト、レブダイト、モンモリロナイト、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の積層ケイ酸塩を含み、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物は、好ましくはRUB−36及び/又はRUB−39を含み、さらに好ましくはRUB−36を含む。
【0028】
上述の具体的な積層ケイ酸塩化合物に関して、RUB−15は、その製造が、例えばU. Oberhagemann、P. Bayat、B. Marler、H. Gies、and J. Rius Angew. Chem.、Intern. Ed. Engl. 1996,35、pp. 2869−2872に開示されている特定種類の積層ケイ酸塩である。RUB−18は、その製造法が、例えばT. Ikeda, Y. Oumi, T. Takeoka, T. Yokoyama, T. Sano, and T. Hanaoka Microporous and Mesoporous Materials 2008, HO, pp. 488−500に記載されている特定の積層ケイ酸塩をさす。RUB−20は、例えばZ. Li、B. Marler、and H. Gies Chem. Mater. 2008, 20,pp. 1896−1901.に開示の方法で製造可能な特定の積層ケイ酸塩をさす。RUB−36は、その製造が例えばJ. Song, H. Gies Studies in Surface Science and Catalysis 2004, 15, pp. 295−300に記載の特定のケイ酸塩をさす。RUB−39は、その製造法が、例えば、それぞれのWO2005/100242A1に、特にWO2007/042531A1の32−33頁の実施例1と2、特に38頁の実施例1、39頁の実施例2、40頁の実施例3、41頁の実施例6、42頁41の実施例7、あるいはWO2008/122579A2、特に36頁の実施例1、37頁の実施例3に記載の特定の積層ケイ酸塩をさす。RUB−51は、その製造法が、例えばZ. Li、B. Marler、and H. Gies Chem. Mater. 2008,20、pp. 1896−1901に記載の特定の積層ケイ酸塩をさす。ZSM−52とZSM−55は、例えば、D.L. Dorset、and G.J. Kennedy J. Phys. Chem. B. 2004,108、pp. 15216−15222のようにして製造可能な特定の積層ケイ酸塩をさす。最後にRUB−38とRUB−40とRUB−42は、それぞれ、例えばB. Marler and H. Gies at the 15th International Zeolite Conference held in Beijing, China in August 2007で発表された特定の積層ケイ酸塩をさす。
【0029】
特に、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物がRUB−36を含む本発明の特に好ましい実施様態では、RUB−36が少なくとも以下の反射を含むX線回折パターンを持つことがさらに好ましい。

回折角2θ/° [Cu K(α1)] 強度(%)
7.85− 8.05 100.0
17.04− 17.24 1.6−5.6
20.26−20.46 1.7− 5.7
23.89−24.09 4.2− 12.2
24.73−24.93 4.8− 12.8
25.30−25.50 2.6−6.6
26.52−26.72 0.7−4.7
【0030】
なお、このエックス線粉末回折パターン中の最大ピークの強度が100%である。本発明の好ましい実施様態においては、その柱状化ケイ酸塩化合物内に含まれる積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層は、一種以上のヘテロ原子で同形置換されている。一般に上記の好ましい実施様態において、考えうるいずれの種類のヘテロ原子が、もしこの一種以上のヘテロ原子が同形置換に適当なら、ケイ酸塩層のケイ酸塩構造中のSi原子の少なくとも一部を同形置換していてもよい。特に、このケイ酸塩層が、AlとB、Fe、Ti、Sn、Ga、Ge、Zr、V、Nb、Zn、Li、Beおよびこれらの二つ以上の混合物からなる群から選ばれる一種以上の元素で同形置換されることが好ましく、AlとB、Fe、Ti、Sn、Zr、およびこれらの二つ以上の混合物からなる群から同形置換されることがより好ましく、AlとTi、B、およびこれらの二つ以上の混合物からなる群から同形置換されることがより好ましく、このケイ酸塩構造がAl及び/又はTiで同形置換されていることがさらに好ましい。
【0031】
本発明によれば、柱状化ケイ酸塩化合物中で架橋金属原子として用いられる金属原子がそこに含まれるこの積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層との共有結合に加わるのに適しているなら、その種類に関して特に制限はない。また本発明の意味の範囲内では、この架橋金属原子が、単原子金属基や、二原子金属基、三原子金属基、多原子金属基、またこれらの二つ以上の組合せを含むことができ、単原子及び/又は二原子架橋金属原子が好ましく、単原子架橋金属原子が特に好ましい。
【0032】
また本発明の好ましい実施様態によれば、この架橋金属原子がさらにケイ酸塩層に加えて有機基と結合していてもよい。その場合、この有機基はこの架橋金属原子のみに結合していることが好ましい。本発明によれば、架橋金属原子にさらに結合している有機基には、もしそれが金属原子のケイ酸塩層への共有結合を損ねない限り、特に制限はない。
【0033】
また、さらに他の本発明の方法の好ましい実施様態では、この積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層自体が、架橋金属原子に結合している有機基に加えてあるいは代えて、有機基を有していてもよい。この場合も、この積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層中に含まれる有機基には、もしそれ架橋金属原子のケイ酸塩層との共有結合を損ねない限り、特に制限はない。
【0034】
本発明の好ましい実施様態においては、この架橋金属原子は、LiとBe、B、Mg、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、ZnCd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Puおよびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の金属を含み、
好ましくはScとY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、ZnCd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から、
さらに好ましくはAlとSn、Ti、Mo、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Zr、Ru、Pd、Ag、Pt、Au、Sm、Eu、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の金属を含む。
【0035】
本発明の特に好ましい実施様態においては、この柱状化ケイ酸塩化合物が、架橋元素として2つ以上の異なる種類の架橋金属を含み、それぞれ二機能触媒と多機能触媒を形成する。特に、驚くべきことに本発明により、二機能触媒と多機能触媒が、その積層ケイ酸塩構造中に含まれるケイ酸塩層に共有結合した架橋元素として2つ以上の異なる種類の架橋金属原子を含む本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の形で提供できることが見つかった。したがって、意外にも、実際ケイ酸塩化合物を2つ以上の異なる種類の架橋金属原子で処理して、特定配列の異なる金属官能基をもつ触媒を得ることができることがわかった。特に本発明により、明確に定義された環境中で特定配列(異なる金属中心が、特定位置に第二の種類の金属から特定距離で配されており、またこの第二の金属も特定環境中に特定位置で存在している)の触媒活性中心を与えることができる。したがって極めて意外にも、従来のケイ酸塩化合物の負荷方法では得ることのできなかった化学反応性をもち、このため非常に特異な触媒挙動示す特定の二機能触媒と多機能触媒を提供することができることが分った。特に、触媒担体の含浸などの従来の方法は、異なる種類の金属の位置とそれぞれの異なる種類の金属間の距離がともに完全にランダムであるため、このような二機能触媒と多機能触媒を提供するには適していない。また、先行技術の負荷方法ではクラスター生成の制御がほとんどあるいはまったくできず、負荷後のケイ酸塩化合物中の2つ以上の異なる種類の金属の配列には無限の可能性があるため、含浸法等で二機能触媒または多機能触媒を与えることは統計的に不可能である。
【0036】
したがって、二機能触媒と多機能触媒に関して、本発明は、2つ以上の金属中心の特異な化学相互作用のため特異な化学的挙動を示す新規の触媒の提供について、まったく従来にない可能性を提供する。
【0037】
本発明の二機能触媒または多機能触媒の特に好ましい実施様態では、この2つ以上の異なる種類の架橋金属原子が、モリブデンと銅及び/又はニッケルの組合せから選ばれ、上記柱状化ケイ酸塩化合物が、メタンからベンゼンへの脱水素芳香族化反応の触媒中で使用されることが好ましい。
【0038】
本発明によれば、柱状化ケイ酸塩化合物内の共有架橋した金属原子に関して一般的な制限はないが、特定の実施様態では、柱状化ケイ酸塩化合物中に、架橋元素として一種以上の特定種類の金属化合物が含まれていないことが好ましい。本発明の意味の範囲内では、共有架橋元素として特定種類の金属を含まない柱状化ケイ酸塩化合物は、金属原子経由の共有架橋の合計の10%以下が上記一種以上の特定の金属元素によるものである化合物であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.001%以下が上記一種以上の特定の金属元素によるものである化合物である。本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の共有架橋金属原子が含まない特定の金属元素について、この架橋金属原子が、AlとBとTiからなる群から選ばれる一種以上の元素を含まないことが好ましく、AlとB、Fe、Ti、Sn、Zrからなる群から選ばれる一種以上の元素を含まないことが好ましく、AlとB、Fe、Ti、Sn、Ga、Ge、Zr、V、Nb、Zn、Li、Beからなる群から選ばれる一種以上の元素を含まないことがさらに好ましい。
【0039】
したがって本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の好ましい実施様態では、この架橋金属原子は、AlとBとTiからなる群から選ばれる一種以上の元素を含まず、好ましくはAl、B、Fe、Ti、Sn、Zrからなる群から選ばれる一種以上の元素を含まず、さらに好ましくはAlとB、Fe、Ti、Sn、Ga、Ge、Zr、V、Nb、Zn、Li、Beからなる群から選ばれる一種以上の元素を含まない。
【0040】
柱状化ケイ酸塩化合物中に含まれる積層ケイ酸塩構造が一種以上の積層ケイ酸塩化合物から得られる及び/又は一種以上の上記化合物に由来する本発明の好ましい実施様態においては、本発明の共有金属架橋が存在すると、一般的にはその積層ケイ酸塩化合物自体と較べて、柱状化ケイ酸塩化合物結晶構造に、通常X線回折で検出可能な変化が生じる。なお柱状化ケイ酸塩化合物と積層ケイ酸塩化合物の両方の回折パターン中に通常認められる共通の特徴は、相当するエックス線ディフラクトグラム中の低2θ値での最高強度反射(100%強度)の存在である。特に、この積層ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラム中に認められる最高強度反射は、柱状化ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラム中で新しい2θ値に移動する。なお、上記の積層ケイ酸塩化合物の最高強度反射は、積層ケイ酸塩化合物の層間拡張のため通常低い2θ値に存在する。
【0041】
本発明の特に好ましい実施様態においては、回折試験でCu−K(α1)線を使用すると、この柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターン中の最大ピーク(100%強度)の2θ回折角は、積層ケイ酸塩化合物のX線回折パターン中の相当する極大ピーク(100%強度)の2θ回折角より0.05〜1.45°2θ低くなり、より好ましくは0.10〜0.95°2θ低く、より好ましくは0.15〜0.75°2θ低く、より好ましくは0.20〜0.55°2θ低く、より好ましくは0.25〜0.50°2θ低く、より好ましくは0.30〜0.45°2θ低く、さらに好ましくは0.35〜0.40°2θ低くなる。
【0042】
一般に、柱状化ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラムの最高強度反射の積層ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラムからのシフトは、乾燥及び/又は焼成プロセスにかけられた、好ましくは下の本発明の好ましい実施様態の本発明の製造方法の部分で説明する焼成プロセスにかけられた積層ケイ酸塩化合物及び/又は柱状化ケイ酸塩化合物で得られたエックス線ディフラクトグラムをさす。しかしながら好ましくは、この最高強度反射のシフトは、乾燥及び/又は焼成にかけられた柱状化ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラムの、好ましくは焼成柱状化ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラムの無焼成の積層ケイ酸塩化合物で得られたエックス線ディフラクトグラムからのシフトをさす。
【0043】
一般に本発明では、柱状化ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラム中の最高強度ピークの位置に制限はない。好ましい実施様態においては、最大ピーク(100%強度)は、回折試験でCu−K(α1)線を用いる場合、2θ回折角で3〜14°2θの範囲にあり、好ましくは4〜12°2θの範囲、より好ましくは5〜11°2θの範囲、より好ましくは6.0〜9.5°2θの範囲、より好ましくは6.5〜8.7°2θの範囲、より好ましくは7.0〜8.2°2θ、より好ましくは7.2〜8.0°2θ、より好ましくは7.40〜7.80°2θ、より好ましくは7.45〜7.75°2θ、より好ましくは7.50〜7.70°2θ、さらに好ましくは7.55〜7.65°2θの範囲である。なお、このX線回折パターンは、乾燥及び/又は焼成後の柱状化ケイ酸塩化合物から得られたものであってよく、好ましくは焼成後の柱状化ケイ酸塩化合物から得られたものであってもよい。上述のように好ましくは、「焼成」は、本発明の製造工程の好ましい実施様態に関して下に説明する焼成プロセスにかけられた化合物をいう。
【0044】
一般に本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の表面積に関して、特に制限はない。好ましい実施様態においては、この柱状化ケイ酸塩化合物のBET表面積(ブルナウアー・エメット・テラー法;DIN66131による77Kでの窒素吸着)は、50〜950m/gの範囲であり、好ましくは100〜800m/g、より好ましくは200〜600m/g、より好ましくは250〜470m/g、より好ましくは280〜450m/g、より好ましくは300〜430m/g、より好ましくは320〜420m/g、さらに好ましくは360〜400m/gの範囲である。一般に柱状化ケイ酸塩化合物のBET表面積は、乾燥及び/又は焼成した化合物のものであり、好ましくはこの表面積は焼成した化合物のものである。本発明の意味の範囲内では、「乾燥した」は、好ましくは本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法について下に説明する乾燥処理にかけた化合物をいう。
【0045】
上述の本発明の柱状化ケイ酸塩化合物に加えて、本発明はまた、柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法に関する。一般に本発明によれば、ここに定義する本発明の特徴を示す限り、上述の柱状化ケイ酸塩化合物の製造に関してなんら制限はない。しかしながら驚くべきことに、柱状化ケイ酸塩化合物が下に概説する方法で好適に製造できることが明らかとなった。
【0046】
したがって、本発明はまた、
(1)一種以上の積層ケイ酸塩化合物と一種以上の金属化合物と一種以上の溶媒を含む酸性混合物を与える工程と
(2)工程(1)で得られた混合物を反応させて少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩化合物を得る工程とからなる本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法に関する。
【0047】
本発明によれば、本発明の方法で用いることのできる一種以上の積層ケイ酸塩化合物には、もしこの積層化ケイ酸塩化合が一種以上の金属化合物と共に用いられて少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩化合物を与えるなら、即ち層間に存在する架橋金属原子への共有結合の形成に適当なら、特に制限はない。本発明の好ましい実施様態の柱状化ケイ酸塩化合物に関して、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物は、上に定義した積層ケイ酸塩化合物から選ばれることが好ましい。したがって、本発明の方法に関して、本発明で用いられる「積層ケイ酸塩化合物」は、いずれかの天然または合成の積層ケイ酸塩を意味し、好ましくは上記用語は、工業用プロセスで触媒及び/又は触媒担体として用いられる積層ケイ酸塩を意味する。本発明の好ましい実施様態においては、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物が一種以上のゼオライトを含む。本発明の意味の範囲内では、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物はまた、一回以上の物理的及び/又は化学的修飾にかけられた好ましくは一回以上の本発明の意味の範囲内で架橋金属原子へ共有結合の適性を改善するための化学的及び/又は物理的な修飾にかけられた積層ケイ酸塩化合物の一種以上の誘導体を含んでいてもよい。
【0048】
本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物が、MCM−22とPREFER、Nu−6(2)、CDS−1、PLS−1、MCM−47、ERS−12、MCM−65、RUB−15、RUB−18、RUB−20、RUB−36、RUB−38、RUB−39、RUB−40、RUB−42、RUB−51、BLS−1、BLS−3、ZSM−52、ZSM−55、カネマイト、マカタイト、マガジイト、ケニヤイト、レブダイト、モンモリロナイト、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の積層ケイ酸塩を含み、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物は、好ましくはRUB−36及び/又はRUB−39を含み、さらに好ましくはRUB−36を含む。
【0049】
本発明の方法で使用できる一種以上の積層ケイ酸塩化合物に関して、その中に含まれるいずれかの対イオンに特に制限はない。好ましくは上記対イオンが、アルカリ金属とアルカリ土類金属、テトラアルキルアンモニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上の以上イオンを含み、より好ましくはアルカリ金属とテトラアルキルアンモニウムイオンからなる群から選ばれる一種以上の以上イオンを含み、さらに好ましくは上記対イオンがテトラアルキルアンモニウムイオンを、特にジエチルジメチル−アンモニウムイオンを含む。
【0050】
また、特に好ましい本発明の方法の実施様態では、一種以上の有機テンプレート剤を含む少なくとも一種の積層ケイ酸塩化合物が用いられ、特に、テトラアルキルアンモニウム化合物を含むものが用いられる。これは、これが柱状化ケイ酸塩化合物形成のための一種以上の金属化合物との反応を促進すると考えられているからである。特に、積層ケイ酸塩化合物中に含まれるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属対イオンとは異なり、上記有機テンプレート剤また、特にテトラアルキルアンモニウムイオンは、工程(1)で与えられる混合物の酸性のため積層ケイ酸塩化合物の層間の空間から離れることがないと考えられている。したがって、事実、本発明の方法の好ましい実施様態における一種以上の積層ケイ酸塩化合物中の有機テンプレート剤また、特にテトラアルキルアンモニウム化合物の存在のため、この一種以上の金属化合物中で、酸性の条件下でこの一種以上の積層ケイ酸塩化合物のケイ酸塩層の間での共有架橋の形成が可能となっている。この共有架橋の形成は、対イオンとして上記有機テンプレート剤に代えてアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む積層ケイ酸塩化合物を用いては不可能である。本発明の意味の範囲内では、「有機テンプレート剤」と「有機テンプレート」は、一種以上の本発明の方法で使用する、積層ケイ酸塩化合物の合成に使用される考えうるいずれかの有機化合物であり、該有機テンプレート剤は、工程(1)で与えられる一種以上の積層ケイ酸塩化合物に含まれているものである。
【0051】
したがって、本発明の特に好ましい実施様態においては、工程(1)で与えられる一種以上の積層ケイ酸塩化合物の一種以上は、好ましくは一種以上の有機テンプレート剤を含み、また上記一種以上の有機テンプレート剤は、好ましくは一種以上のテトラアルキルアンモニウムイオン、またより好ましくはジエチルジメチルアンモニウムを含む。
【0052】
本発明の方法によれば、この中で使用される一種以上の積層ケイ酸塩化合物の一種以上が、一種以上のヘテロ原子で同形置換されてもよい。一般に上記の好ましい実施様態において、考えうるいずれかの種類のヘテロ原子で、もしその一種以上のヘテロ原子が同形置換に適当なら、一種以上の積層ケイ酸塩化合物のケイ酸塩構造中のSi原子の一部を同形置換することができる、本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、ここで用いられる一種以上の積層ケイ酸塩化合物がAlとB、Fe、Ti、Sn、Ga、Ge、Zr、V、Nb、Zn、Li、Be、およびこれらの二つ以上の混合物、より好ましくはAlとB、Fe、Ti、Sn、Zr、およびこれらの二つ以上の混合物からなる群から選ばれる一種以上の元素で同形置換され、より好ましくはAlとTiとBとこれらの二つ以上の混合物からなる群から選ばれる元素で置換され、さらに好ましくは、このケイ酸塩構造がAl及び/又はTiで同形置換される。
【0053】
本発明の方法で用いられる一種以上の金属化合物に関して、もしこれらが一種以上の積層ケイ酸塩化合物のケイ酸塩層の共有架橋と柱状化ケイ酸塩化合物の製造に適当なら、用いる金属の種類及び/又は数に制限はない、特に、この一種以上の金属化合物は、単原子と二原子、三原子及び多原子金属種、またこれらの二つ以上の組合せを含んでよく、単原子及び/又は二原子金属種を含む金属化合物が好ましく、単原子金属種を含む金属化合物が特に好ましい。また、本発明の方法では、この一種以上の金属化合物中に含まれる金属種の酸化状態に関しては、もしこの金属が本発明の方法で用いられて柱状化ケイ酸塩化合物が得られるなら、特に制限はない。
【0054】
本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、この一種以上の金属化合物が、LiとBe、B、Mg、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれ、
好ましくは、ScとY、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から、
さらに好ましくはAl、Sn、Ti、Mo、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Zr、Ru、Pd、Ag、Pt、Au、Sm、Eu、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる。
【0055】
本発明の方法で用いられる一種以上の金属化合物中に含まれる一種以上の金属に関して、もし一種以上の積層ケイ酸塩化合物と反応して、ケイ酸塩層を共有架橋する架橋金属原子として一種以上の上記金属を含む柱状化ケイ酸塩化合物を形成させる事ができるなら、本発明において、一種以上の金属化合物が本発明の方法中で用いられる特定の形についで特に制限はない。この一種以上の金属化合物が、金属塩、金属錯体、及び/又は有機金属化合物の形で使用されることが好ましい。
【0056】
したがって本発明の方法の好ましい実施様態においては、この一種以上の金属化合物が、金属塩と金属錯体、有機金属化合物、およびこれらの二つ以上の組合せからなる群から選ばれる一種以上の金属化合物を含む。
【0057】
本発明の方法で好ましく用いられる金属塩に関して、もしこの金属塩が積層ケイ酸塩化合物と反応して柱状化ケイ酸塩化合物を与えるのに適当なら、この塩に含まれるこの金属イオンに対する一種以上の対イオンについて特に制限はない。好ましい実施様態においては、これらの金属塩が、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属硝酸塩、金属亜硝酸塩、金属リン酸塩、金属亜リン酸塩、金属ホスホン酸塩、金属ホスフィン酸塩、金属硫酸塩、金属亜硫酸塩、金属スルホン酸塩、金属アルコキシド、金属錯体、およびこれらの二つ以上の組合せ及び/または混合物からなる群から選ばれ、好ましくは金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属カルボン酸塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属アルコキシド、およびこれらの二つ以上の組合せ及び/または混合物からなる群から、より好ましくは金属ハロゲン化物及び/又は金属アルコキシドからなる群から選ばれ、より好ましくはこの金属塩が、一種以上の金属ハロゲン化物を、またさらに好ましくは一種以上の金属塩化物を含む。
本発明の方法の好ましい実施様態で使用できる金属錯体に関して、これらが一種以上の積層ケイ酸塩化合物と反応して本発明の柱状化ケイ酸塩を与えるのに適当なら、これらに特に制限はない。これらの金属錯体は少なくとも部分的にイオン性であって、本発明でさらに好ましい金属塩を構成することが好ましい。さらに本発明で好ましいのは、上記一種以上の金属錯体としてキレート錯体を使用することである。なお、ここに含まれるキレート配位子の種類について、特に配位座数について特に制限はない。二座と三座のキレート配位子が好ましく、二座のキレート配位子が特に好ましい。また、このキレート配位子が有機キレート配位子であることが好ましく、二座キレート配位子であることがさらに好ましく、特に好ましい実施様態では、このキレート配位子がアセチルアセトネートである。
【0058】
本発明の方法の好ましい実施様態で使用可能な有機金属化合物に関して、もしこの有機金属化合物が一種以上の積層ケイ酸塩化合物と反応して柱状化ケイ酸塩化合物を与えるのに適当なら、上記化合物中に含まれる一種以上の有機基についても特に制限はない。好ましい実施様態においては、この一種以上の有機金属化合物は、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機マンガン化合物、有機鉄化合物、有機コバルト化合物、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機パラジウム化合物、有機銀化合物、有機スズ化合物、有機白金化合物、有機金化合物、およびこれらの混合物からなる群から選ばれ、この有機金属化合物は、好ましくは一種以上の有機スズ化合物を含む。本発明で好ましく用いられる有機スズ化合物の中で、Sn二原子金属基を含む有機二スズ化合物がさらに好ましい。
【0059】
最後に、本発明の方法で使用可能な一種以上の溶媒に関して、もしこの一種以上の溶媒が、一種以上の金属化合物と一種以上の積層ケイ酸塩化合物の反応で本発明の柱状化ケイ酸塩化合物を与える反応を進めるなら、用いる溶媒または溶媒混合物の種類について得に制限はない。したがって、水や、アルコール等の有機溶媒、特にメタノール及び/又はエタノールを含む考えうるいずれかの溶媒もこの酸性混合物中で使用可能であり、この一種以上の溶媒は好ましくは水を含み、より好ましくは蒸留水を含む。
【0060】
本発明の方法の工程(1)で与えられる混合物の酸性に関して、この酸性が、好ましくはブレンステッド酸及び/又はルイス酸の群から選ばれる一種以上の酸の存在のためであることが好ましい。したがって本発明の特定の実施様態では、工程(1)の混合物の酸性が、少なくとも部分的に工程(1)でさらに与えられる一種以上の酸の存在のために発生する。なお、この一種以上の酸は、一種以上のブレンステッド酸を含むことが好ましく、一種以上の鉱酸を含むことがより好ましく、塩酸及び/又は硝酸含むことがより好ましく、塩酸を含むことがさらに好ましい。工程(1)で与えられる一種以上の酸が硝酸を含む好ましい実施様態においては、塩素イオンが反応混合物中に存在せず、特にハロゲンイオン存在せず、塩素イオンを含まない及び/又はハロゲンイオンを含まない柱状化ケイ酸塩化合物が得られることが好ましい。
【0061】
本発明の他の実施様態においては、工程(1)の混合物の酸性が少なくとも一種以上のルイス酸のためであり、この一種以上のルイス酸が、一種以上の積層ケイ酸塩化合物との反応のために工程(1)で与えられる金属化合物の一種以上を含むことが好ましい。本発明によれば、特に本発明の方法の工程(1)の混合物中に存在する一種以上の溶媒に、ルイス酸が与えられる、即ち、一種以上のルイス酸が、一種以上のルイス塩基として作用する溶媒とルイス酸−ルイス塩基相互作用で作用する。
【0062】
工程(1)の混合物に含まれる一種以上の金属化合物がルイス酸性を示す本発明の実施様態では、上記混合物が塩酸を含まないこと、または一種以上のルイス酸及び/又は一種以上の他の金属化合物が塩化物である場合、追加の塩酸を含まないことが好ましく、塩化物を含まない、または上記一種以上の金属化合物中に含まれるいずれの塩化物以外に追加の塩化物を含まない反応混合物が与えられることがさらに好ましい。さらに好ましくは、工程(1)の混合物の酸性が、実質的にまたは全て上記一種以上の金属化合物中に含まれる一種以上のルイス酸によるものであり、この混合物が上記の一種以上のルイス酸に加えて、好ましくは塩酸を含まず、より好ましくは塩酸及び/又は硝酸を含まず、より好ましくは鉱酸を含まず、より好ましくはブレンステッド酸を含まず、さらに好ましくは酸を含まない。本発明の意味の範囲内では、上記一種以上の金属化合物中に含まれる一種以上のルイス酸以外の酸は、一種以上のルイス酸と一種以上の溶媒、特に水の酸−塩基反応で副生する酸生成物を含まない。このような反応には、例えば、一種以上の金属化合物中に含まれる一種以上のルイス酸と水からヒドロニウムイオンを生成する反応が含まれる。
【0063】
したがって、この一種以上の金属化合物が一種以上のルイス酸を含み、ルイス酸が特に一種以上の溶媒に与えられる本発明の好ましい実施様態においては、上記一種以上のルイス酸に加えて、この混合物が、一種以上のルイス酸及び/又はこのルイス酸の副次酸生成物に加えて、他の塩酸を含まず、より好ましくは追加の塩酸及び/又は硝酸を含まず、より好ましくは他の鉱酸を含まず、より好ましくは他のブレンステッド酸を含まず、さらに好ましくは他の酸を含まない。
【0064】
特に好ましい本発明の他の実施様態においては、本発明の方法の工程(1)で与えられる混合物は、実質的に塩化物を含まず、また好ましくは実質的にハロゲン化物を含まない。特に塩化物またはハロゲン化物を実質的に含まないとは、この混合物中の量が1質量%以下であることをいい、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、さらに好ましくは0.0001質量%以下であることをいう。
【0065】
本発明の方法によれば、もし一種以上の金属化合物と一種以上の積層ケイ酸塩化合物から柱状化ケイ酸塩化合物を製造する反応を起こすのに酸性が十分であるなら、工程(1)で与えられる混合物のpHは特に限定されない。好ましい実施様態においては、工程(1)で与えられる混合物のpHが、−0.5〜5の範囲であり、好ましくは0〜4、より好ましくは0.1〜3、より好ましくは0.2〜2、より好ましくは0.3〜1、さらに好ましくは0.4〜0.6の範囲である。
【0066】
工程(1)と工程(2)で得られる混合物の反応に関して、もしこの一種以上の金属化合物が一種以上の積層ケイ酸塩化合物と反応して本発明の柱状化ケイ酸塩化合物を与える化学変換を起こすなら、その反応条件に、特に温度、圧力及び/又は反応時間に特に制限はない。本発明の方法の好ましい実施様態においては、工程(2)での反応のために上記混合物が加熱される。工程(1)と工程(2)で得られる混合物の加熱の好ましい実施様態において、もし柱状化ケイ酸塩化合物が工程(2)で得られるのなら、この混合物の加熱温度と加熱時間のいずれにも特に制限はない。特に好ましい実施様態においては、工程(2)での加熱が50〜250℃の範囲の温度で行われ、好ましくは90〜230℃、より好ましくは110〜210℃、より好ましくは130〜190℃、より好ましくは140〜180℃、より好ましくは145〜175℃、より好ましくは150〜170℃、さらに好ましくは155〜165℃の範囲の温度で行われる。本発明の方法によれば、この混合物を工程(2)において、好ましくは加熱により1〜72時間反応させられ、好ましくは8〜48時間、より好ましくは10〜36時間、より好ましくは12〜32時間、より好ましくは14〜28時間、より好ましくは16〜24時間、さらに好ましくは18〜22時間反応させられる。
【0067】
また、特に好ましい本発明の実施様態では、工程(2)での加熱が、52〜150℃の範囲の温度で1〜72時間行われ、好ましくは92〜130℃の温度で8〜48時間、より好ましくは110〜210℃の温度で10〜36時間、より好ましくは130〜190℃の温度で12〜32時間、より好ましくは140〜180℃の温度で14〜28時間、より好ましくは145〜175℃の温度で16〜24時間、さらに好ましくは150〜170℃の温度で18〜22時間行われる。
【0068】
工程(1)と工程(2)で得られる混合物の反応に上記混合物が加熱される本発明の好ましい実施様態においては、この加熱ステップを実施する圧力に特に制限はない。しかし本発明では、上記加熱が、例えばオートクレーブ中で自生圧力下で行うことが好ましい。より好ましくは、工程(2)での加熱が、ソルボサーマル条件下で行われ、さらに好ましくは水熱条件下で行われる。なお、ソルボサーマル条件は、一般的には上記混合物中に含まれる一種以上の溶媒のいずれか一つの沸点以上の温度であるいはこの溶媒混合物の沸点より高い温度で自生圧力下で反応混合物を加熱することをいい、水熱条件は、100℃以上の温度での自生圧力下での反応混合物の加熱をいう。
【0069】
したがって、本発明はまた、工程(2)での混合物の反応が上記混合物の加熱で行われ、この加熱が好ましくは自生圧力下で、より好ましくはソルボサーマル条件下、さらに好ましくは水熱条件下で行われる好ましい実施様態に関する。
【0070】
本発明によれば、工程(2)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物を、適当な後処理及び/又は他の処置にかけてもよい。特に、本発明の方法は、工程(2)で得られた混合物から柱状化ケイ酸塩化合物を分離する工程(3)をさらに含むことが好ましい。特に、この柱状化ケイ酸塩化合物は、工程(2)の反応生成物中に存在する一種以上の溶媒から考えうるいずれの手段で、例えば濾過、限外濾過、透析、遠心分離、噴射−乾燥及び/又はデカンテーション方法で分離されてもよく、濾過法は吸引工程及び/又は加圧濾過工程を含んでいてもよい。この柱状化ケイ酸塩の分離を、反応混合物の濾過及び/又は噴霧乾燥で行うことが好ましい。
【0071】
また、工程(3)に加えてあるいは代えて、本発明の方法は、さらに工程(2)で得られる必要なら分離された柱状化ケイ酸塩化合物を洗浄及び/又は乾燥する工程(4)を含むことが好ましい。上記洗浄は、考えうるいずれかの洗浄剤を用いて、考えうるいずれかの手段で実施してもよい。使用可能な洗浄剤としては、例えば水や、メタノールやエタノールまたはプロパノールなどのアルコール、またはこれらの二つ以上の混合物があげられる。混合物の例は、2種以上のアルコールの混合物であり、具体的にはメタノールとエタノール、またはメタノールとプロパノール、エタノールとプロパノール、メタノールとエタノールとプロパノールであり、または水と少なくとも一種のアルコールの混合物であり、具体的には水とメタノール、または水とエタノール、水とプロパノール、水とメタノールとエタノール、水とメタノールとプロパノール、水とエタノールとプロパノール、水とメタノールとエタノールとプロパノールである。水、または水と少なくとも一種のアルコールの混合物、好ましくは水とエタノールの混合物が好ましく、単独の洗浄剤としては蒸留水が極めて好ましい。上記洗浄法に代えてあるいは加えて、この柱状化ケイ酸塩化合物をまず工程(3)で分離し、次いで上述の溶媒または溶媒混合物で洗浄してもよい。
【0072】
上記の好ましい工程(2)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物の分離及び/又は洗浄に加えてあるいは代えて、この柱状化ケイ酸塩化合物を乾燥工程にかけてもよい。この乾燥工程は、もし柱状化ケイ酸塩化合物中に含まれる残留溶媒及び/又は水分が除けるなら、考えうるいずれの温度で行ってもよい。したがって、この乾燥処理を、工程(2)または(3)で得られるまたは工程(4)の洗浄後に得られる柱状化ケイ酸塩化合物の乾燥、凍結乾燥、加熱、及び/又は真空で行ってもよい。本発明の好ましい実施様態においては、乾燥は、工程(2)の混合物から工程(3)により柱状化ケイ酸塩化合物を分離した後で行われ、より好ましくは工程(4)で柱状化ケイ酸塩化合物を洗浄した後で、さらに好ましくは上記化合物を一種以上の洗浄溶媒(好ましくは水、さらに好ましくは蒸留水)で洗液がpH中性となるまで洗浄した後で行われる。
【0073】
したがって、好ましい実施様態においては、本発明の方法はまた、
(3)工程(2)で得られる混合物から柱状化ケイ酸塩を分離する工程;及び/又は
(4)工程(3)から得られる柱状化ケイ酸塩を洗浄及び/又は乾燥する工程を含む。
【0074】
特に好ましい実施様態においては、乾燥は、この柱状化ケイ酸塩化合物を50〜200℃の範囲の温度で加熱して、好ましくは80〜160℃の範囲、より好ましくは100〜140℃の範囲、さらに好ましくは110〜130℃の範囲の温度で加熱で行われる。一般に、この必要に応じて実施される乾燥処理は、柱状化ケイ酸塩化合物からいずれか溶媒及び/又は水分が実質的に除去される時間行われ、乾燥は好ましくは1〜48h時間、好ましくは2〜24時間、より好ましくは3〜16時間、より好ましくは4〜12時間、さらに好ましくは5〜7時間行われる。
【0075】
あるさらに好ましい本発明の方法の実施様態においては、工程(2)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物が、前もってこの柱状化ケイ酸塩化合物を単離・洗浄または乾燥することなく直接、少なくとも一種の乾燥工程に、好ましくは噴霧乾燥または噴射造粒にかけられる。本発明の方法の工程(2)から得られる混合物を直接、噴霧乾燥または噴射造粒段にかけることは、分離と乾燥を単一段で実施できるという長所をもつ。
【0076】
任意の工程(3)と(4)における分離・洗浄及び/又は乾燥処理のいずれかに加えてあるいは代えて、工程(2)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物を工程(5)の焼成にかけることが好ましい。工程(2)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物中に存在する結晶構造に大きな劣化を起こすことなく熱的に安定な柱状化ケイ酸塩化合物が得られるのなら、原理的には、焼成は考えうるいずれの温度で行ってもよい。好ましい実施様態では、柱状化ケイ酸塩化合物の焼成が、250〜850℃の範囲の温度で行われ、より好ましくは350〜750℃の温度で、より好ましくは450〜650℃、より好ましくは460〜600℃、より好ましくは470〜560℃、より好ましくは480〜540℃、さらに好ましくは490〜520℃の温度で行われる。
【0077】
したがって、好ましい実施様態においては、本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法はさらに、工程(2)及び/又は(3)及び/又は(4)で得られる柱状化ケイ酸塩を焼成する工程(5)を含み、この焼成は、好ましくは250〜850℃の範囲の温度で行われ、より好ましくは350〜750℃の温度で、より好ましくは450〜650℃、より好ましくは460〜600℃、より好ましくは470〜560℃、より好ましくは480〜540℃、さらに好ましくは490〜520℃の温度で行われる。
【0078】
特に、本発明の方法で有機テンプレート剤を含む一種以上の積層ケイ酸塩化合物を使用し、好ましくは一種以上の積層ケイ酸塩化合物がテトラアルキルアンモニウムイオン、より好ましくはジエチル−ジメチルアンモニウムを含む場合には、この柱状化ケイ酸塩化合物の焼成が特に好ましい。なおこの焼成で、柱状化ケイ酸塩生成物から上記有機化合物が除去される。
【0079】
本発明の特定の実施様態では、本発明の方法で用いられる特定の一種以上の金属化合物は、積層ケイ酸塩化合物のケイ酸塩層の架橋金属原子(なお、上記金属原子はさらに有機基と結合し、上記有機基は好ましくはこの架橋金属原子のみに結合している)による共有架橋を引き起こす。本発明の意味の範囲内では、「有機基」は、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物に好ましくは含まれる有機テンプレート剤を意味しないことが好ましい。特に、上記実施様態では、その疎水性のため及び/又は触媒用金属架橋中心の特異的な活性化のために、上記有機基を保存することが望ましい場合もある。また、さらに他の本発明の方法の好ましい実施様態では、この一種以上の積層ケイ酸塩化合物自体が、そのケイ酸塩層中に、少なくとも部分的に工程(2)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物中に保存してもよい有機基を含む。いずれの場合でも、あるいは少なくとも一種の工程(2)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物が架橋金属原子に結合した有機基とこのケイ酸塩層中及び/又はケイ酸塩層上に含まれる有機基とをもつ本発明の方法の実施様態では、上記有機基の存在のために得られる所望の物理的性質及び/又は触媒的性質を保存するために、上記の柱状化ケイ酸塩化合物を焼成しないことが好ましいこともある。本発明によれば、好ましくは架橋金属原子に結合している有機基に関して、また積層ケイ酸塩化合物のケイ酸塩層内及び/又はケイ酸塩層上に含まれる有機基に関して、工程(2)で柱状化ケイ酸塩化合物を得るための金属原子のケイ酸塩層への共有結合が損なわれない限り、特に制限はない。
【0080】
したがってさらに好ましい本発明の方法の実施様態では、工程(2)及び/又は(3)及び/又は(4)で得られる柱状化ケイ酸塩化合物が焼成工程にかけられない。
【0081】
上に定義した本発明の柱状化ケイ酸塩化合物に加えて、本発明はまた、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物に関する。特に、上述の本発明の柱状化ケイ酸塩化合物と同様に、同じことが、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物に当てはまり、特に好ましい本発明の方法で得られる柱状化ケイ酸塩化合物の特定のX線回折パターンに関して及び/又は好ましい柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンに認められる最高強度反射の、本発明の方法の工程(1)で与えられる一種以上の積層ケイ酸塩化合物のX線回折パターン中の最高強度反射と比較してのシフトに関して同じことがあてはまる。
【0082】
したがって、本発明はまた、上述の本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物に関する。
【0083】
本発明によれば、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物に関して、特に上記柱状化ケイ酸塩化合物が実際得られた方法に関して特に制限はない。しかし、上記の得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物が、Cu−K(α1)線を用いる回折試験で、そのX線回折パターンの最大ピーク(100%強度)が、工程(1)で得られる少なくとも一種の積層ケイ酸塩化合物の少なくとも一種の相当する極大ピーク(100%強度)の2θ回折角より0.05〜1.45°2θ小さな2θ回折角をもつことが好ましい。その2θ回折角は、より好ましくは0.10〜0.95°2θ小さく、より好ましくは0.15〜0.75°2θ小さく、より好ましくは0.20〜0.55°2θ小さく、より好ましくは0.25〜0.50°2θ小さく、より好ましくは0.30〜0.45°2θ小さく、さらに好ましくは0.35〜0.40°2θ小さい。しかし上記好ましい実施様態では、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物が、実際少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩化合物を用いる方法で得られたものである必要はない。
【0084】
また本発明では、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物のエックス線ディフラクトグラム中の最高強度ピークの位置に関して特に制限はない。しかしながら本発明では、上記柱状化ケイ酸塩化合物の、Cu−K(α1)線を用いた回折試験で求めたX線回折パターンの最大ピーク(100%強度)が、2θ回折角で3〜14°2θの範囲であることが好ましく、好ましくは2θ回折角は4〜12°2θの範囲であり、より好ましくは5〜11°2θ、より好ましくは6.0〜9.5°2θ、より好ましくは7.0〜8.2°2θ、より好ましくは7.2〜8.0°2θ、より好ましくは7.40〜7.80°2θ、より好ましくは7.45〜7.75°2θ、より好ましくは7.50〜7.70°2θ、さらに好ましくは7.55〜7.65°2θである。
【0085】
本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物の物理的性質に関して特に制限はない。このような制限は、上述の本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物の特徴のため不必要である。これは、例えば柱状化ケイ酸塩化合物の比表面積にも当てはまる。しかし、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物のDIN66135により求めたBET表面積は、50〜950m/gの範囲にあることが好ましく、好ましくは100〜800m/g、より好ましくは200〜600m/g、より好ましくは250〜470m/g、より好ましくは280〜450m/g、より好ましくは300〜430m/g、より好ましくは320〜420m/g、さらに好ましくは360〜400m/gの範囲である。一般に、本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物のBET表面積は、乾燥及び/又は焼成した化合物に関するものであり、好ましくはこの表面積は焼成した化合物に関するものである。本発明の意味の範囲内では、「乾燥された」は、好ましくは、上述のように本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法の乾燥処理にかけられた.柱状化ケイ酸塩化合物をいう。
【0086】
本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物などの上述の柱状化ケイ酸塩化合物に加えて、本発明はまた、一種以上の上記柱状化ケイ酸塩化合物を含む成型物を含む。特に、多くの工業用途において、利用者は柱状化ケイ酸塩化合物をそのまま使用するのでなく、成型物に加工された柱状化ケイ酸塩化合物の使用を望む場合が多い。このような成型物は、特に多くの工業プロセス必要でありで、例えばチューブ反応器中の混合物から物質を分離するのに必要である。
【0087】
したがって上述のように、本発明はまた、成型物中に含まれた本発明の柱状化ケイ酸塩化合物、好ましくはその焼成物、及び/又は成型物中に含まれる本発明の方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物に関する。
【0088】
一般にこの成型物は、もし得られる成型物が所望用途で使用可能なら、少なくとも一種の本発明の柱状化ケイ酸塩化合物に加えて、考えうる他のいずれの化合物を含んでいてもよい。
【0089】
本発明においては、成型物の製造時に少なくとも一種の適当なバインダー材料を使用することが好ましい。この好ましい実施様態では、少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩化合物と少なくとも一種のバインダーの混合物が製造されることがより好ましい。好適なバインダーは、一般に、結合させたいRUB−36及び/又はRUB−37の粒子間を、バインダーが無い場合に存在する物理吸着より強く接着及び/又は結合させるあらゆる化合物である。このようなバインダーの例としては、SiO、Al、TiO、ZrOまたはMgO、または粘土またはこれらの化合物の二種以上の混合物などの金属酸化物があげられる。Alバインダーとしては、粘土鉱物や、α−、β−、γ−、δ−、η−、κ−、χ−またはθ−アルミナなどの天然または合成アルミナ、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイトなどのこれらの無機または有機金属の前駆化合物、またはアルミニウムトリイソプロピラートなどのアルミン酸トリアルコキシが特に好ましい。他の好ましいバインダーは、高極性基と無極性基をもつ両親媒性化合物やグラファイトである。他のバインダーとしては、例えば、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト、ハロイサイト、ジッカイト、ナクライトまたはアナキサイトなどの粘土があげられる。これらのバインダーはそのまま使用できる。本発明において、成型物の製造中の少なくとも一つの他の工程でバインダーが形成されるような化合物を用いることもできる。このようなバインダー前駆体の例としては、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタネート、テトラアルコキシジルコネート、または二種以上の異なるテトラアルコキシシランの混合物、または二種以上の異なるテトラアルコキシチタネートの混合物、または二種以上の異なるテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシシランと少なくとも一種のテトラアルコキシチタネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシシランと少なくとも一種のテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも一種のテトラアルコキシジルコネートの混合物、または少なくとも一種のテトラアルコキシシランと少なくとも一種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも一種のテトラアルコキシジルコネートの混合物があげられる。本発明において、完全にあるいは部分的にSiOからなるバインダーとはSiOの前駆体であり、成型物の製造中の少なくとも一つの他の工程でこれよりSiOが形成されるものである。この点で、コロイダルシリカと「湿式法」シリカと「乾式法」シリカの両方が使用できる。これらは、極めて好ましくは非晶質シリカであり、そのシリカ粒子の大きさは、例えば、5〜100nmの範囲であり、シリカ粒子の表面積は50〜500m/gの範囲である。コロイダルシリカは、好ましくはアルカリ溶液及び/又はアンモニア溶液の形のもの、より好ましくはアンモニア溶液の形のものは、例えば、特にルドックス(R)、シントン(R)、ナルコ(R)またはスノーテックス(R)として市販されている。「湿式法」シリカは、例えば、特にハイシル(R)、ウルトラシル(R)、ブルカシル(R)、サントセル(R)、バルロン−エステルシル(R)、トクシル(R)またはニップシル(R)として市販されている。「乾式法」シリカは、例えば、特にアエロジル(R)、レオロシル(R)、カブ−O−シル(R)、フランシル(R)またはア−クシリカ(R)として市販されている。これらのバインダーは、最終成型物のバインダー含量が、最終成型物の総重量に対して最大で80重量%で使用することが好ましく、より好ましくは5〜80重量%の範囲の量で、より好ましくは10〜70重量%の範囲の、より好ましくは10〜60重量%の範囲の、より好ましくは15〜50重量%の範囲の、より好ましくは15〜45重量%の範囲の、特に好ましくは15〜40重量%の範囲の量で使用される。本発明において用いられる「最終成型物」は、後述のように乾燥および焼成工程(IV)及び/又は(V)の後で得られる成型物、特に好ましくは工程(V)の後で得られる成型物をいう。
【0090】
さらなる加工のためにまたプラスチック材料の形成のために、バインダーまたはバインダー前駆体と少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩とを、少なくとも一種の他の化合物と混合してもよい。特に発泡剤が好ましくあげられる。本発明の方法において、最終成型物に一定の孔径及び/又は一定の孔径分布及び/又は一定の空孔体積を与えるすべての化合物が、発泡剤として使用できる。本発明の方法で好ましく用いられる発泡剤は、水中にあるいは水系溶媒混合物中に分散、懸濁または乳化可能なポリマーである。好ましいポリマーとしては、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシドや、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィンなどの高分子ビニル化合物、ポリアミド、ポリエステル、セルロースまたはメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの炭水化物、糖類または天然繊維があげられる。他の好適な発泡剤は、例えばパルプまたはグラファイトである。(I)の混合物の製造に発泡剤を使用する場合、この発泡剤の含量は好ましくは(I)の混合物中のポリマー含量は、(I)の混合物中のその少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩の量に対して、好ましくは5〜90重量%の範囲であり、好ましくは15〜75重量%の範囲、特に好ましくは25〜55重量%の範囲である。この孔径分布を達成するために、二種以上の発泡剤の混合物を使用することもできる。本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、後述のように工程(V)において焼成により発泡剤を除いて多孔性成型物を得る。
【0091】
本発明の同様に好ましい実施様態においては、(I)の混合物の製造に少なくとも一種のペースト剤が使用される。使用可能なペースト剤は、本目的に好適なあらゆる化合物である。これらは、好ましくは有機ポリマー、特に親水性ポリマーであり、例えばセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、バレイショ澱粉などの澱粉、壁紙糊、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテンまたはポリテトラヒドロフランである。したがって、発泡剤として作用する特定の化合物を、ペースト剤として使用することができる。本発明の方法の特に好ましい実施様態においては、後述のようにこれらのペースト剤が工程(V)で焼成により除かれて、多孔性成型物を与える。
【0092】
本発明の他の実施様態においては、(I)の混合物の製造の際に少なくとも一種の酸性添加物を加えてもよい。後述のように、好ましい工程(V)で焼成により除去可能な有機酸性化合物が極めて好ましい。カルボン酸が、具体的にはギ酸、シュウ酸及び/又はクエン酸が特に好ましい。これらの酸性化合物を二種以上用いることもできる。
【0093】
少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩を含む(I)の混合物のいろいろな成分の添加順序は特に重要ではない。少なくとも一種のバインダーをまず添加し、次いで少なくとも一種の発泡剤と少なくとも一種の酸性の化合物を加え、最後に少なくとも一種のペースト剤を加えてもよく、またこれらの少なくとも一種のバインダー、少なくとも一種の発泡剤、少なくとも一種の酸性の化合物、および少なくとも一種のペースト剤の添加順序を変えることもできる。
【0094】
適当なら少なくとも一種の上述の化合物が前もって加えられた少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩化合物にバインダーを添加した後、(I)の混合物は、原則として、10〜180分間均質化される。特に均質化には、ニーダー、エッジミルまたはエクストルーダーが特に好ましく用いられる。この混合物は、好ましくはニーダーで混練される。工業規模ではエッジミル中での処理が均質化に好ましく用いられる。この均質化は、原則として約10℃〜ペースト剤の沸点の範囲の温度で、常圧下または小さな加圧下で行われる。その後適当なら、上述の少なくとも一種の化合物を加えることができる。このようにして得られる混合物を、押し出し可能なプラスチック材料ができるまで、好ましくはニーダー中で混練する。
【0095】
本発明のより好ましい実施様態によれば、この均質化された混合物を成型する。本発明において、成型物を既存のエクストルーダー中で押出して、例えば直径が好ましくは1〜10mm、特に好ましくは2〜5mmである押出物を与えるプロセスが、成型プロセスに好ましい。このような押出し成型装置は、例えば、Ullmann’s Enzyklopadie der Technischen Chemie、4th Edition、Vol. 2、p.295以下、1972に記載されている。スクリュー型押出機の使用の他に、プランジャ型エクストルーダーも成型に好ましく用いられる。しかしながら、原理的には、すべての既知の及び/又は適当な混練成型用装置やプロセスを成型に用いてもよい。これらの例としては、特に、ブリケット化、即ち他のバインダー材料の添加または無添加での機械的な圧縮や、ペレット化、即ち円形及び/又は回転運動による成型や、焼き付け、即ち成型材料を熱処理があげられる。本発明により製造される成型物の形状は、好きなように選ばれる。特に、球、卵形、円柱または板状が可能である。
【0096】
本発明において、工程(III)の後に少なくとも一回の乾燥工程が続くことが好ましい。
【0097】
本発明において、工程(IV)の後に少なくとも一回の焼成工程が続くことが好ましい。焼成は、一般に300〜700℃の温度範囲で、好ましくは400〜600℃の温度範囲で行われる。焼成を、いずれか適当なガス雰囲気下で行うことができ、空気及び/又は希薄空気が好ましい。また、焼成は、マッフル炉、回転式のキルン及び/又はベルト焼成オーブン中で行うことが好ましい。焼成工程中の温度を一定とすることもできるし、連続的または不連続的に変化させることもできる。焼成を2回以上行う場合、この焼成温度が、個々の工程で異なっていても同じであってもよい。
【0098】
したがって、本発明はまた、
(I)少なくとも一種の柱状化ケイ酸塩化合物と、必要に応じて少なくとも一種のバインダーを含む混合物を製造し、
(II)該混合物を混練し、
(III)混練混合物を成型して少なくとも一種の成型物を与え、
(IV)該少なくとも一種の成型物を乾燥させ、
(V)該少なくとも一種の乾燥成型物を焼成する工程からなる上述の成型物の製造方法に関する。
【0099】
乾燥の前及び/又は後で、及び/又は焼成の前及び/又は後で、この少なくとも一種の成型物を、適当なら濃厚または希薄なブレンステッド酸あるいは二種以上のブレンステッド酸の混合物で処理してもよい。好適な酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、またはカルボン酸、ジカルボン酸またはニトリロ三酢酸などのオリゴカルボン酸またはポリカルボン酸、スルホサリチル酸またはエチレンジアミン四酢酸があげられる。適当ならこの少なくとも一種のブレンステッド酸での少なくとも一回の処理の後に少なくとも一回の乾燥工程及び/又は少なくとも一回の焼成工程が続き、いずれの場合も上述の条件下で実施される。
【0100】
本発明の方法の他の実施様態においては、硬化を進めるために本発明で得られる成型物を水蒸気処理にかけることができ、その後、好ましくは乾燥を少なくとも再度1回行い、及び/又は焼成を再度少なくとも1回行う。例えば、少なくとも一回の乾燥工程と続く少なくとも一回の焼成工程の後で、焼成成型物が水蒸気処理にかけられ、もう一度少なくとも1回乾燥し及び/又はもう一度少なくとも1回焼成される。
【0101】
最後に、本発明は、上に定義した柱状化ケイ酸塩化合物及び/又は上に定義した柱状化ケイ酸塩化合物の製造方法で得ることのできるあるいは得られる柱状化ケイ酸塩化合物の、モレキュラーシーブ、触媒、触媒成分、触媒担体またはそのバインダー、吸収材としての、イオン交換への、セラミックスの製造及び/又はポリマー中での利用に関する。本発明では、この柱状化ケイ酸塩化合物を触媒として使用することが好ましい。
【0102】
以下の例と図を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1図1に、実施例1で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。図1は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含んでいる。
図2図2に、実施例3で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とアナターゼの線パターンも含む。
図3図3に、実施例4で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とアナターゼの線パターンも含む。
図4図4に、実施例5で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とバデレアイトの線パターンも含む。
図5図5に、実施例6で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とRUB−37構造の線パターンも含む。
図6図6に、実施例6で得られたに柱状化ケイ酸塩化合物の窒素吸着等温図を示す。この図は、比較用のRUB−36構造とバデレアイトの線パターンも含む。
図7図7に、実施例7で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とRUB−37構造の線パターンも含む。
図8図8に、実施例8で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含む。
図9図9に、実施例10で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とRUB−37構造の線パターンも含む。
図10図10に、実施例10で得られたに柱状化ケイ酸塩化合物の窒素吸着等温図を示す。
図11図11に、実施例11で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とRUB−37構造の線パターンも含む。
図12図12に、実施例11で得られたに柱状化ケイ酸塩化合物の窒素吸着等温図を示す。
図13図13に、実施例13で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含む。
図14図14に、実施例14で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含む。
図15図15に、実施例1で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含む。
図16図16に、実施例16の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含む。
図17図17に、実施例17で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含む。
図18図18に、実施例18の柱状化ケイ酸塩化合物から得られたX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造と金の線パターンも含む。
図19図19に、実施例19で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。
図20図20に、実施例20で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とスズ石(SnO)の線パターンも含む。
図21図21に、実施例20で得た柱状化ケイ酸塩化合物の窒素吸着等温図を示す。
図22図22に、実施例21で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とスズ石(SnO)の線パターンも含む。
図23図23に、実施例21で得られたに柱状化ケイ酸塩化合物の窒素吸着等温図を示す。
図24図24に、実施例22で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含む。
図25図25に、実施例22で得られたに柱状化ケイ酸塩化合物の窒素吸着等温図を示す。
図26図26に、実施例23の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造の線パターンも含んでいる。
図27図27に、比較例2で得た化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造と斜方晶SiOの線パターンも含む。
図28図28に、比較2のケイ酸塩化合物から得られた窒素吸着等温図を示す。
図29図29に、実施例24で得た柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンを示す。この図は、比較用のRUB−36構造とRUB−37構造の線パターンも含む。
図30図30に、実施例24の柱状化ケイ酸塩化合物の窒素吸着等温図を示す。
【0104】
図に示す粉末X線回折パターンは、単色Cu−Kα1線でジーメンスD−5000を用いて測定したものであり、好ましい配向を避けるため毛細管試料ホルダーを使用した。この回折データは、ブラウン社の位置検出型検出器を用い8〜96°(2θ)の範囲内で0.0678°のステップ幅で測定したものである。粉末パターンの番号は、粉末X線装置内でトレオール90プログラムを用いて付与した(トレオール90は、以下のURLから自由にアクセス可能なパブリックドメインプログラムである:http://www.ch.lucr.org/sincris−top/logiciel/)。図中では、角度2θ(単位:°)を横軸に、強度(LC=ラインカウント)を縦軸にプロットした。 図に示す窒素吸着等温図は、DIN66134により77Kで測定した。これらの図では、比圧力P/Poを横軸にプロットし、標準圧力と標準温度(STP)での空孔体積(ml/g)を縦座標にプロットした。
【実施例】
【0105】
実施例1:柱状化ケイ酸塩化合物の製造
651.6gのジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(20.62質量%)水溶液を評量してビーカーに入れ、ここに136.5gの非晶質シリカ(アエロジル(R)200)を少しずつ添加し、この合物を2時間混合して、薄黄色の懸濁液を得た。次いでロータリーエバボレータを用いて得られた混合物から107.8gの水を除き、この濃縮混合物を30分間攪拌した。135.3gのこの混合物を評量して、圧力消化容器に入れ、次いでこの中で水熱条件下140℃で19日間(456時間)加熱し、銀白色にきらきら光る懸濁液を得た。
【0106】
次いで、得られた懸濁液を遠心分離で分離し、120℃で72時間乾燥させて、27.1gのRUB−36を得た。Cu−K(α1)線を用いると、RUB−36試料のX線回折パターン中の最大ピーク(100%強度)は、7.95°2θの観察された。
【0107】
50.2gの1M塩酸と2.8gのRUB−36をポリテトラフルオロエチレンカップに入れた。次いでこの混合物を5分間攪拌し、次いで0.7gのTiClを攪拌下で添加した。次いでこの混合物をさらに15分間攪拌した。このポリテトラフルオロエチレンカップを密閉し、オートクレーブに入れ、ここでこの容器を170℃まで加熱し、この温度で24時間維持した。
【0108】
得られた混合物をガラスフィルターで濾過し、合計1.75lの蒸留水で、洗浄液が中性pHとなるまで洗浄した。次いで、得られた固体を120℃で6時間乾燥させ、次いで500℃まで1℃/分の速度で加熱し、温度を500℃で6時間保持して焼成して、2.65gの白色粉末を得た。
【0109】
図1に示すXRDから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強反射の2θ値が左にシフトした。上記反射を正確に分析した結果、シフトは0.34°2θ〜7.61°2θであり、この積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層間のチタン架橋によりRUB−36構造の層間拡張が起こっていることを示した。
【0110】
実施例1で得られた焼成直後の試料を120℃、約10−6mPaの減圧で一夜放置して、ガスを除いた。次いで、試料を、容積吸着装置(クアンタクロム社製オートソルブAS−6)を用いて77Kでの窒素吸着を評価し、DIN66135により吸着等温図を得た。データ分析の結果、BET表面積は331m/gで、ラングミュア法表面積が436m/gであった。
【0111】
実施例2:TiClを用いる柱状化RUB−36の製造
柱状化RUB−36ケイ酸塩化合物を、TiClに代えて0.9gのTiClを用いて実施例1の方法で調整し、2.47gの白色粉末を得た。
【0112】
得られた柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンは、2θ角度が7.95°で最高強度反射を示し、この積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層間のチタン架橋により、RUB−36前駆化合物と比較して0.36°2θのシフトが起こっていることを示した。
【0113】
実施例1と同様に試料の吸着等温図を測定した結果、BET表面積が352m/gであり、ラングミュア法表面積が464m/gであった。
【0114】
実施例3:オルトチタン酸テトラ−n−ブチルを用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
651.6gのジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(20.62質量%)水溶液を秤量してビーカーに入れ、ここに、136.5gの非晶質シリカ(アエロジル(R)200)を少しずつ添加し、この混合物を2時間混合して、薄黄色の懸濁液を得た。次いでロータリーエバボレータを用いて得られた混合物から107.8gの水を除き、この濃縮混合物を30分間攪拌した。169.0gのこの混合物を評量して、圧力消化容器に入れ、次いでこの中で水熱条件下140℃で19日間(456時間)加熱し、銀白色にきらきら光る懸濁液を得た。
次いで得られた懸濁液を遠心分離で分離し、120℃で72時間乾燥させて、32.6gのRUB−36を得た。Cu−K(α1)線を用いると、RUB−36試料のX線回折パターン中の最大ピーク(100%強度)は、7.95°2θに観察された。
【0115】
4.9gの硝酸(65%)と163.2gの蒸留水、2.8gのRUB−36をポリテトラフルオロエチレンカップに入れた。次いでこの混合物を5分間攪拌し、次いで1.2gのテトラーオルトチタン酸テトラ−n−ブチルを攪拌下で添加した。次いでこの混合物をさらに15分間攪拌した。このポリテトラフルオロエチレンカップを密閉し、オートクレーブに入れ、ここでこの容器を170℃まで加熱し、この温度で24時間維持した。
【0116】
得られた混合物をガラスフィルターで濾過し、合計2lの蒸留水で、洗浄液が中性pHとなるまで洗浄した。次いで、得られた固体を120℃で6時間乾燥させ、次いで500℃まで1℃/分の速度で加熱し、温度を500℃で6時間保持して焼成して、2.27gの白色粉末を得た。
【0117】
図2に示す実施例3の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、チタン架橋で層間拡張があることを示した。最高強度反射を詳細に分析した結果、2θ値が7.61°であり、RUB−36と較べて0.34°2θのシフトがあった。
【0118】
実施例4:オルトチタン酸テトラエチルを用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
柱状化ケイ酸塩化合物を、テトラーオルトチタン酸テトラ−n−ブチルに代えて0.8gのオルトチタン酸テトラエチルを用い実施例3の方法で調整し、2.16gの白色粉末を得た。
【0119】
図3に示す実施例4の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、最高強度反射が低2θ値にシフトし、チタン架橋による層間拡張が起こっていることを示した。X線回折データをより詳しく分析の結果、最高強度反射の2θ値は7.58°であり、これが、RUB−36前駆化合物の最高強度反射と比較して0.37°2θのシフトに相当することがわかった。
【0120】
実施例5:ZrClを用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
柱状化RUB−36ケイ酸塩化合物を、TiClに代えて1.1gのTiClを用いて実施例1の方法で調整し、2.83gの白色粉末を得た。
【0121】
図4に示す実施例5の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、Zr架橋で層間拡張があることを示した。特に、X線回折データをより詳しく分析の結果、最高強度反射は7.5°2θであり、RUB−36前駆化合物の反射と較べて0.37°2θのシフトがあることを示した。
【0122】
DIN66135により得られた実施例5の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が317m/gであり、ラングミュア法表面積が419m/gであることが分った。
【0123】
実施例6:マンガンジクロリドを用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
1628.2gのジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(20.62質量%)水溶液を評量してビーカーに入れ、ここに341.2gの非晶質シリカ(アエロジル(R)200)を少しずつ添加し、この混合物を2時間混合して、薄黄色の懸濁液を得た。次いでロータリーエバボレータを用いて得られた混合物から281.5gの水を除き、この濃縮混合物を30分間攪拌した。この混合物を圧力消化容器に移し、次いでこの中で水熱条件下140℃で19日間(456時間)加熱し、銀白色にきらきら光る懸濁液を得た。
【0124】
得られた懸濁液を濾過により分離し、母液で洗浄し、次いで9lの蒸留水で洗浄し、次いで固体残渣を120℃で24時間乾燥して、254.6gのRUB−36を得た。Cu−K(α1)線を用いると、RUB−36試料のX線回折パターン中の最大ピーク(100%強度)は、7.92°2θに観察された。
【0125】
次いで柱状化ケイ酸塩化合物を、実施例1の方法で、本例のRUB−36を用い、TiClに代えて0.6gのMnClを用いて製造し、2.18gの白色粉末を得た。
【0126】
図5に示す試料6のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36前駆化合物と較べて、最高強度反射が低2θ値にシフトし、この積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層間のマンガン架橋で層間拡張が起こっていることを示した。特に、上記反射に7.58°2θの値が得られ、RUB−36前駆化合物と較べて0.34°2θのシフトを示した。
【0127】
図6に実施例6の試料で得られた窒素吸着等温図を示す。DIN66135により評価した結果、BET表面積は425m/gであった。
【0128】
実施例7:Mn(acac)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
柱状化ケイ酸塩化合物を、実施例3の方法を用い、実施例6で得られたRUB−36を用い、またオルトチタン酸テトラ−n−ブチルに代えて1.6gのマンガン(III)2,4−ペンタンエディオネートを用いて製造し、2.11gの白色粉末を得た。
【0129】
図7に示す試料7のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36前駆化合物と較べて、最高強度反射が低2θ値にシフトし、マンガンによるケイ酸塩層の架橋で層間拡張が起こっていることを示した。特に、詳しい分析の結果、上記反射の2θ値が7.62°2θであり、0.30°2θのシフトに相当することが分る。
【0130】
比較例1
塩酸を加えない以外、実施例6の方法繰り返したところ、2.21gの褐色粉末を得た。
【0131】
比較例1で得られた試料のX線回折で、高度に非晶質の生成物であることがわかった。したがって、反応混合物のpHが、本発明の柱状化ケイ酸塩化合物の製造に必須であることがわかる。本比較例で明白なように、特にpHが本発明の範囲の外でこの反応法を実施すると、この積層ケイ酸塩前駆体が完全に粉末化する。
【0132】
実施例8:塩化鉄(II)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例1の方法で、TiClに代えて0.9gのFeCl・4HOを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、1.85gの白色粉末を得た。
【0133】
図8に示す実施例8の試料のX線回折パターンから明らかなように、最高強度反射の2θ値が、RUB−36前駆化合物の最高強度反射と較べて低2θ値にシフトした。特に、詳しい分析の結果、上記反射の2θ値が7.55°2θであり、0.4°2θのシフトに相当することが分る。
【0134】
DIN66135により得られた実施例8の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が375m/gであり、ラングミュア法表面積が494m/gであることが分った。
【0135】
実施例9:塩化鉄(III)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例1の方法を用いて、TiClに代えて1.2gのFeCl・6HOを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.213gの淡褐色粉末を得た。
【0136】
図8に示す実施例9の試料のX線回折パターンから、最高強度反射の2θ値が7.55°であり、実施例5で得られた結果に相当することがわかる。
【0137】
DIN66135により得られたこの試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が409m/gであり、ラングミュア法表面積が538m/gであることが分った。
【0138】
実施例10:塩化ユーロピウム(III)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例1の方法で、実施例6で得られたRUB−36を用い、TiClに代えて1.7gのEuCl・6HOを用いて柱状化ケイ酸塩化合物を製造し、2.04gの白色粉末を得た。
【0139】
図9に示す実施例10の試料のX線回折パターンから明らかなように、最高強度反射の2θ値が、RUB−36前駆化合物の最高強度反射と較べて低2θ値にシフトし、ユーロピウムでの架橋で層間拡張が起こっていることが分った。特に、上記反射に7.58°2θの値が得られ、これはRUB−36と較べて0.34°2θのシフトに相当する。
【0140】
実施例10の試料の窒素吸着等温図を図10に示す。DIN66135によるBET表面積は422m/gであり、ラングミュア法表面積は560m/gであった。
【0141】
実施例11:塩化鉄(III)用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
50.2gの1M塩酸と2.8gの実施例6で得られたRUB−36をポリテトラフルオロエチレンカップに入れた。次いでこの混合物を10分間攪拌し、次いで1.2gのFeCl・6HOを攪拌下で添加した。次いでこの混合物をさらに10分間攪拌した。このポリテトラフルオロエチレンカップを次いで密閉し、オートクレーブに入れ、この容器を150℃に加熱し同温度で24時間保持した。
【0142】
得られた混合物をガラスフィルターで濾過し、合計5lの蒸留水で、洗浄液が中性のpHとなるまで洗浄した。次いで得られた固体を120℃で16時間乾燥させ、次いで500℃まで1℃/分の速度で加熱し、500℃で6時間保持し、2.4gの白色粉末を得た。
【0143】
図11に示す実施例11の試料のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36前駆化合物と較べて、最高強度反射が低2θ値にシフトし、この積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層間の鉄架橋で層間拡張が起こっていることを示した。この回折データの詳しい分析から、最高強度反射の2θ値が7.56°であり、RUB−36前駆化合物と較べると0.36°2θのシフトがあることが分る。
【0144】
実施例11の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が433m/gであり、ラングミュア法表面積が571m/gであることがわかる。
【0145】
実施例12:塩化ルテニウム(III)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
柱状化RUB−36ケイ酸塩化合物を、TiClに代えて1.3gのルテニウム(III)塩化物水和物を用いて実施例1の方法で調整し、2.63gの黒/灰色粉末を得た。
【0146】
得られた試料のエックス線粉末回折から明らかなように、最高強度反射が2θ値で7.58°に現れ、RUB−36前駆化合物と較べて0.39°2θのシフトを示し、したがってケイ酸塩層のルテニウム架橋により層間拡張が起こっていることを示した。しかしながらX線回折に示されているように、この試料はルテニウム酸化物不純物を含んでいるようであった。
【0147】
DIN66135による実施例12の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が322m/gであり、ラングミュア法表面積が427m/gであることが分った。
【0148】
実施例13:塩化コバルト(II)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
柱状化RUB−36ケイ酸塩化合物をTiClに代えて1.1gのCOCl・6HOを用いて実施例1の方法で調整し、2.00gの白色粉末を得た。
【0149】
図13に示す実施例13の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、コバルト架橋で層間拡張があることを示した。X線回折データを詳細に検討した結果、最高強度反射の2θ値が7.60°であり、RUB−36と較べて0.35°2θのシフトを示した。
【0150】
DIN66135により得られた実施例13の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が385m/gであり、ラングミュア法表面積が509m/gであることが分った。
【0151】
実施例14:塩化パラジウム(II)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例1の方法を用いて、TiClに代えて0.8gのPdClを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、1.95gの淡褐色粉末を得た。
【0152】
図14に示す実施例14の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトした。特に、2θ値の7.58°が得られ、0.37°2θのシフトを示した。
【0153】
DIN66135により得られた実施例14の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が319m/gであり、ラングミュア法表面積が420m/gであることが分った。
【0154】
実施例15:塩化銅(I)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
651.6gのジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(20.62質量%)水溶液を評量してビーカーに入れ、ここに136.5gの非晶質シリカ(アエロジル(R)200)を少しずつ添加し、この混合物を2時間混合して、薄黄色の懸濁液を得た。次いでロータリーエバボレータを用いて得られた混合物から107.8gの水を除き、この濃縮混合物を30分間攪拌した。170.1gのこの混合物を評量して圧力消化容器に入れ、次いでこの中で水熱条件下140℃で19日間(456時間)加熱し、銀白色にきらきら光る懸濁液を得た。
【0155】
次いで、得られた懸濁液を遠心分離で分離し、120℃で72時間乾燥させて、29.3gのRUB−36を得た。Cu−K(α1)線を用いると、RUB−36試料のX線回折パターン中の最大ピーク(100%強度)が7.97°2θに観察された。
【0156】
次いで実施例1の方法で、本例で得られたRUB−36と、TiClに代えて0.6gのCuClを用いて柱状化ケイ酸塩化合物を製造し、2.15gの白色粉末を得た。
【0157】
図15に示す実施例15の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、ケイ酸塩層の銅での架橋で層間拡張があることを示した。特に最高強度反射の2θ値は7.62°であり、RUB−36と較べて0.35°2θのシフトを示した。
【0158】
DIN66135により得られた実施例15の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が363m/gであり、ラングミュア法表面積が476m/gであることが分った。
【0159】
実施例16:塩化物銅(II)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例15の方法を用いて、TiClに代えて0.6gのCuClを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.010gの白色色粉末を得た。
【0160】
図16に示す実施例16の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトした。特に2θ値の7.59°が得られ、RUB−36と較べて0.38°2θのシフトを示した。
【0161】
実施例16の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が366m/gであり、ラングミュア法表面積が481m/gであることが分った。
【0162】
実施例17:塩化アルミニウムを用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例1の方法を用いて、TiClに代えて0.46gのAlClを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.07gの白色粉末を得た。
【0163】
図17に示す実施例17の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36前駆化合物と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、アルミニウムでケイ酸塩層の架橋で層間拡張が起こっていることを示す。特に最高強度反射が2θ値の7.6°で観測され、RUB−36と比較して0.37°2θのシフトを示した。
【0164】
実施例18:金(III)塩化物を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例15の方法を用いて、CuClに代えて0.4gのHAuCl・xHOを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.01gの白色粉末を得た。
【0165】
図18に示す実施例18の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、金でのケイ酸塩層の架橋で層間拡張があることを示した。特に最高強度反射が2θ値の7.53°で観測され、0.44°2θのシフトを示した。
【0166】
実施例19:塩化亜鉛を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例1の方法を用いて、TiClに代えて0.6gの塩化亜鉛を用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.20gの白色粉末を得た。
【0167】
図19に示す実施例19の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、ケイ酸塩層の亜鉛での架橋で層間拡張があることを示した。特に2θ値の7.58°が得られ、0.38°2θのシフトを示した。
【0168】
DIN66135により得られた実施例19の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が409m/gであり、ラングミュア法表面積が539m/gであることが分った。
【0169】
実施例20:スズ(II)塩化物を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例15の方法を用いて、CuClに代えて1.0gのSnCl・2HOを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.30gの白色粉末を得た。
【0170】
図20に示す実施例15の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、ケイ酸塩層のスズでの架橋で層間拡張があることを示した。特に上記反射に2θ値の7.64°が得られ、RUB−36と較べて0.33°2θのシフトを示した。
【0171】
実施例20の試料の窒素吸着等温図を図21に示す。それぞれDIN66135によるBET表面積が334m/gであり、等価表面積が440m/gであった。
【0172】
実施例21:スズ(IV)塩化物を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例15の方法を用いて、CuClに代えて1.2gのSnClを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.86gの白色粉末を得た。
【0173】
図22に示す実施例22の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、ケイ酸塩層のスズでの架橋で層間拡張があることを示した。特に上記反射に2θ値の7.63°が得られ、0.34°2θのシフトを示した。
【0174】
実施例21の試料の窒素吸着等温図を図23に示す。それぞれDIN66135によるBET表面積が303m/gであり、ラングミュア方法での等価表面積が398m/gであった。
【0175】
実施例22:ヘキサメチル二スズを用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
2202.8gのジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(20.62質量%)水溶液を評量してビーカーに入れ、ここに461.7gの非晶質シリカ(アエロジル(R)200)を少しずつ添加し、この混合物を2時間混合して、薄黄色の懸濁液を得た。次いでロータリーエバボレータを用いて得られた混合物から425.9gの水を除き、この濃縮混合物を1時間攪拌した。この混合物を圧力消化容器に移し、次いでこの中で水熱条件下140℃で10日間(240時間)加熱し、銀白色にきらきら光る懸濁液を得た。
【0176】
得られた懸濁液を濾過により分離し、母液で洗浄し、次いで10lの蒸留水で洗浄し、次いで固体残渣を120℃で24時間乾燥して、378.2gのRUB−36を得た。Cu−K(α1)線を用いると、RUB−36試料のX線回折パターン中の最大ピーク(100%強度)は、7.96°2θに観察された。
【0177】
次いで実施例1の方法で、本例のRUB−36を用い、TiClに代えて1.5gのヘキサメチル二スズを用いて柱状化ケイ酸塩化合物を得た、2.4gの白色粉末を得た。
【0178】
図24に示す試料22のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36前駆化合物と較べて、最高強度反射が低2θ値にシフトし、この積層ケイ酸塩構造のケイ酸塩層間のスズ架橋で層間拡張が起こっていることを示した。特に上記反射に2θ値の7.6°が得られた。これは、0.36°2θのシフトに相当する。
【0179】
実施例22の試料の窒素吸着等温図を図25に示す。それぞれDIN66135によるBET表面積が410m/gであり、ラングミュア方法での等価表面積が546m/gであった。
【0180】
実施例23:ジメチルスズジクロリドを用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例22の方法を用いて、ヘキサメチル二スズに代えて1.0gのジメチルスズジクロリドを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、1.2gの白色粉末を得た。
【0181】
図26に示す実施例23の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトした。特に、上記反射に2θ値の7.62°が得られた。これは、0.32°2θのシフトに相当する。
【0182】
DIN66135により得られた実施例23の試料の窒素吸着等温図から、BET表面積が414m/gであり、ラングミュア法表面積が549m/gであることが分った。
【0183】
比較例2
実施例23の方法を繰り返した。なお、水熱反応は80℃の温度で72時間実施し、1.1gの白色粉末を得た。
【0184】
図27に示す比較例2の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が高い2θ値にシフトし、焼成の際に起こる典型的なケイ酸塩層のトポタクティク縮合による層間スペーシングの減少が起こっていることを示している。特にその最高強度反射は、RUB−36のトポタクティク縮合物であるRUB−37の相当する反射と一致する。したがって実施例23とは異なり、比較例2の方法では柱状化ケイ酸塩化合物が得られない。
【0185】
このことは、図28に示す比較例2の試料の窒素吸着等温図から確認され、DIN66135によるBET表面積は28m/gに過ぎず、ラングミュア法表面積は37m/gであった。
【0186】
実施例24:塩化サマリウム(III)を用いる柱状化RUB−36ケイ酸塩の製造
実施例6の方法を用いて、MnClに代えて1.7gのSmCl・HOを用いて、柱状化ケイ酸塩化合物を合成して、2.04gの白色粉末を得た。
【0187】
図29に示す実施例24の柱状化ケイ酸塩化合物のX線回折パターンから明らかなように、RUB−36構造と比較すると、最強強度反射が低2θ値にシフトし、ケイ酸塩層のサマリウムでの架橋で層間拡張があることを示した。特に上記反射が2θ値で7.55°に観測され、これはRUB−36前駆化合物と較べて0.37°2θのシフトに相当する。
【0188】
実施例24の試料の窒素吸着等温図を図30に示す。それぞれDIN66135によるBET表面積が411m/gであり、ラングミュア法表面積が546m/gであった。
図1
図2
図3
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図5
図6
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