特許第5957225号(P5957225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5957225熱水条件下でのリチウム−金属−フォスフェイトの合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957225
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】熱水条件下でのリチウム−金属−フォスフェイトの合成
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20160714BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20160714BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   C01B25/45 Z
   H01M4/58
   H01M4/36 B
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-542814(P2011-542814)
(86)(22)【出願日】2009年12月22日
(65)【公表番号】特表2012-513945(P2012-513945A)
(43)【公表日】2012年6月21日
(86)【国際出願番号】EP2009067742
(87)【国際公開番号】WO2010076265
(87)【国際公開日】20100708
【審査請求日】2012年12月21日
(31)【優先権主張番号】61/141,117
(32)【優先日】2008年12月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ブラムニク,キリル
(72)【発明者】
【氏名】ヒプスト,ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】ラムペルト,ヨルダン カイト
(72)【発明者】
【氏名】シュレドレ,ズィモン
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/097324(WO,A2)
【文献】 特表2006−511038(JP,A)
【文献】 特開2008−293661(JP,A)
【文献】 特表2006−516172(JP,A)
【文献】 特開2008−130526(JP,A)
【文献】 特開2006−331992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/00 − 25/46
H01M 4/36
H01M 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
Lia-b1b1-c2cd-e3ex (I)
(但し、Qが、酸化状態が+2であり、及びM1、M2、M3、a、b、c、d、e及び
xが:
Q:Fe、Mn、Co、Ni、
1:Na、K、Rb及び/又はCs、
2:Mg、Al、Ca、Ti、Co、Ni、Cr、V、Fe、Mnで、QとM2が互いに異なる、
3:Si、S、F、
a:0.8〜1.9、
b:0〜0.1、
c:0〜0.3、
d:0.8〜1.9、
e:0〜0.1、
x:Li、M1、M2、P、M3の量と酸化状態に依存して1.0〜8であり、
一般式(I)の化合物は、荷電状態が中性である)
の化合物を製造する方法であって、以下の工程、
(A)少なくとも1種のリチウム含有化合物、少なくとも1種のQ−含有化合物(但し、Qは、少なくとも部分的に酸化状態が+2よりも高い)、及び存在する場合には、少なくとも1種のM1−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM2−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM3−含有化合物、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の、炭素を含まない化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤を含む、本質的に水性の混合物を用意する工程、
(B)工程(A)で得られた混合物を、270350℃の温度、及び自己生成の圧力で加熱し、Qを酸化状態を+2に還元し、及び一般式(I)の化合物を得る工程、
を含み、
工程(B)は工程(A)の後、更なる工程を行うことなく行われ、そして所望の化合物が、工程(B)で得られた生成物をろ過し、ろ過したろ過物を洗浄し、そして乾燥させることによって固体状態で得られ、及び
工程(A)の前記本質的に水性の混合物は、この混合物を提供するために使用される溶媒の50質量%を超える量が水であることを意味することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記一般式(I)の指数b、c及びeの値がそれぞれ0であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(A)で用意される混合物が、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される少なくとも1種の還元剤が、H3PO3、(NH4)H2PO3、(NH42HPO3、H3PO2、(NH4)H2PO2、LiH2PO3、Li2HPO3、Li2PO2、及びこれらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(A)で加えられる、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物が、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH42HPO4、(NH43PO4、Li3PO4、LiH2PO4、Li2HPO4及びこれらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項3又は4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
工程(B)の後で、以下の工程(C)
(C)一般式(I)の化合物を、工程(B)で得られた混合物から分離する工程、が行われることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(B)が、オートクレーブ内で行われることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料を含む混合物を製造する方法であって、以下の工程、
(E)少なくとも1種の導電性材料、又は導電性材料の少なくとも1種の前駆体、少なくとも1種のリチウム含有化合物、少なくとも1種のQ−含有化合物(但し、Qが、少なくとも部分的に酸化状態が+2よりも高い)、及び存在する場合には、少なくとも1種のM1−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM2−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM3−含有化合物、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の、炭素を含まない還元剤の、本質的に水性の混合物を用意する工程、及び
(F)工程(E)で得られた混合物を、270350℃の温度、及び自己生成の圧力で加熱し、Qを+2の酸化状態に還元し、及び一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物を含む混合物を得る工程、
を含み、
工程(F)は工程(E)の後、更なる工程を行うことなく行われ、そして所望の化合物が、工程(F)で得られた生成物をろ過し、ろ過したろ過物を洗浄し、そして乾燥させることによって固体状態で得られ、及び
工程(E)の前記本質的に水性の混合物は、この混合物を提供するために使用される溶媒の50質量%を超える量が水であることを意味することを特徴とする方法。
【請求項9】
工程(E)で提供される混合物が、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤が、H3PO3、(NH4)H2PO3、(NH42HPO3、H3PO2、(NH4)H2PO2、LiH2PO3、Li2HPO3、LiH2PO2、及びこれらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項又はの何れかに記載の方法。
【請求項11】
導電性材料が、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選ばれることを特徴とする請求項10の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、リチウム、少なくとも1種の更なる金属及びフォスフェイト−アニオンを含む化合物を製造する方法、これらの化合物と少なくとも1種の導電性材料を含む混合物を製造するための方法、これの方法によって製造することができる化合物及び混合物、及びこれらの化合物及び混合物を、リチウムイオン電池のカソードを製造するために使用する方法に関する。
【0002】
LiFePO4を製造するための方法は、従来技術から公知である。
【0003】
特許文献1(US2003/0082454A1)には、Li2CO3又はLiOHH2O、Fe(CH3CO22及びNH42PO42Oを混合することによってLiFePO4を製造する方法が開示されている。NH3、H2O及びCO2を除去するために、固体混合物が300〜350℃でか焼(焼成)される。この混合物が、次に、アルゴン下で24時間、800℃で更に処理される。この文献は、更にLi224、LiH2PO4及びFe(C24)・2H2Oを含む、ミル(製粉)した混合物をか焼することによって、LiFePO4ベースの材料を製造する方法を記載している。
【0004】
特許文献2(US6702961B2)も、FePO4、Li2CO3及びカーボンからなる、ミルした混合物をペレット化し、次に700℃で8時間、不活性雰囲気内でか焼することによりLiFePO4を製造する方法を開示している。
【0005】
特許文献3(CN1547273A)の要約は、ミルし、次にタブレット化したLi2CO3、FeC24・2H2O及び(NH42HPO4の混合物に炭素を加えて、マイクロ波の照射下にか焼することによりLiFePO4を製造する方法を開示している。
【0006】
特許文献4(DE102005015613A1)及び特許文献5(DE102005012640A1)は、Fe(II)SO4・7H2O、H3PO4及びLiOHH2Oを含む水性混合物を窒素下で、160℃で10時間、熱水的に処理することによってLiFePO4を得ることができることを開示している。上記熱水処理の間、所望のLiFePO4が、水性混合物から沈澱する。反応混合物の成分は還元、又は酸化されない。
【0007】
特許文献6(WO2006/057146A2)は、Fe(II)O、P25及びLiOHを含む混合物を1100℃で、アルゴン下に溶融させ、次にミルすることによってLiFePO4を得ることができることを開示している。
【0008】
特許文献7(WO2007/09356A1)は、Mn(II)−化合物、Li−化合物、及びPO4−含有化合物等の前駆体を水中で混合し、次に沈澱反応させ、還元工程を行うことなく、所望の化合物を得る、LiMnPO4の製造方法に関する。特許文献8(WO2007/113624A1)は、非常に類似した方法を開示しており、該方法では、前駆体の混合と沈澱がポリオール溶媒中で行われている。
【0009】
特許文献9(WO2007/049815A2)には、Mn(OH)x化合物をMn(OH)2に還元し、次に得られたMn(OH)2をLi−及びPO4−含有化合物と混合し、そして沈澱によってLiMnPO4を得ることができることが開示されている。Mn−含有化合物を、他の前躯体の混合物の存在下に還元することによってLiMnPO4を製造する方法は、この従来技術には開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2003/0082454A1
【特許文献2】US6702961B2
【特許文献3】CN1547273A
【特許文献4】DE102005015613A1
【特許文献5】DE102005012640A1
【特許文献6】WO2006/057146A2
【特許文献7】WO2007/09356A1
【特許文献8】WO2007/113624A1
【特許文献9】WO2007/049815A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術によるLiFePO4を製造する方法は、炭素等の追加的な還元剤を還元混合物に加える必要があるか、又は還元雰囲気内でか焼工程を行う必要がある。加えられた炭素は、高い反応温度でのみ還元剤として作用するので、高いか焼温度が必要であり、これは大きな結晶粒、及び広い粒子サイズ分布を有する材料をもたらす。
【0012】
他の不利な点は、Li2CO3及びFe23のような固体化合物が、固体相で混合された場合、異なるイオンが混合物全体にわたり均一に分散した混合物を得ることが困難なことである。更に、炭素含有還元剤は、その還元力がこれらが使用される量から独立しておらず、従って、還元のために炭素含有還元剤の必要とされる量、及び導電材料として使用可能な量を予測することが困難なことである。
【0013】
本発明の目的は、これらの化合物を、非常に均一に混合された、及び結晶質の状態で得ることが可能な、リチウム−金属−フォスフェイトの製造方法を提供することにある。更に、本発明の目的は、容易に行うことができ、及び二反応工程のみで行うことができる、上記化合物の製造方法を提供することにある。更に、本発明の好ましい目的は、か焼工程が全く必要とされないリチウム−金属−フォスフェイトを製造するための方法を提供することにある。本発明の他の目的は、所望の化合物のみが得られ、面倒な副生成物を有せず、精製及び/又は洗浄工程を必要としない方法を提供することにある。本発明の更なる目的は、Li−イオン拡散性を改良し、及び出力特性と、追加的にLi−イオン電池の容量を増加させるために、結晶の大きさの分布が狭く、Li−イオン電池の充電と放電で改良されたLi−イオン拡散性を示す、より微細に分散した材料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、一般式(I)
Lia-b1b1-c2cd-e3ex (I)
(但し、Qが、酸化状態が+2であり、及びM1、M2、M3、a、b、c、d、e及びxが:
Q:Fe、Mn、Co、Ni、
1:Na、K、Rb及び/又はCs、
2:Mg、Al、Ca、Ti、Co、Ni、Cr、V、Fe、Mnで、QとM2が互いに異なる、
3:Si、S、F、
a:0.8〜1.9、
b:0〜0.3、
c:0〜0.9、
d:0.8〜1.9、
e:0〜0.5、
x:Li、M1、M2、P、M3の量と酸化状態に依存して1.0〜8であり、
一般式(I)の化合物は、荷電状態が中性である)
の化合物を製造する方法であって、以下の工程、
(A)少なくとも1種のリチウム含有化合物、少なくとも1種のQ−含有化合物(但し、Qが、少なくとも部分的に酸化状態が+2よりも高い)、及び存在する場合には、少なくとも1種のM1−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM2−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM3−含有化合物、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤の混合物を用意する工程、
(B)工程(A)で得られた混合物を、100〜500℃の温度、及び自己生成の圧力(autogeneous pressure)で加熱し、Qを酸化状態を+2に還元し、及び一般式(I)の化合物を得る工程、
を含む方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施の形態では、M1、M2、M3、a、b、c、d、e及びxは、以下の意味を有する:
Q:Fe、Mn、Co、Ni、
1:Na、
2:Mn、Mg、Al、Ca、Ti、Co、Niで、QとM2が互いに異なる、
3:Si、S、F、
a:0.6〜1.6、特に好ましくは0.9〜1.3
b:0〜0.1、
c:0〜0.6、特に好ましくは0〜0.3
d:0.6〜1.6、特に好ましくは0.9〜1.3
e:0〜0.3、特に好ましくは0〜0.1
x:Li、M1、M2、P、M3の量と酸化状態に依存して2〜6であり、
ここで、一般式(I)の化合物は、荷電状態が中性である。
【0016】
例えば、極めて好ましい実施の形態では、Feが+2の酸化状態である、一般式(I)LiFePO4の荷電状態が中性である化合物を得るために、M1、M2、及びM3が存在せず、及びQがFeである。従って、極めて好ましい第1の実施の形態では、本発明に従う方法は、式LiFePO4の化合物を得るために行なわれる。
【0017】
他の極めて好ましい実施の形態では、Mnが+2の酸化状態である、一般式(I)LiMnPO4の荷電状態が中性である化合物を得るために、M1、M2、及びM3が存在せず、及びQがMnである。従って、極めて好ましい第2の実施の形態では、本発明に従う方法は、式LiMnPO4の化合物を得るために行なわれる。
【0018】
更なる好ましい実施の形態では、M1、例えばNaは、LiとM1の合計に対して10モル%以下の量で存在する。他の好ましい実施の形態では、M2は、(化合物中に存在する)Fe又はMnであることが好ましいQ、及びM2の合計に対して、30モル%以下の量で存在する。他の好ましい実施の形態では、例えばSi等のM3が、リンとM3の合計に対して10モル%以下の量で存在する。
【0019】
以下に、工程(A)及び(B)についてより詳細に説明する:
工程(A):
本発明に従う方法の工程(A)は、少なくとも1種のリチウム含有化合物、少なくとも1種のQ含有化合物、例えばFe−又はMn−含有化合物(ここで、Qの酸化状態が、少なくとも部分的に+2よりも大きい)、及び存在する場合には、少なくとも1種のM1−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM2−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM3−含有化合物、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤の混合物を用意する工程を含む。
【0020】
(本方法の本質的に水性の混合物(A)に導入することができる、この技術分野の当業者にとって公知の、)通常、Li−、M1−、M2−、M3−、及びQ−の全てを含む化合物、好ましくはFe−又はMn−含有化合物を、本発明に従う方法に使用することができる。
【0021】
工程(A)でのLi含有化合物は、水酸化リチウムLiOH、水酸化リチウム水和物LiOH・H2O、リチウムアセテートLiOAc、リチウムカーボネートLi2CO3、リチウム−フォスフェート、−フォスフィット、−次亜リン酸塩、例えばLiH2PO4、Li2HPO4、Li3PO4、LiH2PO3、Li2HPO3、及び/又はLiH2PO2、及びこれらの混合物から成る群から選ばれることが好ましい。極めて好ましい実施の形態では、水酸化リチウムLiOH及び/又は水酸化リチウム水和物LiOH・H2O、及び/又はリチウムカーボネートLi2CO3が、本発明に従う方法の工程(A)で、リチウム含有化合物として使用される。特に好ましい2種のリチウム含有化合物は、水酸化リチウムLiOH、及び水酸化リチウム水和物LiOH・H2Oである。
【0022】
少なくとも1種のリチウム含有化合物が、本発明に従う方法の工程(A)で、各場合において、全反応混合物に対して、通常、0.04〜3モルLi/L、好ましくは0.2〜2.0モルLi/L、特に好ましくは0.3〜1.5モルLi/Lの濃度で混合物中に加えられる。
【0023】
第1の実施の形態では、式(Ia)
Lia-b1bFe1-c2cd-e3ex (I)
(但し、Feの酸化状態が+2であり、M1、M2、M3、a、b、c、d、e及びxが上述した意味を有する)の化合物を得るために、QがFeである。この実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で、Q−含有化合物は、鉄の酸化状態が+3である、鉄−含有化合物である必要がある。
【0024】
通常、この技術分野の当業者にとって公知の、鉄の酸化状態が+3である全ての鉄−含有化合物(該鉄−含有化合物は、本方法の工程(A)で、本質的に水性の混合物に導入される)を本発明に従う方法に使用することができる。本発明に従い、鉄の酸化状態が+3である、単一鉄−含有化合物、又は鉄の酸化状態が+3である、異なる鉄−含有化合物の混合物を使用することができる。酸化状態が+2及び+3の両方の鉄が存在する鉄−含有化合物、例えばFe34を使用することも可能である。鉄の酸化状態が+3のある化合物は、及び鉄の酸化状態が+2である他の化合物を含む、異なる鉄−含有化合物の混合物を使用することも可能である。
【0025】
好ましい実施の形態では、鉄の酸化状態で+3である鉄−含有化合物は、鉄(II、III)−オキシド、鉄(III)−オキシド、鉄(III)−オキシド、又は鉄(III)−ヒドロキシド、例えばFe34、アルファ−Fe23、ガンマ−Fe23、アルファ−FeOOH、ベータ−FeOOH、ガンマ−FeOOH、及びFe(OH)3から成る群から選ばれる。好ましいものは、鉄(III)−オキシドヒドロキシド(FeOOH)のアルファ−、ベータ−及びガンマ−変性、及びFe(OH)3である。
【0026】
鉄−含有化合物は、この技術分野の当業者にとって公知の方法で測定して、BET表面積が、通常、少なくとも5m2/g、好ましくは少なくとも50m2/g、より好ましくは少なくとも150m2/gである。BET表面積は、通常、1000m2/g以下である。BET表面積が非常に大きい鉄−含有化合物が使用された場合、本方法の反応時間を短くすることができ、本発明に従う方法を、従来技術と比較して、より迅速で経済的にすることができる。
【0027】
本発明に従う方法の工程(A)で、少なくとも1種の鉄−含有化合物が、各場合において全反応混合物に対して、通常、0.04〜4.0モルFe/L、好ましくは0.1〜2.0モルFe/L、特に好ましくは0.2〜1.5モルFe/Lの濃度で加えられる。
【0028】
第2の実施の形態では、式(Ia)
Lia-b1bMn1-c2cd-e3ex (I)
(但し、Mnの酸化状態が+2であり、M1、M2、M3、a、b、c、d、e及びxが上述した意味を有する)の化合物を得るために、QがFeである。この実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で、Q−含有化合物は、マンガンの酸化状態が少なくとも部分的に+2よりも大きい、マンガン−含有化合物である必要がある。
【0029】
通常、マンガンが少なくとも部分的に+2よりも大きい酸化状態を有し、及びMn(II)に還元可能である、この技術分野の当業者にとって公知の全てのマンガン−含有化合物を、本発明に従う方法で使用することができ、本方法の工程(A)で、好ましくは本質的に水性の混合物内に導入することができる。
【0030】
マンガン含有化合物中で、マンガンは、全ての可能な酸化状態、例えば+2、+3、+4、+5、+6及び+7で存在することができ、マンガンの少なくとも一部が、+2よりも大きい酸化状態で存在するべきである。本発明に従い、マンガンの酸化状態が+2、+3、+4、+5、+6及び/又は+7であり、好ましくは+2及び+3又は+4である、単一マンガン−含有化合物、又はマンガンの酸化状態が+2、+3、+4、+5、+6及び/又は+7であり、好ましくは+2及び+3又は+4である、異なるマンガン−含有化合物の混合物を使用することができる。
【0031】
好ましくは、酸化状態が+2及び+3のマンガン、例えばMn34が存在する、マンガン−含有化合物が使用される。他の好ましい実施の形態では、マンガンが、+4の酸化状態、例えばMnO2、又は+3の酸化状態、例えばMn23であるマンガン含有化合物が使用される。マンガンの酸化状態が+2と+3、例えばMn34である、ある化合物と、マンガンの酸化状態が+4、例えばMnO2である他の化合物を含む、異なるマンガン−含有化合物の混合物を使用することも可能である。
【0032】
好ましい一実施の形態では、マンガン含有化合物は、マンガン(II、III)−オキシドMn34、マンガン(IV)オキシドMnO2、Mn23、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0033】
マンガン−含有化合物は、この技術分野の当業者にとって公知の方法で測定して、BET表面積が、通常、少なくとも2m2/g、好ましくは少なくとも5m2/g、より好ましくは少なくとも10m2/gである。BET表面積は、通常、1000m2/g以下である。BET表面積が非常に大きいマンガン含有化合物が使用される場合、本方法の反応時間を減少させることができ、従来技術の方法と比較して、本発明を、より迅速でより経済的にすることができる。
【0034】
少なくとも1種のマンガン−含有化合物は、本発明に従う方法の工程(A)での混合物に、各場合において全反応混合物に対して、通常、0.04〜4.0モルMn/L、好ましくは0.1〜2.0モルMn/L、特に好ましくは0.2〜1.5モルMn/Lの濃度で加えられる。
【0035】
通常、Q−含有化合物は、この技術分野の当業者にとって公知の方法で測定して、BET表面積が、通常、少なくとも2m2/g、好ましくは少なくとも5m2/g、より好ましくは少なくとも10m2/gである。BET表面積は、通常、1000m2/g以下である。BET表面積が非常に大きいQ−含有化合物が使用される場合、本方法の反応時間を減少させることができ、従来技術の方法と比較して、本発明を、より迅速でより経済的にすることができる。
【0036】
少なくとも1種のQ−含有化合物は、本発明に従う方法の工程(A)での混合物に、各場合において全反応混合物に対して、通常、0.04〜4.0モルQ/L、好ましくは0.1〜2.0モルQ/L、特に好ましくは0.2〜1.5モルQ/Lの濃度で加えられる。
【0037】
通常、コバルトが少なくとも部分的に+2よりも大きい酸化状態を有し、及びCo(II)に還元可能である、この技術分野の当業者にとって公知の全てのコバルト−含有化合物を、本発明に従う方法で使用することができ、本方法の工程(A)で、好ましくは本質的に水性の混合物内に導入することができる。好ましいCo−含有化合物は、CoO(OH)及びCo34である。
【0038】
更に、ニッケルが少なくとも部分的に+2よりも大きい酸化状態を有し、及びNi(II)に還元可能である、この技術分野の当業者にとって公知の全てのニッケル−含有化合物を、本発明に従う方法で使用することができ、本方法の工程(A)で、好ましくは本質的に水性の混合物内に導入することができる。好ましいNi−含有化合物は、NiO(OH)である。
【0039】
存在する場合には、少なくとも1種のM1−含有化合物は、好ましくは、水酸かナトリウムNaOH、酢酸ナトリウムNaOAc、炭酸ナトリウムNa2CO3、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。極めて好ましい実施の形態では、水酸化ナトリウムNaOH及び/又は炭酸ナトリウムNa2CO3が、本発明に従う方法の工程(A)で、ナトリウム−含有化合物として使用される。
【0040】
存在する場合には、少なくとも1種のM2−含有化合物は、好ましくは、水酸化物、アセテート、オキシド、カーボネート、ハロゲン化物、例えばフッ化物、クロリド、ブロミド、ヨウ化物、ニトレート、及びこれらの混合物から選ばれる、所望のカチオン及びアニオンを有する化合物から選ばれる。極めて好ましい実施の形態では、少なくとも1種のM2−含有化合物のアニオンは、アセテート、オキシド、水酸化物、カーボネート、ネトレート、又はこれらの混合物である。
【0041】
存在する場合には、少なくとも1種のM3−含有化合物は、好ましくは、H2SO4、(NH4)HSO4、(NH42HSO4、LiHSO4、Li2SO4、微細に粉砕されたSiO2、例えばゾルの状態、H4SiO4、Li−シリケート、NH4F、LiF、HF、ポリカーボンモノフルオリド、ポリカーボンフルオリド、ポリ(カーボンモノフルオリド)、グラファイトフルオリド、Li2SiF6、(NH42SiF6及びこれらの混合物から選ばれる。
【0042】
1−、M2−、及び/又はM3−含有化合物は、存在する場合には、好ましくは本質的に水性の混合物に、式(I)の化合物中に存在する量で加えられる。この技術分野の当業者は、必要とされる量の計算方法を知っている。
【0043】
本発明に従う方法は、本発明に従う方法の工程(A)の混合物に、本発明に従う方法の間、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤を導入することによって行われる。酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤の使用は、この還元剤の酸化生成物が、PO43-を含む一般式(I)の化合物を得るために必要とされるPO43-アニオンを生成するという有利な点を有している。
【0044】
好ましい実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤は、炭素を含まない(カーボンフリーである)。本発明に従えば、「カーボンフリー(炭素を含まない)」は、リン−含有還元剤中に炭素原子が存在しないことを意味する。H3PO3等のカーボンフリーの還元剤の有利な点は、熱水工程(hydrothermal process)で、せいぜい300℃の低温で還元を行うことができることである。これに対し、例えば還元剤としての炭素は、600℃以上の温度を必要とする。本発明に従う低温は、ナノ−結晶性材料を得ることを可能にする。ナノ−結晶性材料は、(例えば還元剤として炭素が使用される場合には、通常必要とされる)高温では集塊する傾向がある。
【0045】
好ましい実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤は、H3PO3、(NH4)H2PO3、(NH42HPO3、H3PO2、(NH4)H2PO2、LiH2PO3、Li2HPO3、LiH2PO2、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。特に好ましい実施の形態では、H3PO3、(NH4)H2PO3、(NH42HPO3が使用され、極めて好ましい還元剤はH3PO3である。
【0046】
酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤は、本発明に従う方法の工程(A)で、混合物に、各場合において全反応混合物に対して、通常、0.04〜2.0モルP/L、好ましくは0.1〜1.3モルP/L、特に好ましくは0.15〜1.0モルP/Lの濃度で加えられる。
【0047】
本発明に従えば、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤が、本発明に従う方法の工程(A)の反応混合物に加えられる。本発明に従う方法で使用される還元剤は、PO43-に酸化されることが好ましい。酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤が、好ましくは少なくとも等モル量、特に好ましくは等モル量で反応混合物に加えられた場合、PO43-が酸化生成物として、一般式(I)のフォスフェイトアニオンPO43-の完全な量として十分な高い量で得られる。この実施の形態に従えば、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個有する化合物は加えられる必要がない。
【0048】
他の好ましい実施の形態では、工程(A)で提供される混合物は、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物を追加的に含む。本発明のこの好ましい実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤と、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物の組み合わせが、本発明に従う方法の工程(A)における反応混合物に加えられる。本願の方法のこの実施の形態では、酸化生成物として得られるP43-は、一般式(I)の化合物のフォスフェイトアニオンの完全な量であるのに十分な量で存在する必要がない。この理由は、この実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1有する少なくとも1種の化合物も加えられるからである。酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、この少なくとも1種の化合物は、(一般式(I)の化合物に組み込まれる)P43-−アニオンの第2の供給源になり得る。
【0049】
工程(A)で任意に加えられる、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、好ましい化合物は、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH42HPO4、(NH43PO4、Li3PO4、LiH2PO4、Li2HPO4及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。特に好ましいものは、H3PO4、(NH4)H2PO4、(NH42HPO4、及びこれらの混合物であり、極めて好ましくはH3PO4である。
【0050】
酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物は、本発明に従う方法の工程(A)で、混合物に、各場合において全反応混合物に対して、通常、0.04〜2.0モルP/L、好ましくは0.1〜1.3モルP/L、特に好ましくは0.15〜1.0モルP/Lの濃度で加えられる。
【0051】
二官能基(two functionalities)を有する化合物、例えば、リチウム−カチオン及びPO43-、又はPO33-アニオンを含む化合物が、本発明に従う方法に使用された場合、反応混合物に導入される化合物の量は、必要な全ての成分が、一般式(A)に従う化合物を得るために適切な量で反応混合物内に存在するように調整される。この技術分野の当業者は、これらの量の計算方法を知っている。
【0052】
更なる好ましい実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤、及び任意に、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に加え、少なくとも1種の追加的な還元剤が、本発明に従う方法の工程(A)の混合物に加えられる。この追加的な還元剤もカーボンフリーであって良く、又は炭素を含んでも良い。
【0053】
この少なくとも1種の追加的な還元剤は、好ましくは、ヒドラジン、又はこれらの誘導体、ホドロキシルアミン、又はこれらの誘導体、還元剤、例えばグルコース、サッカロース(スクロース)及び/又はラクトース、アルコール、例えば1〜10個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、例えば、n−プロパノール、又はイソ−プロパノール、ブタノール、例えばn−ブタノール、イソ−ブタノール、アスコルビン酸、及び酸化が容易な二重結合を含む化合物、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0054】
ヒドラジンの誘導体の例は、ヒドラジン−ハイドレート、ヒドラジン−サルフェート、ヒドラジン−ジヒドロクロリド等である。ヒドロキシルアミンの誘導体の例は、ヒドロキシルアミン−ヒドロクロリドである。酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化されない、好ましいカーボンフリーな還元剤は、ヒドラジン、ヒドラジン−ハイドレート、ヒドラジンアミン又はこれらの混合物である。
【0055】
本発明の従う方法の工程(A)で任意に加えられる、少なくとも1種の還元剤は、一方では、その性質上、一般式(I)の化合物に導入可能な酸化性生物としてPO43-−アニオンを伝えることができない。他方では、この少なくとも1種の還元剤は、Q−含有前駆動体、好ましくはFe(III)前駆体、又はMnが少なくとも部分的に+2よりも大きい酸化状態を有するMn前駆体を、Q(II)、好ましくはFe(II)、又はMn(II)に完全に還元する、総合還元ポテンシャルを有していない。従って、これらの追加的な還元剤の少なくとも1種が使用された場合、(本発明に従う、有利な電気化学的特徴、及びマイクロ構造を有する、一般式(I)の化合物を得るために、)これらの還元剤を、所定の酸化状態のリン原子を少なくとも1個含む化合物に酸化される、少なくとも1種の化合物、及び任意に酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物と組み合わせて使用することも必要である。これらの場合、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の化合物、及び任意に、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物、及び任意に、工程(A)で加えられる、少なくとも1種の追加的な還元剤の量と濃度は、従って調整する必要がある。この技術分野の当業者は、それぞれの量の計算方法を知っている。
【0056】
少なくとも1種の追加的な還元剤は、本発明に従う方法の工程(A)の混合物に、任意に加えられ、その濃度は、還元剤の還元力と還元ポテンシャルに強く依存している。この技術分野の当業者は、それぞれの量の計算方法を知っている。
【0057】
通常、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤と、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物のモル割合は、通常、0.8〜1.5、より好ましくは0.9〜1.1、最も好ましくは1.0である。
【0058】
他の実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤、好ましくはH3PO3、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物、好ましくはH3PO4の組み合わせが本発明に従う方法の工程(A)に加えられる場合、この組み合わせは、一般式(I)に従う所望の化合物を得るのに必要な割合よりも大きい割合、例えばH3PO3/H3PO4、で加えられ、合成の経過(例えば、酸素の存在下での混合物の製造、及び/又は任意の乾燥材料の、酸素不純物の存在下でのか焼)での酸化の影響が克服される。この技術分野の当業者は、本発明に従う工程(A)の混合物中の成分の化学量論的な量の計算方法を知っている。
【0059】
好ましい実施の形態では、少なくとも1種のリチウム−含有化合物、少なくとも1種のQ−含有化合物(Qは、上述したように、少なくとも部分的に酸化状態が+2よりも大きく、好ましくは、鉄の酸化状態が+3、又は好ましくはマンガンの酸化状態が、少なくとも部分的に+2よりも大きい)、酸化状態が+5の綸リン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤、及び任意に、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物が、本質的に水性の混合物に加えられ、そしてその量は、一般式(I)に従う化学量論が得られるように調整される。この技術分野の当業者は、必要な量の計算方法を知っている。
【0060】
本発明の他の好ましい実施の形態では、少なくとも1種のリチウム含有化合物が、一般式(I)に従う化学量論的な量よりも、≧1質量%、好ましくは≧2質量%の量で加えられる。
【0061】
本発明の方法の一実施の形態では、工程(A)で用意される混合物中に存在する成分が、緊密にミルすることによって、固体状態で混合される。この技術分野の当業者は、この緊密なミルを得る方法、及びミル等の使用可能な装置を知っている。ミルした成分は、次に適切な量の溶媒、好ましくは水に溶解される。
【0062】
本発明に従う方法の、工程(A)の他の実施の形態では、次にこれらを溶媒、好ましくは水に溶解させることによって成分が混合される。
【0063】
本発明に従う方法の工程(A)で用意される混合物は、好ましい実施の形態では、本質的に水性である。本発明について、「本質的に水性」という用語は、本発明に従う方法の工程(A)の、本質的に水性の混合物を提供するために使用される溶媒の、50質量%を超える量、好ましくは65質量%を超える量、特に好ましくは80質量%を超える量が水であることを意味する。
【0064】
水に加え、水と混和性の更なる溶媒が存在しても良い。これらの溶媒の例は、1〜10個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、例えばn−プロパノール、又はイソ−プロパノール、ブタノール、例えばn−ブタノール、イソ−ブタノールである。本発明に従えば、アルコールは、本発明に従う方法の工程(A)に、追加的な還元剤、及び/又は追加的な溶媒として加えることができる。
【0065】
極めて好ましい実施の形態では、本発明の方法の工程(A)で使用される溶媒は、如何なる追加的な溶媒も使用されない水である。本発明について、「如何なる追加的な溶媒も使用されない」という記載は、極めて好ましい実施の形態において、水が唯一の溶媒として使用され、反応混合物中に存在する水以外の溶媒は、2質量%未満、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.15質量%未満の量であることを意味する。
【0066】
工程(A)で異なる成分が溶媒又は溶媒の混合物に加えられる、他のものは決定されていない。好ましい実施の形態では、リチウム−含有化合物が、最初に溶媒に加えられ、Q−含有化合物、好ましくは(鉄が+3の酸化状態である)鉄−含有化合物、又は(マンガンが、少なくとも部分的に+2よりも大きい酸化状態である)マンガン−含有化合物が、第2の成分として加えられる。任意に、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個有する、少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の還元剤、及び任意に少なくとも1種の追加的な還元剤が次に加えられる。
【0067】
本発明の好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で得られた混合物は、少なくとも1種のリチウム−含有化合物、少なくとも1種のQ−含有化合物、好ましくは(鉄が+3の酸化状態である)少なくとも1種の鉄−含有化合物、又は(マンガンが、少なくとも部分的に+2よりも大きい酸化状態である)少なくとも1種のマンガン−含有化合物、(酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物に酸化される、)少なくとも1種の還元剤の本質的に水性の溶液であり、該溶液は、任意に、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1種含む、少なくとも1種の化合物と組み合わされる。
【0068】
本質的に水性の態様で行った場合、工程(A)は、この技術分野の当業者にとって公知の、適切な全ての反応器、例えばオートクレーブ内で行うことができる。工程(A)は、連続的に、又は非連続的に行うことができる。
【0069】
本発明に従う方法の工程(A)が本質的に水性の態様で行なわれる温度は、10〜120℃、好ましくは15〜100℃、特に好ましくは20〜30℃、例えば室温である。100℃を超える温度が使用された場合、反応混合物は、水の沸点のために、耐圧性反応器内に存在する必要がある。混合物の均一性を増すために、混合は、温度を上げて、及び任意に(例えばultrathurraxを使用した)せん断力を施して行われる。
【0070】
好ましい実施の形態では、混合物は、工程(A)で、0.05〜80時間、特に好ましくは0.1〜20時間、例えば0.5〜2時間の期間行われる。本発明に従う方法の工程(A)で得られる反応混合物のpH−値は、通常、pH7未満、好ましくはpH6未満、例えば2.0〜5.0である。
【0071】
本発明に従う方法の工程(A)は、空気又は不活性雰囲気下で行うことができる。不活性ガスの例は、窒素、希ガス、例えばヘリウム又はアルゴンである。好ましい実施の形態では、工程(A)は、空気又は窒素雰囲気下で行うことができる。
【0072】
大半のQからQ2+への、好ましくはFe3+からFe2+への、又はMn3+、Mn4+、Mn5+、Mn6+、及び/又はMn7+、からMn2+への還元は、通常、本発明に従う方法の工程(B)で行われる。還元剤を水性混合物に加えた直後に、工程(A)で還元を開始させることも可能である。この実施の形態では、本発明に従う方法の工程(A)で、少なくとも一部のQがQ(II)に還元され、好ましくはFe(III)がFe(II)に還元されるか、又はMn3+、Mn4+、Mn5+、Mn6+、及び/又はMn7+がMn2+に還元される。水性混合物を40〜100℃、好ましくは60〜95℃に加熱した後に還元を開始させることも可能である。他の好ましい実施の形態では、2種のP−含有化合物の組み合わせ、例えばH3PO3/H3PO4が還元剤として使用された場合、両方の成分が加えられた時に還元が開始される。
【0073】
工程(B):
本発明に従う方法の工程(B)は、工程(A)で得られた混合物を100〜500℃の温度で、及び自己生成の圧力で加熱し、Q、好ましくはFe又はMnを+2の酸化状態に還元し、及び一般式(I)の化合物を得ることを含む。
【0074】
本発明に従う方法の工程(B)は、通常、100〜500℃の温度、好ましくは180〜400℃の温度、最も好ましくは220〜320℃の温度、例えば250〜300℃で行われる。
【0075】
一実施の形態では、本発明に従う方法の工程(B)は、熱水の条件下に行なうことができ、該熱水条件では、液体の水と水蒸気が、例えば100〜374.15℃の温度で平衡状態で存在する。本発明に従う方法の工程(B)を、熱水条件下で行なうことが好ましい。熱水条件下で、100℃で1バール〜374℃で220バールの自己生成の圧力がオートクレーブ内に存在する。
他の実施の形態では、本発明に従う方法の工程(B)は、超臨界条件、例えば374.15℃を超える温度で行われる。本発明に従う方法の工程(B)が、超臨界条件下で行われた場合、反応混合物は超臨界相中に存在する。この実施の形態では、オートクレーブの充填度合いに依存して、500バール以上の圧力を得ることができる。
【0076】
本発明に従う方法の工程(B)は、通常、1〜200バールの圧力、好ましくは2〜150バールの圧力、最も好ましくは50〜100バールの圧力で行われる。本発明に従う方法の工程(B)に存在する圧力は、一実施の形態では、上述した温度に加熱される反応混合物の成分によって設定することができる。例えば、工程(A)で製造された反応混合物の溶媒が水であり、及び本発明に従う方法の工程(B)で熱水的に処理される場合、これは100℃を超える温度で蒸発する。工程(B)がシールされた反応器内、例えばオートクレーブ内で行われた場合、蒸発した溶媒に起因してこの反応器内の圧力が上昇する。極めて好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(B)は、オートクレーブ内で行われる。
【0077】
本発明に従う方法の第2の実施の形態では、工程(B)における反応混合物の圧力は、少なくとも1種の適切なガスを反応器に加えることによって調整することができる。このガスは、好ましくは不活性ガス、最も好ましくは希ガス、例えばアルゴン、ヘリウム、又は混合物、又は窒素から選ばれる。本発明に従う好ましい実施の形態では、不活性ガスとして窒素が使用される。
【0078】
本発明に従う方法の更なる好ましい実施の形態では、工程(A)から得られる混合物が、適切な反応器、例えばオートクレーブ内に配置され、次に反応器内の圧力が大気圧を超える圧力、例えば1.5〜20バール、最も好ましくは5〜15バール、例えば10バールに調節される。次に、反応混合物が、所望の温度、好ましくは上述した温度に加熱され、ここで、圧力は、上述した値に同時に上昇する。
【0079】
本発明に従う方法の工程(B)は、工程(B)の温度と圧力のために適切な任意の反応器内で行うことができる。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(B)は、オートクレーブ内で行われる。より好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(B)は、本方法の工程(A)のものと同じ反応器内で行われる。
【0080】
本発明の方法の工程(B)は、連続的に、又は非連続的に行うことができる。
【0081】
本発明に従う方法の工程(B)に従う加熱は、式(I)に従う化合物を得るために必要である限りの期間、行われる。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(B)は、0.5〜30時間、好ましくは4〜20時間、最も好ましくは8〜16時間、例えば12時間、行うことができる。
【0082】
通常、本発明に従う方法の工程(B)で、反応混合物は攪拌される。好ましい実施の形態では、一般式(I)の化合物を非常に均一な状態で得るために、混合物は工程(B)で、非常に迅速に攪拌される。工程(B)での攪拌速度は、好ましくは400〜1200rpm(1分当たりの回転数)、より好ましくは600〜100rpm、例えば700rpmである。工程(B)における回転速度は、本発明に従う方法から得られる生成物の品質に重要な影響を及ぼす。適切な攪拌器、他たとえばブレード攪拌器は、この技術分野の当業者にとって公知である。
【0083】
本発明に従う方法の工程(B)の後、生成物、一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、最も好ましくはLiFePO4又はLiMnPO4が、本発明の工程(A)で施された溶媒中に得られる。本発明に従う方法の好ましい実施の形態では、水が溶媒として使用さえる。一般式(I)に従う他の化合物がLiFePO4ではなく、例えばLiMnPO4が本発明に従う方法によって製造される場合、溶媒中のこれらの成分の溶解度に依存して、工程(B)で、溶液又は乳濁液が得られる。本発明に従う方法で、LiFePO4又はLiMnPO4が得られる好ましい場合、工程(B)で、LiFePO4又はLiMnPO4の水性懸濁液が得られる。
【0084】
本発明に従う方法の工程(B)の後、乳濁液が得られる場合(この場合が好ましい)、この乳濁液は、pH−値が通常、3〜7、好ましくは4.5〜6.5、例えば5.5である。
【0085】
本発明は、本発明に従う方法によって製造可能な上述した一般式(I)に従う化合物にも関する。
【0086】
本発明に従う方法の好ましい実施の形態では、工程(B)から得られた反応混合物が、一般式(I)に従う化合物を、反応媒体から分離するために、任意別の工程である工程(C)で処理される。
【0087】
工程(C):
本発明に従う方法の、好ましい実施の形態では、工程(B)の後、以下の工程(C)が行われる:
(C)一般式(I)の化合物を、工程(B)で得られた混合物から分離する工程。
【0088】
通常、溶液又は乳濁液から固体材料を分離するための技術の当業者にとって公知の、全ての方法を、本発明に従う方法の工程(C)で使用することができる。好ましい方法は、ろ過、遠心分離、乾燥である。工程(C)の好ましい実施の形態では、工程(B)で得られた、(好ましくは水性乳濁液中の)一般式(I)の少なくとも1種の化合物が、工程(C)で、ろ過、好ましくは加圧又は減圧の補助下に分離される。この技術分野の当業者は、この実施方法を知っている。
【0089】
本発明に従う方法の更なる好ましい実施の形態では、一般式(I)の少なくとも1種の化合物の固体状態での分離の後、(この少なくとも1種の化合物を、本質的に純粋な状態で得るために、)この固体が洗浄される。本発明に従う方法について、「本質的に純粋」は、洗浄の後、一般式(I)の化合物ではない化合物が、5質量%未満、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満の量で存在することを意味する。
【0090】
好ましい実施の形態では、洗浄が、一般式(I)の少なくとも1種の化合物が本質的に不溶性の、適切な溶媒で行われる。「本質的に不溶性」は、洗浄工程の間、一般式(I)の、少なくとも1種の化合物の、5質量%未満、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満が溶解することを意味する。
【0091】
本発明に従う方法について、「本質的」は、90%を超える量、好ましくは95%を超える量、より好ましくは98%を超える量を意味する。
【0092】
極めて好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(C)での洗浄は、水で行われる。本発明のより好ましい実施の形態では、洗浄は、水の一つの完全なポーション(部分)の代わりに、水の幾つかのポーションで行われる。通常、一般式(I)に従う化合物を、本質的に純粋な状態で得るために、洗浄は、必要な限り多くの回数で行われる。本質的に純粋な化合物を得るために必要な水の量を決定する方法は、例えば、化合物の伝導性(本質的に純粋な化合物の伝導性は、非常に低い)である。
【0093】
更なる好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(C)の後に得られる、少なくとも1種の化合物が、溶媒、好ましくは水を除去するために乾燥される。乾燥は、この技術分野の当業者にとって公知の任意の方法、例えば、40〜150℃の温度に加熱することによって行うことができる。本発明に従う方法の更なる実施の形態では、乾燥は減圧下、例えば400〜900ミリバールで行うことができる。加熱による乾燥は、乾燥に適切な、及びこの技術分野の当業者にとって公知の任意の装置、例えばホットエアキャビネット、又は任意の種類の炉内で行うことができる。
【0094】
本発明の工程(C)での乾燥は、本質的に全ての量の溶媒、好ましくは水が除去されるまで行われる。この技術分野の当業者は、本質的に全ての水が除去された時点を知っており、例えば一般式(I)の化合物が一定の質量に達すると、全ての溶媒は除去されている。
【0095】
本発明に従う方法の工程(C)で得られる固体は、これらを含むLi−イオン電池の充電と放電での改良されたLi−イオン拡散性を提供する。Li−イオン拡散性を改良することによって、電力特性及び追加的に、Li−イオン電池の容量を増すことができる。
【0096】
従って、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる/製造することができる、一般式(I)の少なくとも1種の化合物を含む粒子、又は塊にも関する。
【0097】
このために、本発明に従う方法によって製造することができる、一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、好ましくはLiFePO4、又はLiMnPO4を含む粒子又は塊は、リチウム−イオンバッテリー又は電気化学電池のカソードを製造するために使用するのに特に適切である。従って、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる/製造することができる、一般式(I)の化合物を、リチウム−イオン電池、又は電気化学電池のカソードを製造するために使用する方法にも関する。
【0098】
更に、本発明は、本発明に従う方法によって製造することができる、少なくとも1種の粒子又は塊を含む、又は本発明に従う方法によって製品造することができる、一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、好ましくはLiFePO4又はLiMnPO4を含む、リチウム−イオン電池のためのカソードに関する。
【0099】
工程(D):
本発明に従う方法の一実施の形態では、工程(C)で得られた固体化合物は、本発明に従う方法の任意の工程(D)で、300〜1000℃のか焼温度で任意にか焼(焼成)される。
【0100】
任意の工程(D)は、好ましくは375〜1100℃のか焼温度、特に好ましくは400〜950℃のか焼温度、例えば450〜850℃のか焼温度で行われることが好ましい。
【0101】
か焼は、通常、不活性ガス雰囲気下で行なわれる。不活性ガスの例は、窒素、微量の酸素を含む工業用窒素、又は希ガス、例えばヘリウム及び/又はアルゴンである。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の任意の工程(D)で、窒素が使用される。本発明の任意の工程(D)で、工業用窒素が使用される場合、この窒素は微量の酸素を含むことができる。
【0102】
本発明に従う方法の有利な点の一つは、か焼が不活性雰囲気下で行なわれ、及び任意の工程(D)を、従来技術に従って還元雰囲気下で行う必要がないことである。このことに基づいて、本発明に従う方法は、時間と費用をより節約した態様で行うことができる。ガス状の還元剤、例えば水素が存在しないことは、爆発性のガス状混合物の存在を回避することができる。か焼工程で使用される窒素がより高い量の酸素を含む場合、還元ガス、例えばCO、又は水素を酸素含有窒素に加えることができる。
【0103】
本発明に従う方法の任意の工程(D)は、0.1〜8時間、好ましくは0.5〜3時間行われる。任意の工程(D)の好ましい実施の形態では、か焼温度は、0.1〜2時間の期間、極めて好ましくは0.5〜1.5時間の期間、保持され、及び最後に温度が室温にまで低下される。
【0104】
か焼の温度は、一般式(I)に従う化合物の比表面積に相当な影響を与える。か焼の間、温度が低いと、通常、比表面積が大きくなる。か焼の間、温度が高いと、比表面積が低くなる。
【0105】
本発明に従う方法の工程(D)で得られる粒子、又は塊は、任意に、追加的な還元剤、例えば砂糖のピロリシス(pyrrolysis)によって得られる更なる元素、例えば炭素を含むことができる。
【0106】
本発明に従う方法は、連続的に、又は非連続的に行うことができる。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法は、連続的に行なわれる。任意の工程(D)のための適切な装置は、この技術分野の当業者にとって公知である。非連続的又は連続的なか焼のための一例は、回転炉である。連続的なか焼の場合、回転炉内の滞留時間は、炉の傾斜と回転速度に基づく。この技術分野の当業者は、回転炉内で、適切な滞留時間を調整する方法を知っている。好ましい実施の形態では、本発明に従う方法の工程(D)でか焼される固体は、か焼の間、(例えば、流動床反応器又は回転炉内で)動かされる。固体は、か焼の間、攪拌することができる。回転炉は異なる温度領域を有することができる。例えば、第1の領域では、温度はスプレー乾燥粉を乾燥させるために、低い温度に調節され、一方、他の領域では、より高いか焼温度が存在する。粉を加熱する速度は、異なる領域の温度、及び粉が炉内を動かされる速度に依存する。
【0107】
本発明に従う方法の任意の工程(D)は、通常、好ましくは所望の生成物への完全な変換を得るのに適切な、所定の圧力下に行なわれる。好ましい実施の形態では、任意の工程(D)は、酸素が外部から反応器に浸入することを回避するために、大気圧よりも僅かに高い圧力下に行なわれる。この僅かに増した大気圧は、好ましくは、この工程でか焼される固体混合物上を流れる少なくとも1種の不活性ガスによってもたらされる。
【0108】
一般式(I)の化合物から製造可能な電極の組成に依存して、及び得られたリチウム−イオン電池の所望の電気化学的な特性に依存して、(塊を、必要とされるサイズを有する、より小さい及びより密な塊、又は一次粒子に破壊するために、)本願に従い、工程(C)から得られる固体化合物が、任意の工程(D)の前に、機械的に処理される、及び/又は工程(D)から得られる固体混合物が工程(D)の後に機械的に処理されることが有利であって良い。適切なミル、圧縮機、及び/又はロールは、この技術分野の当業者にとって公知である。例は、好ましくは窒素及び/又は空気の使用下の、摩耗が非常に少ない、ジェットミルである。か焼された生成物をミル(粉化)するために、湿潤ミル法(wet milling process)が、例えばビードミルを使用することによって有利であっても良い。更なる有利な装置は、圧縮機及び/又はローリングである。
【0109】
本発明に従う方法によって製造可能な、一般式(I)の、本発明に従う材料は、リチウム−イオン電池又は電気化学電池の製造に使用するために特に適切である。従って、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる/製造することができる、一般式(I)の粒子、又は塊、又は化合物を、リチウム−イオン電池又は電気化学電池のカソードを製造するために使用する方法にも関する。
【0110】
更に、本発明は、本発明に従う方法によって得ることができる/製造することができる、一般式(I)に従う、少なくとも1種の粒子、又は塊の化合物(好ましくは、LiFePO4、又はLiMnPO4)を含む、リチウム−イオン電池のためのカソードに関する。上述したカソードを得るために、一般式(I)に従う化合物は、例えばWO2004/082047に記載された、導電性材料と一緒に混合される。
【0111】
適切な導電性材料は、例えばカーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、又は導電性のポリマーである。代表例では、2.0〜40質量%の少なくとも1種の導電性材料が、一般式(I)に従う化合物と一緒に、カソードに使用される。カソードを得るために、導電性材料及び一般式(I)に従う化合物が、任意に、有機溶媒の存在下、及び任意に、有機バインダー、例えばPVDFの存在下に混合され、及びこの混合物が、任意に成形され、及び乾燥される。80〜150℃の温度が乾燥工程で適用される。
【0112】
好ましい実施の形態では、少なくとも1種の導電性材料、又は導電性材料の少なくとも1種の前駆体の少なくとも一部が、上述したように、一般式(I)に従う化合物の製造の間に加えられる。好ましい実施の形態では、少なくとも1種の導電性材料、又は導電性材料の少なくとも1種の前駆体の少なくとも一部が、一般式(I)に従う化合物の製造で、出発材料の混合物に混合される。少なくとも1種の導電性材料、又は導電性材料の少なくとも1種の前駆体の、一般式(I)に従う化合物の製造の間に加えられなかった残りの部分は、この製造の後に加えられる。
【0113】
従って、本発明は、上述した一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料を含む混合物を製造する方法であって、以下の工程、
(E)少なくとも1種の導電性材料、又は導電性材料の少なくとも1種の前駆体、少なくとも1種のリチウム含有化合物、少なくとも1種のQ−含有化合物(但し、Qが、少なくとも部分的に酸化状態が+2よりも高く、好ましくは酸化状態が+3のFe、又は酸化状態が少なくとも部分的に+2よりも大きいMnである)、及び存在する場合には、少なくとも1種のM1−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM2−含有化合物、及び/又は存在する場合には、少なくとも1種のM3−含有化合物、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤の混合物を用意する工程、
(F)工程(E)で得られた混合物を、100〜500℃の温度、及び自己生成の圧力で加熱し、Qを+2の酸化状態に還元し、及び一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物を含む混合物を得る工程、
を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0114】
本発明に従う方法の好ましい実施の形態では、工程(E)で提供される混合物は、本質的に水性である。更なる好ましい実施の形態では、工程(E)で提供される混合物は、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む、少なくとも1種の化合物を追加的に含む。
【0115】
工程(E)及び(F)のリチウム−、M1、M2及び/又はM3−含有化合物、Q−含有化合物、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤、任意に存在する酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物、導電性材料、装置、及び工程パラメーターは、上述したものである。酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤、任意に存在する酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物、少なくとも1種の追加的な還元剤を、上述し、上記に定義したように、好ましい実施の形態で加えることができる。
【0116】
更なる好ましい実施の形態では、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤は、H3PO3、(NH4)H2PO3、(NH42HPO3、H3PO2、(NH4)H2PO2、LiH2PO3、Li2HPO3、Li2PO2、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0117】
上記に定義した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料の混合物を製造するための方法において、導電性材料は、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる。少なくとも1種の導電性材料は、本発明に従う方法の工程(E)で、本発明に従う方法の工程(E)に存在する全反応混合物に対して、通常、0.01〜15質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜8質量%の量で加えられる。
【0118】
工程(E)で、カーボンブラック、グラファイト、又は本質的に炭素から成る物質が、導電性材料として使用される場合、これらの材料は、好ましくは、混合物、好ましくは他の成分の本質的に水性の溶液又は分散液に懸濁される。このことは、これらの導電性材料を、好ましくは水性の、他の成分の混合物に直接的に加えることによって達成される。この替わりに、カーボンブラック、グラファイト、又は本質的に炭素から成る物質を、過酸化水素の水溶液中に懸濁させ、そしてこの懸濁液を、次に上述した1種以上の成分の溶液又は分散液に加えることができる。過酸化水素での処理は、通常、炭素の水との湿潤性を改良し、及び安定性が改良された、即ち偏析の傾向がより低い、炭素含有懸濁液を得ることを可能にする。更に、混合物中の、導電性材料の均一な分散が改良される。水性懸濁液を更に攪拌及び/又は加熱することによって、Li−、Q−及び/又はP−含有の前駆体の触媒的な存在下に、過剰の過酸化水素が水と酸素に分解される。
【0119】
他の実施の形態では、少なくとも1種の界面活性剤を、本発明に従う方法の工程(E)で加えることができる。適切な界面活性剤は、例えば、非イオン性界面活性剤、好ましくはエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーである。
【0120】
酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤、及び酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物が、本発明に従う方法の工程(E)に加えられる場合、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物に酸化される、少なくとも1種の還元剤と、酸化状態が+5のリン原子を少なくとも1個含む少なくとも1種の化合物の割合は、例えば0.8〜5.0、好ましくは0.9〜4.0、より好ましくは1.0である。
【0121】
工程(G):
本発明に従う方法の好ましい実施の形態では、工程(F)の後、以下の工程(G)が行われる:
(G)上記に定義した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料を含む混合物を、工程(F)で得られた混合物から分離する工程。
【0122】
通常、溶液又は乳濁液から固体を分離するための技術分野の当業者にとって公知の全ての方法を、本発明に従う方法の工程(G)で使用することができる。
【0123】
原則として、本発明に従う方法の任意の工程(G)を、上述したように、工程(C)に従い行うことができる。従って、工程(C)について説明した詳細と好ましい実施の形態は、工程(G)の詳細と好ましい実施の形態でもあるが、工程(G)では、上記に定義した一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料の混合物が扱われるのに対して、工程(C)では、上記に定義した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物が扱われ、この点が異なる。
【0124】
工程H:
本発明に従う方法の一実施の形態では、工程(G)で得られた固体化合物が、本発明に従う方法の任意の工程(H)で、300〜1000℃のか焼温度でか焼される。
【0125】
原則として、本発明に従う方法の任意の工程(H)は、上述した工程(D)に従って行うことができる。従って、工程(D)について説明した詳細と好ましい実施の形態は、工程(H)の詳細と好ましい実施の形態でもあるが、工程(H)では、上記に定義した一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料の混合物が扱われるのに対して、工程(D)では、上記に定義した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物が扱われ、この点が異なる。
【0126】
本発明は、上記に定義した一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料の混合物にも関する。該混合物は、好ましくは、上述した工程(E)、(F)及び任意に(G)及び/又は(H)によるものである。従来技術による材料とは対照的に、本発明に従う混合物は、得られた材料の塊内の導電性材料の分散が改良されている。この改良されたC−分散は、本発明に従うカソード材料粉内の炭素の高導電性の透過ネットワークをもたらし、更に電極等の層の改良された導電性をもたらす。一般式(I)に従う少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料を含む混合物は、所定のBET表面積を有しており、該BET表面積は、混合物内の追加的な炭素の種類と量によって決定され、及び0.1〜500m2/gの範囲で変動しても良い。
【0127】
従って、本発明は、上述した混合物、又は(上記に定義した一般式(I)に従う、少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種の導電性材料の)混合物を含む塊を、リチウム−イオン電池又は電気化学電池のカソードを製造ために使用する方法にも関する。
【0128】
本発明は、上述した混合物を含む混合物又は塊を含む、リチウム−イオン電池のためのカソードにも関する。
【0129】
上述した一般式(I)に従う化合物、又は一般式(I)に従う化合物、又は上述した塊、及び上述した少なくとも1種の導電性材料の混合物を使用してのカソードの製造のために、好ましい実施の形態では、以下のバインダーが使用される。
【0130】
ポリウレタンオキシド(PEO)、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリルニトリル−メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−コポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキフルオロプロピレン−コポリマー、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマー(PVdF−HFP)、ペルフルオロアルキル−ビニルエーテル−コポリマー、ビニリデンフルオリド−クロロトリフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−クロロフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−アクリル酸−コポリマー(ナトリウムイオンを含む、及び含まないものを含む)、エチレンメタクリル酸(ナトリウムイオンを含む、及び含まないものを含む)、ポリアミド及びポリイソブテン。
【0131】
バインダーは、全カソード材料に対して、通常、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜7質量%の量で加えられる。
【0132】
本発明に従う方法を、以下の実施例を使用して更に説明する。
【0133】
実施例1
LiOH+FeOOH+0.5H3PO3+0.5H3PO4→LiFePO4+2.5H2
14.66g(98%、0.6モル、Merk)LiOHを、攪拌させながら1000mLの水中に溶解させた。34.5g(85%、0.3モル、Brend Kraft GmbH Duisburg,Germany)H3PO4を、この溶液に加えた。pHが6.5の白色の沈澱物が生成された。次に、64.1gのBayoxid EF300(FeOH、Fe−含有量51.3%、0.6モル、BET290m2/g)を加えた。後に、320mL中の25.05gH3PO3(98%、0.3モル、Acros)を加え、2.84のpHが得られた。
【0134】
3.5lオートクレーブ内で反応を行った。オートクレーブ内の圧力を、窒素を使用して10バールに設定した。攪拌を700rpmでスイッチオンした。反応混合物を、室温で1時間攪拌し、そして次に270℃に加熱した。温度を270℃に12時間保持し、そして次に室温にまで低下させた。
【0135】
得られた懸濁液はpHが5.52、及び導電性が2.09mSであった。
【0136】
この反応混合物をろ過し、そして得られた固体を、5部分の脱塩した水1000mLで洗浄した。導電性(伝導率)は、26.6μSであった。固体を乾燥炉内で80℃で、一定の質量になるまで一晩乾燥させた。
【0137】
実施例2
LiOH+FeOOH+0.5H3PO3+0.5H3PO4→LiFePO4+2.5H2
14.66g(98%、0.6モル、Merk)LiOHを、攪拌させながら1000mLの水中に溶解させた。34.5g(85%、0.3モル、Brend Kraft GmbH Duisburg,Germany)H3PO4を、この溶液に加えた。pHが6.5の白色の沈澱物が生成された。次に、64.1gのBayoxid EF300(FeOH、Fe−含有量51.3%、0.6モル、BET290m2/g)を加えた。後に、320mL中の25.05gH3PO3(98%、0.3モル、Acros)を加え、2.84のpHの懸濁液Aが得られた。
【0138】
3gのカーボンブラック(Timcal Super PLi、Timcal Deutschland GmbH,D−40212 Dusseldorf、Germany)を水に加えた。カーボンブラックは表面に浮かんだ。次に、150mlの水性H22−溶液(30%、Merck GmbH、D−64293 Darmstadt、Germany)を攪拌下に滴下させて加えた。カーボンブラックは、水中に分散した。得られた黒色の水性カーボンブラック分散液Bを、攪拌下に、懸濁液Aに加えた。
【0139】
3.5lオートクレーブ内で反応を行った。オートクレーブ内の圧力を、窒素を使用して10バールに設定した。攪拌を700rpmでスイッチオンした。反応混合物を、室温で1時間攪拌し、そして次に270℃に加熱した。温度を270℃に12時間保持し、そして次に室温にまで低下させた。
【0140】
得られた懸濁液はpHが5.48、及び導電性が2.4mSであった。
【0141】
この反応混合物をろ過し、そして得られた固体を、5部分の脱塩した水1000mLで洗浄した。導電性(伝導率)は、29μSであった。固体を乾燥炉内で80℃で、一定の質量になるまで一晩乾燥させた。
【0142】
実施例3
LiOH+FeOOH+0.5H3PO3+0.5H3PO4→LiFePO4+2.5H2
14.66g(98%、0.6モル、Merk)LiOHを、攪拌させながら1000mLの水中に溶解させた。34.5g(85%、0.3モル、Brend Kraft GmbH Duisburg,Germany)H3PO4を、この溶液に加えた。pHが6.5の白色の沈澱物が生成された。次に、64.1gのBayoxid EF300(FeOH、Fe−含有量51.3%、0.6モル、BET290m2/g)を加えた。後に、320mL中の25.05gH3PO3(98%、0.3モル、Acros)を加え、2.84のpHの懸濁液Aが得られた。
【0143】
3gのカーボンブラック(Timcal Super PLi、Timcal Deutschland GmbH,D−40212 Dusseldorf、Germany)を水に加えた。カーボンブラックは表面に浮かんだ。次に、0.3gのPluronic 10400(BASF SE,67056 Ludwigshafen,Germany)を攪拌下に加えた。カーボンブラックは、水中に分散した。得られた黒色の水性カーボンブラック分散液Bを、攪拌下に、懸濁液Aに加えた。
【0144】
3.5lオートクレーブ内で反応を行った。オートクレーブ内の圧力を、窒素を使用して10バールに設定した。攪拌を700rpmでスイッチオンした。反応混合物を、室温で1時間攪拌し、そして次に270℃に加熱した。温度を270℃に12時間保持し、そして次に室温にまで低下させた。
【0145】
得られた懸濁液はpHが5.9及び導電性が3,9mSであった。
【0146】
この反応混合物をろ過し、そして得られた固体を、5部分の脱塩した水1000mLで洗浄した。導電性(伝導率)は、29μSであった。固体を乾燥炉内で80℃で、一定の質量になるまで一晩乾燥させた。
【0147】
実施例4
LiOH+FeOOH+0.55H3PO3+0.45H3PO4→LiFePO4+2.5H2
14.66g(98%、0.6モル、Merk)LiOHを、攪拌させながら1000mLの水中に溶解させた。32.75g(85%、0.285モル、Brend Kraft GmbH Duisburg,Germany)H3PO4を、この溶液に加えた。pHが6.5の白色の沈澱物が生成された。次に、64.1gのBayoxid EF300(FeOH、Fe−含有量51.3%、0.6モル、BET290m2/g)を加えた。後に、320mL中の26.30gH3PO3(98%、0.315モル、Acros)を加え、2.68のpHが得られた。
【0148】
3.5lオートクレーブ内で反応を行った。オートクレーブ内の圧力を、窒素を使用して10バールに設定した。攪拌を700rpmでスイッチオンした。反応混合物を、室温で1時間攪拌し、そして次に270℃に加熱した。温度を270℃に12時間保持し、そして次に室温にまで低下させた。
【0149】
得られた懸濁液はpHが5.4及び導電性が2,3mSであった。
【0150】
この反応混合物をろ過し、そして得られた固体を、5部分の脱塩した水1000mLで洗浄した。導電性(伝導率)は、30μSであった。固体を乾燥炉内で80℃で、一定の質量になるまで一晩乾燥させた。
【0151】
実施例5
1.1LiOH+FeOOH+0.55H3PO3+0.45H3PO4→LiFePO4+2.5H2
16.13g(98%、0.6モル、Merk)LiOHを、攪拌させながら1000mLの水中に溶解させた。32.75g(85%、0.285モル、Brend Kraft GmbH Duisburg,Germany)H3PO4を、この溶液に加えた。pHが6.5の白色の沈澱物が生成された。次に、64.1gのBayoxid EF300(FeOH、Fe−含有量51.3%、0.6モル、BET290m2/g)を加えた。後に、320mL中の26.30gH3PO3(98%、0.315モル、Acros)を加え、2.8のpHが得られた。
【0152】
3.5lオートクレーブ内で反応を行った。オートクレーブ内の圧力を、窒素を使用して10バールに設定した。攪拌を700rpmでスイッチオンした。反応混合物を、室温で1時間攪拌し、そして次に270℃に加熱した。温度を270℃に12時間保持し、そして次に室温にまで低下させた。
【0153】
得られた懸濁液はpHが5.7及び導電性が1.2mSであった。
【0154】
この反応混合物をろ過し、そして得られた固体を、5部分の脱塩した水1000mLで洗浄した。導電性(伝導率)は、30μSであった。固体を乾燥炉内で80℃で、一定の質量になるまで一晩乾燥させた。
【0155】
実施例6
3LiOH+Mn34+H3PO3+2H3PO4→3LiMnPO4
7.69g(98%、0.315モル、5%過剰、Merk)水酸化リチウム(リチウムヒドロキシド)を、ビーカー内で攪拌させながら1000mLの水中に溶解させた。そして、この溶液をオートクレーブ内に移した。23.6gのリン酸(85%、0.2モル)を加えた。次に、23.21gのMn34(Mn−含有量71%、0.1モル、BASF)を加えた。この後、320mLの水中の10.25gのホスホン酸H3PO3(98%ig、0.1モル、Acros)の溶液を加えた。
【0156】
ホスホン酸を加えた後、オートクレーブを、窒素を使用して10バールの圧力に設定した。攪拌を700rpm(1分間当たりの回転数)でスイッチオンした。反応混合物を、室温で1時間攪拌し、そして次に270℃に加熱した。温度を270℃に12時間保持し、そして次に室温にまで低下させた。オートクレーブ内の圧力を大気圧に設定した。
【0157】
この反応混合物をろ過し、そして得られた固体を乾燥室で80℃で乾燥させた。単相LiMnPO4が得られた。Mnの酸化状態は+2.0であった。
【0158】
実施例7
LiOH+MnO2+H3PO3→LiMnPO4
10.26g(98%、0.42モル、5%過剰、Merk)水酸化リチウム(リチウムヒドロキシド)を、ビーカー内で攪拌させながら1000mLの水中に溶解させた。そして、この溶液をオートクレーブ内に移した。37.25gの二酸化マンガン(Mn−含有量59%、0.4モル、Tronox)を加えた。後に、320mLの水中の33.46gのホスホン酸H3PO3(98%ig、0.4モル、Acros)の溶液を加えた。
【0159】
ホスホン酸を加えた後、オートクレーブを、窒素を使用して10バールの圧力に設定した。攪拌を700rpm(1分間当たりの回転数)でスイッチオンした。反応混合物を、室温で1時間攪拌し、そして次に270℃に加熱した。この温度を270℃に12時間保持し、そして次に室温にまで低下させた。オートクレーブ内の圧力を大気圧に設定した。
【0160】
この反応混合物をろ過し、そして得られた固体を乾燥室で80℃で乾燥させた。単相LiMnPO4が得られた。Mnの酸化状態は+2.0であった。