特許第5957483号(P5957483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5957483同時両面研磨により半導体ウエハを研磨する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957483
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】同時両面研磨により半導体ウエハを研磨する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160714BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20160714BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   H01L21/304 622M
   B24B37/00 A
   B24B53/00 Z
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-81743(P2014-81743)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-207450(P2014-207450A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年6月6日
(31)【優先権主張番号】10 2013 206 613.9
(32)【優先日】2013年4月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・バウマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・シュタウトハマー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ハイルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】レスツェク・ミスツル
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・レトガー
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0160689(US,A1)
【文献】 米国特許第06338672(US,B1)
【文献】 国際公開第2010/128631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
B24B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨剤を供給しながら研磨装置の下方研磨パッドと上方研磨パッドとの間の間隙において同時両面研磨によって半導体ウエハを研磨する方法であって、前記下方研磨パッドは下方研磨板を覆い、前記上方研磨パッドは上方研磨板を覆い、前記研磨板および前記研磨パッドは内縁と外縁とを有し、方法は、
目直し器具を用いて、前記上方研磨パッドと前記下方研磨パッドの少なくとも一方を目直しするステップを備え、目直しされる前記研磨パッドで覆われる前記研磨板は回転し、前記目直し器具は、目直しされる前記研磨パッドの前記内縁から前記外縁に延在するように前記間隙内に取り付けられ、方法はさらに、
前記目直しの後に前記間隙において半導体ウエハを研磨するステップを備え、記目直し時において、目直しされる前記研磨パッドの反対側に置かれる前記研磨パッドから前記目直し器具への距離は、この研磨パッドの前記内縁において、この研磨パッドの前記外縁における対応する距離とは異なる、方法。
【請求項2】
前記目直しが再び行われる前に1つ以上の研磨方法が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記研磨パッドの前記内縁における前記間隙の前記幅が前記研磨パッドの前記外縁よりも大きい態様は、前記目直し時に前記間隙に与えられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目直し器具は1つ以上のリングを含み、リングは、前記研磨装置の内側駆動ギヤと外側駆動ギヤとの間に位置し、前記リングの中間部を中心に前記内側駆動ギヤ、前記外側駆動ギヤ、または前記内側および外側駆動ギヤによって回転する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、研磨剤を供給しながら研磨装置の下方研磨パッドと上方研磨パッドとの間の間隙において同時両面研磨によって半導体ウエハを研磨する方法に関し、下方研磨パッドは下方研磨板を覆い、上方研磨パッドは上方研磨板を覆い、研磨板および研磨パッドは内縁と外縁とを有する。方法は、一方または両方の研磨パッドを目直し器具を用いて目直しするステップと、目直しの後に間隙において半導体ウエハを研磨するステップとを含む。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、特に単結晶シリコンからなる半導体ウエハは、電子部品を製造するための基本材として必要である。このような部品の製造者は、納品される半導体ウエハの前側および後側が可能な限り平坦かつ平行であることを求めている。この要件を満たすために、このような半導体ウエハを製造するための処理工程には従来より半導体ウエハの研磨が含まれる。半導体ウエハの前側および後側を研磨剤を用いて同時に研磨する両面研磨(DSP)が特に適している。DSP時において、半導体ウエハは、さらなる半導体ウエハとともに下方研磨パッドと上方研磨パッドとの間の間隙に置かれる。研磨パッドの各々は、対応する下方研磨板および上方研磨板を覆う。半導体ウエハは、DSP時において、半導体ウエハをガイドおよび保護するキャリアの開口内に置かれる。キャリアは、外側に歯の付いたディスクであって、研磨装置の内側と外側の歯車またはピンギヤの間に配置される。歯車またはピンギヤは、以下では駆動ギヤという。研磨時において、キャリアは、キャリアの中間部および研磨盤の中間部を中心に、内側駆動ギヤまたは内側および外側ギヤによって回転動作を行う。さらに、研磨板は、通常はそれらの軸を中心に反対方向に回転し、これにより、半導体ウエハの研磨される側の点が対応する研磨パッド上でサイクロイド軌道を描くというDSPの運動学的特徴が得られる。
【0003】
最初に使用する前、および摩耗がある程度に達した後に、下方研磨パッドおよび上方研磨パッドの目直しが通常行われる。目直し時において、研磨パッドの作業状態を好ましくするために、研磨パッドの表面は粗くされ、若干の材料の摩耗が引き起こされる。
【0004】
米国特許出願公開第2012/0189777号A1によれば、研磨板に対して成形目直し(形直し)を施すと有利であり、これによって研磨パッド間の間隙が可能な限り均一に幅広くなる。さらに、研磨パッドを目直しするためにキャリアが目直しリングと置き換えられることが記載されている。目直しは冷却潤滑剤を用いて行われ、目直しリングは、半導体ウエハが挿入されていない状態で、DSPの運動と同様の動きで下方研磨パッドおよび上方研磨パッドに上を移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0189777号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、DSPが行われた後に半導体ウエハの平面性を向上させる手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、研磨剤を供給しながら研磨装置の下方研磨パッドと上方研磨パッドとの間の間隙において同時両面研磨によって半導体ウエハを研磨する方法によって達成され、下方研磨パッドは下方研磨板を覆い、上方研磨パッドは上方研磨板を覆い、研磨板および研磨パッドは内縁と外縁とを有し、方法は、目直し器具を用いて、1つの研磨パッド、または第1の研磨パッドおよび後続の他の研磨パッドを目直しするステップを含み、目直しされる研磨パッドで覆われる研磨板は回転し、目直し器具は、目直しされる研磨パッドの内縁から外縁に延在するように間隙内に取り付けられ、方法はさらに、目直しの後に間隙において半導体ウエハを研磨するステップを含み、目直し時において、目直しされる研磨パッドの反対側に置かれる研磨パッドから目直し器具への距離は、この研磨パッドの内縁において、この研磨パッドの外縁における対応する距離とは異なる。
【0008】
発明者は、特に半導体ウエハの縁領域における平面性を向上させるためには、半導体ウエハにDSPを施し、この場合においては研磨パッドの内縁から外縁への間隙の幅を同じ幅に維持する代わりに変更することが有利であることを発見した。間隙の幅は、下方研磨パッドと上方研磨パッドとの間の距離である。この幅は、線形で異なるのが好ましい。間隙は、研磨パッドの内縁の方が研磨パッドの外縁よりも広く、くさび形の形状であるのが好ましい。研磨パッドの内縁における間隙の幅を研磨パッドの外縁における間隙の幅と比較した場合、間隙の幅の差の量は、10μmから250μmであり、好ましくは30μmから150μmである。目直しされた研磨パッドは、好ましくは内縁が外縁よりも薄いのが好ましい。
【0009】
間隙の好ましい形状は、目直し器具を用いて一方または両方の研磨パッドを目直しすることによって達成される。両方の研磨パッドが目直しされる場合、下方研磨パッドまたは上方研磨パッドが最初に目直しされ、目直しされた研磨パッドの反対側にある研磨パッドが続いて目直しされる。
【0010】
目直し器具は、複数の目直しリングを含むのが好ましく、3つの目直しリングを含むのが特に好ましい。リングは、内側駆動ギヤと外側駆動ギヤとの間にキャリアの代わりに置かれる。各目直しリングは、目直しされる研磨パッドに向けられた上方側を有し、研削体が設けられる。下に設けられる下方側にも同様に研削体が設けられる。研削体は、研磨作用を有する材料を含み、好ましくはダイヤモンド、立方晶窒化硼素、鋼玉石、または炭化ケイ素の粒である。平均粒径は、60μmから300μmであるのが好ましい。
【0011】
目直し器具は、目直しされる研磨パッドの内縁から外縁へ延在する。本発明によれば、目直し時において、目直し器具から目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドへの距離は、この研磨パッドの内縁において、この研磨パッドの外縁における対応する距離とは異なる。これは、目直し器具が水平位置から傾斜して配置されるように取り付けられることによって達成される。好ましくは、目直し器具と目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドとの間にスペーサが置かれる。目直し器具と目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドとの間の距離は、この研磨パッドの内縁において、この研磨パッドの外縁よりも大きい。これは、研削体によって形成される目直し器具の表面と目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドの表面との間の距離である。
【0012】
一実施形態によれば、スペーサは、目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドに担持される1つ以上のリングを含む。このようなスペーサリングは、研磨パッドの内縁から外縁に延在する。研磨パッドの内縁において、スペーサリングは、研磨パッドの外縁における厚さよりも好ましくは大きい厚さを有する。目直し器具は、研磨パッドの内縁および外縁の領域内においてスペーサに担持される。これにより、目直し器具と目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドとの間の距離は、この研磨パッドの内縁において研磨パッドの外縁よりも大きい。
【0013】
好ましくは、3つのスペーサが設けられ、これらは目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッド上において均一に分散して担持される。スペーサは、スペーサの捻りに対する対抗手段として作用する棒によって互いに接続されるのが好ましい。
【0014】
研磨パッドを目直しするために、研磨板が閉じられ、目直しされる研磨パッドによって覆われる研磨板が回転する。他方の研磨板は回転しない。さらに、本発明に基づき取り付けられる目直し器具は、その中間部を中心に内側駆動ギヤもしくは外側駆動ギヤ、または両方によって回転する。上方研磨板は、全体的に垂下し、回転する目直し器具と研磨板との相対移動を可能とし、目直しされる研磨パッドの全表面がこれによって加工される。
【0015】
他の実施形態によれば、スペーサは、目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッド上に担持される単一のリングである。このスペーサリングは、研磨パッドの内縁と内側駆動ギヤとを囲う。目直し器具は、研磨パッドの内縁の領域においてスペーサ上に担持され、研磨パッドの外縁の領域において研磨パッド上に担持される。この研磨パッドの内縁において、目直し器具と目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドとの間の距離は、目直し器具の厚さとスペーサの厚さとの合計に等しい。研磨板の外縁において、距離はスペーサの厚さ分だけ小さい。
【0016】
目直しは、冷却潤滑剤を用いて行われる。
一方または両方の研磨パッドの目直しに続き、キャリアにある半導体ウエハに対して、研磨パッドの間の間隙において同時両面研磨が施され、一方の研磨が行われている間に複数の半導体ウエハが同時に研磨される。再び本発明に係る目直しが一方の研磨パッドまたは両方の研磨パッドに対して行われる前に、複数の研磨が行われる。間隙の形状が所望のくさび型を保持している間は、後続の目直しは行われない。不均一な研磨による摩耗によって、複数の研磨された半導体ウエハに関して期待される研磨が満たされない場合、間隙の好ましい形状を回復させる必要がある。この場合において、さらなる目直しサイクルが行われる。研磨パッドは、前もって交換する必要があり得る。
【0017】
本発明は、添付の図面を用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る研磨パッドの目直しの際の目直し器具の配置を示す断面図である。
図2】目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドの図1に係る配置を示す平面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る研磨パッドの目直しの際の目直し器具の配置を示す断面図である。
図4】目直しされる研磨パッドの反対側にある研磨パッドの図3に係る配置を示す平面図である。
図5】くさび形状を有する間隙におけるDSPの際の半導体ウエハの配置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1によれば、下方研磨板2および上方研磨板1は、内縁から外縁へ径方向に延在し、それぞれの研磨盤を覆う下方研磨パッド4および上方研磨パッド3も同様に延在する。下方研磨パッド4は、環状の表面を形成し、研磨装置の内側ピンギヤ6に内縁で接合し、研磨装置の外側ピンギヤ7で外縁に接合する。3つの目直しリング11が均一に分散した状態で下方研磨パッド4に置かれる。目直しリング11は、プラスチックからなるスペーサリング14上にそれぞれ担持される。スペーサリングは、くさび形状の断面を有する。スペーサリング11は、目直しされる上方研磨パッド3の内縁から外縁に延在し、周囲に歯12を有し、これらの歯12は内側および外側ピンギヤ6,7のピンに係合する。
【0020】
スペーサリング11の上方側には研削体13が設けられる。上方研磨パッドの目直しの際、上方研磨パッド1は回転軸5を中心に回転する。下方研磨パッド2は、この際に静止する。研磨パッドの内縁における下方研磨パッド4とスペーサリング11との間の距離Dは、研磨パッドの外縁における対応する距離Dよりも大きい。
【0021】
研磨パッド4の内縁および外縁において異なる厚さを有するスペーサリング14の断面のくさび形の構成により、スペーサリング11は目直しの際に水平に対して傾斜した位置を取る。これにより、目直しの際に引き起こされる上方研磨パッド3からの材料の研磨は、径方向の位置に依存する。その研磨は、研磨パッドの内縁から研磨パッドの外縁に向けて減少する。
【0022】
続いて下方研磨パッド4に対しても目直しすることが意図される場合、目直しリング11およびスペーサリング14が180°回転され、研磨パッドの間の間隙に配置され、下方研磨パッド2は目直しの際に上方研磨パッド1の代わりに回転する。
【0023】
図2は、目直しされる研磨パッド3の反対にある下方研磨パッド4の平面図において、目直しリング11およびスペーサリング14の配置を示す図である。スペーサリング14は、棒16によって互いに接続され、研磨パッドの目直しの際に回転動作をスペーサリングが行わないようにする。
【0024】
図3に係る実施形態は、下方研磨パッド4の内縁の周りおよび内側駆動ギヤ6の周りに位置するスペーサとして単一のスペーサリング17が使用される点において、図1に係る実施形態とは異なる。スペーサリング17は、均一な厚さを有する。この実施形態における目直し器具は目直しリング18であり、これは他の実施形態における目直し器具よりも厚く、硬度も高い。目直しリング18は、下方研磨パッド4の内縁の領域においてスペーサリング17上に担持され、下方研磨パッド4の外縁の領域において下方研磨パッド4上に担持される。好ましくは、3つのこのような目直しリング18が設けられる。下方研磨パッドの内縁における目直し器具11と目直しされる研磨パッド3の反対側にある下方研磨パッド4との間の距離Dは、下方研磨パッド4の外縁における対応する距離Dоよりも大きい。厚さの差は、スペーサリング17の厚さの差に対応する。
【0025】
図4は、下方研磨パッド4の平面図における目直しリング18の配置を示す。目直しリング18は、下方研磨パッド4の内縁の領域においてスペーサリング17上に担持される。スペーサリング17は、下方研磨パッド4の内縁と内側駆動ギヤ6とを囲う。
【0026】
図5は、くさび形を有する間隙におけるDSPの際の半導体ウエハ10の配置を示す断面図である。くさび形の形状は、上記の方法によって研磨パッドが目直しされる操作が2つ連続して行われる結果として得られる。半導体ウエハはキャリア8の凹部に置かれる。キャリアは外側歯9を有し、この外側歯9は内側ピンギヤ6および外側ピンギヤ7に係合する。研磨パッド内縁における間隙の幅Wは、研磨パッドの外縁における間隙の幅Wよりも大きい。研磨パッドは内縁のほうが外縁よりも薄い。DSP時において、研磨パッドは、回転軸5を中心に反対方向に回転する。
図1
図2
図3
図4
図5