(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(b)のステップにおいて、前記支持体の前記部分に、第1の方向から、電磁波共振体を形成する材料を蒸着することにより、前記電磁波共振体を形成する材料は、前記突起の上部と、前記側部の少なくとも一部とに蒸着される、請求項4に記載の製造方法。
前記電磁波共振体は、前記支持体の側面方向から見たとき、前記部分に略逆U字型に蒸着され、または前記支持体の厚さ方向から見たとき、前記部分に略C字型に蒸着される、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の製造方法。
前記電磁波共振体を形成する材料は、グラフェン、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物、およびスズ酸化物からなる群から選定された、少なくとも一つである、請求項8に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の構成について説明する。
【0034】
本発明では、電磁波に対して共振する電磁波共振体を備えるメタマテリアルの製造方法
であって、
(a)ナノインプリント法またはフォトリソグラフィー法により、電磁波共振体が形成
される部分を有する支持体を形成するステップと、
(b)前記支持体の前記部分に、電磁波共振体を形成する材料を蒸着し、前記支持体に
前記電磁波共振体を配置するステップと、
を含
み、
前記(b)のステップは、前記電磁波共振体を形成する材料を、異なる2以上の方向から前記支持体の前記部分に蒸着するステップを有するメタマテリアルの製造方法が提供される。
【0035】
従来の一般的なメタマテリアルを製造する方法では、電磁波共振体を製造する際に、リソグラフィー技術およびエッチング技術を用いる。しかしながら、このような方法では、特にエッチング技術を利用することに起因して、例えば、微細な電磁波共振体を有するメタマテリアルを量産する場合などにおいて、電磁波共振体の寸法形状等にバラツキが生じる可能性がある。このため、従来の方法では、メタマテリアルを効率的に量産することは難しいと考えられる。
【0036】
これに対して、本発明では、電磁波共振体は、蒸着法によって支持体に形成、配置される。蒸着法では、所望の位置に、所望の性状の電磁波共振体を再現性良く成膜することができる。換言すれば、本発明では、電磁波共振体の形成の際に、バラツキが生じやすいエッチング技術を使用しない。このため、本発明によるメタマテリアルの製造方法では、より効率的にメタマテリアルを製造することができる。
【0037】
ここで、本発明によるメタマテリアルの製造方法において、電磁波共振体を形成する材料を蒸着する際には、異なる2以上方向から蒸着を行うことが好ましい。これにより、支持体の前記部分に、左右非対称な電磁波共振体を、容易に形成、配置することができる。また、支持体に対して、厚さ方向と平行な方向ではなく、斜め方向から蒸着を行うことにより、支持体の電磁波共振体を形成する部分以外の箇所に、電磁波共振体を形成する材料が成膜されることを抑制することができる。
【0038】
なお、電磁波共振体が蒸着される支持体の部分は、1または2以上の凸状部を有しても良い。この凸状部は、上部および側部を有する突起として構成され、上部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成されても良い。
【0039】
前記(b)のステップを経て得られたメタマテリアルは、そのまま使用しても良いが、さらに、以下のステップを実施して、別の態様で使用しても良い。
【0040】
例えば、
(c)電磁波共振体を有する支持体を液体中に選択的に溶解させるステップ、および
(d)残った電磁波共振体を後に透明な誘電体となる液体中に分散させ、該液体を固化させることにより、電磁波共振体を誘電体マトリクス中に分散させるステップ、
を実施した場合、電磁波共振体がマトリクス中に無秩序に分散されたメタマテリアルを得ることができる。
【0041】
あるいは、
(e)支持体に配置された電磁波共振体を、粘着性を有する材料に転写させるステップ、および必要な場合、これに加えて、
(f)電磁波共振体が転写された粘着性を有する材料を、電磁波共振体が積層方向に揃うようにして積層するステップ、
を実施しても良い。
【0042】
電磁波共振体を粘着性を有する材料に転写させておくことにより、後に必要な態様で、電磁波共振体を供給できる。また、粘着性を有する材料を積層しておくことにより、例えば、レンズのような厚みを有するデバイスを作製できる。
【0043】
なお、電磁波共振体を構成する材料として、通常は、金属が使用される。しかしながら、金属は、可視光域で電磁波を吸収する場合がある。従って、可視光域での透過性が必要となるメタマテリアルの適用例では、電磁波共振体を構成する材料として、グラフェン等の低抵抗カーボン、ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO(亜鉛酸化物)、およびSnO
2(スズ酸化物)などの酸化物系透明導電性材料を使用しても良い。あるいは、この他にも、例えば共振周波数が赤外領域以下となる材料を使用しても良い。
【0044】
これにより、可視光域の電磁波の吸収を抑制して、高い透過性を有するメタマテリアルを提供できる。
【0045】
さらに、本発明では、以下の特徴を有するメタマテリアルが提供される。
【0046】
(i)複数の凸状部を有する支持体と、各凸状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記各凸状部は、上部および側部を有する突起で構成され、
前記上部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記突起の上部と、前記側部の少なくとも一部とに
配置されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体の前記突起以外の箇所には形成されておらず、
前記電磁波共振体は、前記支持体を側面から見たとき、各突起に、二つの端部を有する略逆U字型に形成されており、
前記側部の一つの面および該面と反対側の面において、前記電磁波共振体の高さ方向の寸法は異なることを特徴とするメタマテリアル。
【0047】
(ii)複数の凸状部を有する支持体と、各凸状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記各凸状部は、上部および側部を有する突起で構成され、
前記上部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記突起の上部と、前記側部の少なくとも一部とに
配置されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体の前記突起以外の箇所には形成されておらず、
前記複数の凸状部を構成する各突起は、水平方向の断面が略C字型となるように形成され、略C字型の上部と、略角柱状の側部とを有し、
前記電磁波共振体は、前記突起の前記上部と前記側部の少なくとも一部とに形成されており、
前記側部の一つの面および該面と反対側の面において、前記電磁波共振体の高さ方向の寸法は異なることを特徴とするメタマテリアル。
【0048】
(iii)複数の凸状部を有する支持体と、各凸状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記各凸状部は、上部および側部を有する突起で構成され、
前記上部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記突起の上部と、前記側部の少なくとも一部とに
配置されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体の前記突起以外の箇所には形成されておらず、
前記側部の一つの面および該面と反対側の面において、前記電磁波共振体の高さ方向の寸法は異なっており、
少なくとも2つの突起は、相互に相似形状となっており、
前記少なくとも2つの突起に配置されたそれぞれの電磁波共振体は、相似形状のまま、寸法が実質的に異なっていることを特徴とするメタマテリアル。
【0049】
(iv)複数の凹状部を有する支持体と、前記凹状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記凹状部は、底部および側部を有するくぼみで構成され、
前記底部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記くぼみの底部と、前記側部の少なくとも一部とに蒸着されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体を側面から見たとき、各くぼみに、二つの端部を有する略U字型に形成されており、
各端部の長さは異なることを特徴とするメタマテリアル。
【0050】
(v)複数の凹状部を有する支持体と、前記凹状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記凹状部は、底部および側部を有するくぼみで構成され、
前記底部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記くぼみの底部と、前記側部の少なくとも一部とに蒸着されており、
少なくとも2つのくぼみは、相互に相似形状となっており、
前記少なくとも2つのくぼみに配置されたそれぞれの電磁波共振体は、相似形状のまま、寸法が実質的に異なっていることを特徴とするメタマテリアル。
【0051】
ここで、(i)に示すメタマテリアルでは、支持体を側面から見たとき、電磁波共振体を、各突起に対して、二つの端部を有するような略逆U字型の形状とし、各端部の長さは異なるように形成する。
【0052】
(ii)に示すメタマテリアルでは、各突起を水平方向の断面が略C字型となるように、すなわち各突起が略C字型の上部と、略角柱状の側部とを有するように構成しておき、電磁波共振体を、突起の前記上部と前記側部の少なくとも一部とに形成する。この際に、突起の側部の一つの面および該面と反対側の面において、電磁波共振体の高さ方向の寸法が異なるようにして、電磁波共振体を形成する。
【0053】
(iv)に示すメタマテリアルでは、支持体を側面から見たとき、電磁波共振体を、各くぼみに対して、二つの端部を有するような略U字型の形状とし、各端部の長さは異なるように形成する。
【0054】
このような電磁波共振体と支持体の組み合わせ(組立体)は、各電磁波共振体の形状の非対称性のため、以降に詳述するように、特定の周波数域で、負の屈折率特性を発現する。従って、このような組立体は、左手系媒質としてのメタマテリアルとして機能を発現させることができる。
【0055】
さらに、(iii)に示すメタマテリアルでは、少なくとも2つの突起を相互に相似形状とし、これらの2つの突起に、電磁波共振体が形成される。この場合、2つの突起に対して、寸法が実質的に異なり、相似形状の電磁波共振体が得られる。
【0056】
また、(v)に示すメタマテリアルでは、少なくとも2つのくぼみを相互に相似形状とし、これらの2つのくぼみに、電磁波共振体が形成される。この場合、2つのくぼみにおいて、寸法が実質的に異なり、相似形状の電磁波共振体が得られる。
【0057】
(iii)および(v)に示すような電磁波共振体と支持体の組立体の場合も、複数の電磁波共振体の寸法の差異のため、以降に詳述するように、特定の周波数域で、負の屈折率特性を発現する。従って、このような組立体も、左手系媒質としてのメタマテリアルの機能を発現させることができる。
【0058】
(第一の実施形態)
図1には、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法を説明する図を示す。
図1(a)は、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における支持体を説明する図である。
図1(b)は、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法におけるメタマテリアルを説明する図である。
【0059】
図1(a)に示すように、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、電磁波に対して共振する電磁波共振体(以下、単に「電磁波共振体」とも記載する)を支持するための支持体11を作製する。
【0060】
支持体11を作製する方法は、特に限定されないが、フォトリソグラフィー法またはナノインプリント法を用いて支持体11を作製しても良い。
【0061】
ナノインプリント法は、例えば、以下のステップを有する:(1)基板に光硬化性樹脂の層を設けるステップ、(2)あるパターンを有するモールドを、光硬化性樹脂の層に押し付けるステップ、(3)モールドを光硬化性樹脂の層に押し付けた状態で、光硬化性樹脂を硬化させるステップ、および(4)硬化樹脂からモールドを取り外すことにより、モールドのパターンが転写された硬化樹脂を有する基板、すなわち支持体11を得るステップ。
【0062】
支持体11は、メタマテリアルに含まれる電磁波共振体の形状に対応する形状を有する。ここで、電磁波共振体の形状に対応する支持体11の形状は、支持体11に電磁波共振体の材料を蒸着するとき、蒸着されて形成された電磁波共振体が、電磁波に対して共振する形状を有するような形状である。
【0063】
例えば、
図1(a)の例では、支持体11は、水平方向の断面が略C字型となるような複数の突起15を有する。換言すれば、各突起15は、略C字型の上部16aと、内部がくり抜かれた略四角柱状の側部16bとを有するように構成される。なお、側部16bは、高さ方向に沿って、一部が底面から上面にわたってスリット状に除去されていることに留意する必要がある。以下、
図1(a)に示すような突起15を、単に「C字型の突起15」と称することにする。また、このような突起15に形成される電磁波共振体の形状を、特に、「C字型の電磁波共振体」とも称する。
【0064】
なお、
図1(a)に示した支持体11の突起15の形状は、一例であって、突起は、別の形状を有しても良い。例えば、C字型の突起15の側面は、略三角柱、略五角柱、および略円柱など、略四角柱以外の形態であっても良い。
【0065】
あるいは、支持体11の突起は、上部と側部とを有し、上部は、単一の平面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面等の形状を有しても良い。例えば、突起の上部が頂点を有する曲面等の形状を有する場合、ここに形成される電磁波共振体の形状は、略「逆U字型」となる。
【0066】
支持体11の材料は、特に限定されない。支持体11をナノインプリント法によって作製するときは、支持体は、好ましくは、光硬化性樹脂を硬化することによって得られる樹脂からなる。このような樹脂としては、例えば、国際公開第2006/114958号、日本国特開2009−073873号公報、日本国特開2009−019174号公報などに記載される樹脂が挙げられる。
【0067】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、支持体11の材料は、電磁波共振体の共振周波数の電磁波に対して透過性の材料である。例えば、成形可能な紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などがあり、アクリル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、転写成形が可能なガラス、ドライエッチングにより微細加工ができるシリコン、鋳込み成形により形状付与が可能なセラミックスなども支持体として使用できる。
【0068】
この場合には、支持体11から電磁波共振体を回収することなく、支持体11及び電磁波共振体を含むメタマテリアルそれ自体を光学素子のような機能性の素子として使用できる。
【0069】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、支持体11は、樹脂からなる。この場合には、メタマテリアルに含まれる電磁波共振体の形状に対応する形状を有する支持体11を容易に作製できる。
【0070】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、支持体11を構成する樹脂は、熱可塑性の樹脂である。この場合には、メタマテリアルを加熱することによって支持体11をより容易に軟化または溶融させることができる。このため、支持体11から電磁波共振体を容易に回収できる。
【0071】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、支持体11を構成する樹脂は、フッ素系樹脂を含む。支持体11は、フッ素系樹脂からなるものであってもよい。また、支持体11は、電磁波共振体の材料が蒸着される側が、フッ素系樹脂で被覆されたものであってもよい。
【0072】
この場合には、支持体11が、より高い疎水性を有するフッ素系樹脂を含むため、導電性材料または誘電体のような電磁波共振体を支持体11から容易に回収できる。
【0073】
次に、
図1(b)に示すように、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、電磁波共振体12の形状に対応する形状を有する支持体11に電磁波共振体12の材料を蒸着する。このようにして、支持体11に電磁波共振体12が設けられる。その結果、支持体11及び電磁波共振体12を含むメタマテリアル13を製造できる。
【0074】
ここで、C字型の突起15に電磁波共振体12の材料を蒸着する際には、C字型の突起15の対向する側面において蒸着領域の寸法が異なるようにして、蒸着を行うことが好ましい。
【0075】
例えば、
図1(b)の場合、
図1(a)のC字型の突起15の上部16aおよび側部16bの一部に、電磁波共振体12用の材料が蒸着される。
図1(b)からは不明瞭であるが、この際には、電磁波共振体12の一つの側面12cと、この側面12cの反対側の側面12dとにおいて、電磁波共振体12の高さ方向の寸法が異なるようにして、電磁波共振体12用の材料が蒸着される。これにより、対向する側面において蒸着領域の寸法が異なる、「C字型の電磁波共振体」12が形成される。
【0076】
なお、このような対向する側面において、蒸着領域の寸法が異なる「C字型の電磁波共振体」12は、例えば、異なる2方向から蒸着を行うことにより形成することができる。
【0077】
例えば、
図1(b)の例では、第1回目の蒸着を図の矢印F1の方向から実施し、第2回目の蒸着を図の矢印F2の方向から実施することにより、あるいは逆の順番で蒸着を実施することにより、対向する側面において蒸着領域の寸法が異なる、「C字型の電磁波共振体」12を得ることができる。
【0078】
なお
図1(b)において、矢印F1および矢印F2は、垂直軸(Z軸)に対して相互に逆向きで、支持体11の表面と垂直な同一の平面(XZ平面)内にあるものの、矢印F1の傾き(角度θ
1)は、矢印F2の傾き(角度θ
2)に比べて、より小さくなっていることに留意する必要がある。
【0079】
すなわち、この場合、矢印F2の側からの蒸着の際には、隣接するC字型の突起15において、上流側の突起が下流側の突起の陰となる傾向が強まるため、側面12dにおける電磁波共振体12の長さを、側面12cにおける電磁波共振体12の長さに比べて短くできる。
【0080】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、電磁波は、電波の波長領域における電磁波(10mmを超える波長を有する電磁波)、ミリ波・テラヘルツ波における電磁波(100μmを超えるかつ10mm以下)、赤外線の波長領域における電磁波(780nmを超える且つ100μm以下の波長を有する電磁波)、可視光の波長領域における電磁波(380nmを超える且つ780nm以下)、及び紫外線の波長領域の電磁波(10nmを超える且つ380nm以下)の波長を有する電磁波のいずれであってもよい。
【0081】
また、電磁波共振体12は、一種のLC回路を構成する形状を有するものである。
図1(b)に示すように、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、電磁波共振体12の形状は、「C字型」または「逆U字型」の形状である。このように、電磁波共振体12の形状は、電磁波共振体12がキャパシタンスを有するように、ギャップを介した互いに対向する面を有する。
【0082】
例えば、
図1(b)に示す電磁波共振体12が「逆U字型」の形状の場合、「逆U字型の電磁波共振体12」の両方の端部の間にギャップを有する。また、電磁波共振体12の形状は、電磁波共振体12がインダクタンスを有するように、伝導電流及び変位電流がループを形成することが可能な構造を有する。
図1(b)に示す電磁波共振体12は、「逆U字型」の一方の端部から他方の端部までを流れる伝導電流及び「逆U字型」の両方の端部の間のギャップに発生する変位電流がループを形成できる構造を有する。
【0083】
図1(b)に示す電磁波共振体12は、「C字型」または「逆U字型」の形状を有するもの(Split Ring Resonator(SRR))であるが、他の形状の電磁波共振体として、例えば、日本国特開2006−350232号公報等に開示されたような、互いに反対側に開口部を有する二つのU字状部の組み合わせの形状を有する電磁波共振体を用いてもよい。
【0084】
「C字型」または「逆U字型」の電磁波共振体は、周波数が高くなるにつれて、磁気的共振と電気的共振を起こし、それぞれの共振周波数の直後の高周波数帯で透磁率と誘電率が負の値をとる。このとき、電磁波共振体が対称な形状の場合には、誘電率と透磁率がそれぞれ負となる周波数は異なる。
【0085】
しかし、本発明者らは、電磁波共振体がSRRの場合の態様として、「逆U字型」の場合、「逆U字型の電磁波共振体」が有する2つの端部のうち、片方を他方に比べて長く、非対称にすることで特定の周波数帯で、誘電率と透磁率の両方を負の値とし、負の屈折率が実現できることを見出した。
【0086】
すなわち、「逆U字型」の電磁波共振体の片側の端部の長さを、他方に比べて長くすることによって、電気的共振の周波数を低い周波数にシフトさせることができる。したがって、片側の端部の長さを調整することによって、透磁率、誘電率ともに同じ周波数帯で負の値を持たせることが可能となり、同じ周波数帯で負の屈折率を実現できる。
【0087】
同様に、「C字型」の場合、「C字型の電磁波共振体」が有する側面において、対向する2つの部分のうち、片方を他方に比べて長く、非対称にすることで、特定の周波数帯で、誘電率と透磁率を負の値とし、負の屈折率が実現できる。
【0088】
また、別の態様では、ナノインプリントによって、高さ、幅および/または奥行の異なる、複数の支持体を配置し、電磁波共振体の高さ、幅および/または奥行を変えることで、ある周波数帯の屈折率を負にできることを見出した。
【0089】
すなわち、本発明におけるメタマテリアルは、以下の特徴を有するメタマテリアルである。
【0090】
(i)複数の凸状部を有する支持体と、各凸状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記各凸状部は、上部および側部を有する突起で構成され、
前記上部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記突起の上部と、前記側部の少なくとも一部とに
配置されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体の前記突起以外の箇所には形成されておらず、
前記電磁波共振体は、前記支持体を側面から見たとき、各突起に、二つの端部を有する略逆U字型に形成されており、
前記側部の一つの面および該面と反対側の面において、前記電磁波共振体の高さ方向の寸法は異なることを特徴とするメタマテリアル。
【0091】
(ii)複数の凸状部を有する支持体と、各凸状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記各凸状部は、上部および側部を有する突起で構成され、
前記上部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記突起の上部と、前記側部の少なくとも一部とに
配置されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体の前記突起以外の箇所には形成されておらず、
前記複数の凸状部を構成する各突起は、水平方向の断面が略C字型となるように形成され、略C字型の上部と、略角柱状の側部とを有し、
前記電磁波共振体は、前記突起の前記上部と前記側部の少なくとも一部とに形成されており、
前記側部の一つの面および該面と反対側の面において、前記電磁波共振体の高さ方向の寸法は異なることを特徴とするメタマテリアル。
【0092】
(iii)複数の凸状部を有する支持体と、各凸状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記各凸状部は、上部および側部を有する突起で構成され、
前記上部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記突起の上部と、前記側部の少なくとも一部とに
配置されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体の前記突起以外の箇所には形成されておらず、
前記側部の一つの面および該面と反対側の面において、前記電磁波共振体の高さ方向の寸法は異なっており、
少なくとも2つの突起は、相互に相似形状となっており、
前記少なくとも2つの突起に配置されたそれぞれの電磁波共振体は、相似形状のまま、寸法が実質的に異なっていることを特徴とするメタマテリアル。
【0093】
(iv)複数の凹状部を有する支持体と、前記凹状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記凹状部は、底部および側部を有するくぼみで構成され、
前記底部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記くぼみの底部と、前記側部の少なくとも一部とに蒸着されており、
前記電磁波共振体は、前記支持体を側面から見たとき、各くぼみに、二つの端部を有する略U字型に形成されており、
各端部の長さは異なることを特徴とするメタマテリアル。
【0094】
(v)複数の凹状部を有する支持体と、前記凹状部に配置された、電磁波に対して共振する電磁波共振体とを含むメタマテリアルであって、
前記凹状部は、底部および側部を有するくぼみで構成され、
前記底部は、単一の平坦面、段差を有する複数の面、または頂点を有する曲面で構成され、
前記電磁波共振体を形成する材料は、前記くぼみの底部と、前記側部の少なくとも一部とに蒸着されており、
少なくとも2つのくぼみは、相互に相似形状となっており、
前記少なくとも2つのくぼみに配置されたそれぞれの電磁波共振体は、相似形状のまま、寸法が実質的に異なっていることを特徴とするメタマテリアル。
【0095】
ここで、上記(i)および(iv)のメタマテリアルにおいて、「各端部の長さが異なる」とは、逆U字またはU字の頂点からそれぞれの端部までの長さが異なることを意味する。
【0096】
図15(a)〜(d)は、電磁波共振体の高さ、幅および奥行、すなわち大きさの異なる電磁波共振体の誘電率と透磁率の周波数依存性を説明する図である。
図15(a)と
図15(b)は、それぞれ、ある大きさAとそれとは別の大きさBの電磁波共振体(支持体の図示は省略)を説明する図である。
図15(c)と
図15(d)は、それぞれ、
図15(a)と
図15(b)の電磁波共振体の誘電率と透磁率の実部の周波数依存性を示す図である。誘電率は、
図15(a)と
図15(b)の電磁波共振体において、それぞれ、ε
1、ε
2とする。透磁率は、
図15(a)と
図15(b)の電磁波共振体において、それぞれ、μ
1、μ
2とする。
【0097】
図15(a)に示された、ある大きさAの電磁波共振体では、誘電率ε
1が負になる周波数帯と透磁率μ
1が負になる周波数帯は一般には異なる。
【0098】
しかし、上述の大きさAを有する電磁波共振体において、
図15(c)に示されるように誘電率が負になる周波数帯ω
12で、透磁率が負になる別の大きさBの電磁波共振体とを組み合わせることで、周波数帯ω
12の屈折率を負(電磁波共振体Aの誘電率ε
1と電磁波共振体Bの透磁率μ
2が共に負)にできる。
【0099】
例えば、誘電率と透磁率を制御し、屈折率を負にできると、その応用として、レンズを作製した場合に、回折限界を超えて光を絞り込むことができ、波長オーダーを下回る物体を光学的な像として認識できる。また、誘電率と透磁率を制御し、屈折率を負にできると、その物質を用いたシートで物体を包み込んだときに、電磁波が前記シートを通って物体迂回する透明マントやクローキングといった現象が可能となる。
【0100】
電磁波共振体12の材料は、金属または導電性化合物などの導電性の材料が好ましい。導電性の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、または金のような金属、グラフェン等の低抵抗のカーボン、ITO、ZnO、SnO
2などの酸化物透明導電膜が挙げられる。また、電磁波共振体12の材料は、誘電体であってもよい。誘電体としては、例えば、SiO
2(比誘電率:3.7)、Ta
2O
5(比誘電率:29)、またはBaTiO
3(比誘電率:100)などが挙げられる。
【0101】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、電磁波共振体12の材料は、誘電体である。この場合には、電磁波共振体12を含むメタマテリアル13を通過する高周波の電磁波の損失を低減できる。
【0102】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、電磁波共振体12の材料は、導電性の材料である。この場合には、後述するような、電磁波共振体12によって形成される反抗磁場が、より強いものであるため、メタマテリアル13の比透磁率、屈折率、及び分散をより有効に制御できる。
【0103】
次に、電磁波共振体12の作用を説明する。電磁波共振体12に、電磁波共振体の共振周波数の電磁波が入射すると、時間と共に周期的に変動する電磁波の磁場は、ファラデーの電磁誘導の法則に従って、電磁波共振体12に伝導電流及び変位電流を生じさせると考えられる。このとき、電磁波共振体12に生じる伝導電流及び変位電流は、ファラデーの電磁誘導の法則に従って、時間と共に周期的に変動する電磁波の磁場を弱めるようなものと考えられる。そして、電磁波共振体12に生じた伝導電流及び変位電流は、アンペールの法則に従って、電磁波共振体12に入射した電磁波の磁場を弱める反抗磁場を形成すると考えられる。その結果、電磁波共振体12は、電磁波共振体12の共振周波数の電磁波に対するメタマテリアル13の比透磁率を変化させると考えられる。また、電磁波共振体12の共振周波数の電磁波に対するメタマテリアル13の屈折率は、電磁波共振体12の共振周波数の電磁波に対するメタマテリアル13の比透磁率に依存する。このため、電磁波共振体12は、電磁波共振体12の共振周波数の電磁波に対するメタマテリアル13の屈折率(分散)を変化させると考えられる。
【0104】
また、電磁波共振体12に入射した電磁波の磁場のエネルギーは、電磁波共振体12によって形成された反抗磁場によって低減されるため、電磁波共振体12は、共振周波数の電磁波のエネルギーの少なくとも一部を吸収することになると考えられる。このように、ある特定の周波数(電磁波共振体の共振周波数)の電磁波に対する電磁波共振体12の共振の性質を、ある特定の周波数における電磁波共振体の形状に起因する電磁波の吸収によって、評価できる。
【0105】
次に、ある特定の周波数の電磁波に対する電磁波共振体12の共振の性質を評価する方法を説明する。
【0106】
図2(a)〜(c)は、ある特定の周波数の電磁波に対する電磁波共振体の共振の性質を評価する方法を説明する図である。
図2(a)は、ある特定の周波数の電磁波に対する電磁波共振体の共振の性質を評価する装置を説明する図である。
【0107】
図2(a)に示すように、電磁波共振体12を含む試料22の共振の性質を評価する装置21は、光源23、偏光板24、及び分光光度計25を含む。装置21において、光源23は、無偏光の白色光を発生する。光源23から発生した無偏光の白色光は、偏光板24を通過する。偏光板24を通過した白色光は、直線偏光である。次に、直線偏光の白色光は、試料22に入射する。試料22に入射した直線偏光の白色光のうち共振周波数の直線偏光が、試料22に含まれる電磁波共振体12と共振すると、共振周波数の直線偏光は、試料22に含まれる電磁波共振体12によって吸収される。そこで、分光光度計25を用いて白色光における様々な波長に対する試料22を通過した直線偏光の吸光度を測定する。
【0108】
次に、電磁波共振体12に代えて、電磁波共振体12の材料と同一の材料で作られた(実質的に)球状の粒子を用いて、同様にして、直線偏光の波長に対する試料22における粒子の吸光度を得る。そして、試料22における電磁波共振体12の吸光度及び試料22における粒子の吸光度の間に有意な差が観察される場合には、電磁波共振体12は、電磁波に対して単純な粒子とは異なる共振する電磁波共振体であると判断される。
【0109】
さらに、
図2(a)に示される装置21を用いて、試料に電磁波共振体がランダムに配置されているか、規則的に配列されているか、を調べることもできる。装置21は、好ましくは、試料22を回転させる手段及び偏光板24を回転させる手段の少なくとも一方を有する。
【0110】
まず、電磁波共振体を含む試料について波長を切り換えて吸光度を測定した後、吸収のピークとなる波長を特定する。そして、光源23から発生する無偏光の白色光の波長をこの特定された波長に固定し、偏光板を回転させるか、または試料を回転させるかして、吸光度の変化を観察する。なお、試料22は、実線と破線とで示されるように回転させるほか、H方向にも回転させて吸光度の変化を観察する。偏光板24はH方向に回転させて、吸光度の変化を観察する。
図2(b)は偏光板を回転させた場合、
図2(c)は試料を回転させた場合、の電磁波共振体の吸光度の変化を説明する図である。
【0111】
試料22における電磁波共振体12が規則的に配列された場合には、試料22に含まれた電磁波共振体12に起因する直線偏光の吸光度は、直線偏光の方向と電磁波共振体の規則的な配列の方向との間の角度に依存する。このため、
図2(b)の実線に示すように、偏光板24を回転させると、試料22に含まれた電磁波共振体12に起因する光の吸光度は、変動する。また、
図2(c)の実線に示すように、試料22を回転させる手段によって試料22を回転させると、試料22に含まれた電磁波共振体12に起因する光の吸光度は、変動する。
【0112】
また、試料22における電磁波共振体12がランダムに配置された場合には、
図2(b)の点線に示すように偏光板を回転させても、試料22に含まれた電磁波共振体12に起因する光の吸収は偏光板の回転に依存しない。さらに、
図2(c)の点線に示すように、試料22を回転させる手段によって試料22を回転させても、試料22に含まれた電磁波共振体12に起因する光の吸光度は、試料22の回転に依存しない。
【0113】
図1(b)に示すような電磁波共振体12は、おおむねミリメートル以下のサイズを有する微細電磁波共振体であってもよい。この場合には、電磁波共振体12の共振周波数は、通常可視光の周波数の領域にある。このため、可視光の波長に対するメタマテリアル13の比透磁率/屈折率/分散を制御できる。
【0114】
図1(b)に示す本発明の第一の実施形態においては、電磁波共振体12は、メタマテリアル13において規則的に配置されている。しかしながら、電磁波共振体12は、メタマテリアル13において不規則に(ランダムに)配置されることもある。電磁波共振体12が、メタマテリアル13において不規則に(ランダムに)配置される場合には、例えば、電磁波の偏光の方向に対して等方性の物理的な性質(例えば、比透磁率、屈折率、分散など)を有するメタマテリアル13を提供できる。
【0115】
次に、支持体11に電磁波共振体12の材料を蒸着する方法としては、物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)が挙げられる。
【0116】
物理蒸着は、固体の原料を加熱することによって原料を気化させ、および気化した原料のガスを基板の表面に堆積させる手段であり、あるいはイオンや高エネルギーの粒子をターゲットに衝突させて、飛び出した粒子を基板の表面に堆積させる手段である。さらに、物理蒸着としては、真空蒸着、スパッタリングおよびイオンプレーティングなどが挙げられる。真空蒸着としては、例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着などが挙げられる。スパッタリングとしては、例えば、直流(DC)スパッタリング、交流(AC)スパッタリング、高周波(RF)スパッタリング、パルス化直流(DC)スパッタリング、マグネトロンスパッタリングなどが挙げられる。
【0117】
化学蒸着は、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積させる手段である。化学蒸着としては、例えば、熱CVD、光CVD、プラズマCVD、エピタキシャルCVDなどが挙げられる。
【0118】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、電磁波共振体12の形状に対応する形状を有する支持体11に電磁波共振体12の材料を蒸着する前後に特別な処理(エッチング、アッシング、リフトオフなど)をすることなく、支持体11に所定の形状を有する電磁波共振体12を形成できる。
【0119】
よって、本発明の第一の実施形態によれば、電磁波共振体12を含むメタマテリアル13をより容易に製造することが可能な、メタマテリアルの製造方法を提供できる。
【0120】
本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、電磁波共振体12の材料は、物理蒸着の手段によって蒸着される。この場合には、電磁波共振体12の材料の化学反応を用いることなく、支持体11に電磁波共振体12を設けることができる。その結果、支持体11により均一な電磁波共振体12を設けることができる。
【0121】
図1(b)に示すように、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、支持体11は、電磁波共振体12の形状に対応する平面を含む形状を有する凸部を備える。
【0122】
また、電磁波共振体12の材料は、支持体11の平面の法線に対して斜めの方向から支持体11に蒸着させることができる。
【0123】
例えば、電磁波共振体12の材料の供給源を支持体11の凸部の平面の法線に対して斜めの方向に配置する。そして、電磁波共振体12の材料の供給源から供給される電磁波共振体12の材料を支持体11の凸部の平面に蒸着する。
【0124】
この場合には、電磁波共振体12の材料の供給源の配置する方向を変えることで、支持体11の凸部の平面以外の支持体11の表面(側面など)における電磁波共振体12の材料の蒸着をコントロールすることができる。また、電磁波共振体12の材料を、異なる2以上の方向から支持体に蒸着させることもできる。
【0125】
(第二の実施形態)
図3(a)〜(b)は、本発明の第二の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法を説明する図である。
図3(a)は、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法におけるメタマテリアルを製造する装置を示す図である。
図3(b)は、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において製造されるメタマテリアルを示す図である。
【0126】
図3(a)〜(b)に示すような、本発明の第二の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、好ましくは、支持体32に設けられた電磁波に対して共振する電磁波共振体34を粘着性を有する材料33に転写する方法である。支持体32に設けられた電磁波共振体34は、例えば、本発明の第一の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における支持体11に設けられた電磁波共振体12であってもよい。
【0127】
粘着性を有する材料33は、粘弾性を有する材料であってもよい。粘弾性を有する材料としては、例えば、シリコーンゴムが挙げられる。
【0128】
支持体32に設けられた電磁波共振体34を粘着性を有する材料33に転写する方法としては、例えば、
図3(a)に示すように、メタマテリアルを製造する装置31を用いる。メタマテリアルを製造する装置31においては、加圧ローラー36を用いて、支持体32に設けられた電磁波共振体34に対して粘着性を有する材料33のシートを押し付ける。それによって、支持体32に設けられた電磁波共振体34を粘着性を有する材料33のシートに転写できる。その結果、
図3(b)に示すような、粘着性を有する材料33のシート及び当該シートに転写された電磁波共振体34を含むメタマテリアル35が得られる。
図3(a)に示すように、電磁波共振体34が転写された粘着性を有する材料33のシート(メタマテリアル35)は、巻き取られる。
【0129】
本発明の第二の実施形態によれば、粘着性を有する材料33のシート及び当該シートに転写された電磁波共振体34を含むメタマテリアル35を容易に製造できる。
【0130】
なお、支持体に電磁波共振体を設けること及び支持体から電磁波共振体を回収することを繰り返して又は連続的に行うことによって、電磁波共振体を含むメタマテリアルをより効率よく製造できる。更に、メタマテリアル35を積層した後に一体化することにより、バルク状のメタマテリアルを製造できる。
【0131】
本発明の第二の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、粘着性を有する材料33のシートは、電磁波共振体34の共振周波数の電磁波に対して透過性の材料である。この場合には、粘着性を有する材料33のシートから電磁波共振体34を回収することなく、粘着性を有する材料33のシート及び電磁波共振体34を含むメタマテリアル35それ自体を光学素子のような機能性の素子として使用できる。
【0132】
(第三の実施形態)
図4は、本発明の第三の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法を説明する図である。
【0133】
図4に示すように、本発明の第三の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、電磁波に対して共振する電磁波共振体42が転写された粘着性を有する材料41を溶融させることによって、溶融した粘着性を有する材料41に電磁波共振体42を分散させること、及び、電磁波共振体42が分散させられた溶融した粘着性を有する材料41を固化させることを含む。
【0134】
本発明の第三の実施形態によれば、固化した粘着性を有する材料41に電磁波共振体42が分散させられたメタマテリアルをより容易に製造できる。
【0135】
また、本発明の第三の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、粘着性を有する材料41は、好ましくは、熱可塑性樹脂のシートである。ヒーター43などを使用することによって、電磁波共振体42が転写された熱可塑性樹脂のシートを加熱する。このように熱可塑性樹脂のシートを溶融させることによって、溶融した熱可塑性樹脂に電磁波共振体42を分散できる。その後、電磁波共振体42が分散させられた溶融した熱可塑性樹脂を冷却することによって、熱可塑性樹脂を固化する。その結果、熱可塑性樹脂に電磁波共振体42が分散させられたメタマテリアルが得られる。
【0136】
さらに、電磁波共振体42が転写された熱可塑性樹脂のシートを加熱するとき、電磁波共振体42が分散させられた溶融した熱可塑性樹脂を混練してもよい。この場合には、溶融した熱可塑性樹脂に電磁波共振体42をランダムに分散できる。その後、電磁波共振体42がランダムに分散させられた溶融した熱可塑性樹脂を冷却することによって、熱可塑性樹脂を固化する。その結果、熱可塑性樹脂に電磁波共振体42がランダムに分散したメタマテリアルが得られる。
【0137】
(第四の実施形態)
図5(a)〜(b)は、本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法を説明する図である。
図5(a)は、本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法の第一のステップを示す図である。
図5(b)は、本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法の第二のステップを示す図である。
図5(b)に示すように、電磁波共振体を支持体から分離してもよい。分離の際は、液体中で行っても良い。
【0138】
図5(a)〜(b)に示すような、本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、電磁波に対して共振する電磁波共振体52が転写された粘着性を有する材料51を誘電体53に浸漬させることによって、電磁波共振体52を粘着性を有する材料51から脱離させると共に誘電体53に分散させることを含む。ここで、誘電体は液体状であることが好ましい。また、誘電体が樹脂等である場合、電磁波共振体が充分に分散できる粘度であればそのまま使用できる。さらに、溶融して粘度を下げて使用できる。
【0139】
本発明の第四の実施形態によれば、誘電体53に電磁波共振体52が分散させられたメタマテリアルを容易に製造できる。
【0140】
誘電体53は、好ましくは、粘着性を有する材料51を溶解させることが可能な溶媒である。誘電体53として溶媒を用いることにより、粘着性を有する材料51の溶液を得ることが可能になる。このような溶媒としては、アルコール類、トルエンやテトラデカン等の炭化水素類、などの有機溶媒が挙げられる。
【0141】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、誘電体53は、電磁波共振体52の分散性を向上させる分散剤を含む。分散剤は、電磁波共振体52の電荷を制御する電荷制御剤であることもある。
【0142】
例えば、電磁波共振体52の材料が、金属の材料である場合には、分散剤は、好ましくは、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子のような非共有電子対を有するヘテロ原子を含有する化合物である。例えば、国際公開第2004/110925号及び日本国特開2008−263129号公報に記載される分散剤が挙げられる。
【0143】
また、例えば、電磁波共振体52の材料が、誘電体である場合には、分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸、アミン類、チオール類、アミノ酸、又は糖類などが挙げられる。
【0144】
誘電体53が、電磁波共振体52の分散性を向上させる分散剤を含む場合には、誘電体53における電磁波共振体52の凝集を低減できる。その結果、誘電体53に電磁波共振体52がより均一に分散したメタマテリアルが得られる。
【0145】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、電磁波共振体を、固化後に電磁波に対して透明な誘電体となる材料からなる液体、または固化後に電磁波に対して透明な誘電体となる材料を含む液体に、分散した後に固化させることが好ましい。ここで、固化後に電磁波に対して透明な誘電体となる材料としては、後述する硬化性樹脂やガラスを挙げることができる。なお、固化後に電磁波に対して透明な誘電体となる材料が硬化性樹脂である場合、固化後とは硬化後を意味する。
【0146】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、誘電体53は、硬化性成分である。
【0147】
誘電体53が、硬化性成分である場合には、誘電体53を硬化させることが可能になる。その結果、誘電体53に電磁波共振体52が分散したメタマテリアルを硬化できる。
【0148】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、好ましくは、電磁波共振体52が分散させられた硬化性成分を硬化させることを含む。このためには、硬化性成分に光を照射するか又は加熱する。その結果、硬化性成分を硬化させることによって得られる硬化物に電磁波共振体52が分散したメタマテリアルが得られる。
【0149】
硬化性の成分としては、重合反応により硬化して硬化物となるような成分であればよく、ラジカル重合型の硬化性樹脂、カチオン重合型の硬化性樹脂、ラジカル重合型の硬化性化合物(モノマー)が特に制限なく使用できる。これらは、光硬化性であっても熱硬化性であってもよく、光硬化性であることが好ましい。
【0150】
ラジカル重合型の硬化性樹脂としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイル基、アリルオキシ基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基等の炭素−炭素不飽和二重結合を有する基を有する樹脂が挙げられる。当該樹脂としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を側鎖に有するアクリル系重合体等が挙げられる。
【0151】
カチオン重合型の硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3'4'−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートが挙げられる。
【0152】
ラジカル重合型の硬化性化合物(モノマー)としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、(メタ)アクリロイル基、アリルオキシ基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基等の炭素−炭素不飽和二重結合を有する基を有する化合物等が挙げられる。なお、炭素−炭素不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。これら化合物における炭素−炭素不飽和二重結合の数は特に制限されず、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0153】
これらの硬化性化合物としては、フルオロ(メタ)アクリレート類、フルオロジエン類、フルオロビニルエーテル類、フルオロ環状モノマー類、モノヒドロキシ化合物の(メタ)アクリレート類、ポリヒドロキシ化合物のモノ(メタ)アクリレート類、およびポリエーテルポリオールを用いて得られるウレタン(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは単独で使用するほか、これらから選ばれる1種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。なお、これらの硬化性成分は、適切な重合開始剤を含むことが好ましい。
【0154】
硬化性成分が、光硬化性の成分である場合には、誘電体53に光を照射することによって、誘電体53をより容易に硬化させることが可能になる。その結果、誘電体53に電磁波共振体52が分散したメタマテリアルをより容易に硬化できる。
【0155】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、硬化性成分を硬化させることによって得られる硬化物樹脂は、電磁波に対して透過性である。
【0156】
この場合には、硬化性の成分を硬化させることによって得られる樹脂及び電磁波共振体52を含むメタマテリアルそれ自体を光学素子のような機能性の素子として使用できる。
【0157】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、誘電体53は、ガラスである。
【0158】
誘電体53が、ガラスである場合には、ガラスに電磁波共振体52が分散したメタマテリアルを提供できる。
【0159】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、好ましくは、電磁波共振体52が分散させられた、溶融状態のガラスの原料を固化させることを含む。これは、ガラスの原料に電磁波共振体を分散させた後にガラス原料を溶融させ、ついで冷却することによって、または溶融されたガラス原料に電磁波共振体を分散させ、ついで冷却することによって実施できる。
【0160】
この場合には、ガラスの原料を固化することによって得られたガラスに電磁波共振体52が分散したメタマテリアルを提供できる。
【0161】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、ガラスは、低融点ガラス、リン酸ガラスである。低融点ガラスは、550℃以下に屈服点を有するガラスである。低融点ガラスとしては、例えば、日本国特開2007−269531号公報に記載される鉛フリー低融点ガラスが挙げられる。
【0162】
ガラスが、低融点ガラスである場合には、相対的に低い温度でガラスの原料を溶融できる。そのため、相対的に低い温度でガラスに電磁波共振体52が分散したメタマテリアルを提供できる。
【0163】
そして、溶融状態の低融点ガラスの原料を冷却すると、低融点ガラスに電磁波共振体52が分散したメタマテリアルを提供できる。
【0164】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、好ましくは、電磁波共振体52を誘電体53に分散させることによって電磁波に対して共振する電磁波共振体52を含むゾルを得る。
【0165】
この場合には、誘電体53に電磁波共振体52が分散したゾルのメタマテリアルを提供できる。
【0166】
本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、好ましくは、電磁波に対して共振する電磁波共振体を含むゾルを固化させることを含む。この場合には、誘電体53に電磁波共振体52が分散したゲルのメタマテリアルを提供できる。
【0167】
電磁波に対して共振する電磁波共振体を含むゾルを固化させるためには、例えば、電磁波に対して共振する電磁波共振体を含むゾルを加熱する。ここで、ゾルを固化させるとは、ゾルを単に固化させてゲルとすることのほか、ゾルを得るための原料が反応性を有する場合は、反応を伴って硬化することも含む。たとえば、ゾルを得るための原料が後述するアルコキシシラン類等の場合は、加水分解縮合重合反応によってアルコキシシラン類が硬化する反応により、電磁波共振体52が分散したゲルのメタマテリアルが提供できる。
【0168】
ゾルを得るための原料は、特に限定されるものではないが、金属アルコキシド類、酸や塩基等の触媒、および溶媒を含む混合物が挙げられる。金属アルコキシド類としては、テトラエトキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトライソプロピルオキシチタニウム等が挙げられる。
【0169】
なお、本発明の第四の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法は、電磁波共振体52が分散させられた誘電体53を繊維に含浸させる方法であってもよい。この場合には、電磁波共振体52及び誘電体53が含浸させられた繊維のメタマテリアルを提供できる。
【0170】
(第五の実施形態)
図6(a)〜(d)は、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法を説明する図である。
図6(a)は、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における支持体を説明する図である。
図6(b)は、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における第一のステップを説明する図である。
図6(c)は、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における第二のステップを説明する図である。
図6(d)は、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における電磁波共振体を説明する図である。
【0171】
まず、
図6(a)に示すように、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、例えば、ナノインプリントの方法を用いて、電磁波共振体を支持するための支持体61を作製する。
図6(a)に示すような支持体61は、電磁波共振体の微細なギャップが設けられた二枚の平板の形状に対応する、相互に対して段差を有する二つの平面の形状を有する。支持体61は、例えば、フッ素系樹脂からなる。
【0172】
次に、
図6(b)に示すように、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、例えば、物理蒸着の手段を用いて、電磁波共振体63の形状に対応する形状を有する支持体61に、誘電体62を蒸着する。ここで、誘電体62を供給する供給源は、支持体61の二つの平面及び二つの平面の間における段差の平面に面する側に配置される。そして、前記供給源から供給される誘電体62を、少なくとも支持体61の二つの平面及び二つの平面の間における段差の平面に蒸着する。ここで、誘電体62は、支持体61の二つの平面の法線に対して斜めの方向から支持体61に向かって供給される。このようにして、少なくとも支持体61の二つの平面及び二つの平面の間における段差の平面を覆う連続的な誘電体62の膜が設けられる。誘電体62の膜は、支持体61の二つの平面の形状に対応する二つの平面の形状を有する。
【0173】
次に、
図6(c)に示すように、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、例えば、物理蒸着の手段を用いて、支持体61に設けられた誘電体62の膜に電磁波共振体63の材料を蒸着する。ここで、電磁波共振体63の材料を供給する供給源は、支持体61の二つの平面及び二つの平面の間における段差の平面に面する側と反対側に配置される。そして、前記供給源から供給される電磁波共振体63の材料を、少なくとも誘電体62の膜の二つの平面に蒸着する。ここで、電磁波共振体63の材料は、誘電体62の膜の二つの平面の法線に対して斜めの方向から誘電体62の膜に向かって供給される。その結果、電磁波共振体63の材料は、誘電体62の膜の二つの平面に蒸着されるが、支持体61の段差の平面付近の誘電体62の膜の部分には、蒸着されない。このようにして、支持体61に設けられた連続的な誘電体62の膜に、微細なギャップが設けられた二枚の平板の形状を有する電磁波共振体63が形成される。
【0174】
すなわち、支持体61、誘電体62の膜、及び電磁波共振体63を含むメタマテリアルを製造できる。
【0175】
このように、
図6(b)及び
図6(c)に示すような、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、支持体61に電磁波共振体63の材料を蒸着することは、支持体61に誘電体62を蒸着すること、及び、誘電体62に電磁波共振体63の材料を蒸着することを含む。
【0176】
例えば、
図6(d)に示すような、誘電体62の膜及び導電性の材料からなる電磁波共振体63の積層体を提供できる。
【0177】
この場合には、
図6(d)に示すように、誘電体62及び電磁波共振体63を含むメタマテリアルを提供できる。また、電磁波共振体63が、複数の構成部分からなるものであるときでも、誘電体62によって電磁波共振体63の複数の構成部分を統合できる。
【0178】
また、
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)に示すように、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、支持体61は、電磁波共振体63の形状に対応する平面を含む形状を有する一方で、誘電体62は、支持体61の平面の法線に対して第一の斜めの方向から支持体61の平面に蒸着されると共に、電磁波共振体63の材料は、支持体61の平面の法線に対して第一の斜めの方向と反対の方向である第二の斜めの方向から誘電体62に蒸着される。
【0179】
この場合には、支持体61の平面に誘電体62を蒸着する条件及び誘電体62に電磁波共振体63の材料を蒸着する条件を調整することによって、誘電体62及び電磁波共振体63を備える様々なメタマテリアルを提供できる。
【0180】
ここで、
図6(d)に示すような電磁波共振体63は、一種のLC回路を構成する形状を有するものである。
図6(d)に示すように、本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、電磁波共振体63の形状は、微細なギャップが設けられた二枚の平板の形状である。このように、電磁波共振体63の形状は、電磁波共振体63がキャパシタンスを有するように、ギャップを介した二枚の平板の形状を有する。
図6(d)に示す電磁波共振体63は、誘電体62によって保持される二枚の平板の間にギャップを有する。また、電磁波共振体63の形状は、電磁波共振体63がインダクタンスを有するように、伝導電流及び変位電流がループを形成できる構造を有する。
図6(d)に示す電磁波共振体63は、一方の平板を流れる半ループ状の伝導電流、他方の平板を流れる半ループ状の伝導電流、及び二枚の平板の間におけるギャップに発生すると共に二枚の平板を流れる半ループの伝導電流に結合する変位電流が、ループを形成できる構造を有する。
【0181】
電磁波共振体63の材料は、金属又は導電性化合物などの導電性の材料であってもよく、また、誘電体であってもよい。本発明の第五の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、電磁波共振体63の材料は、誘電体である。この場合には、電磁波共振体63を含むメタマテリアルを通過する高周波の電磁波の損失を低減できる。
【0182】
図6(d)に示すような電磁波共振体63は、概ねミリメートル以下のサイズを有する微細電磁波共振体であってもよい。この場合には、電磁波共振体63の共振周波数は、通常可視光の周波数の領域にある。このため、可視光の波長に対するメタマテリアルの比透磁率、屈折率および分散を制御できる。
【0183】
図6(c)に示す本発明の第五の実施形態においては、電磁波共振体63は、支持体61に規則的に配置されている。しかしながら、
図6(d)に示すように、電磁波共振体63は、メタマテリアルおいて不規則に(ランダムに)配置されることもある。電磁波共振体63が、メタマテリアルにおいて不規則に(ランダムに)配置される場合には、例えば、電磁波の偏光の方向に対して等方性の物理的な性質(例えば、比透磁率、屈折率、分散など)を有するメタマテリアルを提供できる。
【0184】
(第六の実施形態)
図7(a)〜(e)は、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法を説明する図である。
図7(a)は、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における支持体を説明する図である。
図7(b)は、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における第一のステップを説明する図である。
図7(c)は、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における第二のステップを説明する図である。
図7(d)は、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法における第三のステップを説明する図である。
図7(e)は、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法におけるメタマテリアルを説明する図である。
【0185】
まず、
図7(a)に示すように、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、例えば、ナノプリントの方法を用いて、電磁波共振体を支持するための支持体71を作製する。
図7(a)に示すような支持体71は、逆U字型の電磁波共振体の曲面形状に対応する、略逆U字型の凸状曲面形状を有する。支持体71は、例えば、フッ素系樹脂からなる。
【0186】
次に、
図7(b)に示すように、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、例えば、物理蒸着の手段を用いて、電磁波に対して共振する電磁波共振体72の形状に対応する形状を有する支持体71に電磁波共振体72の材料を蒸着する。ここで、電磁波共振体72の材料を供給する供給源は、支持体71の平面に対して斜めの方向である第一の方向の側に配置される。そして、前記供給源から供給される、電磁波共振体72の材料を、支持体71の略逆U字型の凸状曲面の第1の部分に蒸着する。このようにして、支持体71の略逆U字型の凸状曲面の第1の部分に、電磁波共振体72の一部分が設けられる。
【0187】
次に、
図7(c)に示すように、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、例えば、物理蒸着の手段を用いて、電磁波共振体72の形状に対応する形状を有する支持体71に、電磁波共振体72の材料を蒸着する。ここで、電磁波共振体72の材料を供給する供給源は、支持体71の平面に対して斜めの方向である第二の方向の側に配置される。なお、第二の方向は、第一の方向とは異なる方向である。そして、前記供給源から供給される電磁波共振体72の材料を、支持体71の略逆U字型の凸状曲面の第2の部分に蒸着する。このようにして、支持体71の略逆U字型の凸状曲面の第2の部分に、電磁波共振体72が設けられる。なお、第1の部分および第2の部分は、部分的に重なっていても良い。
【0188】
結果として、支持体71及び支持体71の略逆U字型の凸状曲面の全体を覆う電磁波共振体72を含むメタマテリアルを製造できる。この際、支持体の突起の位置を斜め蒸着する方向との関係から、支持体の一部にのみ蒸着され、突起の根元および底面には蒸着物は付かなくできる点がこの方法の生産性に優れる点である。すなわち、共振機能を発現する電磁波共振体の部分のみに蒸着物が付くために、従来のリソグラフィーで用いられるエッチングの工程が不要となり、生産性を飛躍的に向上できる。
【0189】
このように、
図7(b)及び
図7(c)に示すような、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、電磁波共振体72の材料は、第一の方向及び第一の方向と異なる第二の方向から支持体71に蒸着される。
【0190】
例えば、支持体71に対する電磁波共振体72の材料の供給源の位置及び/又は角度を変化させることによって、電磁波共振体72の材料を、第一の方向及び第一の方向と異なる第二の方向から支持体71に蒸着する。
【0191】
この場合には、第一の方向及び第二の方向をより適切に選択することによって、支持体71に電磁波共振体72の材料をより精密に蒸着できる。
【0192】
ここで、
図7(c)に示すような電磁波共振体72は、一種のLC回路を構成する形状を有するものである。
図7(c)に示すように、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、電磁波共振体72は、「逆U字型」の形状を有する。
図7(c)に示す「逆U字型の電磁波共振体」72は、「逆U字型」の曲面の両方の端部の間にギャップを有する。また、電磁波共振体72の形状は、電磁波共振体72がインダクタンスを有するように、伝導電流及び変位電流がループを形成することが可能な構造を有する。
図7(c)に示す電磁波共振体72は、「逆U字型」の曲面の一方の端部から他方の端部までを流れる伝導電流及び略逆U字の両方の端部の間のギャップに発生する変位電流がループを形成できる構造を有する。
【0193】
電磁波共振体72の材料は、金属又は導電性化合物などの導電性の材料であってもよく、また、誘電体であってもよい。本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法において、好ましくは、電磁波共振体72の材料は、誘電体である。この場合には、電磁波共振体72を含むメタマテリアルを通過する高周波の電磁波の損失を低減できる。
【0194】
図7(c)に示すような電磁波共振体72は、おおむねミリメートル以下のサイズを有する微細電磁波共振体であってもよい。この場合には、通常、電磁波共振体72の共振周波数が、可視光の周波数の領域にある。このため、可視光の波長に対するメタマテリアルの比透磁率/屈折率/分散を制御できる。
【0195】
図7(c)に示す本発明の第六の実施形態においては、電磁波共振体72は、支持体71に規則的に配置されている。しかしながら、電磁波共振体72は、メタマテリアルにおいて不規則に(ランダムに)配置されることもある。電磁波共振体72が、メタマテリアルにおいて不規則に(ランダムに)配置される場合には、例えば、電磁波の偏光の方向に対して等方性の物理的な性質(例えば、比透磁率、屈折率、分散など)を有するメタマテリアルを提供できる。
【0196】
次に、本発明の第六の実施形態に係るメタマテリアルを製造する方法においては、例えば、
図7(d)に示すように、支持体71に設けられた電磁波共振体72に硬化性樹脂73を接触させると共に硬化性樹脂73を硬化させる。
【0197】
次に、
図7(e)に示すように、硬化性樹脂73を硬化させることによって得られた樹脂の硬化体74から支持体71を除去する。その結果、樹脂の硬化体74に、凹状の電磁波共振体72が配置されたメタマテリアルを得ることが可能になる。このように、樹脂の硬化体74に、凹状の電磁波共振体72を転写することも可能である。
【0198】
図8は、本発明の実施形態によって製造されるメタマテリアルの例を説明する図である。
図8に示すメタマテリアル81は、樹脂の硬化体82及び電磁波共振体83からなる光学素子である。
図8に示すメタマテリアル81は、レンズである。メタマテリアル81において、電磁波共振体83は、樹脂の硬化体82に不規則に(ランダム)に分散されている。このため、メタマテリアル81は、例えば、電磁波の偏光の方向に対して等方性の物理的な性質(例えば、比透磁率、屈折率、分散など)を有するレンズである。また、樹脂の硬化体82に分散させられる電磁波共振体83を適宜設計することによって、調整された等方的な物理的な性質(例えば、比透磁率、屈折率、分散など)を有するレンズを提供できる。
【実施例】
【0199】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0200】
(実施例1)
以下の方法で、メタマテリアルを作製した。
【0201】
まず、穴構造を有する石英ガラスのモールドを用い、ナノインプリント装置を用いて、フッ素系UV光硬化樹脂(旭硝子株式会社製、NIF−A−2)に、突起構造を転写した。フッ素系UV硬化樹脂の各突起は、断面が100nm×100nmであり、高さが約400nmのピラー状とした。
【0202】
次に、得られたUV光硬化樹脂製の突起構造に、斜め2方向からアルミニウムを蒸着し、メタマテリアルを作製した。
【0203】
図9には、メタマテリアルのTEM観察写真を示す。
【0204】
写真において、黒っぽく観察される逆U字型の部分が、アルミニウム製の電磁波共振体に相当する。
【0205】
図10は、
図9の電磁波共振体と同じ製作方法で作製した試料と、フッ素系UV光硬化樹脂(旭硝子株式会社製、NIF−A−2)をナノインプリントを行って、アルミニウムの蒸着は行わなかった試料について、偏光方向を90度変化させて吸光度を測定した結果である。アルミニウム蒸着を行った試料で、電磁波共振体を磁場が貫く方向で光を入射した場合に、中心波長が約1400nmで共鳴吸収が観測でき、その波長領域で機能する構造ができたことを確認した。
【0206】
図11は、
図9の電磁波共振体作製と同じ製作方法で共振器構造を作製するにあたり、
図12に示す様にアルミニウムの斜め蒸着を、蒸着角度を変化させて行った際の透過スペクトルを示す。図中の凡例は、斜め蒸着の角度として、UV硬化樹脂の転写した面に対して垂直に蒸着する場合を0度とした場合、例えば、41−60の標記であれば、41度の方向から先ず斜め蒸着し、次にその角度とは反対方向から60度で斜め蒸着を行ったことを意味する。
図11内の矢印で示すように、斜め蒸着の角度を変えることにより、共鳴吸収の帯域を変化できることが分かる。尚、41−60の曲線の共鳴吸収の帯域は、他の曲線の形状と関係性から、本グラフの更に長波長側に現れるものと予測される。
【0207】
図13(a)〜(c)は、「C字型の電磁波共振体」のうち、片側の側面の長さを対向する側よりも長くすることによって、透磁率、誘電率ともに同じ周波数帯で負の値を持たせた電磁波共振体を、3次元電磁界解析により解析した際に使用したユニットセルである。解析結果はこのユニットセルがx方向とy方向に無限に周期配列した電磁波共振体に対するものである。
【0208】
実施した解析の例として、131の導体をアルミニウムとし、132の支持体を比誘電率2の誘電体とした。入射した電磁波は、平面波で、z面に垂直入射した。平面波の電界の方向をx方向、磁界の方向をy方向とした。電磁波共振体のそれぞれの寸法は、アルミニウムの幅W1=160nm、高さH=100nm、奥行きD1=173nm、D2=346nm、厚さT=30nm、支持体の奥行きD3=450nm、幅W2=100nm、C字型の電磁波共振体のギャップG1=40nm、G2=50nmである。解析した結果を
図14に示す。800〜1600nm付近で比誘電率と比透磁率がともに負の値を示していることがわかる。
【0209】
(実施例2)
次に示す手順で、電磁波共振体がグラフェンで形成されたメタマテリアルを製造した。
【0210】
(第1工程)
まず、表面に転写パターンを有するモールドと、縦20mm×横20mm×厚さ0.5mmの石英ガラス基板とを準備した。
【0211】
モールドは、石英ガラス製とし、転写パターンとして、
図16に示すものを使用した。
【0212】
図16(a)には、モールド160のパターン面162の正面図を示す。また、
図16(b)には、モールド160のA−A'線での断面図を示す。
【0213】
図16(a)、(b)において、正方形165は、四角柱状のピラー165を表しており、ピラー165の底面の一辺の長さaは、100nmであり、高さは300nmである。
【0214】
このようなモールドのパターンは、例えば、EB描画とドライエッチングなどを組み合わせた方法等により作製することができる。
【0215】
(第2工程)
次に、モールド160のパターン面162に、フッ素系UV光硬化樹脂(旭硝子株式会社製 NIF−A−2)を約2μmの厚さで塗布し、ナノインプリント装置を用いて、石英ガラス基板の5mm×5mmの領域に対して、モールド160を押し当てた。フッ素系UV光硬化樹脂が硬化した後、モールド160を取り外すことで、石英ガラス基板に、
図16に示した凹凸パターンとは逆の凹凸パターンを有する、UV光硬化樹脂で構成された突起構造を転写した。その後、酸素プラズマアッシング法により、石英ガラス基板のパターン形成面の、底面部分に付着した不要膜を除去し、突起のみを残留させた。
【0216】
(第3工程)
次に、スッパタ装置を用いて、石英ガラス基板のパターン面に、金属ニッケル膜を成膜した。スッパタリングは、石英ガラス基板のパターン面に対して垂直な方向から実施した。このため、金属ニッケル膜は、突起の上面と、石英ガラス基板の突起のない表面とに成膜された。
【0217】
その後、得られた石英ガラス基板を水酸化カリウム水溶液中に浸漬し、フッ素系UV光硬化樹脂をリフトオフで選択的に除去した。これにより、石英ガラス基板のパターン表面のうち、突起があった部分の表面が露出され、その他の部分がニッケル膜で形成された石英ガラス基板が得られた。
【0218】
さらに、SF
6をエッチングガスとして用い、RIE(Reactive Ionic Etching)装置により、ニッケル膜をマスクとして、石英ガラス基板のニッケル膜が形成されていない部分に対してエッチングを行った。これにより、最上面にニッケル膜を有する、縦100nm×横100nm×高さ350nmの柱状突起のパターンが形成された。その後、ニッケル膜のみを除去した。
【0219】
図17には、石英ガラス基板170の柱状突起のパターンを概略的に示す。石英ガラス基板170には、規則的配置で、複数のピラー175(石英ガラス基板170の残存部で構成される)が形成された。
【0220】
(第4工程)
次に、石英ガラス基板170の表面172に対して、異なる斜めの2方向からアルミニウムの蒸着を行った。これにより、各ピラー175に対して、アルミニウムを逆U字型に蒸着した。
【0221】
より具体的には、
図17の矢印F3に示すように、石英ガラス基板170の厚み方向とのなす角度θ=約70゜として、第1回目のアルミニウムの蒸着を行った。次に、
図17の矢印F4に示すように、石英ガラス基板の厚み方向とのなす角度θ=約−60゜となるようにして、第2回目のアルミニウムの蒸着を行った。
【0222】
図17に示す柱状突起175のパターン配置では、ピラー175に対して、矢印F3の方向および矢印F4の方向からから蒸着を行った際に、上流側にあるピラー175が陰となる上、陰の領域は、左右非対称になる。このため、各ピラー175において、逆U字型のアルミニウム蒸着膜は、左右の端部で異なる長さとすることができる。
【0223】
これにより、各ピラー175に、約30nmのアルミニウム膜が成膜された。このアルミニウム膜は、次に成膜するグラフェンに対する触媒として機能する。
【0224】
(第5工程)
次に、メタン、アルゴンおよび水素の混合ガスを用いて、CVD法により、各ピラー175に対して、グラフェン膜を成膜した。各ガスの流量は、メタン27SCCM、アルゴン18SCCM、水素9SCCMとした。また、成膜圧力は3Paとし、成膜温度は320℃とし、成膜時間は200秒とした。これにより、各ピラー175のアルミニウム膜上に、グラフェン膜が成膜された。
【0225】
(第6工程)
次に、得られた石英ガラス基板のパターン面に、エポキシ樹脂系UV光硬化樹脂(セメダイン社 エクセルエポ・透明タイプ)を約30μmの厚さで塗布し、その上から、撥液処理を行った第2の石英ガラス基板を押し付けた。さらに、フッ素系UV光硬化樹脂を紫外線により硬化させた。その後、第2の石英ガラス基板を取り外すことにより、アルミニウム膜およびグラフェン膜を有する石英ガラス基板と、フッ素系UV光硬化樹脂とからなる組立体を得た。
【0226】
(第7工程)
次に、5%のフッ化水素水溶液に組立体を浸漬させ、石英ガラス基板およびアルミニウム膜を選択的に溶解させることにより、グラフェン膜の凹パターンを有するフッ素系UV光硬化樹脂(メタマテリアル)を作製した。
【0227】
なお、平坦な20mm×20mm×0.5mmの石英ガラス基板上に、厚さ約30nmのアルミニウム膜を蒸着したサンプルを用いて、前述の工程(第5工程)〜(第7工程)を実施することにより、平坦なグラフェン膜を有する平坦なフッ素系UV光硬化樹脂(測定用サンプル)を作製した。
【0228】
また、この測定用サンプルを用いて、透過率測定およびシート抵抗測定を実施した。
【0229】
透過率測定の結果、波長400nmにおけるサンプルの透過率は、70%であり、波長800nmにおけるサンプルの透過率は、80%であった。また、シート抵抗は、10kΩ/sqであった。これらの値は、文献(Appl.Phys.Lett.,98,091592,2011年)に示された結果とほぼ同等の値であり、本方法によって、適正にグラフェン膜が形成されていることが確認できた。
【0230】
特に、上記方法によって得られたメタマテリアルは、可視光域で良好な透過性を有することが確認された。
【0231】
(実施例3)
次に示す手順で、電磁波共振体がグラフェンで形成されたメタマテリアルを製造した。
【0232】
(第1工程)
まず、表面に転写パターンを有するモールドと、縦20mm×横20mm×厚さ0.5mmのシリコン基板とを準備した。モールドには、実施例2と同様のものを使用した。ただし、モールドのパターンには、
図16に示すパターンにおいて、凹凸が反転したパターンを使用した。
【0233】
(第2工程)
次に、モールドのパターン面に、フッ素系UV光硬化樹脂(旭硝子株式会社製 NIF−A−2)を約3μmの厚さで塗布し、ナノインプリント装置を用いて、シリコン基板の5mm×5mmの領域に対して、モールドを押し当てた。フッ素系UV光硬化樹脂が硬化した後、モールドを取り外したところ、シリコン基板に突起構造が転写された。その後、酸素プラズマアッシング法により、シリコン基板のパターン形成面の、底面部分に付着した不要膜を除去し、硬化樹脂製の突起のみを残留させた。
【0234】
(第3工程)
次に、SF
6をエッチングガスとして用い、硬化樹脂製の突起をマスクとして、RIE(Reactive Ionic Etching)装置により、シリコン基板に対してエッチングを行った。なお、このエッチング処理により、硬化樹脂製の突起自身もエッチングされる。ただし、そのエッチング速度は、シリコン基板の表面の硬化樹脂製の突起を有さない部分に比べて、有意に小さい。このため、シリコン基板の表面において、硬化樹脂製の突起を有さない部分が、硬化樹脂製の突起に比べて、より深くエッチングされた。エッチングは、硬化樹脂製の突起が完全に除去されるまで実施し、最終的に、シリコン基板に、縦100mm×横100mm×高さ350nmのピラーの配列からなるパターンが形成された。
【0235】
(第4工程)
次に、前述の実施例2の(第4工程)と同様の方法で、シリコン基板のパターン面にアルミニウムを蒸着した。すなわち、第1回目のアルミニウムの蒸着は、シリコン基板の厚み方向とのなす角度θ=約45゜となるようにして行った。また、第2回目のアルミニウムの蒸着は、シリコン基板の厚み方向とのなす角度θ=約−60゜となるようにして行った。これにより、各ピラーに、約30nmのアルミニウム膜が成膜された。このアルミニウム膜は、次に成膜するグラフェンに対する触媒として機能する。
【0236】
(第5工程)
次に、アセチレンガスとアルゴンの混合ガスを用いて、CVD法により、各ピラーに対して、グラフェン膜を成膜した。成膜圧力は1kPaとし、アセチレンガスの圧力は0.002Paとした。成膜温度は650℃とし、成膜時間は60秒とした。これにより、各ピラーのアルミニウム膜上に、グラフェン膜が成膜された。
【0237】
(第6工程)
次に、得られたシリコン基板のパターン面に、フッ素系UV光硬化樹脂(旭硝子株式会社製 NIF−A−2)を1mm以上の厚さで塗布し、その上から、撥液処理を行った石英ガラス基板を押し付けた。さらに、フッ素系UV光硬化樹脂を紫外線により硬化させた。その後、石英ガラス基板を取り外すことにより、アルミニウム膜およびグラフェン膜を有するシリコン基板と、フッ素系UV光硬化樹脂とからなる組立体を得た。
【0238】
(第7工程)
次に、5%のフッ化水素水溶液に組立体を浸漬させ、シリコン基板およびアルミニウム膜を選択的に溶解させることにより、グラフェン膜の凹状パターンを有するフッ素系UV光硬化樹脂(メタマテリアル)を作製した。
【0239】
製作されたメタマテリアルを用いて、光吸収測定を実施した。
【0240】
メタマテリアルに対して、磁場が電磁波共振体を貫通するようにして電磁波を入射させたところ、光の中心波長が約1400nmのところで、共鳴吸収が観測された。また、40nnm〜800nmの可視光域では、光の顕著な吸収は認められなかった。
【0241】
このように、上記方法によって得られたメタマテリアルは、可視光域で良好な透過性を有することが確認された。
【0242】
(実施例4)
次に示す手順で、電磁波共振体がITOで形成されたメタマテリアルを製造した。
【0243】
(第1工程)
まず、表面に転写パターンを有するモールドと、縦20mm×横20mm×厚さ0.1mmのアルミノシリケートボロアルカリアースガラス(旭硝子株式会社製、EN−A1)シート(以下、「ガラスシート」と称する)とを準備した。モールドには、実施例2と同様のものを使用した。
【0244】
(第2工程)
次に、モールドのパターン面に、フッ素系UV光硬化樹脂(旭硝子株式会社製 NIF−A−2)を約3μmの厚さで塗布し、ナノインプリント装置を用いて、ガラスシートの5mm×5mmの領域に対して、モールドを押し当てた。フッ素系UV光硬化樹脂が硬化した後、モールドを取り外したところ、ガラスシートに突起構造が転写された。その後、酸素プラズマアッシング法により、ガラスシートのパターン形成面の、底面部分に付着した不要膜を除去し、硬化樹脂製の突起のみを残留させた。
【0245】
(第3工程)
次に、スッパタ装置を用いて、ガラスシートのパターン面に、金属ニッケル膜を成膜した。スッパタリングは、ガラスシートのパターン面に対して垂直な方向から実施した。このため、金属ニッケル膜は、突起の上面と、ガラスシートの突起のない表面とに成膜された。
【0246】
その後、得られたガラスシートを水酸化カリウム水溶液中に浸漬し、フッ素系UV光硬化樹脂をリフトオフで選択的に除去した。これにより、ガラスシートのパターン表面のうち、突起があった部分の表面が露出され、その他の部分がニッケル膜で形成されたガラスシートが得られた。
【0247】
さらに、SF
6をエッチングガスとして用い、RIE(Reactive Ionic Etching)装置により、ニッケル膜をマスクとして、ガラスシートのニッケル膜が形成されていない部分に対してエッチングを行った。これにより、最上面にニッケル膜を有する、縦100nm×横100nm×高さ350nmの柱状突起のパターンが形成された。その後、10Nの塩酸水溶液を用いてニッケル膜のみを除去した。
【0248】
ガラスシートに得られたパターンは、前述の
図17と同様のパターンである。
【0249】
(第4工程)
次に、ガラスシートの表面に対して、異なる斜めの2方向からITOの蒸着を行った。これにより、各ピラーに対して、ITOを逆U字型に蒸着した。
【0250】
ITOは、ターゲットとして焼結体ITOターゲット(In
2O
3:SnO
2=90:10(重量比))を使用し、マグネトロンスパッタリング法により形成した。成膜時のガラスシート温度は、200℃とした。また、雰囲気は、アルゴンガス流量を185SCCMとし、水蒸気流量を0.4SCCMとした混合ガス雰囲気とし、アルゴンガス分圧は、0.4Paとし、水蒸気分圧は、3.4x10
−3Paとした。ターゲットとガラスシートの間の距離は、100mmとし、ターゲットとマグネットの距離は、40mmとし、成膜時のパワー密度は、7.0W/cm
2とした。
【0251】
なお、ITOの蒸着の向きは、前述の実施例2の(第4工程)におけるアルミニウムの蒸着の場合と同様である。ITOの蒸着膜の厚さは、約30nmであった。
【0252】
以上の工程により、ガラスシート上に、ITO製電磁波共振体が形成されたメタマテリアルが製作された。
【0253】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更する、変形する、及び/又は組み合わせることができる。
【0254】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。