特許第5957890号(P5957890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5957890電子産業プロセス排水の回収方法及び回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5957890
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年7月27日
(54)【発明の名称】電子産業プロセス排水の回収方法及び回収装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20160714BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20160714BHJP
   C02F 3/10 20060101ALI20160714BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20160714BHJP
   C02F 9/14 20060101ALI20160714BHJP
   C02F 9/00 20060101ALI20160714BHJP
   C02F 9/08 20060101ALI20160714BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20160714BHJP
【FI】
   C02F1/44 F
   B01D61/02 500
   C02F3/10 Z
   C02F1/28 D
   C02F9/14
   C02F9/00
   C02F9/08
   C02F3/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-3289(P2012-3289)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-141643(P2013-141643A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】育野 望
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄史
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−099545(JP,A)
【文献】 特開2003−340481(JP,A)
【文献】 特開2002−336886(JP,A)
【文献】 特開平11−033540(JP,A)
【文献】 特開2001−017995(JP,A)
【文献】 特開2000−317472(JP,A)
【文献】 特開2002−159984(JP,A)
【文献】 特開2005−081269(JP,A)
【文献】 特開2005−169372(JP,A)
【文献】 特開2011−101883(JP,A)
【文献】 特開2011−212520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C02F 3/00− 3/34
C02F 9/00− 9/14
C02F 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子産業プロセスからの低分子量有機物含有排水を処理して回収する方法において、
凝集浮上濾過、凝集沈殿濾過、限外濾過膜分離、精密濾過膜分離のいずれかよりなるSS除去処理工程と、
SS除去処理水を逆浸透膜分離処理する逆浸透膜分離処理工程と、
逆浸透膜透過水を、微生物担持量が10個/g−活性炭以上である生物活性炭塔に通水する生物活性炭処理工程と
を有する電子産業プロセス排水の回収方法であって、
該低分子量有機物含有排水は、分子量400以下である低分子量有機物をTOCとして1〜20mg/L含み、
前記逆浸透膜分離処理工程の前段で生物処理せず、前記SS除去のみを行って逆浸透膜分離処理し、
該逆浸透膜透過水に、C:N:P=100:7.5〜15:1〜5となるように微生物の栄養源を添加して、前記生物活性炭塔の微生物担持量を10〜10個/g−活性炭に維持し、
前記生物活性炭処理工程の処理水を回収、再利用することを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【請求項2】
請求項1において、前記逆浸透膜透過水のTOC値が500μg/L以下であることを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記生物活性炭塔の給水のpHが5〜8.5であることを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記電子産業プロセス排水が、低分子量有機物としてイソプロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、酢酸塩、アセトン、水酸化トリメチルアンモニウム、モノエタノールアミン、及びジメチルスルホキシドの少なくとも1種を含むことを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【請求項5】
電子産業プロセスからの低分子量有機物含有排水を処理して回収する装置において、
凝集浮上濾過、凝集沈殿濾過、限外濾過膜分離、精密濾過膜分離のいずれかよりなるSS除去処理手段と、
SS除去処理水を逆浸透膜分離処理する逆浸透膜分離装置と、
逆浸透膜透過水が通水される、微生物担持量が10個/g−活性炭以上である生物活性炭塔と
を有する電子産業プロセス排水の回収装置であって、
該低分子量有機物含有排水は、分子量400以下である低分子量有機物をTOCとして1〜20mg/L含み、
前記逆浸透膜分離装置の前段で生物処理がなされず、前記SS除去のみを行って逆浸透膜分離処理され、
該逆浸透膜透過水に、C:N:P=100:7.5〜15:1〜5となるように微生物の栄養源を添加して、前記生物活性炭塔の微生物担持量を10〜10個/g−活性炭に維持する手段を有し、
前記生物活性炭塔の処理水を回収、再利用することを特徴とする電子産業プロセス排水の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子産業プロセスから排出されるIPA(イソプロパノール)、エタノール、メタノールなどの低分子量有機物を含有する排水を効率的に処理して回収する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、LCD等の電子産業プロセスから排出される排水を回収、再利用するための処理方法としては、次の(1)又は(2)の方法が一般的に採用されている。
(1) 排水を活性汚泥法又は担体方式で生物処理した後、凝集浮上濾過、凝集沈殿濾過、或いは限外濾過(UF)膜又は精密濾過(MF)膜膜分離処理により生物処理水中の菌体やSSを分離除去し、次いで逆浸透(RO)膜分離により脱塩処理し、RO膜透過水を回収する。
(2) 上記(1)の方法において、生物処理を省略して、凝集浮上濾過、凝集沈殿濾過、或いはUF膜又はMF膜膜分離処理により排水中のSSを分離除去した後、RO膜分離により脱塩処理し、RO膜透過水を回収する。
【0003】
なお、上記(1),(2)の方法において、RO膜分離処理に先立ち、RO膜給水中の残留塩素を除去するために活性炭処理を行う。
【0004】
特許文献1の0050段落には、このような水回収において、RO膜透過水を更に活性炭処理してもよい旨の記載がなされているが、この記載は本発明で採用する生物活性炭塔を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−244930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の電子産業プロセス排水の回収方法のうち、(1)の方法では、生物処理を行うため、装置設置面積が大きく、pH調整や栄養剤の添加など、生物処理装置の運転管理が煩雑であるといった問題がある。
(2)の方法であれば、このような問題はないが、以下の問題がある。即ち、電子産業プロセス排水は、一般にIPA、エタノール、メタノールといった低分子量有機物を含有している場合が多い。(2)の方法では、生物処理を行わないため、これらの低分子量有機物は、RO膜分離処理で一部除去されるものの、RO膜による有機物の除去率は低いため、回収水のTOC値が高くなる。
【0007】
特許文献1の記載に従って、RO膜透過水を活性炭処理した場合、RO膜透過水中の有機物の一部を活性炭に吸着除去することはできるが、一般的に活性炭においては低分子系有機物の吸着に乏しいため十分ではなく、活性炭処理水中のTOC値を(1)の方法の場合と同等にまで低減することはできない。また、用いた活性炭が有機物の吸着で早期に破過し、活性炭を頻繁に交換する必要があるという問題も生じる。
【0008】
本発明は上記従来の問題点を解決し、RO膜分離処理の前段の生物処理を省略した電子産業プロセス排水の回収方法において、電子産業プロセス排水を効率的に処理してTOC値が十分に低減された高水質の回収水を得る方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、RO膜透過水を、予め微生物を担持させた生物活性炭塔に通水することにより、RO膜透過水中のTOCを効率的に除去して高水質の回収水を得ることができることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0011】
[1] 電子産業プロセスからの低分子量有機物含有排水を処理して回収する方法において、凝集浮上濾過、凝集沈殿濾過、限外濾過膜分離、精密濾過膜分離のいずれかよりなるSS除去処理工程と、SS除去処理水を逆浸透膜分離処理する逆浸透膜分離処理工程と、逆浸透膜透過水を、微生物担持量が10個/g−活性炭以上である生物活性炭塔に通水する生物活性炭処理工程とを有する電子産業プロセス排水の回収方法であって、該低分子量有機物含有排水は、分子量400以下である低分子量有機物をTOCとして1〜20mg/L含み、前記逆浸透膜分離処理工程の前段で生物処理せず、前記SS除去のみを行って逆浸透膜分離処理し、該逆浸透膜透過水に、C:N:P=100:7.5〜15:1〜5となるように微生物の栄養源を添加して、前記生物活性炭塔の微生物担持量を10〜10個/g−活性炭に維持し、前記生物活性炭処理工程の処理水を回収、再利用することを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【0013】
] [1]において、前記逆浸透膜透過水のTOC値が500μg/L以下であることを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【0014】
[3] [1]又は]において、前記生物活性炭塔の給水のpHが5〜8.5であることを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【0015】
] 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記電子産業プロセス排水が、低分子量有機物としてイソプロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、酢酸塩、アセトン、水酸化トリメチルアンモニウムモノエタノールアミン、及びジメチルスルホキシドの少なくとも1種を含むことを特徴とする電子産業プロセス排水の回収方法。
【0016】
[5] 電子産業プロセスからの低分子量有機物含有排水を処理して回収する装置において、凝集浮上濾過、凝集沈殿濾過、限外濾過膜分離、精密濾過膜分離のいずれかよりなるSS除去処理手段と、SS除去処理水を逆浸透膜分離処理する逆浸透膜分離装置と、逆浸透膜透過水が通水される、微生物担持量が10個/g−活性炭以上である生物活性炭塔とを有する電子産業プロセス排水の回収装置であって、該低分子量有機物含有排水は、分子量400以下である低分子量有機物をTOCとして1〜20mg/L含み、前記逆浸透膜分離装置の前段で生物処理がなされず、前記SS除去のみを行って逆浸透膜分離処理され、該逆浸透膜透過水に、C:N:P=100:7.5〜15:1〜5となるように微生物の栄養源を添加して、前記生物活性炭塔の微生物担持量を10〜10個/g−活性炭に維持する手段を有し、前記生物活性炭塔の処理水を回収、再利用することを特徴とする電子産業プロセス排水の回収装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、RO膜透過水中の低分子量有機物を生物活性炭塔で効率的に除去することができ、TOC値が十分に低減された回収水を長期に亘り安定に得ることができる。
【0019】
即ち、生物活性炭塔の有機物除去機構は
(1) 活性炭による有機物吸着効果
(2) 生物膜による有機物分解効果
(3) 活性炭内の微生物が活性炭に吸着した有機物を分解して細孔容積を回復させる
生物再生効果
の3つの機構よりなり、RO膜透過水を生物活性炭塔に通水することにより、RO膜透過水中の低分子量有機物を高度に除去することができ、また、微生物を担持させていない活性炭塔に比べて活性炭自体の吸着能が飽和に達するまでの時間が著しく長い。
生物活性炭塔は、高分子量有機物の分解効果は低いが、電子産業プロセス排水中の有機物はIPA、エタノール、メタノール等の低分子量有機物であり、これらの低分子量有機物に対しては、生物活性炭による吸着、生物分解、再生効果が高く、RO膜透過水中の低分子量有機物の除去に有効である。
【0020】
また、生物活性炭塔は、煩雑な運転管理を要するものではなく、しかも、通水速度を比較的高くすることができ、活性汚泥法や担体式生物処理のように大きな設置スペースを必要とせず、生物活性炭塔の増設による装置設備の大型化が問題となることはない。
【0021】
また、生物活性炭塔に通水されるRO膜透過水のTOC値を制限することにより、生物活性炭塔からの菌体の流出を防止することができ、生物活性炭塔の後段の菌体分離手段も不要とすることができる。
【0022】
このようなことから、本発明によれば、装置の大型化を抑えて、また、煩雑な運転管理を必要とすることなく、電子産業プロセス排水を効率的に処理してTOC値が十分に低減された高水質の回収水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の電子産業プロセス排水の回収方法及び回収装置の実施の形態を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に図面を参照して、本発明の電子産業プロセス排水の回収方法及び回収装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の電子産業プロセス排水の回収方法及び回収装置の実施の形態を示す系統図である。
【0026】
本発明においては、半導体、LCD等の各種の電子産業プロセスから排出される低分子量有機物含有排水中のSSを除去するために、まず凝集浮上濾過、凝集沈殿濾過、或いはUF膜又はMF膜膜分離処理等のSS除去処理手段1で処理し、SS除去処理水をRO膜分離装置2でRO膜分離処理する。RO膜分離装置2の透過水は、生物活性炭塔3に通水して生物活性炭処理し、生物活性炭塔3の処理水を回収水として回収、再利用する。
【0027】
本発明で処理対象とする電子産業プロセス排水は、一般に、IPA、エタノール、メタノール、酢酸や酢酸塩、アセトン、TMAH(水酸化トリメチルアンモニウム)、MEA(モノエタノールアミン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の低分子量有機物を、TOCとして1〜20mg/L程度含有する低分子量有機物含有排水である。ここでいう低分子量とは例えば分子量400以下(特に100以下)をいう。また、この電子産業プロセス排水は、通常、例えばコロイダルシリカなどのSSを5〜100mg/L程度含有するため、まず、SS除去処理手段1でSSを除去する。
【0028】
SS除去処理手段1における凝集処理には、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等のアルミニウム系凝集剤や、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄等の鉄系凝集剤といった無機凝集剤の1種又は2種以上が用いられる。これらの無機凝集剤の添加量は、通常電子産業プロセス排水に対して50〜500mg/L程度である。
【0029】
RO膜分離装置2においては、後段の生物活性炭塔3における菌体の増殖で、生物活性炭塔3から菌体がリークすることを防止するために、生物活性炭塔3に通水するRO膜透過水のTOC値が500μg/L以下、好ましくは200μg/L以下となるように処理を行うことが好ましい。このRO膜透過水のTOC値が高過ぎると生物活性炭塔3において菌体が過度に増殖して生物活性炭塔3の処理水中に菌体が流出する問題がある。
【0030】
このようなTOC値のRO膜透過水を得るために、RO膜分離装置2のRO膜には、Na除去率98%以上、特に99%以上の高脱塩率のRO膜を用いるのが好ましく、具体的には、日東電工社製ES−20、同NTR−759、東レ社製SU−700、同SUL−10等を用いることができる。即ち、Na除去率の高いRO膜は、TOC除去率も高く、RO膜透過水のTOC値の低減に有効である。
【0031】
また、このRO膜分離装置2に導入される給水のpHが高過ぎると脱塩性能の低下、炭酸カルシウム等のスケールの生成の問題を生じ、低過ぎると脱塩性能の低下、有機酸のリークがあるため、RO膜給水のpHは5〜7とすることが好ましく、必要に応じて適宜pH調整剤を添加してpH調整する。また、RO膜給水には、必要に応じてスケール防止剤を添加してもよい。
【0032】
RO膜分離装置2は、安定運転を継続するために、水回収率60〜80%程度で運転することが好ましい。
【0033】
本発明において、RO膜透過水が通水される生物活性炭塔3は、予め活性炭1g当たりの微生物担持量が10個/g−活性炭以上、例えば10〜10個/g−活性炭となるように、微生物が担持されたものである。この微生物担持が上記下限未満では、生物活性炭塔としての前述の(1)〜(3)の除去機構で効率的な低分子量有機物の除去を行うことができず、上記上限を超えると、生物活性炭塔3からの菌体リークが問題となる恐れがある。
【0034】
RO膜透過水が通水される生物活性炭塔3への活性炭の充填方式は、流動床、膨張層、固定床などのいずれでもよいが、菌体のリークが少ないところから固定床が好ましい。生物活性炭塔の通水方式は上向流通水であっても下向流通水であっても良い。
【0035】
生物活性炭塔3の処理条件には特に制限はないが、通水速度は、SV5〜20hr−1程度とすることが好ましい。また、生物活性炭塔の給水の水温は10〜35℃、pHは5〜8.5であることが好ましく、従って、必要に応じて、生物活性炭塔3の前段に熱交換器やpH調整剤添加手段が設けられる。
【0036】
また、生物活性炭塔3への給水には、必要に応じてN源、P源等の微生物の栄養源を添加してもよく、栄養源の添加で生物活性炭塔3における有機物の分解活性を高め、より一層TOC値が低減された処理水を得ることができる。この場合、N源としては尿素等を、P源としてはリン酸等を、また、N源及びP源としてリン酸アンモニウム等を用いることができ、その添加量は、RO膜透過水の水質や、その他の処理条件等によっても異なるが、通常、C:N:P=100:7.5〜15:1〜5程度とすることが好ましい。
【0037】
生物活性炭塔3の流出水は通常TOC50μg/L以下、例えば10〜20μg/L程度の高水質処理水であり、この水は回収水として各使用場所に送給されて再利用される。
【0038】
なお、図1は本発明の実施形態の一例を示すものであって、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示のものに限定されるものではない。例えば、RO膜分離装置は2段以上の多段に設けてもよく、SS除去処理手段とRO膜分離装置の間に通常の活性炭塔を設けてもよい。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例、比較例及び実験例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0040】
[実施例1]
TOC(TOC値のうち10%は、IPA、エタノール、メタノールの低分子量有機物):10mg/L、SS:50mg/Lの電子産業プロセス排水を原水として、図1に示す装置で処理した。
【0041】
まず、SS除去処理手段1にて、原水に塩化第二鉄200mg/Lを添加して凝集浮上濾過し、濾過水をRO膜分離装置2でRO膜分離処理した。RO膜分離装置2としては日東電工社製RO膜「ES−20」(NaCl除去率99.5%)を充填したものを用い、水回収率75%で運転した。なお、RO膜給水のpHは6.5とした。
【0042】
RO膜透過水(pH6)に、N,P源としてリン酸アンモニウムを100μg/L添加した後、予め10個/g−活性炭以上となるように微生物を担持した固定床式生物活性炭塔3に、SV10hr−1で上向流通水し、処理水を得た。
【0043】
RO膜透過水と生物活性炭塔処理水のTOC値を調べ、結果を表1に示した。
【0044】
[実施例2]
RO膜透過水にN,P源を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に処理を行い、結果を表1に示した。
【0045】
[比較例1]
実施例1で処理した電子産業プロセス排水と同じ原水を、担体式好気性生物処理(HRT:1hr)した後、生物処理水を実施例1と同様に凝集浮上濾過及びRO膜分離処理した。得られたRO膜透過水のTOC値を表1に示す。
【0046】
[比較例2]
実施例1において、生物活性炭塔による処理を行わなかったこと以外は同様にして処理を行った。即ち、実施例1におけるRO膜透過水を処理水とした。得られたRO膜透過水のTOC値を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1より、本発明によれば、RO膜透過水を生物活性炭塔で処理することにより、RO膜分離処理の前段で生物処理を行わなくても、TOC値が著しく低減された高水質の回収水を得ることができることが分かる。
【0049】
[実験例1]
実施例1において、RO膜透過水に酸又はアルカリを添加して、表2に示すpHに調整した後、生物活性炭塔に通水したこと以外は同様にして処理を行い、生物活性炭塔処理水のTOC値を実施例1の結果と共に表2に示した。
【0050】
【表2】
【0051】
表2より、生物活性炭塔の給水のpHは5〜8.5の範囲とすることが好ましいことが分かる。
【0052】
[実験例2]
実施例1において、生物活性炭塔の給水のTOC値が表3に示す値となるようにRO膜透過水にIPAを添加して生物活性炭塔に通水したこと以外は実施例1と同様にして処理を行い、生物活性炭塔処理水のSDI値を調べ、結果を表3に示した。このSDI値が低いことは、生物活性炭塔からの菌体のリークが少ないことを示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3より、生物活性炭塔に給水されるRO膜透過水のTOC値が500μg/L以下であると、生物活性炭塔からの菌体のリークを防止して、生物活性炭塔の後段に菌体除去手段を設けることなく、高水質の回収水を得ることができることが分かる。
【符号の説明】
【0055】
1 SS除去処理手段
2 RO膜分離装置
3 生物活性炭塔
図1