【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0050】
A.ケト酸金属錯体水溶液の作製
[実施例1]
バリウム−チタンケト酸錯体水溶液としてバリウム−チタングリオキシル酸水溶液を作製した。
まず、バリウムケト酸水溶液としては、炭酸バリウム粉体84.63gを10%グリオキシル酸水溶液635g(バリウムイオンに対し2倍モル量のグリオキシル酸を含有)に添加し、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、バリウムグリオキシル酸水溶液Aaを作製した。
【0051】
また、チタンケト酸水溶液としては、チタンイソプロポキシド121.9gを50%グリオキシル酸水溶液254.0g(チタンイオンに対して4倍モル量のグリオキシル酸を含有)に撹拌しながら滴下して全量加えたのち、室温(25℃)にて24時間撹拌し、チタングリオキシル酸水溶液Abを作製した。
【0052】
次いで、バリウムグリオキシル酸水溶液Aa71.96gと、チタングリオキシル酸水溶液Ab37.59gとを混合し、9.13質量%(チタン酸バリウム(BaTiO
3)換算)のバリウム−チタングリオキシル酸水溶液Aを作製した。
次いで、このバリウム−チタングリオキシル酸水溶液Aをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して乾燥粒子を作製した。その後、この乾燥粒子を、大気中、1000℃にて2時間、加熱処理を行ったところ、チタン酸バリウム(BaTiO
3)粉体を得ることができた。
【0053】
[実施例2]
スカンジウム−ジルコニウムケト酸錯体水溶液としてスカンジウム−ジルコニウムグリオキシル酸水溶液を作製した。
まず、酸化スカンジウム粉体13.79gとオキシ塩化ジルコニウム8水和物(ZrOCl
2・8H
2O)290.03gを、10%グリオキシル酸水溶液1555g(スカンジウムイオンに対し3倍モル量、オキシジウルコニウムイオンに対し2倍モル量のグリオキシル酸を含有)に添加して、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、スカンジウム−ジルコニウムグリオキシル酸水溶液Bを作製した。
【0054】
次いで、このスカンジウム−ジルコニウムグリオキシル酸水溶液Bをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して乾燥粒子を作製した。その後、この乾燥粒子を、大気中、1250℃にて2時間、加熱処理を行ったところ、スカンジウム安定化酸化ジルコニウム(10モル%Sc
2O
3−ZrO
2)粉体を得ることができた。
【0055】
[実施例3]
ランタン−ユーロピウムケト酸錯体水溶液としてランタン−ユーロピウムグリオキシル酸水溶液を作製した。
まず、塩化ランタン7水和物(LaCl
3・7H
2O)371.37gと、塩化ユーロピウム6水和物(EuCl
3・6H
2O)7.48gを、純水8000gに溶解させ、溶液Caを作製した。
【0056】
次いで、この溶液Caに5%アンモニア水1145gを加えて撹拌し、水酸化ランタン−水酸化ユーロピウム共沈物を生成させた。その後、限外濾過装置にて不純物イオンを除去・洗浄した後、水酸化物の固形分換算で15質量%となるように濃縮し、水酸化ランタン−水酸化ユーロピウム共沈物のスラリーCbを作製した。
次いで、このスラリーCb1000gにグリオキシル酸176g(金属イオンの3倍モル)を加え、室温(25℃)にて24時間撹拌し、ランタン−ユーロピウムグリオキシル酸水溶液Cを作製した。
【0057】
次いで、このランタン−ユーロピウムグリオキシル酸水溶液Cをスプレードライヤーを用いて噴霧乾燥して乾燥粒子を作製した。その後、この乾燥粒子を、大気中、1100℃にて2時間、加熱処理を行ったところ、ユーロピウム添加酸化ランタン(2モル%Eu−La
2O
3)粉体を得ることができた。
【0058】
B.複合酸化物粒子の作製
[実施例4]
グリオキシル酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリオキシル酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
まず、硝酸イットリウム・6H
2O186.3g、硝酸アルミニウム・9H
2O313.5g、硝酸セリウム・6H
2O6.5gを純水5000gに溶解し、Y−Al−Ce塩の水溶液Daを調製した。
次いで、炭酸水素アンモニウム349gを純水10000gに溶解させた水溶液Dbを調製した。
【0059】
次いで、室温にて水溶液Dbを撹拌しながら水溶液Daを添加して沈殿物を生成させた後、限外濾過装置にて濾液の伝導度が100μSまで洗浄を行い、濾過器にて固液分離を行った後、固形物(ケーキ状物質)を乾燥器にて110℃にて24時間乾燥し、イットリウムアルミニウムヒドロキシ炭酸塩乾燥物Dを得た。
このイットリウムアルミネートヒドロキシ炭酸塩乾燥物D中のYAG:Ce酸化物含有量を1000℃での強熱減量による固形分率にて測定した結果、58.8質量%であった。
【0060】
次いで、得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をグリオキシル酸(分子量:74.04)87.32gを純水1000gに溶解させたグリオキシル酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、グリオキシル酸錯体溶液Dを作製した。これらの組成等を表1に示す。
【0061】
次いで、このグリオキシル酸錯体溶液Dをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、グリオキシル酸錯体の乾燥固形物Dを作製した。
この乾燥固形物Dについて熱分析を行った結果、460℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceグリオキシル酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。熱分析の結果を
図1に示す。
【0062】
次いで、この乾燥固形物Dを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
【0063】
[実施例5]
グリオキシル酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリオキシル酸/金属イオンの比を3.5倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をグリオキシル酸(分子量:74.04)101.87gを純水1000gに溶解させたグリオキシル酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、グリオキシル酸錯体溶液Eを作製した。これらの組成等を表1に示す。
【0064】
次いで、このグリオキシル酸錯体溶液Eをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、グリオキシル酸錯体の乾燥固形物Eを作製した。
この乾燥固形物Eについて熱分析を行った結果、460℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceグリオキシル酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
【0065】
次いで、乾燥固形物Eを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
【0066】
[実施例6]
アセト酢酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、アセト酢酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をアセト酢酸(分子量:102.09)120.04gを純水1000gに溶解させたアセト酢酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、アセト酢酸錯体溶液Fを作製した。これらの組成等を表1に示す。
【0067】
次いで、このアセト酢酸錯体溶液Fをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、アセト酢酸錯体の乾燥固形物Fを作製した。
この乾燥固形物Fについて熱分析を行った結果、470℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceアセト酢酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
【0068】
次いで、乾燥固形物Fを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
【0069】
[実施例7]
ピルビン酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、ピルビン酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をピルビン酸(分子量:88.06)103.86gを純水1000gに溶解させたピルビン酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、ピルビン酸錯体溶液Gを作製した。これらの組成等を表1に示す。
【0070】
次いで、このピルビン酸錯体溶液Gをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、ピルビン酸錯体の乾燥固形物Gを作製した。
この乾燥固形物Gについて熱分析を行った結果、465℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceピルビン酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
【0071】
次いで、乾燥固形物Gを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
【0072】
[実施例8]
レブリン酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、レブリン酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をレブリン酸(分子量:116.11)136.94gを純水1000gに溶解させたレブリン酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、レブリン酸錯体溶液Hを作製した。これらの組成等を表1に示す。
【0073】
次いで、このレブリン酸錯体溶液Hをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、レブリン酸錯体の乾燥固形物Hを作製した。
この乾燥固形物Hについて熱分析を行った結果、470℃に発熱ピークが1つ認められ、Y,Al,Ceレブリン酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
【0074】
次いで、乾燥固形物Hを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃以上の加熱処理では結晶化され、ガーネット構造のYAG:Ce複合酸化物は単一相(YAG相)であった。
【0075】
[比較例1]
クエン酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、クエン酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をクエン酸(分子量:192)226.59gを純水1000gに溶解させたクエン酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、クエン酸錯体溶液Jを作製した。このクエン酸錯体溶液Jは、撹拌中に粘度が上昇するのが認められた。これらの組成等を表1に示す。
【0076】
次いで、このクエン酸錯体溶液Jをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、クエン酸錯体の乾燥固形物Jを作製した。
この乾燥固形物Jについて熱分析を行った結果、420℃と465℃に発熱ピークが2つ認められ、Y,Alクエン酸錯体が別々に熱分解したことが確認された。
【0077】
次いで、乾燥固形物Jを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃では、ガーネット構造とは異なるY/Al=1/1のイットリウムアルミネート(YAP)の生成が認められた。また、900℃では、上記のYAP相以外にY/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)の生成が認められた。
さらに、1000℃では、Y/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)のみ生成が認められた。
【0078】
この比較例1におけるイットリウムアルミネート複合酸化物の生成メカニズムでは、イットリウムアルミネート複合酸化物はAlイオンのY酸化物中への拡散により生成するので、乾燥固形物J中のAlイオンとYイオンの分布が不均一であることから、800℃焼成ではY/Al比の大きいイットリウムアルミネート複合酸化物から生成が始まっていると考えられる。
【0079】
[比較例2]
グリコール酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリコール酸/金属イオンの比を3倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をグリコール酸(分子量:76.05)89.69gを純水1000gに溶解させたグリコール酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、グリコール酸錯体溶液Kを作製した。
このグリコール酸錯体溶液Kを作製する途中、すなわち乾燥物Aをグリコール酸水溶液に溶解させる途中で析出物が認められた。この析出物を分析した結果、Y、C,H、O成分が検出された。これらの組成等を表1に示す。
【0080】
次いで、このグリコール酸錯体溶液Kをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、グリコール酸錯体の乾燥固形物Kを作製した。
この乾燥固形物Kについて熱分析を行った結果、420℃と460℃に発熱ピークが2つ認められ、Y,Alグリコール酸錯体が別々に熱分解したことが確認された。
【0081】
次いで、乾燥固形物Kを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃では、ガーネット構造とは異なるY/Al=2/1のイットリウムアルミネート(YAM)と、Y/Al=1/1のイットリウムアルミネート(YAP)の生成が認められた。また、900℃では、上記のYAP相が単相で存在していることが認められた。
さらに、1000℃では、上記のYAP相以外にAl
2O
3相が認められ、Y/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)の生成のみが認められなかった。
【0082】
この比較例2におけるイットリウムアルミネート複合酸化物の生成メカニズムでは、AlイオンのY酸化物中への拡散により生成するので、乾燥固形物K中のAlイオンとYイオンの分布が不均一であることから、800℃焼成ではY/Al比の大きいイットリウムアルミネート複合酸化物から生成が始まっていると考えられる。また、Y−グリコール酸錯体は、重合化が促進されて一部が水に不溶化して析出したため、1000℃ではYAGが生成されずにYAP相とAl
2O
3が生成した。
【0083】
[比較例3]
グリオキシル酸錯体によるYAG:Ce複合酸化物粒子を作製した。なお、グリオキシル酸/金属イオンの比を2.6倍モルとした。
ここでは、実施例4にて得られた乾燥物Dを50g(YAG:Ce;29.4g(=0.04915モル);YAG:Ceモル質量=598.24)をグリオキシル酸(分子量:74.04)75.67gを純水1000gに溶解させたグリオキシル酸水溶液に加え、室温(25℃)にて24時間撹拌して溶解させ、グリオキシル酸錯体溶液Lを作製した。
【0084】
次いで、このグリオキシル酸錯体溶液Lをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、グリオキシル酸錯体の乾燥固形物Lを作製した。
この乾燥固形物Lについて熱分析を行った結果、200℃と300℃との間に吸熱ピークが1つ、460℃に発熱ピークが1つ、それぞれ認められ、Y,Al,Ceのヒドロキシ炭酸塩の不溶粒子が残存していることが確認された。また、Y,Al,Ceグリオキシル酸錯体が同時に熱分解したことが確認された。
【0085】
次いで、乾燥固形物Lを電気炉にて、大気中、700℃、800℃、900℃、1000℃の各温度にて5時間焼成を行い、得られた4種類の焼成物について粉末X線回折による生成物の同定を行った。結果を表2に示す。
表2によれば、700℃の焼成では、アモルファス相(A相)であったが、800℃及び900℃では、ガーネット構造とは異なるY/Al=1/1のイットリウムアルミネート(YAP)の生成が認められた。また、1000℃では、Y/Al=3/5のガーネット構造のイットリウムアルミネートガーネット(YAG)が単一相で生成していることが認められた。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】