【文献】
高圧インバータケーブルのEMC対策技術WG,高圧インバータ使用ケーブルに関する調査報告,日本,社団法人日本電機工業会,2005年 1月27日,本体,URL,https://www.jema-net.or.jp/Japanese/pis/pdf/PDS_report.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導体及び前記導体の周囲を被覆するように形成された絶縁皮膜を備える電線に接続される課電装置から、前記絶縁皮膜の部分放電開始電圧よりも高い電圧を前記電線に印加し、前記絶縁皮膜に部分放電を発生させる部分放電発生工程と、
前記電線と接地との間に直列に接続されるコンデンサの端子電圧を、前記コンデンサの両端に接続される少なくとも2つのデータロガーを所定時間毎に交互に作動させて連続して測定して記録する電圧記録工程と、
前記電圧記録工程で記録した前記コンデンサの端子電圧の差に、前記コンデンサの静電容量を乗じることで、前記電線から放電され、前記コンデンサに残留する放電電荷量を算出する放電電荷量算出工程と、
前記絶縁皮膜に部分放電が発生してから前記絶縁皮膜が絶縁破壊するまでの前記放電電荷量を累積して、電線が部分放電によって絶縁破壊に至るまでの指標となる累積放電電荷量を算出する累積放電電荷量算出工程と、を有する
ことを特徴とする放電電荷量測定方法。
導体及び前記導体の周囲を被覆するように形成された絶縁皮膜を備える電線に接続され、前記絶縁皮膜に部分放電を発生させるように前記絶縁皮膜の部分放電開始電圧よりも高い電圧を前記電線に印加する課電装置と、
前記電線と接地との間に直列に接続されるコンデンサと、
前記コンデンサの端子電圧を測定して記録する少なくとも2つのデータロガーと、
少なくとも前記絶縁皮膜が絶縁破壊するまで、少なくとも2つの前記データロガーを所定時間毎に交互に作動させて、前記コンデンサの端子電圧を連続して検出するように、少なくとも前記データロガーを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記データロガーにより検出した前記コンデンサの端子電圧の差に、前記コンデンサの静電容量を乗じることで、前記電線から放電され、前記コンデンサに残留する放電電荷量を算出し、
前記絶縁皮膜に部分放電が発生してから前記絶縁皮膜が絶縁破壊するまでの前記放電電荷量を累積して、電線が部分放電によって絶縁破壊に至るまでの指標となる累積放電電荷量を算出する
ことを特徴とする放電電荷量測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インバータサージ電圧下において、電線に部分放電が開始する電圧(部分放電開始電圧)は、インバータパルス電圧の立ち上がり時間の影響を受ける。インバータパルス電圧の立ち上がり時間は、正弦波電圧に比べて短い。このため、V−t試験では、電線の正確な寿命を評価できない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、電線の寿命評価をより正確に行うことが可能な放電電荷量測定方法及び放電電荷量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成されている。
本発明の第1の態様によれば、導体及び前記導体の周囲を被覆するように形成された絶縁皮膜を備える電線に接続される課電装置から、前記絶縁皮膜の部分放電開始電圧よりも高い電圧を前記電線に印加し、前記絶縁皮膜に部分放電を発生させる部分放電発生工程と、前記電線と接地との間に直列に接続されるコンデンサの端子電圧を、前記コンデンサの両端に接続される少なくとも2つのデータロガーを所定時間毎に交互に作動させて連続して測定して記録する電圧記録工程と、前記電圧記録工程で記録した前記コンデンサの端子電圧の差に、前記コンデンサの静電容量を乗じることで、前記電線から放電され、前記コンデンサに残留する放電電荷量を算出する放電電荷量算出工程と、前記絶縁皮膜に部分放電が発生してから前記絶縁皮膜が絶縁破壊するまでの前記放電電荷量を累積して
、電線が部分放電によって絶縁破壊に至るまでの指標となる累積放電電荷量を算出する累積放電電荷量算出工程
と、を有する
放電電荷量測定方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、前記電圧記録工程では、少なくとも2つの前記データロガーの作動の切り替えを、前記データロガーに接続されるタイマ機構によって行う第1の態様の
放電電荷量測定方法が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、前記電圧記録工程では、少なくとも2つの前記データロガーの作動を切り替える際、一の前記データロガーの作動を開始した後、他の前記データロガーの作動を終了する第1又は第2の態様の
放電電荷量測定方法が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、前記放電電荷量算出工程では、一の前記データロガーの作動開始から作動終了までの所定期間毎に前記放電電荷量を算出する第1ないし第3の態様のいずれかの
放電電荷量測定方法が提供される。
【0012】
本発明の第5の態様によれば、前記放電電荷量算出工程では、前記所定期間の前記放電電荷量を算出する際、少なくとも2つの前記データロガーを重複して作動させる重複期間の放電電圧を、前記データロガーのいずれかから減算する
第4の態様の放電電荷量測定方法が提供される。
【0013】
本発明の第6の態様によれば、少なくとも前記電圧記録工程と前記放電電荷量算出工程とが併行して行われる第1ないし第5の態様のいずれかの
放電電荷量測定方法が提供される。
【0014】
本発明の第7の態様によれば、前記電圧記録工程では、前記コンデンサに過度の電荷が溜まった際、前記コンデンサの両端に接続される短絡回路により、前記コンデンサの両端を短絡させて放電させる第1ないし第6の態様のいずれかの
放電電荷量測定方法が提供される。
【0015】
本発明の第8の態様によれば、少なくとも前記絶縁皮膜が絶縁破壊するまでの少なくとも前記放電電荷量を表示部に表示させる表示工程を有する第1ないし第7の態様のいずれかの
放電電荷量測定方法が提供される。
【0016】
本発明の第9の態様によれば、導体及び前記導体の周囲を被覆するように形成された絶縁皮膜を備える電線に接続され、前記絶縁皮膜に部分放電を発生させるように前記絶縁皮膜の部分放電開始電圧よりも高い電圧を前記電線に印加する課電装置と、前記電線と接地との間に直列に接続されるコンデンサと、前記コンデンサの端子電圧を測定して記録する少なくとも2つのデータロガーと、少なくとも前記絶縁皮膜が絶縁破壊するまで、少なくとも2つの前記データロガーを所定時間毎に交互に作動させて、前記コンデンサの端子電圧を連続して検出するように、少なくとも前記データロガーを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記データロガーにより検出した前記コンデンサの端子電圧の差に、前記コンデンサの静電容量を乗じることで、前記電線から放電され、前記コンデンサに残留する放電電荷量を算出し、前記絶縁皮膜に部分放電が発生してから前記絶縁皮膜が絶縁破壊するまでの前記放電電荷量を累積して
、電線が部分放電によって絶縁破壊に至るまでの指標となる累積放電電荷量を算
出する
放電電荷量測定装置が提供される。
【0017】
本発明の第10の態様によれば、前記コンデンサの静電容量は、前記電線の静電容量よりも大きい第9の態様の
放電電荷量測定装置が提供される。
【0018】
本発明の第11の態様によれば、前記データロガーには、タイマ機構が接続されている第9又は第10の態様の
放電電荷量測定装置が提供される。
【0019】
本発明の第12の態様によれば、前記コンデンサの両端には、前記コンデンサ内に過度の電荷が溜まった場合、前記コンデンサの両端を短絡させて放電させる短絡回路が接続されている第9ないし第11の態様のいずれかの
放電電荷量測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる放電電荷量測定方法及び放電電荷量測定装置によれば、電線の寿命評価をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の実施形態の説明に先立ち、発明者等が得た知見について説明する。
【0023】
電線の寿命評価をより正確に行うために、電線が絶縁破壊するまでの電線(絶縁皮膜)の電荷量(累積電荷量)を算出することが考えられている。このとき、V−t試験によって得られた放電電流波形から電荷量を算出することが考えられている。しかしながら、V−t試験によって得られた放電電流波形(例えばオシロスコープによって得られた生波形データ)から電荷量を算出するには、立ち上がりが急峻な放電電流波形を、ナノ秒(ns)オーダのサンプルレートで積分する必要がある。このため、電荷量を算出するためには、莫大な数のデータが必要となる。特に、電線が絶縁破壊に至るまでの時間が長くなると、それだけ電荷量を算出するために必要なデータの数はさらに多くなる。その結果、データ処理に時間を要するとともに、莫大なデータを記憶する記憶領域も必要となることがあった。
【0024】
また、電線が絶縁破壊するまでの絶縁皮膜の累積電荷量を算出する際、莫大な数のデータを処理する必要があるため、データの取得漏れが発生することがあった。また、オシロスコープ等によって得られた生波形データから電荷量を算出していたため、例えばオシロスコープの性能等によって、データの取りこぼしが発生することがあった。このため、電線の寿命評価の精度が低下することがあった。
【0025】
本発明は、発明者が見出した上記知見に基づくものである。
【0026】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(1)放電電荷量測定装置の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる放電電荷量測定装置の構成について、主に、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態にかかる放電電荷量測定装置1の概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態にかかる放電電荷量測定装置1は、試料2に接続され、試料2に電圧を印加する課電装置3を備えている。試料2としては、例えば、導体と、導体の周囲を被覆するように、樹脂材料によって形成された絶縁体である絶縁皮膜とを備えるエナメル線等の電線を用いる。このような試料2に電圧が印加されると、試料2が備える絶縁皮膜中の微小な空隙や、導体と絶縁皮膜との間の微小な空隙に電界が集中し、微弱な放電(部分放電)が発生する。すなわち、試料2に部分放電が発生する。
【0029】
課電装置3は、試料2に部分放電が生じるような電圧を印加するように構成されている。例えば、課電装置3は、試料2の部分放電開始電圧よりも高い電圧を試料2に印加するように構成されているとよい。すなわち、課電装置3は、インバータサージ電圧よりも高い電圧を試料2に印加するように構成されているとよい。課電装置3としては、例えば、インバータパルス発生器、サージパルス発生器等の電圧印加装置を用いることができる。
【0030】
試料2と接地との間には、コンデンサ4が試料2に直列に接続されている。コンデンサ4は、試料2に部分放電が発生することで生じた電荷を溜めるように構成されている。コンデンサ4としては、静電容量が十分に大きなコンデンサ4を用いるとよい。すなわち、試料2の静電容量よりも大きな静電容量を有するコンデンサ4が用いられるとよい。これにより、課電装置3から試料2に印加される印加電圧の大半を試料2にかけることができる。
【0031】
コンデンサ4の両端には、試料2に発生する部分放電によって、コンデンサ4内に過度の電荷が溜まった場合、コンデンサ4の両端を短絡させて放電させる短絡回路(リフレッシュ回路)5が接続されている。すなわち、短絡回路5は、コンデンサ4の両端を定期的に、そして強制的に短時間(例えばミリ秒(ms))の間短絡させる回路である。これにより、コンデンサ4内に電荷が蓄積することによって、後述のデータロガー6A,6Bによって検出される電圧の変異を抑制できる。従って、コンデンサ4の端子電圧をより正確に測定することができる。
【0032】
短絡回路5は、例えばトリガ信号を発生するトリガ発生器5aと、コンデンサ4への導通及び遮断を制御するリレー回路(スイッチ回路)5bとを備えて構成されている。短絡回路5は、リレー回路5bがトリガ発生器5aからのトリガ信号を受け付けると、リレーを動作させてコンデンサ4の両端を短絡させるように構成されている。また、短絡回路5は、課電装置3に接続され、課電装置3と同期させることが可能なように構成されている。短絡回路5は、課電装置3が試料2への電圧の印加を開始すると、その開始の信号をトリガ発生器5aが受信した後、トリガ発生器5aが、課電装置3から試料2への電圧の印加開始から所定期間毎にトリガ信号(例えば1ミリ秒(ms)幅の駆動パルス)を出力するように構成されている。
【0033】
コンデンサ4の両端には、少なくとも2つ(本実施形態では、例えば2つ)のデータロガー6A,6Bが接続されている。データロガー6A,6Bはそれぞれ、コンデンサ4の端子電圧を測定するとともに、測定した電圧を例えば波形データ等で記録するように構成されている。データロガー6A,6Bは、例えば
図2及び
図3に示すような波形データの形式で、コンデンサ4の端子電圧を記録することができる。なお、データロガーが1つであると、コンデンサ4の端子電圧を連続して記録することはできる。しかしながら、後述するように、データロガー6A,6Bによって記録された電圧のデータから、コンデンサ4に残留する試料2から放電された放電電荷量をコントローラ8によって算出する際、コントローラ8が放電電荷量を算出するまでの時間が長くなる場合がある。また、例えば、試料2の経時変化が分かり難くなる場合もある。
【0034】
図1に示すように、データロガー6A,6Bには、後述のコントローラ8が電気的に接続されている。データロガー6A,6Bは、記録した電圧のデータを、後述のコントローラ8に転送するように構成されている。例えば、データロガー6A,6Bは、データロガー6A,6Bの作動開始からデータロガー6A,6Bの作動停止までの間に(一回の作動で)記録した電圧のデータを例えば1ファイルとし、1ファイル毎に、後述のコントローラ8に転送するように構成されているとよい。
【0035】
データロガー6A,6Bには、データロガー6A,6Bの作動の切り替えを行うタイマ機構7が接続されている。タイマ機構7は、例えばデータロガー6A又はデータロガー6Bの作動開始後、所定の時間(例えば10秒)の監視を行うように構成されている。タイマ機構7は、例えば、データロガー6Aの作動開始後、所定の時間(例えば10秒)が経過すると、作動停止の信号をデータロガー6Aに出力し、作動開始の信号をデータロガー6Bに出力するように構成されている。タイマ機構7としては、例えばタイマ装置やタイマ回路等を用いることができる。
【0036】
すなわち、データロガー6A,6Bは、少なくとも試料2が絶縁破壊に至るまでの間、タイマ機構7によって、所定時間毎(例えば10秒毎)に交互に作動されるように構成されている。このとき、データロガー6A,6Bはそれぞれ、タイマ機構7によって、データロガー6Aの作動が開始された後、データロガー6Bの作動が終了されるように構成されているとよい。これにより、データロガー6A,6Bの切り替えによるコンデンサ4の端子電圧のデータの取りこぼしを抑制できる。
【0037】
データロガー6A,6Bの一回の作動開始から作動終了までの時間(タイマ機構7が監視する時間)は、データロガー6A,6Bの一回の作動によって記録され、後述のコントローラ8に転送される電圧のデータの大きさ等を考慮して決めるとよい。データロガー6A,6Bの一回の作動時間が短かすぎると、後述のコントローラ8に転送され、コントローラ8で処理するデータの数が多くなることがある。従って、データ処理に時間を要するとともに、莫大なデータを記憶する記憶領域も必要となることがある。一方、データロガー6A,6Bの一回の作動時間が長すぎると、1ファイルに格納されるデータの量が多くなりすぎる場合がある。従って、後述するように、コントローラ8が、電圧のデータから、試料2から放電されてコンデンサ4に残留する放電電荷量を算出する際、コントローラ8が放電電荷量を算出するまでの時間が長くなる場合がある。その結果、例えば電圧の記録と放電電荷量の算出とが併行して行われる場合、コントローラ8は、データロガー6A,6Bから次の電圧のデータ(ファイル)が転送されてくるまでに、前の電圧のデータ(ファイル)の放電電荷量の算出を終了することができない場合がある。
【0038】
(制御部)
図4に示すように、制御部であるコントローラ8は、中央処理装置(CPU)9と、内部にメモリ領域を有するメモリ(RAM)10と、例えばフラッシュメモリやHDD等の記憶装置11と、を備えたコンピュータとして構成されている。RAM10、記憶装置11は、ケーブル13を介して、CPU9とデータ交換可能なように構成されている。コントローラ8には、入出力装置14として、例えばタッチパネル、マウス、キーボード等の操作端末が接続されていてもよい。また、コントローラ8には、表示装置15として、例えばディスプレイ等が接続されていてもよい。なお、記憶装置11は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。
【0039】
記憶装置11内には、放電電荷量を算出する手順などが記載されたプログラム、放電電荷量の累積値を算出する手順などが記載されたプログラム等が、読み出し可能に格納されている。CPU9が記憶装置11内に格納されているプログラムを読み出して実行することで、例えば放電電荷量の算出や、放電電荷量の累積値の算出、放電電荷量や放電電荷量の累積値の表示装置15への表示等を実現させるように構成されている。例えば、放電電荷量の算出は、エクセルVBA(Visual Basic for Applications)プログラムをCPU9が実行することで実現される。
【0040】
RAM10は、CPU9によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。プログラムがRAM10に読み出されてCPU9に実行されることにより、後述する放電電荷量の算出や、放電電荷量の累積値の算出をコンピュータであるコントローラ8に実現されるように構成されている。
【0041】
(2)放電電荷量測定方法
続いて、本発明の一実施形態にかかる放電電荷量測定方法について、主に、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態にかかる放電電荷量の測定方法を示すフロー図である。
図6は、本実施形態に係るデータロガー6A,6Bの作動状況の一例を示す模式図である。なお、以下の説明において、放電電荷量測定装置1を構成する各部の動作は、コントローラ8により制御される。
【0042】
(部分放電発生工程)
まず、課電装置3から試料2に電圧を印加し、試料2に部分放電を発生させる。このとき、試料2の部分放電開始電圧よりも高い電圧を、課電装置3から試料2に印加するとよい。
【0043】
(電圧記録工程)
課電装置3による試料2への電圧の印加を開始すると同時に、データロガー6A,6Bの作動を開始し、コンデンサ4の端子電圧の測定及び記録を開始する。そして、データロガー6A,6Bを所定時間毎に交互に作動させて、少なくとも試料2が絶縁破壊に至るまで、試料2から出力された電圧を連続して測定し、電圧のデータを記録する。すなわち、試料2が絶縁破壊に至るまで、コンデンサ4の端子電圧を連続して測定し、記録する。
【0044】
具体的には、まず、データロガー6Aを作動させて、データロガー6Aによる電圧の記録を開始する。データロガー6Aの作動開始から所定時間が経過したら、データロガー6Bを作動させて、データロガー6Bによる電圧の記録を開始する。データロガー6Bの作動を開始したら、データロガー6Aの作動を終了する。そして、データロガー6Bの作動開始から所定時間が経過したら、データロガー6Aの作動を開始する。データロガー6Aの記録を開始したら、データロガー6Bの記録を終了する。このように、データロガー6A,6Bを所定時間毎に交互に作動させて、少なくとも試料2が絶縁破壊に至るまでコンデンサ4の端子電圧を連続して記録する。
【0045】
データロガー6A,6Bの作動を切り替える際、所定の時間だけ、データロガー6Aとデータロガー6Bとを、共に作動させるとよい。すなわち、データロガー6A(又はデータロガー6B)の作動を開始した後、データロガー6B(又はデータロガー6A)の作動を終了するとよい。このようにデータロガー6Aとデータロガー6Bとを所定の時間重複して作動させることで、コンデンサ4の端子電圧のデータの取りこぼしを抑制できる。
【0046】
データロガー6A及びデータロガー6Bの作動の切り替えは、データロガー6A,6Bに接続されるタイマ機構7によって行う。すなわち、タイマ機構7は、データロガー6A(データロガー6B)の作動開始後、所定の時間(例えば10秒)を監視し、所定の時間が経過したら、データロガー6A(データロガー6B)には作動停止の信号を出力し、データロガー6B(データロガー6A)には作動開始の信号を出力する。これにより、データロガー6A及びデータロガー6Bを所定時間毎に交互に作動させることができる。
【0047】
データロガー6A,6Bは、記録したコンデンサ4の端子電圧のデータを、例えば波形データの形式でCPU9に転送する。すなわち、データロガー6A,6Bは、データロガー6A,6Bの作動停止から次にデータロガー6A,6Bの作動が開始されるまでの間に、一回の作動で記録した電圧のデータを例えば1ファイルとし、CPU9に転送する。このとき、データロガー6A又はデータロガー6Bのどちらで記録したかを特定できるように、CPU9に転送する電圧のデータにはデータロガーを特定する情報を付すとよい。また、CPU9に転送する電圧のデータに、時間情報を付してもよい。
【0048】
なお、コンデンサ4に過度の電荷が溜まった際、コンデンサ4の両端に接続される短絡回路を作動させて、コンデンサ4の両端を短絡させて放電する。好ましくは、例えば、課電装置3により試料2への電圧の印加の開始から所定時間毎に、短絡回路5を作動させる。これにより、コンデンサ4に加わる電圧をより正確に測定できる。
【0049】
(放電電荷量算出工程)
CPU9は、データロガー6A,6Bから電圧のデータを受信すると、電圧のデータをRAM10に送信するとともに、記憶装置11内から放電電荷量を算出するプログラムをRAM10に読み出す。そして、CPU9は、RAM10で受信した電圧のデータからコンデンサ4内に残留する試料2から放電された放電電荷量を算出する。これにより、所定期間内に試料2が部分放電することで発生した電荷量を算出できる。
【0050】
具体的には、まず、CPU9は、受信した電圧のデータから、コンデンサ4の端子電圧の差を算出する。そして、コンデンサ4の端子電圧の差に、コンデンサ4の静電容量を乗じることで、コンデンサ4内に残留する試料2から放電された放電電荷量を計算する。例えば、CPU9に
図3に示す電圧のデータが転送されてきた場合、コンデンサ4内に残留する試料2から放電された放電電荷量は下記(式1)により算出できる。なお、
図3中の実線は、部分放電が発生していないときのコンデンサ4の端子電圧を示し、
図3中の点線は、部分放電が発生しているときのコンデンサ4の端子電圧を示す。
(式1)
Q=Cd×(|V2―V1|+|V3―V2|)
なお、Qはコンデンサ4内に残留する試料2から放電された放電電荷量であり、Cdは、コンデンサ4の静電容量であり、V1,V2,V3はそれぞれ、部分放電が発生しているときのコンデンサ4の端子電圧の値と部分放電が発生していないときのコンデンサの端子電圧との差(コンデンサ4の端子電圧の差)の値である。
【0051】
このとき、CPU9は、データロガー6A(データロガー6B)の一回の作動開始から作動終了までの期間毎に放電電荷量を算出するとよい。すなわち、CPU9は、例えば、データロガー6A、6Bから転送されてきたファイル毎に放電電荷量を算出して記憶装置11内に読み出し可能に保管するとよい。
【0052】
なお、上述したように、データロガー6A及びデータロガー6Bを重複して作動させる期間がある。従って、放電電荷量を算出する際、データロガー6A,6Bを重複して作動させる期間(以下、重複期間ともいう。)の電圧を、データロガー6Aで測定した電圧又はデータロガー6Bで測定した電圧のいずれかから減算する。例えば、
図6に示すように、データロガー6Aとデータロガー6Bとが重複して作動される期間T1の電圧は、データロガー6Bの電圧B1から減算する。また、重複期間T2の電圧は、データロガー6Aの電圧A2から減算する。すなわち、重複期間の電圧は、作動を開始したデータロガー6A,6Bの電圧から減算する。
【0053】
CPU9は、算出した放電電荷量を所定期間(データロガー6A,6Bから転送されてきたファイル)毎に記憶装置11内に読み出し可能に保管する。
【0054】
(累積放電電荷量算出工程)
放電電荷量算出工程が終了し、CPU9が放電電荷量算出終了の指令を受信すると、CPU9は、記憶装置11内から放電電荷量をRAM10に読み出すとともに、記憶装置11内から累積放電電荷量を算出するプログラムをRAM10に読み出す。そして、CPU9は、試料2が絶縁破壊に至るまで、放電電荷量を算出する毎に累積していき、累積放電電荷量を算出する。すなわち、試料2が絶縁破壊に至るまでの全てのファイルに記載された放電電荷量を累積する。これにより、試料2が部分放電の発生によって絶縁破壊に至るまでの電荷量の総和(以下、「総放電電荷量」ともいう。)を確認でき、電線の部分放電に対する寿命を評価することができる。
【0055】
(表示工程)
CPU9が入出力装置14から試料2が絶縁破壊するまでのコンデンサ4の放電電荷量(すなわち、試料2から放電された電荷量)の表示要求の指令を受信すると、CPU9は、記憶装置11内から、試料2から放電された電荷量の算出結果を読み出し、表示装置15に表示する。このとき、例えば
図7に示すように、試料2から放電された電荷量の算出結果をグラフ化して表示装置15に時系列表示するとよい。なお、表示装置15に表示するグラフは、
図7に示すような折れ線グラフに限定されず、例えば棒グラフ等であってもよい。
【0056】
また、CPU9が入出力装置14から試料2が絶縁破壊するまでのコンデンサ4の累積放電電荷量(すなわち、試料2から放電された累積電荷量)の表示要求の指令を受信すると、CPU9は、記憶装置11内から試料2の累積電荷量の算出結果を読み出して表示装置15に表示する。このとき、例えば
図8に示すように、試料2から放電された累積電荷量の算出結果をグラフ化して表示装置15に時系列で表示するとよい。なお、表示装置15に表示するグラフは、
図8に示すような折れ線グラフに限定されず、例えば棒グラフ等であってもよく、また試料2から放電された累積電荷量の数値のみを表示装置15に表示してもよい。
【0057】
なお、上述の電圧記録工程と、放電電荷量算出工程と、累積放電電荷量算出工程と、表示工程とを併行して行うとよい。これにより、例えば、試料2が絶縁破壊に至ったことをより早く検知できる。また、例えば、試料2や放電電荷量測定装置に異常が発生した場合、異常をより早く検知できる。
【0058】
試料2が絶縁破壊に至ったことが確認できたら、課電装置3から試料2への電圧の印加を停止するとともに、データロガー6A,6Bによる測定を停止し、本実施形態にかかる放電電荷量の測定を終了する。
【0059】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0060】
(a)本実施形態によれば、課電装置3から電圧を印加し、試料2に部分放電を発生させ、少なくとも試料2が絶縁破壊するまで、コンデンサ4の両端に接続される2つのデータロガー6A,6Bを所定時間毎に交互に作動させ、コンデンサ4の端子電圧を連続して測定し、記録している。また、データロガー6A,6Bで記録したコンデンサ4の端子電圧の差に、コンデンサ4の静電容量を乗じることで、試料2から放電されてコンデンサ4に残留する放電電荷量を算出している。そして、少なくとも試料2が絶縁破壊するまでの放電電荷量の値を累積して累積放電電荷量を算出している。これにより、試料2が絶縁破壊するまでに生じる電荷量の総和(総放電電荷量)を知り、試料2である電線の寿命評価の指標とすることができる。また、試料2が部分放電することで生じる電荷量を、少ないデータ数で正確に算出することができる。これにより、試料2が部分放電することで生じる電荷量を、短時間で算出することができる。
【0061】
(b)本実施形態によれば、データロガー6Aの作動を開始した後、データロガー6Bの作動を終了するように、2つのデータロガー6A,6Bの作動の切り替えをタイマ機構7によって行っている。これにより、コンデンサ4の端子電圧のデータの取りこぼしを抑制できる。従って、試料2の寿命評価をより正確に行うことができる。
【0062】
(c)本実施形態によれば、データロガー6A,6Bは、一回の作動開始から作動終了までの所定期間毎に、電圧のデータをコントローラ8に転送している。そして、コントローラ8は、データロガー6A,6Bから転送されてきた所定期間の電圧のデータ毎に、コンデンサ4の放電電荷量及び累積放電電荷量を算出している。これにより、試料2が絶縁破壊するまでに放電する総放電電荷量を、より少ない数のデータで、正確に算出することができる。
【0063】
(d)本実施形態によれば、試料2が部分放電することで、コンデンサ4に過度の電荷が溜まった際、コンデンサ4の両端に接続される短絡回路5により、コンデンサ4の両端を短絡させて放電させている。これにより、試料2の寿命の評価をより正確に行うことができる。
【0064】
(e)本実施形態によれば、試料2が絶縁破壊するまで、放電電荷量及び累積放電電荷量を、所定の形式で表示部に時系列表示させている。これにより、試料2の寿命の評価をより容易に行うことができる。
【0065】
(f)本実施形態では、電圧記録工程と、放電電荷量算出工程と、累積放電電荷量算出工程と、表示工程とを併行して行っている。これにより、試料2が絶縁破壊に至ったことを素早く、かつ容易に検知できる。また、例えば試料2や放電電荷量測定装置1に異常が発生した場合、異常を素早く、かつ容易に検知できる。
【0066】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0067】
上述の実施形態では、2つのデータロガー6A,6Bを用いたが、これに限定されるものではない。すなわち、放電電荷量測定装置1は、3つ以上のデータロガーを備えていてもよい。
【0068】
上述の実施形態では、データロガー6Aの作動から開始したが、これに限定されるものではなく、データロガー6Bの作動から開始してもよい。また、放電電荷量測定装置1が3つ以上のデータロガーを備える場合、3つのデータロガーを所定時間毎に交互に作動させて、コンデンサ4に加わる電圧を連続して測定し、記録することができれば、いずれのデータロガーの作動から開始してもよい。
【0069】
上述の実施形態では、電圧記録工程と、放電電荷量算出工程と、累積放電電荷量算出工程と、表示工程とを併行して行ったが、これに限定されるものではない。すなわち、放電電荷量算出工程、累積放電電荷量算出工程、表示工程はそれぞれ、例えばCPU9が入出力装置14から各工程の開始のコマンドの入力を受け付けたときに、開始するようにしてもよい。この場合、データロガー6A,6Bは、コンデンサ4に加わる電圧を測定して記録した後、電圧のデータを記憶装置11に転送し、記憶装置11内に読み出し可能に保管するように構成されている。そして、例えばCPU9が入出力装置14から放電電荷量の算出開始のコマンドの入力を受け付けると、CPU9は、記憶装置11内から所定のプログラム及び電圧のデータを読み出し、放電電荷量を算出するように構成されている。
【0070】
上述の実施形態では、放電電荷量算出工程において、データロガー6A,6Bの一回の作動毎に放電電荷量を算出したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、課電装置3から試料2に印加される電圧の1パルス毎に放電電荷量を算出してもよい。
【0071】
上述の実施形態では、放電電荷量算出工程において、重複期間の電圧を、作動を開始したデータロガー6A,6Bの電圧から減算したが、これに限定されるものではない。例えば、作動を終了したデータロガー6A,6Bの電圧から減算してもよい。すなわち、重複期間T1の電圧をデータロガー6Aの電圧A1から減算し、重複期間T2の電圧をデータロガー6Bの電圧B1から減算してもよい。また、例えば、重複期間の電圧をデータロガー6Aの電圧から減算してもよい。すなわち、重複期間T1の電圧をデータロガー6Aの電圧A1から減算し、重複期間T2,T3の電圧を、データロガー6Aの電圧A2から減算してもよい。また、例えば、重複期間の電圧をデータロガー6Bの電圧から減算してもよい。すなわち、重複期間T1,T2の電圧をデータロガー6Bの電圧B1から減算してもよい。
【0072】
上述の実施形態では、表示工程において、試料2の電荷量及び累積電荷量を時系列の折れ線グラフでそれぞれ表示したが、これに限定されるものではない。
【0073】
上述の実施形態では、放電電荷量や、放電累積電荷量等の算出をRAM10を介して行ったが、これに限定されるものではない。すなわち、CPU9は、RAM10を介さずに、記憶装置11内からCPU9内に所定のプログラムを読み出し、CPU9内で放電電荷量や、放電累積電荷量等の算出を行ってもよい。