特許第5958415号(P5958415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958415
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】酸化亜鉛焼鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 19/38 20060101AFI20160719BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20160719BHJP
   F27B 7/32 20060101ALI20160719BHJP
   C22B 1/216 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   C22B19/38
   C22B7/02 A
   F27B7/32
   !C22B1/216
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-93902(P2013-93902)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-214360(P2014-214360A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智洋
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−144213(JP,A)
【文献】 特開平10−277376(JP,A)
【文献】 特開2012−201947(JP,A)
【文献】 特開2012−250236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
F27B 7/00−7/42
F27D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルン内に、湿式処理を経て水分率が10%から40%である酸化亜鉛含有の湿式ケーキを含む原材料を投入して、加熱乾燥処理を行う乾燥加熱工程を備える酸化亜鉛焼鉱の製造方法であって、
前記原材料の投入時に、前記原材料に対して、外部からの水分の添加を行わずに、せん断力を付与しつつ混錬しながら、不等速二軸スクリューコンベアによって搬送し、
前記原材料を構成する個々の酸化亜鉛粒子表面から前記原材料の表層に水分移動させて、前記原材料の下記の定義による差分含水率が5%以上20%以下である状態で前記投入を行う酸化亜鉛焼鉱の製造方法。
差分含水率=所定乾燥時間(差分が最大となる乾燥時間であり、例えば3時間後)における、前記混錬後の原材料の含水率−前記混錬前の該原材料の含水率
【請求項2】
前記原材料を構成する酸化亜鉛粒子の表面が、気体状態からの昇華固化に伴う不規則形状であり、且つ、嵩比重が1以下である請求項1記載の酸化亜鉛焼鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛焼鉱の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、乾燥加熱処理を行うロータリーキルンへの酸化亜鉛ケーキの投入時に発生するキャリーオーバーを低減することができる酸化亜鉛焼鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業における高炉や電気炉から発生する鉄鋼ダストは、その主成分である酸化鉄以外に、亜鉛成分や鉛成分が相当量含有されており、従来からこの鉄鋼ダスト中における亜鉛成分及び鉛成分を、酸化亜鉛焼鉱又は酸化亜鉛団鉱として回収することが行われている。
【0003】
この酸化亜鉛焼鉱又は酸化亜鉛団鉱の製造方法において、還元焙焼炉から得られた粗酸化亜鉛に湿式処理を施すことでハロゲン化物を除去して、乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)にて焼成及び造粒を行う方法がある。湿式処理を施されて得られる酸化亜鉛含有の湿式ケーキを含む原材料(以下、この原材料を、単に「酸化亜鉛ケーキ」とも言う)を、DRKにて焼成し、造粒することにより、酸化亜鉛焼鉱又は酸化亜鉛団鉱を製造することができる。このDRKによる焼成に際し、上記の酸化亜鉛ケーキは、例えば公知のスクリューコンベアによってDRK内に投入される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−144213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、DRKにおいては、炉内空間を、1000℃以上1300℃以下に達する高温のガスが通過するため、特許文献1に記載の方法のように、一般的な搬送装置によって脱水処理を施した上記酸化亜鉛ケーキを投入すると、頻繁にキャリーオーバーが発生することが問題となっていた。
【0006】
上記状況に鑑み、本発明は、DRK等の乾燥加熱装置における投入物のキャリーオーバーを低減することにより、DRKによる乾燥加熱工程を含む酸化亜鉛焼鉱の生産性を高めることのできる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、DRKへの酸化亜鉛ケーキ投入時のキャリーオーバーを低減する手段として、酸化亜鉛ケーキのDRKへの投入前に投入物にせん断力を付与しつつ混錬することにより、酸化亜鉛ケーキの粘性を低下させることが可能であり、そのような状態でDRKへの投入を行うことにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より、具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) ロータリーキルン内に、湿式処理を経て水分率が10%から40%である酸化亜鉛含有の湿式ケーキを含む原材料を投入して、加熱乾燥処理を行う乾燥加熱工程を備える酸化亜鉛焼鉱の製造方法であって、
前記原材料の投入時に、前記原材料に対してせん断力を付与しつつ混錬しながら搬送することにより、前記原材料を構成する酸化亜鉛粒子の変形に伴う密着性が向上した状態で前記投入を行うことにより、前記原材料のキャリーオーバーを減少させることを特徴とする酸化亜鉛焼鉱の製造方法。
【0009】
(2) 前記原材料を構成する個々の酸化亜鉛粒子表面から前記原材料の表層に水分移動させて、前記原材料の内部の水分が低下した状態で前記投入を行う(1)に記載の酸化亜鉛焼鉱の製造方法。
【0010】
(3) 前記原材料を構成する酸化亜鉛粒子の表面が、気体状態からの昇華固化に伴う不規則形状であり、且つ、嵩比重が1以下である(1)又は(2)に記載の酸化亜鉛焼鉱の製造方法。
【0011】
(4) 前記混錬及び搬送を、不等速二軸スクリューコンベアによって行う(1)から(3)のいずれかに記載の酸化亜鉛焼鉱の製造方法。
【0012】
上記(1)から(3)の発明によれば、原材料の投入時に、原材料に対してせん断力を付与しつつ混錬しながら搬送することにより、原材料を構成する酸化亜鉛粒子表面にある凹凸部の変形に伴って粘性が向上した状態で、且つ、個々の酸化亜鉛粒子表面から水分を原材料表面に搾り出しながら、原材料の内部の水分が低下した状態で前記投入を行うことにより、原材料のキャリーオーバーを効果的に減少させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、湿式処理を経て所定の水分を含有する酸化亜鉛含有の湿式ケーキをDRKに投入する際のキャリーオーバーを低減することにより、DRKを用いた酸化亜鉛焼鉱の生産性を高めることができる酸化亜鉛焼鉱の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の酸化亜鉛鉱の製造方法の実施態様の一例を示すフローチャートである。
図2】本発明の酸化亜鉛焼鉱の製造方法を好ましく実施することのできる二軸不等速スクリューを備えるロータリーキルンの断面模式図である。
図3】本発明の酸化亜鉛焼鉱の製造方法に係る含水率の高い湿式ケーキの、本発明の方法による混錬前の状態を示す写真である。
図4】本発明の酸化亜鉛焼鉱の製造方法に係る含水率の高い湿式ケーキの、本発明の方法による混錬後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の酸化亜鉛焼鉱の製造方法の好ましい一実施態様について説明するが、本発明は、以下の実施態様に限定されるものではない。
【0016】
<全体プロセス>
図1に示すように、本発明の酸化亜鉛焼鉱の製造方法は、鉄鋼ダストを還元焙焼して粗酸化亜鉛を得る還元焙焼工程S10、還元焙焼工程S10で得た粗酸化亜鉛からフッ素及びカドミウムを分離除去して酸化亜鉛ケーキを得る湿式工程S20、及び、湿式工程S20で得た酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱して酸化亜鉛焼鉱を得る乾燥加熱工程S30と、湿式工程S20から排出される排出液を分離処理する排水処理工程S40と、乾燥加熱工程S30から排出された排ガスを固体と気体へ分離する固気分離処理を行う排ガス処理工程S50と、を備える全体プロセスである。本発明の酸化亜鉛焼鉱の製造方法は、特に乾燥加熱工程S30において、上記酸化亜鉛ケーキの有する、変形力による粘性向上、即ち、広義のチクソトロピー性に着眼し、このような物性を有する酸化亜鉛ケーキをDRKに投入する前段階で、これにせん断力を付与しつつ混錬する処理を行うものである。この処理によって、原材料の粘性を低下させた状態でDRKへの投入を行うことができる。そして、その結果、DRKにおける原材料のキャリーオーバーの発生を低減させることができる方法である点に特徴がある。
【0017】
<還元焙焼工程>
鉄鋼ダストから粗酸化亜鉛を回収する還元焙焼工程S10を行う具体的な方法としては、還元焙焼ロータリーキルン(RRK)による還元焙焼法を採用するのが一般的である。以下、還元焙焼工程S10に投入する原料鉱として、鉄鋼ダストを用いる場合について説明する。この場合において、鉄鋼ダストは必要に応じて予め大きさ5〜10mm程度のペレットに成形され、石炭、コークス等の炭素質還元剤と石灰石等とともにRRKに連続的に装入される。キルン内は重油の燃焼と装入した炭素質還元剤の燃焼により、被処理物の最高温度が1100〜1200℃程度にコントロールされている。このキルン内で鉄鋼ダストは還元焙焼され、揮発した金属亜鉛は排ガス中で再酸化されて粉状の酸化亜鉛となる。鉄鋼ダスト中に少量含まれる鉛についても、同様に還元焙焼され、揮発した金属鉛は排ガス中で再酸化されて粉状の酸化鉛となる。粉状の酸化亜鉛及び酸化鉛等は、ロータリーキルンからの排ガスとともに集塵機に導入され、捕捉されて粗酸化亜鉛として回収される。この粗酸化亜鉛は、一般に8〜20%程度の塩素等のハロゲン不純物を含有する。一方、揮発せずにキルン中に残った還元焙焼残渣は、還元された鉄分が多く含有されるため、還元鉄ペレットと称する製品としてキルン排出端より回収され、鉄鋼メーカーに鉄原料として払いだされる。
【0018】
<湿式工程>
湿式工程S20は、粗酸化亜鉛に含有される上記の不純物を処理液中に分離抽出し、更に固液分離処理によって粗酸化亜鉛から不純物を除去する湿式処理を行う工程である。湿式工程S20においては、還元焙焼工程S10を経て回収された粗酸化亜鉛を、レパルプすることにより粗酸化亜鉛スラリーとする。この処理により、粗酸化亜鉛に含有される主に塩素化合物等のハロゲン系不純物、カドミウムを処理液中に分配する。湿式工程S20によって粗酸化亜鉛中のハロゲン及びカドミウムが処理液中に除去される。そしてこの状態において、固液分離により、不純物が分配された処理液を分離して排出液とする。尚、固液分離のための脱水処理については、シックナー等の重力沈降式スラリー濃縮装置や真空脱水機等の水分強制脱水装置を用いることができる。湿式工程S20を経て不純物を十分に除去した酸化亜鉛スラリーには、真空吸引型脱水機等によって脱水し、酸化亜鉛含有の湿式ケーキとした上で、次工程の乾燥加熱工程S30に投入する。
【0019】
<乾燥加熱工程>
乾燥加熱工程S30は、湿式工程S20において上記の酸化亜鉛ケーキを、DRKに装入して焼成することにより、カドミウム及びフッ素濃度を更に低減させる工程である。
【0020】
乾燥加熱工程S30における加熱温度については、DRKより排出されるときの焼鉱の温度が、1100℃以上1150℃以下となるように維持管理することが好ましい。ここで、DRKに投入される粗酸化亜鉛ケーキ中に尚残留するフッ素の形態は、一般的に、大部分が塩化フッ化鉛(PbFCl)で、一部が、2フッ化カルシウム(CaF)となっている。このうちPbFClは焼鉱の温度を上記温度範囲内に維持することによりほぼ全量が分解揮発され、PbFCl由来の塩素とフッ素は、ほぼ全量が排ガス処理工程S50内の排ガス処理設備に排出される。
【0021】
ここで、乾燥加熱工程S30へと投入される酸化亜鉛ケーキは、通常、その水分率が10%から40%の範囲となっている。
【0022】
又、この酸化亜鉛ケーキは、酸化亜鉛ケーキを構成する酸化亜鉛粒子自体が不規則形状、又はポーラスで嵩比重が好ましくは1以下である。このことは、酸化亜鉛粒子のRRKにおける形成過程から理解できる。即ち、RRK内においては亜鉛蒸気の冷却凝集によって酸化亜鉛粒子が形成されるが、この際には、主に最初に形成された微粒子が核となって、そこから不規則形状に成長して、表面に多数突起部と多数の谷部とを有する粒子となる。これがRRK由来の酸化亜鉛粒子のもつ構造的な特徴である。この点、一般に熔融物が固化する場合には表面張力によって滑らかな球状が得られ、本願の粒子は、これとは構造的に全く異なる粒子となっている。
【0023】
尚、酸化亜鉛自体の真比重は5.6であるところ、後述する実施例において原材料として用いた酸化亜鉛粒子の嵩比重は、DRK装入前の原材料を乾燥した状態で測定して0.4であった。このことからも、本願の酸化亜鉛粒子が不規則形状、又は、ポーラス構造であることが理解できる。
【0024】
本願の酸化亜鉛粒子を含む原材料は、上記のような構造的特徴を有している結果、せん断力により変形しやすく、且つ水分も抱え込みやすいと考えられる。即ち、個々の酸化亜鉛粒子は、表面の不規則形状であるがゆえに、せん断力により変形しやすく、粒子同士が相互に密着し、結合性が向上しやすい構造となっている。これが、本発明における「変形に伴う密着性が向上した状態」である。
【0025】
又、同時に個々の粒子表面が不規則形状であるがゆえに水分を抱え込みやすく、これら水分は個々の粒子の変形に伴い、個々の粒子表面から原材料凝集体表層部へ移行し、凝集体内部の水分は低下しやすい構造となっている。これは広義のチクソトロピー性を有しているとも言え、原材料の爆裂を抑制する理由であると推定される。これら粒子相互の結合性の向上及び原材料の爆裂現象の抑制により、原材料の粉化が抑えられ、キャリーオーバーが減少している。
【0026】
尚、原材料における水分移行の程度は、混練前後のサンプルそれぞれ500gを、100℃で乾燥させて、含水率(水分率)の経時変化を求めることで測定できる。具体的には、混練前サンプル(A)及び混練後サンプル(B)(共に初期含水量は同じ)のそれぞれについて含水率の経時変化を見ると、共に乾燥によって含水率が低下して最終的に乾燥終期には同じ水分率になるが、その経過が異なっている。乾燥途中(例えば3時間後)においては混練前サンプル(A)のほうが混練後サンプル(B)より水分蒸散が早く含水率が低い。この含水率の差分は、混練後サンプル(B)では水分が表面に移行して凝集流動化した結果、混練前サンプル(A)より水分蒸散速度が抑制されているものと考えられる。このため、所定乾燥時間(差分が最大となる乾燥時間であり、例えば3時間後)における、混練後サンプル(B)の含水率(高い)−混練前サンプル(A)の含水率(低い)=差分含水率、を以って水分移行(広義のチクソ性発現)の程度の目安とすることができる。本発明においては、この差分含水率が5%以上20%以下となるように混練を行うことが好ましい。
【0027】
このように、せん断力により粒子同士が相互に密着し、且つ粒子表面から原材料凝集体表層部へ水分移行した酸化亜鉛粒子は、相互の結合性が向上した凝集体となるため、凝集体表層からの水分蒸散が抑制される。又、凝集体内部の水分が少なくなっているために、DRK内で加熱されても水蒸気爆発を生じて粉々になることが少なく、その結果、キャリーオーバーを効果的に防止できるものである。
【0028】
本発明の製造方法においては、乾燥加熱工程S30へと投入する酸化亜鉛ケーキを、DRKへの投入の前に、何らかの混錬手段によって、せん断力を付与しながら混錬する。この混錬の手段は特に限定されないが、酸化亜鉛ケーキのDRKへの搬送手段を不等速二軸スクリューとすることによって、搬送中に混錬を行うことが極めて好ましい。これについては後段にて更に詳しく述べる。
【0029】
<排水処理工程>
排水処理工程S40は、湿式工程S20において粗酸化亜鉛から分離されたフッ素やカドミウムを高濃度で含有する廃液から、フッ素及びカドミウムを除去し、更に、廃液中に微量含まれる重金属を中和処理により抽出し、最終的にpHを調整して無害の排水とする工程である。
【0030】
<排ガス処理工程>
排ガス処理工程S50では、乾燥加熱工程S30においてDRKから排出された排ガスの固気分離処理を行う。
【0031】
<ロータリーキルン及び不等速二軸スクリューコンベア>
次に、上記の本発明の製造方法を実施可能なロータリーキルンの好ましい一例として、不等速二軸スクリューコンベア2を備えるロータリーキルン1の全体構成及び使用態様につき説明する。
【0032】
図2に示す通り、ロータリーキルン1は、耐火性を備える円筒形の釜であるキルン本体10、酸化亜鉛ケーキの搬送手段であり混錬手段ともなる不等速二軸スクリューコンベア20、キルン本体10の排出口12側近傍に設けられる加熱装置でありロータリーキルン1の熱源となるバーナー部30、キルン本体10に図中のR方向への回転力を伝える駆動ギヤ40、キルン本体10から排出される排ガスの拡散を防止する固定フード50、及び、キルン本体10を支持するキルン支持部(図示せず)を備える回転式の加熱炉である。
【0033】
以上の構成を有するロータリーキルン1は、バーナー部30によりキルン本体10の内部を1100℃以上1300℃以下程度の高温に加熱し、駆動ギヤ40によりキルン本体10をR方向に回転させた状態で、不等速二軸スクリューコンベア20によって、酸化亜鉛ケーキを投入口11より図1に示すa方向へと連続的に投入する。酸化亜鉛ケーキはキルン本体10の傾斜に沿って攪拌、焼成されながらキルン本体10内を排出口12の方向に向かって移動してゆき、排出口12から高温の被焼成物としてb方向に排出される。
【0034】
不等速二軸スクリューコンベア20は、キルン本体に投入する酸化亜鉛ケーキを、キルン本体10内に搬送し投入する装置であり、キルン本体10の炉尻側から炉内に挿入配置される。不等速二軸スクリューコンベア20は、特に限定はされないが、一例として、特許第3683672号公報に開示されている混錬機を好ましく用いることができる。
【0035】
不等速二軸スクリューコンベア20は、ベルトコンベアや従来公知の一般的なスクリューコンベアとは異なり、2つの回転軸が不等速に回転する。そのため、微妙な異相変換が発生し、混錬羽根により相互に搬送物の掻き落としが行われる。その結果、不等速二軸スクリューコンベア20は、セルフクリーニングしながら、付着性が高い酸化亜鉛ケーキを詰まらせることなく円滑に搬送することができる。そして、その搬送の過程で、酸化亜鉛ケーキに、せん断力を付与しつつ混錬することができる。より詳細には、酸化亜鉛ケーキを、不等速二軸スクリューコンベア20内に連続的に投入する際に、外部から水分の添加は不要であり、スクリュー回転軸の回転数の制御のみによって、酸化亜鉛ケーキの混錬の度合いを調整し、これにより、酸化亜鉛ケーキの結合性を向上させ、キャリーオーバーの発生を低減することができる。
【0036】
尚、不等速二軸スクリューコンベア2は、必ずしも本発明の必須の構成要件ではなく、本発明の効果を発現させるための酸化亜鉛ケーキの混錬手段は、不等速二軸スクリューコンベア20と同様の混錬効果を得られる他の手段であってもよい。但し、本発明の製造方法の実施においては、ロータリーキルン1に不等速二軸スクリューコンベア2を備えさせることが好ましい。上記の通り、酸化亜鉛ケーキの搬送手段としても極めて好ましい装置である不等速二軸スクリューコンベア20を、酸化亜鉛ケーキの混錬手段を兼ねるものとして用いることにより、特に混連処理のみを目的とした新たな装置や新たな処理の追加を必要とせずに本発明を実施することができるからである。
【0037】
以上、本発明の実施態様について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。又、本発明の実施態様に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、上記実施態様に限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
DRKへの酸化亜鉛ケーキの搬送手段として不等速二軸スクリューコンベアではなく、一般的なスクリューコンベアを用いていた酸化亜鉛焼鉱の製造プラントにおいて、当該スクリューコンベアに代えて、不等速二軸スクリューコンベアを設置して、試験的な製造を行ったところ、キャリーオーバー率は、搬送手段交換前の30%から22%へと低減することが確認された。尚、キャリーオーバー率は、(キャリーオーバー率)=(酸化亜鉛ケーキの総投入量−酸化亜鉛焼鉱の生産量)/(酸化亜鉛ケーキの総投入量)とし、搬送手段交換時の前後2ヶ月のデータより算出した。
【0039】
又、図3は、上記の酸化亜鉛焼鉱の試験的製造における、酸化亜鉛ケーキの混錬前、即ち、不等速二軸スクリューコンベアへの投入前の状態を撮影した写真である。そして、図4は、同一の酸化亜鉛ケーキの混錬後、即ち、不等速二軸スクリューコンベアによる混錬後、DRKへの投入直前のものを製造ラインから採取してその状態を撮影した写真である。
【0040】
図3及び、図4から、酸化亜鉛焼鉱の製造過程でDRKに投入される一般的な酸化亜鉛ケーキは、せん断力を付与しつつ混錬することにより、粒子相互の密着性向上と原材料の表層への水分の移行を発現していることが理解できる。
【0041】
上記結果より、本発明の製造方法は、酸化亜鉛焼鉱の製造において、DRKへの酸化亜鉛ケーキの投入時に、酸化亜鉛ケーキを、例えば不等速二軸スクリューコンベアによって、せん断力を付与しつつ混錬することにより、密着性を向上させてキャリーオーバーの発生を低減し、酸化亜鉛焼鉱の生産性の向上に寄与しうる製造方法であることが分かる。
【符号の説明】
【0042】
S10 還元焙焼工程
S20 湿式工程
S30 乾燥加熱工程
S40 排水処理工程
S50 排ガス処理工程
1 ロータリーキルン
10 キルン本体
11 投入口
12 排出口
20 不等速二軸スクリューコンベア
30 バーナー部
40 駆動ギヤ
50 固定フード
図1
図2
図3
図4