(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、中間ヨークの磁性体を第1可動子及び第2可動子の間隙の略中央に配するよりも、低速で回転する可動子側に寄せて配置した方が、トルクの伝達効率が高いという事実を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気ギア装置は、特定の方向に沿って略等間隔に複数の磁極対がそれぞれ配されている第1磁石列と、該第1磁石列に対向しており、前記第1磁石列よりも短ピッ
チで前記特定の方向に沿って略等間隔に複数の磁極対がそれぞれ配されている第2磁石列と、前記第1磁石列及び第2磁石列間に配置してあり、前記特定の方向に沿って略等間隔に複数の磁性体がそれぞれ配されている磁性体列とを備える磁気ギア装置において、前記複数の磁性体
は、前記第2磁石列
寄りに配されていることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、第1磁石列が高速、第2磁石列が低速で回転又は移動する場合、複数の磁性体は、高速側の第1磁石列に比べて、低速側の第2磁石列側寄りに配されている。後述するように、複数の磁性体を、第1磁石列と、第2磁石列との間隙の略中央部に配する場合に比べて、第1磁石列と、第2磁石列との間で伝達させるトルクは大きい。
同様に、第1磁石列が低速、第2磁石列が高速で回転又は移動する場合、複数の磁性体は、高速側の第2磁石列に比べて、低速側の第1磁石列側寄りに配されている。後述するように、複数の磁性体を、第1磁石列と、第2磁石列との間隙の略中央部に配する場合に比べて、第1磁石列と、第2磁石列との間で伝達させるトルクは大きい。対向方向における第1磁石列と第2磁石列との間隔が同じでかつ磁性体の厚さが同じ場合、つまり該間隔及び厚さが一定の設計値に固定されている場合には、複数の磁性体は低速側にあるほうが良い。
【0008】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記磁性体列は、前記複数の磁性体を保持しており、前記第1磁石列側と、前記第2磁石列側とを隔てる隔壁を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、第1磁石列側と、第2磁石列側とを隔てる隔壁を備えているため、第1磁石列側の雰囲気と、第2磁石列側の雰囲気とを隔てることが可能である。
【0010】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記複数の磁性体は、前記第2磁石列
側に露出するように前記隔壁に保持されていることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、第1磁石列が高速、第2磁石列が低速で回転又は移動する場合、磁性体列の隔壁から第2磁石列側に磁性体が露出している。従って、磁性体と、第2磁石列との距離を極力短くすることができ、伝達トルクを向上させることが可能である。また、磁性体が第1磁石列側の雰囲気に露出されることを防ぐことが可能である。
同様に、第1磁石列が低速、第2磁石列が高速で回転又は移動する場合、磁性体列の隔壁から第1磁石列側に磁性体が露出している。従って、磁性体と、第1磁石列との距離を極力短くすることができ、伝達トルクを向上させることが可能である。また、磁性体が第2磁石列側の雰囲気に露出されることを防ぐことが可能である。
【0012】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記複数の磁性体は、前記隔壁に埋没していることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、磁性体は隔壁に埋没しているため、磁性体が第1磁石列側及び第2磁石列側の雰囲気に露出されることを防ぐことが可能である。
【0014】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記磁性体列は、隣り合う前記複数の磁性体同士を連結する連結部を備え、前記複数の磁性体及び連結部は一体形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、複数の磁性体は連結部で連結してあり、一体形成されるため、磁性体列の配列が容易である。
【0016】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記連結部
は、前記第1磁石列
寄りに配されていることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、第1磁石列が高速、第2磁石列が低速で回転又は移動する場合、連結部と第1磁石列との前記対向方向における距離は、連結部と第2磁石列との距離に比べて短いため、連結部は磁気的に飽和する。このため、伝達力に寄与しない無効磁束の割合が減少する。
同様に、第1磁石列が低速、第2磁石列が高速で回転又は移動する場合、連結部と第2磁石列との前記対向方向における距離は、連結部と第1磁石列との距離に比べて短いため、磁気的に飽和する。このため、伝達力に寄与しない無効磁束の割合が減少する。
【0018】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記複数の磁性体は積層鋼板を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、磁性体に渦電流が発生しにくい。
【0020】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁石列は焼結磁
石を含み、前記第2磁石列はボンド磁
石を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、渦電流が発生しやすい低速側をボンド磁石で構成し、渦電流が発生しにくい高速側を焼結磁石で構成している。焼結磁石はボンド磁石に比べて磁力が大きいため、この組み合わせにより、渦電流による損失を抑えつつ、伝達トルクを担保することができる。
【0022】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列は円筒状をなし、前記特定の方向は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列の周方向であることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、円筒状の磁気ギア装置を構成することが可能である。
【0024】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列は円板状をなし、前記特定の方向は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列の円周方向であることを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、円板状の磁気ギア装置を構成することが可能である。
【0026】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列は長尺板状をなし、前記特定の方向は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列の長手方向であることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、長尺板状のリニア磁気ギア装置を構成することが可能である。
【0028】
本発明に係る磁気ギア装置は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列は円筒状をなし、前記特定の方向は、前記第1磁石列、前記第2磁石列及び前記磁性体列の中心軸
に沿った方向であることを特徴とする。
【0029】
本発明にあっては、円筒状のリニア磁気ギア装置を構成することが可能である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、第1磁石列と、第2磁石列との間隙の略中央に磁性体列を配する場合に比べて、第1磁石列と、第2磁石列と、磁性体列との間で伝達される力を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本実施の形態1に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。本発明の実施の形態1に係る磁気ギア装置は、回転円筒型であり、円筒状の第1可動子1と、該第1可動子1の外側に間隙を有して同軸に配された円筒状の第2可動子3と、第1可動子1及び第2可動子3の間に間隙を有して同軸に配された円筒状の中間ヨーク2とを備える。
【0033】
第1可動子1は、磁性体材料からなる内側円筒部11を有し、内側円筒部11の外周面には、厚さ方向に着磁された外周面側N極の磁石12a及び外周面側S極の磁石12bからなる磁極対12が円周方向に沿って略等間隔に3個配置されている。
第2可動子3は、磁性体材料からなる外側円筒部31を有し、外側円筒部31の内周面には、厚さ方向に着磁された内周面側N極の磁石32a及び内周面側S極の磁石32bからなる磁極対32が円周方向に沿って略等間隔に7個配置されている。ここで厚さ方向に着磁された磁石とは、外周面側及び内周面側が異極となるよう着磁されていることを意味する。例えば、磁石12aは、外周面側及び内周面側夫々がN極及びS極に着磁され、磁石12bは、外周面側及び内周面側夫々がS極及びN極に着磁されている。
また、渦電流の発生する割合は、低速回転側の方が高速回転側に比べて大きいため、磁極対12,32を希土類―遷移金属系磁石(例えばNd-Fe-B系磁石等)で形成する場合、第1可動子1側の磁極対12を焼結磁石で構成し、第2可動子3側の磁極対32をボンド磁石で構成すると良い。ボンド磁石は、微小な磁石粒ないしは微粉を樹脂等のバインダと混ぜ合わせて、成型固化したものであり、渦電流の発生を低減することが可能である。焼結磁石は、いわゆる粉末冶金法によって作られる磁石であり、ボンド磁石に比べて、渦電流損が大きいが、磁力が強いという性質を有する。従って、このように、構成することによって、第1可動子1と、第2可動子3との間に働く力を担保しつつ、渦電流の発生を極力抑えることができる。
なお磁極対12,32として酸化物磁石(例えばフェライト磁石)を用いる場合には渦電流の発生は極めて少ないため組立て効率やコスト等を考慮し第1可動子と第2可動子にどのような製法の磁石を配置するかは適宜設定すれば良い。
【0034】
中間ヨーク2は、第1可動子1側と、第2可動子3側を隔てると共に、第1可動子1及び第2可動子3夫々が有する磁極対12及び磁極対32の個数3及び7の合計となる10個の磁性体22を保持する円筒状の隔壁21を備え、隔壁21には、10個の磁性体22が円周方向に沿って略等間隔に配されている。また、隔壁21は、各磁性体22と第2可動子3との径方向における距離が、各磁性体22と第1可動子1との距離に比べて短くなるように磁性体22を保持している。具体的には、磁性体22は、円筒の一部を長手方向に沿って切断したような形状をなし、隔壁21は各磁性体22が嵌り込むような凹部を外周面に有している。中間ヨーク2は、第1可動子1と、第2可動子3との間隙の略中央部に配されており、各磁性体22が第2可動子3側に露出するように隔壁21の外周面に嵌り込んでいる。なお、必要に応じて、磁性体22の第2可動子3側の表面をコーティングしても良い。
中間ヨーク2は、例えば円筒状に形成された樹脂に各磁性体22を固定して作製される(例えば、国際公開第2009/087408号パンフレット参照)。中間ヨーク2には、磁極対32により発生した3次調波成分、7次調波成分及び13次調波成分を含む交番磁界が径方向に沿って交差する。磁性体22には、例えば、磁性金属、積層した複数の磁性板からなる積層鋼板及び磁性粉の圧粉体等からなる軟磁性体を用いるとよい。特に、磁性体22の材質としては、渦電流損を抑えることができるため、積層鋼板が好ましい。
【0035】
第2可動子3が回転した場合、第1可動子1及び第2可動子3夫々が有する磁極対12,32間の磁気的相互作用により、第1可動子1が回転する。この場合、第2可動子3よりも磁極数の少ない第1可動子1は、第2可動子3よりも高い回転数で、第2可動子3の回転方向と逆方向に回転する(池田哲也・中村健二・一ノ倉理、「永久磁石式磁気ギアの効率向上に関する一考察」、磁気学会論文誌、2009年、33巻、2号、130−134頁参照)。第1可動子1に配置してある磁極対の個数Phと、第2可動子3に配置してある磁極対の個数Plとの比Ph/Plが第2可動子3に対する第1可動子1のギア比となる。そして、第2可動子3が左回りに1回転した場合、第1可動子1が右回りに7/3回転する。
【0036】
次に、磁性体22の配置と、磁気ギア装置における伝達トルクとの関係を説明する。
図2は、磁気ギア装置の伝達トルクに関するシミュレーション結果を示したグラフである。本シミュレーションの実施条件は以下の通りである。第1可動子1が有する磁極対12の数を7対、中間ヨーク2が有する磁性体22の数を26個、第2可動子3が有する磁極対32の数を19対とする。磁性体22の径方向の幅は3mm、周方向の幅は約4mmである。そして、第2可動子3及び中間ヨーク2を固定し、第1可動子1を回転させた場合に、第1可動子1及び第2可動子3と、中間ヨーク2との間に働くトルクをシミュレーションした。
図2に示したグラフの横軸は第1可動子1の位相、縦軸は第1及び第2可動子1,3と、中間ヨーク2との間に働くトルクを示している。
実線は第2可動子3と、中間ヨーク2との間に働くトルクを示し、破線は第1可動子1と、中間ヨーク2との間に働くトルクを示している。また、太線のグラフは、第1可動子1と、中間ヨーク2との間隙が2mm、第2可動子3と、中間ヨーク2との間隙が1mmである場合のトルクを示している(以下、パターン1という)。中太線のグラフは、第1可動子1と、中間ヨーク2との間隙が1.5mm、第2可動子3と、中間ヨーク2との間隙が1.5mmである場合のトルクを示している(以下、パターン2という)。細線のグラフは、第1可動子1と、中間ヨーク2との間隙が1mm、第2可動子3と、中間ヨーク2との間隙が2mmである場合のトルクを示している(以下、パターン3という)。
図2に示すように、パターン1の結果が最も良好であり、第1可動子1、第2可動子3及び中間ヨーク2の間に働くトルクが最大である。パターン1は磁性体22を、短ピッチで磁極対32が配された第2可動子3側に寄せて配置した場合の結果である。逆に、パターン3の結果が最も悪く、第1可動子1、第2可動子3及び中間ヨーク2の間に働くトルクが最小である。パターン3は磁性体22を、長ピッチで磁極対12が配された第1可動子1側に寄せて配置した場合の結果である。
【0037】
以上のシミュレーション結果から分かるように、磁性体22を、短ピッチで第2磁極列が配された第2可動子3側に寄せて配置した場合の方が、第1可動子1及び第2可動子3の間隙の中央に磁性体22を配置した場合、又は磁性体22を第1可動子1側に配置した場合に比べて、伝達トルクを向上させることができる。
【0038】
磁性体22を短ピッチで磁極対32が配された第2可動子3側に寄せて配置した方が、伝達トルクが向上する原理は以下の通りである。高速回転側の第1可動子1の磁極対12は、低速回転側の第2可動子3に比べて、長ピッチである。高速回転側の長ピッチで配された磁石12a,12bからの磁束は、低速回転側の磁石32a,32bに比べて、より大きく広がって、強い磁力が第2可動子3まで達するが、短ピッチで配された低速回転側の磁石32a,32bからの磁束は第2可動子3の近傍で閉じてしまい、強い磁力が第1可動子1まで達しない傾向がある。従って、中間ヨーク2の磁性体22によって、磁石12a,12b,32a,32bからの磁束に変調をかける場合、低速回転側の磁石32a,32b側に寄せて磁性体22を配して、磁束の変調をおこなった方が、近傍で閉じてしまう低速回転側の磁石32a,32bに起因する磁束と、遠くに達する高速回転側の磁石12a,12bに起因する磁束との両方の作用を受けて、より強力に磁束の変調がかけられ、その結果、より大きなトルク伝達が可能になると考えられている。
【0039】
実施の形態1に係る磁気ギア装置にあっては、第1可動子1と、第2可動子3との間隙の略中央に磁性体22を配する場合に比べて、第1可動子1と、第2可動子3との間で伝達されるトルクを向上させることができる。
【0040】
また、一般的に、中間ヨーク2と、第1可動子1及び第2可動子3との間に働く空気摩擦抵抗は、各部材の相対速度が大きくなる程、大きくなるところ、中間ヨーク2は、低速回転する第2可動子3側に寄せて配置しているため、空気摩擦抵抗という観点からも好ましく、伝達トルクを向上させることができる。
【0041】
なお、実施の形態1では、内側の磁石列、外側の磁石列を可動子とした磁気ギア装置を説明したが、内側又は外側の磁石列を固定し、中間ヨーク2を回転させるように構成しても良い。
【0042】
(変形例1)
図3は、変形例1に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例1に係る磁気ギア装置は、中間ヨーク102の隔壁121に磁性体122が埋没している点が実施の形態1と異なる。
【0043】
変形例1にあっては、磁性体122が第1可動子1側と、第2可動子3側とのいずれにも露出しないため、第1可動子1側の雰囲気及び第2可動子3側の雰囲気から磁性体122を遮断することができる。
【0044】
(変形例2)
図4は、変形例2に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例2に係る磁気ギア装置は、隣り合う複数の磁性体222同士が連結部222aによって連結されている点が実施の形態1と異なる。連結部222aは、磁性体222よりも径方向の幅が薄い板材であり、複数の磁性体222と共に一体形成されている。
【0045】
変形例2にあっては、中間ヨーク202を製造する際、円周方向に略等間隔に配列した複数の磁性体222を連結部222aで連結した状態で形成するため、各磁性体222を隔壁221に配列させる作業を省略することができ、効率的に製造することができる。
【0046】
(変形例3)
図5は、変形例3に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例3に係る磁気ギア装置は、中間ヨーク302における隣り合う複数の磁性体322同士が連結部322aによって連結され、かつ磁性体322及び連結部322aが隔壁321に埋没している点が実施の形態1と異なる。連結部322aは、磁性体322よりも径方向の幅が薄い板材であり、複数の磁性体322と共に一体形成されている。
【0047】
変形例3にあっては、磁性体322及び連結部322aが第1可動子1側と、第2可動子3側とのいずれにも露出しないため、第1可動子1側の雰囲気及び第2可動子3側の雰囲気から磁性体322及び連結部322aを遮断することができる。
【0048】
(変形例4)
図6は、変形例4に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例4に係る磁気ギア装置は、隣り合う複数の磁性体422同士が連結部422aによって連結され、かつ連結部422aが高速回転側の第1可動子1寄りに配されている点が実施の形態1と異なる。連結部422aは、磁性体422よりも径方向の幅が薄い円筒状の板材であり、複数の磁性体422と共に一体形成されている。
なお、連結部422aを中間ヨーク402の中心軸方向の両端に亘るように形成することによって、連結部422a及び磁性体422が、第1可動子1及び第2可動子3を隔てる隔壁として機能する。この場合においても、各磁性体422の位置関係を保持するために保持部材421が、各磁性体422の間に設けられる。なお、磁性体422同士を連結する連結部422aの強度的な問題が無ければ、保持部材421を廃しても良い。
【0049】
変形例4にあっては、連結部422aと第1可動子1との径方向の距離は、連結部422aと第2可動子3との距離に比べて短いため、磁気ギア装置の伝達トルクを向上させることができる。
連結部422aを高速回転側の第1可動子1側に寄せて配置した方が好ましい理由は以下の通りである。高速回転側の第1可動子1の磁極対12は、低速回転側の第2可動子3に比べて、長ピッチである。高速回転側の長ピッチで配された磁石12a,12bからの磁束の量は、低速回転側の磁石32a,32bに比べて大きい傾向がある。
ここで、磁性体422同士を連結する連結部422aは、磁石から見ると短絡磁路に相当する。短絡した磁束は高速回転側の磁石12a,12bと、低速回転側の磁石32a,32bとの相互作用に寄与しない無効磁束となる。無効磁束量はなるべく小さい方が良い。ところで、短絡磁束は連結部422aの磁束が飽和するまで流れ込む。即ち、連結部422aによって発生する無効磁束量は、連結部422aの断面積によって定まる一定の値であるため、磁性体422に対向する磁石の磁束量が大きい程、該磁束量に対する無効磁束量の比率が小さくなる。従って、長ピッチで配された磁極対32側に連結部422aを配置し、磁石12a,12bからの磁束で連結部422aを磁気的に飽和させることで、無効磁束の割合を小さくし、伝達トルクの低下を防止することが可能になる。
【0050】
(変形例5)
図7は、変形例5に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例5に係る磁気ギア装置は、中間ヨーク502における隣り合う複数の磁性体522同士が連結部522aによって連結され、かつ連結部522aが高速回転側の第1可動子1寄りに配されており、更に、磁性体522及び連結部522aが隔壁521に埋没している点が実施の形態1と異なる。連結部522aは、磁性体522よりも径方向の幅が薄い円筒状の板材であり、複数の磁性体522と共に一体形成されている。
【0051】
変形例5にあっては、第1可動子1側の雰囲気及び第2可動子3側の雰囲気から磁性体522及び連結部522aを遮断することができる。また、上述したように、磁気ギア装置の伝達トルクを向上させることができる。
【0052】
(変形例6)
図8は、変形例6に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例6に係る磁気ギア装置は、中間ヨーク602における複数の各磁性体622が円周方向に沿って略等間隔に配されるように保持部材621によって保持されており、各磁性体622は第1可動子1側及び第2可動子3側の双方に露出している点が異なる。この場合においても、磁性体622が低速回転側の第2可動子3側に寄せて配することによって、磁気ギア装置の伝達トルクを向上させることができる。
【0053】
(変形例7)
図9は、変形例7に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例7に係る磁気ギア装置は、第1可動子701が低速回転、第2可動子703が高速回転するように構成されている点が実施の形態1と異なる。
【0054】
第1可動子701は、磁性体材料からなる内側円筒部711を有し、内側円筒部711の外周面には、厚さ方向に着磁された外周面側N極の磁石712a及び外周面側S極の磁石712bからなる磁極対712が円周方向に沿って略等間隔に7個配置されている。第2可動子703は、磁性体材料からなる外側円筒部731を有し、外側円筒部731の内周面には、厚さ方向に着磁された内周面側N極の磁石732a及び内周面側S極の磁石732bからなる磁極対732が円周方向に沿って略等間隔に3個配置されている。中間ヨーク702は、第1可動子701側と、第2可動子703側を隔てると共に、10個の磁性体722を保持する円筒状の隔壁721を備え、隔壁721には、10個の磁性体722が円周方向に沿って略等間隔に配されている。また、隔壁721は、各磁性体722と第1可動子701との径方向における距離が、各磁性体722と第2可動子703との距離に比べて短くなるように磁性体722を保持している。つまり、各磁性体722は、低速回転側の第1可動子701寄りに配されている。
【0055】
変形例7にあっては、実施の形態1と同様、第1可動子701と、第2可動子703との間隙の略中央に磁性体722を配する場合に比べて、第1可動子701と、第2可動子703との間で伝達されるトルクを向上させることができる。
【0056】
(変形例8)
図10は、変形例8に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。変形例8に係る磁気ギア装置は、変形例7と同様、第1可動子801が低速回転、第2可動子803が高速回転するように構成されており、更に、各磁性体822同士が連結部822aで連結され、かつ該連結部822aが高速回転側の第2可動子803寄りに配されている点が実施の形態1と異なる。
【0057】
第1可動子801は、磁性体材料からなる内側円筒部811を有し、内側円筒部811の外周面には、厚さ方向に着磁された外周面側N極の磁石812a及び外周面側S極の磁石812bからなる磁極対812が円周方向に沿って略等間隔に7個配置されている。第2可動子803は、磁性体材料からなる外側円筒部831を有し、外側円筒部831の内周面には、厚さ方向に着磁された内周面側N極の磁石832a及び内周面側S極の磁石832bからなる磁極対832が円周方向に沿って略等間隔に3個配置されている。中間ヨーク802は、連結部822aで連結された10個の磁性体822が円周方向に沿って略等間隔に配されている。各磁性体822の間には、各磁性体822の位置関係を保持する保持部材821が設けられている。各磁性体822と第1可動子801との径方向における距離が、各磁性体822と第2可動子803との距離に比べて短くなるように磁性体822を保持している。つまり、各磁性体822は、低速回転側の第1可動子801寄りに配されている。
【0058】
変形例8にあっては、実施の形態1及び変形例1と同様、第1可動子801と、第2可動子803との間隙の略中央に磁性体822を配する場合に比べて、第1可動子801と、第2可動子803との間で伝達されるトルクを向上させることができる。
なお、変形例7,8では、第1可動子701、801を低速回転するように構成する例において、実施の形態1と、変形例4に対応する構成を説明したが、言うまでもなく、その他変形例1〜3、5、6に対応する構成を適用することもできる。
(実施の形態2)
【0059】
図11は、実施の形態2に係る磁気ギア装置の一構成例を示した側断面図である。実施の形態2では、ポンプにトルクコンバータとしての磁気ギア装置を適用した例を説明する。実施の形態2に係るポンプは、一方の側壁が円筒状に窪んだ略有底円筒状の筐体4を備える。筐体4は、筒体42と、該筒体42の一方の開口を閉鎖している側壁大円板部41と、該筒体42の他方側に設けられた円環部43と、円環部43の内周縁から筒体42の長手方向中央側へ延設された円筒状の隔壁44と、隔壁44の前記中央側を塞ぐように設けられた側壁小円板部45とを有する。側壁大円板部41には流体が流入する流入口41aが形成され、筒体42の適宜箇所に流体が流出する流出口42aが設けられている。
【0060】
筐体4を構成している隔壁44の内周側及び外周側にはそれぞれ円筒状の第1可動子5と、第2可動子6とが、隔壁44と同軸に配され、後述する磁性体46と共に回転円筒型の磁気ギア装置を構成している。
【0061】
第1可動子5は、隔壁44よりも小径の内側円筒部51を有し、実施の形態1と同様、内側円筒部51の外周面には、厚さ方向に着磁された外周面側N極の磁石及び外周面側S極の磁石からなる磁極対52が円周方向に沿って略等間隔に3個配置されている。内側円筒部51には、モータ7の入力軸71が挿入され固定されている。
第2可動子6は、隔壁44よりも大径の外側円筒部61を有し、外側円筒部61の内周面には、厚さ方向に着磁された内周面側N極の磁石及び内周面側S極の磁石からなる磁極対62が円周方向に沿って略等間隔に7個配置されている。外側円筒部61の一端側、即ち、側壁大円板部41側には回転円板部63が設けられており、回転円板部63の略中央部には、入力軸71と回転軸が一致するように出力軸64が設けられている。出力軸64の先端には回転翼8が設けられている。
【0062】
隔壁44の内部には、10個の磁性体46が埋没しており、各磁性体46は円周方向に沿って略等間隔に配されている。また、隔壁44は、各磁性体46と第2可動子6との径方向における距離が、各磁性体46と第1可動子5との距離に比べて短くなるように磁性体46を保持している。内部に磁性体46を配した隔壁44は、中間ヨークとして機能している。
【0063】
このように構成されたポンプによれば、モータ7のトルクを第1可動子5から第2可動子6へ減速伝達することができる。また、隔壁44によって、第1可動子5側と、第2可動子6側とが完全に隔離されているため、第1可動子5側のモータ7が、第2可動子6側の流体に晒されることを防ぐことができる。更に、本実施の形態2では、磁性体46が低速回転側の第2可動子6寄りに配されているため、磁性体46を隔壁44の略中央部に配した従来技術に比べて、伝達トルクを向上させることができる。
【0064】
(実施の形態3)
図12は、実施の形態3に係る磁気ギア装置の一構成例を示した分解斜視図、
図13は、実施の形態3に係る磁気ギア装置の側断面図である。実施の形態3に係る磁気ギア装置は円板形であり、円板状の第1可動子3001と、該第1可動子3001の上方に間隙を有して同軸に配された円板状の第2可動子3003と、第1可動子3001及び第2可動子3003の間に間隙を有して同軸に配された円板状の中間ヨーク3002とを備える。
【0065】
第1可動子3001は、磁性体材料からなる第1円板3011を有し、第1円板3011の上面には、上側N極の磁石3012a及び上側S極の磁石3012bからなる磁極対3012が円周方向に沿って略等間隔に6個配置されている。
第2可動子3003は、磁性体材料からなる第2円板3031を有し、第2円板3031の下面には、下側N極の磁石3032a及び下側S極の磁石3032bからなる磁極対3032が円周方向に沿って略等間隔に14個配置されている。
【0066】
中間ヨーク3002は、第1可動子3001及び第2可動子3003夫々が有する磁極対3012及び磁極対3032の個数6及び14の合計となる20個の磁性体3022を保持する円盤状の保持部材3021を備え、保持部材3021には、20個の磁性体3022が円周方向に沿って略等間隔に配されている。また、保持部材3021は、各磁性体3022と第2可動子3003との回転軸方向における距離が、各磁性体3022と第1可動子3001との距離に比べて短くなるように磁性体3022を保持している。
【0067】
実施の形態3のように構成された磁気ギア装置においても実施の形態1と同様の効果を奏する。また、変形例1〜8の技術的思想を実施の形態3に係る磁気ギア装置に適用することも可能である。
【0068】
(実施の形態4)
図14は、実施の形態4に係る磁気ギア装置の一構成例を示した分解斜視図、
図15は、実施の形態4に係る磁気ギア装置の側断面図である。実施の形態4に係る磁気ギア装置は各構成部材が長尺板状のリニア型であり、長尺板状の第1可動子4001と、該第1可動子4001の上方に間隙を有して配された長尺板状の第2可動子4003と、第1可動子4001及び第2可動子4003の間に間隙を有して配された長尺板状の中間ヨーク4002とを備える。第1可動子4001、第2可動子4003及び中間ヨーク4002の長手方向は略一致している。
【0069】
第1可動子4001は、磁性体材料からなる第1長尺板部4011を有し、第1長尺板部4011の上面には、上側N極の磁石4012a及び上側S極の磁石4012bからなる磁極対4012が長手方向に沿って、単位距離ΔL当たり略等間隔に6個配置されている。
第2可動子4003は、磁性体材料からなる第2長尺板部4031を有し、第2長尺板部4031の下面には、下側N極の磁石4032a及び下側S極の磁石4032bからなる磁極対4032が長手方向に沿って、単位距離ΔL当たり略等間隔に14個配置されている。
【0070】
中間ヨーク4002は、第1可動子4001及び第2可動子4003夫々が有する磁極対4012及び磁極対4032の個数6及び14の合計となる20個の磁性体4022を保持する長尺板状の保持部材4021を備え、保持部材4021には、単位距離ΔL当たり20個の磁性体4022が長手方向に沿って略等間隔に配されている。また、保持部材4021は、各磁性体4022と第2可動子4003との離隔方向における距離が、各磁性体4022と第1可動子4001との距離に比べて短くなるように磁性体4022を保持している。
【0071】
実施の形態4のように構成された磁気ギア装置においても実施の形態1と同様の効果を奏する。また、変形例1〜8の技術的思想を実施の形態4に係る磁気ギア装置に適用することも可能である。
【0072】
(実施の形態5)
図16は、実施の形態5に係る磁気ギア装置の一構成例を示した分解斜視図、
図17は、実施の形態5に係る磁気ギア装置の側断面図である。実施の形態5に係る磁気ギア装置は各構成部材が円筒状のリニア型であり、円筒状の第1可動子5001と、該第1可動子5001の外周側に間隙を有して同軸に配された円筒状の第2可動子5003と、第1可動子5001及び第2可動子5003の間に間隙を有して同軸に配された円筒状の中間ヨーク5002とを備える。
【0073】
第1可動子5001は、磁性体材料からなる内側円筒部5011を有し、内側円筒部5011の外周面には、外側N極の磁石5012a及び外側S極の磁石5012bからなる磁極対5012が中心軸方向に沿って、単位距離ΔL当たり略等間隔に6個配置されている。
第2可動子5003は、磁性体材料からなる外側円筒部5031を有し、外側円筒部5031の内周面には、内側N極の磁石5032a及び内側S極の磁石5032bからなる磁極対5032が中心軸方向に沿って、単位距離ΔL当たり略等間隔に14個配置されている。
【0074】
中間ヨーク5002は、第1可動子5001及び第2可動子5003夫々が有する磁極対5012及び磁極対5032の個数6及び14の合計となる20個の磁性体5022を保持する筒状の保持部材5021を備え、保持部材5021には、単位距離ΔL当たり20個の磁性体5022が中心軸方向に沿って略等間隔に配されている。また、保持部材5021は、各磁性体5022と第2可動子5003との径方向における距離が、各磁性体5022と第1可動子5001との距離に比べて短くなるように磁性体5022を保持している。
【0075】
実施の形態5のように構成された磁気ギア装置においても実施の形態1と同様の効果を奏する。また、変形例1〜8の技術的思想を実施の形態4に係る磁気ギア装置に適用することも可能である。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。