(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0046】
第1実施形態に係る樹脂組成物は、ポリアミドイミドと多官能グリシジル化合物とを含有し、上記ポリアミドイミドが、分子鎖の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を有するものである。この樹脂組成物は、Bステージ状態のフィルム等に加工した場合に成形性に優れ、加熱成形が可能であり、熱硬化後(Cステージ状態)の伸びの低下が少ない。本実施形態の樹脂組成物によれば、任意に折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能なプリント配線板を形成できる。また、本実施形態の樹脂組成物は、金属箔や繊維基材との接着性や、耐熱性に優れ、多層プリント配線板の層間接続用材料又は金属箔張り積層板などのプリント配線板用材料として有用である。また、本実施形態の樹脂組成物は、硬化後の伸びの低下が少ないことから、プリント配線板用材料として用いた場合に、硬化時に金属箔や繊維基材と樹脂組成物との間に生じる応力を緩和することが期待できる。
【0047】
第2実施形態に係る樹脂組成物は、上記ポリアミドイミドが、分子鎖の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を有し、かつ、分子鎖中にポリシロキサンイミド構造を有し、上記ポリシロキサンイミド構造が、側鎖に不飽和結合含有基を有するものである。この樹脂組成物は、Bステージ状態のフィルム等に加工した場合に成形性に優れ、加熱成形が可能であり、熱硬化後(Cステージ状態)の伸びの低下が少なく、なおかつ弾性率が十分に低い硬化物を形成できる。本実施形態の樹脂組成物によれば、任意に折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能なプリント配線板を形成できる。また、本実施形態の樹脂組成物は、金属箔や繊維基材との接着性や、耐熱性に優れ、多層プリント配線板の層間接続用材料または金属箔張り積層板などのプリント配線板用材料として有用である。また、本実施形態の樹脂組成物は、硬化後の伸びの低下が少ないことから、プリント配線板用材料として用いた場合に、硬化時に金属箔や繊維基材と樹脂組成物との間に生じる応力を緩和することもできる。さらに、本実施形態の樹脂組成物は、硬化後の樹脂の弾性率が低く、応力緩和材や衝撃吸収材として有用である。更に、本実施形態の樹脂組成物は、配線板用材料としてともに用いられる銅箔、ガラス及びポリイミドと良好な接着性を有することができる。
【0048】
ここで、上記不飽和結合含有基における不飽和結合は、炭素−炭素間の不飽和結合であることが好ましい。上記不飽和結合がこのようなものであると、ポリアミドイミド中の各イミド成分の相溶性が向上し、ポリアミドイミドとグリシジル化合物との相溶性も向上することで、フィルムにした際の低弾性率化や成形性が更に向上する。
【0049】
以下、上記ポリアミドイミド及び多官能グリシジル化合物について更に具体的に説明する。
【0050】
[ポリアミドイミド]
上記ポリアミドイミドは、ジカルボン酸化合物とジイソシアネートの反応により得たポリアミドイミドを用いることが好ましい。具体的には、ジカルボン酸1モルに対してジイソシアネート1.05〜1.45モルの割合で反応させた反応生成物の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を導入することにより得たポリアミドイミドであることが好ましい。
【0051】
ここで、例えば、ジカルボン酸化合物として、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むものを用いると、側鎖に不飽和結合含有基を有するシロキサンイミド構造を含むポリアミドイミドを作製することができる。なお、側鎖に不飽和結合含有基を有するジカルボン酸化合物の作製方法については後述する。
【0052】
上述のように、ジカルボン酸化合物に対して過剰のジイソシアネートを反応させると分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドを生成することができる。そして、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドに対して、例えば、閉環しないカルボキシル基を3つ以上有する化合物を所定量反応させることによって、上記カルボキシル基の1個の基のみをイソシアネートと反応させることができる。これにより、2個以上のカルボキシル基を残すことが可能である。こうして、分子鎖の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を有するポリアミドイミドを作製することができる。なお、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドと、閉環しないカルボキシル基を3つ以上有する化合物との反応において、上記化合物の量比を選ぶことでゲル化の抑制が可能となる。なお、ここで、閉環しないカルボキシル基とは、100℃以上の反応温度条件において、脱水閉環しないものをいう。例えば、3つのカルボキシル基が芳香環又は縮合環に結合した化合物である場合、最も近くにある2つのカルボキシル基の位置関係が、カルボキシル基が結合する炭素原子同士が少なくとも1つの炭素原子を隔てて結合している位置関係にあるものをいう。このような化合物を用いると、カルボキシル基が互いに離れており、閉環してイミド環を作ることがないので、好ましい。
【0053】
閉環しないカルボキシル基を3つ以上有する化合物は、芳香族多塩基酸であることが好ましく、熱により脱水閉環しないものであることが好ましい。閉環しないカルボキシル基を3つ以上有する化合物が、芳香族多塩基酸であると、上記ポリアミドイミドの分子鎖の少なくとも一末端を、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族アミド基とすることができる。これにより、樹脂組成物の耐熱性、耐加水分解性を向上させることや、樹脂組成物を熱硬化した際に支持体なしでフィルムを形成できる硬化物を得ることができる。このような芳香族多塩基酸としては、例えば、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,3,5−ナフタレントリカルボン酸、1,3,7−ナフタレントリカルボン酸、1,5,7−ナフタレントリカルボン酸等の芳香族トリカルボン酸が挙げられる。これらのうち、入手容易性と、ポリアミドイミドの成形性の観点から1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)が特に好ましい。
【0054】
また、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドと、2つ以上の閉環しないカルボキシル基及び水酸基を有する化合物とを、所定量反応させることによっても分子の一末端に2個以上のカルボキシル基を有するポリアミドイミドを作製することが可能である。2つ以上の閉環しないカルボキシル基及び水酸基を有する化合物としては、ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシ−3,6−カルボキシナフタレン等のフェノール性水酸基含有芳香族多塩基酸が挙げられる。
【0055】
フェノール性水酸基含有芳香族多塩基酸に含まれる水酸基はカルボキシル基に比べてイソシアネートと反応しやすいことから、より低温で反応できる点で好ましい。
【0056】
なお、カルボキシル基が芳香環に結合している芳香族カルボキシル基とイソシアネートとの反応ではアミド結合が生成し、フェノール性水酸基とイソシアネートとの反応ではウレタン結合が生成する。これらの反応性の違いから、例えば、1個以上の水酸基と2個以上のカルボキシル基を有する芳香族多塩基酸を用いると、分子鎖末端にはウレタン結合を介して2個以上の芳香族カルボキシル基が残ったポリアミドイミドを作製することができる。1個以上の水酸基と2個以上のカルボキシル基を有する芳香族多塩基酸としては、ヒドロキシイソフタル酸、2−ヒドロキシ−3,6−カルボキシナフタレン等が挙げられる。ただし、ウレタン結合を介したポリアミドイミドは、アミド結合を介したポリアミドイミドに比べ、耐熱性や吸湿性に劣ることがある。
【0057】
上記芳香族多塩基酸として、閉環しない芳香族トリカルボン酸を用いた場合、その添加量は、閉環しない芳香族トリカルボン酸の分子量(MW)、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドの重量(A)及び当該ポリアミドイミドの数平均分子量Mnから「2×A×MW/Mn」によって求まる量に対して、0.3〜1.2倍量とすることが好ましく、0.5〜1.0倍量とすることがより好ましい。この量が、0.3未満では、ポリアミドイミドの分子末端への2個以上のカルボキシル基の導入による効果が小さくなる傾向にあることに加え、樹脂組成物をワニスとしたときにワニス中にミクロゲルが生成する場合がある。また、この量が、1.2を超えると、未反応の閉環しない芳香族トリカルボン酸が、ワニス中に析出し、フィルム性が低下する場合があることから、未反応の閉環しない芳香族トリカルボン酸を濾別するための濾過工程が必要となる。
【0058】
なお、分子鎖の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を有するポリアミドイミドの数平均分子量は、10,000〜40,000であることが好ましく、15,000〜30,000であることがより好ましく、18,000〜25,000であることが更に好ましい。この数平均分子量が40,000を超えるとフィルムとしたときの成形性が不十分となる傾向があり、10,000未満であるとフィルム化が困難になるとともに熱硬化後のフィルムの強度が不十分となる傾向がある。
【0059】
本発明におけるポリアミドイミドの数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定(25℃)された分子量分布のクロマトグラムを標準ポリスチレンを用いて換算することによって求められる。
【0060】
また、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドと、芳香族多塩基酸との反応温度は、140〜190℃であることが好ましく、160〜180℃であることが更に好ましい。
【0061】
次に、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドの生成に用いるジカルボン酸及びジイソシアネートについて詳細に説明する。
【0062】
上記ジカルボン酸化合物は、ジアミンと無水トリメリット酸を反応させたジイミドジカルボン酸であることが好ましい。反応に用いるジアミンの構造を選択することでポリアミドイミドの可とう性や耐熱性、強度などを制御することが可能となる。
【0063】
上記ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0064】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン等の直鎖型脂肪族ジアミンや末端アミノ化ポリプロピレングリコールが挙げられる。脂肪族ジアミンは、低弾性率及び高Tgの両立の観点から、エーテル基を含むことが好ましく末端アミノ化ポリプロピレングリコールが好ましい。末端アミノ化ポリプロピレングリコールとしては分子量の異なるジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000(ハンツマン社製、製品名)が入手できる。
【0065】
芳香族ジアミンとしては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニル−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0066】
また、上記ジアミンは、下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン構造を有するジアミンを含有することが好ましい。上記ジアミンにオルガノポリシロキサン構造を有するジアミンを含有させることで、分子鎖の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を有するポリアミドイミドにオルガノポリシロキサン構造を含有させることができる。上記ポリアミドイミドが、上記オルガノポリシロキサン構造を含むと、ポリアミドイミドの可とう性が向上する。また、樹脂組成物をフィルムとしたときに、フィルムの乾燥性が高くなり、フィルムの低揮発分化が容易となることに加え、フィルムを低弾性率化させることができる。
【0068】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に2価の有機基を示し、R
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。また、R
3及びR
5が複数存在する場合、複数のR
3及びR
5はそれぞれ異なっていてもよい。
【0069】
上記2価の有機基としては、アルキレン基、フェニレン基又は置換フェニレン基が好ましい。また、上記2価の有機基の炭素数は1〜6であることが好ましい。上記2価の有機基としては、炭素数1〜3のアルキレン基が更に好ましい。
【0070】
上記1価の有機基としては、アルキル基、フェニル基又は置換フェニル基が好ましい。また、上記1価の有機基の炭素数は、1〜6であることが好ましい。上記1価の有機基としては、炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましい。
【0071】
また、nは1〜50の整数であることが好ましい。
【0072】
本実施形態においては、R
1及びR
2がいずれもプロピレン基であり、R
3、R
4、R
5及びR
6がいずれもメチル基であることが特に好ましい。
【0073】
上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン構造を有するジアミンとしては、例えば、下記式(3)及び(4)のシロキサンジアミンが挙げられる。
【0076】
式(3)中のnは、上記と同義である。また、式(4)中、mは、1以上の整数を示し、qは、0以上の整数を示し、m+qは、1〜50であることが好ましい。
【0077】
上記式(3)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、X−22−161AS(現名称;KF8010)(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)(以上、信越化学工業株式会社製、製品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製、製品名)等が挙げられる。上記式(4)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業株式会社製、製品名)等が挙げられる。
【0078】
上記ポリアミドイミドの主鎖は、上述したオルガノポリシロキサン構造の他に、アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を含んでいてもよい。すなわち、上記ポリアミドイミドの主鎖は下記(I)、(II)及び(III)を含んでいてもよい。
(I)オルガノポリシロキサン構造及びアルキレン基、
(II)オルガノポリシロキサン構造及びオキシアルキレン基、
(III)オルガノポリシロキサン構造、アルキレン基及びオキシアルキレン基。
【0079】
ここで、(I)及び(III)のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、当該アルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましい。また、(II)及び(III)のオキシアルキレン基の炭素数は1〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。なお、当該オキシアルキレン基は2以上が繰り返してポリオキシアルキレン構造を形成していてもよい。
【0080】
上記(I)、(II)及び(III)を含むポリアミドイミドは、例えば、上記ジアミンとして、アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を有するジアミンと、オルガノポリシロキサン構造を有するジアミンとを用いることで作製できる。
【0081】
アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を含むジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ジアミノジエチルエーテル等の低分子ジアミンや、両末端アミノ化ポリエチレン、両末端アミノ化ポリプロピレン等の両末端アミノ化オリゴマーや両末端アミノ化ポリマーなどが例示できる。アルキレン基を含むジアミンとしてはアルキレン基の炭素数は4以上が好ましく、6〜18がより好ましい。本実施形態においては、アルキレン基及びオキシアルキレン基を有するジアミンを用いることが特に好ましい。かかるジアミンとしては、下記式(6a)、(6b)、(6c)及び(6d)などのジアミンが挙げられる。
【0083】
式(6a)中、aは2〜70の整数を示す。
【0085】
式(6b)中、b、c及びdは1以上の整数を示す。なお、b+c+dは5〜40であることが好ましい。
【0088】
(6a)、(6b)、(6c)及び(6d)のジアミンとしては、それぞれ、ジェファーミンD2000、ジェファーミンD230、ジェファーミンD400、ジェファーミンD4000等のジェファーミンDシリーズ、ジェファーミンED600、ジェファーミンED900、ジェファーミンED2003等のジェファーミンEDシリーズ、ジェファーミンXTJ−511、ジェファーミンXTJ−512(以上、ハンツマン社製、製品名)などが挙げられる。
【0089】
上記アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を有するジアミンの分子量は30〜20000であることが好ましく、50〜5000であることがより好ましく、100〜3000であることが更に好ましい。アルキレン基及び/又はオキシアルキレン基を有するジアミンの分子量がこのような範囲であることにより、得られた繊維基材に含浸する際に、乾燥させた後のしわや反りの発生を効果的に減少させることが可能になる。中でも、ジェファーミンは適度な分子量を持ち、得られるポリアミドイミドの弾性率及び誘電率に優れるため、特に好ましい。
【0090】
ポリアミドイミドの主鎖は上記(III)を含むことが特に好ましい。また、かかる場合のアルキレン基及びオキシアルキレン基は、下記式(4a)、(4b)、(4c)及び(4d)の構造のうち1種以上を有することが特に好ましい。
【0092】
式(4a)中、aは式(6a)と同義である。
【0094】
式(4b)中、b、c及びdは式(6b)と同義である。
【0097】
第2の実施形態の樹脂組成物に含まれるポリアミドイミド(側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含むポリアミドイミド)は、例えば、上記ジカルボン酸化合物として、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むものを用いることにより作製できる。そして、側鎖に不飽和結合含有基を有するジカルボン酸化合物は、例えば、上記脂肪族ジアミンとして、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンを用いることにより製造できる。なお、不飽和結合含有基としては、例えば、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0098】
側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンとしては、例えば、ビニル基が結合した珪素を含有するポリシロキサンジアミンなどが挙げられる。このような、ポリシロキサンジアミンとしては、例えば、下記式(1a)で表されるジアミン等が挙げられる。
【0100】
式(1a)中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17は、CH
3、C
2H
5又はC
3H
7を示す。なお、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。R
18、R
19はそれぞれ二価の有機基を示す。なお、R
18、R
19はそれぞれ炭素数1〜3の飽和炭化水素基が好ましい。n1は0以上の整数、m1は1以上の整数であり、n1+m1は1から50である。
【0101】
式(1a)で表される、ポリシロキサンジアミンとしては、X−22−9412(信越シリコーン株式会社製、製品名)が商業的に入手可能である。
【0102】
上記ジアミンが式(1a)で表されるジアミンを含有する場合、用いるジアミンの合計量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、35〜65質量部であることがより好ましく、40〜60質量部であることが更に好ましい。
【0103】
また、不飽和結合としてフェニル基が結合した珪素を含有するポリシロキサンジアミンとしては、例えば、X−22−9409、X−22−1660−B3(以上、信越シリコーン株式会社製、製品名)等が挙げられる。
【0104】
ここで、上記ジアミンとして、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンと、末端アミノ化ポリプロピレングリコールの混合物を用いると、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造及びポリオキシプロピレン構造を有するジカルボン酸化合物を作製することができる。すなわち、ジアミンとしてこのようなものを用いると、結果的に、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造及びポリオキシプロピレンイミド構造を有するポリアミドイミドを作製できる。このようなポリアミドイミドによれば、樹脂組成物が更に低弾性率化し、伸びが向上する。
【0105】
この場合、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミン100質量部に対して、末端アミノ化ポリプロピレングリコールは70〜130質量部であることが好ましく、80〜120質量部であることがより好ましく、90〜110質量部であることが更に好ましい。
【0106】
なお、ジアミンと無水トリメリット酸からジイミドジカルボン酸を生成する工程では、溶媒として非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、4−ブチロラクトン、スルホラン等が挙げられる。中でも、ジイミドジカルボン酸を生成する工程は高い反応温度を必要とするため、沸点が高く、且つ原料及び得られるポリマーの溶解性が良好であるN−メチル−2−ピロリドンを用いることが特に好ましい。
【0107】
ジアミンと、無水トリメリット酸とを合わせた重量は、溶媒の重量に対して10〜70質量%に相当する量であることが好ましい。10質量%未満である場合は溶媒を大量に消費するため効率が悪く、70質量%を超えると、ジアミン及び無水トリメリット酸を溶解しきれなくなり、十分な反応を行うことが困難になる傾向がある。
【0108】
ジアミンの合計モル数に対して、無水トリメリット酸は2.00〜2.20倍のモル量を用いることが好ましい。アミン混合物の2.00〜2.20倍モル量の無水トリメリット酸を用いることにより、両末端がより確実にカルボキシル基となった反応物(ジイミドジカルボン酸)を高収率で得ることができる。その結果、ジイソシアネートとの反応活性点を増加させ得るため、高分子量のポリアミドイミドを得ることが容易になり、得られるポリアミドイミドの機械的強度を更に向上させることが可能になる。
【0109】
また、ジアミンと無水トリメリット酸との反応における反応温度は、50〜150℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。50℃より低い温度では、反応が遅く、工業的に不利となる傾向があり、また150℃より高い温度では、環化しないカルボキシル基との反応が進行し、イミドを生成する反応が阻害される傾向がある。
【0110】
ジイミドジカルボン酸生成工程においては、ジアミンと無水トリメリット酸との反応により、無水トリメリット酸の無水部分は一旦開環した後に脱水閉環してイミド結合が形成されると考えられる。なお、かかる脱水閉環反応は、ジイミドジカルボン酸生成工程の最後に、得られた反応混合物に水と共沸可能な芳香族炭化水素を加え温度を上げることにより、実施することが好ましい。反応混合物に水と共沸可能な芳香族炭化水素を加えることによって、脱水閉環反応によって生じた水を効率よく除去することができる。
【0111】
上記脱水閉環反応は水の生成がなくなるまで行うことが好ましい。脱水閉環反応の完了は、例えば、水分定量受器等により、理論量の水が留去されていることを確認することによって行うことができる。
【0112】
水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、トルエン等が挙げられる。沸点が低いため留去しやすいこと、有害性が比較的低いことから、トルエンが好ましい。
【0113】
水と共沸可能な芳香族炭化水素は非プロトン性極性溶媒の重量に対して10〜50質量%に相当する量を加えることが好ましい。水と共沸可能な芳香族炭化水素の量が、非プロトン性極性溶媒の量に対して10質量%未満では、水の除去効果が低下する傾向があり、50質量%以上では、生成物であるジイミドジカルボン酸が析出する傾向がある。
【0114】
また、脱水閉環反応は反応温度120〜180℃で行うことが好ましい。120℃より低い温度では水が十分に除去できない場合があり、また180℃より高い温度では芳香族炭化水素の散逸を防げない場合がある。
【0115】
さらに、水と共沸可能な芳香族炭化水素は、ジイミドジカルボン酸をジイソシアネートと反応させる前に除去しておくことが好ましい。芳香族炭化水素を含んだ状態では、反応中に生成物である、分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドが析出する場合がある。芳香族炭化水素を除去する方法に、特に制限は無いが、例えば、脱水閉環反応の後、更に温度を上げることによって芳香族炭化水素を留去する方法が挙げられる。
【0116】
上記ジイミドジカルボン酸と反応させるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIという。)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。ポリアミドイミドの耐熱性を向上させる観点からは、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0117】
上記ジイソシアネートは、上記ジイミドジカルボン酸の合計モル数に対して、1.05〜1.45倍のモル量で用いることが好ましい。上記範囲内のジイソシアネートを用いることによって、得られるポリアミドイミドの分子量を溶融成形が可能な分子量域のものとすることができる。これにより、この後に続く分子鎖末端がイソシアネート基であるポリアミドイミドとカルボキシル基を3個以上有する化合物との反応におけるゲル化を抑制することができ、最終的には多官能グリシジル化合物を含む樹脂組成物を硬化した際の伸びを十分なものとすることができる。
【0118】
第1実施形態の樹脂組成物に含まれるポリアミドイミドの好適な一実施形態である両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミド(γ)及びその作製スキームを以下に示す。
【0120】
上記スキーム中、Xを有するジアミンは、上述したジアミンから任意に選択できる。また、Yを有するジイソシアネートについても、上述したジイソシアネートから任意に選択できる。また、kは1以上の整数である。なお、kは10〜80であることが好ましく、20〜50であることがより好ましく、30〜40であることが更に好ましい。このようなスキームによれば、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族アミド基を両末端に有する両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミド(γ)を作製することができる。
【0121】
このような方法によれば、ジアミンと無水トリメリット酸の反応から、本実施形態に係るポリアミドイミドの生成に至る全工程において、反応物を取り出すことなく反応させることが効率的に進められて好ましい。
【0122】
なお、ここで、両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミド(γ)を、第2実施形態の樹脂組成物に含まれるポリアミドイミドの好適な一実施形態である側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含む両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミドとする場合には、Xを有するジアミンを、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサン構造を含むジアミンとする。このようなスキームによれば、2個以上のカルボキシル基を有する芳香族アミド基を両末端に有し、側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含む両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミドを作製することができる。
【0123】
[多官能グリシジル化合物]
第1の実施形態及び第2の実施形態において、上記樹脂組成物が含有する多官能グリシジル化合物は、1分子内に官能基を2つ以上有するグリシジル化合物であれば特に制限はないが、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂は、180℃以下の温度で硬化が可能であり、かつ、上記ポリアミドイミドのカルボキシル基と反応して熱的、機械的、電気的特性を向上させることができる。
【0124】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂等の多価フェノール又は1,4−ブタンジオール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、アミン、アミド又は複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジル誘導体、脂環式エポキシ樹脂、縮合環型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、リン含有型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、EPICLON153、EPICLON840、EPICLON840−S、EPICLON850、EPICLON850−S、EPICLONEXA−850CRP、EPICLON850−LC、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1055、EPICLON2050、EPICLON3050、EPICLON4050、LF−4711、LF−6161、LF−4871、LA−7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356、LA−3018−50P、EPICLON N−673−80M、EPICLON N−680−75M、EPICLON N−690−75M、EPICLON N−740−80M、EPICLON N−770−70M、EPICLON N−865−80M、HP−4032、HP−4032D(以上、DIC株式会社製、製品名)、YD−127、YD−128、YD−127、YD−8125、YD−907、YDCN−700−2、YDCN−700−3、YDCN−700−5、YDCN−700−7、YDCN−700−10、YDCN−704、YDPN−638(以上、東都化成株式会社製、製品名)、DER331L、DER337(以上、ダウケミカル社製、製品名)、Ep152、Ep154、Ep815、Ep828、YX8800、YX4000、YX4000H、YL6121H、YL6640、YL6677、YX7399、RXE15(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)、NC3000H、EPPN502H、ZX1548−2、AK−601(以上、日本化薬株式会社製、製品名)、EX−212L、EX−214L(以上、ナガセケムテックス株式会社製、製品名)、セロキサイド2021P(ダイセル化学工業株式会社製、製品名)などが挙げられる。
【0125】
なお、エポキシ樹脂が有するグリシジル基は多いほどよく、3個以上であることがより好ましい。
【0126】
多官能グリシジル化合物が、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂である場合、本実施形態の樹脂組成物は、当該エポキシ樹脂の硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤の好適な含有量は、グリシジル基の数により異なる。具体的には、グリシジル基が多いほどこの含有量は少なくてよい。
【0127】
上記硬化剤は、エポキシ樹脂と反応するもの、または、硬化を促進させるものであれば制限はないが、例えば、アミン類、イミダゾール類、多官能フェノール類、酸無水物類などが挙げられる。
【0128】
上記アミン類としては、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素などが挙げられる。
【0129】
上記イミダゾール類としては、例えば、アルキル基置換イミダゾール、ベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0130】
上記多官能フェノール類としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA及びこれらのハロゲン化合物、さらにホルムアルデヒドとの縮合物であるノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0131】
上記酸無水物類としては、例えば、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸などが挙げられる。
【0132】
これらの硬化剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
これらの硬化剤の含有量は、硬化剤がアミン類の場合、アミンの活性水素の当量と、エポキシ樹脂のエポキシ当量がほぼ等しくなる量であることが好ましい。硬化剤としてイミダゾールを採用する場合、単純に活性水素との当量比とならず、経験的にエポキシ樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましい。多官能フェノール類や酸無水物類の場合、エポキシ樹脂1当量に対して、フェノール性水酸基やカルボキシル基0.6〜1.2当量が好ましい。硬化剤の含有量は、少なければ未硬化のエポキシ樹脂が残り、Tg(ガラス転移温度)が低くなる傾向にある。この含有量が多すぎると、未反応の硬化剤が残り、絶縁性が低下する傾向にある。ここで、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、ポリアミドイミドのアミド基との反応も考慮することが好ましい。
【0134】
また、本実施形態の樹脂組成物は、上記硬化剤の一部を硬化促進剤として含有してもよい。硬化促進剤として用いるときの好適な含有量は、上記硬化剤の含有量と同じでよい。
【0135】
本実施形態の樹脂組成物における多官能グリシジル化合物の含有量は、分子鎖の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を有するポリアミドイミド100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、3〜100質量部であることがより好ましく、5〜40質量部であることが更に好ましい。この含有量が1質量部未満であると、耐溶剤性が低下する傾向にあり、この含有量が200質量部を超えると未反応のグリシジル化合物によりTgが低下し耐熱性が不十分となったり、可撓性が低下したりする傾向にある。
【0136】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じ、難燃性の向上を目的とした添加型の難燃剤を含んでいてもよく、具体例として、水酸化アルミニウムHP360(昭和電工株式会社製、製品名)、シリカSO−E5(アドマテックス株式会社製、製品名)及びリンを含有するフィラーなどが好ましい。リンを含有するフィラーとしてはOP930(クラリアント社製、製品名、リン含有量23.5質量%)、HCA−HQ(三光株式会社製、製品名、リン含有量9.6質量%)、ポリリン酸メラミンPMP−100(リン含有量13.8質量%)、PMP−200(リン含有量9.3質量%)、PMP−300(リン含有量9.8質量%)(以上、日産化学株式会社製、製品名)などが挙げられる。
【0137】
上記第1の実施形態に係る樹脂組成物は、成形性に優れながらも、硬化後の伸びの低下が少なく、且つ、金属箔や繊維基材との接着性及び耐熱性に優れるものとなり得る。このような効果が得られる理由を本発明者らは以下のとおり考えている。
【0138】
従来のポリアミドイミドと多官能グリシジル化合物とを含有する樹脂組成物においては、ポリアミドイミド中のアミド基が架橋点となる。そのため、加熱硬化後のCステージ状態の樹脂は架橋密度が高くなる傾向にあった。これに対して、本発明に係る分子鎖の少なくとも一末端に2個以上のカルボキシル基を有するポリアミドイミドの場合、グリシジル基がアミド基よりもカルボキシル基と優先的に反応するため、熱硬化時には、ポリアミドイミドの末端で鎖伸長と架橋が優先して起こるため、アミド基は架橋点を形成しにくくなる。これにより、柔らかい成分の架橋密度を低く維持しながらも、樹脂全体の架橋を十分なものとすることができ、伸び、接着性及び耐熱性を両立することができたものと本発明者らは考えている。
【0139】
上記の作用効果を説明するための具体例として、ポリアミドイミドが上記両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミドであり、多官能グリシジル化合物がエポキシ樹脂(以下、場合により「EP」と示す)である場合の反応を模式化したものを反応(i)として以下に示す。
【0141】
上記反応(i)では、ポリアミドイミドが両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミドの場合の反応を模式化して示したが、片末端がジカルボン酸で変性しているポリアミドイミドであっても、多官能グリシジル化合物が、ポリアミドイミドの分子鎖末端のカルボキシル基又はイソシアネート基と反応して鎖伸長と架橋を起こすため、上記と同様の効果を奏することができる。
【0142】
上記第2の実施形態に係る樹脂組成物は、成形性に優れながらも、硬化後の伸びの低下が少なく、且つ、金属箔や繊維基材との接着性及び耐熱性に優れるものとなり得る。また、本実施形態の樹脂組成物は、硬化後の樹脂の弾性率が低く、応力緩和材や衝撃吸収材として有用である。このような効果が得られる理由を本発明者らは以下のとおり考えている。
【0143】
従来のポリアミドイミドと多官能グリシジル化合物とを含有する樹脂組成物においては、ポリアミドイミド中のアミド基が架橋点となる。そのため、加熱硬化後のCステージ状態の樹脂は架橋密度が高くなる傾向にあった。これに対して、本実施形態に係るポリアミドイミドの場合、グリシジル基がアミド基よりもカルボキシル基と優先的に反応するため、熱硬化時には、ポリアミドイミドの末端で鎖伸長と架橋が優先して起こるため、アミド基は架橋点を形成しにくくなる。これにより、柔らかい成分の架橋密度を低く維持しながらも、樹脂全体の架橋を十分なものとすることができ、伸び、接着性及び耐熱性を両立することができたものと考えられる。さらに、側鎖の不飽和結合含有基が、エポキシ樹脂等の多官能グリシジル化合物及びフェノール樹脂等の硬化剤に対するポリアミドイミドの相溶性を向上させることにより、多官能グリシジル化合物同士の反応又は多官能グリシジル化合物と硬化剤との反応などが、多官能グリシジル化合物とポリアミドイミドとの反応に優先して起こることを防止でき、硬化後の樹脂の弾性率を低くすることができたと考えられる。なお、このような推察は、不飽和結合含有基が熱硬化時に反応せずに残るという本発明者らの知見に基づくものである。
【0144】
上記の作用効果を説明するための具体例として、ポリアミドイミドが側鎖に不飽和結合含有基を有するポリシロキサンイミド構造を含む両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミドであり、多官能グリシジル化合物がエポキシ樹脂(以下、場合により「EP」と示す)である場合の反応を模式化したものを反応(ii)として以下に示す。
【0146】
上記反応(ii)では、ポリアミドイミドが、両末端ジカルボン酸変性ポリアミドイミドの場合の反応を模式化して示したが、片末端にカルボン酸が変性しているポリアミドイミドであっても、多官能グリシジル化合物が、ポリアミドイミドの分子鎖末端のカルボキシル基又はイソシアネート基と反応して鎖伸長と架橋を起こすため、上記と同様の効果を奏することができる。
【0147】
以上、本発明の樹脂組成物の好適な実施形態について説明したが、当該樹脂組成物は、例えば、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着フィルム及び金属箔張り積層板に用いることができる。
【0148】
上記第1実施形態の樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着フィルム及び金属箔張り積層板は、上記第1実施形態に係る樹脂組成物を含有することにより、成形性に優れ、熱硬化後も十分な伸びを有することができる。また、これらによれば、任意に折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能なプリント配線板を形成でき、かつ、金属箔や繊維基材との接着性や、耐熱性に優れるプリント配線板用材料として有用である。以下、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着フィルム及び金属箔張り積層板について説明する。
【0149】
上記第2実施形態の樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着フィルム及び金属箔張り積層板は、上記第2実施形態に係る樹脂組成物を含有することにより、成形性に優れ、熱硬化後の伸びの低下が少なく、なおかつ熱硬化後の弾性率を十分に低いものとすることができる。また、これらによれば、任意に折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能なプリント配線板を形成でき、かつ、金属箔や繊維基材との接着性や、耐熱性に優れるプリント配線板用材料として有用である。
【0150】
以下、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着フィルム及び金属箔張り積層板について説明する。
【0151】
[プリプレグ]
図1は、本発明のプリプレグの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すプリプレグ100は、上記樹脂組成物から形成されたBステージ状態の樹脂層20と、当該樹脂層20に埋設された基材2とを有する。このようなプリプレグは、樹脂層20と基材2との接着性に優れる。
【0152】
基材2は、金属箔張り積層板や多層プリント配線板を製造する際に用いられるものであれば特に制限されないが、通常、織布や不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材の材質としては、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維やアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維及びこれらの混抄系があり、特にガラス繊維の織布が好ましい。プリプレグに使用される基材としては、50μm以下のガラスクロスが特に好適である。基材2が、厚みが50μm以下のガラスクロスであると、折り曲げ性に優れるプリント配線板を作製することができ、かつ、製造プロセス上での温度、吸湿等に伴う寸法変化を小さくすることが可能となる。ガラスクロスの具体例としては、WEX−1017、WEX−1027、WEX−1037、WEX−1086(以上、旭化成イーマテリアルズ株式会社製、製品名)などが挙げられる。
【0153】
プリプレグ100は、例えば、上述の樹脂組成物に基材2を含浸させることにより得ることができる。
【0154】
具体的には、例えば、上述の樹脂組成物を有機溶媒中で混合、溶解、分散してワニスを調製し、このワニスに、基材2を含浸、乾燥することによりプリプレグを作製することができる。ワニスに用いる有機溶媒は、樹脂組成物を溶解又は分散可能なものであれば特に制限はないが、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0155】
ここで、乾燥は、ワニス中の有機溶剤の揮発速度が速く、かつ樹脂組成物の硬化反応を促進しない程度の温度で行うことが好ましい。この温度は、通常、80℃〜180℃の範囲であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。乾燥時間は、ワニスのゲル化時間との兼ね合いで適宜調整することが好ましい。なお、当該乾燥において、ワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発することが好ましく、90質量%以上揮発することがより好ましく、95質量%以上揮発することが更に好ましい。
【0156】
基材2へのワニスの含浸量は、ワニス固形分と基材2の総量に対するワニス固形分の質量比が30〜80質量%となる量とすることが好ましい。
【0157】
樹脂層20の厚み(プリプレグ100の表面と基材2表面との間の樹脂層の厚み)は3〜25μmが好ましく、5〜15μmがより好ましい。3μm未満では、金属箔張り積層板作製時に、樹脂の流動によって繊維基材の織り目が金属箔との接着界面に出易く、接着強度の信頼性が低下する傾向にある。25μmを超えると曲げ性の低下に繋がる。樹脂層20の厚みは、例えば電子顕微鏡や金属顕微鏡で金属箔張り積層板の断面を観察することによって測定できる。プリプレグ100の断面写真を撮影し、その写真において、基材2のプリプレグ表面に向かう凸部とそれに隣接する基材2のプリプレグ表面に向かう凸部とを結ぶ直線から垂線をプリプレグ表面に向かって降ろす。当該垂線のプリプレグ表面との交点及び凸部同士を結ぶ直線との交点の距離を測定する。これを5カ所について測定し、その平均値を樹脂層20の厚みとすることができる。
【0158】
プリプレグ100の厚みは15〜120μmが好ましく、15〜50μmがより好ましい。繊維基材の入手容易性の観点から15μm以上が好ましい。120μmを超えると、繊維基材への樹脂の含浸や塗布が困難になる。
【0159】
[樹脂付き金属箔]
図2は、本発明の樹脂付き金属箔の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示す樹脂付き金属箔200は、上記樹脂組成物から形成されたBステージ状態の樹脂層20と金属箔1とがこの順に積層されたものである。このような樹脂付き金属箔200は、多層配線板などに適用され硬化した際(Cステージ状態)に、樹脂層20と金属箔1との接着性に優れる。
【0160】
金属箔1としては、銅箔やアルミニウム箔が一般的に用いられる。また、金属箔1の厚みとしては、通常、積層板に用いられている5〜200μmのものが用いられる。また、金属箔1として、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5〜15μmの銅層と10〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔、あるいはアルミニウムと銅箔を複合した2層構造複合箔を用いることができる。市販の銅箔としては、GTS、GTS−MP、GTS−FLP、GY、GY−MP、F0−WS、F1−WS、F2−WS、TSTO、DT−GL、DT−GLD(以上、古河サーキットフォイル株式会社製、製品名)、SLP、YGP(以上、日本電解株式会社製、製品名)、3EC−VLP(三井金属株式会社製、製品名)などがあるが、これらに限られるものではない。
【0161】
このような樹脂付き金属箔は、例えば、上述と同様の方法により調製したワニスを、金属箔上に塗布し、乾燥させることによって製造できる。ここで、乾燥は、ワニス中の有機溶剤の揮発速度が速く、かつ樹脂組成物の硬化反応を促進しない程度の温度で行うことが好ましい。この温度は、通常、80℃〜180℃の範囲であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。乾燥時間は、ワニスのゲル化時間との兼ね合いで適宜調整することが好ましい。なお、当該乾燥において、ワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発することが好ましく、90質量%以上揮発することがより好ましく、95質量%以上揮発することが更に好ましい。
【0162】
ワニスの塗布には、例えば、ギャップの間を被塗工物を通過させるコンマコータやバーコータ、ノズルから流量を調整したワニスを流すことにより塗布するダイコータが使用できる。ワニス状態の塗膜厚みを50〜500μmとする場合、ダイコータを使用することが好ましい。
【0163】
ワニスの塗布量は、乾燥後のBステージ状態での樹脂層の厚みが3〜80μmになる量とすることが好ましく、20〜80μmになる量とすることがより好ましい。
【0164】
[接着フィルム]
図3は、本発明の接着フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図3に示す接着フィルム300は、上記樹脂組成物から形成されたものである。なお、接着フィルム300はBステージ状態のものである。
【0165】
接着フィルム300は、例えば、上述と同様の方法により調製したワニスを、離型基材に塗布し、乾燥させることによって製造できる。なお、離型基材は接着フィルムの使用直前に剥離除去される。ここで、乾燥は、ワニス中の有機溶剤の揮発速度が速く、かつ樹脂組成物の硬化反応を促進しない程度の温度で行うことが好ましい。この温度は、通常、80℃〜180℃の範囲であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。乾燥時間は、ワニスのゲル化時間との兼ね合いで適宜調整することが好ましい。なお、当該乾燥において、ワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発することが好ましく、90質量%以上揮発することがより好ましく、95質量%以上揮発することが更に好ましい。
【0166】
ワニスを塗布する離型基材は、乾燥の際に曝される温度に耐えうるものであれば制限はなく、一般的に用いられる離型剤付きのポリエチレンテレフタレートフィルムやポリイミドフィルム、アラミドフィルム、離型剤付きのアルミニウム箔等の金属箔などが使用できる。
【0167】
ワニスの塗布には、例えば、ギャップの間を被塗工物を通過させるコンマコータや、ノズルから流量を調整したワニスを流すことにより塗布するダイコータが使用できる。ワニス状態の塗膜厚みを50〜500μmとする場合、ダイコータを使用することが好ましい。
【0168】
接着フィルム300の厚みは、乾燥後のBステージ状態での厚みが3〜80μmになる量とすることが好ましく、20〜80μmになる量とすることがより好ましい。
【0169】
[金属箔張り積層板]
図4は、本発明の金属箔張り積層板の一実施形態を示す模式断面図である。
図4に示す金属箔張り積層板400は、プリプレグ100を硬化させた複合樹脂層40を2枚の金属箔1で挟持した構造を有する。なお、プリプレグ100を硬化させると、プリプレグ100の樹脂層20が硬化し、硬化樹脂層20aとなる。金属箔1としては、上述のものを用いることができる。
【0170】
金属箔張り積層板400は、例えば、上述のプリプレグを2枚の金属箔1で挟持した後、加熱加圧することにより製造できる。加熱温度は、通常、150〜280℃の範囲の温度とされるが、180℃〜250℃の範囲の温度とすることが好ましい。また、加圧圧力は、通常、0.5〜20MPaの範囲の圧力とされるが、1〜8MPaの範囲の圧力とすることが好ましい。
【0171】
なお、
図4に示す金属箔張り積層板400においては、複合樹脂層40は1層のみであるが、複合樹脂層40は、複数層あってもよい。この場合、プリプレグを複数枚積層した積層体を2枚の金属箔で挟持した後に加熱加圧すればよい。複合樹脂層40の厚みは、13〜110μmが好ましい。複数層からなる場合には、複数層の総厚が13〜110μmであることが好ましい。
【0172】
さらに、
図4に示す金属箔張り積層板400は、2枚の金属箔を有する両面金属箔張り積層板であるが、当該金属箔は1枚であってもよい。すなわち片面金属箔張り積層板であってもよい。金属箔を1枚とする場合には、プリプレグの片面に金属箔を配置した後に加熱加圧すればよい。金属箔1の厚みは、通常5〜200μm程度のものが用いられる。なお、金属箔張り積層板400の総厚は200μm以下であることが好ましい。金属箔張り積層板400の厚みがこの範囲であると、折り曲げ性が良好となる。
【0173】
金属箔及びプリプレグを硬化して得られる複合樹脂層40の厚みは、例えば電子顕微鏡や金属顕微鏡で金属箔張り積層板の断面を観察することによって測定できる。なお、複合樹脂層40の硬化樹脂層20aの厚み(複合樹脂層40の表面と基材2表面との間の硬化樹脂層の厚み)は、例えば金属箔張り積層板の断面写真を撮影し観察することによって測定できる。撮影した断面写真において、基材2の金属箔1側に向かう凸部とそれに隣接する金属箔1側に向かう凸部とを結ぶ直線から垂線を金属箔1側に向かって降ろす。当該垂線の金属箔1及び複合樹脂層40の界面との交点並びに凸部同士を結ぶ直線との交点の距離を測定する。これを5カ所について測定し、その平均値を硬化樹脂層20aの厚みとすることができる。金属箔張り積層板を作製する前であれば、マイクロメータを用いてプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着フィルム、金属箔張り積層板及び金属箔の厚みを確認することもできる。
【0174】
上記2枚の金属箔をともに省略することも可能であるが、金属箔を有する金属箔張り積層板は、当該金属箔に回路加工を施してプリント配線板とすることができる。また、このように作製したプリント配線板は、フレキシブル配線板として用いることができ、コンパクトに収納可能な基板を作製できる。また、当該プリント配線板と、従来のリジッド基板を多層化することで、コンパクトに収納可能なリジッド−フレックス基板を作製することもできる。
【0175】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0176】
以下に、本発明について、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0177】
[実施例A−1〜実施例A−4、比較例A−1、A−2]
(合成例A−1)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルKF8010(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量415)83.0g(0.10mol)、芳香族ジアミンとしてBAPP(2.2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))41.1g(0.10mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.42mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)604gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0178】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン150mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)65.1g(0.26mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)4.2g(0.02mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は18,090、ワニスの固形分濃度は29質量%であった。
【0179】
(合成例A−2)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルKF8010(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量415)49.8g(0.06mol)、芳香族ジアミンとしてBAPP(2.2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))57.5g(0.14mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.42mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)565gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0180】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン150mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)65.1g(0.26mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)4.2g(0.02mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は18,860、ワニスの固形分濃度は29質量%であった。
【0181】
(合成例A−3)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルKF8010(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量415)49.8g(0.06mol)、芳香族ジアミンとしてBAPP(2.2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))32.8g(0.08mol)、ジェファーミンD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)120.0g(0.06mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.42mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)508gを仕込み、80℃で30分間撹拌した。
【0182】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン150mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)65.1g(0.26mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)4.2g(0.02mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は19,130、ワニスの固形分濃度は28質量%であった。
【0183】
(合成例A−4)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに脂肪族ジアミンD−2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)2000.0g(0.10mol)、芳香族ジアミンとしてBAPP(2.2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))41.1g(0.10mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.42mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)704gを仕込み、80℃で30分間撹拌した。
【0184】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン150mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し,芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)65.1g(0.26mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度,50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)4.2g(0.02mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は19,140、ワニスの固形分濃度は34質量%であった。
【0185】
(比較合成例A−1)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルKF8010(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量415)83.0g(0.10mol)、芳香族ジアミンとしてBAPP(2.2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))41.1g(0.10mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.42mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)580gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0186】
次に、そして水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン150mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)60.1g(0.24mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は31,780、ワニスの固形分濃度は29質量%であった。
【0187】
(比較合成例A−2)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルKF8010(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量415)83.0g(0.10mol)、芳香族ジアミンとしてBAPP(2.2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン))41.1g(0.10mol)、TMA(無水トリメリット酸)80.7g(0.42mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)604gを仕込み、80℃で30分間撹拌した。
【0188】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン150mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し,芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)65.1g(0.26mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度,50℃まで冷却し無水トリメリット酸3.8g(0.02mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は22370、ワニスの固形分濃度は29質量%であった。
【0189】
なお、上記合成例においてポリアミドイミドの数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定(25℃)されたポリアミドイミドの分子量分布のクロマトグラムを標準ポリスチレンを用いて換算することによって求めた。なお、GPCの溶離液としては、テトラヒドロフラン/ジメチルホルムアミド=50/50(体積比)混合液にリン酸0.06mol/L、臭化リチウム一水和物0.03mol/Lを溶解した液を使用し、カラムとしては、GL−S300MDT−5(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名)を2本直結したものを使用した。
【0190】
(実施例A−1)
合成例A−1のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液310.0g(樹脂固形分濃度29質量%)とエポキシ樹脂としてZX−1548−2(東都化成株式会社製、製品名)20.0g(樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0191】
(実施例A−2)
合成例A−2のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液310.0g(樹脂固形分濃度29質量%)とエポキシ樹脂としてNC3000H(日本化薬株式会社製、製品名)20.0g(樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0192】
(実施例A−3)
合成例A−3のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液321.0g(樹脂固形分濃度28質量%)とエポキシ樹脂としてNC3000H(日本化薬株式会社製、製品名)10.0g(樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)、HP4032D(DIC株式会社製、製品名)10.0g(樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0193】
(実施例A−4)
合成例A−4のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液264.7g(樹脂固形分濃度34質量%)とエポキシ樹脂としてZX−1548−2(東都化成株式会社製、製品名)20.0g(樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)を配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0194】
(比較例A−1)
比較合成例A−1のポリアミドイミド樹脂を用いた以外は実施例A−1と同様にして樹脂組成物ワニスとした。
【0195】
(比較例A−2)
比較合成例A−2のポリアミドイミド樹脂を用いた以外は実施例A−1と同様にして樹脂組成物ワニスとした。
【0196】
(接着フィルムの作製)
実施例A−1〜A−4、比較例A−1、A−2で作製したワニスを厚み50μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人テトロンフィルム株式会社製ピューレックスA63)に乾燥後のBステージ状態での厚みが50μmになるようにバーコータで塗布し、140℃で15分加熱、乾燥して接着フィルムを得た。
【0197】
(樹脂付き銅箔の作製)
実施例A−1〜A−4、比較例A−1、A−2で作製したワニスを厚み18μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F3−WS−12)の粗化面(表面粗さ;Rz=2.6μm)に乾燥後のBステージ状態での厚みが50μmになるようにバーコータで塗布後、140℃で12分加熱、乾燥して樹脂付き銅箔を得た。
【0198】
(プリプレグ及び金属箔張り積層板の作製)
実施例A−1〜A−4、比較例A−1、A−2で作製したワニスを厚み19μmのガラス布(旭化成イーマテリアルズ株式会社製1027)に含浸後、150℃で15分加熱、乾燥して樹脂分70質量%のプリプレグを得た。実施例A−1〜A−4及び比較例A−1、A−2で作製したプリプレグの厚みをマイクロメータで測定した結果、いずれも48μmであった。
【0199】
このプリプレグの両側に厚み12μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F2−WS−12)を粗化面(表面粗さ;Rz=2.1μm)がプリプレグと合わさるようにして重ね、以下のプレス条件で両面銅張り積層板を作製した。なお、プレス条件は、プレス機のプレス部を真空度40hPaとした後、所定の成形圧力、昇温速度5℃/分で材料を加圧加熱し始め、所定の成形温度に達したところで成型温度を所定時間維持(成型時間)し、その後加圧加熱を止め、空冷後、プレス部を大気圧に戻した。ここでは、成形圧力4.0MPa、成形温度230℃、成形時間90分とした。両面銅張り積層板の一部を切り出し、両面の銅箔をエッチングで除去した後の複合樹脂層の厚みをマイクロメータで測定したところ、実施例A−1〜A−4及び比較例A−1、A−2のいずれにおいても45μmであった。
【0200】
(機械特性評価用試料の作製)
接着フィルムを2枚重ね、両側に厚み12μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F2−WS−12)を粗化面が接着フィルムと合わさるようにして重ね、上記プレス条件にて成形圧力2.0MPa、成形温度230℃、成形時間60分の条件でプレス積層したのち銅箔をエッチングして機械特性評価用試料を作製した。
【0201】
(折り曲げ試験用試料の作製)
両面銅張り積層板の片面に幅1mm長さ100mmのラインパターンをエッチングにより形成し構成1とした。この試料の両面にそれぞれ同一組成の樹脂付き銅箔を重ね、上記プレス条件にて成形圧力4.0MPa、成形温度230℃、成形時間60分の条件で積層した後、両面の銅箔をエッチングし構成2とした。
【0202】
[評価結果]
(基材埋め込み性の評価)
所定の回路パターンを施した両面回路基板(導体厚み12μm、基材;日立化成工業株式会社製I−671)の両側に実施例及び比較例のプリプレグと12μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F2−WS−12)を粗化面がプリプレグと合わさるようにして重ね、上記プレス条件にて成形圧力4.0MPa、成形温度230℃、成形時間60分のプレス条件で両面銅張り積層板を作製した。その後、銅箔をエッチング除去し導体部分への樹脂の埋め込み性を目視により確認した。樹脂面に回路パターンに由来する表面段差がなく全面が均一に埋め込まれ基板と樹脂との空隙による白化がないことを確認できるものを「良好」、基板と樹脂との空隙による白化が一部でもみられるものを「不良」として評価した。評価結果を表1に示す。
【0203】
(銅箔接着強度の評価)
得られた金属箔張り積層板の銅箔接着強度(引き剥がし強さ)を測定した。金属箔張り積層板の片面の銅箔を幅5mmの帯状にエッチングし、90度方向に50mm/分の速度で銅箔を引き剥がしたときの力を不動工業株式会社製レオメータで測定し、幅10mm当たりの引き剥がし強さに換算(2倍)して接着強度とした。評価結果を表1に示す。これによれば、F2−WS−12と実施例A−1〜A−3のいずれのプリプレグとの組み合わせでも0.8〜1.1kN/mであった。
【0204】
(はんだ耐熱性の評価)
得られた金属箔張り積層板を、260℃、288℃及び300℃のはんだ浴に浸漬しはんだ耐熱性を測定した。この結果、実施例A−1〜A−4、比較例A−1及び比較例A−2のいずれの金属箔張り積層板においても、いずれの温度でも5分以上、ふくれ、剥がれ等の異常は見られなかった。当該結果を「良好」とし、表1に示す。
【0205】
(折り曲げ性の評価)
構成1及び構成2の折り曲げ試験用試料を用いて、基材折り曲げ性を評価した。手で折り目を付けて、破断せず且つクラックが入ることなく折り曲げることができたものを「良好」、折り目を付けて折り曲げたときにクラックが入ったものを「クラック」、折り目を付けて折り曲げたときに基材が破断したものを「不良」として評価した。評価結果を表1に示す。結果としては、実施例A−1〜A−4では可とう性に富み任意に折り曲げることが可能であった。比較例A−1は折り曲げ可能であるが実施例に比べてクラックが入りやすかった。比較例A−2は曲げることができずに破断した。
【0206】
(機械特性(破断強度、破断伸び)の評価)
機械特性として、破断強度、破断伸びを測定した。破断強度及び伸びは、評価用接着フィルムを幅10mm、長さ80mmに加工した試験片をレオメータ(島津製作所株式会社製EZ−Test)を用いて、チャック間距離60mm、引っ張り速度5mm/分の条件で測定した。なお、測定は、Bステージ及びCステージそれぞれについて実施した。評価結果を表1に示す。実施例の試験片は分子量によらずいずれも伸びが大きいのに対して比較例の試験片は伸びが小さかった。
【0207】
【表1】
【0208】
比較例A−1及びA−2は、硬化後即ちCステージ状態での破断伸びがBステージ状態のそれに比べ、小さくなっているのに対して、実施例では、硬化後即ちCステージ状態における破断伸びは、Bステージ状態でのそれよりもむしろ大きくなっている。
【0209】
以上のとおり、実施例の樹脂組成物は、比較例の樹脂組成物と比較し、成形性に優れ、硬化後の伸びの低下が少なく、プリント配線板としたときにクラックが入ることなく折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能なものを形成できることを確認した。
【0210】
[実施例B−1〜実施例B−16、比較例B−1]
(合成例B−1)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)43.7g(0.05mol)、脂肪族ジアミンとしてD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)80.0g(0.04mol)、ワンダミンWHM(新日本理化株式会社製、製品名)2.1g(0.01mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.3g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)357gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0211】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)32.5g(0.13mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)2.6g(0.0122mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は30,500、ワニスの固形分濃度は34質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0212】
(合成例B−2)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)43.7g(0.05mol)、脂肪族ジアミンとしてD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)80.0g(0.04mol)、ワンダミンWHM(新日本理化株式会社製、製品名)2.1g(0.01mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.3g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)360gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0213】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)35.0g(0.14mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)2.8g(0.0134mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は27,900、ワニスの固形分濃度は34質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0214】
(合成例B−3〜B−5)
表2に示した反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)、脂肪族ジアミンD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)、ワンダミンWHM(新日本理化株式会社製、製品名)、TMA(無水トリメリット酸)、の各量を合成例B−1と同様に仕込み、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を、合成例B−3では363g、合成例B−4では354g、合成例B−5では351g仕込み、それぞれ80℃で、30分間撹拌した。
【0215】
次に、合成例B−1と同様に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)を表2に示した量を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却し表2に示した量のトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量及びワニスの固形分濃度(NV)をそれぞれ表2に示した。
【0216】
(合成例B−6)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)43.7g(0.05mol)、脂肪族ジアミンとしてD400(ハンツマン社製、製品名、アミン当量200)32.0g(0.08mol)、ワンダミンWHM(新日本理化株式会社製、製品名)2.1g(0.01mol)、TMA(無水トリメリット酸)60.5g(0.315mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)326gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0217】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約5.7mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)52.6g(0.21mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)2.7g(0.0129mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は26,400、ワニスの固形分濃度は34質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0218】
(合成例B−7)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)83.0g(0.095mol)、脂肪族ジアミンとしてD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)90.0g(0.045mol)、ワンダミンWHM(新日本理化株式会社製、製品名)2.1g(0.01mol)、TMA(無水トリメリット酸)60.5g(0.315mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)481gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0219】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約5.7mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)45.1g(0.18mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)3.0g(0.0141mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は35,600、ワニスの固形分濃度は34質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0220】
(合成例B−8)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)39.3g(0.04mol)、脂肪族ジアミンとしてD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)90.0g(0.045mol)、ワンダミンWHM(新日本理化株式会社製、製品名)2.1g(0.01mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.3g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)354.2gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0221】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)35.0g(0.14mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)2.8g(0.0134mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は28,600、ワニスの固形分濃度は38質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0222】
(合成例B−9)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)26.2g(0.030mol)、脂肪族ジアミンとしてD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)120.0g(0.06mol)、ワンダミンWHM(新日本理化株式会社製、製品名)2.1g(0.01mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.3g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)385.5gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0223】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)35.0g(0.14mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)3.6g(0.0169mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は24,500、ワニスの固形分濃度は40質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0224】
(合成例B−10)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)87.4g(0.1mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.3g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)267.8gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0225】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン120mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)32.6g(0.13mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。再度、50℃まで冷却しトリメシン酸(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸)2.0g(0.0094mol)を投入し160℃で1時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。ポリアミドイミドの数平均分子量は30,100、ワニスの固形分濃度は43質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0226】
(比較合成例B−1)
環流冷却器を連結したコック付き25mLの水分定量受器、温度計、撹拌器を備えた1リットルのセパラブルフラスコに反応性シリコーンオイルX−22−9412(信越化学工業株式会社製、製品名、アミン当量437)52.4g(0.06mol)、脂肪族ジアミンとしてD2000(ハンツマン社製、製品名、アミン当量1000)80.0g(0.04mol)、TMA(無水トリメリット酸)40.3g(0.21mol)、非プロトン性極性溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)360gを仕込み、80℃で、30分間撹拌した。
【0227】
次に、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン150mLを投入してから温度を上げ約160℃で2時間環流させた。水分定量受器に水が約3.6mL以上たまっていること、水の留出が見られなくなっていることを確認し、水分定量受器にたまっている留出液を除去しながら、約190℃まで温度を上げて、トルエンを除去した。その後、50℃まで冷却し、芳香族ジイソシアネートとしてMDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)35.0g(0.14mol)を投入し、180℃で2時間反応させた。反応終了後、ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液を得た。続くトリメシン酸との反応を行わなかった。ポリアミドイミドの数平均分子量は28,900、ワニスの固形分濃度は33質量%であった。主な成分、その配合量(g)、ポリアミドイミドの数平均分子量(Mn)及びワニスの固形分濃度(NV)を表2に示す。
【0228】
なお、上記合成例及び比較合成例においてポリアミドイミドの数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定(25℃)されたポリアミドイミドの分子量分布のクロマトグラムを標準ポリスチレンを用いて換算することによって求めた。なお、GPCの溶離液としては、テトラヒドロフラン/ジメチルホルムアミド=50/50(体積比)混合液にリン酸0.06mol/L、臭化リチウム一水和物0.03mol/Lを溶解した液を使用し、カラムとしては、GL−S300MDT−5(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名)を2本直結したものを使用した。
【0229】
【表2】
【0230】
ここで、表2中、D2000及びD400は、合成されたポリアミドイミドのポリオキシプロピレンイミド構造を構成するジアミンである。X−22−9412は、ビニル基が結合した珪素を有する反応性シリコーンオイルであり、KF8010は不飽和結合を有しない反応性シリコーンオイルである。TMSAは、トリメシン酸を示す。また、Mnはポリアミドイミドの数平均分子量であり、NVはワニスの固形分濃度を示す。
【0231】
(実施例B−1)
合成例B−1のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液264.7g(樹脂固形分濃度34質量%)とエポキシ樹脂としてNC−3000H(日本化薬株式会社製、製品名)20.0g(樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0232】
(実施例B−2〜B−7)
実施例B−1と同様にして合成例B−2〜B−7の各ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液とエポキシ樹脂としてNC3000H(日本化薬株式会社製、製品名)20.0g(樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gをそれぞれ配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0233】
(実施例B−8〜B−10)
合成例B−2のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液264.7g(樹脂固形分濃度34質量%)とエポキシ樹脂として表3、4に示したEPPN502H(日本化薬株式会社製、製品名)、ZX−1548−2(東都化成株式会社製製品名)、DER331L(DIC株式会社製、製品名)の20.0g(いずれも樹脂固形分濃度50質量%のメチルエチルケトン溶液)をそれぞれ配合し、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを加えて、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0234】
(実施例B−11〜B−12)
合成例B−2のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液とエポキシ樹脂としてNC3000H(日本化薬株式会社製製品名)をそれぞれ表4に示した配合量で配合し、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを加えて、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0235】
(実施例B−13)
合成例B−8のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液とエポキシ樹脂としてNC3000H(日本化薬株式会社製製品名)をそれぞれ表4に示した配合量で配合し、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを加えて、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0236】
(実施例B−14)
合成例B−9のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液とエポキシ樹脂としてNC3000H(日本化薬株式会社製製品名)をそれぞれ表4に示した配合量で配合し、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを加えて、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0237】
(実施例B−15)
合成例B−10のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液とエポキシ樹脂としてNC3000H(日本化薬株式会社製製品名)をそれぞれ表4に示した配合量で配合し、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを加えて、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0238】
(実施例B−16)
合成例A−1のポリアミドイミド樹脂のNMP溶液310.0g(樹脂固形分濃度29重量%)とエポキシ樹脂としてZX−1548−2(東都化成株式会社製製品名)20.0g(樹脂固形分濃度50重量%のメチルエチルケトン溶液)、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1gを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して樹脂組成物ワニスとした。
【0239】
(比較例B−1)
比較合成例B−1のポリアミドイミド樹脂を用いた以外は実施例B−1と同様にして樹脂組成物ワニスとした。
【0240】
(接着フィルムの作製)
実施例B−1〜B−16、比較例B−1で作製したワニスを厚み50μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人テトロンフィルム株式会社製、製品名、ピューレックスA63)に乾燥後のBステージ状態での厚みが50μmになるようにバーコータで塗布し、140℃で15分加熱、乾燥して接着フィルムを得た。
【0241】
(樹脂付き銅箔の作製)
実施例B−1〜B−16、比較例B−1で作製したワニスを厚み18μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F3−WS−12)の粗化面(表面粗さ;Rz=2.6μm)に乾燥後のBステージ状態での厚みが50μmになるようにバーコータで塗布後、140℃で12分加熱、乾燥して樹脂付き銅箔を得た。
【0242】
(プリプレグ及び金属箔張り積層板の作製)
実施例B−1〜B−16、比較例B−1で作製したワニスを厚み19μmのガラス布(旭化成イーマテリアルズ株式会社製1027)に含浸後、150℃で15分加熱、乾燥して樹脂分70質量%のプリプレグを得た。実施例B−1〜B−16、比較例B−1で作製したプリプレグの厚みをマイクロメータで測定した結果、いずれも54〜56μmであった。
【0243】
このプリプレグの両側に厚さ12μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F2−WS−12)を粗化面(表面粗さ;Rz=2.1μm)がプリプレグと合わさるようにして重ね、以下のプレス条件で両面銅張り積層板を作製した。なお、プレス条件は、プレス機のプレス部を真空度40hPaとした後、所定の成形圧力、昇温速度5℃/分で材料を加圧加熱し始め、所定の成形温度に達したところで成型温度を所定時間維持(成型時間)し、その後加圧加熱を止め、空冷後、プレス部を大気圧に戻した。ここでは、成形圧力4.0MPa、成形温度230℃、成形時間90分とした。両面銅張り積層板の一部を切り出し、両面の銅箔をエッチングで除去した後の複合樹脂層の厚みをマイクロメータで測定したところ、実施例B−1〜B−16、比較例B−1のいずれにおいても、50〜51μmであった。
【0244】
(機械特性評価用試料の作製)
接着フィルムを2枚重ね、両側に厚さ12μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F2−WS−12)を粗化面が接着フィルムと合わさるようにして重ね、上記プレス条件にて成形圧力2.0MPa、成形温度230℃、成形時間60分の条件でプレス積層したのち銅箔をエッチングして機械特性評価用試料を作製した。
【0245】
(折り曲げ試験用試料の作製)
両面銅張り積層板の片面に幅1mm長さ100mmのラインパターンをエッチングにより形成し構成1とした。この試料の両面にそれぞれ同一組成の樹脂付き銅箔を重ね、上記プレス条件にて成形圧力4.0MPa、成形温度230℃、成形時間60分の条件で積層した後、両面の銅箔をエッチングし構成2とした。
【0246】
[評価結果]
(基材埋め込み性の評価)
所定の回路パターンを施した両面回路基板(導体厚み12μm、基材;日立化成工業株式会社製I−671)の両側に実施例及び比較例のプリプレグと12μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル株式会社製F2−WS−12)を粗化面がプリプレグと合わさるようにして重ね、成形温度230℃、成形時間60分、で成形圧力は4.0MPa、3.0MPa、2.0MPaの3条件のプレス条件で両面銅張積層板を作製した。その後、銅箔をエッチング除去し導体部分への樹脂の埋め込み性を目視により確認した。樹脂面に回路パターンに由来する表面段差がなく全面が均一に埋め込まれ基板と樹脂との空隙による白化がないことを確認できるものを「良好」とし2.0MPaで成形できたものを「4」、3.0MPaで成形できたものを「3」、4.0MPaで成形できたものを「2」、基板と樹脂との空隙による白化が一部でもみられるものを「不良」として「1」で評価した。評価結果を表3、4に示す。
【0247】
(銅箔接着強度の評価)
得られた金属箔張り積層板の銅箔接着強度(引き剥がし強さ)を測定した。金属箔張り積層板の片面の銅箔を幅5mmの帯状にエッチングし、90度方向に50mm/分の速度で銅箔を引き剥がしたときの力を不動工業株式会社製レオメータで測定し、幅10mm当たりの引き剥がし強さに換算(2倍)して接着強度とした。評価結果は表3、4に示す。これによれば、F2−WS−12と実施例B−1〜B−15のいずれのプリプレグとの組み合わせでも0.9〜1.4kN/mであった。
【0248】
(ガラス接着強度の評価)
実施例B−1〜B−16、比較例B−1のワニスを、ポリイミドフィルムとしてユーピレックスS(宇部興産株式会社製、製品名、厚さ50μm)に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、140℃で15分乾燥した。スライドガラスとポリイミドフィルムの塗布面を合わせて線圧1kg、温度130℃のラミネートロールの間を線速0.1m/分で通過させてラミネートしたのち180℃で1.5時間の熱処理を行った。ポリイミドフィルムを幅10mmの帯状に切り、90度方向に50mm/分の速度でポリイミドフィルムを引き剥がしたときの力を不動工業株式会社製レオメータで測定しガラス接着強度とした。評価結果は表3、4に示す。
【0249】
(ポリイミド接着強度の評価)
実施例B−1〜B−16、比較例B−1のワニスを、ポリイミドフィルムとしてユーピレックスS(宇部興産株式会社製、製品名、厚さ50μm)に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、140℃で15分乾燥した。ポリイミドフィルムの塗布面同士を合わせて真空プレス(200℃/2MPa/1時間)したのちに、ポリイミドフィルムを幅10mmの帯状に切り、180度方向に50mm/分の速度でポリイミドフィルムを引き剥がしたときの力を不動工業株式会社製レオメータで測定しポリイミド接着強度とした。評価結果は表3、4に示す。
【0250】
(弾性率の評価)
実施例B−1〜B−16、比較例B−1のワニスを、銅箔F2−WS−12(古河サーキットフォイル株式会社製、製品名、厚さ12μm)に乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、140℃で15分乾燥した。そして、塗布面同士を合わせて真空プレス(200℃/2MPa/1時間)したのちに銅箔をエッチングして樹脂フィルムとした。動的粘弾性測定装置REO−GEL E−4000(株式会社ユービーエム製)を用いて昇温速度5℃/分で30℃から350℃までの動的粘弾性(貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’、tanδ)を測定した。評価結果は表3、4に示す。
【0251】
(Tgの評価)
上記弾性率の測定において、tanδが極大を示す温度をTgとした。評価結果は表3、4に示す。
【0252】
(5%熱重量減少温度の評価)
実施例B−1〜B−16、比較例B−1のワニスを、銅箔F2−WS−12(古河サーキットフォイル株式会社製、製品名、厚さ12μm)に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、140℃で15分乾燥した。そして、塗布面同士を合わせて真空プレス(200℃/2MPa/1時間)したのちに銅箔をエッチングして樹脂フィルムとした。この樹脂フィルムについて、TG−DTA(ブルカー株式会社製)を用いて5%熱重量減少温度を測定した。測定条件は昇温速度10℃/分、空気下で行った。評価結果は表3、4に示す。
【0253】
(はんだ耐熱性の評価)
得られた金属箔張り積層板を、260℃、288℃及び300℃のはんだ浴に浸漬しはんだ耐熱性を測定した。この結果、実施例B−1〜B−16、比較例B−1のいずれの金属箔張り積層板においても、いずれの温度でも5分以上、ふくれ、剥がれ等の異常は見られなかった。当該結果を「良好」とし、表3、4に示す。
【0254】
(折り曲げ性の評価)
構成1及び構成2の折り曲げ試験用試料を用いて、基材折り曲げ性を評価した。構成1、構成2ともに、手で折り目を付けて折りスジも破断もなく任意に折り曲げることができたものを「良好」、折りスジが見られたものを「やや不良」、破断したものを「不良」として評価した。評価結果を表3、4に示す。結果としては、実施例B−1〜B−16、比較例B−1とも可とう性に富み任意に折り曲げることが可能であった。
【0255】
(機械特性(破断強度、破断伸び)の評価)
機械特性として、破断強度、破断伸びを測定した。破断強度及び伸びは、評価用接着フィルムを幅10mm、長さ80mmに加工した試験片をレオメータ(島津製作所株式会社製EZ−Test)を用いて、チャック間距離60mm、引っ張り速度5mm/分の条件で測定した。なお、測定は、Bステージ及びCステージそれぞれについて実施した。評価結果を表3、4に示す。実施例の試験片はいずれも伸びが大きいのに対して比較例の試験片は伸びが小さかった。
【0256】
【表3】
【0257】
【表4】
【0258】
以上のとおり、実施例B−1〜B−16の樹脂組成物は、比較例B−1の樹脂組成物と比較し、成形性に優れ、硬化後の伸びの低下が少なく、プリント配線板としたときに折り曲げ可能で電子機器の筐体内に高密度に収納可能なものを形成できることを確認した。さらに、実施例B−1〜B−15の樹脂組成物は、実施例B−16及び比較例B−1の樹脂組成物と比較し、配線板用材料としてともに用いられる銅箔、ガラス及びポリイミドと良好な接着性を有しつつ、硬化後の弾性率が低いことを確認した。