特許第5958641号(P5958641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958641
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20160719BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/10
【請求項の数】8
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2015-501987(P2015-501987)
(86)(22)【出願日】2014年9月19日
(86)【国際出願番号】JP2014075765
(87)【国際公開番号】WO2015050067
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2015年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-206140(P2013-206140)
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】浅田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−246183(JP,A)
【文献】 特開2000−311784(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/027656(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/031638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
陽極および陰極の間に設けられた発光層と、
封止層とを有し、アニーリング処理された発光素子であって、
発光層が、式Ir-1〜Ir-3:

[式中、
D1〜RD8およびRD11〜RD20は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
−AD1---AD2−は、アニオン性の2座配位子を表し、AD1およびAD2は、それぞれ独立に、イリジウム原子と結合する炭素原子、酸素原子または窒素原子を表す。nD1は、1、2または3を表し、nD2は、1または2を表す。]
のいずれかで表される三重項発光錯体を含有し、
封止層の形成後に行われるアニーリング処理の温度TA(℃)と、発光層に1重量%以上含まれる材料の中でガラス転移温度が最も低い材料のガラス転移温度TG(℃)とが、下記式(1)を満たし、
アニーリング処理前の印加電圧5Vにおける電流密度IAと、アニーリング処理後の印加電圧5Vにおける電流密度IBとが、下記式(2)を満たし、
同じ初期輝度で、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定したとき、アニーリング処理後の輝度が初期輝度の95%となるまでの時間が、アニーリング処理前の輝度が初期輝度の95%となるまでの時間より長い、発光素子。
TA<TG (1)
0.50×IA≦IB≦0.95×IA (2)
【請求項2】
前記TAと、前記TGとが、下記式(3)を満たす、請求項1に記載の発光素子。
TA<TG−30 (3)
【請求項3】
前記TAが、50℃以上である、請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記TAが、50℃以上80℃以下である、請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記IAと、前記IBとが、下記式(4)を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光素子。
0.70×IA≦IB≦0.90×IA (4)
【請求項6】
前記発光層が、下記式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光素子。
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【請求項7】
三重項発光錯体が緑色燐光発光を示す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項8】
高分子化合物である正孔輸送材料を含む正孔輸送層を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニーリング処理がなされた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「発光素子」ともいう。)は、発光効率が高く、駆動電圧が低いことから、ディスプレイの用途に好適に使用することが可能であり、研究開発が盛んに行われている。この発光素子は、発光層、電荷輸送層等の有機層を備える。有機層の形成には、低分子化合物が用いられる場合と、高分子化合物が用いられる場合とがあるが、高分子化合物を用いることで、インクジェット印刷法に代表される塗布法により有機層を形成することができるため、発光素子の製造に用いる高分子化合物が検討されている。また、近年では、発光素子の製造に用いる有機溶媒に対して可溶性の低分子化合物についても検討されている。
発光素子は、電流駆動の駆動時間の経過に伴って発光効率が低下し、発光輝度が低下することが知られており、電流駆動の駆動初期の発光効率が大きく低下し、発光輝度が大きく低下すること(すわなち、駆動初期の輝度寿命が短いこと)が問題となっている。この問題に対して、特許文献1では、燐光発光性化合物を含有する発光層の成膜後、陰極の蒸着前に、成膜された発光層をアニーリングすることで、駆動初期の輝度寿命を改善することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0040136号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法で製造された発光素子は、駆動初期の輝度寿命が必ずしも十分ではなかった。
そこで、本発明は、駆動初期の輝度寿命に優れる発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
陽極と、
陰極と、
陽極および陰極の間に設けられた発光層と、
封止層とを有する発光素子であって、
封止層の形成後に行われるアニーリング処理の温度TA(℃)と、発光層に1重量%以上含まれる材料の中でガラス転移温度が最も低い材料のガラス転移温度TG(℃)とが、下記式(1)を満たし、
アニーリング処理前の印加電圧5Vにおける電流密度IAと、アニーリング処理後の印加電圧5Vにおける電流密度IBとが、下記式(2)を満たす発光素子を提供する。
TA<TG (1)
0.50×IA≦IB≦0.95×IA (2)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、駆動初期の輝度寿命に優れる発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
<共通する用語の説明>
以下、本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
Meはメチル基、Etはエチル基、i−Prはイソプロピル基、n−Buはn−ブチル基、t−Buはtert−ブチル基を表す。
本明細書において、水素原子は、軽水素原子であっても重水素原子であってもよい。
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が、1×10〜1×10である重合体を意味する。高分子化合物に含まれる構成単位は、合計100モル%である。
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよい。
高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合に発光特性や駆動初期の輝度寿命が低下する可能性があるので、好ましくは安定な基である。この末端基としては、主鎖と共役結合している基が好ましく、炭素−炭素結合を介してアリール基または1価の複素環基と結合している基が挙げられる。
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×10以下の化合物を意味する。
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。
「アルキル基」は、直鎖、分岐および環状のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。分岐および環状のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜50であり、好ましくは3〜30であり、より好ましくは4〜20である。
アルキル基は、置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、2−エチルブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−n−プロピルヘプチル基、n−デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルオクチル基、2−n−ヘキシルデシル基、n−ドデシル基等の非置換アルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3−フェニルプロピル基、3−(4−メチルフェニル)プロピル基、3−(3,5−ジ−n−ヘキシルフェニル)プロピル基、6−エチルオキシヘキシル基等の置換アルキル基が挙げられる。
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは6〜20であり、より好ましくは6〜10である。
アリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
「アルコキシ基」は、直鎖、分岐および環状のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜40であり、好ましくは4〜10である。分岐および環状のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜40であり、好ましくは4〜10である。
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基が挙げられる。
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60であり、好ましくは7〜48である。
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、1−アントラセニルオキシ基、9−アントラセニルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、および、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2〜60であり、好ましくは4〜20である。
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、および、これらの基における水素原子が、アルキル基、アルコキシ基等で置換された基が挙げられる。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基または1価の複素環基が好ましい。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基およびジアリールアミノ基が挙げられる。
アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。
「アルケニル基」は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜30であり、好ましくは3〜20である。分岐および環状のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3〜30であり、好ましくは4〜20である。
アルケニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
「アルキニル基」は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常2〜20であり、好ましくは3〜20である。分岐および環状のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常4〜30であり、好ましくは4〜20である。
アルキニル基は、置換基を有していてもよく、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、6〜60であり、好ましくは6〜30であり、より好ましくは6〜18である。
アリーレン基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、および、これらの基が置換基を有する基が挙げられ、好ましくは、式(A−1)〜式(A−20)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含
む。
[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表す。複数存在するRおよびRは、各々、同一でも異なっていてもよく、R同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。]
2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2〜60であり、好ましくは、3〜20であり、より好ましくは、4〜15である。
2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾールから、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基が挙げられ、好ましくは、式(A−21)〜式(A−54)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
[式中、RおよびRは、前記と同じ意味を表す。]
「架橋基」とは、加熱処理、光照射処理(例えば、紫外線照射処理)、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成する事が可能な基であり、好ましくは、式(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)、(B−5)、(B−6)、(B−7)、(B−8)、(B−9)、(B−10)、(B−11)、(B−12)、(B−13)、(B−14)、(B−15)、(B−16)または(B−17)で表される基である。
[式中、これらの基は置換基を有していてもよい。]
「置換基」とは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基またはアルキニル基を表す。置換基は架橋基であってもよい。
<発光素子>
本発明の発光素子は、陽極と、陰極と、陽極および陰極の間に設けられた発光層と、封止層とを有し、封止層の形成後に行われるアニーリング処理の温度TA(℃)と、発光層に1重量%以上含まれる材料の中でガラス転移温度が最も低い材料のガラス転移温度TG(℃)とが、上記式(1)を満たし、アニーリング処理前の印加電圧5Vにおける電流密度IAと、アニーリング処理後の印加電圧5Vにおける電流密度IBとが、上記式(2)を満たす発光素子である。
印加電圧5Vというのは、発光素子を駆動する際に実際に印加しうる電圧に相当するものである。
発光層に1重量%以上含まれるガラス転移温度が最も低い材料は、発光層に3重量%以上含まれていることが好ましく、発光層に5重量%以上含まれていることがより好ましい。
TAと、TGとは、本発明の発光素子の発光効率が優れるので、下記式(3)を満たすことが好ましく、下記式(3’)を満たすことがより好ましく、下記式(3’’)を満たすことがさらに好ましい。
TA<TG−30 (3)
TA<TG−40 (3’)
TA<TG−50 (3’’)
TAは、本発明の発光素子の発光効率が優れるので、50℃以上(例えば、50℃以上80℃以下)であることが好ましく、60℃以上(例えば、60℃以上80℃以下)であることがより好ましく、60℃以上70℃以下であることがさらに好ましい。
TGは、本発明の発光素子の輝度寿命が優れるので、90℃以上250℃以下であることが好ましく、95℃以上200℃以下であることがより好ましく、100℃以上180℃以下であることがさらに好ましい。
IAと、IBとは、本発明の発光素子の発光効率が優れるので、下記式(4)を満たすことが好ましく、下記式(5)を満たすことがより好ましく、下記式(6)を満たすことがさらに好ましい。
0.70×IA≦IB≦0.90×IA (4)
0.70×IA≦IB≦0.85×IA (5)
0.75×IA≦IB≦0.85×IA (6)
[アニーリング処理]
アニーリング処理の方法としては、例えば、オーブンを用いたアニーリング、ホットプレートを用いたアニーリング、赤外線を用いたアニーリング、可視光線を用いたアニーリングが挙げられ、オーブンを用いたアニーリングまたはホットプレートを用いたアニーリングが好ましい。
アニーリング処理を行う環境は、大気ガス雰囲気下であっても不活性ガス雰囲気下であってもよい。不活性ガス雰囲気下としては、例えば、窒素ガス雰囲気下、アルゴンガス雰囲気下が挙げられる。
アニーリング処理の時間は限定されないが、本発明の発光素子の輝度寿命が優れるので、1分間以上150時間以下であることが好ましく、10分間以上50時間以下であることがより好ましく、15分間以上40時間以下であることがさらに好ましい。
[層構成]
本発明の発光素子は、陽極、陰極、発光層および封止層以外の層(以下、「その他の層」ともいう。)を有していてもよい。その他の層としては、例えば、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および電子注入層が挙げられる。発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および電子注入層は、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料および電子注入材料をそれぞれ含み、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料および電子注入材料を用いてそれぞれ形成することができる。
発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および電子注入層の材料としては、後述する発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料および電子注入材料が挙げられる。
積層する層の順番、数および厚さは、発光素子の発光効率および駆動電圧を勘案して調整すればよい。
発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および電子注入層の厚さは、通常、1nm〜10μmである。
本発明の発光素子は、正孔注入性および正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層および正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性および電子輸送性の観点からは、陰極と発光層の間に、電子注入層および電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
本発明の発光素子において、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および電子注入層の形成方法としては、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液または溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液または溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。
発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および電子注入層は、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料および電子注入材料をそれぞれ含有するインク(即ち、これらの材料と溶媒とを含有する組成物)を用いて、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法により作製することができる。
インクの粘度は、印刷法の種類によって調整すればよいが、インクジェットプリント法等の溶液が吐出装置を経由する印刷法に適用する場合には、吐出時の目づまりと飛行曲がりを防止するために、好ましくは25℃において1〜20mPa・sである。
インクに含まれる溶媒は、該インク中の固形分を溶解または均一に分散できる溶媒が好ましい。溶媒としては、例えば、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4−メチルアニソール等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、ビシクロヘキシル等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒;エチレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール系溶媒;イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
インクにおいて、溶媒の配合量は、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料または電子注入材料100重量部に対して、通常、1000〜100000重量部であり、好ましくは2000〜20000重量部である。
正孔輸送層の材料、電子輸送層の材料および発光層の材料は、発光素子の作製において、各々、正孔輸送層、電子輸送層および発光層に隣接する層の形成時に使用される溶媒に溶解する場合、該溶媒に該材料が溶解することを回避するために、該材料が架橋基を有することが好ましい。架橋基を有する材料を用いて各層を形成した後、該架橋基を架橋させることにより、該層を不溶化させることができる。
各層を架橋させるための加熱の温度は、通常、25〜300℃であり、本発明の発光素子の駆動初期の輝度寿命が優れるので、好ましくは50〜250℃であり、より好ましくは150〜200℃である。
各層を架橋させるための光照射に用いられる光の種類は、例えば、紫外光、近紫外光、可視光である。
[封止層]
封止層は、水分および酸素ガスに対してバリア性を有するものであれば限定されないが、封止層の一形態としては、発光素子が有する陽極、陰極、発光層およびその他の層が、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが充填された状態で、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板により密封されたものが挙げられる。封止層の他の一形態としては、発光素子が有する陽極、陰極、発光層およびその他の層が、有機物からなる絶縁層または無機物からなる絶縁層を介して、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板により密封されたものが挙げられる。有機物からなる絶縁層の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、光架橋性樹脂が挙げられる。無機物からなる絶縁層の材料としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物が挙げられる。
本発明の発光素子は、封止層の形成後にアニーリング処理が行われたものであることから、封止層には、乾燥剤が含まれていることが好ましい。乾燥剤は、封止層に配置されたものであってもよい。
[基板/電極]
本発明の発光素子は、通常、基板を有する。本発明の発光素子が有する基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板である。不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明または半透明であることが好ましい。
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイトおよびグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
陽極および陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
[発光材料]
発光材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。発光材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、ナフタレンおよびその誘導体、アントラセンおよびその誘導体、ペリレンおよびその誘導体、並びに、イリジウム、白金またはユーロピウムを中心金属とする三重項発光錯体が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、後述する式(X)で表される基、カルバゾールジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基等を含む高分子化合物が挙げられる。
発光材料は、低分子化合物および高分子化合物を含んでいてもよく、好ましくは、三重項発光錯体および高分子化合物を含む。
[正孔輸送材料]
正孔輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類され、高分子化合物が好ましく、架橋基を有する高分子化合物がより好ましい。
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体;側鎖または主鎖に芳香族アミン構造を有するポリアリーレンおよびその誘導体が挙げられる。高分子化合物は、電子受容性部位が結合された化合物でもよい。電子受容性部位としては、例えば、フラーレン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、トリニトロフルオレノンが挙げられ、好ましくはフラーレンである。
正孔輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
[電子輸送材料]
電子輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。電子輸送材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンを配位子とする金属錯体、オキサジアゾール、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テトラシアノアントラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレンおよびジフェノキノン、並びに、これらの誘導体が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフルオレン、および、これらの誘導体が挙げられる。高分子化合物は、金属でドープされていてもよい。
電子輸送材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
[正孔注入材料および電子注入材料]
正孔注入材料および電子注入材料は、各々、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。正孔注入材料および電子注入材料は、架橋基を有していてもよい。
低分子化合物としては、例えば、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン;カーボン;モリブデン、タングステン等の金属酸化物;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物が挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリンおよびポリキノキサリン、並びに、これらの誘導体;後述する式(X)で表される基を主鎖または側鎖に含む重合体等の導電性高分子が挙げられる。
正孔注入材料および電子注入材料は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
[イオンドープ]
正孔注入材料または電子注入材料が導電性高分子を含む場合、導電性高分子の電気伝導度は、好ましくは、1×10−5S/cm〜1×10S/cmである。導電性高分子の電気伝導度をかかる範囲とするために、導電性高分子に適量のイオンをドープすることができる。
ドープするイオンの種類は、正孔注入材料であればアニオン、電子注入材料であればカチオンである。アニオンとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンが挙げられる。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンが挙げられる。
ドープするイオンは、一種のみでも二種以上でもよい。
[用途]
発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部にしたい層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極もしくは陰極、または、両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字、文字等を表示できるセグメントタイプの表示装置が得られる。ドットマトリックス表示装置とするためには、陽極と陰極を共にストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス表示装置は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動も可能である。これらの表示装置は、コンピュータ、テレビ、携帯端末等のディスプレイに用いることができる。面状の発光素子は、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、または、面状の照明用光源として好適に用いることができる。フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源および表示装置としても使用できる。
[発光層の材料]
本発明の発光素子において、発光層の形成に用いる低分子化合物としては、例えば、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)および1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mcP)等のカルバゾール骨格を有する化合物;1,1−ビス[4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、4,4’−ビス[N−(m−トリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)およびN,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)等のトリアリールアミン骨格を有する化合物;2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン骨格を有する化合物;トリフェニルトリアジン等のトリアリールトリアジン骨格を有する化合物;p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)および4,4’−ビス(トリフェニルシリル)ビフェニル(BSB)等の有機ケイ素化合物;1,3,5−トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)、3−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−4H−1,2,4−トリアゾール(t−Bu−TAZ)および2−(ビフェニル−4−イル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)等のアゾール骨格を有する化合物;並びに、それらの骨格を組み合わせた化合物が挙げられる。該骨格を組み合わせた化合物としては,例えば、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)等のカルバゾール骨格およびトリアリールアミン骨格を有する化合物が挙げられる。
本発明の発光素子において、発光層の形成に用いる低分子化合物としては、式(H−1)で表される化合物も挙げられる。
[式中、
ArH1およびArH2は、それぞれ独立に、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
H1およびnH2は、それぞれ独立に、0または1を表す。nH1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。複数存在するnH2は、同一でも異なっていてもよい。
H3は、0以上の整数を表す。
H1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、−[C(RH11]nH11−で表される基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。LH1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
H11は、1以上10以下の整数を表す。RH11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRH11は、同一でも異なっていてもよく、互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
H2は、−N(−LH21−RH21)−で表される基を表す。LH2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
H21は、単結合、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RH21は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
ArH1およびArH2は、フェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ピロリル基、インドリル基、アザインドリル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、フェノキサジニル基またはフェノチアジニル基であることが好ましく、フェニル基、スピロビフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基またはアザカルバゾリル基であることがより好ましく、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基またはアザカルバゾリル基であることが更に好ましく、後述する式(TDA−1)または(TDA−3)で表される基であることが特に好ましく、後述する式(TDA−3)で表される基であることがとりわけ好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArH1およびArH2が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基または1価の複素環基が好ましく、アルキル基、シクロアルコキシ基、アルコキシ基またはシクロアルコキシ基がより好ましく、アルキル基またはシクロアルコキシ基が更に好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
H1は、好ましくは1である。nH2は、好ましくは0である。
H3は、通常、0以上10以下の整数であり、好ましくは0以上5以下の整数であり、更に好ましくは1以上3以下の整数であり、特に好ましくは1である。
H11は、好ましくは1以上5以下の整数であり、より好ましく1以上3以下の整数であり、更に好ましく1である。
H11は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基または1価の複素環基であることが好ましく、水素原子、アルキル基またはシクロアルキル基であることがより好ましく、水素原子またはアルキル基であることが更に好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
H1は、アリーレン基または2価の複素環基であることが好ましい。
H1は、式(A−1)〜(A−3)、式(A−8)〜(A−10)、式(A−21)〜(A−26)、式(A−30)〜(A−41)または式(A−44)〜(A−54)で表される基であることが好ましく、式(A−1)、式(A−2)、式(A−8)、式(A−9)、式(A−21)〜(A−24)、式(A−30)〜(A−35)または式(A−49)〜(A−54)で表される基であることがより好ましく、式(A−1)、式(A−2)、式(A−8)、式(A−9)、式(A−22)、式(A−24)、式(A−30)〜(A−35)で表される基であることが更に好ましく、式(A−1)、式(A−2)、式(A−8)、式(A−22)、式(A−24)、式(A−30)、式(A−32)または式(A−34)で表される基であることが特に好ましく、式(A−1)、式(A−2)、式(A−22)、式(A−24)または式(A−34)で表される基であることがとりわけ好ましい。
H1が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基または1価の複素環基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基がより好ましく、アルキル基、アリール基または1価の複素環基が更に好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
H21は、単結合またはアリーレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましく、このアリーレン基は置換基を有していてもよい。
H21で表されるアリーレン基または2価の複素環基の定義および例は、LH1で表されるアリーレン基または2価の複素環基の定義および例と同様である。
H21は、アリール基または1価の複素環基であることが好ましく、これらの基は置換基を有していてもよい。
H21で表されるアリール基および1価の複素環基の定義および例は、ArH1およびArH2で表されるアリール基および1価の複素環基の定義および例と同様である。
H21が有していてもよい置換基の定義および例は、ArH1およびArH2が有していてもよい置換基の定義および例と同様である。
式(H−1)で表される化合物は、式(H−2)で表される化合物であることが好ましい。
[式中、ArH1、ArH2、nH3およびLH1は、前記と同じ意味を表す。]
式(H−1)で表される化合物としては、下記式(H−101)〜(H−118)で表される化合物が例示される。
これらの低分子材料は、後述する三重項発光錯体と組み合わせて用いてもよい。
本発明の発光素子において、発光層は、下記式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物を含有していることが好ましい。
[式中、ArY1は、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
ArY1で表されるアリーレン基としては、より好ましくは式(A−1)、式(A−2)、式(A−6)〜式(A−10)、式(A−19)または式(A−20)で表される基であり、さらに好ましくは式(A−1)、式(A−2)、式(A−7)、式(A−9)または式(A−19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される2価の複素環基としては、より好ましくは式(A−21)〜式(A−24)、式(A−30)〜式(A−35)、式(A−38)〜式(A−41)、式(A−53)または式(A−54)で表される基であり、さらに好ましくは式(A−24)、式(A−30)、式(A−32)、式(A−34)または式(A−53)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、さらに好ましい範囲は、それぞれ、前述のArY1で表されるアリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、さらに好ましい範囲と同様である。
「少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基」としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
[式中、RXXは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
XXは、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y−1)〜(Y−13)で表される構成単位が挙げられ、本発明の発光素子の駆動初期の輝度寿命の観点からは、好ましくは式(Y−1)、(Y−2)または(Y−3)で表される構成単位であり、電子輸送性の観点からは、好ましくは式(Y−4)〜(Y−7)で表される構成単位であり、正孔輸送性の観点からは、好ましくは式(Y−8)〜(Y−10)で表される構成単位である。
[式中、RY1は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRY1同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
Y1は、好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
式(Y−1)で表される構成単位は、式(Y−1’)で表される構成単位であってもよい。
[式中、RY11は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよい。]
Y11は、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、より好ましくはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
[式中、RY1は前記と同じ意味を表す。XY1は、−C(RY2−、−C(RY2)=C(RY2)−またはC(RY2−C(RY2−で表される基を表す。RY2は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY2は、同一でも異なっていてもよく、RY2同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
Y2は、好ましくはアルキル基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y1において、−C(RY2−で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基、双方がアリール基、双方が1価の複素環基、または、一方がアルキル基で他方がアリール基若しくは1価の複素環基であり、より好ましくは一方がアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。2個存在するRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、−C(RY2−で表される基としては、好ましくは式(Y−A1)〜(Y−A5)で表される基であり、より好ましくは式(Y−A4)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y1において、−C(RY2)=C(RY2)−で表される基中の2個のRY2の組み合わせは、好ましくは双方がアルキル基、または、一方がアルキル基で他方がアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y1において、−C(RY2−C(RY2−で表される基中の4個のRY2は、好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基である。複数あるRY2は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよく、RY2が環を形成する場合、−C(RY2−C(RY2−で表される基は、好ましくは式(Y−B1)〜(Y−B5)で表される基であり、より好ましくは式(Y−B3)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
[式中、RY2は前記と同じ意味を表す。]
式(Y−2)で表される構成単位は、式(Y−2’)で表される構成単位であってもよい。
[式中、RY1およびXY1は前記と同じ意味を表す。]
[式中、RY1およびXY1は前記と同じ意味を表す。]
式(Y−3)で表される構成単位は、式(Y−3’)で表される構成単位であってもよい。
[式中、RY11およびXY1は前記と同じ意味を表す。]
[式中、RY1は前記と同じ意味を表す。RY3は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
Y3は、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
式(Y−4)で表される構成単位は、式(Y−4’)で表される構成単位であってもよく、式(Y−6)で表される構成単位は、式(Y−6’)で表される構成単位であってもよい。
[式中、RY1およびRY3は前記と同じ意味を表す。]
[式中、RY1は前記を同じ意味を表す。RY4は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
Y4は、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y−101)〜(Y−130)で表されるアリーレン基からなる構成単位、式(Y−201)〜(Y−207)で表される2価の複素環基からなる構成単位、式(Y−301)〜(Y−308)で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基からなる構成単位が挙げられる。
式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物が、蛍光発光(例えば、青色蛍光発光および緑色蛍光発光)を示す高分子化合物である場合、式(Y)で表される構成単位であって、ArY1がアリーレン基である構成単位は、高分子化合物を用いた発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは10〜95モル%であり、より好ましくは50〜95モル%である。
式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物が、燐光発光(例えば、緑色燐光発光および赤色燐光発光)を示す三重項発光錯体と組み合わせて用いる電荷輸送性高分子化合物である場合、式(Y)で表される構成単位であって、ArY1がアリーレン基である構成単位は、高分子化合物を用いた発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは50〜100モル%であり、より好ましくは80〜100モル%である。
式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物が、蛍光発光(例えば、青色蛍光発光および緑色蛍光発光)を示す高分子化合物である場合、式(Y)で表される構成単位であって、ArY1が2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基である構成単位は、本発明の発光素子の電荷輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは1〜10モル%であり、より好ましくは1〜5モル%である。
式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物が、燐光発光(例えば、緑色燐光発光および赤色燐光発光)を示す三重項発光錯体と組み合わせて用いる電荷輸送性高分子化合物である場合、式(Y)で表される構成単位であって、ArY1が2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基である構成単位は、本発明の発光素子の電荷輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは5〜20モル%であり、より好ましくは5〜15モル%である。
式(Y)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物は、正孔輸送性が優れるので、更に、下記式(X)で表される構成単位を含むことが好ましい。
[式中、
X1およびaX2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1およびArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2およびArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、または、少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
X1、RX2およびRX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
X1は、本発明の発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。
X2は、本発明の発光素子の駆動初期の輝度寿命がより優れるので、好ましくは2以下であり、より好ましくは0である。
X1、RX2およびRX3は、好ましくはアルキル基、アリール基または1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1およびArX3で表されるアリーレン基としては、より好ましくは式(A−1)または式(A−9)で表される基であり、さらに好ましくは式(A−1)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1およびArX3で表される2価の複素環基としては、より好ましくは式(A−21)、式(A−22)または式(A−27)〜式(A−46)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1およびArX3は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
ArX2およびArX4で表されるアリーレン基としては、より好ましくは式(A−1)、式(A−6)、式(A−7)、式(A−9)〜式(A−11)または式(A−19)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2およびArX4で表される2価の複素環基のより好ましい範囲は、ArX1およびArX3で表される2価の複素環基の特に好ましい範囲と同じである。
ArX2およびArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、さらに好ましい範囲は、それぞれ、ArX1およびArX3で表されるアリーレン基および2価の複素環基のより好ましい範囲、さらに好ましい範囲と同様である。
ArX2およびArX4で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基としては、式(Y)のArY1で表される少なくとも1種のアリーレン基と少なくとも1種の2価の複素環基とが直接結合した2価の基と同様のものが挙げられる。
ArX2およびArX4は、好ましくは置換基を有していてもよいアリーレン基である。
ArX1〜ArX4およびRX1〜RX3で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
式(X)で表される構成単位としては、好ましくは式(X−1)〜(X−7)で表される構成単位であり、より好ましくは式(X−1)〜(X−6)で表される構成単位であり、更に好ましくは式(X−3)〜(X−6)で表される構成単位である。
[式中、RX4およびRX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、1価の複素環基またはシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRX4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するRX5は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRX5同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
式(X)で表される構成単位としては、例えば、式(X1−1)〜(X1−19)で表される構成単位が挙げられ、好ましくは式(X1−1)〜(X1−14)で表される構成単位である。
式(Y)で表される構成単位および式(X)で表される構成単位を含む高分子化合物が、蛍光発光(例えば、青色蛍光発光および緑色蛍光発光)を示す高分子化合物である場合、式(X)で表される構成単位は、正孔輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは1〜15モル%であり、より好ましくは1〜10モル%であり、更に好ましくは1〜5モル%である。
式(Y)で表される構成単位および式(X)で表される構成単位を含む高分子化合物が、燐光発光(例えば、緑色燐光発光および赤色燐光発光)を示す三重項発光錯体と組み合わせて用いる電荷輸送性高分子化合物である場合、式(X)で表される構成単位は、正孔輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0〜20モル%であり、より好ましくは0〜15モル%であり、更に好ましくは0〜10モル%である。
式(X)で表される構成単位は、高分子化合物中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよいが、上述したように、複数種の原料モノマーを共重合してなる共重合体であることが好ましい。
式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物としては、例えば、下記表1の高分子化合物P−1〜P−6が挙げられる。ここで、「その他」の構成単位とは、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。
【表1】
[表中、p、q、r、sおよびtは、各構成単位のモル比率を示す。p+q+r+s+t=100であり、かつ、100≧p+q+r+s≧70である。その他の構成単位とは、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。

本発明の発光素子において、発光層は、三重項発光錯体を含有していることが好ましく、式(Y)で表される高分子化合物および三重項発光錯体を含有していることがより好ましい。
三重項発光錯体としては、イリジウムを中心金属とする三重項発光錯体が好ましく、式Ir−1〜Ir−3で表されるイリジウム錯体がより好ましい。
[式中、
D1〜RD8およびRD11〜RD20は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、1価の複素環基またはハロゲン原子を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
−AD1−−−AD2−は、アニオン性の2座配位子を表し、AD1およびAD2は、それぞれ独立に、イリジウム原子と結合する炭素原子、酸素原子または窒素原子を表す。nD1は、1、2または3を表し、nD2は、1または2を表す。]
式Ir−1で表される三重項発光錯体において、RD1〜RD8の少なくとも1つは、好ましくは、式(D−A)で表される基である。
[式中、
DA1、mDA2およびmDA3は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
DA1は、窒素原子、芳香族炭化水素基または複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2およびArDA3は、それぞれ独立に、アリーレン基または2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArDA1、ArDA2およびArDA3が複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
DA2およびTDA3は、それぞれ独立に、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
DA1、mDA2およびmDA3は、通常10以下の整数であり、5以下の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。また、mDA1、mDA2およびmDA3は、同一の整数であることが好ましい。
DA1は、好ましくは式(GDA−11)〜(GDA−15)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
[式中、
*1、*2および*3は、各々、ArDA1、ArDA2およびArDA3との結合を表す。
DAは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は更に置換基を有していてもよい。RDAが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
DAは、好ましくは水素原子、アルキル基またはアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArDA1、ArDA2およびArDA3は、好ましくは式(ArDA−1)〜(ArDA−3)で表される基である。
[式中、
DAは前記と同じ意味を表す。
DBは、水素原子、アルキル基、アリール基または1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RDBが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
DA2およびTDA3は、好ましくは式(TDA−1)〜(TDA−3)で表される基である。
[式中、RDAおよびRDBは前記と同じ意味を表す。]
式Ir−2において、好ましくはRD11〜RD20の少なくとも1つは式(D−A)で表される基である。
式Ir−3において、好ましくはRD1〜RD8およびRD11〜RD20の少なくとも1つは式(D−A)で表される基である。
式(D−A)で表される基は、好ましくは式(D−A1)〜(D−A3)で表される基である。
[式中、
p1、Rp2およびRp3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。Rp1およびRp2が複数ある場合、それらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
np1は、0〜5の整数を表し、np2は0〜3の整数を表し、np3は0または1を表す。複数あるnp1は、同一でも異なっていてもよい。]
np1は、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。np2は、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。np3は好ましくは0である。
−AD1−−−AD2−で表されるアニオン性の2座配位子としては、例えば、下記式で表される配位子が挙げられる。
[式中、*は、Irと結合する部位を表す。]
式Ir−1で表される金属錯体としては、好ましくは式Ir−11〜Ir−13で表される金属錯体である。式Ir−2で表される金属錯体としては、好ましくは式Ir−21で表される金属錯体である。式Ir−3で表される金属錯体としては、好ましくは式Ir−31〜Ir−33で表される金属錯体である。
[式中、Dは、式(D−A)で表される基を表す。nD2は、1または2を表す。]
三重項発光錯体としては、例えば、以下に示す金属錯体が挙げられる。
本発明の発光素子において、発光層が、式(Y)で表される高分子化合物および三重項発光錯体を含有している場合、三重項発光錯体の含有量は、式(Y)で表される高分子化合物100重量部に対して、通常、0.1〜400重量部である。
【実施例】
【0008】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例において、高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)およびポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)により求めた。なお、SECの測定条件は、以下のとおりである。
[測定条件]
測定する高分子化合物を約0.05重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、SECに10μL注入した。SECの移動相としてテトラヒドロフランを用い、2.0mL/分の流量で流した。カラムとして、PLgel MIXED−B(ポリマーラボラトリーズ製)を用いた。検出器にはUV一VIS検出器(島津製作所製、商品名:SPD−10Avp)を用いた。
本実施例において、材料のガラス転移温度TG(℃)は、熱分析DSC装置(TA Instrument社製、商品名:Q2000型 示差走査熱量計)により求めた。なお、ガラス転移温度は、以下のとおり、温度変調DSC測定により求めた。
[測定条件]
測定する材料を3〜5mg秤量し、それをアルミニウム製のサンプルパンに加えた後、プレスすることにより封入した。次いで、材料が封入されたサンプルパンと、アルミニウム製の空のサンプルパン(参照物質)とを、熱分析DSC装置の測定室にセットした後、測定室を窒素ガス雰囲気とした。次いで、測定室の温度を20℃とし、平衡状態となるまで5分間保持した後、温度変調の周期を60秒、振幅を±0.75℃に設定し、さらに5分間保持した。次いで、200℃まで10℃/分の一定速度で加熱し、200℃で1分間保持した後、−50℃まで急冷し、5分間保持した。その後、310℃まで10℃/分の一定速度で加熱し、−50℃から310℃まで加熱する間に、DSC曲線を測定した。DSC曲線は、測定する材料のガラス転移点ではベースラインが下方向(吸熱方向)へシフトし、その後、元のベースラインへ戻る。そのため、ベースラインが下方向(吸熱方向)へシフトした温度と、元のベースラインへ戻る温度との平均値を、測定する材料のガラス転移温度TG(℃)とした。
<比較例CD1:発光素子CD1の作製および評価>
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、正孔注入材料としてポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plectronics社製)を用いてスピンコートにより35nmの厚さで成膜し、これを大気雰囲気中において、ホットプレート上で170℃、15分間加熱した。
次に、正孔輸送性高分子化合物P1(ガラス転移温度:155℃)のキシレン溶液を用いてスピンコートにより20nmの厚さで正孔輸送層を成膜し、これを窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で180℃、60分間加熱した。
次に、青色蛍光発光性高分子化合物P2(ガラス転移温度:144℃)のキシレン溶液を用いて、スピンコートにより60nmの厚さで発光層を成膜し、これを窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で150℃、10分間加熱した。
次に、電子注入層としてフッ化ナトリウムを約7nm、次いで陰極としてアルミニウムを約120nm蒸着した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
次に、乾燥剤であるHD−071407W−50(ダイニック社製)を掘りこみ部分に貼り付けた堀りガラス基板を用いて、窒素ガス雰囲気下において、封止層を形成することによって、発光素子CD1を作製した。
なお、封止層の形成には掘りガラス基板が用いられているため、発光層が有する陽極、陰極および各層と、堀りガラス基板との間には、空間が存在する。封止層の形成は窒素ガス雰囲気下で行われているため、該空間には窒素ガスが充填されている。
発光素子CD1に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が12.1cd/Aであった。初期輝度が1000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間(以下、「LT95」ともいう。)は、7.2時間であった。結果を表2に示す。
<実施例D1:発光素子D1の作製および評価>
比較例CD1において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、10分間加熱すること以外は、比較例CD1と同様にして発光素子D1を作製した。
発光素子D1に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD1の5V印加時の電流密度の0.75倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が11.9cd/Aであった。初期輝度が1000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、13.2時間であった。結果を表2に示す。
<実施例D2:発光素子D2の作製および評価>
比較例CD1において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD1と同様にして発光素子D2を作製した。
発光素子D2に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD1の5V印加時の電流密度の0.76倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が11.7cd/Aであった。初期輝度が1000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、13.2時間であった。結果を表2に示す。
<実施例D3:発光素子D3の作製および評価>
比較例CD1において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてオーブン中で50℃、72時間加熱すること以外は、比較例CD1と同様にして発光素子D3を作製した。
発光素子D3に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD1の5V印加時の電流密度の0.75倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が11.8cd/Aであった。初期輝度が1000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、19.9時間であった。結果を表2に示す。
【表2】
<比較例CD2:発光素子CD2の作製および評価>
比較例CD1において、正孔輸送層の厚さを10nmとし、青色蛍光発光性高分子化合物P2に代えて青色蛍光発光性高分子化合物P3(ガラス転移温度:140℃)を用いるとともに、発光層を50nmとしたこと以外は、比較例CD1と同様にして、発光素子CD2を作製した。
発光素子CD2に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が10.2cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.44時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D4:発光素子D4の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてオーブン中で50℃、36時間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D4を作製した。
発光素子D4に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.93倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が10.3cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.82時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D5:発光素子D5の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で60℃、10分間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D5を作製した。
発光素子D5に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.84倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が10.6cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.62時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D6:発光素子D6の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で60℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D6を作製した。
発光素子D6に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.80倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が10.4cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.60時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D7:発光素子D7の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で60℃、60分間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D7を作製した。
発光素子D7に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.81倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が9.8cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.77時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D8:発光素子D8の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、10分間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D8を作製した。
発光素子D8に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.91倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が10.3cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.62時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D9:発光素子D9の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D9を作製した。
発光素子D9に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.77倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が10.0cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.99時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D10:発光素子D10の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、60分間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D10を作製した。
発光素子D10に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.79倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が10.9cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、0.93時間であった。結果を表3に示す。
<実施例D11:発光素子D11の作製および評価>
比較例CD2において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で100℃、10分間加熱すること以外は、比較例CD2と同様にして発光素子D11を作製した。
発光素子D11に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD2の5V印加時の電流密度の0.95倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が9.2cd/Aであった。初期輝度が8000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、1.34時間であった。結果を表3に示す。
【表3】
<比較例CD3:発光素子CD3の作製および評価>
比較例CD1において、正孔輸送性高分子化合物P1に代えて正孔輸送性高分子化合物P4(ガラス転移温度:121℃)を用いるとともに、青色蛍光発光性高分子化合物P2に代えて電荷輸送性高分子化合物P5(ガラス転移温度:97℃)および緑色燐光発光性イリジウム錯体M1(ガラス転移温度:297℃)を60重量%:40重量%の比率で混合した組成物を用いて、発光層の厚さを80nmとしたこと以外は、比較例CD1と同様にして、発光素子CD3を作製した。
発光素子CD3に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が63.3cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、11.8時間であった。結果を表4に示す。
<実施例D12:発光素子D12の作製および評価>
比較例CD3において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてオーブン中で50℃、150時間加熱すること以外は、比較例CD3と同様にして発光素子D12を作製した。
発光素子D12に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD3の5V印加時の電流密度の0.81倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が65.4cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、118.6時間であった。結果を表4に示す。
【表4】
<比較例CD4:発光素子CD4の作製および評価>
比較例CD3において、電荷輸送性高分子化合物P5に代えて電荷輸送性高分子化合物P6(ガラス転移温度:100℃)を用いたこと以外は、比較例CD3と同様にして、発光素子CD4を作製した。
発光素子CD4に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が70.6cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、29.0時間であった。結果を表5に示す。
<実施例D13:発光素子D13の作製および評価>
比較例CD4において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてオーブン中で50℃、150時間加熱すること以外は、比較例CD4と同様にして発光素子D13を作製した。
発光素子D13に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD4の5V印加時の電流密度の0.79倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が70.6cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、215.7時間であった。結果を表5に示す。
【表5】
<比較例CD5:発光素子CD5の作製および評価>
比較例CD3において、電荷輸送性高分子化合物P5に代えて電荷輸送性高分子化合物P7(ガラス転移温度:99℃)を用いたこと以外は、比較例CD3と同様にして、発光素子CD5を作製した。
発光素子CD5に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が81.4cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、48.9時間であった。結果を表6に示す。
<実施例D14:発光素子D14の作製および評価>
比較例CD5において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてオーブン中で50℃、150時間加熱すること以外は、比較例CD5と同様にして発光素子D14を作製した。
発光素子D14に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD5の5V印加時の電流密度の0.74倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が81.9cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、148.6時間であった。結果を表6に示す。
【表6】
<比較例CD6:発光素子CD6の作製および評価>
比較例CD3において、正孔輸送性高分子化合物P4(ガラス転移温度:121℃)に代えて、正孔輸送性高分子化合物P1(ガラス転移温度:155℃)を用いたこと、および、電荷輸送性高分子化合物P5(ガラス転移温度:97℃)および緑色燐光発光性イリジウム錯体M1(ガラス転移温度:297℃)を60重量%:40重量%の比率で混合した組成物に代えて、電荷輸送性高分子化合物P8(ガラス転移温度:148℃)および赤色燐光発光性イリジウム錯体M2(ガラス転移温度:>148℃(赤色燐光発光性イリジウム錯体M2のガラス転移温度は、電荷輸送性高分子化合物P8のガラス転移温度以下の温度では観測されなかった。)を92.5重量%:7.5重量%の比率で混合した組成物を用いたこと以外は、比較例CD3と同様にして、発光素子CD6を作製した。
発光素子CD6に電圧を印加したところ、620nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が19.1cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の97%となるまでの時間は、121.1時間であった。結果を表7に示す。
<実施例D15:発光素子D15の作製および評価>
比較例CD6において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、60分間加熱すること以外は、比較例CD6と同様にして発光素子D15を作製した。
発光素子D15に電圧を印加したところ、620nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD6の5V印加時の電流密度の0.93倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が18.8cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、153.7時間であった。結果を表7に示す。
【表7】
<合成例1:緑色燐光発光性イリジウム錯体M1および赤色燐光発光性イリジウム錯体M2、並びに、単量体CM1〜CM16の合成>
緑色燐光発光性イリジウム錯体M1は、国際公開第2009/131255号記載の合成法に従い合成した。
赤色燐光発光性イリジウム錯体M2は、特開2011−105701号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM1は、特開2011−174062号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM2は、国際公開第2005/049546号記載の方法により合成した。
単量体CM3は、市販の材料を用いた。
単量体CM4は、特開2008−106241号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM5は、特開2011−174062号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM6は、特開2012−144722号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM7は、特開2004−143419号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM8は、特開2010−031259号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM9は、市販の化合物を用いた。
単量体CM10は、特開2010−189630号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM11は、国際公開第2012/86671号記載の合成法に従い合成した。
単量体CM12は、特開2010−189630号公報記載の合成法に従い合成した。
単量体CM13は、国際公開第2012/86671号記載の合成法に従い合成した。
単量体CM14は、市販の化合物を用いた。
単量体CM15は、国際公開第2009/131255号記載の合成法に従い合成した。
単量体CM16は、下記の合成法により合成した。
<単量体CM16の合成>
化合物CM16aは、国際公報第2012/086671号に記載の方法に従って合成した。
<Step1>
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、4−ブロモ−n−オクチルベンゼン(250g)およびテトラヒドロフラン(脱水品、2.5L)を加え、−70℃以下に冷却した。そこへ、2.5mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(355mL)を滴下し、3時間攪拌した。そこへ、テトラヒドロフラン(脱水品、400mL)に化合物CM16a(148g)を溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、冷浴を外し、室温にて一晩攪拌した。得られた反応混合物を0℃に冷却し、水(150mL)を加えて攪拌した。これを減圧濃縮し、有機溶媒を除去した。得られた反応混合物にヘキサン(1L)および水(200mL)を加え、分液操作によって水層を除去した。得られたヘキサン溶液を飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。その後、この混合物を濾過し、ろ液を得た。このろ液を減圧濃縮し、化合物CM16b(330g)を黄色オイルとして得た。
<Step2>
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物CM16b(330g)およびジクロロメタン(900mL)を加え、5℃以下に冷却した。そこへ、2.0mol/Lの三フッ素化ホウ素ジエチルエーテル錯体(245mL)を滴下した。滴下終了後、冷浴を外し、室温にて一晩攪拌した。反応混合物を氷水(2L)の入ったビーカーに注ぎ30分間激しく攪拌した後、水層を除去した。得られた有機層を、10重量%濃度のリン酸カリウム水溶液(1L)で1回、水(1L)で2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、この混合物を濾過し、得られたろ液を減圧濃縮した。得られたオイルをトルエン(200mL)に溶解させ、これを、シリカゲルを敷いたろ過器に通液した。更にトルエン(約3L)でろ過器を洗浄した後、得られたろ液を減圧濃縮した。得られたオイルにメタノール(500mL)を加えて激しく攪拌した後、反応混合物をろ過して固体を得た。この固体に酢酸ブチル/メタノール混合溶媒を加え、再結晶を繰り返すことにより、化合物CM16c(151g)を白色固体として得た。化合物CM16cのHPLC面積百分率値(検出波長UV280nm)は99.0%以上を示した。
H−NMR(400MHz/CDCl):δ(ppm)=7.56(d,2H),7.49(d,2H),7.46(dd,2H),7.06〜7.01(m,8H),2.55(t,4H),1.61〜1.54(m,4H),1.30〜1.26(m,20H),0.87(t,6H).
<Step3>
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物CM16c(100g)およびテトラヒドロフラン(脱水品、1000mL)を加え、−70℃以下に冷却した。そこへ、2.5mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液(126mL)を滴下し、5時間攪拌した。そこへ、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(81mL)を滴下した。その後、冷浴を外し、室温にて一晩攪拌した。反応混合物を−30℃に冷却し、2.0M塩酸−ジエチルエーテル溶液(143mL)を滴下した後、室温まで昇温し、減圧濃縮することにより固体を得た。この固体にトルエン(1.2L)を加え、室温にて1時間攪拌した後、シリカゲルを敷いたろ過器に通液することによりろ液を得た。このろ液を減圧濃縮することにより固体を得た。この固体にメタノールを加えて攪拌した後、ろ過することにより固体を得た。この固体を、イソプロピルアルコールを用いた再結晶を繰り返すことにより精製した後、50℃にて一晩減圧乾燥することにより、化合物CM16(472g)を白色固体として得た。化合物CM16のHPLC面積百分率値(検出波長UV280nm)は99.0%以上を示した。
H−NMR(400MHz/CDCl):δ(ppm)=7.82(d,2H),7.81(s,2H),7.76(d,2H),7.11(d,4H)、7.00(d,4H),2.52(t,4H),1.59〜1.54(m,4H),1.36〜1.26(m,20H),1.31(s,24H),0.87(t,6H).
<合成例2:高分子化合物P9〜P14の合成>
高分子化合物P9は、表8に示される単量体混合組成物を用いて、特開2012−144722号公報記載の合成法により合成した。高分子化合物P9のMnは8.4×10であり、Mwは3.4×10であった。高分子化合物P9は、仕込み原料から求めた理論値では、それぞれの単量体から誘導される構成単位が、表8に示されるモル比で構成されてなる共重合体である。
高分子化合物P10は、表9に示される単量体混合組成物を用いて、特開2012−144722号公報記載の合成法により合成した。高分子化合物P10のMnは8.4×10であり、Mwは2.3×10であった。高分子化合物P10は、仕込み原料から求めた理論値では、それぞれの単量体から誘導される構成単位が、表9に示されるモル比で構成されてなる共重合体である。
高分子化合物P11は、表10に示される単量体混合組成物を用いて、特開2012−144722号公報記載の合成法により合成した。高分子化合物P11のMnは1.2×10であり、Mwは3.1×10であった。高分子化合物P11は、仕込み原料から求めた理論値では、それぞれの単量体から誘導される構成単位が、表10に示されるモル比で構成されてなる共重合体である。
高分子化合物P12は、表11に示される単量体混合組成物を用いて、特開2012−36388号公報記載の合成法により合成した。高分子化合物P12のMnは9.2×10であり、Mwは2.3×10であった。高分子化合物P12は、仕込み原料から求めた理論値では、それぞれの単量体から誘導される構成単位が、表11に示されるモル比で構成されてなる共重合体である。
高分子化合物P13は、表12に示される単量体混合組成物を用いて、国際公開公報2012−008550号公報記載の合成法により合成した。高分子化合物P13のMnは9.6×10であり、Mwは2.4×10であった。高分子化合物P13は、仕込み原料から求めた理論値では、それぞれの単量体から誘導される構成単位が、表12に示されるモル比で構成されてなる共重合体である。
高分子化合物P14は、後述する合成法により合成した。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
<高分子化合物P14の合成>
反応容器内を不活性ガス雰囲気とした後、単量体CM16(4.7686g)、単量体CM11(0.7734g)、単量体CM3(1.9744g)、単量体CM15(0.3308g)、単量体CM7(0.4432g)およびトルエン(67mL)を加えて、105℃に加熱しながら攪拌した。そこへ、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(4.2mg)を加え、次いで、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20mL)を加えた後、還流下で3時間攪拌した。
そこへ、フェニルボロン酸(0.077g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(4.2mg)、トルエン(60mL)および20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(20mL)を加え、還流下で24時間攪拌した。
反応混合物の有機層と水層とを分離した後、有機層に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(3.33g)およびイオン交換水(67mL)を加え、85℃で2時間攪拌した。反応混合物の有機層と水層とを分離した後、有機層を、イオン交換水(78mL)で2回、3重量%酢酸水溶液(78mL)で2回、イオン交換水(78mL)で2回の順番で洗浄した。
得られた洗浄液の有機層と水層とを分離した後、有機層をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより、固体を得た。この固体をトルエンに溶解させ、予めトルエンを通液したシリカゲルカラムおよびアルミナカラムに通液させた。得られたトルエン溶液をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより、高分予化合物P14(4.95g)を得た。高分子化合物P14のMnは1.4×10であり、Mwは4.1×10であった。
高分子化合物P14は、仕込み原料から求めた理論値では、それぞれの単量体から誘導される構成単位が、表13に示されるモル比で構成されてなる共重合体である。
【表13】
<比較例CD7:発光素子CD7の作製および評価>
スパッタ法により45nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、正孔注入材料としてポリチオフェン・スルホン酸系の正孔注入剤であるAQ−1200(Plectronics社製)を用いてスピンコートにより35nmの厚さで成膜し、これを大気雰囲気中において、ホットプレート上で170℃、15分間加熱した。
次に、正孔輸送性高分子化合物P9(ガラス転移温度:126℃)のキシレン溶液を用いてスピンコートにより20nmの厚さで正孔輸送層を成膜し、これを窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で180℃、60分間加熱した。
次に、青色蛍光発光性高分子化合物P10(ガラス転移温度:124℃)および青色蛍光発光性高分子化合物P11(ガラス転移温度:175℃)を90重量%:10重量%の比率で含有する混合物のキシレン溶液を用いて、スピンコートにより60nmの厚さで発光層を成膜し、これを窒素ガス雰囲気中において、ホットプレート上で150℃、10分間加熱した。
次に、電子注入層としてフッ化ナトリウムを約7nm、次いで陰極としてアルミニウムを約120nm蒸着した。なお、真空度が、1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
次に、乾燥剤であるHD−071407W−50(ダイニック社製)を掘りこみ部分に貼り付けた堀りガラス基板を用いて、窒素ガス雰囲気下において、封止層を形成することによって、発光素子CD7を作製した。
なお、封止層の形成には掘りガラス基板が用いられているため、発光層が有する陽極、陰極および各層と、堀りガラス基板との間には、空間が存在する。封止層の形成は窒素ガス雰囲気下で行われているため、該空間には窒素ガスが充填されている。
発光素子CD7に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が9.7cd/Aであった。初期輝度が1000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、4.4時間であった。結果を表14に示す。
<実施例D16:発光素子D16の作製および評価>
比較例CD7において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD7と同様にして発光素子D16を作製した。
発光素子D16に電圧を印加したところ、455nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD7の5V印加時の電流密度の0.55倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が9.4cd/Aであった。初期輝度が1000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、5.6時間であった。結果を表14に示す。
【表14】
<比較例CD8:発光素子CD8の作製および評価>
比較例CD7において、正孔注入層の厚さを65nmとし、青色蛍光発光性高分子化合物P10および青色蛍光発光性高分子化合物P11を90重量%:10重量%の比率で混合した組成物に代えて、電荷輸送性高分子化合物P12(ガラス転移温度:102℃)および緑色燐光発光性イリジウム錯体M1(ガラス転移温度:297℃)を70重量%:30重量%の比率で混合した組成物を用いるとともに、発光層を80nmとしたこと以外は、比較例CD7と同様にして、発光素子CD8を作製した。
発光素子CD8に電圧を印加したところ、520nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が57.0cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、8.6時間であった。結果を表15に示す。
<実施例D17:発光素子D17の作製および評価>
比較例CD8において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で50℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD8と同様にして発光素子D17を作製した。
発光素子D17に電圧を印加したところ、520nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD8の5V印加時の電流密度の0.77倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が58.1cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、15.7時間であった。結果を表15に示す。
<実施例D18:発光素子D18の作製および評価>
比較例CD8において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で60℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD8と同様にして発光素子D18を作製した。
発光素子D18に電圧を印加したところ、520nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD8の5V印加時の電流密度の0.75倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が57.5cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、23.3時間であった。結果を表15に示す。
<実施例D19:発光素子D19の作製および評価>
比較例CD8において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD8と同様にして発光素子D19を作製した。
発光素子D19に電圧を印加したところ、520nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD8の5V印加時の電流密度の0.62倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が56.9cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、36.5時間であった。結果を表15に示す。
【表15】
<比較例CD9:発光素子CD9の作製および評価>
比較例CD8において、電荷輸送性高分子化合物P12および緑色燐光発光性イリジウム錯体M1を70重量%:30重量%の比率で混合した組成物に代えて、電荷輸送性高分子化合物P14(ガラス転移温度:142℃)および赤色燐光発光性イリジウム錯体M2(ガラス転移温度:>148℃)を92.5重量%:7.5重量%の比率で混合した組成物を用いたこと以外は、比較例CD8と同様にして、発光素子CD9を作製した。
発光素子CD9に電圧を印加したところ、615nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が17.8cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、16.1時間であった。結果を表16に示す。
<実施例D20:発光素子D20の作製および評価>
比較例CD9において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で60℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD9と同様にして発光素子D20を作製した。
発光素子D20に電圧を印加したところ、615nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD9の5V印加時の電流密度の0.92倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が17.4cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、28.0時間であった。結果を表16に示す。
<実施例D21:発光素子D21の作製および評価>
比較例CD9において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD9と同様にして発光素子D21を作製した。
発光素子D21に電圧を印加したところ、615nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD9の5V印加時の電流密度の0.91倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が17.5cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、44.4時間であった。結果を表16に示す。
<実施例D22:発光素子D22の作製および評価>
比較例CD9において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で100℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD9と同様にして発光素子D22を作製した。
発光素子D22に電圧を印加したところ、615nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD9の5V印加時の電流密度の0.81倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が17.0cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、45.4時間であった。結果を表16に示す。
【表16】
<比較例CD11:発光素子CD11の作製および評価>
比較例CD8において、電荷輸送性高分子化合物P12および緑色燐光発光性イリジウム錯体M1を70重量%:30重量%の比率で含有する混合物のキシレン溶液に代えて、下記式(HM−1)で表される電荷輸送性低分子化合物(ガラス転移温度:137℃)(商品名:LT−N4013、Luminescence Technology社製)および緑色燐光発光性イリジウム錯体M1(ガラス転移温度:297℃)を60重量%:40重量%の比率で含有する混合物のトルエン溶液を用いたこと以外は、比較例CD8と同様にして、発光素子CD11を作製した。
発光素子CD11に電圧を印加したところ、520nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、1000cd/m発光時の発光効率が24.1cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、4.7時間であった。結果を表17に示す。
<実施例D23:発光素子D23の作製および評価>
比較例CD11において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で50℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD11と同様にして発光素子D23を作製した。
発光素子D23に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD11の5V印加時の電流密度の0.81倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が20.0cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、5.9時間であった。結果を表17に示す。
<実施例D24:発光素子D24の作製および評価>
比較例CD11において、封止層の形成後に、大気雰囲気中においてホットプレート上で80℃、30分間加熱すること以外は、比較例CD11と同様にして発光素子D24を作製した。
発光素子D24に電圧を印加したところ、525nmに極大ピークを有するEL発光が得られ、5V印加時の電流密度は、発光素子CD11の5V印加時の電流密度の0.70倍であった。1000cd/m発光時の発光効率が22.7cd/Aであった。初期輝度が3000cd/mとなるように電流値を設定後、定電流で駆動させ、輝度の時間変化を測定した。輝度が初期輝度の95%となるまでの時間は、11.5時間であった。結果を表17に示す。
【表17】
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明によれば、駆動初期の輝度寿命に優れる発光素子を提供することができる。