(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958686
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】イセエビ増殖礁及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/00 20060101AFI20160719BHJP
A01K 63/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
A01K61/00 315
A01K61/00 J
A01K63/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-37647(P2012-37647)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-172651(P2013-172651A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501168814
【氏名又は名称】国立研究開発法人水産研究・教育機構
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
(72)【発明者】
【氏名】川畑 三彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 保彦
(72)【発明者】
【氏名】久恒 成史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和教
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓
(72)【発明者】
【氏名】高木 儀昌
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−054557(JP,A)
【文献】
特開2008−178356(JP,A)
【文献】
特開2000−350533(JP,A)
【文献】
特開2007−014305(JP,A)
【文献】
特開2002−335806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00
A01K 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポストラーバ若しくは稚エビがその成長に合わせて棲み替えるための、内径及び奥行寸法の異なる複数種類の凹部を側面部に設け、かつその側面部の上方に位置する頂部に海藻類を取り付けるための取付部を設けた複数基のイセエビ増殖用ブロックと、
前記イセエビ増殖用ブロックを包囲して海藻類の食害を抑制する網と
を具備してなり、
前記複数基のイセエビ増殖用ブロックの凹部を設けていない面同士を当接ないし近接させるようにして、各増殖用ブロックが平面視放射状に伸長している態様に配置したイセエビ増殖礁。
【請求項2】
前記凹部を成形したプレートをコンクリートブロックの外側に装着することで前記伊勢エビ増殖用ブロックを作製している請求項1記載のイセエビ増殖礁。
【請求項3】
前記プレートを樹脂成形品としている請求項2記載のイセエビ増殖礁。
【請求項4】
ある内径及び奥行寸法をもつ凹部の個数が、それよりも大きな内径及び奥行寸法をもつ凹部の個数以上である請求項1、2または3記載のイセエビ増殖礁。
【請求項5】
前記網の目合い寸法を6cm以下としている請求項1、2、3または4記載のイセエビ増殖礁。
【請求項6】
海底に基盤を敷設し、その基盤上に前記イセエビ増殖用ブロックを設置するとともに、基盤におけるイセエビ増殖用ブロックを設置しない箇所に海藻類を取り付けるための取付部を設けており、
前記網が前記基盤に取り付けた海藻類をも包囲する請求項1、2、3、4または5記載のイセエビ増殖礁。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載のイセエビ増殖礁を水深25m以浅の海底または海藻群落中に設置し、ポストラーバ若しくは稚エビを棲みつかせるイセエビ増殖礁の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストラーバ(プルルエス)及び稚エビが安全に棲みついて成長することのできるイセエビ用の増殖礁に関する。とりわけ、海藻がない、または乏しい水域において好適となる、磯焼け・貧海藻地用の稚イセエビ礁に関する。
【背景技術】
【0002】
イセエビ資源の確保及び増殖のためには、産卵後、沖合から沿岸に戻ってくる最初の段階であるポストラーバを沢山着底させることが重要となる。旧来のイセエビ用の増殖礁は、ポストラーバの着底・棲息場所に関する知見が十分でなかった時代に考案されたものであり、当然ながらポストラーバに有効な環境条件を十分に反映させることができなかった。
【0003】
今日では、イセエビのポストラーバや小形の稚エビは海藻等を隠れ場とするわけではなく、寧ろその近傍の岩礁表面に形成された円筒状の凹部(または、穴)に隠れることが圧倒的に多いこと、体がぴったり入る程度の凹部を好むこと、脱皮してより大きな稚エビに成長する都度より大きな凹部に移る習性があること、夜間に凹部から出でて近くにある海藻類に登って餌をあさり、翌朝までに再び元の凹部に帰ること、等が判明している。
【0004】
即ち、ポストラーバや稚エビは、体にぴったり合ったサイズの凹部に身を隠すことで、生存確率を高めている。
【0005】
以上に鑑みて、ポストラーバ若しくは稚エビが成育段階に応じて棲み替えることのできるよう、内径及び奥行寸法の異なる複数種類の凹部をランダムに側面部に穿設したブロックを主体とするイセエビ増殖礁が既に開発されている(下記特許文献1を参照)。
【0006】
従前のイセエビ増殖礁は、海藻群落中に設置し、遊泳してきたポストラーバ若しくは稚エビを棲みつかせることを意図している。しかしながら、今日におけるイセエビ資源の減少は、磯焼け地、即ち磯焼けの主な原因である藻食魚の食害により藻類が激減した裸地の拡大がその一因となっていると思われる。従前のイセエビ増殖礁を磯焼け地に設置したとしても、ポストラーバの着底する海藻がないために、新規に加入するイセエビがなく、その磯焼け海域ではイセエビ資源を回復させられないわけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−178356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題に初めて着目してなされたものであって、ポストラーバの着底数及び稚エビの生残率をより高め、イセエビの増殖を促進することを所期の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、ポストラーバ若しくは稚エビがその成長に合わせて棲み替えるための、内径及び奥行寸法の異なる複数種類の凹部を側面部に設け、かつその側面部の上方に位置する頂部に海藻類を取り付けるための取付部を設けた
複数基のイセエビ増殖用ブロックと、前記イセエビ増殖用ブロックを包囲して海藻類の食害を抑制する網とを具備してな
り、前記複数基のイセエビ増殖用ブロックの凹部を設けていない面同士を当接ないし近接させるようにして、各増殖用ブロックが平面視放射状に伸長している態様に配置したイセエビ増殖礁を構成した。
【0010】
ポストラーバの着底は、それが沖合から来遊し、岩礁に生えている海藻類を感知してこれにしがみつくことで始まる。また、海藻類は着底したポストラーバ及び稚エビにとって餌場となる。イセエビ増殖用ブロックの側面部の上方に位置する頂部には、海藻類を取り付けるための取付部を設けておくことが望ましい。
【0011】
イセエビ増殖用ブロックは、前記凹部を成形したプレートをコンクリートブロックの外側に装着して作製することが可能である。
【0012】
ポストラーバ若しくは稚エビの生存数は、脱皮齢を経るに従って減少する。そこで、ある内径及び奥行寸法をもつ凹部の個数を、それよりも大きな内径及び奥行寸法をもつ凹部の個数以上とする。要するに、小さな凹部ほどより多く設けておく。
【0013】
前記網の目合い寸法は、例えば6cm以下とする。食害をもたらす魚類の侵入を防ぐ一方、ポストラーバや稚エビの出入りは自由となり、また海藻類の繁茂に必要な日光の照射も確保できるからである。
【0014】
海底に基盤を敷設し、その基盤上に前記イセエビ増殖用ブロックを設置する場合には、基盤におけるイセエビ増殖用ブロックを設置しない箇所にも海藻類を取り付けるための取付部を設け、なおかつ前記網により前記基盤に取り付けた海藻類をも包囲することが好ましい。
【0015】
本発明に係るイセエビ増殖礁は、水深25m以浅の海底または海藻群落中に設置し、ポストラーバ若しくは稚エビを棲みつかせる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポストラーバの着底数及び稚エビの生残率をより高め、イセエビの増殖を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態のイセエビ増殖礁の構成部材であるプレートの斜視図。
【
図2】同実施形態におけるプレートを背面側から見た斜視図。
【
図4】同実施形態におけるプレートのA−A線切断部端面図。
【
図5】同実施形態におけるプレートのB−B線切断部端面図。
【
図6】同実施形態におけるプレートのC−D−E−F−G−H線組合せ切断部端面図。
【
図7】同実施形態におけるプレートのI−J−K−L−M−N−O−P線組合せ切断部端面図。
【
図8】同実施形態におけるプレートのQ−R−S−T−U−V−W−X−Y−Z線組合せ切断部端面図。
【
図9】凹部の内径及び奥行寸法とその凹部に棲みつくポストラーバ若しくは稚エビの甲長との関係を示す図。
【
図10】同実施形態のイセエビ増殖礁の設置態様を示す斜視図。
【
図11】同実施形態のイセエビ増殖礁の設置態様を示す分解斜視図。
【
図12】同実施形態のイセエビ増殖礁の設置態様を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。まず、
図1ないし
図8に示すものは、本実施形態のイセエビ増殖礁の構成部材の一であるプレート2である。このプレート2は、例えば樹脂製の射出成形品の薄板体である。プレート2の構成材料の樹脂には、カルシウムその他の無機質粉体を混合している。射出成形品の薄板体2は、軽量であるため取り扱いが容易である大きな利点がある。プレート2は、正面視略方形状をなしており、その正面側から背面側に凹む有底の凹部21(図中、その大きさに応じて21a、21b、21c、21d、21eまたは21fの何れかの符号を付している)を多数形成してある。各凹部21は、それぞれ略円筒状をなす。但し、成形上の事情により、凹部21の径は奥方に向かうにつれて若干ながら窄まっていることがある。
【0019】
凹部21の内は、ポストラーバ若しくは稚エビが棲みついて身を隠す棲息空間となる。ポストラーバや稚エビは、体にぴったり合ったサイズの凹部21を選んでその内に収まることで、魚やシャコのような捕食生物の侵入を防ぎ身を守る。また、脱皮してより大きな稚エビに成長すると、それまでいた凹部21からより大きな凹部21へと移住する。そこで、プレート2には、ポストラーバ若しくは稚エビがその成長に合わせて棲み替えることができるよう、内径及び奥行寸法の相異なる複数種類の凹部21a、21b、21c、21d、21e、21fをランダムに配設している。
【0020】
ポストラーバ若しくは稚エビを着底させるために好適な凹部21の大きさは、上掲の特許文献1により明らかにされている。本実施形態では、以下の六段階の大きさの凹部21a、21b、21c、21d、21e、21fを設けることとしている。無論、下記は一例である。凹部21の大きさは一意に特定されるわけではなく、下記とは異なる値に設定することも許される。凹部21の種類の数も、六段階には限定されない。
(i)凹部21a:入口の内寸15mm、奥行寸法39mm
(ii)凹部21b:入口の内寸17.3mm、奥行寸法44mm
(iii)凹部21c:入口の内寸21.9mm、奥行寸法56mm
(iv)凹部21d:入口の内寸26.6mm、奥行寸法68mm
(v)凹部21e:入口の内寸32.3mm、奥行寸法81mm
(vi)凹部21f:入口の内寸36.9mm、奥行寸法94mm
特許文献1の
図6と対比すれば、凹部21aは脱皮齢で第一齢ないし第二齢に、凹部21bは第三齢に、凹部21cは第四齢に、凹部21dは第五齢ないし第六齢に、凹部21eは第七齢に、凹部21fは第八齢にそれぞれ対応している。脱皮齢は、ポストラーバ若しくは稚エビの大きさを示唆する。
【0021】
ポストラーバ若しくは稚エビの生存数は、成長期間を経過するほど減少してゆく。よって、小さな凹部21はより多く、大きな凹部21はより少なく設ける。本実施形態では、一つのプレート2につき、凹部21aを七個、凹部21bを五個、凹部21cを四個、凹部21dを二個、凹部21e及び凹部21fを一個としている。
【0022】
ポストラーバ若しくは稚エビが脱皮齢で第一齢ないし第二齢を迎える頃には、稚エビは凹部21aに棲みつく。その後、稚エビが第三齢を迎える頃には、凹部21aに棲んでいた稚エビが各々凹部21bへと移動し、凹部21bの替わりに凹部21aが空となる。さらに、稚エビが第四齢を迎える頃には、凹部21bに棲んでいた稚エビが各々凹部21cへと移動し、……というように遷移するであろう。
【0023】
本実施形態では、同等の内径及び奥行寸法をもつ二つの凹部21の中心と中心との距離を、それら凹部21の奥行寸法以上に設定し、ポストラーバ若しくは稚エビの棲息確率を高めるようにしている。凹部21の中心は、凹部21を奥行方向に沿って見たときの当該凹部21の正面投影形状の重心として定義できるが、本実施形態における凹部21は略円筒状であり、正面投影形状である真円の中心が凹部21の中心となる。
【0024】
図9は、特許文献1の
図4の引用である。この
図9にあるように、何れかの凹部21に棲みつくポストラーバ若しくは稚エビの甲長は、当該凹部21の奥行寸法の半分以下である可能性が高い。
【0025】
本実施形態では、凹部21a、21b、21c、21d、21e、21fの中心間距離を以下のように定めている。無論、下記は一例である。凹部21の中心間距離は一意に特定されるわけではなく、下記とは異なる値に設定することも許される。
(i)凹部21a:中心間距離45.7mm
(ii)凹部21b:中心間距離70mm
(iii)凹部21c:中心間距離88.1mm
(iv)凹部21d:中心間距離148.7mm
(v)凹部21e:単一なので定義なし
(vi)凹部21f:単一なので定義なし
プレート2の外周縁部は、後背に屈曲して突き出した突条22となっている。プレート2の中央部位には、プレート2を貫通する貫通孔23を穿っている。
【0026】
本実施形態のイセエビ増殖用ブロック1は、上述のプレート2をコンクリートブロック3の外側に装着して作製する。その際、コンクリートブロック3を形成する型枠にプレート2を収容して設置した状態で型枠内にコンクリートを充填し固化させる、いわばプレート2を埋設するようにしてもよいし、既に固化したコンクリートブロック3に後からプレート2を固着するようにしてもよい。
【0027】
特に、コンクリートを充填してプレート2を埋設一体化する場合、薄板体であるため破損しやすいプレート2が、薄肉で複雑な構造となる凹部21(背面側から見れば、突起部)の背面を充填コンクリートで保護され、破損のおそれを低減することができる。
【0028】
さらに、
図2等に示しているように、プレート2を背面側から見たとき、各凹部21は背面側に突き出している。これら凹部21や上記の突条22により、プレート2をコンクリートブロック3に装着する際にコンクリートブロック3に接触する面積が拡大する。また、凹部21や突条22がアンカーとなって、プレート2がコンクリートブロック3から抜出しにくくなる。
【0029】
図10ないし
図12に示すイセエビ増殖用ブロック1は、コンクリートブロック3の三方の側面、即ち前面、後面及び外方を向く側端面にそれぞれ複数枚(図示例では、二枚ずつ)のプレート2を取着してなるものである。コンクリートブロック3の内方側部における前後面はそれぞれ、プレート2を取着した前面及び後面に対して交差するように斜めに切り落とした傾斜面としてある。
【0030】
コンクリートブロック3の頂面は、海藻類を取り付けるための取付部とする。この取付部には、例えばクロメ類やホンダワラの仲間であるノコギリモク、オオバモク等の藻類6を生育するための藻類増殖部材4を取り付けることができる。藻類増殖部材4は、海藻6の胞子や遊走子等を付着させた種糸(図示せず)を掛け止めることのできる突起や、海藻6から伸びた根が良好に活着する凹凸等を上表面に形成した、樹脂製及び/またはコンクリート製の板状体である。藻類増殖部材4は、適宜の手段を用いてコンクリートブロック3の頂面に固定する。例えば、コンクリートブロック3に予め埋設されている、コンクリートブロック3の頂面から上方に突出したボルト5を、藻類増殖部材4に予め穿設した挿通孔(図示せず)に挿通した状態で、ボルトの軸部に上方からナット(図示せず)を螺着して藻類増殖部材4の脱離を阻止する。
【0031】
イセエビ増殖礁は、水深25m以浅の海藻群落中またはその周辺の海底に設置し、凹部21にポストラーバや稚エビを着底、棲息させる。例えば、
図10及び
図11に示しているように、海底に例えばコンクリート製の基盤7を敷設し、その基盤7上に複数基のイセエビ増殖用ブロック1を載置する。基盤7は、現場打ちのコンクリートであってもよいし、プレキャストコンクリート部材であってもよい。何れにせよ、基盤7は、海中にて増殖用ブロック1等を保定するものであるので、十分な重量を有している必要がある。
【0032】
複数基の増殖用ブロック1は、プレート2を装着していない面同士、具体的には互いの内方側部の傾斜面同士を当接ないし近接させるようにして、各増殖用ブロック1が平面視放射状(図示例では、十字状)に伸長している態様に配置する。増殖用ブロック1を互いに当接ないし近接させるのは、波力または潮力により増殖用ブロック1が基盤7上で回転等変位しないようにするためである。
【0033】
そして、
図11に示しているように、イセエビ増殖用ブロック1の頂部、及び基盤7における増殖用ブロック1を載置していない箇所に、藻類増殖部材4を介して藻類6を取り付ける。
【0034】
さらに、
図12に示しているように、イセエビ増殖用ブロック1及び藻類増殖部材4の外周にフレーム8を基盤7に支持させて設立し、当該フレーム8に網9を張り巡らせて、網9により増殖用ブロック1及び藻類増殖部材4を包囲する。網9は、フレーム8に対して着脱可能である。網9は、凹部21や藻類増殖部材4、藻類6の周囲及び上方を取り囲み、網9の内側に藻食魚等が侵入することを阻止し、海藻類6の食害を抑制する働きをする。網9の目合いは、6cm以下、より好ましくは5cm程度とする。
【0035】
本実施形態によれば、ポストラーバ若しくは稚エビがその成長に合わせて棲み替えるための、内径及び奥行寸法の異なる複数種類の凹部21を側面部に設け、かつその側面部の上方に位置する頂部に海藻類6を取り付けるための取付部を設けたイセエビ増殖用ブロック1と、前記イセエビ増殖用ブロック1を包囲して海藻類6の食害を抑制する網9とを具備してなるイセエビ増殖礁を構成したため、ポストラーバの着底数及び稚エビの生残率をより高め、イセエビの増殖を一層促進することが可能となる。
【0036】
とりわけ、海藻類6の少ない磯焼け地や春藻場等において、ポストラーバ等の着底のきっかけとなるとともに餌場にもなる海藻類6と、ポストラーバ等の住処となる凹部21とを組にして設営でき、しかもそれらを網9で防護できるため、ポストラーバや稚エビの棲息を促すことができるだけでなく、網9により藻食性魚類の食害から保護された海藻類6が核藻場となり、これが胞子等を放出して網9の内外に拡散させ、網9の内外に海藻類を増殖、繁茂させることにもつながる。海藻類が十分に繁茂した後は、網9を取り除くことも可能である。
【0037】
前記凹部21を成形したプレート2をコンクリートブロック3の外側に装着してイセエビ増殖用ブロック1を作製しているため、コンクリートブロック3がアンカーの役割を担い、海中への設営が容易となり、また低コストである。
【0038】
ある内径及び奥行寸法をもつ凹部21の個数を、それよりも大きな内径及び奥行寸法をもつ凹部21の個数以上とする、つまりは小さな凹部21ほどより多く設けているため、脱皮齢の若いポストラーバ若しくは稚エビを数多く着底させることが可能である。
【0039】
増殖用ブロック1の側面部の上方に位置する頂部だけでなく、基盤7における増殖用ブロック1を設置しない箇所にも海藻類6を取り付けることのできる取付部を設けているため、増殖用ブロック1の凹部21の上方及び凹部21の出入口近傍に海藻類6を存在させることができ、沖合から来遊したポストラーバが海藻類にしがみつき、着底して凹部21に棲みつく確率が高まる。
【0040】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、イセエビ増殖用ブロック1の別の形態として、
図13に示すものを挙げることができる。
図13に示すイセエビ増殖用ブロック1は、平面視略六角形状の外形をなすコンクリートブロック3を基体とし、その複数の側面部にプレート2を(図示例では、プレート2同士が隣接しないように、一つ以上側面を空けて間欠的に)装着したものである。増殖用ブロック1の頂部、即ちコンクリートブロック3の頂面に海藻類を取り付けるための取付部を設けている点や、基盤7上への設置後に網9により囲んで防護する点等は、上記実施形態と同じである。
【0041】
また、プレート2を用いず、コンクリートブロック自体に凹部を形成することで、本発明に係るイセエビ増殖礁を作製することを妨げない。例えば、コンクリートブロックの成形型枠に凹部に対応した凸部を設けておき、その型枠内にコンクリートを充填し固化させることで、凹部が予め穿たれたプレキャストコンクリートブロックを作製する。あるいは、コンクリートブロックの外側面に、後からドリル等を使用して凹部を穿孔する。
【0042】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、イセエビ資源の確保及び増殖に活用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…イセエビ増殖用ブロック
2…プレート
21(21a、21b、21c、21d、21e、21f)…凹部
3…コンクリートブロック
6…海藻類
7…基板
9…網