特許第5958963号(P5958963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5958963
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】把持機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   B25J15/08 D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-150464(P2012-150464)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-12306(P2014-12306A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年3月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人科学技術振興機構委託研究「マイクロトランスファプレス加工システムの開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 一朗
(72)【発明者】
【氏名】芦田 極
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−135165(JP,A)
【文献】 特開2012−006023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
B21D 43/00−45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するためのフィンガ部と、アクチュエータに取り付けられたスライダ部と、アクチュエータの動作方向に移動可能なフィンガ基部と、前記スライダ部と前記フィンガ基部を接続するとともにスライダ部とフィンガ基部の相対的位置をアクチュエータの押し込み動作毎に変更するオルタネイト動作機構部とを、ストッパピンを有するケース内に納めてなる把持機構であって、
記アクチュエータを押し込むと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第1の相対的位置を保ったまま押し込まれ、フィンガ基部がケース内に設けたストッパピンに当接した後もさらにアクチュエータを押し込むとオルタネイト動作機構部が作動され、その後アクチュエータを引き戻すと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第2の相対的位置に変更されて引き戻され、
次に前記アクチュエータを押し込むと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第2の相対的位置を保ったまま押し込まれ、フィンガ基部がケース内に設けたストッパピンに当接した後もさらにアクチュエータを押し込むとオルタネイト動作機構部が作動され、その後アクチュエータを引き戻すと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第1の相対的位置に変更されて引き戻され、
以後、アクチュエータの押し込み動作毎に相対的位置の変更を繰り返すものであり、
前記フィンガ部は、固定端側が前記フィンガ基部に固定され、中間部に傾斜部を有し、自由端側でワークを把持する複数の弾性フィンガからなり、
前記傾斜部に当接する係合部材を、前記スライダ部の押し込み及び引き戻し動作に連動して移動可能に設け、前記第1の相対的位置及び第2の相対的位置に応じた前記係合部材の前記傾斜部への当接位置の違いにより複数の弾性フィンガの自由端側での把持・解放を行うことを特徴とする把持機構。
【請求項2】
前記フィンガ部は2又は3つの弾性フィンガからなることを特徴とする請求項1記載の把持機構。
【請求項3】
前記ストッパピンの長さを変更することにより、把持位置の調節を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の把持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロトランスファプレスなど微小な物体を搬送するための把持機構に関し、特に、1つの直動アクチュエータだけで把持フィンガの伸縮と把持動作を実現できる機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリメートルオーダーの小型部品をプレス加工する多段のマイクロトランスファプレスにおいては、金型間のワーク搬送を行うために複数の同期した搬送装置が必要となる。この搬送装置におけるワークへの接近・離脱、把持・解放、ピックアップ・設置、搬送・復帰という動作をそれぞれ個別のアクチュエータを使って実現した場合、多数のアクチュエータが必要となり全体の制御が複雑になるという問題がある。そのためできるだけ少ないアクチュエータでこれらの動作を実現することが望ましい。
これまで主にワークを垂直方向に持ち上げ水平方向に搬送する手段に対して、機構的工夫により少ないアクチュエータで把持と搬送動作を実現する手法の提案がなされてきた。
特許文献1では、空気圧シリンダによって上下方向に移動する可動軸と、それとともに途中まで移動可能なスライダ部と、スライダ部と可動軸にそれぞれ取り付けられたアーム・リンク・コイルばねによって、可動軸の上昇に伴いフィンガが閉じてワークを持ち上げて搬送し、下降に伴いフィンガが開いてワークを解放する動作を実現している。しかしこの機構では可動軸上昇時と下降時のアーム開閉の状態が決まっていて変更できないという問題がある。
また、特許文献2では、上下駆動するシリンダロッド下端に取り付けられた駆動ブロックと、駆動ブロック上に載置され相対的にスライド可能な把持装置と、この把持装置の中にあって駆動ブロックが押下することによりワークを把持するリンク機構を使って、ワークへの接近と把持動作を1つのシリンダの動きで実現している。この方法では、ワークを持ち上げ搬送するときに把持機構をラッチするための係止爪を用いることで、シリンダロッドが上昇したときの指部の開閉状態を選択できる。しかし係止爪を別の駆動機構で動作させる必要があるため、完全に1つのアクチュエータの動きだけでワーク設置位置への接近・離脱と把持・解放を実現することはできない。
一方で特許文献3では、搬送用シリンダによって把持爪機構を持つワーク移載装置を水平方向のストローク限まで移動するときに、その押し込み動作をストッパとベルクランクとスプリングを使ってワーク上昇・下降動作に変換し、ロッドで回動する切り替えリンクと爪リンク機構を使ってワークの把持と解放動作に変換している。この方法ではワークへの接近、把持、持ち上げ、搬送、設置、解放、の一連の動作を完全に1つのアクチュエータで実現できる。しかし2種類のストッパや複数のロッド機構や自己保持スプリングなど複雑な構成となっており、小型化や高速動作には向いていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−70022号公報
【特許文献2】特開2000−218583号公報
【特許文献3】特開2009−40540号公報
【特許文献4】特願2012−43373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連動する複数のトランスファプレス用搬送機構においては、プレス動作が終了し次のプレス動作が始まる前に、搬送用フィンガを待機位置からワークへ接近、把持、金型からピックアップ、搬送、次の金型に設置、フィンガ解放、金型から離脱、元の待機位置に復帰、という動作を完了させる必要がある。これまで開発されたマイクロプレスの寸法とタクトタイムから、搬送距離は約100mm、搬送時間は約1秒以内が要求される。このうちピックアップと搬送動作については共通のスライダで実現できるため、少なくともワークへの接近・離脱と把持・解放について、1つのアクチュエータだけで実現することが望まれる。
金型のガイドピンやプレス機のコラムが搬送動作に干渉することが考えられるため、ワークをピックアップした後、フィンガを一度設置位置上空から待機位置上空まで引き込んでから搬送を行い、再度フィンガを設置場所上空に差し込む動作が必要となる。
したがって、特許文献1を横向きに適用する場合、この機構はアームが引き込んでいるときは必ずフィンガが閉じられ、ワークに最接近したときだけフィンガが開かれるため、ワークと試料の衝突を避けるにピックアップと設置動作とは別にフィンガの上下動が必要となり時間的な問題が出てくる。また特許文献2を適用する場合、把持機構をラッチするための係止爪の制御が余分に必要となる。さらに特許文献3を適用するには機構が複雑であるため装置を小型化してマイクロトランスファプレスの搬送装置に適用することは難しい。
以上により、1つのアクチュエータの動作によってワークへの接近・離脱と把持・解放が可能であり、ワーク把持前や解放後にフィンガを引き込んでいるときはフィンガを開いていて、搬送時にフィンガを引き込むときはフィンガを閉じるという選択的な動作が可能な、簡単な構造の機構が新たに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の把持機構は、ワークを把持するためのフィンガ部と、アクチュエータに取り付けられたスライダ部と、アクチュエータの動作方向に移動可能なフィンガ基部と、前記スライダ部と前記フィンガ基部を接続するとともにスライダ部とフィンガ基部の相対的位置をアクチュエータの押し込み動作毎に変更するオルタネイト動作機構部とを、ストッパピンを有するケース内に納めてなる把持機構であって、
前記オルタネイト動作機構部は、
前記アクチュエータを押し込むと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第1の相対的位置を保ったまま押し込まれ、フィンガ基部がケース内に設けたストッパピンに当接した後もさらにアクチュエータを押し込むとオルタネイト動作機構部が作動され、その後アクチュエータを引き戻すと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第2の相対的位置に変更されて引き戻され、
次に前記アクチュエータを押し込むと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第2の相対的位置を保ったまま押し込まれ、フィンガ基部がケース内に設けたストッパピンに当接した後もさらにアクチュエータを押し込むとオルタネイト動作機構部が作動され、その後アクチュエータを引き戻すと、スライダ部とフィンガ基部はオルタネイト動作機構部により第1の相対的位置に変更されて引き戻され、
以後、アクチュエータの押し込み動作毎に相対的位置の変更を繰り返すものであり、
前記フィンガ部は、固定端側が前記フィンガ基部に固定され、中間部に傾斜部を有し、自由端側でワークを把持する複数の弾性フィンガからなり、
前記傾斜部に当接する係合部材を、前記スライダ部の押し込み及び引き戻し動作に連動して移動可能に設け、前記第1の相対的位置及び第2の相対的位置に応じた前記係合部材の前記傾斜部への当接位置の違いにより複数の弾性フィンガの自由端側での把持・解放を行うことを特徴とする。
また、本発明は、上記把持機構において、前記フィンガ部は2又は3つの弾性フィンガからなることを特徴とする。
また、本発明は、上記把持機構において、前記ストッパピンの長さを変更することにより、把持位置の調節を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
微小なワークを把持し搬送する装置を実現する場合、もっとも一般的な手段はそれぞれの動作を行うアクチュエータを個別に配置したロボットアーム状の構成をとることである。このような装置では、(1)ワークへの接近・離脱、(2)ワーク把持・解放、(3)設置場所からのピックアップ・設置、(4)設置場所間の移動・復帰の動作が考えられるため、少なくとも4つのアクチュエータが必要である。そのためマイクロトランスファプレスなど多段の搬送装置を実現する場合は、多くのアクチュエータを使用しなければならない上、全体の制御システムが複雑になるという問題があった。
本発明はこのように微小なワークに対する複数の連動した搬送作業を行う場合、少ないアクチュエータでワークの把持と搬送を実現する効果的な機構を提供する。本発明によれば、ワークへの接近後の把持、搬送中と搬送中に干渉を避けるためのフィンガ引き込み動作時は把持を維持、設置のためのフィンガを伸ばした後に解放、といった選択的な手順は単にフィンガ駆動用のアクチュエータを伸縮させるだけで実現できるため、この部分の制御は一切不要でありシーケンス制御を簡略化できる。
さらに、ワークの把持位置はストッパ501の長さを変更することで調整でき、フィンガ把持を開始するタイミングは固定ネジ207a、207bを緩めてローラホルダ201a、201bとスライダブロック204の相対位置を変更することにより調整できるため、フィンガを変更した場合など、現場での微妙なあわせが必要な場合においても容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の把持機構を2つのフィンガで構成した第1実施例の概要を示す図である。
図2図1に示した把持機構の動作説明用側面図(その1)である。
図3図1に示した把持機構の動作説明用側面図(その2)である。
図4図1に示した把持機構の動作説明用側面図(その3)である。
図5】本発明の把持機構のオルタネイト動作機構部を示した図である。
図6】オルタネイト動作を説明するための模式的な展開図である。
図7】本発明の把持機構を3つのフィンガで構成した第2実施例を示す図である。
図8】本発明の把持機構をマイクロトランスファプレスに応用したときのトランスファプレスの全体概要図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
(第1実施例)
本発明の把持機構を用いた把持装置の概要を図1に示す。把持装置はピンセット状のワーク把持用フィンガ部と、アクチュエータに取り付けられるスライダ部と、スライダ部とはアクチュエータの動作方向に相対的に移動可能なフィンガ基部と、スライダ部とフィンガ基部の相対的位置をアクチュエータの押し込み動作毎に変更するオルタネイト動作機構部からなり、これらがストッパピン501を持つケース部の中に納められている。図示されていないアクチュエータがスライダ駆動用軸203に連結され、把持装置を保持するとともにこれをy方向に駆動する。ケース部は図示されないアクチュエータの基礎部分とともに、トランスファ動作におけるピックアップステージ、搬送ステージの上に設置されている。(なお、トランスファ動作におけるピックアップステージ、搬送ステージの詳細については、本出願人の先の出願(特許文献4)参照。)
【0009】
以下、図2図4を使って把持装置の構造と把持動作を説明する。把持装置のはじめの状態を図2の動作説明用側面図(その1)に示す。
ピンセット状のフィンガ101と102はフィンガホルダ301に取り付けられていて、このフィンガホルダは固定ロッド305a、305bによりスライダブロック204の両サイドに取り付けられたスライダ202a,b(図中2点鎖線表記、202bについては図中裏面に付き省略)に保持されている。スライダ202a,bには固定ロッド305a,305bが貫通する溝が切ってあり、これによりフィンガ基部とスライダ部はy方向に相対的に移動可能である。ローラホルダ201a、201bが固定ネジ207a、207bによってスライダブロック204に固定されている。ローラホルダ201a、201bには溝があり、固定ネジを緩めることでスライダブロックとのy方向固定位置を調整することができる。スプリング304がフィンガホルダ301の背後に取り付けられたガイド軸303を軸心として、フィンガホルダ301とスライダブロック204の間を付勢している。
オルタネイト動作機構部の構造は後に詳しく説明するが、プッシュピン401はガイド軸303に固定されフィンガ基部とともに動き、ロックピン403はスプリングケース205内部にあるオルタネイトスプリング404によってオルタネイト溝ケース402に押し付けられている。ロックピンが押し付けられる位置は、オルタネイト動作を繰り返すたびにy方向に決まった変位だけ切り替わる。ガイド軸303のロックピン403側にはフランジがあるため、スライダスプリング304によって付勢されたスライダ部とフィンガ基部の相対的な停止位置はロックピン403のラッチ位置によって変化する。この図ではフィンガ部は開いた状態で待機位置にある。
【0010】
図示されていないアクチュエータが+y方向に移動すると、把持装置全体も+y方向に移動しフィンガ部が開いたままワークに接近する。フィンガホルダ301の先端ピン302がストッパピン501に接触するとフィンガ部とフィンガ基礎部は移動を停止する。さらにアクチュエータを+y方向に進めると、スライダ部図3の動作説明用側面図(その2)に示すようにスライダスプリング304を縮めながら+y方向に進み、ローラホルダ201a、201bにあるローラ206a、206bがフィンガ101、102のy−z平面内で傾斜している部分に接触することによりフィンガが弾性変形し、フィンガ部が閉じられる。ローラが接触するフィンガ部分は、フィンガが閉じたときにちょうどy軸と平行になる形状をしているため、フィンガ部が完全に閉じた後もアクチュエータがさらに押し込みを行っても把持力が変わらないようになっている
スライダ部とフィンガ基礎部が相対運動を行うとき、プッシュピン401がオルタネイト溝ケース402の中を相対的に進み、ロックピン403をオルタネイト溝ケースから押し出す。するとロックピン403が後述するy軸周り回転によるオルタネイト動作を行い、y軸方向のラッチ位置を変更する。
【0011】
アクチュエータが−y方向に移動すると、スライダ部とフィンガ基部の相対位置はロックピン403のラッチ位置によって変更され、図4の動作説明用側面図(その3)のような位置関係のまま把持装置全体が−y方向に移動する。図3の動作説明用側面図(その2)に比べると図4の動作説明用側面図(その3)のスライダ部はフィンガ基部に対して相対的に−y方向に後退するが、依然としてローラ206a、206bはフィンガ101、102が閉じているときにy軸と平行になる部分に位置しているため、フィンガ部は閉じられたまま−y方向に縮められる。そして再度、アクチュエータを+y方向に進めるとロックピン403のy軸周り回転角以外は図3の動作説明用側面図(その2)と同じ状態となり、オルタネイト動作によってロックピン403のラッチ位置は最初に戻る。そのためアクチュエータを再び−y方向に移動させると、フィンガ部は開かれてから縮む動作を行う。
よってフィンガ101、102は縮んだ位置で開いた最初の状態から、1)ワーク方向に伸びる、2)ワークを把持、3)把持したまま縮む、4)把持したまま伸びる、5)ワークを解放する、6)開いたまま縮み始めに戻る、という動作を繰り返す。3)と4)の間に外部のアクチュエータによって搬送動作を行えば搬送機構となり、ワークに対する接近・離脱動作とワークの把持・解放動作を1つのアクチュエータだけで実現できる。
【0012】
オルタネイト動作機構部周辺の構造を図5に示す。これはノック式ボールペンなどに典型的に見られるオルタネイト動作を行う機構である。ガイド軸303はロックピン403、オルタネイト溝ケース402、スライダスプリング304を貫通してフィンガホルダ301に固定されている。プッシュピン401はガイド軸303に固定されていて、ガイド軸・フィンガホルダと一緒に移動する。オルタネイト溝ケース402に沿ってプッシュピン401とロックピン403が挿入される。ロックピン403は溝と噛み合っていない場合はガイド軸303回りを回転できる。ガイド軸303にはフランジが付いているため、これらを組み合わせたときロックピン403がガイド軸303から脱落することはない。スライダスプリング304はフィンガホルダ301とオルタネイト溝ケース402の間を付勢し、オルタネイトスプリング404はロックピン403をオルタネイト溝ケース402に押し付ける方向に作用する。それぞれのスピリングはプッシュピン401とガイド軸303のフランジの動作と干渉しないだけの十分な径を持っている。
【0013】
この機構部の動作を説明するため、図5のA−A部から展開した模式的な構造を図6に示す。この図では円筒半径方向による円周方向長さの違いを無視している。またオルタネイトスプリング404はロックピン403だけを付勢していることを表現するため、実際の展開図とは異なる表示になっている。この図において座標系yは図5と共通で、θは図5のy軸回り回転に相当する。プッシュピン401は、円周方向均等に6つの凸部があり、ピンの端面は各凸部中央が頂点となるような6波長分の三角波形状になっている。一方でロックピン403は円周方向均等に3つの凸部があり、ピンの端面はそれら凸部の一方の端が頂点となるような6波長分の三角波形状を持っている。オルタネイト溝ケース402の内側にはプッシュピン401がy方向にだけスライドできるようにプッシュピンの凸部にあわせた溝が切られている。オルタネイト溝ケース402のロックピン403側端面は、6波長分の鋸波状になっていて、120度毎に切込みが入っている。この切込みのy軸方向深さはhである。溝はプッシュピン401の6つの凸部が、オルタネイト溝ケース402の切込み部および端面が鋸波によって最も削られた1/4波長部分をスライドする位置に作られている。
【0014】
この図の状態でロックピン403とオルタネイト溝ケース402を組み合わせると、ロックピン403の凸部はプッシュピン401の凸部より高いため、オルタネイト溝ケース402の切込み部と噛み合う。図示されていないスライダスプリング304の力により、プッシュピン401は、ガイド軸303のフランジがロックピン403の端部と接触するy位置まで相対的に移動し停止する。今、プッシュピン401を押し込むと、ロックピン403はプッシュピン401との接触により、−y方向に移動しながらオルタネイトスプリング404を押し縮める。ロックピン403がオルタネイト溝ケース402と噛み合わない位置まで移動すると、ロックピン403はオルタネイトスプリング404の+y方向押し込みの力とプッシュピン401の端面との接触により+y方向に滑るとともに+θ方向へ回転する。ロックピン403の凸部はオルタネイト溝ケースの鋸波状端面に乗り上げ、さらに+y方向と+θ方向にすべり回転し、オルタネイト溝ケースの鋸波と噛み合った位置で停止する。プッシュピン401は押し込みを止めるとガイド軸303のフランジがロックピンの端面に接触するまで+y方向に移動するが、これは最初にロックピンがオルタネイト溝ケースの切込み部と噛み合っていたところから図中h分だけ−y方向に縮んだ位置である。
再度プッシュピン401を−y方向に押し込むと、ロックピン403はオルタネイト溝ケース402の切込み部に噛み合って停止する。これらの動作によりプッシュピン401が押し込み動作を行う毎にその停止位置がy方向にhの幅を持って変更することになる。よって図2図4で説明したとおりフィンガは一つのアクチュエータの動きだけでワークへの接近・離脱と把持・解放を行うことが可能となる。
【0015】
図1に示した概要図では、弾性変形するフィンガの傾斜部分にローラが接触することにより把持動作が行われているが、スライダ部がフィンガ基部に対して相対的に移動する変位を把持動作に変換する何らかのリンク機構によって把持動作を行わせてもよい。
オルタネイト動作機構部の構成例は図5に示した通りであるが、これ以外にも既存のハート状カム方式やラチェットカム方式を使って実現する方法も考えられる。
【0016】
(第2実施例)
上記第1実施例では2組のフィンガとローラによる把持動作としたが、これらを3組以上にした構成も考えられる。3組のフィンガとローラによる第2実施例を図7に示す。
この第2実施例の把持機構は、円筒状ワーク7の長手方向を把持する場合に適した構成である。スライダブロック204に120度毎にローラホルダ201a〜c、ローラ206a〜c(201cと206cは図では隠れた位置にある)が取り付けられていて、そこから伸びるスライダ202a〜cにスライドできるように保持されたフィンガ基部にフィンガ101、102、103が同様に取り付けられている。
第2実施例の動作は、図1で示した第1実施例の概要図と同様に、スライダ駆動用軸203に連結された図示されないアクチュエータが押し込み動作を行うたびにフィンガ基部の端部が図示されないストッパに接触し、オルタネイト動作機構部がフィンガ基部とスライダブロックの相対位置を変更し、ワークの把持と解放を行う。
上記第1実施例、第2実施例では、それぞれ2組のフィンガとローラ、3組のフィンガとローラで把持機構を構成したが、必要に応じて4組以上で構成することも可能である。
【0017】
(本発明の把持機構をマイクロトランスファプレスへ応用した応用例)
本発明の把持機構をマイクロトランスファプレスに応用したときのマイクロトランスファプレスの全体概要図を図8に示す。これは図示されていない4連のマイクロトランスファプレスに金型8a〜dが組み込まれているときに、トランスファ装置1a〜dがそれぞれ隣り合った金型の間のワーク搬送を行う状況を示している。ここでは全トランスファ装置をそれぞれx,y,z方向に一斉に移動させるための駆動機構10、6、9が備えられており、プレス加工と同期したトランスファ動作を行う構造になっている。これらの機構は独立した制御機構を有するものでも実現できるが、通常のトランスファプレスにあるトランスファバーのように、トランスファプレス駆動用のメインモータからリンク機構を介して同期動作する機構を構築しても良い。
各トランスファ装置には本発明である把持装置がそれぞれあり、フィンガ駆動アクチュエータ6の動作に伴いフープ材11から供給され金型8a〜dに順次設置されたワーク7a〜dに一斉にフィンガを伸ばして把持、ピックアップ用アクチュエータ9によりワークを持ち上げ、金型のガイドピンとの干渉を避けるためにフィンガ駆動アクチュエータ6を戻してワークを退避、搬送用アクチュエータ10によりx方向に搬送、再びフィンガ駆動アクチュエータ6により設置位置上空へワークを挿入、ピックアップ用アクチュエータ9によりワークを設置、フィンガ駆動アクチュエータを戻すことによりワークを解放、搬送用アクチュエータにより元へ復帰という動作をとる。トランスファ装置1dによって搬送されたワークは図示されないベルトコンベアによって他の製造工程場所に運ばれる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は小寸法のワークを取り扱うハンドリング装置として、特にマイクロトランスファプレスの搬送装置において有効な把持手段となる。そのためマイクロプレスを取り扱う生産機械分野において広く利用できる。
【符号の説明】
【0019】
図1〜6について)
S 把持装置
フィンガ部
101 フィンガ上
102 フィンガ下
スライダ部
201a,b ローラホルダ
202a,b スライダ
203 スライダ駆動用軸
204 スライダブロック
205 バネ用ガイドピン
206a,b ローラ
207a,b 固定ネジ
フィンガ基部
301 フィンガホルダ
302 先端ピン
303 ガイド軸
304 スライダスプリング
オルタネイト動作機構部
401 プッシュピン
402 オルタネイト溝ケース
403 ロックピン
404 オルタネイトスプリング
ケース部
501 ストッパピン
502 プッシュロッド
図7について)
101,102,103 フィンガ
スライダ部
201a,b,c ローラホルダ
202a,b,c スライダ
203 スライダ駆動用軸
204 スライダブロック
206a,b,c ローラ
207a,b 固定ネジ
フィンガ基部
オルタネイト動作機構部
7 円筒ワーク
図8について)
1a,b,c,d トランスファ装置
把持装置
6 フィンガ駆動アクチュエータ
7a,b,c,d ワーク
8a,b,c,d 金型
9 ピックアップ用アクチュエータ
10 搬送用アクチュエータ
11 フープ材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8