【実施例】
【0008】
(第1実施例)
本発明の把持機構を用いた把持装置の概要を
図1に示す。把持装置
Sはピンセット状のワーク把持用フィンガ部
1と、アクチュエータに取り付けられるスライダ部
2と、スライダ部とはアクチュエータの動作方向に相対的に移動可能なフィンガ基部
3と、スライダ部とフィンガ基部の相対的位置をアクチュエータの押し込み動作毎に変更するオルタネイト動作機構部
4からなり、これらがストッパピン501を持つケース部
5の中に納められている。図示されていないアクチュエータがスライダ駆動用軸203に連結され、把持装置を保持するとともにこれをy方向に駆動する。ケース部
5は図示されないアクチュエータの基礎部分とともに、トランスファ動作におけるピックアップステージ、搬送ステージの上に設置されている。(なお、トランスファ動作におけるピックアップステージ、搬送ステージの詳細については、本出願人の先の出願(特許文献4)参照。)
【0009】
以下、
図2〜
図4を使って把持装置の構造と把持動作を説明する。把持装置のはじめの状態を
図2の動作説明用側面図(その1)に示す。
ピンセット状のフィンガ101と102はフィンガホルダ301に取り付けられていて、このフィンガホルダは固定ロッド305a、305bによりスライダブロック204の両サイドに取り付けられたスライダ202a,b(図中2点鎖線表記、202bについては図中裏面に付き省略)に保持されている。スライダ202a,bには固定ロッド305a,305bが貫通する溝が切ってあり、これによりフィンガ基部
3とスライダ部
2はy方向に相対的に移動可能である。ローラホルダ201a、201bが固定ネジ207a、207bによってスライダブロック204に固定されている。ローラホルダ201a、201bには溝があり、固定ネジを緩めることでスライダブロックとのy方向固定位置を調整することができる。スプリング304がフィンガホルダ301の背後に取り付けられたガイド軸303を軸心として、フィンガホルダ301とスライダブロック204の間を付勢している。
オルタネイト動作機構部
4の構造は後に詳しく説明するが、プッシュピン401はガイド軸303に固定されフィンガ基部
3とともに動き、ロックピン403はスプリングケース205内部にあるオルタネイトスプリング404によってオルタネイト溝ケース402に押し付けられている。ロックピンが押し付けられる位置は、オルタネイト動作を繰り返すたびにy方向に決まった変位だけ切り替わる。ガイド軸303のロックピン403側にはフランジがあるため、スライダスプリング304によって付勢されたスライダ部
2とフィンガ基部
3の相対的な停止位置はロックピン403のラッチ位置によって変化する。この図ではフィンガ部
1は開いた状態で待機位置にある。
【0010】
図示されていないアクチュエータが+y方向に移動すると、把持装置全体も+y方向に移動しフィンガ部
1が開いたままワークに接近する。フィンガホルダ301の先端ピン302がストッパピン501に接触するとフィンガ部
1とフィンガ基礎部
3は移動を停止する。さらにアクチュエータを+y方向に進めると、スライダ部
2が
図3の動作説明用側面図(その2)に示すようにスライダスプリング304を縮めながら+y方向に進み、ローラホルダ201a、201bにあるローラ206a、206bがフィンガ101、102のy−z平面内で傾斜している部分に接触することによりフィンガが弾性変形し、フィンガ部
1が閉じられる。ローラが接触するフィンガ部分は、フィンガが閉じたときにちょうどy軸と平行になる形状をしているため、フィンガ部
1が完全に閉じた後もアクチュエータがさらに押し込みを行っても把持力が変わらないようになっている
スライダ部
2とフィンガ基礎部
3が相対運動を行うとき、プッシュピン401がオルタネイト溝ケース402の中を相対的に進み、ロックピン403をオルタネイト溝ケースから押し出す。するとロックピン403が後述するy軸周り回転によるオルタネイト動作を行い、y軸方向のラッチ位置を変更する。
【0011】
アクチュエータが−y方向に移動すると、スライダ部
2とフィンガ基部
3の相対位置はロックピン403のラッチ位置によって変更され、
図4の動作説明用側面図(その3)のような位置関係のまま把持装置全体が−y方向に移動する。
図3の動作説明用側面図(その2)に比べると
図4の動作説明用側面図(その3)のスライダ部
2はフィンガ基部
3に対して相対的に−y方向に後退するが、依然としてローラ206a、206bはフィンガ101、102が閉じているときにy軸と平行になる部分に位置しているため、フィンガ部
1は閉じられたまま−y方向に縮められる。そして再度、アクチュエータを+y方向に進めるとロックピン403のy軸周り回転角以外は
図3の動作説明用側面図(その2)と同じ状態となり、オルタネイト動作によってロックピン403のラッチ位置は最初に戻る。そのためアクチュエータを再び−y方向に移動させると、フィンガ部
1は開かれてから縮む動作を行う。
よってフィンガ101、102は縮んだ位置で開いた最初の状態から、1)ワーク方向に伸びる、2)ワークを把持、3)把持したまま縮む、4)把持したまま伸びる、5)ワークを解放する、6)開いたまま縮み始めに戻る、という動作を繰り返す。3)と4)の間に外部のアクチュエータによって搬送動作を行えば搬送機構となり、ワークに対する接近・離脱動作とワークの把持・解放動作を1つのアクチュエータだけで実現できる。
【0012】
オルタネイト動作機構部
4周辺の構造を
図5に示す。これはノック式ボールペンなどに典型的に見られるオルタネイト動作を行う機構である。ガイド軸303はロックピン403、オルタネイト溝ケース402、スライダスプリング304を貫通してフィンガホルダ301に固定されている。プッシュピン401はガイド軸303に固定されていて、ガイド軸・フィンガホルダと一緒に移動する。オルタネイト溝ケース402に沿ってプッシュピン401とロックピン403が挿入される。ロックピン403は溝と噛み合っていない場合はガイド軸303回りを回転できる。ガイド軸303にはフランジが付いているため、これらを組み合わせたときロックピン403がガイド軸303から脱落することはない。スライダスプリング304はフィンガホルダ301とオルタネイト溝ケース402の間を付勢し、オルタネイトスプリング404はロックピン403をオルタネイト溝ケース402に押し付ける方向に作用する。それぞれのスピリングはプッシュピン401とガイド軸303のフランジの動作と干渉しないだけの十分な径を持っている。
【0013】
この機構部の動作を説明するため、
図5のA−A部から展開した模式的な構造を
図6に示す。この図では円筒半径方向による円周方向長さの違いを無視している。またオルタネイトスプリング404はロックピン403だけを付勢していることを表現するため、実際の展開図とは異なる表示になっている。この図において座標系yは
図5と共通で、θは
図5のy軸回り回転に相当する。プッシュピン401は、円周方向均等に6つの凸部があり、ピンの端面は各凸部中央が頂点となるような6波長分の三角波形状になっている。一方でロックピン403は円周方向均等に3つの凸部があり、ピンの端面はそれら凸部の一方の端が頂点となるような6波長分の三角波形状を持っている。オルタネイト溝ケース402の内側にはプッシュピン401がy方向にだけスライドできるようにプッシュピンの凸部にあわせた溝が切られている。オルタネイト溝ケース402のロックピン403側端面は、6波長分の鋸波状になっていて、120度毎に切込みが入っている。この切込みのy軸方向深さはhである。溝はプッシュピン401の6つの凸部が、オルタネイト溝ケース402の切込み部および端面が鋸波によって最も削られた1/4波長部分をスライドする位置に作られている。
【0014】
この図の状態でロックピン403とオルタネイト溝ケース402を組み合わせると、ロックピン403の凸部はプッシュピン401の凸部より高いため、オルタネイト溝ケース402の切込み部と噛み合う。図示されていないスライダスプリング304の力により、プッシュピン401は、ガイド軸303のフランジがロックピン403の端部と接触するy位置まで相対的に移動し停止する。今、プッシュピン401を押し込むと、ロックピン403はプッシュピン401との接触により、−y方向に移動しながらオルタネイトスプリング404を押し縮める。ロックピン403がオルタネイト溝ケース402と噛み合わない位置まで移動すると、ロックピン403はオルタネイトスプリング404の+y方向押し込みの力とプッシュピン401の端面との接触により+y方向に滑るとともに+θ方向へ回転する。ロックピン403の凸部はオルタネイト溝ケースの鋸波状端面に乗り上げ、さらに+y方向と+θ方向にすべり回転し、オルタネイト溝ケースの鋸波と噛み合った位置で停止する。プッシュピン401は押し込みを止めるとガイド軸303のフランジがロックピンの端面に接触するまで+y方向に移動するが、これは最初にロックピンがオルタネイト溝ケースの切込み部と噛み合っていたところから図中h分だけ−y方向に縮んだ位置である。
再度プッシュピン401を−y方向に押し込むと、ロックピン403はオルタネイト溝ケース402の切込み部に噛み合って停止する。これらの動作によりプッシュピン401が押し込み動作を行う毎にその停止位置がy方向にhの幅を持って変更することになる。よって
図2〜
図4で説明したとおりフィンガは一つのアクチュエータの動きだけでワークへの接近・離脱と把持・解放を行うことが可能となる。
【0015】
図1に示した概要図では、弾性変形するフィンガの傾斜部分にローラが接触することにより把持動作が行われているが、スライダ部がフィンガ基部に対して相対的に移動する変位を把持動作に変換する何らかのリンク機構によって把持動作を行わせてもよい。
オルタネイト動作機構部
4の構成例は
図5に示した通りであるが、これ以外にも既存のハート状カム方式やラチェットカム方式を使って実現する方法も考えられる。
【0016】
(第2実施例)
上記第1実施例では2組のフィンガとローラによる把持動作としたが、これらを3組以上にした構成も考えられる。3組のフィンガとローラによる第2実施例を
図7に示す。
この第2実施例の把持機構は、円筒状ワーク7の長手方向を把持する場合に適した構成である。スライダブロック204に120度毎にローラホルダ201a〜c、ローラ206a〜c(201cと206cは図では隠れた位置にある)が取り付けられていて、そこから伸びるスライダ202a〜cにスライドできるように保持されたフィンガ基部
3にフィンガ101、102、103が同様に取り付けられている。
第2実施例の動作は、
図1で示した第1実施例の概要図と同様に、スライダ駆動用軸203に連結された図示されないアクチュエータが押し込み動作を行うたびにフィンガ基部
3の端部が図示されないストッパに接触し、オルタネイト動作機構部
4がフィンガ基部
3とスライダブロック
2の相対位置を変更し、ワークの把持と解放を行う。
上記第1実施例、第2実施例では、それぞれ2組のフィンガとローラ、3組のフィンガとローラで把持機構を構成したが、必要に応じて4組以上で構成することも可能である。
【0017】
(本発明の把持機構をマイクロトランスファプレスへ応用した応用例)
本発明の把持機構をマイクロトランスファプレスに応用したときのマイクロトランスファプレスの全体概要図を
図8に示す。これは図示されていない4連のマイクロトランスファプレスに金型8a〜dが組み込まれているときに、トランスファ装置1a〜dがそれぞれ隣り合った金型の間のワーク搬送を行う状況を示している。ここでは全トランスファ装置をそれぞれx,y,z方向に一斉に移動させるための駆動機構10、6、9が備えられており、プレス加工と同期したトランスファ動作を行う構造になっている。これらの機構は独立した制御機構を有するものでも実現できるが、通常のトランスファプレスにあるトランスファバーのように、トランスファプレス駆動用のメインモータからリンク機構を介して同期動作する機構を構築しても良い。
各トランスファ装置には本発明である把持装置
Sがそれぞれあり、フィンガ駆動アクチュエータ6の動作に伴いフープ材11から供給され金型8a〜dに順次設置されたワーク7a〜dに一斉にフィンガを伸ばして把持、ピックアップ用アクチュエータ9によりワークを持ち上げ、金型のガイドピンとの干渉を避けるためにフィンガ駆動アクチュエータ6を戻してワークを退避、搬送用アクチュエータ10によりx方向に搬送、再びフィンガ駆動アクチュエータ6により設置位置上空へワークを挿入、ピックアップ用アクチュエータ9によりワークを設置、フィンガ駆動アクチュエータを戻すことによりワークを解放、搬送用アクチュエータにより元へ復帰という動作をとる。トランスファ装置1dによって搬送されたワークは図示されないベルトコンベアによって他の製造工程場所に運ばれる。