(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2支持部材は、前記作業者が腰部に装着している腰ベルトに固定される腰ベルト固定部を、腰部側の端部に有することを特徴とする請求項1に記載の作業サポート装置。
前記第2支持部材は、非伸縮性素材によって作製された非伸縮性部材と、繰り出された前記非伸縮性部材を、その全長を縮める方向に付勢するリール部とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業サポート装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置は作業者を囲む大掛かりな構造であるため、装置の運搬や設置に時間を要するとともに使用可能な現場が限られてしまうという問題があった。また、特許文献2の装置は簡単な構成ではあるが、棒状の補助部材のみで頭部を支えることとなり、頭部の位置が定まり難く不安定になり易いという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成を簡素化しつつも頭部を安定して支えられる上向き作業のサポート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため、本発明は、作業者に装着され、前記作業者の上半身が後方に傾倒された上向き姿勢での作業負担を軽減する作業サポート装置であって、前記作業者の後頭部を後方から支持する頭部支持部と、前記頭部支持部と前記作業者の背中に配置される背当て部のそれぞれに接続され、前記頭部支持部を所定位置に位置付ける第1支持部材と、前記頭部支持部から前記作業者の前面側を通って腰部で固定され、前記頭部支持部への荷重を前記腰部へ伝達する第2支持部材とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、作業者の背中側に配置された第1支持部材によって、頭部支持部が所定位置に配置される。そして、作業者の前面側に配置された第2支持部材によって、頭部支持部への荷重が作業者の体の前面を経由して腰部へと伝達される。これにより、作業者の頭部からの荷重を、作業者の背中と腰部とに分散させることができ、構成を簡素化しつつも上向き作業時における頸部への負担を軽減することができる。また、第1支持部材と第2支持部材が作業者の背面側と前面側と分かれて配置されているので、頭部を安定して支持することができる。
【0010】
本発明の作業サポート装置において、前記第2支持部材が、前記作業者が腰部に装着している腰ベルトに固定される腰ベルト固定部を、腰部側の端部に有する場合には、作業者が通常装着している腰ベルトや安全帯を第2支持部材の固定に使用でき、構成の一層の簡素化が図れる。
【0011】
本発明の作業サポート装置において、前記第2支持部材の少なくとも一部が伸縮性を有する伸縮素材によって作製されている場合には、構成の一層の簡素化が図れる。
【0012】
本発明の作業サポート装置において、前記第2支持部材が、非伸縮性素材によって作製された非伸縮性部材と、繰り出された前記非伸縮性部材を、その全長を縮める方向に付勢するリール部とを有する場合には、リール部によって頭部支持部を適切な力で腰部側に引き寄せることができる。
【0013】
本発明の作業サポート装置において、前記作業者の肩部付近で、前記第2支持部材の途中部分を係止する係止部を有する場合には、第2支持部材が頭部支持部から肩部付近を通って胸部へと案内されるので、第2支持部材が上向き作業時の邪魔になり難く、作業性を高めることができる。
【0014】
本発明の作業サポート装置において、前記第1支持部材が、弾性によって前記頭部支持部を前方へ付勢する弾性部材で作製されている場合には、第1支持部材によっても作業者の頭部を前方へ付勢できるので、第2支持部材に関する設計の自由度が増す。さらに、第1支持部材が弾性部材で作製されていることから、構成を一層簡素化することができる。
【0015】
本発明の作業サポート装置において、前記第1支持部材が、上端が前記頭部支持部に取り付けられ、下端が前記背当て部に対して回動可能に取り付けられた棒状若しくは板状の支持材と、前記支持材の上端部を前方へ付勢する付勢部材とを有する場合には、第1支持部材によっても作業者の頭部を前方へ付勢できるので、第2支持部材に関する設計の自由度が増す。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る作業サポート装置によれば、頭部支持部と背当て部の間に第1支持部材が配置され、頭部支持部と腰部の間に荷重を伝達する第2支持部材が配置されるので、作業者の頭部の重量を作業者の背中と腰部とに分散させることができるし、頭部を安定して支持できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、作業サポート装置1は、背部パッド2、胸部パッド3、胸部ベルト4、頭部支持部5、第1支持部材6、第2支持部材7、係止金具8、及び、肩部ベルト9を有している。
【0019】
背部パッド2は、作業者の背中上部に配置される緩衝部材であり、背当て部に相当する。この背部パッド2は、例えば略矩形状のクッション材をメッシュ素材の袋体で包むことで作製される。胸部パッド3は、作業者の胸部に配置される緩衝部材であり、背部パッド2と同様に、略矩形状のクッション材をメッシュ素材の袋体で包むことで作製される。
【0020】
胸部ベルト4は、背部パッド2と胸部パッド3とを、作業者の左右両側部で連結するベルト状の部材である。この胸部ベルト4には、長さを調節するためのアジャスター(図示せず)が設けられている。アジャスターで胸部ベルト4を作業者の体形に適した長さに調節することにより、背部パッド2及び胸部パッド3は、作業者に密着させた状態で保持される。
【0021】
頭部支持部5は、作業者の後頭部を、後方からヘルメット越しに支持する部分であり、ヘッドレストと同等の機能を発揮する。本実施形態の頭部支持部5は、平面視略コ字状に屈曲させた樹脂板によって作製されており、主板部5a及び側板部5bを有している。
【0022】
主板部5aは横長矩形状の板材であり、その横幅は作業者が被るヘルメットの直径よりも多少大きく定められている。この主板部5aには、上下方向に細長い4つのスリット5cが横並びに設けられている。これらのスリット5cは、第2支持部材7が有する伸縮ベルト7aを取り付けるために設けられている。例えば、各スリット5cを用いて伸縮ベルト7aを主板部5aの前面、背面、前面の順に通すことで、伸縮ベルト7aが頭部支持部5に取り付けられる。
【0023】
第1支持部材6は、頭部支持部5を所定位置に位置付けるための部材であり、頭部支持部5と背部パッド2のそれぞれに接続される。本実施形態の第1支持部材6は、上端部が頭部支持部5に取り付けられ、下端部が背部パッド2に取り付けられた縦長矩形状の金属板によって構成されている。この第1支持部材6は弾性を有しており、後頭部からの押圧力が頭部支持部5に作用すると後方へ撓み変形する。すなわち、頭部支持部5は、後頭部からの押圧力が高くなるほど後方へ移動され、押圧力が小さくなると戻り方向に変形する。このように、頭部支持部5は、弾性部材である第1支持部材6の弾性によって前後方向へ移動される。
【0024】
なお、第1支持部材6に関し、剛性を高くし過ぎるとかえって作業者の頸部に過度な負担を掛けてしまうという知見を得ている。そこで、本実施形態では、作業者が上を向く程度の力で撓む程度の剛性とされた金属板を、第1支持部材6に使用している。なお、本実施形態では、第1支持部材6として弾性を有する金属板を用いているが、頭部支持部5を前方へ付勢できれば他の素材を用いてもよい。例えば、FRPや樹脂によって棒状や板状に形成された弾性材を用いてもよい。
【0025】
第2支持部材7は、長手方向に伸縮可能なベルト状の部材であり、頭部支持部5から作業者の前面側を通って腰部で固定される。本実施形態の第2支持部材7は、伸縮ベルト7a、バックル7b、及び、連結バンド7cを有している。
【0026】
伸縮ベルト7aは、全体が伸縮可能なベルト状の部材であり、本実施形態では伸縮素材としての繊維状ゴムで作製されている。この伸縮ベルト7aは、長手方向の中間部分が頭部支持部5の主板部5aに取り付けられているため、頭部支持部5の左右からほぼ同じ長さで垂れ下がっている。なお、
図2に拡大して示すように、伸縮ベルト7aにはアジャスター7dが設けられている。このアジャスター7dによって伸縮ベルト7aの長さを調節できる。なお、伸縮ベルト7aの長さを調節する部材としては、アジャスター7dに限らず、バックル、角カン、リュックカン等を用いてもよい。
【0027】
バックル7b及び連結バンド7cは、作業者が装着している安全帯10に対して伸縮ベルト7aを着脱可能に固定するための部分である。
図1に示すように、バックル7bは、伸縮ベルト7aと連結バンド7cとの間に設けられている。本実施形態のバックル7bは、いわゆる差し込み式のものが用いられている。すなわち、バックル7bは、伸縮ベルト7aの左右両端に取り付けられたオス側バックル7eと、連結バンド7cの両端に取り付けられたメス側バックル7fとを有している。
【0028】
そして、
図2に拡大して示すように、本実施形態の連結バンド7cは、リング金具10aを介して安全帯10のバックル10bに取り付けられている。このため、オス側バックル7eをメス側バックル7fに挿入すると、伸縮ベルト7aと連結バンド7cとが連結され、第2支持部材7の下端が安全帯10の腰ベルトに固定される。このため、バックル7b、連結バンド7c、及び、リング金具10aは、腰ベルト固定部に相当する。そして、安全帯10が作業者の腰部に装着されていることから、伸縮ベルト7aの収縮力により、頭部支持部5を作業者の腰部側へ引き寄せる力が作用する。
【0029】
係止金具8は、第2支持部材7の途中の部分を作業者の肩部付近で係止する部材であり、係止部に相当する。肩部ベルト9は、係止金具8を背部パッド2に取り付けるためのベルト状部材である。この肩部ベルト9は、背部パッド2の左上端と右上端のそれぞれに取り付けられており、その先端には係止金具8が取り付けられている。係止金具8は、例えば扁平な長方形状の金具によって構成され、内側の空間に伸縮ベルト7aが挿通されている。この係止金具8は、肩部ベルト9によって位置が規制され、作業者の肩部付近に位置付けられる。
【0030】
図3は、作業者が前述の作業サポート装置1を装着した状態を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図3に示すように、作業サポート装置1の装着に際しては、背部パッド2を作業者の背部に、胸部パッド3を作業者の胸部に当て、胸部ベルト4を締め込む。これにより、背部パッド2と胸部パッド3が作業者の上半身に固定される。また、頭部支持部5は、作業者が被っているヘルメットHMの後頭部に対応する部分を後方から支持する。
【0031】
各オス側バックル7eを対応するメス側バックル7fに挿入して固定し、アジャスター7dを操作して伸縮ベルト7aの弛みを取ると、係止金具8が引っ張られて作業者の肩部付近に位置付けられる。伸縮ベルト7aの長さを調整するに際し、アジャスター7dは、作業者の前面側に配置されるので目視しながら調節ができ、作業性が良好である。
【0032】
図4は、作業サポート装置1を装着した作業者が上向き姿勢をとった様子を説明する図である。このように上向き姿勢をとることで、作業者の上半身は腰部の位置で角度θbだけ後方に屈曲される。同様に、作業者の頭部は角度θhだけ後方に屈曲される。
【0033】
これに伴い、第1支持部材6は後頭部からの押圧力によって後方に撓む。また、第2支持部材7は作業者の腰部を起点に伸長される。これにより、頭部支持部5に対する荷重の一部は、第1支持部材6及び背部パッド2を介して作業者の背中上部に伝達される。そして、荷重の残りは、第2支持部材7及び安全帯10の腰ベルトを介して作業者の腰部に伝達される。すなわち、頭部支持部5に対する荷重が作業者の背中と腰部に分散して伝達される。
【0034】
また、頭部支持部5には、第1支持部材6の弾性力と第2支持部材7の収縮力とが作用し、後頭部を支持する力が高められる。その結果、作業者の頸部が負担する荷重を抑えることができ、頸部の疲労が軽減される。加えて、頭部支持部5を作業者の背面側から第1支持部材6が支持し、前面側から第2支持部材7が支持しているので、前後方向からの支持力の大きさが釣りあい、頭部支持部5を安定して支持することができる。
【0035】
さらに、横長の主板部5aにおける左右両側から伸縮ベルト7aを引き出し、この伸縮ベルト7aを作業者の腰部(安全帯10)に固定しているので、左右の伸縮ベルト7aで頭部支持部5を引き寄せることができる。これにより、頭部支持部5の左右方向へのふらつきを抑制でき、頭部支持部5を安定して支持することができる。
【0036】
次に、頸部に対する負担軽減効果を確認する確認試験について説明する。この確認試験では、上半身の屈曲角度θbと頭部の屈曲角度θhとを変化させて頸部への負担を測定した。具体的には、頸部における胸鎖乳突筋の位置に複数の電極を貼付し、電極の電位(表面筋電位)を記録した。筋電位の記録には、S&ME社製の製品名BioLogを用いた。そして、筋電位の大きさをレベル0〜レベル6の筋活動レベルで整理した。
【0037】
なお、筋活動レベルとは、胸鎖乳突筋の活動状態を示す指標であり、測定された表面筋電位の大きさを示す。この確認試験では、活動状態が最も低い状態をレベル0とし、最も高い状態をレベル6としている。そして、レベルが高くなるほど頸部への負担が大きくなる。
【0038】
この確認試験における第1支持部材6には、厚さ0.5mmのSUS板を3枚重ねた積層板を用いた。積層板を用いた理由は、積層するSUS板の枚数によって剛性を調整できるからである。積層板を用いることにより、装着者の頸部の力に適した剛性の第1支持部材6を容易に選択できる。
【0039】
また、第2支持部材7には、長さが500mm,幅が50mmのゴムバンドを使用した。
図5に示すように、このゴムバンドは、張力に対する伸び率が非線形の特性を備えたものである。なお、ゴムバンドの長さは、直立姿勢(屈曲角度θb=0°,屈曲角度θh=0°)の装着者に対し、弛みがなく伸び率が0%となるように調節した。
【0040】
測定に際し、上半身の屈曲角度θbは0°、10°、15°の3水準とし、頭部の屈曲角度θhは0°、10°、20°、30°、40°の5水準とした。なお、各屈曲角度θb,θhは傾斜計で計測した。そして、(1)作業サポート装置1の非装着状態、(2)第1支持部材6のみによる支持状態、及び、(3)第1支持部材6と第2支持部材7の併用による支持状態のそれぞれで、上記3水準と5水準の組み合わせによる測定を行った。
【0041】
確認試験の結果を
図6に示す。ここで、
図6(a)は非装着状態の試験結果を、
図6(b)は第1支持部材6のみの試験結果を、
図6(c)は第1支持部材6と第2支持部材7を併用した際の試験結果をそれぞれ示す。
【0042】
これらの図において、縦軸は筋活動レベル、横軸は頭部の屈曲角度θhである。また、図中実線は、上半身の屈曲角度θb=0°での結果を、一点鎖線はθb=10°での結果を、点線はθb=15°での結果をそれぞれ示す。
【0043】
図6(a)に示すように、作業サポート装置1の非装着状態では、頭部の屈曲角度θhが大きくなるほど、筋活動レベル(頸部への負担)が大きくなることが確認された。同様に、上半身の屈曲角度θbが大きくなるほど、筋活動レベルが大きくなることが確認された。
【0044】
上半身の屈曲角度θb=0°,頭部の屈曲角度θh=20°のケースA1と、上半身の屈曲角度θb=10°,頭部の屈曲角度θh=10°のケースA2とを比較する。
図4から明らかなように、ケースA1とケースA2のいずれも、地表からの鉛直線Vを基準とする頭部の屈曲角度は20°で等しい。しかし、上半身と頭部の両方を10°後方に傾けたケースA2は筋活動レベルが1.5程度であり、頭部だけを20°後方に傾けたケースA1は筋活動レベルが0.7程度であった。
【0045】
また、屈曲角度θb=10°,屈曲角度θh=20°のケースA3と、屈曲角度θb=15°,屈曲角度θh=10°のケースA4とを比較する。この場合、鉛直線Vからの頭部の屈曲角度は、ケースA3が30°、ケースA4が25°であり、ケースA4の方が小さい。それにも拘わらず、ケースA4の筋活動レベルは2.4程度であり、ケースA3の筋活動レベルよりも高くなっている。この関係は、屈曲角度θb=10°,屈曲角度θh=30°のケースA5と、屈曲角度θb=15°,屈曲角度θh=20°のケースA6との間でも同様である。
【0046】
これらの結果より、頸部のみを後方へ反らすよりも、上半身を後方へ反らした上で頸部を後方へ反らした方が、頸部への負担が大きくなることが確認された。
【0047】
なお、屈曲角度θb=10°,屈曲角度θh=40°のケースA7、屈曲角度θb=15°,屈曲角度θh=30°のケースA8、屈曲角度θb=15°,屈曲角度θh=40°のケースA9のいずれも、筋活動レベルが5.5以上と最高値を示した。このことから、上半身と頭部とを一定角度以上後方へ反らすと、頸部への負担が最大になることが確認された。
【0048】
図6(b)に示すように、第1支持部材6のみを使用した状態では、上半身の屈曲角度θbに応じて筋活動レベルが変動するものの、頭部の屈曲角度θhによる筋活動レベルの変化は非装着状態よりも各段に小さくなった。
【0049】
例えば、屈曲角度θb=0°の場合、筋活動レベルは、屈曲角度θbに拘わらず0.5程度で一定であった。そして、屈曲角度θb=10°の場合、筋活動レベルは、屈曲角度θhに拘わらず1.0付近であった。しかも、若干ではあるが、屈曲角度θhが大きくなるに連れて筋活動レベルが低下する傾向も見られた。また、屈曲角度θb=15°の場合、筋活動レベルは、屈曲角度θh=30°で1.0程度と多少のばらつきは見られたが、他のケースでは2.0弱で揃っていた。
【0050】
これらの結果より、第1支持部材6を使用することで、頭部の屈曲に起因する頸部の負担を軽減できることが確認された。しかし、頸部には、上半身の屈曲に起因する負担が残ることも確認された。
【0051】
図6(c)に示すように、第1支持部材6と第2支持部材7を併用した状態では、何れのケースでも筋活動レベルが0.5程度であり、直立状態での筋活動レベルと同程度であることが確認された。すなわち、頸部への負担を直立状態と同程度に抑えられることが確認された。
【0052】
ここで、第1支持部材6と第2支持部材7を併用することで、頸部への負担を抑制できた要因について考察する。
【0053】
まず、装着者(作業者)の頭部の荷重を背中上部と腰部とに分けて伝達している点が要因として挙げられる。すなわち、頭部支持部5に作用する頭部からの荷重は、その一部が第1支持部材6及び背部パッド2を介して装着者の背中上部に伝達され、残りの荷重が第2支持部材7及び安全帯10の腰ベルトを介して装着者の腰部へ伝達される。このように、背中上部と腰部という離れた部位に荷重が分散されたため、頸部への負担が軽減されたと考えられる。
【0054】
そして、第1支持部材6は荷重を装着者の背面で伝達し、第2支持部材7は荷重を装着者の前面で伝達している点も要因として挙げられる。すなわち、装着者の背面と前面のそれぞれで頭部の荷重を伝達しているので、伝達される荷重を装着者の前後方向にも分散させることができる。このように、装着者の頸部が前後方向にも支えられることでも、頸部の負担が軽減されたと考えられる。
【0055】
また、第2支持部材7は伸縮性を有しており、長手方向に収縮することで頭部支持部5を装着者の腰部側へ引き寄せている点も要因として挙げられる。すなわち、頭部支持部5を装着者の腰部側へ引き寄せていることから、第2支持部材7は、継続して上向き作業を行っている際に、胸鎖乳突筋等の筋肉に代わって頭部からの荷重を負担したと考えられる。
【0056】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。例えば、次のように構成してもよい。
【0057】
第2支持部材7に関し、前述の実施形態ではその全体が伸縮可能な伸縮ベルト7aで構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、
図7に示すように、第2支持部材7を、非伸縮性素材で作製された第1ベルト部材7gと、ゴムバンド等の伸縮素材で作製された第2ベルト部材7hとから構成し、第1ベルト部材7gの途中に第2ベルト部材7hを取り付けてもよい。また、
図8に示すように、第2支持部材7が有する伸縮部分をスプリングSPによって構成してもよい。
【0058】
また、第2支持部材7に関し、前述の実施形態では、安全帯10の腰ベルトに取り付けられるものを例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、サスペンダーが有する取り付け金具を第2支持部材7の下端に取り付けてもよい。この場合、取り付け金具が腰ベルト固定部に相当する。また、
図7や
図8に示すように、第2支持部材7の下端を腰ベルト11に縫い付けてもよい。
【0059】
さらに、
図9(a)に示すように、第2支持部材7に関し、非伸縮性のベルト状部材7gと、繰り出されたベルト状部材7gを巻き取るリール部20とを備える構成としてもよい。この構成では、頭部支持部5の左右両側から垂れ下がったベルト状部材7gの両端にメス側バックル7fを取り付けている。一方、腰ベルト11には、左右一対のリール部20を取り付けている。
【0060】
図9(b)に示すように、リール部20は、ベルト状部材7gを巻き取るリール21をケース22内に有している。このリール21の軸には、図示しない渦巻きバネによって回転力が付与される。すなわち、ベルト状部材7gが外部へと繰り出されることにより、渦巻きバネが締め付け方向へ巻き付けられ、回転力が蓄えられる。蓄えられた回転力は、繰り出されたベルト状部材7gについて、その全長を縮めるための付勢力となる。
【0061】
繰り出されたベルト状部材7gが解放されると、渦巻きバネが戻り方向へ変形し、リール21を回転させる。リール21の回転により、ベルト状部材7gの基端部がリール21の軸に巻き取られる。リール21側のベルト状部材7gにはオス側バックル7eが取り付けられているため、オス側バックル7eをメス側バックル7fに取り付けた状態でベルト状部材7gを解放すると、渦巻きバネによってベルト状部材7gの全長が縮められ、第2支持部材7に適切な張力を与えることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、渦巻きバネを動力としてベルト状部材7gをリール側に付勢しているが、他の動力を用いてもよい。例えば、モーターを動力としてベルト状部材7gをリール側に付勢してもよい。また、非伸縮性のベルト状部材7gを、その全長を縮めるように付勢ものであれば、リール部20に代えて用いることができる。
【0063】
また、本実施形態では、ベルト状部材7gの繰り出し及び巻き取りを行えなくするロック機構23をリール部20に設けている。このロック機構23は、例えば、リール21とともに回転する歯車23aと、この歯車23aに対して進退可能に設けられたロックピン23bとを有している。そして、ロックピン23bを押し込んで歯車23aに噛み合わせることでリール21が固定され、ベルト状部材7gの繰り出しや巻き取りが行えなくなる。一方、ロックピン23bを歯車23aから退避させることでリール21が回転可能になり、ベルト状部材7gの繰り出し及び巻き取りが可能となる。
【0064】
このようなロック機構23を設けることで、ベルト状部材7gが所定長さで固定され、これに伴って頭部支持部5が固定される。これにより、上向き作業が長時間に亘って行われても、頭部支持部5のふらつきが防止され、作業者の頸部への負担を軽減できる。
【0065】
第1支持部材6に関し、前述の実施形態では、後頭部からの押圧力によって板バネのように撓む金属板を例示したが、この構成に限定されない。例えば、
図10に示すように、第1支持部材6を棒状部材6aとU字状板バネの付勢部材6bとによって構成し、ヒンジ部6c及びベース板6dを介して棒状部材6aの下端を背部パッド2に対して回動可能に取り付け、かつ、付勢部材6bによって棒状部材6aの上端部を前方に付勢してもよい。なお、付勢部材6bは、U字状板バネに限定されず、コイルバネやゴム等を用いることができる。このように構成しても、前述の実施形態と同様の作用効果を奏する。また、棒状部材6aに代えて板状部材を用いてもよい。すなわち、棒状や板状の支持材を用いることができる。
【0066】
また、前述の実施形態では第1支持部材6が頭部支持部5を前方に付勢する機構としているが、これに限らず、第1支持部材6は頭部支持部5の位置を固定するのみで、第2支持部材7のみで頭部支持部5を前方に付勢する構成であっても、上向き作業時の作業者の負担を軽減することは可能である。要するに、第1支持部材6は、頭部支持部5を作業者の後頭部に位置付けるものであればよい。なお、第1支持部材6によって頭部支持部5を前方に付勢すると、第2支持部材7が負担する荷重が減少する。これにより、第2支持部材7の制約を緩和でき、設計の自由度を増やすことができる。
【0067】
背部パッド2及び胸部パッド3に関し、前述の実施形態では、これらのパッド2,3を胸部ベルト4で接続していたが、この構成に限定されない。例えば、背部パッド2及び胸部パッド3をベストに取り付けて一体化してもよい。
【0068】
また、前述の実施形態では、背部パッド2の左右上端に肩部ベルト9を取り付け、肩部ベルト9の先端に設けられた係止金具8により、第2支持部材7を作業者の肩部付近を経由させてから胸部へ案内していたが、頭部支持部5から直接作業者の胸部へ案内してもよい。