特許第5959106号(P5959106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧 ▶ 一般財団法人NHKエンジニアリングシステムの特許一覧

<>
  • 特許5959106-受信装置 図000005
  • 特許5959106-受信装置 図000006
  • 特許5959106-受信装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959106
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20160719BHJP
   H04N 5/44 20110101ALI20160719BHJP
【FI】
   H04B1/10 L
   H04N5/44 K
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-203391(P2012-203391)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-60531(P2014-60531A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】591053926
【氏名又は名称】一般財団法人NHKエンジニアリングシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】小森 智康
(72)【発明者】
【氏名】清山 信正
(72)【発明者】
【氏名】今井 篤
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰宏
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−518966(JP,A)
【文献】 特開平03−143030(JP,A)
【文献】 特開平02−174344(JP,A)
【文献】 特開平08−023287(JP,A)
【文献】 特開2008−060774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
H04N 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した両側波帯振幅変調信号を復調して、上側波帯に対する第1信号および下側波帯に対する第2信号を抽出する検波部と、
前記検波部が抽出した前記第1信号および前記第2信号それぞれを帯域ごとに分割して複数の帯域信号を生成する帯域分割部と、
前記帯域分割部が生成した前記複数の帯域信号から、前記第1信号および前記第2信号間での前記帯域ごとの同相成分の信号を抽出する同相成分抽出部と、
前記第1信号と前記同相成分抽出部が抽出した各同相成分の信号との差分を第1無相関信号として抽出するとともに、前記第2信号と前記各同相成分の信号との差分を第2無相関信号として抽出する無相関信号抽出部と、
前記各同相成分の信号ならびに前記無相関信号抽出部が抽出した前記第1無相関信号および前記第2無相関信号のレベルを調整するゲイン調整部と、
前記ゲイン調整部がそれぞれ前記レベルを調整した、各同相成分の信号ならびに第1無相関信号および第2無相関信号を加算して出力信号を生成する合成部と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記同相成分抽出部は、前記帯域ごとに学習同定法による適応フィルタ処理を実行することによって、前記複数の帯域信号から、前記第1信号および前記第2信号間での前記帯域ごとの前記同相成分の信号を抽出する、
ことを特徴とする請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記検波部が抽出した前記第1信号および前記第2信号の差分に基づいて雑音成分を解析する雑音解析部をさらに備え、
前記ゲイン調整部は、前記雑音解析部による前記雑音成分の解析結果に基づいて前記レベルを調整する、
ことを特徴とする請求項1または2いずれか記載の受信装置。
【請求項4】
前記雑音解析部による前記雑音成分の解析結果に応じた、前記ゲイン調整部のゲイン設定値を記憶する記憶部と、
前記記憶部から前記ゲイン設定値を読み出して、前記ゲイン設定値を前記ゲイン調整部に設定する制御部と、
をさらに備え、
前記ゲイン調整部は、前記制御部が設定した前記ゲイン設定値にしたがって前記レベルを調整する、
ことを特徴とする請求項3記載の受信装置。
【請求項5】
前記雑音解析部による前記雑音成分の解析結果に基づいて、前記合成部が生成した前記出力信号のフィルタ処理を行うフィルタ部、
をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両側波帯を含む振幅変調信号(両側波帯振幅変調信号)を受信し、この両側波帯振幅変調信号から上側波帯または下側波帯いずれかを抽出して、この抽出した側波帯を復調する受信機が知られている(例えば、特許文献1参照)。搬送波の周波数(搬送波周波数)よりも高い周波数領域において混入する雑音は上側波帯に影響を与え、搬送波周波数よりも低い周波数領域において混入する雑音は下側波帯に影響を与える。よって、上記の受信機は、搬送波周波数を境に、混信が発生する周波数領域と逆側の側波帯を選択して使用することにより、雑音の影響を受けないベースバンド信号を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4440255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上側波帯および下側波帯の両方で混信が発生した場合、上記の方式による受信機は、その雑音を除去することができない。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、両側波帯に混入した雑音を除去または低減する受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である受信装置は、受信した両側波帯振幅変調信号を復調して、上側波帯に対する第1信号および下側波帯に対する第2信号を抽出する検波部と、前記検波部が抽出した前記第1信号および前記第2信号それぞれを帯域ごとに分割して複数の帯域信号を生成する帯域分割部と、前記帯域分割部が生成した前記複数の帯域信号から、前記第1信号および前記第2信号間での前記帯域ごとの同相成分の信号を抽出する同相成分抽出部と、前記第1信号と前記同相成分抽出部が抽出した各同相成分の信号との差分を第1無相関信号として抽出するとともに、前記第2信号と前記各同相成分の信号との差分を第2無相関信号として抽出する無相関信号抽出部と、前記各同相成分の信号ならびに前記無相関信号抽出部が抽出した前記第1無相関信号および前記第2無相関信号のレベルを調整するゲイン調整部と、前記ゲイン調整部がそれぞれ前記レベルを調整した、各同相成分の信号ならびに第1無相関信号および第2無相関信号を加算して出力信号を生成する合成部と、を備える。
【0006】
[2]上記[1]記載の受信装置において、前記同相成分抽出部は、前記帯域ごとに学習同定法による適応フィルタ処理を実行することによって、前記複数の帯域信号から、前記第1信号および前記第2信号間での前記帯域ごとの前記同相成分の信号を抽出する、ことを特徴とする。
[3]上記[1]または[2]いずれか記載の受信装置において、前記検波部が抽出した前記第1信号および前記第2信号の差分に基づいて雑音成分を解析する雑音解析部をさらに備え、前記ゲイン調整部は、前記雑音解析部による前記雑音成分の解析結果に基づいて前記レベルを調整する、ことを特徴とする。
[4]上記[3]記載の受信装置において、前記雑音解析部による前記雑音成分の解析結果に応じた、前記ゲイン調整部のゲイン設定値を記憶する記憶部と、前記記憶部から前記ゲイン設定値を読み出して、前記ゲイン設定値を前記ゲイン調整部に設定する制御部と、をさらに備え、前記ゲイン調整部は、前記制御部が設定した前記ゲイン設定値にしたがって前記レベルを調整する、ことを特徴とする。
[5]上記[3]記載の受信装置において、前記雑音解析部による前記雑音成分の解析結果に基づいて、前記合成部が生成した前記出力信号のフィルタ処理を行うフィルタ部、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明である受信装置によれば、両側波帯に混入した雑音を除去または低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】音声信号で変調して得られた両側波帯振幅変調信号と、この両側波帯振幅変調信号に混入した雑音成分との、周波数に対する信号強度のスペクトルを模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態である受信装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】同実施形態における同相成分抽出部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の一実施形態は、両側波帯(上側波帯および下側波帯)を含む振幅変調信号(両側波帯振幅変調信号)を受信してこの両側波帯振幅変調信号を復調することにより、上側波帯に対する第1信号と、下側波帯に対する第2信号とを抽出し、これら第1信号および第2信号に基づいて雑音成分を除去または低減する受信装置である。本実施形態では、両側波帯振幅変調信号として、従来の変調装置により音声信号で搬送波を振幅変調して得られた信号とする。
【0010】
まず、本実施形態である受信装置が受信する信号について説明する。本実施形態である受信装置が受信する信号は、両側波帯振幅変調信号およびこの両側波帯振幅変調信号に混入した雑音成分である。雑音成分は、外来する妨害波によるノイズ信号の混入、隣接する周波数帯からの信号の混入等により発生する。
図1は、音声信号で変調して得られた両側波帯振幅変調信号と、この両側波帯振幅変調信号に混入した雑音成分との、周波数に対する信号強度のスペクトルを模式的に示す図である。同図に示すように、両側波帯振幅変調信号の周波数スペクトルは、搬送波の信号と、搬送波の周波数よりもベースバンド信号(例えば、音声信号)の周波数だけ高い信号である上側波帯の信号と、搬送波の周波数よりもベースバンド信号の周波数だけ低い信号である下側波帯の信号との、各周波数スペクトルを含む。さらに、搬送波よりも高い周波数領域内に、上側波雑音成分(第1雑音成分)の周波数スペクトルが存在する。また、搬送波よりも低い周波数領域内に、下側波雑音成分(第2雑音成分)の周波数スペクトルが存在する。上側波雑音成分および下側雑音成分は、互いに独立に混入する場合がある。よって、上側波雑音成分および下側雑音成分の周波数帯域および雑音の強度は互いに異なる場合がある。同図は、上側波雑音成分および下側雑音成分が互いに独立していることを示すとともに、上側波雑音成分および下側雑音成分が互いに異なる強度を有し、上側波雑音成分が上側波帯に部分的に混入し、下側波雑音成分が下側波帯に部分的に混入している様子を示している。
【0011】
次に、本実施形態である受信装置の構成について説明する。
図2は、本実施形態である受信装置の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、受信装置1は、制御部10と、検波部20と、雑音解析部30と、記憶部40と、帯域分割部50と、同相成分抽出部60と、第1信号遅延部70Uと、第2信号遅延部70Lと、第1無相関信号抽出部80Uと、第2無相関信号抽出部80Lと、ゲイン調整部90と、合成部100と、フィルタ部110とを備える。ただし、受信装置1は、複数の同相成分抽出部60を備える。よって、本実施形態において、複数の同相成分抽出部60を、同相成分抽出部60−1〜60−n(nは2以上の整数、以下同様。)と記載する。また、複数の同相成分抽出部60を、まとめて同相成分抽出部と呼ぶこともある。
【0012】
また、ゲイン調整部90は、同相成分ゲイン調整部91と、第1無相関信号ゲイン調整部92Uと、第2無相関信号ゲイン調整部92Lとを備える。ただし、ゲイン調整部90は、複数の同相成分ゲイン調整部91を備える。よって、本実施形態において、複数の同相成分ゲイン調整部91を、同相成分ゲイン調整部91−1〜91−nと記載する。また、複数の同相成分ゲイン調整部91を、まとめて同相成分ゲイン調整部と呼ぶこともある。
【0013】
また、第1無相関信号抽出部80Uおよび第2無相関信号抽出部80Lを、まとめて無相関信号抽出部と呼ぶこともある。
【0014】
検波部20は、放送された両側波帯振幅変調波を図示しない受信アンテナで受信することにより得られた両側波帯振幅変調信号を取り込み、この両側波帯振幅変調信号を復調して、上側波帯に対する第1信号および下側波帯に対する第2信号を抽出する。これら第1信号および第2信号には、雑音成分が含まれているものとする。すなわち、第1信号および第2信号間で同相な信号(同相成分信号)をC(ボールド体)、無相関な信号(第1無相関信号、第2無相関信号)をそれぞれU(ボールド体),L(ボールド体)とすると、第1信号U(ボールド体)および第2信号L(ボールド体)は、下記の式(1)で表される。なお、“(ボールド体)”との記載は、その直前の文字がボールド体であることを表し、その文字がベクトルであることを示す。
【0015】
【数1】
【0016】
両側波帯振幅変調信号における両側波帯に雑音成分の一部が重畳される場合、同相成分信号Cは、ベースバンド信号と雑音成分の一部とを含む。また、第1無相関信号U(ボールド体)および第2無相関信号L(ボールド体)は、雑音成分の上記一部を除く部分を含む。
【0017】
検波部20は、第1信号を、帯域分割部50と雑音解析部30と第1信号遅延部70Uとに供給し、第2信号を、帯域分割部50と雑音解析部30と第2信号遅延部70Lとに供給する。
【0018】
雑音解析部30は、検波部20が供給する第1信号および第2信号を取り込み、これら第1信号および第2信号に基づいて雑音成分を解析する。そして、雑音解析部30は、その解析結果に基づいて、ゲイン調整部90に対するゲイン設定値と、フィルタ部110に対するフィルタ係数とを決定し、これらゲイン設定値およびフィルタ係数を記憶部40に記憶させる。ゲイン設定値は、同相成分ゲイン調整部91−1〜91−nそれぞれと、第1無相関信号ゲイン調整部92Uと、第2無相関信号ゲイン調整部92Lとの、それぞれに対するゲイン(利得)を決定するための、ゲイン調整部ごとの設定情報である。つまり、ゲイン設定値は、周波数帯域ごとの設定情報である。ゲインは、例えば、入力信号と出力信号との比をデシベル(dB)で表したものである。各ゲイン設定値は、例えば、“0”から“9”までのいずれかの整数値であり、値が大きいほどゲインが大きいことを示す。また、ゲインが0dBになるゲイン設定値を、中間の値(例えば“5”)とする。
【0019】
具体的に、例えば、雑音解析部30は、第1信号と第2信号との差分信号を生成し、この差分信号に基づいて雑音成分の周波数領域(推定雑音領域)を求める。差分信号は、検波部20が出力した信号に含まれる雑音成分の全部または一部を含む。前記の式(1)によれば、差分信号は、例えば、U(ボールド体)−L(ボールド体)=U(ボールド体)−L(ボールド体)である。そして、雑音解析部30は、第1信号および第2信号それぞれの推定雑音領域における信号(推定雑音信号)に基づいて、雑音成分の性質を判定する。例えば、雑音解析部30は、推定雑音信号から、あらかじめ決定されている所定の時間よりも短い時間で信号強度が所定レベル以上である信号を検出した場合、この検出した信号(検出信号)がパルス性の雑音成分であると判定する。また、例えば、通常の楽音等では、広域成分が低域成分よりも低いレベルである一方、パルス性の雑音では、広域成分が低域成分よりも高いレベルであるという性質を利用し、雑音解析部30は、所定の短時間内で平均レベルよりも大きなレベルを有する広域成分を、パルス性の雑音成分であると判定する。また、例えば、雑音解析部30は、自己回帰誤差(信号を線形予測した場合の残差信号)が大きくなる成分をパルス性雑音成分であると判定する。また、例えば、雑音解析部30は、推定雑音信号から、あらかじめ決定されている所定の周波数範囲よりも広い範囲に渡って略一定の信号強度を有する信号を検出した場合、この検出信号がホワイトノイズ性の雑音成分であると判定する。
【0020】
雑音解析部30は、比較的広い周波数範囲に渡って雑音成分が分布していると判定した場合、つまり、推定雑音信号から検出した信号(検出信号)がパルスノイズでないと判定した場合、検出信号のレベルを小さくするためのゲイン設定値を決定する。例えば、雑音解析部30は、オペレータ(評価者、使用者等)による主観評価に伴う任意のイコライジング操作にしたがって、推定雑音領域に該当する周波数帯域に対するゲインを小さくしたり、また、その推定雑音領域に該当しない周波数領域に対するゲインを大きくしたりして、ゲイン設定値を決定する。または、雑音解析部30は、例えば、検出信号のレベルを一定割合小さくするよう当該ゲイン設定値を決定する。このようにして、雑音解析部30は、同相成分ゲイン調整部91−1〜91−nそれぞれと、第1無相関信号ゲイン調整部92Uと、第2無相関信号ゲイン調整部92Lとに対する各ゲイン設定値を決定し、これらゲイン設定値を記憶部40に記憶させる。
【0021】
また、雑音解析部30は、推定雑音信号から検出された信号がパルスノイズであると判定した場合、検出信号を除去またはこの検出信号のレベルを小さくするための、フィルタ部110に対するフィルタ係数を決定する。例えば、雑音解析部30は、オペレータによる操作にしたがって任意にフィルタ係数を決定する。または、雑音解析部30は、例えば、推定雑音領域と検出信号のレベルとに基づいてフィルタ係数を決定する。雑音解析部30は、決定したフィルタ係数を記憶部40に記憶させる。
【0022】
記憶部40は、同相成分ゲイン調整部91−1〜91−nそれぞれと、第1無相関信号ゲイン調整部92Uと、第2無相関信号ゲイン調整部92Lとに対する各ゲイン設定値を記憶する。また、記憶部40は、フィルタ110に対するフィルタ係数を記憶する。記憶部40は、例えば、半導体記憶装置(例えば、不揮発性メモリ)により実現される。
【0023】
帯域分割部50は、検波部20が供給する第1信号および第2信号を取り込み、これら第1信号および第2信号それぞれを所定の帯域ごとに分割して、複数の帯域信号を生成する。ベースバンド信号が音声信号である場合、帯域分割部50は、例えば、第1信号および第2信号それぞれを固定幅の帯域ごとに分割して、複数の帯域信号を生成する。具体的に、帯域分割部50は、例えば、第1信号を、0Hz以上1.5KHz未満の第1帯域、1.5KHz以上3.0KHz未満の第2帯域、3.0KHz以上4.5KHz未満の第3帯域、4.5KHz以上6.0KHz未満の第4帯域、6.0KHz以上7.5KHz未満の第5帯域、および7.5KHz以上9.0KHz未満の第6帯域に分割して、6つの第1帯域信号を生成する。同様に、帯域分割部50は、第2信号を上記6つの帯域に分割して、6つの第2帯域信号を生成する。以下の説明において、第1帯域〜第6帯域を、0Hz〜1.5KHz、1.5KHz〜3.0KHz、3.0KHz〜4.5KHz、4.5KHz〜6.0KHz、6.0KHz〜7.5KHz、および7.5KHz〜9.0KHzと記載する。なお、帯域分割部50は、上記の例に限らず、さらに細かく(分割数を大きく)帯域を分割してもよいし、非固定幅の帯域で分割してもよい。帯域分割の方法は、設計等により適宜決定される。
【0024】
帯域分割部50は、同一帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を、同相成分抽出部60に供給する。例えば、0Hz〜1.5KHzの第1帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を、同相成分抽出部60−1に供給する。また、1.5KHz〜3.0KHzの第2帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を、同相成分抽出部60−2に供給する。また、3.0KHz〜4.5KHzの第3帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を、同相成分抽出部60−3に供給する。また、4.5KHz〜6.0KHzの第4帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を、同相成分抽出部60−4に供給する。また、6.0KHz〜7.5KHzの第5帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を、同相成分抽出部60−5に供給する。また、7.5KHz〜9.0KHzの第6帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を、同相成分抽出部60−6に供給する。帯域分割部50は、例えば、直交ミラーフィルタ等のフィルタバンクにより実現される。
【0025】
同相成分抽出部60は、帯域分割部50が供給する同一帯域における第1帯域信号および第2帯域信号を取り込み、これら第1帯域信号および第2帯域信号から、第1信号および第2信号間での当該帯域における同相成分の信号(同相成分信号)を抽出する。同相成分抽出部60は、例えば、適応フィルタを用いて学習同定法による適応フィルタ処理を実行することにより、第1帯域信号および第2帯域信号から、第1信号および第2信号間での当該帯域における同相成分信号を抽出する。つまり、同相成分抽出部60−1〜60−nは、前記の式(1)における同相成分信号C(ボールド体)を抽出する。
【0026】
そして、同相成分抽出部60は、当該帯域における同相成分信号を、ゲイン調整部90と第1無相関信号抽出部80Uと第2無相関信号抽出部80Lとに供給する。例えば、同相成分抽出部60−1は、0Hz〜1.5KHzの第1帯域における同相成分信号をゲイン調整部90と第1無相関信号抽出部80Uと第2無相関信号抽出部80Lとに供給する。また、同相成分抽出部60−2は、1.5KHz〜3.0KHzの第2帯域における同相成分信号をゲイン調整部90と第1無相関信号抽出部80Uと第2無相関信号抽出部80Lとに供給する。また、同相成分抽出部60−3は、3.0KHz〜4.5KHzの第3帯域における同相成分信号をゲイン調整部90と第1無相関信号抽出部80Uと第2無相関信号抽出部80Lとに供給する。また、同相成分抽出部60−4は、4.5KHz〜6.0KHzの第4帯域における同相成分信号をゲイン調整部90と第1無相関信号抽出部80Uと第2無相関信号抽出部80Lとに供給する。また、同相成分抽出部60−5は、6.0KHz〜7.5KHzの第5帯域における同相成分信号をゲイン調整部90と第1無相関信号抽出部80Uと第2無相関信号抽出部80Lとに供給する。また、同相成分抽出部60−6は、7.5KHz〜9.0KHzの第6帯域における同相成分信号をゲイン調整部90と第1無相関信号抽出部80Uと第2無相関信号抽出部80Lとに供給する。同相成分抽出部60の詳細については後述する。
【0027】
第1信号遅延部70Uは、検波部20が供給する第1信号を取り込み、帯域分割部50および同相成分抽出部60それぞれの処理時間を加算して得られる合計処理時間分遅延させた第1信号を出力する遅延回路である。これにより、第1信号遅延部70Uが出力する第1信号と、同相成分抽出部60が出力する同相成分信号とは、同一時刻の信号として第1無相関信号抽出部80Uに供給される。
【0028】
同様に、第2信号遅延部70Lは、検波部20が供給する第2信号を取り込み、上記と同一の合計処理時間分遅延させた第2信号を出力する遅延回路である。これにより、第2信号遅延部70Lが出力する第2信号と、同相成分抽出部60が出力する同相成分信号とは、同一時刻の信号として第2無相関信号抽出部80Lに供給される。
【0029】
第1無相関信号抽出部80Uは、同相成分抽出部60−1〜60−nそれぞれが供給する、各帯域の同相成分信号を取り込む。また、第1無相関信号抽出部80Uは、第1信号遅延部70Uが供給する、合計処理時間分遅延された第1信号を取り込む。そして、第1無相関信号抽出部80Uは、同一時刻における、第1信号と全帯域にわたる同相成分信号との差分を第1無相関信号として抽出する。具体的に、第1無相関信号抽出部80Uは、同一時刻における、第1信号から全帯域にわたる同相成分信号を減算した信号を第1無相関信号として抽出する。これにより、第1無相関信号抽出部80Uは、前記の式(1)に示した第1信号U(ボールド体)から同相成分信号C(ボールド体)を差し引いた第1無相関信号Uを得る。第1無相関信号抽出部80Uは、第1無相関信号をゲイン調整部90に供給する。
【0030】
また、第2無相関信号抽出部80Lは、同相成分抽出部60−1〜60−nから各帯域の同相成分信号を取り込む。また、第2無相関信号抽出部80Lは、第2信号遅延部70Lが供給する、合計処理時間分遅延された第2信号を取り込む。そして、第2無相関信号抽出部80Lは、同一時刻における、第2信号と全帯域にわたる同相成分信号との差分を第2無相関信号として抽出する。具体的に、第2無相関信号抽出部80Lは、同一時刻における、第2信号から全帯域にわたる同相成分信号を減算した信号を第2無相関信号として抽出する。これにより、第2無相関信号抽出部80Lは、前記の式(1)に示した第2信号L(ボールド体)から同相成分信号C(ボールド体)を差し引いた第2無相関信号Lを得る。第2無相関信号抽出部80Lは、第2無相関信号をゲイン調整部90に供給する。
【0031】
制御部10は、例えば、Central Processing Unit(CPU)と、このCPUが実行可能な制御プログラムを記憶したメモリとを含んで構成される。CPUは、メモリから制御プログラムを読み込んで実行することにより、制御部10として機能する。制御部10は、同相成分ゲイン調整部91−1〜91−nそれぞれと、第1無相関信号ゲイン調整部92Uと、第2無相関信号ゲイン調整部92Lとに対応する各ゲイン設定値を、記憶部40から読み出す。そして、制御部10は、それら読み出したゲイン設定値を、同相成分ゲイン調整部91−1〜91−nそれぞれと、第1無相関信号ゲイン調整部92Uと、第2無相関信号ゲイン調整部92Lとに設定する。また、制御部10は、フィルタ係数を記憶部40から読み出し、この読み出したフィルタ係数をフィルタ部110に設定する。
【0032】
ゲイン調整部90は、同相成分抽出部60−1〜60−nそれぞれが供給する帯域ごとの同相成分信号を取り込む。また、ゲイン調整部90は、第1無相関信号抽出部80Uが供給する第1無相関信号を取り込み、また、第2無相関信号抽出部80Lが供給する第2無相関信号を取り込む。そして、ゲイン調整部90は、帯域ごとの同相成分信号と、第1無相関信号と、第2無相関信号との各レベルを、記憶部40に記憶されたゲイン設定値にしたがって調整する。
【0033】
同相成分ゲイン調整部91は、同相成分抽出部60が供給する所定帯域における同相成分信号を取り込み、制御部10によって設定されたゲインで同相成分信号のレベルを調整する。例えば、同相成分ゲイン調整部91−1は、同相成分抽出部60−1が供給する、0Hz〜1.5KHzの第1帯域における同相成分信号を取り込み、この同相成分信号のレベルを調整する。また、同相成分ゲイン調整部91−2は、同相成分抽出部60−2が供給する、1.5KHz〜3.0KHzの第2帯域における同相成分信号を取り込み、この同相成分信号のレベルを調整する。また、同相成分ゲイン調整部91−3は、同相成分抽出部60−3が供給する、3.0KHz〜4.5KHzの第3帯域における同相成分信号を取り込み、この同相成分信号のレベルを調整する。また、同相成分ゲイン調整部91−4は、同相成分抽出部60−4が供給する、4.5KHz〜6.0KHzの第4帯域における同相成分信号を取り込み、この同相成分信号のレベルを調整する。また、同相成分ゲイン調整部91−5は、同相成分抽出部60−5が供給する、6.0KHz〜7.5KHzの第5帯域における同相成分信号を取り込み、この同相成分信号のレベルを調整する。また、同相成分ゲイン調整部91−6は、同相成分抽出部60−6が供給する、7.5KHz〜9.0KHzの第6帯域における同相成分信号を取り込み、この同相成分信号のレベルを調整する。
【0034】
第1無相関信号ゲイン調整部92Uは、第1無相関信号抽出部80Uが供給する第1無相関信号を取り込み、制御部10によって設定されたゲインで第1無相関信号のレベルを調整する。
第2無相関信号ゲイン調整部92Lは、第2無相関信号抽出部80Lが供給する第2無相関信号を取り込み、制御部10によって設定されたゲインで第2無相関信号のレベルを調整する。
【0035】
ゲイン調整部90は、レベル調整後の、各帯域における同相成分信号と第1無相関信号と第2無相関信号とを合成部100に供給する。例えば、同相成分ゲイン調整部91−1は、0Hz〜1.5KHzの第1帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を合成部100に供給する。また、同相成分ゲイン調整部91−2は、1.5KHz〜3.0KHzの第2帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を合成部100に供給する。また、同相成分ゲイン調整部91−3は、3.0KHz〜4.5KHzの第3帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を合成部100に供給する。また、同相成分ゲイン調整部91−4は、4.5KHz〜6.0KHzの第4帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を合成部100に供給する。また、同相成分ゲイン調整部91−5は、6.0KHz〜7.5KHzの第5帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を合成部100に供給する。また、同相成分ゲイン調整部91−6は、7.5KHz〜9.0KHzの第6帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を合成部100に供給する。また、第1無相関信号ゲイン調整部92Uは、レベル調整後の第1無相関信号を合成部100に供給する。また、第2無相関信号ゲイン調整部92Lは、レベル調整後の第2無相関信号を合成部100に供給する。
【0036】
合成部100は、ゲイン調整部90が供給する、レベル調整後の、各帯域における同相成分信号と第1無相関信号と第2無相関信号とを取り込む。例えば、合成部100は、同相成分ゲイン調整部91−1が供給する、0Hz〜1.5KHzの第1帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を取り込む。また、合成部100は、同相成分ゲイン調整部91−2が供給する、1.5KHz〜3.0KHzの第2帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を取り込む。また、合成部100は、同相成分ゲイン調整部91−3が供給する、3.0KHz〜4.5KHzの第3帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を取り込む。また、合成部100は、同相成分ゲイン調整部91−4が供給する、4.5KHz〜6.0KHzの第4帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を取り込む。また、合成部100は、同相成分ゲイン調整部91−5が供給する、6.0KHz〜7.5KHzの第5帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を取り込む。また、合成部100は、同相成分ゲイン調整部91−6が供給する、7.5KHz〜9.0KHzの第6帯域におけるレベル調整後の同相成分信号を取り込む。また、合成部100は、第1無相関信号ゲイン調整部92Uが供給する、レベル調整後の第1無相関信号を取り込む。また、合成部100は、第2無相関信号ゲイン調整部92Lが供給する、レベル調整後の第2無相関信号を取り込む。
【0037】
そして、合成部100は、これらレベル調整後の、各帯域における同相成分信号と第1無相関信号と第2無相関信号とを加算して出力信号を生成し、この出力信号をフィルタ部110に供給する。
【0038】
フィルタ部110は、合成部100が供給する出力信号を取り込み、記憶部40に記憶されたフィルタ係数に基づいて、その出力信号のフィルタ処理を行う。言い換えると、フィルタ部110は、雑音解析部30による雑音成分の解析結果に基づいて、出力信号のフィルタ処理を行う。フィルタ部110による出力信号のフィルタ処理によって、出力信号からパルスノイズを除去または低減することができる。
【0039】
図3は、同相成分抽出部60の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、同相成分抽出部60は、信号取得部61Uと、信号取得部61Lと、適応フィルタ部62Uと、適応フィルタ部62Lと、フィルタ係数生成部63Uと、フィルタ係数生成部63Lと、遅延部64Uと、遅延部64Lと、誤差信号検出部65Uと、誤差信号検出部65Lと、同相信号生成部66と、信号出力部67とを備える。
【0040】
帯域分割部50が供給する、所定帯域における時刻tでの第1帯域信号をU(ボールド体)(t)、第2帯域信号をL(ボールド体)(t)とする。
信号取得部61Uは、時刻tにおける第1帯域信号U(ボールド体)(t)を取り込み、この第1帯域信号U(ボールド体)(t)を、適応フィルタ部62Uとフィルタ係数生成部63Uと遅延部64Lとに供給する。
また、信号取得部61Lは、時刻tにおける第2帯域信号L(ボールド体)(t)を取り込み、この第2帯域信号L(ボールド体)(t)を、適応フィルタ部62Lとフィルタ係数生成部63Lと遅延部64Uとに供給する。
【0041】
適応フィルタ部62Uにはフィルタ係数生成部63U、適応フィルタ部62Lにはフィルタ係数生成部63Lが、それぞれ接続されている。適応フィルタ部62Uおよびフィルタ係数生成部63Uと、適応フィルタ部62Lおよびフィルタ係数生成部63Lとのそれぞれは、適応フィルタ処理を実行することにより、適応的にフィルタ係数H(ボールド体)およびフィルタ係数H(ボールド体)を得る。なお、上記の適応フィルタ処理には、例えば、Finite Impulse Response Filter(FIRフィルタ)、Infinite Impulse Response Filter(IIRフィルタ)等の構成を適用することができ、諸条件を考慮して、適応フィルタ処理のフィルタ構成や更新アルゴリズムを適宜選択することができる。
【0042】
適応フィルタ部62Uが、第1帯域信号U(ボールド体)(t)にフィルタ係数H(ボールド体)を畳み込んで得る信号をC(ボールド体)(t)とする。また、適応フィルタ部62Lが、第2帯域信号L(ボールド体)(t)にフィルタ係数H(ボールド体)を畳み込んで得る信号をC(ボールド体)(t)とする。
【0043】
遅延部64Uは、第2帯域信号L(ボールド体)(t)をM/2(Mは適応フィルタ長、以下同様。)だけ遅延させた信号L(ボールド体)’(t)を生成する。また、遅延部64Lは、第1帯域信号U(ボールド体)(t)をM/2だけ遅延させた信号U(ボールド体)’(t)を生成する。
【0044】
適応フィルタ部62Uおよび適応フィルタ部62Lは、信号C(ボールド体)(t)および信号C(ボールド体)(t)を、それぞれ、誤差信号を計算するための誤差信号検出部65Uおよび誤差信号検出部65Lに供給する。また、遅延部64Uおよび遅延部64Lは、信号L(ボールド体)’(t)および信号U(ボールド体)’(t)を、それぞれ、誤差信号検出部65Uおよび誤差信号検出部65Lに供給する。
【0045】
誤差信号検出部65Uは、適応フィルタ部62Uが供給する、信号C(ボールド体)(t)を取り込み、遅延部64Uが供給する信号L(ボールド体)’(t)を取り込む。そして、誤差信号検出部65Uは、信号L(ボールド体)’(t)から信号C(ボールド体)(t)を差し引いた誤差信号e(ボールド体)(t)を生成する。また、誤差信号検出部65Lは、信号U(ボールド体)’(t)から信号C(ボールド体)(t)を差し引いた誤差信号e(ボールド体)(t)を生成する。
【0046】
誤差信号検出部65Uおよび誤差信号検出部65Lは、誤差信号e(ボールド体)(t)および誤差信号e(ボールド体)(t)を、それぞれ、フィルタ係数生成部63Uおよびフィルタ係数生成部63Lにフィードバックする。フィルタ係数生成部63Uおよび適応フィルタ部62Uは、誤差信号e(ボールド体)(t)を用いて、適応アルゴリズムにより逐次適応フィルタ部62Uを更新して、信号C(ボールド体)(t)を生成する。また、フィルタ係数生成部63Lおよび適応フィルタ部62Lは、誤差信号e(ボールド体)(t)を用いて、適応アルゴリズムにより逐次適応フィルタ部62Lを更新して、信号C(ボールド体)(t)を生成する。
【0047】
適応フィルタ部62Uおよび適応フィルタ部62Lは、それぞれ、信号C(ボールド体)(t)および信号C(ボールド体)(t)を、同相信号生成部66にも供給する。同相信号生成部66は、適応フィルタ部62Uおよび適応フィルタ部62Lがそれぞれ供給する信号C(ボールド体)(t)および信号C(ボールド体)(t)を取り込み、信号C(ボールド体)(t)および信号C(ボールド体)(t)を加算する。そして、同相信号生成部66は、その加算結果を0.5倍して得られる同相成分信号C(ボールド体)’(t)を信号出力部67に供給する。つまり、同相成分信号C(ボールド体)’(t)は、(C(ボールド体)(t)+C(ボールド体)(t))/2である。
【0048】
信号出力部67は、同相信号生成部66が供給する同相成分信号C(ボールド体)’(t)を取り込み、この同相成分信号C(ボールド体)’(t)を出力する。
【0049】
同相成分抽出部60は、信号取得部61Uに入力される第1帯域信号U(ボールド体)(第1帯域信号U(ボールド体)=C(ボールド体)+U(ボールド体))、および信号取得部61Lに入力される第2帯域信号L(ボールド体)(第2帯域信号L(ボールド体)=C(ボールド体)+L(ボールド体))に対して、それらの同相成分C(ボールド体)を抽出し、この同相成分信号C(ボールド体)を信号出力部67から出力する。同相成分抽出部60は、例えば、学習同定法(Normalized Least Mean Square Algorithm;NLMSアルゴリズム)を適用した適応フィルタ処理を実行する。このとき、ステップサイズパラメータは、μ=0.01、Δ=0.000001(=1×10−6)である。そして、同相成分抽出部60は、誤差信号e(ボールド体)(t)および誤差信号e(ボールド体)(t)を最小にするよう更新することにより、同相成分信号C(ボールド体)を生成する。適応フィルタ部62Uおよび適応フィルタ部62Lにおけるフィルタ係数H(ボールド体)およびH(ボールド体)は、それぞれ、下記の式(2)および式(3)に表すとおりである。
【0050】
【数2】
【0051】
【数3】
【0052】
以上詳述したとおり、本発明の一実施形態である受信装置1は、受信した両側波帯振幅変調信号を復調して、上側波帯に対する第1信号および下側波帯に対する第2信号を抽出する検波部20を備える。そして、受信装置1は、第1信号および第2信号それぞれを帯域ごとに分割して複数の帯域信号を生成する帯域分割部50と、複数の帯域信号から、第1信号および第2信号間での帯域ごとの同相成分信号を抽出する同相成分抽出部60−1〜60−nとを備える。そして、受信装置1は、第1信号と各同相成分信号との差分を第1無相関信号として抽出する第1無相関信号抽出部80Uと、第2信号と各同相成分信号との差分を第2無相関信号として抽出する第2無相関信号抽出部80Lとを備える。そして、受信装置1は、各同相成分信号ならびに第1無相関信号および第2無相関信号のレベルを調整するゲイン調整部90と、レベル調整後の、各同相成分信号ならびに第1無相関信号および第2無相関信号を加算して出力信号を生成する合成部90とを備えた。
【0053】
このように構成することにより、受信装置1は、上側波帯および下側波帯に混入した雑音成分を含む両側波帯振幅変調信号を復調することにより得られた第1信号および第2信号から、帯域ごとの同相成分信号と無相関信号(第1無相関信号および第2無相関信号)とを抽出する。そして、受信装置1は、帯域ごとの同相成分信号と第1無相関信号と第2無相関信号との加算割合を調整することによって、雑音成分を除去または低減することができる。
したがって、受信装置1は、両側波帯に混入した雑音を除去または低減することができる。
【0054】
また、本発明の一実施形態である受信装置1は、第1信号および第2信号の差分に基づいて雑音成分を解析する雑音解析部30をさらに備える。そして、ゲイン調整部90は、雑音解析部30による雑音成分の解析結果に基づいてレベルを調整する。ここで、雑音解析部30は、両側波帯に混入した雑音成分の性質を判定する。例えば、雑音解析部30は、雑音成分がホワイトノイズ性の雑音であるか、パルス性の雑音であるかを判定する。ゲイン調整部90は、雑音成分がホワイトノイズ性の雑音である場合に、帯域ごとに決定したゲインで各同相成分信号と第1無相関信号と第2無相関信号との各レベルを調整する。
このように、受信装置1は、効果的にホワイトノイズ性の雑音成分を除去または低減することができる。
【0055】
また、本発明の一実施形態である受信装置1は、雑音解析部30による雑音成分の解析結果に応じた、ゲイン調整部90のゲイン設定値を記憶する記憶部40と、記憶部40からゲイン設定値を読み出して、このゲイン設定値をゲイン調整部90に設定する制御部10とをさらに備える。そして、ゲイン調整部90は、制御部10が設定したゲイン設定値にしたがってレベルを調整する。
このように構成することにより、受信装置1は、ゲイン調整部90に設定されるゲイン設定値を記憶しておくことができる。よって、受信装置1は、生産時、音質評価時、設置時等において評価し決定したゲイン設定値を保持し、任意にゲイン調整部90に設定することができる。
【0056】
また、本発明の一実施形態である受信装置1は、雑音解析部30による雑音成分の解析結果に基づいて、合成部100が生成した出力信号のフィルタ処理を行うフィルタ部110をさらに備える。フィルタ部110は、雑音成分がパルス性の雑音である場合に、雑音解析部30が決定したフィルタ係数を適用して雑音を除去または低減する。
このように構成することにより、受信装置1は、ホワイトノイズ性の雑音とパルス性の雑音との両方を除去または低減することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態において、記憶部40に、ゲイン調整部90に対する複数種類のゲイン設定値を記憶させるようにしてもよい。例えば、受信装置1の評価実験等によって決定された複数種類のゲイン設定値を、あらかじめ記憶部40に記憶させておく。この場合、受信装置1は、オペレータによる操作を受け付ける操作部を備える。そして、受信装置1は、オペレータによる操作部の操作にしたがって制御部10を制御し、制御部10に、所望のゲイン設定値を記憶部40から読み出させてゲイン調整部90に設定させる。
【0058】
同様に、記憶部40に、フィルタ部110に対する複数種類のフィルタ係数を記憶させるようにしてもよい
【0059】
また、受信装置1は、フィルタ部110および記憶部40またはいずれかを含まない構成としてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 受信装置
10 制御部
20 検波部
30 雑音解析部
40 記憶部
50 帯域分割部
60−1〜60−n 同相成分抽出部
61U,61L 信号取得部
62U,62L 適応フィルタ部
63U,63L フィルタ係数生成部
64U,64L 遅延部
65U,65L 誤差信号検出部
66 同相信号生成部
67 信号出力部
70U 第1信号遅延部
70L 第2信号遅延部
80U 第1無相関信号抽出部
80L 第2無相関信号抽出部
90 ゲイン調整部
91−1〜91−n 同相成分ゲイン調整部
92U 第1無相関信号ゲイン調整部
92L 第2無相関信号ゲイン調整部
100 合成部
110 フィルタ部
図1
図2
図3