(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959142
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】飲食品のオーバーランのインライン連続測定方法及び測定装置、並びに、当該測定方法を使用した飲食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/20 20060101AFI20160719BHJP
A23G 9/16 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
A23G9/20
A23G9/16
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-185999(P2010-185999)
(22)【出願日】2010年8月23日
(65)【公開番号】特開2012-39974(P2012-39974A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2013年4月25日
【審判番号】不服2015-2191(P2015-2191/J1)
【審判請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 哲
【合議体】
【審判長】
田村 嘉章
【審判官】
窪田 治彦
【審判官】
山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−212760(JP,A)
【文献】
特開2002−90316(JP,A)
【文献】
山口等,ホイップクリームの性状に関する研究(第4報),北畜会報,2002年,44,13−16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G1/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーランを測定する対象の気泡を抱き込んだミックスであるアイスクリーム又はホイップクリームについて、テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値を得る工程と、
前記テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値が得られている前記オーバーランを測定する対象の前記ミックスを配管中で流動させ、マイクロ波濃度計を用いて測定を行って測定値を取得する工程と、
前記オーバーランを測定する対象の前記ミックスについて、前記テスターカップ法により実際に測定を行って得られたオーバーランの値と、前記配管中を流動している状態で前記マイクロ波濃度計を用いて測定して得た測定値との間に存在する相関関係を求める工程と、
前記相関関係が得られている前記ミックスを前記配管中で流動させつつ前記マイクロ波濃度計を用いて測定し、得られた測定値に基づき、前記得られている相関関係における直線的な関係を利用して、前記配管中で流動している前記ミックスのオーバーランの値を算出する工程と
を含んでいることを特徴とするアイスクリーム又はホイップクリームのオーバーランのインライン連続測定方法。
【請求項2】
気泡を抱き込んだミックスであるアイスクリーム又はホイップクリームが内部を流動する配管に取り付けられて当該配管中を流動する前記ミックスについて測定するマイクロ波濃度計と、オーバーラン算出処理手段とを備えてなり、
当該オーバーラン算出処理手段は、
前記配管中を流動する、オーバーランの値を算出する対象になる前記ミックスについて、テスターカップ法により実際に測定を行って得られているオーバーランの値と、
前記テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値が得られている前記ミックスを前記配管中で流動させ前記マイクロ波濃度計を用いて測定した測定値と
の間の相関関係について得られている直線的な関係を利用し、
前記相関関係が得られている前記ミックスが前記配管中を流動する際に前記マイクロ波濃度計が測定した測定値を用いて、
前記ミックスのオーバーランの値を算出する手段である
ことを特徴とするアイスクリーム又はホイップクリームのオーバーランのインライン連続測定装置。
【請求項3】
ミックスに気泡を抱き込ませて気泡を含む飲食品を製造する方法であって、
気泡を抱き込んだ前記ミックスであるアイスクリーム又はホイップクリームを配管中で流動させ、当該配管中で流動する前記ミックスについてマイクロ波濃度計を用いて測定を行い、
前記配管中を流動する前記ミックスについてテスターカップ法により実際に測定を行って得られているオーバーランの値と、
前記テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値が得られている前記ミックスを前記配管中で流動させ前記マイクロ波濃度計を用いて測定した測定値と
の間の相関関係について得られている直線的な関係を利用し、
前記マイクロ波濃度計が測定した前記配管中を流動する前記ミックスについての測定値を用いて、
前記配管中を流動する前記ミックスのオーバーランの値を算出し、
算出された前記ミックスのオーバーランの値に基づいてエアーの流量を調整することによりオーバーランの値を所定の目標値にする前記アイスクリーム又はホイップクリームを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アイスクリームやホイップクリームなどに代表される気泡を含む飲食品の製造において、空気含有率(オーバーラン)をインラインにおいて連続的に測定する方法及び装置と、当該測定方法が使用されている飲食品の製造方法、そして、これにより製造された飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリームやホイップクリームなどに代表される気泡を含む飲食品において、空気含有率(オーバーラン)(本明細書において「OR」と表すことがある)は、当該飲食品の品質や風味の観点から重要な意味を持っている。そこで、このような飲食品の製造工程では製造中、常に、オーバーランが一定になるように注意が払われている。
【0003】
例えば、アイスクリーム類の場合、その製造工程における凍結には、フリージングと硬化の2つの工程がある。フリージングは、アイスクリームフリーザーによって、適度の空気と氷結晶を含有する半凍結状のアイスクリーム(ソフトクリーム)を得る工程である。ここで、アイスクリーム類の場合には、気泡を抱き込んだミックス(調合液、調製液)中に含まれる空気量がオーバーランと呼ばれ、気泡を抱き込む前のミックスの容量との比率として、オーバーランが百分率で表される。
【0004】
以前から、アイスクリーム類やホイップクリームにおけるオーバーランの測定には、テスターカップ法が使用されていた。テスターカップ法とは、容積が既知のカップにアイスクリームを充填し、その重さを実測して密度を算出し、この密度からオーバーラン値を算出する方法である。
【0005】
このテスターカップ法では、製造工程中の決められたタイミングで、オーバーランを測定することになる。しかし、この方法では、オーバーランを連続的にモニタリングすることができない。また、テスターカップ法では、製造工程(ライン)中から一度ミックスを抜き取る必要があるため、圧力充填ラインなどの場合には測定できず、衛生的にも好ましい測定方法ではない。さらにミックスの取り方やカッティングの仕方、カップの側面への付着などにより測定誤差を生じる可能性もある。
【0006】
なお、例えば、ミルク総合事典(山内邦夫編、朝倉書店、2007年、P.479)には、日本農林規格に基づく、アイスクリーム類の容量の測定方法が記載されており、この容量の測定値からもオーバーラン値を算出できる。
【0007】
この方法でも、手間と時間を要する上、オーバーラン値を連続的に算出できないという問題があった。
【0008】
そこで、ミックスに気泡を抱き込ませて、気泡を含む飲食品を製造する方法においては、オーバーラン値を連続的に算出することが以下に説明するように、以前から種々で提案されていた。
【0009】
実開昭62−083482号公報「アイスクリーム フリーザーの オーバーラン自動制御方法」(特許文献1)には、フリーザー(冷凍シリンダー)の入口前に質量流量計を設置して、原料乳(アイスクリームミックス)の流量と、空気(エアー)の流量を測定し、それら流量の混合比率からオーバーラン値を算出するのと共に、テスターカップ法により密度を測定し、その密度からオーバーラン値を算出して、それら測定値を確認しながら自動的に、オーバーランを設定値に制御する方法が記載されている。
【0010】
特開昭62−029938号公報「アイスクリーム製造におけるオーバーラン自動制御方法」(特許文献2)には、フリーザーの入口前に流量計を設置して、原料乳(アイスクリームミックス)の流量と、空気(エアー)の流量を測定し、それら流量の混合比率を確認しながら自動的に、オーバーランを設定値に制御する方法が記載されている。
【0011】
特開平05−284914号公報「オーバーランを有する食品の連続製造装置」(特許文献3)には、フリーザー(気液混合機など)の出口後に密度計、温度計、圧力計を設置して、原料乳(アイスクリームミックス)の流量と、密度、温度、圧力(出口後のみ)を測定し、それら測定値を確認しながら自動的に、オーバーランを設定値に制御する方法が記載されている。
【0012】
特開平04−254755号公報「気泡含有食品のオーバーラン測定装置」(特許文献4)及び、特開平05−133943号公報「気泡含有食品のオーバーラン測定装置」(特許文献5)には、音速を利用して、オーバーランを測定する方法が記載されている。
【0013】
特開昭63−063346号公報「オーバーランの自動測定方法及び装置」(特許文献6)には、アイスクリームやホイップクリームを一定容積に密閉して圧縮し、容積や圧力の変化量を測定し、それら変化量からオーバーランを測定する方法が記載されている。
【0014】
特開昭58−013347号公報「ホイップドクリームの終点制御方法」(特許文献7)には、ホイップ装置(モーター)の電流値を利用して、オーバーランを制御する方法が記載されている。
【0015】
特開昭61−092528号公報「オーバーランにおける空気供給量の制御方法及び装置」(特許文献8)には、原料乳(アイスクリームミックス)と アイスクリームの流量、比重(密度)、温度、空気(エアー)の流量を測定し、それら測定値を確認しながら自動的に、オーバーランを設定値に制御する方法が記載されている。
【0016】
特開2001−095408号公報「クリーム類のホイップ制御方法」(特許文献9)には、ホイップ装置の消費電力を利用して、オーバーランを制御する方法が記載されている。
【0017】
特開2002−191296号公報「ホイップ食品原料の比重制御方法」(特許文献10)には、ホイップ装置の運転時間を利用して、オーバーランを制御する方法が記載されている。
【0018】
このように、アイスクリーム類の製造においては、原料乳(アイスクリームミックス、クリーム)と空気(エアー)の製造機への供給量(流量)から、オーバーラン値を連続的に算出することが以前から種々で提案されており、また、市場に提供されているアイスクリーム類製造用のフリーザーの中には、これらのような仕組みが組み込まれているものも存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】実開昭62‐083482号公報
【特許文献2】特開昭62‐029938号公報
【特許文献3】特開平05‐284914号公報
【特許文献4】特開平04‐254755号公報
【特許文献5】特開平05‐133943号公報
【特許文献6】特開昭63‐063346号公報
【特許文献7】特開昭58‐013347号公報
【特許文献8】特開昭61‐092528号公報
【特許文献9】特開2001‐095408号公報
【特許文献10】特開2002‐191296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
この発明は、アイスクリームやホイップクリームなどに代表される気泡を含む飲食品の製造において、オーバーランをインラインで連続的かつ高精度に測定する方法及び装置と、当該測定方法が使用されている飲食品の製造方法、そして、これにより製造した飲食品を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明者は、気泡を含む飲食品の製造において、オーバーランをインラインで連続的に測定するにあたり、配管中を流動している気泡を抱き込んだミックス(調合液、調製液)をマイクロ波濃度計で測定することを検討した。
【0022】
マイクロ波濃度計は単純(シンプル)な構造であり、液溜まりの部分が存在せず、製品自体に損傷(ダメージ)などを与えにくい。また、マイクロ波濃度計の設置にあたり、配管中の圧力損失なども殆ど発生しないため、既存の製造工程(ライン)への導入が容易であることを考慮したものである。
【0023】
マイクロ波濃度計では従来、気泡が混入していると、その測定値が正確に記録(算出)されないと言われていたが、本願発明者が検討したところ、食品(乳製品)への気泡や固形物の混入量に比例して、マイクロ波濃度計の測定値が直線的に変化することを初めて確認することができた。本願発明者は、この知見に基づいて、本願発明を完成させたものである。
【0024】
請求項1記載の発明は、
オーバーランを測定する対象の気泡を抱き込んだミックスであるアイスクリーム又はホイップクリームについて、テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値を得る工程と、
前記テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値が得られている前記オーバーランを測定する対象の前記ミックスを配管中で流動させ、マイクロ波濃度計を用いて測定を行って測定値を取得する工程と、
前記オーバーランを測定する対象の前記ミックスについて、前記テスターカップ法により実際に測定を行って得られたオーバーランの値と、前記配管中を流動している状態で前記マイクロ波濃度計を用いて測定して得た測定値との間に存在する相関関係を求める工程と、
前記相関関係が得られている前記ミックスを前記配管中で流動させつつ前記マイクロ波濃度計を用いて測定し、得られた測定値に基づき、前記得られている相関関係における直線的な関係を利用して、前記配管中で流動している前記ミックスのオーバーランの値を算出する工程と
を含んでいることを特徴とする
アイスクリーム又はホイップクリームのオーバーランのインライン連続測定方法
である。
【0025】
請求項2記載の発明は、
オーバーランを測定する対象の気泡を抱き込んだミックスであるアイスクリーム又はホイップクリームについて、テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値を得る工程と、
前記テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値が得られている前記オーバーランを測定する対象の前記ミックスを配管中で流動させ、マイクロ波濃度計を用いて測定を行って測定値を取得する工程と、
前記オーバーランを測定する対象の前記ミックスについて、前記テスターカップ法により実際に測定を行って得られたオーバーランの値と、前記配管中を流動している状態で前記マイクロ波濃度計を用いて測定して得た測定値との間に存在する相関関係を求める工程と、
前記相関関係が得られている前記ミックスを前記配管中で流動させつつ前記マイクロ波濃度計を用いて測定し、得られた測定値に基づき、前記得られている相関関係における直線的な関係を利用して、前記配管中で流動している前記ミックスのオーバーランの値を算出する工程と
を含んでいることを特徴とする
アイスクリーム又はホイップクリームのオーバーランのインライン連続測定方法。
である。
【0026】
請求項3記載の発明は、
ミックスに気泡を抱き込ませて気泡を含む飲食品を製造する方法であって、
気泡を抱き込んだ前記ミックスであるアイスクリーム又はホイップクリームを配管中で流動させ、当該配管中で流動する前記ミックスについてマイクロ波濃度計を用いて測定を行い、
前記配管中を流動する前記ミックスについてテスターカップ法により実際に測定を行って得られているオーバーランの値と、
前記テスターカップ法により実際に測定を行ってオーバーランの値が得られている前記ミックスを前記配管中で流動させ前記マイクロ波濃度計を用いて測定した測定値と
の間の相関関係について得られている直線的な関係を利用し、
前記マイクロ波濃度計が測定した前記配管中を流動する前記ミックスについての測定値を用いて、
前記配管中を流動する前記ミックスのオーバーランの値を算出し、
算出された前記ミックスのオーバーランの値に基づいてエアーの流量を調整することによりオーバーランの値
を所定の目標値に
する前記
アイスクリーム又はホイップクリームを製造する方法
である。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、アイスクリームやホイップクリームなどに代表される気泡を含む飲食品の製造において、オーバーランをインラインで連続的かつ高精度に測定する方法及び装置と、当該測定方法が使用されている飲食品の製造方法、そして、これにより製造した飲食品を提供することができる。
【0029】
この発明によれば、気泡を含む飲食品の製造において、オーバーランをインラインで連続的にモニタリングすることができる。これによってオーバーランを衛生的かつ連続的に監視することができ、フリーザーの安定化を待つことなどによるミックスの損失(ロス)の低減が可能になる。
【0030】
この発明によれば、フリーザー(アイスクリーム製造機)や、モンドミキサー(ホイップクリーム製造機)などの連続運転中において、オーバーランをインラインで連続的にモニタリングすることにより、製品(飲食品)の品質を安定化できる。そして、それら製造機の運転開始(起動)時において製品の損失(ロス)を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の測定装置の概略構成を説明する概念図。
【
図2】エアーの供給量を変化させた場合において、テスターカップ法で実測したアイスクリームのオーバーランと、それぞれのアイスクリームのマイクロ波濃度計で測定した測定値の関係を表す図。
【
図3】オーバーラン(実測値)と、マイクロ波濃度計の測定値との相関関係(検量線)を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、ミックス(調合液、調製液)に気泡を抱き込ませて気泡を含む飲食品、例えば、アイスクリームやホイップなどを製造する工程で使用される。
【0033】
本発明が提案する飲食品のオーバーランのインライン連続測定装置では、気泡を抱き込んだミックスが内部を流動する配管に取り付けられて、当該配管中を流動する前記ミックスについて測定するマイクロ波濃度計が採用されている。当該マイクロ波濃度計によって測定した配管中を流動する気泡を抱き込んだミックスの測定値を参照して、気泡を含む飲食品を製造する際に、当該飲食品のオーバーランをインラインで連続的に測定するものである。
【0034】
本発明においては、まず、対象とする飲食品のオーバーラン(実測値)と、前述したように配管に取り付けられているマイクロ波濃度計による測定値との相関関係(検量線)を求めておく。
【0035】
例えば、対象とする気泡を含む飲食品について、従来公知のテスターカップ法により、オーバーランを実測する。その一方で、こうしてオーバーランを実測した飲食品について、本発明の測定装置を使用し、前述したように配管に取り付けられているマイクロ波濃度計によって、配管中を流動している気泡を抱き込んだミックス(調合液、調製液)を測定する。
【0036】
このようにして得た対象とする飲食品のオーバーラン(実測値)と、当該飲食品の製造工程で配管中を流動する気泡を抱き込んだミックスについてのマイクロ波濃度計による測定値との相関関係(検量線)を予め求めておく。
【0037】
本願発明者が行なった検討によれば、オーバーラン(実測値)と、マイクロ波濃度計の測定値との相関関係(検量線)には直線的な関係があることが認められた。
【0038】
本願発明が提案する飲食品のオーバーランのインライン連続測定方法は、この知見に基づいて完成されたものである。オーバーランが既知の気泡を含む飲食品についてマイクロ波濃度計で測定することにより求めた測定値と、当該既知のオーバーランの値との相関関係を予め求めておく。そして、配管中を流動している気泡を抱き込んだミックス(調合液、調製液)をマイクロ波濃度計で測定して得た値と、前記の予め求めておいた相関関係とに基づいて、前記配管中を流動しているミックスのオーバーランの値を連続的に算出するようにしたものである。つまり、配管中を流動している気泡を抱き込んだミックス(調合液、調製液)についてマイクロ波濃度計で測定し、オーバーランが既知の気泡を含む飲食品について、マイクロ波濃度計で測定することにより求めたオーバーランの実測値とマイクロ波濃度計の測定値との相関関係と、前記測定したマイクロ波濃度計の測定値とに基づいて、前記配管中を流動しているミックスのオーバーランの値を連続的に算出するようにしたものである。
【0039】
このような本発明の方法を実行する本発明の飲食品のオーバーランのインライン連続測定装置は、気泡を抱き込んだミックスが内部を流動する配管に取り付けられて当該配管中を流動する前記ミックスを測定するマイクロ波濃度計と、当該マイクロ波濃度計の測定値の入力を受けて、前記配管中を流動しているミックスのオーバーランの値を算出するオーバーラン算出処理手段とからで構成されている。
【0040】
前記のオーバーラン算出処理手段は、例えば、コンピュータからなり、当該コンピュータの記憶部に記憶されている、オーバーランが既知の気泡を含む飲食品についてマイクロ波濃度計で測定することにより求めた測定値と当該既知のオーバーランの値との相関関係(検量線)と、前記マイクロ波濃度計の測定値とに基づいて、前記配管中を流動しているミックスのオーバーランの値が連続的に算出される。
【0041】
この発明の上述した測定装置及び/又は測定方法を使用すれば、オーバーランをインラインで衛生的かつ連続的に監視することができる。そこで、気泡を含む飲食品の製造工程に、本発明の方法を採用することにより、飲食品の製造中において常に、オーバーランを所定の値に維持することができ、品質や風味の安定した製品(飲食品)を製造することができる。
【実施例1】
【0042】
図1を用いて、本発明の測定装置・測定方法の一例を説明する。
【0043】
図1は、気泡を含む飲食品として、アイスクリームを製造する場合の一例を説明するものである。
【0044】
アイスクリームの製造工程において、アイスクリームフリーザーでは、ミックスに空気を混入させて適度の空気と氷結晶を含有する半凍結状のアイスクリーム(ソフトクリーム)を押し出すこととなる。このとき、このアイスクリームフリーザーに接続された配管の途中にマイクロ波濃度計を設置し、その配管中(内部)を流動する半凍結状のアイスクリーム(ソフトクリーム)をマイクロ波濃度計で測定する。こうして連続的に測定されるマイクロ波濃度計の測定値が、コンピュータからなるオーバーラン算出手段に入力されるようになっている。マイクロ波濃度計には、東芝株式会社製ものを使用した。
【0045】
まず、本発明の測定方法を実施する前に、気泡を含む飲食品として、アイスクリームを複数種で準備して、従来公知のテスターカップ法により、製品(試料)の200mlに対して平均値を測定することによりオーバーランを実測した。
【0046】
一方、図示の本発明の測定装置の構成で、マイクロ波濃度計を使用して、前記のようにオーバーランを実測した各アイスクリームについて、アイスクリームフリーザーから押し出されたアイスクリームが配管中を流動している状態で測定した。
【0047】
こうして測定したオーバーランの実測値と、マイクロ波濃度計の測定値(指示値)は、
図2の通りであった。
【0048】
次に、この測定結果に基づき、オーバーラン(実測値)と、マイクロ波濃度計の測定値(指示値)との相関関係(検量線)を求めたところ、
図3図示のようになった。
【0049】
図示の通り、オーバーラン(実測値)と、マイクロ波濃度計の測定値(指示値)との相関関係(検量線)には直線的な関係があることが認められた。
【0050】
また、このとき、マイクロ波濃度計の精度として、決定係数R
2は0.94であった。これは、例えば、オーバーランを30%とすると、平均±2.4%の誤差が生じることを意味し、オーバーランを100%とすると、平均±8%の誤差が生じることを意味する。
【0051】
なお、上述したように、テスターカップ法によるオーバーランの実測値は、製品(試料)の200mlに対して平均値を測定しているものであり、一方、マイクロ波濃度計では瞬時値を測定しており 、その測定の箇所の違いなどにより 、双方で誤差が生じていると考えられた。
【0052】
このように、オーバーラン(実測値)と、マイクロ波濃度計の測定値(指示値)との相関関係(検量線)には直線的な関係があることから、こうして把握できた、オーバーランが既知の気泡を含む飲食品(アイスクリーム)のマイクロ波濃度計の測定値(指示値)と、オーバーランとの相関関係(検量線)に関する情報を、コンピュータからなるオーバーラン算出手段の記憶部に格納した。
【0053】
こうして準備が整った後に、本発明の測定装置、測定方法を使用して、アイスクリームを製造した。
【0054】
すなわち、アイスクリームフリーザーから押し出されたアイスクリームが配管中を流動している状態で、マイクロ波濃度計によって測定し、この連続的に測定したマイクロ波濃度計の測定値をオーバーラン算出手段に入力した。
【0055】
オーバーラン算出手段は、マイクロ波濃度計から連続的に入力される測定値と、前記のマイクロ波濃度計の測定値(指示値)とオーバーランとの相関関係(検量線)に関する情報を利用して、オーバーランを連続的に算出する。例えば、
図3に図示されるデータとして格納されている検量線と、マイクロ波濃度計から連続的に入力される測定値とから、オーバーランを連続的に算出する。
【0056】
こうして、本発明の測定装置、測定方法によれば、インラインでオーバーランを連続的にモニタリングすることができる。
【0057】
アイスクリームの製造工程では、このようにして連続的にモニタリングしているオーバーランに基づき、必要があれば、アイスクリームフリーザーの空気(エアー)の流量を、手動で調整し、あるいは、アイスクリームフリーザー内に内蔵されているマスフローコントローラーで調整し、アイスクリームの製造を通じて、オーバーラン(OR)が所定の目標値で一定になるように調整する。
【0058】
上述したように、オーバーランをインラインで衛生的かつ連続的に監視することができるので、気泡を含む飲食品の製造工程に、本発明の方法を採用することにより、飲食品の製造中において常に、オーバーランを所定の値に維持することができ、品質や風味の安定した製品を製造することができる。
【0059】
以上、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態、実施例を説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。