特許第5959326号(P5959326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5959326荷電粒子ビーム発生装置、荷電粒子線装置、高電圧発生装置、および高電位装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959326
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム発生装置、荷電粒子線装置、高電圧発生装置、および高電位装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/248 20060101AFI20160719BHJP
   H01J 37/067 20060101ALI20160719BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01J37/248 B
   H01J37/067
   H01J37/16
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-132103(P2012-132103)
(22)【出願日】2012年6月11日
(65)【公開番号】特開2013-257983(P2013-257983A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊一
(72)【発明者】
【氏名】金田 実
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−084839(JP,A)
【文献】 特開平10−092363(JP,A)
【文献】 特開2009−193896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/00−27/26、37/00−37/21、
37/24−37/295、
H05H 3/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子源と、
前記荷電粒子源からの荷電粒子の照射方向に沿って配置された複数の第1の電極と、
前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、
前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、
前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極に電気的に接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする荷電粒子ビーム発生装置。
【請求項2】
荷電粒子源と、
前記荷電粒子源からの荷電粒子の照射方向に沿って配置された複数の第1の電極と、
前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、
前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、
接地電位に対して最も電位差が大きい位置にある第1の電極と、当該第1の電極に近接する第2の電極とが、電気的に接続され、前記複数の第2の電極間が、複数の抵抗器によって接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする荷電粒子ビーム発生装置。
【請求項3】
荷電粒子源と、
前記荷電粒子源からの荷電粒子の照射方向に沿って配置された複数の第1の電極と、
前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、
前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、
前記複数の第1の電極のいくつかと、当該第1の電極に近接する第2の電極のいくつかとが、各々、電気的に接続され、前記第1の電極と接続されていない前記複数の第2の電極間が、複数の抵抗器によって接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする荷電粒子ビーム発生装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム発生装置において、
前記ハウジングの接地電位面と前記第2の電極との間が、前記絶縁性の固体材料によって満たされていることを特徴とする荷電粒子ビーム発生装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム発生装置において、
前記複数の第2の電極の各々は、前記荷電粒子の照射方向に対して直方向に、前記第1の電極と対向する位置に設けられていることを特徴とする荷電粒子ビーム発生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム発生装置を備える荷電粒子線装置。
【請求項7】
接地電位面上に積層された複数の第1の電極と、
前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、
前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、
前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極に電気的に接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項8】
接地電位面上に積層された複数の第1の電極と、
前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、
前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、
前記接地電位面に対して最も電位差が大きい位置にある第1の電極と、当該第1の電極に近接する第2の電極とが、電気的に接続され、前記複数の第2の電極間が、複数の抵抗器によって接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項9】
接地電位面上に積層された複数の第1の電極と、
前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、
前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、
前記複数の第1の電極のいくつかと、当該第1の電極に近接する第2の電極のいくつかとが、各々、電気的に接続され、前記第1の電極と接続されていない前記複数の第2の電極間が、複数の抵抗器によって接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の高電圧発生装置において、
前記ハウジングの接地電位面と前記第2の電極との間が、前記絶縁性の固体材料によって満たされていることを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項に記載の高電圧発生装置において、
前記複数の第2の電極の各々は、前記第1の電極の積層方向に対して直方向に、前記第1の電極と対向する位置に設けられていることを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一項に記載の高電圧発生装置を備える荷電粒子線装置。
【請求項13】
高電位が生じる高電位部と、
前記高電位部と接地電位面との間に配置された少なくとも1つの第1の電極と、
前記高電位部および前記第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記接地電位面から前記高電位部に至るまでの所定の電位間隔に対応して配置された複数の第2の電極を備え、
前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極に電気的に接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、前記所定の電位間隔における各電位と同じ電位になることを特徴とする高電位装置。
【請求項14】
高電位が生じる高電位部と、
前記高電位部と接地電位面との間に配置された少なくとも1つの第1の電極と、
前記高電位部および前記第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記接地電位面から前記高電位部に至るまでの所定の電位間隔に対応して配置された複数の第2の電極を備え、
前記接地電位面に対して最も電位差が大きい位置にある第1の電極と、当該第1の電極に近接する第2の電極とが、電気的に接続され、前記複数の第2の電極間が、複数の抵抗器によって接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする高電位装置。
【請求項15】
高電位が生じる高電位部と、
前記高電位部と接地電位面との間に配置された少なくとも1つの第1の電極と、
前記高電位部および前記第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、
を備え、
前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、
前記ハウジングが、前記接地電位面から前記高電位部に至るまでの所定の電位間隔に対応して配置された複数の第2の電極を備え、
前記複数の第1の電極のいくつかと、当該第1の電極に近接する第2の電極のいくつかとが、各々、電気的に接続され、前記第1の電極と接続されていない前記複数の第2の電極間が、複数の抵抗器によって接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になることを特徴とする高電位装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧装置を絶縁する技術に関し、詳細には、この技術を応用した荷電粒子ビーム発生装置、荷電粒子線装置、高電圧発生装置、および高電位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線装置は、電子や陽イオンなどの電荷をもつ粒子(荷電粒子)を電界で加速し、試料に照射する装置である。荷電粒子線装置は、試料と荷電粒子との相互作用を利用して、試料の観察、分析、加工などを行う。荷電粒子線装置の例として、電子顕微鏡、電子線描画装置、イオン加工装置、イオン顕微鏡などが挙げられる。これら荷電粒子線装置の中において、電子顕微鏡は、電子を試料に照射し、電子と試料との相互作用を信号として検出することで微細構造の観察や構成元素の分析を行う装置である。以下、電子顕微鏡について述べる。
【0003】
電子顕微鏡は、マイナスの高圧電位を用いた電子加速機構を備えることが多い。電子顕微鏡は、真空中に遊離電子を発生させる電子源を備える。電子顕微鏡は、電子源からの遊離電子を電位差により加速することで、一定の運動エネルギーをもった多数の電子の束(電子線)を生成する。多くの電子顕微鏡では電子線を得るために、電子源をマイナスの高圧電位をもつ陰極に置き、陽極を接地電位とする構造を採用している。陰極と陽極との間にある電位差により、電子は所望のエネルギーに加速され電子線となる。電子顕微鏡の中で、この電子線を発生する部分を電子銃と呼んでいる。多くの電子顕微鏡において、電子銃が発生する電子線のエネルギーは、電子銃の電子源部分の高圧電位に一致する。
【0004】
電子顕微鏡としては、走査型電子顕微鏡や走査透過型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などがある。走査型電子顕微鏡は、試料表面からの二次電子ないし反射電子等を利用する装置であり、必要な電子線のエネルギーは最大でおよそ30kVである。
【0005】
これに対して、走査透過型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡は、試料を透過しあるいは試料内で散乱された電子を観測する装置であり、必要とする電子線のエネルギーは主に100kV以上である。上で述べたとおり、多くの電子顕微鏡では、電子線のエネルギーを電子源部の高圧電位によって与える構造をとる。そのため、より高い電子線エネルギーを必要とする電子顕微鏡では、電子源部の高圧電位を周囲の接地電位部から絶縁し、安定に維持する構造が必要となる。
【0006】
そこで、100kVを越える加速電圧を持つ電子銃においては、多くの場合、加速管構造が採用されている。加速管構造では、マイナスの高圧電位に保たれる電子源部(陰極)と、電子線の出口であり接地電位をとる陽極との間に、絶縁物の管と金属の環を交互に積層した構造(加速管)を組み込んでいる。ここで、一本の絶縁物管で直接、電子源部と陽極とをつなぐのではなく、加速管構造をとるのは以下の理由による。長い絶縁物の両端に電位差がある場合、等電位線が両端の電極の間、絶縁物上になめらかに分布するのではなく、長い絶縁物のどちらかの端に近い部分に等電位線の間隔のせまい部分(電界集中部)ができる。高電圧を印加したとき、この電界集中部分で絶縁破壊を起こすことがある。そこで、加速管構造では絶縁物管と中間電極との積層構造とし、さらに、中間電極にはブリーダー抵抗を用いて強制的に電子源と接地電位の中間の電位を持たせる。結果として、絶縁物管は、絶縁物管両端の電極間を絶縁する機能を果たせばよくなり、高電位部を安定に維持することができる。
【0007】
次に、加速管構造の絶縁について考える。例えば、加速管は、周囲の接地電位部分との間に、例えば、最大200kVの電位差が存在する。この電位差によって、加速管の高電位部と容器の接地電位部分との間の空間に放電が起きるおそれがあり、電子銃には、この電位差を安定に維持する機能(絶縁部)が求められている。
【0008】
特許文献1は、加速管の周囲を金属製の容器で囲む構造を開示している。特許文献1では、加速管周辺に金属製の容器を設け、これを接地電位としている。特許文献1では、加速管の高電位部と容器の接地電位部分との間の空間に放電が起きることを防ぐために、容器内に絶縁性ガスまたは絶縁性液体を充填する。これにより、電位差のある電極間で放電が生じるのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−216396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、絶縁性ガスや絶縁性液体(以下、「絶縁物質」と記す)を用いているが、絶縁物質は、電子銃装置の小型化、軽量化、価格の低廉化のために、できるだけ絶縁性能が高いものがよい。絶縁性ガスとしては、例えば、SF(六フッ化硫黄)が用いられることがある。また、絶縁性液体としては、なたね油、フッ素系不活性液体などが用いられることがある。これらの絶縁物質は、優れた絶縁性能を持つが、その一方で、SFは地球温暖化ガスであり、使用量の制限が求められている。しかしながら、SFよりも環境にやさしく、かつ優れた絶縁性能を持つ絶縁性ガスはほとんど存在しない。したがって、絶縁性ガスを使用しない、または絶縁性ガスの使用量を減らすことができる構造が必要となる。
【0011】
なたね油などの絶縁性液体の場合、気泡が存在すると絶縁性能が低下するため、装置を開閉することが難しくなる。したがって、電子銃のような、定期的に分解メンテナンスが必要となる装置での使用は困難である。また、絶縁性液体の代替として、加速管周辺に樹脂のような絶縁性固体を充填する方法がある。絶縁性固体は、一般的に、絶縁性ガスや絶縁性液体よりも絶縁性能がよいが、絶縁性固体は一度充填して固化すると、分解、メンテナンスはほとんど不可能である。
【0012】
なお、電子銃以外にも、高電圧装置の中には、装置の高電位となる部分と、接地電位となる部分との間に多段の積層された電極列を備え、電極列に順次中間の電位が持たされている装置が数多く存在する。この構造をとる装置の例としては、コッククロフト・ウォルトン型、バンデグラフ型などの高電圧発生装置、粒子加速器の静電加速管などがある。これら高電圧装置についても、高電位になる部分全体を周囲の接地電位の容器から絶縁するという技術的課題は共通している。したがって、これらの高電圧装置についても、絶縁性ガスや絶縁性液体を使用する場合には、上述の課題が生じる。
【0013】
本発明は、高電圧装置において気体または液体の絶縁物質を使用しない、またはこれらの使用量を減らしつつ、メンテナンス性も向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、荷電粒子源と、前記荷電粒子源からの荷電粒子の照射方向に沿って配置された複数の第1の電極と、前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、を備え、前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、前記複数の第2の電極の少なくとも1つが、前記複数の第1の電極の少なくとも1つに電気的に接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になる荷電粒子ビーム発生装置が提供される。さらに、本発明によれば、上述した荷電粒子ビーム発生装置を備える荷電粒子線装置が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、接地電位面上に積層された複数の第1の電極と、前記第1の電極間に配置された複数の絶縁部材と、前記複数の第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、を備え、前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、前記ハウジングが、前記複数の第1の電極に対して近接した位置に配置された複数の第2の電極を備え、前記複数の第2の電極の少なくとも1つが、前記複数の第1の電極の少なくとも1つに電気的に接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、近接する前記第1の電極の電位と同じ電位になる高電圧発生装置が提供される。さらに、本発明によれば、上述した高電圧発生装置を備える荷電粒子線装置が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、高電位が生じる高電位部と、前記高電位部と接地電位面との間に配置された少なくとも1つの第1の電極と、前記高電位部および前記第1の電極の周囲に設けられたハウジングと、を備え、前記ハウジングが、絶縁性の固体材料で形成され、前記ハウジングが、前記接地電位面から前記高電位部に至るまでの所定の電位間隔に対応して配置された複数の第2の電極を備え、前記複数の電極の少なくとも1つが、前記第1の電極に電気的に接続されて、前記複数の第2の電極の各々が、前記所定の電位間隔における各電位と同じ電位になる高電位装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高電圧装置において、気体または液体の絶縁物質を使用しないか、または使用量を減らすことが可能となり、メンテナンス性も向上する。
【0018】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態による電子銃を備える電子顕微鏡の概念図である。
図2】本発明の第1実施形態による加速管構造を備えた電子銃の横断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による加速管構造の等電位面図である。
図4】従来構造である金属製ハウジングを採用した加速管構造の等電位面図である。
図5】本発明の第2実施形態による電子銃を備える電子顕微鏡の概念図である。
図6】本発明の第3実施形態による高電圧発生装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、荷電粒子線装置の例として、本発明の第1実施形態である電子銃を備える電子顕微鏡の概念図を示す。なお、本発明は、電子顕微鏡に限らず、荷電粒子源から放出された電子や陽イオンなどの電荷をもつ粒子(荷電粒子)を電界で加速し、試料に照射する他の荷電粒子線装置に適用することが可能である。例えば、電子線描画装置、イオン加工装置、イオン顕微鏡などである。
【0022】
図1に示すように、電子顕微鏡は、電子銃1と、電子光学系2と、試料ホルダ3と、検出器4と、電源部5と、計測部6と、制御装置7とを備える。電子銃1は、電子源11と、ハウジング13と、加速管14と、真空排気装置15と、電源51とを備える。電源51は、電子源11に高圧電位を供給するものである。加速管14は、電子銃1からの電子の照射方向に沿って設けられている。また、加速管14の周囲には、ハウジング13が設けられており、ハウジング13は、電子源11の持つ高圧電位と周囲とを絶縁している。また、真空排気装置15は、電子銃1の内部を真空に排気するものである。このような構成により、電子銃1は、電子源11から電子を放出し、加速管14を通じて電子を加速することによって電子線10を発生させる。
【0023】
電子光学系2は、電子線10を収束、偏向させ、試料31に照射する。また、試料ホルダ3は、試料31を保持するものであり、必要に応じて移動、傾斜、および試料の交換などを行うためのものである。検出器4は、試料31から発生した二次電子、反射電子、透過電子、散乱電子、X線等を検出する。電源部5は、電子光学系2、試料ホルダ3、検出器4に電源を供給する。例えば、電源部5は、電子光学系2に電源を供給するとともに、出力を調整し、電子線10をオペレーターが要求する状態に制御する。なお、電子光学系2は、真空排気装置21を備えており、電子光学系2の内部を真空に排気している。
【0024】
また、計測部6は、検出器4からの情報をデジタル信号に変換する。制御装置7は、コンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。制御装置7は、CPU(図示せず:演算部またはプロセッサともいう)と、メモリやHDD、ROMなどの記憶装置(図示せず)と、キーボードやディスプレイなどの入出力装置(図示せず)と、電子顕微鏡の各構成要素と通信する通信部(図示せず)とを有する。制御装置7は、電源部5を通して電子銃1および電子光学系2を制御するとともに、計測部6からの情報を処理し、オペレーターに見える形で入出力装置に表示し、または記憶装置に記録する。
【0025】
図2は、本発明の実施形態による加速管を備えた電子銃の横断面図を示す。図2では、図1と同じ要素は同じ番号で表示されている。電子銃1は、電子線10を軸とする概略軸対称の構造を有する。電子銃1は、電子源11からの電子の照射方向に沿って配置された複数の電極(121、122、123、124)と、複数の電極の間に配置された複数の絶縁物管(101、102、103、104、105)とを備える。複数の電極(121、122、123、124)と複数の絶縁物管(101、102、103、104、105)とは、電子源11と、接地電位を持つ陽極125との間に交互に積層されている。この積層された構造全体を加速管構造と呼ぶ。この加速管構造の両端は、電子源11と概略同電位を持つ陰極120と、陽極125である。
【0026】
陰極120と陽極125との間に積層された電極(121、122、123、124)は、それぞれ、中間電極と呼ばれている。陰極120、電極(121、122、123、124)、および陽極125は、互いに抵抗器(130、131、132、133、134)によって接続されている。抵抗器(130、131、132、133、134)には、陰極120と陽極125との電位に応じた電流が常時流れる。そのため、抵抗器(130、131、132、133、134)が、ブリーダー抵抗として機能し、中間電極である電極(121、122、123、124)の電位を等間隔に分割して維持する。例えば、電子線加速電圧が200kVの電子銃において、4個の中間電極(121、122、123、124)を持つ構造を考えると、両端の陰極120および陽極125を含めて6つの電極に与えられる電位は、それぞれ、−200kV、−160kV、−120kV、−80kV、−40kV、0kVとなる。
【0027】
電子銃1において、加速管構造の内部は、真空排気装置15によって真空に保たれ、電子源11から発生した電子線10の通路となる。積層された電極(121、122、123、124)は、通過する電子線10に電位差によるエネルギーを与える中間電極として機能する。電子源11から発生した電子線10は、中間電極の持つ電位により、陽極125まで順次加速管構造内を加速されることになる。
【0028】
本実施形態において、加速管構造の周囲は、ハウジング13によって囲われている。本実施形態の特徴として、ハウジング13は、絶縁性の固体材料、例えば、絶縁性能の高い樹脂で形成されている。なお、樹脂としては、エポキシなど一般的な樹脂を用いることができる。ハウジング13の外側表面16には、導電性ペイントが塗布され、接地電位となっている。ここで、樹脂製のハウジング13の内側面には、ハウジング内陰極110、および複数のハウジング内電極(111、112、113、114)が設けられている。ハウジング内陰極110は、電子線10の直交方向において、陰極120と対向する位置に設けられている。また、ハウジング内電極(111、112、113、114)は、それぞれ、電子線10の直交方向において、電極(121、122、123、124)と対向する位置に設けられている。
【0029】
本実施形態では、ハウジング内陰極110が、陰極120に対応しており、ハウジング内電極(111、112、113、114)は、それぞれ、電極(121、122、123、124)に対応している。ここで、対応する電極同士は、ハウジング13を加速管構造の周囲に取付けた状態で、金属製バネなどの接続手段(150、151、152、153、154)によって互いに接続される。すなわち、ハウジング13を加速管構造の周囲に取り付けると、陰極120とハウジング内陰極110が、互いに電気的に接続され、同電位となる。また、電極(121、122、123、124)とハウジング内電極(111、112、113、114)が、互いに電気的に接続され、対応する電極同士が同電位となる。また、この構成によれば、樹脂製のハウジング13の部分が、等電位線の間隔のせまい部分(電界集中部)になり、空間12で低電界となる。したがって、絶縁破壊電界特性が高い樹脂によって、加速管構造の高電位部とハウジング13の接地電位面との間で放電が起きることを防ぐことができる。しかも、樹脂は、真空やガスや液体に比べ、一般に絶縁破壊電界の高い物質である。したがって、真空や絶縁性ガス、絶縁性液体で絶縁を行う場合と比べ、加速管構造の高電位部とハウジング13の接地電位面との間の距離を短くして、全体の構造を小さくすることができる。
【0030】
なお、加速管構造の高電位部とハウジング13の接地電位面との間で放電が起きることを防ぐという点においては、ハウジング13の接地電位面(この実施形態では、ハウジング13の外側表面16)とハウジング内陰極および電極(110、111、112、113、114)との間の空間が樹脂で満たされていればよい。すなわち、ハウジング内陰極および電極(110、111、112、113、114)は、ハウジング13内に完全に埋め込まれる必要はなく、一部露出していてもよい。例えば、ハウジング内電極(111、112、113、114)における接続手段(150、151、152、153、154)との接続箇所などは露出していてもよい。
【0031】
また、ハウジング内電極(111、112、113、114)は、それぞれ、電極(121、122、123、124)と対向する位置に設けられているが、この構成に限定されない。電極(111、112、113、114)を必ずしも対向する位置に設ける必要はなく、ハウジング内電極(111、112、113、114)が、それぞれ、電極(121、122、123、124)に近接する位置に配置されていればよい。
【0032】
図3は、本実施形態で電子銃に高電圧を印加したときの等電位線を示す。図3の例では、陰極120を200kV、電極(121、122、123、124)、すなわち、中間電極を160kV、120kV、80kV、40kVに固定して、10kV毎の等電位線位置を計算により求めたものである。
陰極120とハウジング内陰極110を同電位とし、電極(121、122、123、124)とハウジング内電極(111、112、113、114)の対応する電極同士を同電位にすると、図3に示すように、等電位線は、ハウジング13の樹脂部内で幅が狭く、ハウジング13と加速管構造との間の空間12の部分で間隔が広くなる。すなわち、ハウジング13内に電極(ハウジング内電極およびハウジング内陰極)を有する構造をとると、ハウジング13の樹脂部分で高電界となり、空間12で低電界となる。ハウジング13と加速管構造との間の空間12は、真空とするか、または大気、絶縁性ガスなどを封入する。
【0033】
本実施形態では、図3に示すように、ハウジング13と加速管構造との間の空間12には弱い電界が存在するだけなので、この空間12には絶縁性ガス等の絶縁物質を使用しなくてもよい。または、絶縁性ガス等を使用する場合も、その量を減らすことができる。さらに、空間12は、樹脂製のハウジング13と加速管構造との間の隙間であるので、この隙間を利用して、ハウジング13の取り外しや、再取り付け、電子銃内部のメンテナンスなどを容易に行うことが可能となる。
【0034】
図4は、本実施形態との比較として、樹脂を使用していない金属製のハウジングを備える電子銃に高電圧を印加したときの等電位線を示す。図4の電子銃では、等電位線は、金属製のハウジング40と、陰極120や電極121、122、123、124との間の空間に比較的一様に分布する。加速管構造とハウジング40との間の空間41には、図3と比べて等電位線の間隔が狭くなっている。これは、空間41に強い電界が存在することを意味する。強い電界による絶縁破壊に抗するため、空間41には絶縁性ガスや絶縁性液体等の絶縁物質を封入する必要がある。ここで、加速管構造の高電位部とハウジング40の接地電位との間の空間に放電が起きることを防ぐためには、空間41を広くとりつつ、絶縁性ガスや絶縁性液体等の絶縁物質を封入する必要がある。したがって、図4の従来の金属製のハウジングの構造では、空間41を広くとるために電子銃の全体のサイズも大きくなり、絶縁性ガスや絶縁性液体等の絶縁物質の量も多くなるという課題がある。
これに対して、本発明によれば、上述したように、絶縁性ガスまたは絶縁性液体を使用しない、または絶縁性ガスの使用量を減らすことができる。しかも、樹脂は、真空や絶縁性ガス、絶縁性液体に比べて、一般に絶縁破壊電界の高い物質である。したがって、ハウジングの接地電位面と加速管構造との間の空間を狭く設計しつつ、その空間に樹脂製のハウジングを設けることによって、放電を防ぐとともに、電子銃の全体の構造を小さくすることができる。
【0035】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態による加速管構造を備えた電子銃の横断面図を示す。図5においては、図2と同じ要素には同じ番号を付して、説明を省略する。
【0036】
図5に示すように、樹脂製のハウジング13の内側面には、ハウジング内陰極110、および複数のハウジング内電極(111、112、113、114)が設けられている。図2の実施形態との違いは、ハウジング内陰極110と、ハウジング内電極(111、112、113、114)とが、それぞれ、抵抗器(140、141、142、143、144)によって接続されている点である。図5の実施形態では、接地電位に対して最も電位差が大きい位置にあるハウジング内陰極110が、金属製バネなどの接続手段150によって陰極120に接続されている。
【0037】
ここで、抵抗器(140、141、142、143、144)の抵抗は、互いに対向する電極同士が同電位になるように設定する。例えば、図5の例において、陰極120、電極(121、122、123、124)、および陽極125に与えられる電位を、それぞれ、−200kV、−160kV、−120kV、−80kV、−40kV、0kVとする。抵抗器140の抵抗は、ハウジング内電極111の電位が、対向する電極121の電位(−160kV)と同じとなるように設定する。同様に、残りの抵抗器(141、142、143、144)の抵抗に関しても、各ハウジング内電極(112、113、114)の電位が、対向する電極(122、123、124)の電位と同じになるように設定する。
【0038】
この構成によれば、陰極120とハウジング内陰極110が同電位となり、電極(121、122、123、124)とハウジング内電極(111、112、113、114)の対応する電極同士が同電位になる。したがって、図3で示したのと同様に、樹脂製のハウジング13の部分が、等電位線の間隔のせまい部分(電界集中部)になり、空間12で低電界となる。したがって、絶縁破壊電界特性が高い樹脂によって、加速管構造の高電位部とハウジング13の接地電位との間の空間に放電が起きることを防ぐことができる。しかも、樹脂は、真空やガスや液体に比べ、一般に絶縁破壊電界の高い物質であるから、絶縁性ガスや絶縁性液体で絶縁を行う場合と比べ、全体の構造を小さくすることができる。
【0039】
なお、本実施例では、接地電位に対して最も電位差が大きい位置にあるハウジング内陰極110が、接続手段150によって対向する陰極120に接続されているが、この構成に限定されない。例えば、ハウジング内陰極110および複数のハウジング内電極(111、112、113、114)のうちのいくつかの電極(すなわち、複数の電極)を、それぞれ、陰極120および電極(121、122、123、124)のうち対向する電極に接続し、対向する電極と接続されていない複数のハウジング内電極(111、112、113、114)間が抵抗器で接続されてもよい。
例えば、ハウジング内陰極110を、対向する陰極120に電気的に接続し、ハウジング内電極111を電極121に電気的に接続し、残りのハウジング内電極(112、113、114)間が、複数の抵抗器で接続されるようにしてもよい。
【0040】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態である高電圧発生装置の横断面図を示す。本発明は、電子銃以外の高電圧装置においても同様に利用することができ、同じ効果を発揮することができる。高電圧装置の例として、図6には、コッククロフト・ウォルトン型の高電圧発生装置8の断面図が示されている。高電圧発生装置8は、電子顕微鏡における図1の電源51に含まれる高圧電源発生装置である。
【0041】
高電圧発生装置8は、接地した接地電極868の上に、電極(867、866、865、864、863、862、861、860)と絶縁物(878、877、876、875、874、873、872、871)が交互に積層された構造となっている。電極(867、866、865、864、863、862、861、860)同士は、コッククロフト・ウォルトン回路88によって電気的に接続されている。コッククロフト・ウォルトン回路88は、高耐圧のコンデンサ881とダイオード882を所定の順序で繰り返して接続した回路である。高電圧発生装置8では、図示されていない交流電源によって接地電極868に交流電圧を印加され、これにより、各電極(867、866、865、864、863、862、861、860)が順次昇圧し、電極860および内部の回路部分89に高電圧を発生させることができる。
【0042】
電極860および内部の回路部分89は、コネクタ82を介して高圧ケーブル81に接続されている。電極860および内部の回路部分(高電圧発生部分)89で発生した高電圧は、コネクタ82と高圧ケーブル81によって、高電圧発生装置8から電子銃1などの装置に伝達される。これら電極列(867、866、865、864、863、862、861、860)の周囲は、樹脂製のハウジング83によって囲われている。ハウジング83の外側表面84には、導電性ペイントが塗布され、接地電位となっている。また、ハウジング83の内側面には、ハウジング内電極(850、851、852、853、854、855、856、857)が設けられている。ハウジング内電極(850、851、852、853、854、855、856、857)は、それぞれ、電極(860〜867)の積層方向に対して直交方向に、電極(860、861、862、863、864、865、866、867)と対向する位置に配置されている。
【0043】
ハウジング内電極(850〜857)と電極(867〜860)は、対向する電極同士が、金属製バネなどの接続手段(890、891、892、893、894、895、896、897)によって互いに接続されている。これにより、対向する電極同士が、電気的に接続され、同電位となる。この構成によれば、図2や図の電子銃1場合と同様に、発生する高電圧による高電界は樹脂製のハウジング83内に発生するので、高電圧発生装置8に関して、絶縁性ガス等を使用しない、または使用量を減らすことができる構造を得ることができる。また、従来では、高電圧発生装置では、絶縁性ガスや絶縁性液体などを使用しているために、故障などした場合には高電圧発生装置を処分していたが、樹脂性のハウジング83を設ける構造にすることによって、高電圧発生装置の分解や内部のメンテナンスが可能になる。
なお、本実施形態では、コッククロフト・ウォルトン型高電圧発生装置について、本発明の応用例を示したが、本発明の応用例はこれらに限るものではない。例えば、本発明は、バンデグラフ型などの他の高電圧発生装置にも適用することができる。
【0044】
<まとめ>
第1実施形態によれば、電子銃1は、電子を放出する電子源11と、陰極120および陽極125と、複数の電極(121、122、123、124)と、複数の絶縁物管(101、102、103、104、105)と、複数の電極(121、122、123、124)の周囲に設けられたハウジング13とを備える。ハウジング13は、絶縁性の樹脂で形成され、ハウジング13が、陰極120に対して対向する位置に配置されたハウジング内陰極110と、複数の電極(121、122、123、124)に対して対向する位置に配置された複数のハウジング内電極(111、112、113、114)とを備える。ハウジング内陰極および電極(110、111、112、113、114)が、それぞれ、金属製バネなどの接続手段(150、151、152、153、154)によって、対向する電極(120、121、122、123、124)に接続される。これにより、対向する電極同士が同じ電位になる。
この構成によれば、樹脂製のハウジング13の部分が、等電位線の間隔のせまい部分(電界集中部)になり、空間12で低電界となる。したがって、高い絶縁破壊電界特性を有する樹脂によって、加速管構造の高電位部とハウジング13の接地電位との間の空間に放電が起きることを防ぐことができる。しかも、樹脂は、真空やガスや液体に比べ、一般に絶縁破壊電界の高い物質であるから、真空や絶縁性ガス、絶縁性液体で絶縁を行う場合と比べ、ハウジング13と加速管構造との間の距離を短くしつつ、大きな電位差を安定に保持することができる。このように、ハウジング13と加速管構造との間の距離を短くできるため、電子銃1のさらなる小型化、軽量化、価格の低廉化が可能となる。また、ハウジング13は、加速管構造の周囲から容易に取り外すことができ、また再度、加速管構造の周囲に取り付けることも可能である。したがって、電子銃内部のメンテナンスなどを容易に行うことが可能となる。
【0045】
第2実施形態によれば、ハウジング13の内側面には、ハウジング内陰極110、および複数のハウジング内電極(111、112、113、114)が設けられている。ここで、ハウジング内陰極110が、金属製バネなどの接続手段150によって陰極120に接続され、ハウジング内陰極110と、ハウジング内電極(111、112、113、114)とが、それぞれ、抵抗器(140、141、142、143、144)によって接続され、抵抗器(140、141、142、143、144)の抵抗は、互いに対向する電極同士が同電位になるように設定する。
この構成によれば、対向する全ての電極同士を接続手段などで電気的に接続することなく、互いに対向する電極同士が同電位になる。これにより、樹脂製のハウジング13の部分が、等電位線の間隔のせまい部分(電界集中部)になり、空間12で低電界となる。したがって、高い絶縁破壊電界特性を有する樹脂によって、加速管構造の高電位部とハウジング13の接地電位との間の空間に放電が起きることを防ぐことができる。しかも、樹脂は、真空やガスや液体に比べ、一般に絶縁破壊電界の高い物質であるから、絶縁性ガスや絶縁性液体で絶縁を行う場合と比べ、全体の構造を小さくすることができる。
【0046】
第3実施形態によれば、コッククロフト・ウォルトン型の高電圧発生装置8が、接地した接地電極868の上に、複数の電極(867、866、865、864、863、862、861、860)と複数の絶縁物(878、877、876、875、874、873、872、871)とを積層した構造を有し、この積層した構造の周囲が、ハウジング83によって囲われている。ハウジング83は、複数の電極列(867、866、865、864、863、862、861、860)に対向する位置に複数のハウジング内電極(850、851、852、853、854、855、856、857)を備える。複数のハウジング内電極(850、851、852、853、854、855、856、857)は、それぞれ、接続手段(890、891、892、893、894、895、896、897)によって、対向する電極(867、866、865、864、863、862、861、860)に接続される。これにより、対向する電極同士が、電気的に接続されて、同電位となる。
この構成によれば、発生する高電圧による高電界が、樹脂製のハウジング83内に発生するので、高電圧発生装置8における高電位部とハウジング83の接地電位との間の空間に放電が起きることを防ぐことができる。また、樹脂は、真空やガスや液体に比べ、一般に絶縁破壊電界の高い物質であるから、絶縁性ガスや絶縁性液体で絶縁を行う場合と比べ、全体の構造を小さくすることができる。さらに、従来では、高電圧発生装置では、絶縁性ガスや絶縁性液体などを使用しているために、故障などした場合には高電圧発生装置を処分していたが、樹脂性のハウジング83を設けることによって、高電圧発生装置の分解や内部のメンテナンスが可能になる。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることがあり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0048】
例えば、上述の実施形態では、全ての電極に関して、各電極に対向する位置にハウジング内電極を設けているが、この構成に限定されない。例えば、ハウジング内電極の数を減らしてもよい。例えば、複数の電極に対して1つおきにハウジング内電極を設けてもよい。これにより、高電位部とハウジングの接地電位との間の空間に放電が起きるのを防ぎつつ、装置の製造コストを抑えることが可能となる。
【0049】
また、上述の第1乃至第3実施形態では、加速管構造を備えた電子銃およびコッククロフト・ウォルトン型高電圧発生装置について、本発明の応用例を示したが、本発明の応用例はこれらに限るものではない。例えば、本発明は、内部に高電位となる部分が存在する一般的な高電位装置であって、高電位部の周囲にハウジングが設けられたものにも適用することができる。例としては、シンクロトロン加速器の加速部などが挙げられる。この場合、高電位装置は、高電位が生じる高電位部と、高電位部と接地電位面との間に配置された少なくとも1つの第1の電極と、高電位部および第1の電極の周囲に設けられたハウジングとを備える。ここで、ハウジングが、樹脂などの絶縁性の固体材料で形成され、ハウジングが、接地電位面から高電位部に至るまでの所定の電位間隔に対応して配置された複数の第2の電極を備え、複数の第2の電極の少なくとも1つが、第1の電極に電気的に接続されて、複数の第2の電極の各々が、前記所定の電位間隔における各電位と同じ電位になるようにしてもよい。
また、本発明は、高電位部分と接地電位となる部分との間に電極と絶縁部材からなる積層構造を備える高電位装置にも適用することができる。それら積層構造となった中間電極が、装置の高電位部と接地電位との中間の電位を持つような装置に対して、上述したハウジング内電極を備えた樹脂ハウジングと同様の構造を適用することができる。これにより、絶縁性ガス等を使用しない、または使用量を減らすことができる高電位装置を得ることができる。
【0050】
また、図面における制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電子銃
2 電子光学系
3 試料ホルダ
4 検出器
5 電源部
6 計測部
7 制御装置
8 高電圧発生装置
10 電子線
11 電子源
13 ハウジング
14 加速管
15 真空排気装置
21 真空排気装置
31 試料
51 電源
110 ハウジング内陰極(第2の電極)
111〜114 ハウジング内電極(第2の電極)
120 陰極(第1の電極)
121〜124 電極(第1の電極)
125 陽極(第1の電極)
140〜144 抵抗器
150〜154 接続手段
81 高圧ケーブル
82 コネクタ
83 ハウジング
88 コッククロフト・ウォルトン回路
89 回路部分
860 電極
868 接地電極
881 コンデンサ
882 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6