特許第5959505号(P5959505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959505
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】光導波路回路
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20160719BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   G02B6/12 311
   G02B6/122
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-507366(P2013-507366)
(86)(22)【出願日】2012年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2012056584
(87)【国際公開番号】WO2012132907
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-70909(P2011-70909)
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100142712
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 至男
(72)【発明者】
【氏名】奈良 一孝
(72)【発明者】
【氏名】井上 崇
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼高
(72)【発明者】
【氏名】川島 洋志
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/027895(WO,A1)
【文献】 特開平08−278422(JP,A)
【文献】 特開平07−092326(JP,A)
【文献】 特開2011−027773(JP,A)
【文献】 特開2002−122895(JP,A)
【文献】 井上崇 他,石英系平面光導波路を用いたPBS集積コヒーレントミキサの開発,古河電工時報,2011年 2月,第127号,p.11-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12−6/14
G02F 2/00
H04B 10/04,10/06,10/142,10/152
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の光がそれぞれ入力される第1および第2の入力光導波路と、
前記第1の入力光導波路に接続した、第1の偏波ビームスプリッタと、
前記第2の入力光導波路に接続した、第2の偏波ビームスプリッタと、
前記第1の光が前記第1の偏波ビームスプリッタによって偏波分離されて出力された互いに直交する2つの偏波の光のうちの一方と、前記第2の光が前記第2の偏波ビームスプリッタによって偏波分離されて出力された互いに直交する2つの偏波の光のうちの一方とが入力され、該入力された2つの光を干渉させる第1の光干渉素子と、
前記第1の光が前記第1の偏波ビームスプリッタによって偏波分離されて出力された互いに直交する2つの偏波の光のうちの他方と、前記第2の光が前記第2の偏波ビームスプリッタによって偏波分離されて出力された互いに直交する2つの偏波の光のうちの他方とが入力され、該入力された2つの光を干渉させる第2の光干渉素子と、
前記第1の偏波ビームスプリッタと前記第1の光干渉素子および前記第2の光干渉素子とをそれぞれ接続する2つの第1の接続光導波路と、
前記第2の偏波ビームスプリッタと前記第1の光干渉素子および前記第2の光干渉素子とをそれぞれ接続する2つの第2の接続光導波路と、
を備え、
前記第1および第2の入力光導波路は、略直線状であるか、または所定の曲率半径および弧の角度を有する第1の屈曲部と、前記第1の屈曲部において生じる光の偏波面の回転を打ち消すように設定された曲率半径および弧の角度を有する第2の屈曲部とを有するS字形状であり、
前記第1の偏波ビームスプリッタ、前記2つの第1および第2の接続光導波路のうち前記第1の偏波ビームスプリッタと前記第1の光干渉素子とに接続された第1および第2の接続光導波路、ならびに前記第1の光干渉素子は、S字形状に配置され
前記第2の偏波ビームスプリッタ、前記2つの第1および第2の接続光導波路のうち前記第2の偏波ビームスプリッタと前記第2の光干渉素子とに接続された第1および第2の接続光導波路、ならびに前記第2の光干渉素子は、S字形状に配置されていることを特徴とする光導波路回路。
【請求項2】
前記2つの第1の接続光導波路は、前記第1の偏波ビームスプリッタの出力部から前記第1の光干渉素子の入力部まで、および前記第1の偏波ビームスプリッタの出力部から前記第2の光干渉素子の入力部まで、がそれぞれS字形状であり、
前記2つの第2の接続光導波路は、前記第2の偏波ビームスプリッタの出力部から前記第1の光干渉素子の入力部まで、および前記第2の偏波ビームスプリッタの出力部から前記第2の光干渉素子の入力部まで、がそれぞれS字形状であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路回路。
【請求項3】
前記第1および第2の偏波ビームスプリッタ、ならびに前記第1および第2の光干渉素子は、当該光導波路回路の幅方向に並列に配置していることを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項4】
第1および第2の光がそれぞれ入力される第1および第2の入力光導波路と、
前記第1の入力光導波路に接続した、第1の偏波ビームスプリッタと、
前記第2の入力光導波路に接続した分岐光導波路と、
前記第1の光が前記第1の偏波ビームスプリッタによって偏波分離されて出力された互いに直交する2つの偏波の光のうちの一方と、前記分岐光導波路により分岐された光のうちの一方とが入力され、該入力された2つの光を干渉させる第1の光干渉素子と、
前記第1の光が前記第1の偏波ビームスプリッタによって偏波分離されて出力された互いに直交する2つの偏波の光のうちの他方と、前記分岐光導波路により分岐された光のうちの他方とが入力され、該入力された2つの光を干渉させる第2の光干渉素子と、
前記第1の偏波ビームスプリッタと前記第1の光干渉素子および前記第2の光干渉素子とをそれぞれ接続する2つの第1の接続光導波路と、
前記分岐導波路と前記第1の光干渉素子および前記第2の光干渉素子とをそれぞれ接続する2つの第2の接続光導波路と、
を備え、
前記第1および第2の入力光導波路は、略直線状であるか、または所定の曲率半径および弧の角度を有する第1の屈曲部と、前記第1の屈曲部において生じる光の偏波面の回転を打ち消すように設定された曲率半径および弧の角度を有する第2の屈曲部とを有するS字形状であり、
前記2つの第1の接続光導波路は、前記第1の偏波ビームスプリッタの出力部から前記第1光干渉素子の入力部まで、および前記第1の偏波ビームスプリッタの出力部から前記第2の光干渉素子の入力部まで、がそれぞれS字形状であり、
前記2つの第2の接続光導波路は、前記分岐光導波路の出力部から前記第1の光干渉素子の入力部まで、および前記分岐光導波路の出力部から前記第2の光干渉素子の入力部まで、がそれぞれS字形状であり、
前記第1の偏波ビームスプリッタ、前記2つの第1の接続光導波路のうち前記第1の偏波ビームスプリッタと前記第1の光干渉素子とに接続された第1の接続光導波路、および前記第1の光干渉素子は、S字形状に配置され、
記第1の偏波ビームスプリッタ、前記2つの第1の接続光導波路のうち前記第2の偏波ビームスプリッタと前記第2の光干渉素子とに接続された第1の接続光導波路、前記第2の光干渉素子は、S字形状に配置されていることを特徴とする光導波路回路。
【請求項5】
前記2つの第2の接続光導波路とのいずれか一方に挿入され、入力された光の偏波を90度回転させる偏波回転素子とを備え、前記2つの第2の接続光導波路の一方の過剰損失と他方の過剰損失との差を補償する損失補償機構を有することを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項6】
前記損失補償機構は、分岐比が、前記過剰損失の差を補償するように設定されている前記分岐光導波路であることを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項7】
前記分岐光導波路は、Y分岐光導波路であることを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項8】
前記分岐光導波路は、マッハツェンダー干渉計型光導波路であることを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項9】
前記マッハツェンダー干渉計型光導波路は、少なくとも一方のアーム導波路の実効屈折率を変化させることによって前記分岐比が調整されていることを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項10】
前記損失補償機構は、前記偏波回転素子が挿入されていない方の接続光導波路に形成された光損失部であることを特徴とする請求項に記載の光導波路回路。
【請求項11】
前記光損失部は、前記接続光導波路に形成されたギャップ光導波路部であることを特徴とする請求項10に記載の光導波路回路。
【請求項12】
前記接続光導波路は、前記第1の入力光導波路と交差しており、前記ギャップ光導波路部は、前記交差している部分に形成されていることを特徴とする請求項11に記載の光導波路回路。
【請求項13】
前記光損失部は、前記接続光導波路を分断するスリットであることを特徴とする請求項10に記載の光導波路回路。
【請求項14】
前記光損失部は、前記接続光導波路に介挿された分岐光カプラであることを特徴とする請求項10に記載の光導波路回路。
【請求項15】
前記第1の屈曲部と前記第2の屈曲部とは、曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しいことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の光導波路回路。
【請求項16】
前記第1または第2の偏波ビームスプリッタは、マッハツェンダー型干渉計で構成されたものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の光導波路回路。
【請求項17】
前記第1または第2の光干渉素子は、90度ハイブリッド素子であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の光導波路回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路回路に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的かつ実用的なコヒーレント変調方式として、四値位相変調方式が普及している。また、この四値位相変調方式と偏波多重技術を組み合わせた偏波多重四値位相変調(DP−QPSK:Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying)方式は、周波数利用効率を高めることができる変調方式である。
【0003】
コヒーレント変調方式を用いる場合、受信側においては、90度ハイブリッド素子と呼ばれる光干渉素子を用いて局所発振(Local Oscillation:LO)光と伝送後の信号光とを混合して干渉させる。その後、90度ハイブリッド素子から出力された干渉させた光をバランスドフォトディテクタ(Balanced-Photo Detector:B−PD)によって受光することによって、変調信号のIチャネルとQチャネルとを分離して、電気信号として取り出すことができる。なお、DP−QPSK方式を用いる場合は、受信側においてたとえば偏波ビームスプリッタ(Polarization Beam Splitter:PBS)を用いて、偏波多重した2つの偏波の信号光を偏波分離する。その後に偏波ビームスプリッタから出力されるそれぞれの偏波の信号光を90度ハイブリッド素子に入力し、LO光との混合を行う。
【0004】
また、たとえばDP−QPSK方式等の偏波多重技術を使用する場合に、B−PDから出力される電気信号をデジタル信号処理することによって、偏波逆多重、信号光とLO光との相対位相差の推定や、分散補償、誤り訂正等を行う方式(偏波多重デジタルコヒーレント伝送方式)が提案されている。偏波多重デジタルコヒーレント伝送方式によれば、光学的な信号処理が極めて簡略化され、かつ受信精度を高めることができるので、大容量光伝送を実現する技術として非常に有望視されている。
【0005】
また、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)技術を用いて1つの素子内に偏波ビームスプリッタと90度ハイブリッド素子とを集積した光導波路回路(以下、適宜PBS集積型コヒーレントミキサと記載する)が開示されている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願番号PCT/JP2010/065313
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sakamaki et al., “One-chip integrated dual polarization optical hybrid using silica-based planar lightwave circuit technology”Proc. of ECOC2009, paper 2.2.4.
【非特許文献2】Sakamaki et al., “Dual polarization optical hybrid using silica-based planar lightwave circuit technology for digital coherent receiver”, Electronics Letters 7th January 2010 Vol. 46 No. 1, p.58.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、PBS集積型コヒーレントミキサのような複数の光回路素子を含む光導波路回路において、より小型かつ取り扱いやすい形状のものが求められている。
【0009】
また、本発明者らが鋭意検討したところ、PBS集積型コヒーレントミキサのように偏波ビームスプリッタを含む光導波路回路において、その光出力強度が安定しない場合があるという問題があることを見出した。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型かつ取り扱いやすい形状であり、安定した光出力強度を有する光導波路回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光導波路回路は、第1および第2の光がそれぞれ入力される第1および第2の入力光導波路と、前記第1の入力光導波路に接続した、第1の偏波ビームスプリッタと、前記第1の光が前記第1の偏波ビームスプリッタによって偏波分離されて出力された互いに直交する2つの偏波の光のうちの一方と、前記第2の光から生成された互いに直交する2つの偏波の光のうちの一方とが入力され、該入力された2つの光を干渉させる光干渉素子と、前記第1の偏波ビームスプリッタと前記光干渉素子とを接続する第1の接続光導波路と、前記第2の入力光導波路と前記光干渉素子とを接続する第2の接続光導波路と、を備え、前記第1および第2の入力光導波路は、略直線状であるか、または所定の曲率半径および弧の角度を有する第1の屈曲部と、前記第1の屈曲部において生じる光の偏波面の回転を打ち消すように設定された曲率半径および弧の角度を有する第2の屈曲部とを有するS字形状であり、前記第1の偏波ビームスプリッタ、前記第1および第2の接続光導波路、ならびに前記光干渉素子は、S字形状に配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記第1の屈曲部と前記第2の屈曲部とは、曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記第2の入力光導波路と前記第2の接続光導波路との間に設けられ、前記第1の偏波ビームスプリッタと略平行に配置され、前記第2の光を互いに直交する2つの偏波の光に偏波分離して出力する第2の偏波ビームスプリッタを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記第1および第2の偏波ビームスプリッタ、ならびに前記光干渉素子は、当該光導波路回路の幅方向に並列に配置していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記第1または第2の偏波ビームスプリッタは、マッハツェンダー型干渉計で構成されたものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記光干渉素子は、90度ハイブリッド素子であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、2つの前記光干渉素子と、前記2つの前記光干渉素子のそれぞれに接続した、2つの前記第1および第2の接続光導波路とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、2つの前記光干渉素子と、前記2つの前記光干渉素子のそれぞれに接続した、2つの前記第1および第2の接続光導波路と、前記第2の入力光導波路と前記2つの第2の接続光導波路とを接続する分岐光導波路と、前記第1および第2の接続光導波路とのいずれか一方に挿入され、入力された光の偏波を90度回転させる偏波回転素子とを備え、前記分岐光導波路ならびに前記第1および第2の接続光導波路の少なくともいずれか一つが、前記第1の接続光導波路における過剰損失と前記第2の接続光導波路における過剰損失との差を補償する損失補償機構を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記損失補償機構は、分岐比が、前記過剰損失の差を補償するように設定されている前記分岐光導波路であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記分岐光導波路は、Y分岐光導波路であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記分岐光導波路は、マッハツェンダー干渉計型光導波路であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記マッハツェンダー干渉計型光導波路は、少なくとも一方のアーム導波路の実効屈折率を変化させることによって前記分岐比が調整されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記損失補償機構は、前記偏波回転素子が挿入されていない方の接続光導波路に形成された光損失部であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記光損失部は、前記接続光導波路に形成されたギャップ光導波路部であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記接続光導波路は、前記第1の入力光導波路と交差しており、前記ギャップ光導波路部は、前記交差している部分に形成されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記光損失部は、前記接続光導波路を分断するスリットであることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る光導波路回路は、上記の発明において、前記光損失部は、前記接続光導波路に介挿された分岐光カプラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、小型かつ取り扱いやすい形状であり、安定した光出力強度を有する光導波路回路を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、実施の形態1に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図2図2は、LO光の偏波状態を説明する模式的な断面図である。
図3図3は、LO光の偏波状態を説明する模式的な断面図である。
図4図4は、接続光導波路の屈曲部における光の偏波状態を説明する図である。
図5図5は、接続光導波路の屈曲部における光の偏波状態を説明する図である。
図6図6は、実施の形態2に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図7図7は、実施の形態3に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図8図8は、PBS集積型コヒーレントミキサとして使用できる光導波路回路の一例を示す模式的な平面図である。
図9図9は、LO光の偏波状態を説明する模式的な断面図である。
図10図10は、LO光の偏波状態を説明する模式的な断面図である。
図11図11は、実施の形態4に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図12図12は、実施の形態5に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図13A図13Aは、実施の形態6に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図13B図13Bは、図13Aに示す光導波路回路の一部拡大図である。
図14図14は、実施の形態7に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図15図15は、実施の形態8に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図16A図16Aは、実施の形態9に係る光導波路回路の模式的な平面図である。
図16B図16Bは、図16Aに示す光導波路回路の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照して本発明に係る光導波路回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の寸法の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0031】
(実施の形態1)
はじめに、本発明の実施の形態1に係る光導波路回路について説明する。実施の形態1に係る光導波路回路は、PBS集積型コヒーレントミキサとして使用できる、石英系ガラス材料からなるPLC型の光導波路回路である。
【0032】
図1は、実施の形態1に係る光導波路回路の模式的な平面図である。図1に示すように、光導波路回路100は、第1および第2の入力光導波路である入力光導波路11、12と、第1および第2の偏波ビームスプリッタである偏波ビームスプリッタ21、22と、第1および第2の接続光導波路である接続光導波路31、32と、光干渉素子である90度ハイブリッド素子41と、別の第1および第2の接続光導波路である接続光導波路51、52と、別の光干渉素子である90度ハイブリッド素子61とを備えている。
【0033】
入力光導波路11、12は、光導波路回路100の光入力端面100a側に配置されており、それぞれ光出力端面100b側に向かって略直線状に形成されている。
【0034】
偏波ビームスプリッタ21は、入力光導波路11に接続したY分岐光導波路21aと、Y分岐光導波路21aに接続したアーム光導波路21b、21cと、アーム光導波路21b、21cに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ21dとを備えている。偏波ビームスプリッタ21は、マッハツェンダー(Mach-Zehnder Interferometer:MZI)型干渉計の構成を有している。
【0035】
アーム光導波路21b、21cの長さおよび複屈折率は、所定の波長において、TM偏波(光導波路回路100が形成される基板面に垂直方向の偏波)の光が3dBカプラ21dの一方の出力ポートから略100%出力し、TE偏波(基板面と平行方向の偏波)の光が3dBカプラ21dのもう一方の出力ポートから略100%出力する干渉特性を有する光路長になるようにそれぞれ設定されている。これによって、偏波ビームスプリッタ21は、Y分岐光導波路21aの入力ポートから入力された光を、TE偏波の光とTM偏波の光とに偏波分離して、各偏波の光を3dBカプラ21dの各出力ポートから出力する。
【0036】
偏波ビームスプリッタ22は、入力光導波路12に接続したY分岐光導波路22aと、Y分岐光導波路22aに接続したアーム光導波路22b、22cと、アーム光導波路22b、22cに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ22dとを備えている。偏波ビームスプリッタ22もMZI型干渉計の構成を有している。
【0037】
アーム光導波路22b、22cの長さおよび複屈折率も、所定の波長において、TM偏波の光が3dBカプラ22dの一方の出力ポートから略100%出力し、TE偏波の光が3dBカプラ22dのもう一方の出力ポートから略100%出力する干渉特性を有する光路長になるようにそれぞれ設定されている。これによって、偏波ビームスプリッタ22は、Y分岐光導波路22aの入力ポートから入力された光を、TE偏波の光とTM偏波の光とに偏波分離して、互いに直交する2つの偏波の光を生成し、各偏波の光を3dBカプラ22dの各出力ポートから出力する。
【0038】
偏波ビームスプリッタ21、22は、光入力端面100aからそれぞれ光出力端面100b側に向かって互いに略平行に配置した状態で形成されている。なお、アーム光導波路21b、21c、22b、22cは、直線部と該直線部から続くそれぞれ屈曲部21ba、21ca、22ba、22caを有している。このような屈曲部の存在によって偏波ビームスプリッタ21、22は光入力端面100aから光出力端面100bに向かう方向を長さ方向としたとき、長さ方向に小さいスペースで配置できるようになっている。
【0039】
接続光導波路31は、屈曲部31aと、屈曲部31bと、屈曲部31aと屈曲部31bとを接続する直線部31cとを備えており、全体的にS字形状になっている。屈曲部31aは偏波ビームスプリッタ21の3dBカプラ21dに接続している。屈曲部31bは90度ハイブリッド素子41に接続している。同様に、接続光導波路32は、屈曲部32aと、屈曲部32bと、屈曲部32aと屈曲部32bとを接続する直線部32cとを備えている。屈曲部32aは偏波ビームスプリッタ22の3dBカプラ22dに接続している。屈曲部32bは90度ハイブリッド素子41に接続している。すなわち、接続光導波路32は、入力導波路12と90度ハイブリッド素子41とを、偏波ビームスプリッタ22が間に設けられた状態で接続している。
【0040】
90度ハイブリッド素子41は、接続光導波路31に接続したY分岐光導波路41aと、接続光導波路32に接続したY分岐光導波路41bと、Y分岐光導波路41aに接続したアーム光導波路41c、41dと、Y分岐光導波路41bに接続したアーム光導波路41e、41fと、アーム光導波路41c、41fに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ41gと、アーム光導波路41d、41eに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ41hと、3dBカプラ41gに接続した出力光導波路41i、41jと、3dBカプラ41hに接続した出力光導波路41k、41lと、を備えている。90度ハイブリッド素子41は、光入力端面100a側から光出力端面100b側に向かって、出力光導波路41i、41j、41k、41lが光出力端面100bに達するように略直線状に形成されている。
【0041】
アーム光導波路41c、41dは同じ光路長である。アーム光導波路41eの光路長とアーム光導波路41fの光路長とは、光路差が光の位相に換算して90度となるように設定されている。たとえば、アーム光導波路41eの光路長はアーム光導波路41c、41dの光路長よりも光の位相に換算してπ/4ラジアン(45度)だけ短く設定され、アーム光導波路41fの光路長はアーム光導波路41c、41dの光路長よりも光の位相に換算してπ/4ラジアンだけ長く設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子41は、3dBカプラ41hの出力特性と3dBカプラ41gとで位相が90度異なる干渉特性を有する。
【0042】
一方、接続光導波路51は、屈曲部51aと、屈曲部51bと、屈曲部51aと屈曲部51bとを接続する直線部51cとを備えており、全体的にS字形状になっている。屈曲部51aは偏波ビームスプリッタ21の3dBカプラ21dに接続している。屈曲部51bは90度ハイブリッド素子61に接続している。同様に、接続光導波路52は、屈曲部52aと、屈曲部52bと、屈曲部52aと屈曲部52bとを接続する直線部52cとを備えている。屈曲部52aは偏波ビームスプリッタ22の3dBカプラ22dに接続している。屈曲部52bは90度ハイブリッド素子61に接続している。すなわち、接続光導波路52は、入力導波路12と90度ハイブリッド素子61とを、偏波ビームスプリッタ22が間に設けられた状態で接続している。
【0043】
90度ハイブリッド素子61は、接続光導波路51に接続したY分岐光導波路61aと、接続光導波路52に接続したY分岐光導波路61bと、Y分岐光導波路61aに接続したアーム光導波路61c、61dと、Y分岐光導波路61bに接続したアーム光導波路61e、61fと、アーム光導波路61c、61fに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ61gと、アーム光導波路61d、61eに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ61hと、3dBカプラ61gに接続した出力光導波路61i、61jと、3dBカプラ61hに接続した出力光導波路61k、61lと、を備えている。90度ハイブリッド素子61は、光入力端面100a側から光出力端面100b側に向かって、出力光導波路61i、61j、61k、61lが光出力端面100bに達するように略直線状に形成されている。
【0044】
アーム光導波路61c、61dは同じ光路長である。アーム光導波路61eの光路長とアーム光導波路61fの光路長とは、光路差が光の位相に換算して90度となるように設定されている。たとえば、アーム光導波路61eの光路長はアーム光導波路61c、61dの光路長よりも光の位相に換算してπ/4ラジアンだけ短く設定され、アーム光導波路61fの光路長はアーム光導波路61c、61dの光路長よりも光の位相に換算してπ/4ラジアンだけ長く設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子61は、3dBカプラ61hの出力特性と3dBカプラ61gとで位相が90度異なる干渉特性を有する。
【0045】
この光導波路回路100では、偏波ビームスプリッタ21、22、接続光導波路31、32、および90度ハイブリッド素子41が、S字形状を形成するように配置されている。また、偏波ビームスプリッタ21、22、接続光導波路51、52、および90度ハイブリッド素子61も、別のS字形状を形成するように配置されている。これによって、この光導波路回路100は、偏波ビームスプリッタ21、22および90度ハイブリッド素子41、61が光導波路回路100の側面100c、100dの間で幅方向に並列に配置される。これによって、光導波路回路100は光入力端面100aと光出力端面100bとの間の距離(長さ)が側面100c、100dの間の距離(幅)に対して長くならず、小型で取り扱いやすい形状となっている。
【0046】
つぎに、光導波路回路100の動作の一例について説明する。まず、図1に示すように、入力光導波路11に第1の光としての信号光L1を入力し、入力光導波路12に第2の光としてのLO光L2を入力する。ここで、信号光L1は、所定の偏波(X偏波とする)のQPSK信号光とX偏波と直交する偏波(Y偏波とする)のQPSK信号光とを偏波多重したDP−QPSK信号光である。LO光L2は、同じ強度のX偏波の光とY偏波の光とを偏波多重したものである。なお、信号光L1とLO光L2とは同じ波長を有するとするが、異なっていても良い。また、信号光L1およびLO光L2の波長は、たとえば光通信で用いられる通信波長帯域内の波長であり、たとえば波長1520nm〜1630nmのうちのいずれかの波長である。
【0047】
入力されたLO光L2が偏波ビームスプリッタ22によって偏波分離される様子を、図2図3を用いて説明する。図2図3は、LO光L2の偏波状態を説明する模式的な断面図である。図2の断面はY分岐光導波路22a側の入力光導波路12の端部での断面を示している。図3の断面は3dBカプラ22dの出力ポート側の接続光導波路32、52での断面を示している。なお、図2図3に示すように、光導波路回路100は、シリコン等からなる基板101上に形成された石英ガラス系材料からなるクラッド層102内に、入力光導波路12をはじめとする光導波路が形成されることによって構成されたものである。
【0048】
図2に示すように、LO光L2は、同じ強度のY偏波の光L21とX偏波の光L22とが偏波多重されたものである。そして、LO光L2は、X偏波の光L22がTE偏波となり、Y偏波の光L21がTM偏波となるように入力光導波路12に入力される。すなわち、LO光L2は、Y偏波の光L21とX偏波の光L22の位相がそろっている場合は直線偏波であると見なすことができ、偏波面がTE偏波およびTM偏波に対して45度の角度になるように入力される。一方、一般にY偏波の光L21とX偏波の光L22の位相がずれている場合は楕円偏波となるが、各偏波成分の強度は等しいので、楕円の長軸がTE偏波およびTM偏波に対して45度の角度をなす。そして、入力光導波路12は略直線状であるので、光L22がTE偏波のまま、かつ光L21がTM偏波のまま導波し、偏波ビームスプリッタ22のY分岐光導波路22aに入力する。
【0049】
このように、この光導波路回路100では、略直線状の入力光導波路12が、入力されたLO光L2の偏波状態を維持したまま偏波ビームスプリッタ22に入力させる。これによって、偏波ビームスプリッタ22に入力されるLO光L2の偏波状態が偏波ビームスプリッタ22の設計どおりの状態であり、かつその偏波状態が安定して入力される。その結果、図3に示すように、3dBカプラ22dの出力ポート側では、入力されたLO光L2の直交する偏波成分である光L22と光L21とが偏波クロストークを起こすことが抑制または防止される。その結果、光L21はTM偏波のまま接続光導波路32に安定した光強度で出力される。また、光L22はTE偏波のまま接続光導波52に安定した光強度で出力される。
【0050】
一方、信号光L1については、偏波多重されたX偏波とY偏波のQPSK信号光がTE偏波とTM偏波と一般に一致しない状態で入力光導波路11に入力される。そして、入力光導波路11の入力端でTE偏波であった偏波成分がTE偏波のまま、かつ入力端でTM偏波であった偏波成分がTM偏波のまま導波し、設計どおりかつ安定した偏波状態で偏波ビームスプリッタ21のY分岐光導波路21aに入力される。その後、偏波多重されたQPSK信号光は偏波ビームスプリッタ21によって偏波クロストークが抑制または防止された状態で偏波分離される。その結果、偏波多重されたQPSK信号光のうち入力光導波路11の入力端でTE偏波を持つ成分はTE偏波のまま接続光導波51に安定した光強度で出力される。また、偏波多重されたQPSK信号光のうち入力端でTM偏波を持つ成分はTM偏波のまま接続光導波路31に安定した光強度で出力される。なお、この時点で光学的に偏波分離された信号光成分は、QPSK信号光の送信端で多重されたX偏波およびY偏波成分に偏波逆多重されたものではない。以下に述べるように、これらの偏波分離された信号光成分を90度ハイブリッド素子41、61によりLO光L2を偏波分離した光L21、L22と干渉させ、受光した後にデジタル信号処理を適用することで、偏波逆多重がなされる。
【0051】
偏波ビームスプリッタ21、22で偏波分離された後、LO光L2のTM偏波の光L21は接続光導波路32を導波して90度ハイブリッド素子41のY分岐光導波路41bに入力される。また、TM偏波として分離されたQPSK信号光は接続光導波路31を導波して90度ハイブリッド素子41のY分岐光導波路41aに入力される。90度ハイブリッド素子41は、光L21とTM偏波として分離されたQPSK信号光とを干渉させて、QPSK信号光に含まれるIチャネル成分の信号光を、安定した光強度で出力光導波路41i、41jに出力する。また、90度ハイブリッド素子41は、同様にしてQPSK信号光に含まれるQチャネル成分の信号光を、安定した光強度で出力光導波路41k、41lに出力する。
【0052】
出力光導波路41i、41j、出力光導波路41k、41lから出力されたTM偏波のIチャネル成分、Qチャネル成分の信号光は、それぞれB−PDにより受光されて電気信号に変換された後に所定のデジタル信号処理を施されて復調される。
【0053】
一方、LO光L2のTE偏波の光L22は接続光導波路52を導波して90度ハイブリッド素子61のY分岐光導波路61bに入力される。また、TE偏波として分離されたQPSK信号光は接続光導波路51を導波して90度ハイブリッド素子61のY分岐光導波路61aに入力される。90度ハイブリッド素子61は、光L22とTE偏波として分離されたQPSK信号光とを干渉させて、QPSK信号光に含まれるIチャネル成分の信号光を、安定した光強度で出力光導波路61i、61jに出力する。また、90度ハイブリッド素子61は、同様にしてQPSK信号光に含まれるQチャネル成分の信号光を、安定した光強度で出力光導波路61k、61lに出力する。
【0054】
出力光導波路61i、61j、出力光導波路61k、61lから出力されたTE偏波のIチャネル成分、Qチャネル成分の信号光も同様に、それぞれB−PDにより受光されて電気信号に変換された後に所定のデジタル信号処理を施されて復調される。
【0055】
以上説明したように、実施の形態1に係る光導波路回路100は、入力光導波路11、21が略直線状であることによって、偏波ビームスプリッタ21、22が偏波クロストーク無くTM偏波とTE偏波とを偏波分離できるので、その偏波状態および光出力強度が安定するという効果を奏する。
【0056】
つぎに、実施の形態1に係る光導波路回路100において偏波依存特性が安定する効果について、光導波路回路100と同様にPBS集積型コヒーレントミキサとして使用できる、本発明者らの先願(特許文献1参照)に記載された光導波路回路の構成を例としてより具体的に説明する。
【0057】
図8は、PBS集積型コヒーレントミキサとして使用できる光導波路回路の一例を示す模式的な平面図である。図8に示す光導波路回路1000は、光導波路回路100において、偏波ビームスプリッタ21、22を、それぞれ偏波ビームスプリッタ1021、1022に置き換え、かつ接続光導波路31、32、51、52を、それぞれ接続光導波1031、1032、1051、1052に置き換えたものである。なお、偏波ビームスプリッタ1021は、Y分岐光導波路1021aと、Y分岐光導波路1021aに接続したアーム光導波路1021b、1021cと、アーム光導波路1021b、1021cに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ1021dとを備えている。偏波ビームスプリッタ1022は、Y分岐光導波路1022aと、Y分岐光導波路1022aに接続したアーム光導波路1022b、1021cと、アーム光導波路1022b、1022cに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ1022dとを備えている。
【0058】
入力光導波路1011、1012は、入力光導波路11、12とは異なり、U字形状の屈曲部1011a、1012aをそれぞれ有している。
【0059】
入力されたLO光L2が偏波ビームスプリッタ1022によって偏波分離される様子を、図9図10を用いて説明する。図9図10は、LO光L2の偏波状態を説明する模式的な断面図である。図9の断面はY分岐光導波路1022a側の入力光導波路1012の端部での断面を拡大して示している。図10の断面は3dBカプラ1022dの出力ポート側の接続光導波路1032、1052での断面を示している。光導波路回路1000も、シリコン等からなる基板101上に形成された石英系ガラス材料からなるクラッド層102内に、入力光導波路1012をはじめとする光導波路が形成されることによって構成されたものである。
【0060】
光導波路回路1000の場合は、入力光導波路1012がU字形状の屈曲部1012aを有する。そのため、光導波路回路100と同様にLO光L2をその偏波面がTE偏波およびTM偏波に対して45度の角度になるように入力光導波路1012に入力したとしても、偏波面が回転し、たとえばLO光L3のような偏波状態になる。
【0061】
このように、本発明者らが鋭意検討したところ、光導波路に屈曲部がある場合、応力等に起因してその光導波路を導波する光の偏波面が回転することを見出した。
【0062】
入力光導波1012において光の偏波面が回転してしまうと、偏波ビームスプリッタ1022にはLO光L3が設計とは異なる偏波状態で入力する。その結果、偏波ビームスプリッタ1022の出力も、設計とは異なる結果が得られる。図9では、LO光L3がTM偏波およびTE偏波の軸に分解される様子を示している。光L3aおよび光L3bは、LO光L2をTMおよびTE偏波成分に分解した光L21および光L22(図2参照)が回転したものである。光L3aをTM偏波軸とTE偏波軸に射影した成分がそれぞれ光L3a1と光L3a2であり、光L3bをTM偏波軸とTE偏波軸に射影した成分がそれぞれ光L3b1と光L3b2である。偏波ビームスプリッタ1022により偏波分離されて出力される光のうち、TM偏波成分は光L3a1と光L3b1とを合波したもの、そしてTE偏波成分は光L3a2と光L3b2とを合波したものである。
【0063】
ここで、もし光L3が直線偏波であれば、光L3aと光L3bは位相がそろっている。その結果、光L3a1と光L3b1、そして光L3a2と光L3b2をそのまま足し合わせて得られる光L31および光L32が、偏波ビームスプリッタ1022の出力として得られる(図10参照)。なお光L31と光L32は、光L3をTMおよびTE偏波軸にそのまま射影して得られる成分である。このときTM偏波成分の光L31とTE偏波成分の光L32の強度比は、LO光L3の回転角度に応じて1対1からずれる。このことは、偏波多重QPSK信号を復調する際に問題となる。
【0064】
一方、入力されたLO光L2のX偏波とY偏波との間に揺らぎのある群遅延があると、光L3aと光L3bがランダムな位相差を持つことになる。この場合、TM偏波軸において光L3a1と光L3b1を合波して得られる出力光の強度はその位相差に依存する。TE偏波軸において光L3a2と光L3b2を合波して得られる出力光の強度についても同様である。このため偏波ビームスプリッタ1022の出力の干渉状態が揺らぎ、光強度が不安定になる。同様の出力光の不安定は偏波ビームスプリッタ1021においても発生する。その結果、偏波ビームスプリッタ1021、1022からの出力光が入力されて所定の光信号処理がなされるべき90度ハイブリッド素子41、61からの光出力の強度も不安定になる。
【0065】
これに対して、本実施の形態1に係る光導波路回路100では、入力光導波路11、12を略直線状としているため、入力したLO光L2の偏波面の回転はほとんど発生しない。その結果、偏波ビームスプリッタ21、22、さらには出力光導波路41i、41j、41k、41l、61i、61j、61k、61lからの光出力強度が安定する。
【0066】
つぎに、接続光導波路における光の偏波状態について説明する。図4は、接続光導波路31、32の屈曲部31a、32aにおける光の偏波状態を説明する図である。また、図5は、接続光導波路31、32の屈曲部31b、32bにおける光の偏波状態を説明する図である。
【0067】
図4に示すように、屈曲部31aでは、偏波ビームスプリッタ22がLO光L2から偏波分離したTM偏波の光L21が、たとえば光L21aのように紙面時計回りにその偏波面が回転する。同様に、屈曲部32aでは、偏波ビームスプリッタ21が信号光L1から偏波分離したTM偏波の光L11が、光L11aのようにその偏波面が、光L21と同じ方向に回転する。
【0068】
しかし、屈曲部31b、32bは、それぞれ屈曲部31a、32aとは曲率の正負が逆に設定されている。その結果、屈曲部31bでは、光L11aが紙面反時計回りにその偏波面が回転し、光L11bのような偏波状態になる。また、屈曲部32bでも、光L21aが紙面反時計回りにその偏波面が回転し、光L21bのような偏波状態になる。このように、屈曲部31aと屈曲部31b、および屈曲部32bと32bが、それぞれ正負が逆の曲率半径を有することによって、各屈曲部における偏波面の回転は打ち消しあう。
【0069】
また、接続光導波路51、52についても同様に、屈曲部51aと屈曲部51b、および屈曲部52bと52bが、それぞれ正負が逆の曲率を有することによって、各屈曲部における偏波面の回転は打ち消しあう。
【0070】
なお、接続光導波路31、32、51、52のそれぞれの屈曲部は、同じ接続光導波路内の一方の屈曲部で発生する光の偏波面の回転が他方の屈曲部で十分に打ち消しあうように各屈曲部の曲率半径および弧の角度を設定することがより好ましい。なお、屈曲部で発生する光の偏波面の回転を十分に打ち消しあうのは、曲率の正負が逆であり、曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しい2つの屈曲部を組み合わせるように設計することが好ましい。
【0071】
ただし、光の偏波面の回転は完全に打ち消しあうようにされる必要はない。接続光導波路31、32のそれぞれで導波される光L11とL21との相対的な偏波状態の関係が、導波前と導波後とで変化しないような曲率半径および弧の角度であれば、90度ハイブリッド素子41において所望の安定した干渉特性を実現することができる。接続光導波路51、52についても同様である。
【0072】
なお、偏波ビームスプリッタ21、22の各アーム光導波路21b、21c、22b、22cの屈曲部21ba、21ca、22ba、22caは、それぞれがいずれも曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しい2つの屈曲部を組み合わせたS字形状を成している。したがって、これらの屈曲部では光の偏波面の回転が略完全に打ち消しあう。
【0073】
また、実施の形態1に係る光導波路回路100では、光導波路が交差する箇所が、光導波路回路100の光出力端面100b側に位置する接続光導波路32と接続光導波路52との交差点の1箇所である。光導波路どうしが交差する交差点が多いと光強度の損失が増大する場合があり、かつ交差点でクロストーク成分が発生すると信号品質が劣化する場合があるため好ましくない。光導波路回路100では、この交差点が1箇所しかないため、光強度の損失および信号品質の劣化が大幅に抑制されるので好ましい。
【0074】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。図6は、実施の形態2に係る光導波路回路の模式的な平面図である。この光導波路回路200は、図1に示す光導波路回路100において、接続光導波路31、32、51、52を、それぞれ接続光導波路231、232、251、252に置き換えた構成を有する。
【0075】
接続光導波路231は、屈曲部231aと、屈曲部231bと、屈曲部231aと屈曲部231bとを接続する直線部231cとを備えており、全体的にS字形状になっている。屈曲部231aは偏波ビームスプリッタ21に接続している。屈曲部231bは90度ハイブリッド素子41に接続している。同様に、接続光導波路232は、屈曲部232aと、屈曲部232bと、屈曲部232aと屈曲部232bとを接続する直線部232cとを備えている。屈曲部232aは偏波ビームスプリッタ22に接続している。屈曲部232bは90度ハイブリッド素子41に接続している。
【0076】
接続光導波路251も同様に、屈曲部251aと、屈曲部251bと、屈曲部251aと屈曲部251bとを接続する直線部251cとを備えており、全体的にS字形状になっている。屈曲部251aは偏波ビームスプリッタ22に接続している。屈曲部251bは90度ハイブリッド素子61に接続している。同様に、接続光導波路252は、屈曲部252aと、屈曲部252bと、屈曲部252aと屈曲部252bとを接続する直線部252cとを備えている。屈曲部252aは偏波ビームスプリッタ22に接続している。屈曲部252bは90度ハイブリッド素子61に接続している。
【0077】
この光導波路回路200も、実施の形態1に係る光導波路回路100と同様に、長さが幅に対して長くならず、小型で取り扱いやすい形状となっており、かつ偏波状態および光出力強度が安定する。
【0078】
さらに、光導波路回路200では、屈曲部231a、232a、251a、252aはいずれも同一の形状を有する。屈曲部231b、232b、251b、252bもいずれも同一の形状を有する。さらに、直線部231c、232c、251c、252cもいずれも同一の形状を有する。すなわち、光導波路回路200では、各接続光導波路231、232、251、252が、いずれも同じ形状の屈曲部と直線部とを組み合わせて構成されている。その結果、各接続光導波路231、232、251、252の光路長を同一に揃えることが容易である。
【0079】
ここで、入力される信号光L1とLO光L2とを偏波ビームスプリッタ21、22によって偏波分離した後のTM偏波の各光およびTE偏波の各光は、同一のタイミングで90度ハイブリッド素子41、61のそれぞれに入力される必要がある。この光導波路回路200では、各接続光導波路231、232、251、252の光路長を同一に揃えることが容易であるため、光の入力のタイミングを揃えることが容易になる。
【0080】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。図7は、実施の形態3に係る光導波路回路の模式的な平面図である。この光導波路回路300は、図1に示す光導波路回路100において、入力光導波路11、12を入力光導波路311、312に置き換え、接続光導波路31、32、51、52を、それぞれ接続光導波路331、332、351、352に置き換え、90度ハイブリッド素子41、61を、それぞれ90度ハイブリッド素子341、361に置き換えた構成を有する。
【0081】
入力光導波路311は、曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しい第1および第2の屈曲部を組み合わせたS字形状の屈曲部311aを有する。また、入力光導波路312も、曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しい第1および第2の屈曲部を組み合わせたS字形状の屈曲部312aを有する。したがって、入力光導波路311、312では、これらの屈曲部で発生した光の偏波面の回転が略完全に打ち消しあう。その結果、実施の形態1に係る光導波路回路100の入力光導波路11、12と同様に、偏波ビームスプリッタ21、22に入力される信号光L1、LO光L2は、設計どおりの安定した偏波状態となる。したがって、この光導波路回路300は安定した光出力強度を有するものとなる。
【0082】
また、90度ハイブリッド素子341は、90度ハイブリッド素子41と同様のY分岐光導波路、アーム光導波路、3dBカプラを備えている。ただし、出力光導波路341i、341j、341k、341lについては、3dBカプラから光入力端面300a側に延伸し配置され、その後U字状に折り返して光出力端面300b側に延伸している。
【0083】
同様に、90度ハイブリッド素子361は、90度ハイブリッド素子61と同様のY分岐光導波路、アーム光導波路、3dBカプラを備えている。ただし、出力光導波路361i、361j、361k、361lについては、3dBカプラから光入力端面300a側に延伸し配置され、その後U字状に折り返して光出力端面300b側に延伸している。
【0084】
したがって、この光導波路回路300では、偏波ビームスプリッタ21、22、接続光導波路331、332、および90度ハイブリッド素子341が、全体的にS字形状を形成するように配置されている。また、偏波ビームスプリッタ21、22、接続光導波路351、352、および90度ハイブリッド素子361も、全体的に別のS字形状を形成するように配置されている。これによって、この光導波路回路300は、偏波ビームスプリッタ21、22および90度ハイブリッド素子341、361が光導波路回路300の側面300c、300dの間で並列になるように配置される。これによって、光導波路回路300は光入力端面300aと光出力端面300bとの間の長さが側面300c、300dの間の幅に対して長くならず、小型で取り扱いやすい形状となっている。
【0085】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4について説明する。図11は、実施の形態4に係る光導波路回路の模式的な平面図である。この光導波路回路400は、図1に示す光導波路回路100において、入力光導波路11、12を入力光導波路411、412に置き換え、偏波ビームスプリッタ21を偏波ビームスプリッタ421に置き換え、偏波ビームスプリッタ22を削除し、接続光導波路31、32、51、52を、それぞれ接続光導波路431、432、451、452に置き換え、さらに、Y分岐光導波路401、スリット402、および1/2波長板403を備えた構成を有する。
【0086】
信号光L1が入力される入力光導波路411は、曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しい第1および第2の屈曲部を組み合わせたS字形状の屈曲部411aを有する。入力光導波路412は、略直線状である。
【0087】
偏波ビームスプリッタ421は、入力光導波路411に接続したY分岐光導波路421aと、Y分岐光導波路421aに接続した直線状のアーム光導波路421b、421cと、アーム光導波路421b、421cに接続した方向性結合器からなる3dBカプラ421dとを備えている。
【0088】
接続光導波路431は、屈曲部431aと、屈曲部431bと、屈曲部431aと屈曲部431bとを接続する直線部431cとを備えており、全体的にS字形状になっている。屈曲部431aは偏波ビームスプリッタ421の3dBカプラ421dに接続している。屈曲部431bは90度ハイブリッド素子41に接続している。同様に、接続光導波路451は、屈曲部451aと、屈曲部451bと、屈曲部451aと屈曲部451bとを接続する直線部451cとを備えている。屈曲部451aは偏波ビームスプリッタ421の3dBカプラ421dに接続している。屈曲部451bは90度ハイブリッド素子61に接続している。
【0089】
Y分岐光導波路401は、入力部401aと、出力部401b、401cとを備えている。入力部401aは入力光導波路412に接続している。
【0090】
接続光導波路432、452は、それぞれY分岐光導波路401の出力部401b、401cに接続している。接続光導波路432、452は、いずれも曲率の正負が逆で曲率半径が等しく、かつ弧の角度が等しい第1および第2の屈曲部を組み合わせたS字形が直線部を介して2つ連接した形状を有する。接続光導波路432、452はそれぞれ90度ハイブリッド素子41、61に接続している。接続光導波路452と入力光導波路411とは交差点Cで交差している。
【0091】
スリット402は、ダイサやエッチング等によって接続光導波路432を分断する深さで形成されている。偏波回転素子としての1/2波長板403は、スリット402に挿入されている。これによって、1/2波長板403は、接続光導波路432に挿入されている。1/2波長板403の光軸は接続光導波路432の偏波軸と45度の角度をなすように調整されている。
【0092】
この光導波路回路400では、第2の光としてのLO光L3はTM偏波またはTE偏波の光として入力光導波路412から入力される。以下では、LO光L3がTM偏波の光として入力される場合を例として説明するが、TE偏波の光として入力される場合も同様である。
【0093】
Y分岐光導波路401は、入力部401aから入力されたLO光L3を分岐して出力部401b、401cのそれぞれから出力する。接続光導波路432は、出力部401bから出力されたLO光を導波して、90度ハイブリッド素子41に入力させる。接続光導波路432に挿入された1/2波長板403は、TM偏波のLO光の偏波を90度回転させてTE偏波とする。したがって、LO光はTE偏波として90度ハイブリッド素子41に入力される。
【0094】
一方、接続光導波路452は、出力部401cから出力されたLO光を導波して、TM偏波のまま90度ハイブリッド素子61に入力させる。このように、入力されたLO光L3からTM偏波の光とTE偏波の光とが生成され、各90度ハイブリッド素子41、61に入力される。
【0095】
ここで、接続光導波路432には1/2波長板403が挿入されているので、1/2波長板403の挿入損失による過剰損失が発生している。一方、接続光導波路452には交差点Cが存在するので、交差損失による過剰損失が発生している。その結果、90度ハイブリッド素子41に入力するTE偏波のLO光は、90度ハイブリッド素子61に入力するTM偏波のLO光よりも、過剰損失差=(1/2波長板403の挿入損失−交差点Cでの交差損失)の分だけ過剰損失を受ける。
【0096】
これに対して、本実施の形態4に係る光導波路回路400では、損失補償機構としてのY分岐光導波路401の分岐比が、上記の過剰損失差を補償する分岐比に設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子41に入力するTE偏波のLO光の強度と、90度ハイブリッド素子61に入力するTM偏波のLO光の強度とを等しくすることができる。
【0097】
たとえば、1/2波長板403の挿入損失が0.5dBであり、交差点Cでの交差損失が0.05dBとすると、過剰損失差は0.45dBである。この場合、出力部401bと出力部401cとの分岐比を0.526:0.474とすれば、上記過剰損失差は補償される。
【0098】
なお、本実施の形態4に係る光導波路回路400でも、偏波ビームスプリッタ421または90度ハイブリッド素子41、61に入力される信号光L1、LO光L3は、設計どおりの安定した偏波状態となる。したがって、この光導波路回路400は安定した光出力強度を有するものとなる。
【0099】
また、偏波ビームスプリッタ421、接続光導波路431、および90度ハイブリッド素子41が、全体的にS字形状を形成するように配置されている。また、偏波ビームスプリッタ421、接続光導波路451、および90度ハイブリッド素子61も、全体的に別のS字形状を形成するように配置されている。これによって、この光導波路回路400も、小型で取り扱いやすい形状となっている。
【0100】
(実施の形態5)
つぎに、本発明の実施の形態5について説明する。図12は、実施の形態5に係る光導波路回路の模式的な平面図である。この光導波路回路500は、図11に示す光導波路回路400において、入力光導波路412を入力光導波路512に置き換え、Y分岐光導波路401をMZI光分岐導波路501に置き換え、さらに、ヒータ504を備えた構成を有する。
【0101】
入力光導波路512は、略直線状である。MZI光分岐導波路501は、入力部501aと、アーム導波路501b、501cと、出力部501d、501eとを備えている。入力部501aは入力光導波路512に接続している。ヒータ504は、アーム導波路501c上方のクラッド層表面に形成された、たとえば金属薄膜からなるヒータである。
【0102】
この光導波路回路500でも、損失補償機構としてのMZI光分岐導波路501の分岐比が、(1/2波長板403の挿入損失−交差点Cでの交差損失)の過剰損失差を補償する分岐比に設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子41に入力するTE偏波のLO光の強度と、90度ハイブリッド素子61に入力するTM偏波のLO光の強度とを等しくすることができる。
【0103】
さらに、この光導波路回路500は、ヒータ504を備えている。したがって、ヒータ504の加熱時間を調整しながらアーム導波路501cを局所加熱して、その実効屈折率を永久変化させることによって、MZI光分岐導波路501の分岐比を調整することができる。したがって、たとえば、光導波路回路500を製造した後に、上記過剰損失差を実測し、この実測した過剰損失差を補償するように、ヒータ504によってMZI光分岐導波路501の分岐比を調整することができる。これによって、TE偏波のLO光の強度とTM偏波のLO光の強度とをより正確に等しくすることができる。
【0104】
(実施の形態6)
つぎに、本発明の実施の形態6について説明する。図13Aは、実施の形態6に係る光導波路回路の模式的な平面図である。図13Bは、図13Aに示す光導波路回路の一部拡大図である。この光導波路回路600は、図11に示す光導波路回路400において、Y分岐光導波路401をY分岐光導波路601に置き換え、接続光導波路452を接続光導波路652に置き換えた構成を有する。
【0105】
Y分岐光導波路601は、入力部601aと、出力部601b、601cとを備えている。入力部601aは入力光導波路412に接続している。Y分岐光導波路601の出力部601b、601cの分岐比は1:1である。
【0106】
接続光導波路652は、接続光導波路452と同様に、2つのS字形が連接した形状を有し、かつ、領域Aの部分には、図13Bに示すように、損失補償機構である光損失部としてのギャップ光導波路部605が形成されている。ここで、ギャップ光導波路部605とは、光導波路の途中にギャップがあり、そのギャップはクラッド層と同じ石英ガラス系材料で満たされているものである。
【0107】
この光導波路回路600では、ギャップ光導波路部605の放射損失が、(1/2波長板403の挿入損失−交差点Cでの交差損失)の過剰損失差を補償する値に設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子41に入力するTE偏波のLO光の強度と、90度ハイブリッド素子61に入力するTM偏波のLO光の強度とを等しくすることができる。ギャップ光導波路部605の放射損失は、ギャップを広くまたは狭くすることによって大きくまたは小さくできる。
【0108】
(実施の形態7)
つぎに、本発明の実施の形態7について説明する。図14は、実施の形態7に係る光導波路回路の模式的な平面図である。この光導波路回路700は、図13Aに示す光導波路回路600において、接続光導波路652を接続光導波路752に置き換えた構成を有する。
【0109】
接続光導波路752は、接続光導波路652と同様に、2つのS字形が連接した形状を有し、かつ、光損失部としてのスリット706が、接続光導波路752を分断するように形成されている。
【0110】
この光導波路回路700では、スリット706の放射損失が、(1/2波長板403の挿入損失−交差点Cでの交差損失)の過剰損失差を補償する値に設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子41に入力するTE偏波のLO光の強度と、90度ハイブリッド素子61に入力するTM偏波のLO光の強度とを等しくすることができる。スリット706の放射損失は、スリット幅を広くまたは狭くすることによって大きくまたは小さくできる。スリット706のスリット幅は、たとえば1/2波長板403が挿入されるスリット402のスリット幅と同じ程度にすればよい。
【0111】
(実施の形態8)
つぎに、本発明の実施の形態8について説明する。図15は、実施の形態8に係る光導波路回路の模式的な平面図である。この光導波路回路800は、図14に示す光導波路回路700において、接続光導波路752を接続光導波路852に置き換え、さらに分岐光カプラ807を備えた構成を有する。
【0112】
接続光導波路852は、接続光導波路752と同様に、2つのS字形が連接した形状を有し、かつ、光損失部としての分岐光カプラ807が、接続光導波路852に介挿されている。分岐光カプラ807は光出力端面800bに延伸した分岐出力部807aを有する。
【0113】
この光導波路回路800では、分岐光カプラ807の挿入損失が、(1/2波長板403の挿入損失−交差点Cでの交差損失)の過剰損失差を補償する値に設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子41に入力するTE偏波のLO光の強度と、90度ハイブリッド素子61に入力するTM偏波のLO光の強度とを等しくすることができる。なお、分岐光カプラ807の挿入損失は、分岐光カプラ807の分岐比の設定によって調整することができる。
【0114】
さらに、接続光導波路852を導波するTM偏波のLO光の一部は、分岐出力部807aに分岐されて、光出力端面800bからモニタ光L4として出力される。このモニタ光L4の強度の測定によって、分岐光カプラ807の挿入損失をモニタすることができる。
【0115】
(実施の形態9)
つぎに、本発明の実施の形態9について説明する。図16Aは、実施の形態9に係る光導波路回路の模式的な平面図である。図16Bは、図16Aに示す光導波路回路の一部拡大図である。この光導波路回路900は、図13Aに示す光導波路回路600において、接続光導波路652を接続光導波路952に置き換えた構成を有する。
【0116】
Y分岐光導波路601は、入力部601aと、出力部601b、601cとを備えている。入力部601aは入力光導波路412に接続している。Y分岐光導波路601の出力部901b、901cの分岐比は1:1である。
【0117】
接続光導波路952は、接続光導波路452と同様に、2つのS字形が連接した形状を有し、かつ接続光導波路952と入力光導波路411とが交差する交差点C1の部分には、図16Bに示すように、損失補償機構である光損失部としてのギャップ光導波路部905a、905bが形成されている。ここで、ギャップ光導波路部905a、905bとは、光導波路の途中にギャップがあり、そのギャップはクラッド層と同じ石英ガラス系材料で満たされているものである。
【0118】
この光導波路回路900では、ギャップ光導波路部905a、905bの放射損失が、(1/2波長板403の挿入損失−交差点C1での交差損失)の損失差を補償する値に設定されている。これによって、90度ハイブリッド素子41に入力するTE偏波のLO光の強度と、90度ハイブリッド素子61に入力するTM偏波のLO光の強度とを等しくすることができる。ギャップ光導波路部905a、905bの放射損失は、ギャップを広くまたは狭くすることによって大きくまたは小さくできる。
また、この光導波路回路900では、入力光導波路411の幅が交差点C1で変化しないため、交差点C1で生じる交差損失を非常に小さく設定することもできる。
【0119】
なお、上記実施の形態では、偏波ビームスプリッタの入力側ではY分岐光導波を用い、出力側では方向性結合器(Directional Coupler:DC)からなる3dBカプラを用いていたが、公知のWINC(Wavelength Insensitive Coupler)やMMI(Multi-Mode Interferometer:MMI)などの光カプラを用いてもよい。したがって、偏波ビームスプリッタの入力側の素子と出力側の素子との組み合わせとしては、「方向性結合器と方向性結合器」、「Y分岐とWINC」、「WINCとWINC」、「Y分岐とMMI」、「MMIとMMI」などの任意の組み合わせを用いても良い。また、90度ハイブリッド素子の出力側で使用する光カプラについても、WINCやMMIを使用しても良い。
【0120】
また、実施の形態1、2の入力光導波路は略直線状であるが、完全に直線状でなくてもよく、導波させる光の偏波面を回転させない程度の屈曲があってもよい。
【0121】
また、上記実施の形態は、PBS集積型コヒーレントミキサとしての光導波路回路であるが、本発明はこれに限らず、偏波分離された光を干渉させる光干渉素子を備える光導波路回路に適用可能である。
【0122】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上記各実施形態の各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。たとえば、実施の形態3におけるS字状の屈曲部を有する入力光導波路を実施の形態1に係る光導波路回路に適用しても良い。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明に係る光導波路回路は、光通信の分野に利用して好適なものである。
【符号の説明】
【0124】
11、12、311、312、411,412、512 入力光導波路
21、22、421 偏波ビームスプリッタ
21a、22a、41a、41b、61a、61b、401、421a、601 Y分岐光導波路
21b、21c、22b、22c、41c、41d、41e、41f、61c、61d、61e、61f、421b、421c、501b、501c アーム光導波路
21ba、21ca、22ba、22ca、31a、31b、32a、32b、51a、51b、52a、52b、231a、231b、232a、232b、251a、251b、252a、252b、311a、312a、411a、431a、431b、451a、451b 屈曲部
21d、22d、41g、41h、61g、61h、421d 3dBカプラ
31、32、51、52、231、232、251、252、331、332、351、352、431、432、451、452、652、752、852、952 接続光導波路
31c、32c、51c、52c、431c、451c 直線部
41、61、341、361 90度ハイブリッド素子
41i、41j、41k、41l、61i、61j、61k、61l、341i、341j、341k、341l、361i、361j、361k、361l 出力光導波路
100、200、300、400、500、600、700、800、900 光導波路回路
100a、300a 光入力端面
100b、300b、800b 光出力端面
100c、100d、300c、300d 側面
101 基板
102 クラッド層
401a、501a、601a 入力部
401b、401c、501d、501e、601b、601c 出力部
402、706 スリット
403 1/2波長板
501 MZI光分岐導波路
504 ヒータ
807 分岐光カプラ
807a 分岐出力部
605、905a、905b ギャップ光導波路部
A 領域
C、C1 交差点
L1 信号光
L11、L11a、L11b、L21、L21a、L21b、L22 光
L2、L3 LO光
L4 モニタ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B