(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959548
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】発光ダイオード表示装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/00 20100101AFI20160719BHJP
G05F 1/56 20060101ALI20160719BHJP
G09G 3/14 20060101ALI20160719BHJP
G09G 3/04 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
H01L33/00 J
G05F1/56 310T
G05F1/56 310D
G09G3/14 J
G09G3/04 D
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-10610(P2014-10610)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-138916(P2015-138916A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】矢野 寛裕
(72)【発明者】
【氏名】青柳 靖
【審査官】
村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−197892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の発光ダイオードを有する表示部と、
所定の電源から前記発光ダイオードに供給される電流を制御するパワートランジスタを有して該パワートランジスタの出力電流が所定の目標電流値に一致するように制御するリニアレギュレータ回路と、
前記リニアレギュレータ回路の周囲雰囲気温度を測定する温度測定回路と、
少なくとも前記リニアレギュレータ回路の入力電圧を入力するとともに前記温度測定回路から前記周囲雰囲気温度を入力して前記パワートランジスタのジャンクション温度を算出し、該ジャンクション温度が所定の上限値に達するか否かを判定し、該ジャンクション温度が前記所定の上限値に達すると判定したときに前記リニアレギュレータ回路の出力電流が過大であると判定する出力電流判定部と、前記出力電流判定部で前記ジャンクション温度が前記上限値に達すると判定されたときにデューティ比を小さくしたPWM信号を前記リニアレギュレータ回路に出力するPWMパルス制御器と、を有する制御部と、を備え、
前記リニアレギュレータ回路は、前記PWMパルス制御器から入力する前記PWM信号に従って前記パワートランジスタの出力電流をさらにオン/オフ制御する
ことを特徴とする発光ダイオード表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記入力電圧を入力して前記リニアレギュレータ回路の出力電圧との電圧差を算出する電圧差分演算回路をさらに備え、
前記出力電流判定部は、前記電圧差分演算回路から前記電圧差を入力して前記ジャンクション温度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード表示装置。
【請求項3】
前記電圧差分演算回路は、さらに前記リニアレギュレータ回路の出力電圧を入力して前記電圧差を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の発光ダイオード表示装置。
【請求項4】
前記電圧差分演算回路は、前記リニアレギュレータ回路の出力電圧を所定の一定値として前記電圧差を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の発光ダイオード表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記発光ダイオードの順方向電圧の温度特性テーブルを事前に保存するメモリをさらに備え、
前記出力電流判定部は、前記メモリから前記温度特性テーブルを読み出して前記発光ダイオードの順方向電圧を推定し、前記順方向電圧から前記リニアレギュレータ回路の出力電圧を推定して前記前記ジャンクション温度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード表示装置。
【請求項6】
前記リニアレギュレータ回路は、前記表示部の電流から決まる基準電圧に対する目標電圧を出力する基準電圧源と、前記基準電圧と前記目標電圧とを入力して両者の誤差信号を出力する差動増幅器と、前記誤差信号に従って前記パワートランジスタの出力電流を制御する制御用トランジスタと、をさらに備え、
前記PWMパルス制御器は、前記PWM信号を前記基準電圧源に出力し、
前記基準電圧源は、前記PWM信号に従って前記目標電圧の出力をオン/オフする
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光ダイオード表示装置。
【請求項7】
1以上の発光ダイオードを有する表示部と、所定の電源から前記発光ダイオードに供給される電流を制御するパワートランジスタを有して該パワートランジスタの出力電流が所定の目標電流値に一致するように制御するリニアレギュレータ回路と、前記リニアレギュレータ回路の周囲雰囲気温度を測定する温度測定回路と、前記パワートランジスタのジャンクション温度を算出して所定のPWM信号を出力する制御部と、を備えた発光ダイオード表示装置の制御方法であって、
前記制御部では、少なくとも前記リニアレギュレータ回路の入力電圧を入力するとともに前記温度測定回路から前記周囲雰囲気温度を入力して前記パワートランジスタのジャンクション温度を算出し、前記ジャンクション温度が所定の上限値に達するか否かを判定し、前記ジャンクション温度が前記上限値に達すると判定されたときにデューティ比を小さくしたPWM信号を前記リニアレギュレータ回路に出力し、
前記リニアレギュレータ回路では、前記制御部から入力する前記PWM信号に従って前記パワートランジスタの出力電流をさらにオン/オフ制御する
ことを特徴とする発光ダイオード表示装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを用いた表示装置及びその制御方法に関し、特に発光ダイオードへの電源供給にパワー半導体を用いた発光ダイオード表示装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、照明器具や表示装置等に用いる発光体として発光ダイオードの使用が広く進められており、車両に搭載される照明器具等にも発光ダイオードが採用されるようになっている(例えば特許文献1)。また、発光ダイオードの発熱による損傷を防止する技術が、例えば特許文献2に記載されている。特許文献2では、発光ダイオードを収納した灯室内の温度を監視し、温度が過度に上昇するのを防止するために、発光ダイオードに電流を供給するスイッチングレギュレータをPWMコントローラで制御する構成としている。スイッチングレギュレータは、トランスとスイッチとしてのNMOSトランジスタとを備えた構成としている。
【0003】
発光ダイオードは、さらに車載レーダの警告表示装置等にも採用されるようになっているが、車載レーダに対しては、設置性や価格の観点等からレーダ本体の小型軽量化及び低コスト化が強く要求されている。車載レーダの警告表示装置は、レーダで検知した危険情報等を発光ダイオードを点灯表示させることで通知するものであるが、ユーザがこれを検知しやすいように車内のダッシュボードやドアミラー等に設置されている。一方、レーダ本体は車両のバンパ等の車外に取り付けられるが、警告表示装置の発光ダイオードを駆動させるためのドライブ回路も車外のレーダ本体側に設けられることがある。その場合には、ドライブ回路の小型軽量化が強く求められる。
【0004】
特許文献2に記載のスイッチングレギュレータは、トランスとNMOSトランジスタを備えていることから、小型軽量化及び低コスト化するのが難しい。ドライブ回路を小型軽量化して低コストを図るには、バッテリから1段の電源回路構成で発光ダイオードに電流を供給するように構成されたドライブ回路を用いるのが望ましく、中でもリニアレギュレータタイプのICを用いたドライブ回路(以下では、単にリニアレギュレータ回路と称する。)は、構成が簡素で小型化に向いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−522113号公報
【特許文献2】特開2004−276738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リニアレギュレータ回路では入力電圧と出力電圧との電圧差に対応した電力損失が生じており、この電力損失が熱に変換されてしまう。特に、発光ダイオード表示装置を車両に搭載して用いる場合には、電源であるバッテリの電圧が走行状態等に応じて大きく変動することから、リニアレギュレータ回路の入力電圧も大きく変動することになる。
【0007】
バッテリ電圧は通常12.6V程度であるが、オルタネータの動作やバッテリの劣化等の要因により電圧が変動する。そのため、車載機器では製品仕様としてバッテリ電圧が8V程度から16V程度までの電圧範囲で安定動作することが求められることが多い。そのため、例えばバッテリ電圧が仕様上の最低電圧となった場合でも、発光ダイオード表示装置が十分に点灯するように発光ダイオードの合計順方向電圧を設計することが必要となる。その場合には、バッテリ電圧が逆に高くなったときに、リニアレギュレータ回路の入出力電圧差が大きくなり、その結果発熱が大きくなってしまう。
【0008】
リニアレギュレータ回路での電力損失による発熱は、リニアレギュレータ回路内の発熱素子のジャンクション温度を上昇させることになり、ジャンクション温度がその上限値(絶対定格)を超えると発熱素子を損傷させてしまうおそれがある。
【0009】
通常の使用環境ではジャンクション温度に十分な余裕がある場合でも、仕様上最も厳しい環境(例えば、バッテリ電圧が仕様上の上限で環境温度も仕様上の上限のとき)においても安定動作できるように設計する必要があるときは、放熱性を高めるために大きな放熱器を設置したり、大型のパワー素子を用いる必要が生じる。その結果、リニアレギュレータ回路の寸法が大きくなりコストも割高となるため、リニアレギュレータ回路を用いることのメリットが低減してしまうといった問題が生じる。
【0010】
そこで、入出力電圧差が大きくなることが想定される場合には、リニアレギュレータ回路に代えて、例えば変換効率の高いDCDCコンバータが駆動回路に用いられる。しかし、DCDCコンバータはリニアレギュレータ回路に比べて構成部品点数が多く部品コストが高くなるといった問題があるのに加えて、広い実装スペースを必要とするといった問題もある。また、DCDCコンバータはスイッチング電源であるため、スイッチングに起因するノイズが発生するといった問題もある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、パワートランジスタを備えたリニアレギュレータ回路を用いて発光ダイオードへの電源供給を制御するとともにパワートランジスタの発熱が過大になるのを防止することが可能な発光ダイオード表示装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の発光ダイオード表示装置の第1の態様は、1以上の発光ダイオードを有する表示部と、所定の電源から前記発光ダイオードに供給される電流を制御するパワートランジスタを有して該パワートランジスタの出力電流が所定の目標電流値に一致するように制御するリニアレギュレータ回路と、前記リニアレギュレータ回路の周囲雰囲気温度を測定する温度測定回路と、少なくとも前記リニアレギュレータ回路の入力電圧を入力するとともに前記温度測定回路から前記周囲雰囲気温度を入力して前記パワートランジスタのジャンクション温度を算出し、該ジャンクション温度が所定の上限値に達するか否かを判定
し、該ジャンクション温度が前記所定の上限値に達すると判定したときに前記リニアレギュレータ回路の出力電流が過大であると判定する出力電流判定部と、前記出力電流判定部で前記ジャンクション温度が前記上限値に達すると判定されたときにデューティ比を小さくしたPWM信号を前記リニアレギュレータ回路に出力するPWMパルス制御器と、を有する制御部と、を備え、前記リニアレギュレータ回路は、前記PWMパルス制御器から入力する前記PWM信号に従って前記パワートランジスタの出力電流をさらにオン/オフ制御することを特徴とする。
【0013】
本発明の発光ダイオード表示装置の他の態様は、前記制御部は、前記入力電圧を入力して前記リニアレギュレータ回路の出力電圧との電圧差を算出する電圧差分演算回路をさらに備え、前記出力電流判定部は、前記電圧差分演算回路から前記電圧差を入力して前記ジャンクション温度を算出することを特徴とする。
【0014】
本発明の発光ダイオード表示装置の他の態様は、前記電圧差分演算回路は、さらに前記リニアレギュレータ回路の出力電圧を入力して前記電圧差を算出することを特徴とする。
【0015】
本発明の発光ダイオード表示装置の他の態様は、前記電圧差分演算回路は、前記リニアレギュレータ回路の出力電圧を所定の一定値として前記電圧差を算出することを特徴とする。
【0016】
本発明の発光ダイオード表示装置の他の態様は、前記制御部は、前記発光ダイオードの順方向電圧の温度特性テーブルを事前に保存するメモリをさらに備え、前記出力電流判定部は、前記メモリから前記温度特性テーブルを読み出して前記発光ダイオードの順方向電圧を推定し、前記順方向電圧から前記リニアレギュレータ回路の出力電圧を推定して前記前記ジャンクション温度を算出することを特徴とする。
【0017】
本発明の発光ダイオード表示装置の他の態様は、前記リニアレギュレータ回路は、前記表示部の電流から決まる基準電圧に対する目標電圧を出力する基準電圧源と、前記基準電圧と前記目標電圧とを入力して両者の誤差信号を出力する差動増幅器と、前記誤差信号に従って前記パワートランジスタの出力電流を制御する制御用トランジスタと、をさらに備え、前記PWMパルス制御器は、前記PWM信号を前記基準電圧源に出力し、前記基準電圧源は、前記PWM信号に従って前記目標電圧の出力をオン/オフすることを特徴とする。
【0018】
本発明の発光ダイオード表示装置の制御方法の第1の態様は、1以上の発光ダイオードを有する表示部と、所定の電源から前記発光ダイオードに供給される電流を制御するパワートランジスタを有して該パワートランジスタの出力電流が所定の目標電流値に一致するように制御するリニアレギュレータ回路と、前記リニアレギュレータ回路の周囲雰囲気温度を測定する温度測定回路と、前記パワートランジスタのジャンクション温度を算出して所定のPWM信号を出力する制御部と、を備えた発光ダイオード表示装置の制御方法であって、前記制御部では、少なくとも前記リニアレギュレータ回路の入力電圧を入力するとともに前記温度測定回路から前記周囲雰囲気温度を入力して前記パワートランジスタのジャンクション温度を算出し、前記ジャンクション温度が所定の上限値に達するか否かを判定し、前記ジャンクション温度が前記上限値に達すると判定されたときにデューティ比を小さくしたPWM信号を前記リニアレギュレータ回路に出力し、前記リニアレギュレータ回路では、前記
制御部から入力する前記PWM信号に従って前記パワートランジスタの出力電流をさらにオン/オフ制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パワートランジスタを備えたリニアレギュレータ回路を用いて発光ダイオードへの電源供給を制御するとともにパワートランジスタの発熱が過大になるのを防止することが可能な発光ダイオード表示装置及びその制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る発光ダイオード表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る発光ダイオード表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る発光ダイオード表示装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態における発光ダイオード表示装置及びその制御方法について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0022】
本発明の発光ダイオード表示装置及びその制御方法では、発光ダイオードのドライブ回路として、簡素な構成で低コストのリニアレギュレータ回路を用いる。リニアレギュレータ回路は、入力電圧を所望の出力電圧まで降下させて発光ダイオードに電流を供給するように構成されているが、入力電圧と出力電圧との電圧差に対応する電力が損失となっている。この電力損失は、熱に変換されてリニアレギュレータ回路内部の発熱素子のジャンクション温度を上昇させる。本発明の発光ダイオード表示装置及びその制御方法では、リニアレギュレータ回路における電力損失を低減することができ、これによりジャンクション温度の上昇を抑制するとともに、発光ダイオード表示装置の小型化を容易にしている。
【0023】
リニアレギュレータ回路における電力損失量をPとすると、電力損失量Pは次式で与えられる。
P=(VinーVout)×I+Vin×Iq (1)
ここで、
Vin:リニアレギュレータ回路の入力電圧
Vout:リニアレギュレータ回路の出力電圧
I:リニアレギュレータ回路の出力電流
Iq:リニアレギュレータ回路の静止電流
【0024】
また、リニアレギュレータ回路内の発熱素子のジャンクション温度Tjは、次式で与えられる。
Tj=Ta+θJa×P (2)
ここで、
Ta:リニアレギュレータ回路周囲の雰囲気温度
θJa:発熱素子から周囲雰囲気までの熱抵抗
【0025】
式(1)に示すように、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの電圧差に対応して電力損失が発生する。この電力損失は、式(2)に示すように、リニアレギュレータ回路内部の発熱素子のジャンクション温度Tjを上昇させる。
【0026】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施の形態に係る発光ダイオード表示装置及びその制御方法を、
図1を用いて以下に説明する。
図1は、本実施形態の発光ダイオード表示装置100の構成を示すブロック図である。発光ダイオード表示装置100は、発光ダイオード111を有する表示部110と、発光ダイオード111に電源を供給するリニアレギュレータ回路120と、リニアレギュレータ回路120を制御する制御部130と、リファレンス抵抗140と、温度測定回路150とを備えている。
【0027】
表示部110は、1つまたは複数個の発光ダイオード111を備えることができ、ここでは2つの発光ダイオード111が直列に配置された一例を示している。発光ダイオード111を用いた表示器110は、例えば車両に搭載されたレーダ装置の警告表示器等に用いることができる。
【0028】
リニアレギュレータ回路120は、パワートランジスタ121、制御用トランジスタ122、差動増幅器123、及び基準電圧源124を有している。ここでは、一例としてパワートランジスタ121にpnp型のバイポーラトランジスタを用い、制御用トランジスタ122にnpn型のバイポーラトランジスタを用いているが、これに限定されるものではない。また、基準電圧源124として、例えばバンドギャップリファレンスを用いることができる。
【0029】
差動増幅器123は、正極入力端子が基準電圧源124に接続され、負極入力端子がリファレンス抵抗140の入力側(表示部110側)に接続されている。リファレンス抵抗140の出力側が接地されていることから、リファレンス抵抗140の入力側電圧(以下では、基準電圧Vrefとする)は、次式で与えられる。
Vref=Rref×ILED
ここで、リファレンス抵抗140の抵抗値をRrefとし、リファレンス抵抗140を流れる電流に等しい発光ダイオード111の電流をILEDとしている。
【0030】
差動増幅器123は、基準電圧Vrefが基準電圧源124の電圧(目標電圧)に一致するようにパワートランジスタ121の出力電流を制御している。これにより、発光ダイオード111の電流ILEDは、基準電圧源124の目標電圧に対応する所定の目標電流値に制御される。ここで、基準電圧源124の目標電圧をV0とすると、目標電流値はV0/Rrefで与えられる。
【0031】
上記のような差動増幅器123によるパワートランジスタ121の出力電流の制御により、リニアレギュレータ回路120の入力電圧Vinがパワートランジスタ121において出力電圧Voutまで降下される。リニアレギュレータ回路120における電力損失量Pは、パワートランジスタ121におけるVinからVoutへの電圧降下によって生じることになる。本実施形態の発光ダイオード表示装置100は、パワートランジスタ121での電力損失量Pによりそのジャンクション温度が過大となるのを防止するように構成されており、これによりパワートランジスタ121が損傷するのを回避することが可能となっている。
【0032】
制御部130は、電圧差分演算回路131、出力電流判定部132、及びPWMパルス制御器133を有している。電圧差分演算回路131は、パワートランジスタ121の入力電圧Vinと出力電圧Voutとを入力して両者の電圧差(Vin−Vout)を演算し、これを出力電流判定部132に出力している。出力電流判定部132は、電圧差分演算回路131から電圧差(Vin−Vout)を入力するとともに、温度測定回路150からリニアレギュレータ回路120の周囲雰囲気温度Taを入力する。温度測定回路150は、例えばサーミスタを用いてリニアレギュレータ回路120の周囲雰囲気温度Taを測定するように構成される。
【0033】
出力電流判定部132は、上記の電圧差(Vin−Vout)を用いてパワートランジスタ121における電力損失量Pを算出し、電力損失量Pと周囲雰囲気温度Taからジャンクション温度Tjを算出する。そして、得られたジャンクション温度Tjが過大のときは、リニアレギュレータ回路120の出力電流が過大であると判定し、PWMパルス制御器133に対してリニアレギュレータ回路120の出力電流の低下を要求する信号を出力する。
【0034】
PWMパルス制御器133は、基準電圧源124をオン/オフさせるための制御信号(PWM信号)を出力しており、基準電圧源124をオンにする割合であるデューティ比(0〜1)を調整してPWM信号を出力する。出力電流判定部132からリニアレギュレータ回路120の出力電流を低下させる要求信号を入力すると、デューティ比を小さくしたPWM信号を基準電圧源124に出力する。これにより、基準電圧源124がオフとなる期間が増加してリニアレギュレータ回路120の出力電流を0に低減させる期間が増加する。その結果、リニアレギュレータ回路120の平均的な出力電流が低下し、パワートランジスタ121のジャンクション温度を低下させることが可能となる。
【0035】
上記の式(1)において、リニアレギュレータ回路120の出力電流であるパワートランジスタ121の出力電流Iは、発光ダイオード111の電流ILED及びリファレンス抵抗140の電流に等しい。また、リニアレギュレータ回路120の出力電圧Voutは、表示部110における電圧降下量となる発光ダイオード111の合計順方向電圧(VLEDとする)と基準電圧Vrefとの和に等しく、
Vout=VLED+Vref
と表すことができる。
【0036】
これより、パワートランジスタ121のジャンクション温度Tjは、式(1)、(2)を用いて次式のように表すことができる。
Tj=Ta+θja×{(VinーVLED−Vref)×ILED×D
+Vin×Iq} (3)
【0037】
式(3)において、発光ダイオード111の電流ILEDは、次式を用いて算出することができる。
ILED=Vref/Rref
ここで、リファレンス抵抗Rrefは、事前に取得しておくことができる。また、DはPWMパルス制御器133から基準電圧源124に出力されるPWM信号のデューティ比を表しており、基準電圧源124のオン/オフに対応してパワートランジスタ121の出力電流がILEDまたは0となることから、ILED×Dはパワートランジスタ121の平均出力電流を表している。
【0038】
リニアレギュレータ回路120の静止電流Iqは、リニアレギュレータ回路120の出力電流を停止させた状態で、リニアレギュレータ回路120の内部に流れる電流をあらかじめ測定して求めておくことができる。なお、静止電流Iqによる電力損失量が十分に小さいときは、Vin×Iqの項を無視してもよい。さらに、発熱素子(ここではパワートランジスタ121)から周囲雰囲気までの熱抵抗θJaは、リニアレギュレータ回路120のパッケージ特性をもとに、事前に取得しておくことができる。
【0039】
本実施形態の発光ダイオード表示装置100では、出力電流判定部132において、電圧差分演算回路131から入力した電圧差(VinーVLED−Vref)と温度測定回路150から入力した周囲雰囲気温度Taとを用いて、式(3)よりジャンクション温度Tjを算出する。出力電流判定部132は、算出されたジャンクション温度Tjに所定のマージンを加算した値がジャンクション温度の最大絶対定格値(許容上限値)Tjmaxに達するか否かを判定し、Tjmaxに達すると判定したときは、PWMパルス制御器133に対しデューティ比Dを小さくするように要求信号を出力する。PWMパルス制御器133が要求信号に従ってデューティ比Dを小さくことにより、パワートランジスタ121の平均出力電流が低下されてジャンクション温度Tjが低下し、パワートランジスタ121の損傷が防止される。
【0040】
なお、上記では、出力電流判定部132で式(3)を用いてジャンクション温度Tjを算出するものとしたが、これに限定されず、たとえば電圧差分演算回路131において、入力電圧Vinと出力電圧Vout(=VLED+Vref)を用いて式(1)より電力損失量Pを算出し、出力電流判定部132では式(2)を用いてジャンクション温度Tjを算出するようにしてもよい。
【0041】
本実施形態の発光ダイオード表示装置100及びその制御方法によれば、発光ダイオードに電源供給するドライブ回路として、小型軽量で低コストのリニアレギュレータ回路を用いることが可能となる。そして、リニアレギュレータ回路内のパワートランジスタ121のジャンクション温度を算出して監視するように構成することで、パワートランジスタ121の損傷を防止することが可能となっている。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施の形態に係る発光ダイオード表示装置及びその制御方法を、
図2を用いて以下に説明する。
図2は、本実施形態の発光ダイオード表示装置200の構成を示すブロック図である。
【0043】
第1実施形態の発光ダイオード表示装置100では、電圧差分演算回路131がパワートランジスタ121の入力電圧Vinと出力電圧Vout(=VLED+Vref)の両方を入力して電圧差(Vin−Vout)を算出するように構成していた。ここで、発光ダイオード111の合計順方向電圧VLEDは、発光ダイオード111の物理的特性や温度特性等のバラツキにより変動があるものの、その変動範囲はバッテリ電源の電圧変動範囲に比べて小さいと考えられる。そこで、パワートランジスタ121の出力電圧Voutを一定値としてあらかじめ設定しておくことができる。
【0044】
本実施形態の発光ダイオード表示装置200では、上記のように出力電圧Voutをあらかじめ設定された一定値としており、電圧差分演算回路231は入力電圧Vinの測定値のみを入力して電圧差(Vin−Vout)を算出するように構成している。これにより、本実施形態の制御部230及び電圧差分演算回路231の構成を簡素化することができる。
【0045】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施の形態に係る発光ダイオード表示装置及びその制御方法を、
図3を用いて以下に説明する。
図3は、本実施形態の発光ダイオード表示装置300の構成を示すブロック図である。
【0046】
第2実施形態の発光ダイオード表示装置200では、パワートランジスタ121の出力電圧Voutを一定値としたが、本実施形態の発光ダイオード表示装置300では、発光ダイオード111の温度特性のみを考慮してVoutを算出するように構成している。発光ダイオード111の順方向電圧は温度によって変化することから、発光ダイオード111の順方向電圧の温度特性をあらかじめテーブル化しておくことが可能である。
【0047】
本実施形態の発光ダイオード表示装置300は、制御部330にメモリ334を備える構成としており、発光ダイオード111の合計順方向電圧VLEDの温度特性をあらかじめテーブル化してメモリ334に保存させている。本実施形態の出力電流判定部332は、合計順方向電圧VLEDの温度特性のテーブルをメモリ334から読み出し、これを用いて発光ダイオード111の合計順方向電圧VLEDを算出する。そして、合計順方向電圧VLEDからパワートランジスタ121の出力電圧Voutを求めて電圧差(Vin−Vout)を算出するようにしている。
【0048】
本実施形態の発光ダイオード表示装置300では、上記のように、制御部330が出力電圧Voutを入力しないようにするとともに、電圧差分演算回路を不要にして制御部330の構成を簡素化することができる。なお、順方向電圧の温度特性のテーブルを参照するのに用いる温度として、別途測定されている発光ダイオード111の温度等を用いるのがよい。
【0049】
(その他の実施形態)
本発明の別の実施形態に係る発光ダイオード表示装置及びその制御方法を、以下に説明する。第1実施形態の発光ダイオード表示装置100では、出力電流判定部132において算出したジャンクション温度Tjが過大のときに、PWMパルス制御器133に対してパワートランジスタ121の出力電流を低下させる要求信号を出力する構成としていた。
【0050】
これに対し別の実施形態として、ジャンクション温度Tjが最大絶対定格値(許容上限値)Tjmaxに対して常に一定のマージンを有するように、出力電流判定部132がPWMパルス制御器133に対してパワートランジスタ121の出力電流の上昇または低下を要求する信号を出力する構成とすることができる。これにより、発光ダイオード111が常時許容される最大輝度で発光するように、発光ダイオード表示装置を制御することが可能となる。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態に係る発光ダイオード表示装置及びその制御方法として、リファレンス抵抗140の抵抗値を可変に構成することができる。抵抗値が可変なリファレンス抵抗140として、例えばデジタルポテンショメータを用いる、あるいは抵抗値の異なる複数の抵抗を切り替え可能に構成することができる。リファレンス抵抗140の抵抗値を可変とすることで、パワートランジスタ121のジャンクション温度Tjが過大となるときは、リファレンス抵抗140の抵抗値を大きくすることで、電圧差(Vin−Vout)を小さくしてパワートランジスタ121の出力電流を低下させることができる。これにより、パワートランジスタ121の損傷を防止することができる。
【0052】
上記実施形態を用いて説明したように、本発明の発光ダイオード表示装置及びその制御方法によれば、発光ダイオードに電源供給するドライブ回路として、小型軽量で低コストのリニアレギュレータ回路を用いることが可能となる。そして、リニアレギュレータ回路内のパワートランジスタのジャンクション温度を算出して監視するように構成することで、パワートランジスタの損傷を防止することが可能となる。本発明の発光ダイオード表示装置は、ジャンクション温度が過大となるのを防止するのに大型の放熱器を必要とせず、バッテリ電圧及びジャンクション温度が広い範囲で変化しても動作可能となっている。これにより、パワートランジスタの損傷を防止するとともに、小型低価格で信頼性の高い発光ダイオード表示装置及びその制御方法を提供することができる。
【0053】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る発光ダイオード表示装置及びその制御方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における発光ダイオード表示装置及びその制御方法の細部構成及び詳細な動作などに関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
100、200、300 発光ダイオード表示装置
110 表示部
111 発光ダイオード
120 リニアレギュレータ回路
121 パワートランジスタ
122 制御用トランジスタ
123 差動増幅器
124 基準電圧源
130、230、330 制御部
131、231 電圧差分演算回路
132、332 出力電流判定部
133 PWMパルス制御器
140 リファレンス抵抗
150 温度測定回路
334 メモリ