【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ホームページのアドレス:http://vixra.org/abs/1405.0006 掲載日 :平成26年 5月 2日
【文献】
森本 正仁(Masahito Morimoto),“単一光子、単一電子干渉の考察(Resolution of Single Photon and Electron Interference Enigma)”,viXra.org e-Print archive,[オンライン],2013年12月,1312.0097v1,[検索日:2015−08−27]、インターネット,URL,<http://rxiv.org/pdf/1312.0097v1.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る光通信システム100の概略構成図である。光通信システム100は、受信機110と送信機120とを備え、受信機110と送信機120との間は情報の伝達経路である通信路130により結ばれている。本実施形態において通信路130は自由空間であるが、通信路130の少なくとも一部は光ファイバやPLC等の光導波路でもよい。なお、受信機110および送信機120の名称は情報の送信の方向に基づいて定義されており、後述するように光子の送信の方向とは逆である。すなわち、情報の送信方向は送信機120から受信機110の方向であるが、光子の送信方向は受信機110から送信機120の方向である。
【0013】
受信機110内には、受信制御部119による制御にしたがって光子を出力する光子源111と、光子源111から光子が入射されることによって相関光子対を発生させる光子対発生部112とが設けられる。該光子対のうち一方を光子pとし、他方を光子sとする。光子pと光子sとは互いに直交する偏光を有するように相関がある。すなわち、光子pが縦偏光のときは光子sは横偏光となり、又はその逆となる。本実施形態では光子対発生部112として、パラメトリック下方変換により互いに相関がある光子対を発生させるBBO結晶(β−BaB
2O
4結晶)を用いるが、互いに相関がある光子対を発生させる任意の物質又は装置を用いてよい。
【0014】
光子対発生部112による光子sの出射方向、すなわち光子sの光路上には、2つのQWP113a、113b(1/4波長板)と、二重スリット板114とが設けられる。二重スリット板114は平行な2本のスリットを有する。第1のQWP113aは、それを通過した光子sが2本のスリットの一方に入射するように配置され、第2のQWP113bは、それを通過した光子sが2本のスリットの他方に入射するように配置される。
【0015】
直線偏光の光子sがQWP113a、113bの高速軸に対して−45°又は45°の傾きで入射する場合(このときの光子sの偏光を
斜め偏光とする)には、QWP113a、113bは光子sを円偏光に変換して出力する。一方、直線偏光の光子sがQWP113a、113bの高速軸に対して0°又は90°の傾きで入射する場合(このときの光子sの偏光を
縦偏光又は横偏光とする)には、QWP113a、113bは光子sを直線偏光のまま出力する。さらに、QWP113a、113bが光子sを円偏光に変換する際の方向は、互いに逆である。具体的には、第1のQWP113aは光子sを右円偏光に変換し、第2のQWP113bは光子sを左円偏光に変換する(又はこの逆)。このような構成により、縦偏光又は横偏光の光子sがQWP113a、113bに入射する場合には二重スリット板114を通った後に干渉が発生し、斜め偏光の光子sがQWP113a、113bに入射する場合には二重スリット板114を通った後に干渉が発生しない。
【0016】
光子sが二重スリット板114を通過する先、すなわち光子sの光路上には、スリット板115と、受信検出器116とが設けられる。スリット板115は、光子sが所定の方向から受信検出器116に入力されるように制限するスリットを有する。
【0017】
受信検出器116は、光子sを検出すると受信制御部119に所定の信号を出力する。本実施形態では受信検出器116として、APD(アバランシェフォトダイオード)を用いるが、光子を検出可能な任意の装置を用いてよい。受信検出器116には、光子対発生部112による光子sの出射方向(光子sの光路)に対して垂直方向に受信検出器116を移動させる駆動部117が接続される。駆動部117は、モータやアクチュエータ等の任意の駆動部である。受信検出器116を駆動部117により移動させながら光子sの検出を繰り返すことによって、受信検出器116の各位置における光子sの検出数を取得することができる。
【0018】
光子対発生部112による光子pの出射方向、すなわち光子pの光路上には、シャッター118が設けられる。シャッター118は、受信制御部119による制御にしたがって、光子pを通信路130に通すように開放された状態と、光子pを通信路130から遮断するように閉鎖された状態との間で切り替え可能である。シャッター118としては、機械的又は電磁的に開放と閉鎖とが切り替えられる任意の装置を用いてよい。
【0019】
光子源111、受信検出器116およびシャッター118には、受信制御部119が接続される。受信制御部119は、各部材を電気的に制御し、送信機120と同期用伝送路140を介して通信し、測定されたデータの記録を行い、またユーザに対して入出力を行う。受信制御部119は、任意のコンピュータ又は電気回路を含む。
【0020】
送信機120内において、受信機110からの光子pの入射方向、すなわち光子pの光路上には、偏光子121(偏光板)が設けられる。偏光子121は、所定の向きの偏光を有する光子を完全に通す第1の状態と、該第1の状態から光子の透過方向に関して+45°又は−45°傾いた第2の状態との間で切り替え可能である。本実施形態では該所定の向きの偏光として縦偏光又は横偏光を用いるため、第1の状態の偏光子121は縦偏光又は横偏光の光子を通し、第2の状態の偏光子121は斜め偏光の光子を通す。偏光子121は、送信制御部122による制御にしたがって、第1の状態と第2の状態との間で切り替えられる。
【0021】
光子pが偏光子121を通過する先には、スリット板123と、送信検出器124とが設けられる。スリット板123は、光子pが所定の方向から送信検出器124に入力されるように制限するスリットを有する。送信検出器124は、光子pを検出すると送信制御部122に所定の信号を出力する。なお、後述するように本実施形態では偏光子121の向きによって送信機120から受信機110に情報を送信するため、情報送信のためには送信検出器124は必ずしも必要でない。送信検出器124は、受信機110からの光子を受信することによって、送信機120と受信機110との間で通信路130の光軸を合わせるため、又は送信機120と受信機110との間の距離を測定するために用いられる。
【0022】
偏光子121および送信検出器124には、送信制御部122が接続される。送信制御部122は、各部材を電気的に制御し、受信機110と同期用伝送路140を介して通信し、測定されたデータの記録を行い、またユーザに対して入出力を行う。送信制御部122は、任意のコンピュータ又は電気回路を含む。
【0023】
受信機110と送信機120とは、同期用伝送路140によって接続されている。同期用伝送路140は、光ファイバ通信路、無線通信路等、任意の通信路でよい。送信制御部122は、同期用伝送路140を介して受信制御部119に同期信号を送信することによって、送受信タイミングの同期を行う。送受信タイミングの同期は、送信時刻を示す信号や周期的な信号等を用いて、任意の同期方式により行われる。
【0024】
ここで本発明の原理の説明を行う。従来、BBO結晶(光子対発生部)により発生される相関光子対(エンタングル光子対)において、一方の光子sが縦偏光|y>であれば他方の光子pは横偏向|x>、若しくはその逆であり、これらの偏光方向は観測するまで決定されず、これらの重ね合わせ状態である、と考えられてきた。すなわち、相関光子対は、光子sが縦偏光|y>で光子pが横偏向|x>である状態|y>s|x>pと、光子sが横偏光|x>で光子pが縦偏光|y>である状態|x>s|y>pとの重ね合わせ状態であると考えられてきた。この状態は式(1)で表される。
【0026】
しかし、このような考え方では時間が逆転したようなパラドックスが発生し、原因と結果が入れ替わる等の特殊な状況が発生してしまう。それに対して、以下に述べるような非局在ポテンシャルの存在を認めると、従来の考え方を用いることなく説明が可能である。
【0027】
すなわち、従来、偏光子(ポラライザ)等の偏光を揃えるデバイスを通った横偏光|x>および縦偏光|y>は、式(2)で表されるように+45°又は−45°傾いた偏光の重ね合わせであるとされていた。
【0029】
ここで、|+>はx軸に対して+45°の偏光、|−>はx軸に対して−45°の偏光を示す。古典的な電磁場ではこれは正しいが、単一光子のように分けられない光子にまで、この表式を用いることはパラドックスに繋がる。このような極少数の光子を取り扱う場合には、重ね合わせと考えるのではなく、空間中に普遍的に存在する非局在ポテンシャルを用いることによって上手く説明することができる。この場合に、式(2)に非局在ポテンシャル|ζ>を加えた式(3)が正しい表式と考える必要がある。
【0031】
よって、非局在ポテンシャル|ζ>は式(4)により表される。
【0033】
ここで、非局在ポテンシャル|ζ>の添え字は偏光子(光通信システム100における偏光子121)の向きを示しており、|ζ
1>は横向き、|ζ
2>は縦向きを示す。このように、偏光子が存在することによって、非局在ポテンシャル|ζ>が方向付けされる。すなわち、偏光子が横向きであれば非局在ポテンシャル|ζ
1>となり、偏光子が縦向きであれば非局在ポテンシャル|ζ
2>となる。
【0034】
この非局在ポテンシャル|ζ>はMaxwell方程式に従うので、光速で偏光子から伝搬する。この伝搬した非局在ポテンシャル|ζ>が光子対を発生させるBBO結晶(光通信システム100における光子対発生部112)に到達すると、BBO結晶は、この方向付けられた非局在ポテンシャル|ζ>によって、発生可能な光子の偏光を決定づけられてしまう。
【0035】
具体的には、BBO結晶が光子を発生する前に、BBO結晶から光子が出射される方向に存在する偏光子からBBO結晶に非局在ポテンシャル|ζ>が到達する。偏光子が横向きの場合には、非局在ポテンシャル|ζ
1>が到達するため、BBO結晶は偏光子に向かう方向に横偏光|x>でしか光子pを発生できない。このとき相関光子対のうち他方の光子sは縦偏光|y>となる。一方、偏光子が縦向きの場合には、非局在ポテンシャル|ζ
2>が到達するため、BBO結晶は偏光子に向かう方向に縦偏光|y>でしか光子pを発生できない。このとき相関光子対のうち他方の光子sは横偏光|x>となる。このように、BBO結晶から光子が出射される方向に存在する偏光子の向きによって、BBO結晶が発生可能な光子の偏光は拘束される。なお、ここでは縦偏光又は横偏光について説明したが、縦偏光又は横偏光から+45°又は−45°傾けた斜め偏光についても、同様に偏光子の向きによってBBO結晶が発生可能な光子の偏光は拘束される。
【0036】
すなわち、BBO結晶では完全に相関のある光子対が始めから発生されているのであり、従来の考え方のように観測されるまで相関光子対が重ね合わせの状態にあるのではない。しかしながら、非局在ポテンシャルそのものは観測できないので、このような方向付けを感知することができない為に、光子対には不思議な相関があると従来考えられてきたのである。
【0037】
非局在ポテンシャルは、確率振幅が<ζ
1|ζ
1>=0、<ζ
2|ζ
2>=0であることから、観測できないことがわかる。これは、式(4)をそのまま掛け合わせて、式(5)の関係を用いることによって容易に導かれる。
【0039】
以上をまとめると、BBO結晶によって発生される相関光子対においては、一方が縦偏光|y>であれば他方は横偏向|x>(又はその逆)という完全な相関があるが、これは観測する又は観測しないに関わらず、光子対が発生されたときに決定されており、従来の考え方のように相関光子対が重ね合わせ状態にあるわけではない。この決定は、方向付けられた非局在ポテンシャル|ζ>が光子対発生前にBBO結晶に到達することによって為されている。
【0040】
図2は、光通信システム100を用いる光通信方法のフローチャートを示す図である。まず、シャッター118が開放された状態で、送信制御部122は、送信される情報に基づいて偏光子121の向きを設定する(ステップS101)。本実施形態では、第1の情報として「1」を送信する場合には偏光子121を縦偏光又は横偏光の光子を完全に通す第1の状態にし、第2の情報として「0」を送信する場合には偏光子121を該第1の状態から光子の透過方向に関して+45°又は−45°傾いた第2の状態にする。第1の状態で通す偏光の向きを縦偏光又は横偏光以外に設定してもよく、また送信される情報としての「0」と「1」は逆でもよい。これらの場合には偏光の向きと送信される情報との関係の定義を適宜変更して受信機110を構成すればよい。
【0041】
次に、受信制御部119は、光子源111から光子を発生させる(ステップS102)。光子源111から光子を発生させるタイミングは、偏光子121からの非局在ポテンシャルが光子対発生部112に到達した後に、光子源111からの光子が光子対発生部112に到達するように設定する。具体的には、偏光子121の向きが設定された時刻をt
1、偏光子121からの非局在ポテンシャルが光子対発生部112に到達するのに要する時間をa、光子源111からの光子が光子対発生部112に到達するのに要する時間をbとすると、光子源111から光子を発生させる時刻t
2は式(6)のように表される。
【0043】
非局在ポテンシャルおよび光子は光速で運動するため、時間a、bは各部材間の距離から算出できる。偏光子121の向きが設定された時刻t
1は、送信制御部122から同期用伝送路140を介して受信した同期信号に基づいて決定される。
【0044】
光子対発生部112は、光子源111から光子を受けると、相関光子対である光子p、sを発生させる(ステップS103)。この時点で、偏光子121からの非局在ポテンシャルが既に光子対発生部112に到達しているため、該非局在ポテンシャルによって光子p、sの偏光方向が決定されている。具体的には、偏光子121が縦偏光又は横偏光の光子を完全に通す第1の状態である場合には、光子対発生部112から偏光子121へ向かう光子pは縦偏光又は横偏光であり、他方の光子sも縦偏光又は横偏光である。それに対して、偏光子121が第1の状態から+45°又は−45°傾けられて斜め偏光を通す第2の状態である場合には、光子対発生部112から偏光子121へ向かう光子pは斜め偏光であり、他方の光子sも斜め偏光である。
【0045】
次に、受信制御部119は、シャッター118を閉鎖する(ステップS104)。シャッター118を閉鎖するタイミングは、光子対発生部112において光子p、sが発生された後であって、光子pがシャッター118に到達する前である。具体的には、光子対発生部112において光子p、sが発生されるのに要する時間をc、光子対発生部112からの光子pがシャッター118に到達するのに要する時間をdとすると、シャッター118を閉鎖する時刻t
3は式(7)のように表される。光子は光速で運動するため、時間c、dは各部材間の距離から算出できる。
【0047】
ステップS104と並行して、受信検出器116は、QWP113a、113bおよび二重スリット板114を通過した光子sを検出し、検出の有無を受信制御部119に記録する(ステップS105)。その後、受信制御部119は、シャッター118を開放する(ステップS106)。
【0048】
本実施形態では測定結果における干渉の発生有無により送信情報(偏光子121の方向)を決定するため、検出を複数の測定箇所で、かつ各測定箇所で複数回行う必要がある。そのため、偏光子121の方向を変更せずに、駆動部117により受信検出器116を所定の距離ずつ移動させながら(ステップS107)、各測定箇所でステップS102〜ステップS106を所定の回数繰り返す(ステップS108)。例えば、20箇所において50回ずつ(合計1000回)、ステップS102〜ステップS107を実行する。
【0049】
最後に、受信制御部119は、各測定箇所について測定された光子検出数をプロットすることによって、送信された情報を決定する(ステップS109)。具体的には、該プロットにおいて干渉の発生が認められる場合には、QWP113a、113bに入射する前の光子sは縦偏光又は横偏光であるため、他方の光子pも縦偏光又は横偏光である。したがって、光子pの光路上にある偏光子121が縦偏光又は横偏光の光子を完全に通す第1の状態であることがわかるため、受信制御部119は送信機120から送信された情報を第1の情報である「1」と決定する。一方、該プロットにおいて干渉の発生が認められない場合には、QWP113a、113bに入射する前の光子sは斜め偏光であるため、他方の光子pも斜め偏光である。したがって、光子pの光路上にある偏光子121が第1の状態から+45°又は−45°傾いた第2の状態であることがわかるため、受信制御部119は送信機120から送信された情報を第2の情報である「0」と決定する。
【0050】
図3は、受信検出器116により測定される結果の模式的なプロットを示す図である。
図3(a)に示すように、プロットが単一の頂点を有する山型である場合には、干渉が発生していないため、QWP113a、113bに入射する前の光子sは斜め偏光である。一方、
図3(b)に示すように、プロットが複数の頂点を有する波型である場合には、干渉が発生しているため、QWP113a、113bに入射する前の光子sは縦偏光又は横偏光である。これらの判定は受信制御部119が行ってもよく、ユーザが行ってもよい。
【0051】
本実施形態に係る光通信システム100は、観測できない非局在ポテンシャルが送信機120から受信機110に送信され、該非局在ポテンシャルにより光子対発生部112から発生し得る光子の偏光が拘束されることを利用して情報の伝達を行う。光通信システム100の受信機110および送信機120は、光子を送受信可能な位置に配置されているが、実際に光子が受信機110から送信機120に出射される前にシャッター118によって光子を遮断する。そのため、盗聴者は送受信される光子を盗んで情報を読み取ることはできない。さらに、送信機120から受信機110への情報の伝達経路には観測可能な光子が通らないため、盗聴者が該伝達経路を知ること自体も困難である。
【0052】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る光通信システム100では、干渉の有無を利用して統計的に情報を決定するため、1つの情報(「1」又は「0」)に対して複数回の送信が必要であった。それに対して、本実施形態では、1つの情報に対して1回の送信によって情報を決定することができる。
【0053】
図4は、本実施形態に係る光通信システム200の概略構成図である。光通信システム200は、受信機210と送信機220とを備え、受信機210と送信機220との間は情報の伝達経路である通信路230により結ばれている。本実施形態において通信路230は自由空間であるが、通信路230の少なくとも一部は光ファイバやPLC等の光導波路でもよい。
【0054】
受信機210内には、受信制御部219による制御にしたがって光子を出力する光子源211と、光子源211から光子が入射されることによって相関光子対を発生させる光子対発生部212とが設けられる。該光子対のうち一方を光子pとし、他方を光子sとする。光子pと光子sとは互いに直交する偏光を有するように相関がある。すなわち、光子pが縦偏光のときは光子sは横偏光となり、又はその逆となる。本実施形態では光子対発生部212として、パラメトリック下方変換により互いに相関がある光子対を発生させるBBO結晶(β−BaB
2O
4結晶)を用いるが、互いに相関がある光子対を発生させる任意の物質又は装置を用いてよい。
【0055】
光子対発生部212による光子sの出射方向、すなわち光子sの光路上には、第2のシャッター213と、第2の偏光子214(偏光板)とが設けられる。第2のシャッター213は、受信制御部219による制御にしたがって、光子sを第2の偏光子214に通すように開放された状態と、光子sを第2の偏光子214から遮断するように閉鎖された状態との間で切り替え可能である。第2のシャッター213としては、機械的又は電磁的に開放と閉鎖とが切り替えられる任意の装置を用いてよい。
【0056】
第2の偏光子214は、所定の向きの偏光を有する光子を通し、該所定の向き以外の偏光を有する光子を通さない。本実施形態においては該所定の向きの偏光として横偏光を用いるため、第2の偏光子214は、光子sが横偏光の場合は通し、それ以外の偏光、すなわち縦偏光又は斜め偏光の場合は通さない。
【0057】
光子sが第2の偏光子214を通過する先には、スリット板215と、受信検出器216とが設けられる。スリット板215は、光子sが所定の方向から受信検出器216に入力されるように制限するスリットを有する。
【0058】
受信検出器216は、光子sを検出すると受信制御部219に所定の信号を出力する。本実施形態では受信検出器216として、APD(アバランシェフォトダイオード)を用いるが、光子を検出可能な任意の装置を用いてよい。
【0059】
光子対発生部212による光子pの出射方向、すなわち光子pの光路上には、第1のシャッター218が設けられる。第1のシャッター218は、受信制御部219による制御にしたがって、光子pを通信路230に通すように開放された状態と、光子pを通信路230から遮断するように閉鎖された状態との間で切り替え可能である。第1のシャッター218としては、機械的又は電磁的に開放と閉鎖とが切り替えられる任意の装置を用いてよい。
【0060】
光子源211、受信検出器216、第1のシャッター218および第2のシャッター213には、受信制御部219が接続される。受信制御部219は、各部材を電気的に制御し、送信機220と同期用伝送路240を介して通信し、測定されたデータの記録を行い、またユーザに対して入出力を行う。受信制御部219は、任意のコンピュータ又は電気回路を含む。
【0061】
送信機220内において、受信機210からの光子pの入射方向、すなわち光子pの光路上には、第1の偏光子221(偏光板)が設けられる。第1の偏光子221は、所定の向きの偏光を有する光子を完全に通す第1の状態と、該第1の状態から光子の透過方向に関して所定の角度(例えば、+90°又は−90°)傾いた第2の状態との間で切り替え可能である。本実施形態では該所定の向きの偏光として縦偏光を用いるため、第1の状態の偏光子121は縦偏光の光子を通し、第2の状態の偏光子121は横偏光の光子を通す。第1の偏光子221は、送信制御部222による制御にしたがって、第1の状態と第2の状態との間で切り替えられる。
【0062】
光子pが第1の偏光子221を通過する先には、スリット板223と、送信検出器224とが設けられる。スリット板223は、光子pが所定の方向から送信検出器224に入力されるように制限するスリットを有する。送信検出器224は、光子pを検出すると送信制御部222に所定の信号を出力する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に第1の偏光子221の向きによって送信機220から受信機210に情報を送信するため、情報送信のためには送信検出器224は必ずしも必要でない。送信検出器224は、受信機210からの光子を受信することによって、送信機220と受信機210との間で通信路230の光軸を合わせるため、又は送信機220と受信機210との間の距離を測定するために用いられる。
【0063】
第1の偏光子221および送信検出器224には、送信制御部222が接続される。送信制御部222は、各部材を電気的に制御し、受信機210と同期用伝送路240を介して通信し、測定されたデータの記録を行い、またユーザに対して入出力を行う。送信制御部222は、任意のコンピュータ又は電気回路を含む。
【0064】
受信機210と送信機220とは、同期用伝送路240によって接続されている。同期用伝送路240は、光ファイバ通信路、無線通信路等、任意の通信路でよい。送信制御部222は、同期用伝送路240を介して受信制御部219に同期信号を送信することによって、送受信タイミングの同期を行う。送受信タイミングの同期は、送信時刻を示す信号や周期的な信号等を用いて、任意の同期方式により行われる。
【0065】
図5は、光通信システム200を用いる光通信方法のフローチャートを示す図である。まず、第2のシャッター213が閉鎖された状態であり、かつ第1のシャッター218が開放された状態で、送信制御部222は、送信される情報に基づいて第1の偏光子221の向きを設定する(ステップS201)。本実施形態では、第1の情報として「1」を送信する場合には第1の偏光子221を縦偏光の光子を完全に通す第1の状態にし、第2の情報として「0」を送信する場合には第1の偏光子221を該第1の状態から所定の角度(例えば+90°又は−90°)傾けた第2の状態にする。第1の状態で通す偏光の向きを縦偏光以外に設定してもよく、また送信される情報としての「0」と「1」は逆でもよい。これらの場合には偏光の向きと送信される情報との関係の定義を適宜変更して受信機210を構成すればよい。
【0066】
次に、受信制御部219は、光子源211から光子を発生させる(ステップS202)。光子源211から光子を発生させるタイミングは、第1の偏光子221からの非局在ポテンシャルが光子対発生部212に到達した後に、光子源211からの光子が光子対発生部212に到達するように設定する。該タイミングは、第1の実施形態と同様に式(6)により算出できる。
【0067】
光子対発生部212は、光子源211から光子を受けると、相関光子対である光子p、sを発生させる(ステップS203)。この時点で、第1の偏光子221からの非局在ポテンシャルが既に光子対発生部212に到達しているため、該非局在ポテンシャルによって光子p、sの偏光方向が決定されている。具体的には、第1の偏光子221が縦偏光の光子を完全に通す第1の状態である場合には、光子対発生部212から第1の偏光子221へ向かう光子pは縦偏光であり、他方の光子sは横偏光である。それに対して、第1の偏光子221が第1の状態から所定の角度(ここでは+90°又は−90°)傾けられて横偏光を通す第2の状態である場合には、光子対発生部212から第1の偏光子221へ向かう光子pは横偏光であり、他方の光子sは縦偏光である
【0068】
次に、受信制御部219は、第1のシャッター218を閉鎖する(ステップS204)。第1のシャッター218を閉鎖するタイミングは、光子対発生部212において光子p、sが発生された後であって、光子pが第1のシャッター218に到達する前である。該タイミングは、第1の実施形態と同様に式(7)により算出できる。
【0069】
ステップS204と並行して、受信制御部219は、第2のシャッター213を開放する(ステップS205)。第2のシャッター213を開放するタイミングは、光子対発生部212において光子p、sが発生された後であって、光子sが第2のシャッター213に到達する前である。具体的には、式(6)、(7)で用いたt
2、b、cに加え、光子対発生部212からの光子sが第2のシャッター213に到達するのに要する時間をeとすると、第2のシャッター213を開放する時刻t
4は式(8)のように表される。光子は光速で運動するため、時間eは各部材間の距離から算出できる。
【0071】
受信検出器216は、第2の偏光子214を通過した光子sを検出し、検出の有無を受信制御部219に記録する(ステップS206)。その後、受信制御部219は、第1のシャッター218を開放するするとともに、第2のシャッター213を閉鎖する(ステップS207)。
【0072】
最後に、受信制御部219は、受信検出器216により測定された結果を用いて、送信された情報を決定する(ステップS208)。具体的には、受信検出器216で光子が検出される場合には、第2の偏光子214に入射する前の光子sは横偏光であるため、他方の光子pは縦偏光である。したがって、光子pの光路上にある第1の偏光子221が縦偏光の光子を完全に通す第1の状態であることがわかるため、受信制御部219は送信機220から送信された情報を第1の情報である「1」と決定する。一方、受信検出器216で光子が検出されない場合には、第2の偏光子214に入射する前の光子sは横偏光ではないため、他方の光子pは横偏光である。したがって、光子pの光路上にある第1の偏光子221が第1の状態から所定の角度傾けられた第2の状態であることがわかるため、受信制御部219は送信機220から送信された情報を第2の情報である「0」と決定する。
【0073】
本実施形態に係る光通信システム200によれば、第1の実施形態が奏する効果に加え、1回のみの送信によって1つの情報を送信することができるため、送信速度をより向上させることが可能である。
【0074】
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0075】
本明細書では、光子の偏光として縦偏光、横偏光および斜め偏光の語を用いて本発明の説明を行ったが、本発明は偏光の具体的な向きに限定されるものではない。本発明の実施においては、偏光の対称性に基づいて、その他の向きの偏光を用いてもよい。該その他の向きの偏光を用いる場合には、本明細書の記載を適宜読み替えればよい。