特許第5959617号(P5959617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5959617-オタミキサバンの安息香酸塩 図000016
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5959617
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】オタミキサバンの安息香酸塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/89 20060101AFI20160719BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20160719BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160719BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   C07D213/89CSP
   A61K31/44
   A61P9/10
   A61P7/02
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-501569(P2014-501569)
(86)(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公表番号】特表2014-509622(P2014-509622A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2012055364
(87)【国際公開番号】WO2012130821
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】11305348.2
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/500,342
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルトナー,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ベルヒトルト,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】エアーズ,テイモシー
【審査官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−526103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/89
A61K 31/44
A61P 7/02
A61P 9/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩。
【請求項2】
結晶形態または少なくとも部分的に結晶形態である、請求項1に記載の安息香酸塩。
【請求項3】
前記結晶塩が、室温でCuKα線を用いて透過法で測定したX線粉末回折パターンにおいて19.8、18.8および17.9°2θ各々±0.2°2θ特徴的な反射を示す、請求項2に記載の安息香酸塩。
【請求項4】
前記結晶塩が、室温でCuKα線を用いて透過法で測定したX線粉末回折パターンにおいて22.0、19.8、18.8、17.9、15.7および13.6°2θ各々±0.2°2θ特徴的な反射を示す、請求項2に記載の安息香酸塩。
【請求項5】
図1に示すものと実質的に一致するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項2に記載の安息香酸塩。
【請求項6】
メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トを水溶液またはアルコール水溶液中に溶解することおよび安息香酸または安息香酸ナトリウムを添加することを含む、請求項1に記載の安息香酸塩の調製方法。
【請求項7】
薬物として使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の安息香酸塩。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載のメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩および医薬として許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項9】
急性心筋梗塞、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症、血栓塞栓症、血栓溶解療法および経皮的冠動脈形成術に関連する急性血管閉塞症、一過性脳虚血発作、脳卒中、間欠性跛行および再狭窄の治療における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載のメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩、および結晶形態または少なくとも部分的に結晶形態であり、式I:
【0002】
【化1】
に例示する構造を示す、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩、ならびにこれらの調製のための工程、第Xa因子の阻害剤の投与によって改善され得る状態に罹患している被験者を治療するためにかかる塩を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−ト(CAS番号193153−04−7)は、オタミキサバンの国際一般名称を有し、式II:
【0004】
【化2】
に例示する構造を示す。
【0005】
第Xa因子の阻害剤の投与によって改善され得る状態に罹患しているまたは罹患しやすい患者を治療するための薬剤の調製におけるメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの使用は、WO97/24118に開示されている。
【0006】
第Xa因子は凝固カスケードにおける最後から2番目の酵素である。第Xa因子(fXa)は、血液凝固カスケードの内因性および外因性経路の合流点に位置する重要なセリンプロテアーゼである。第Xa因子は、プロトロンビナーゼ複合体によるプロトロンビンのトロンビンへの変換を触媒する。血餅形成への増強作用と相まって、トロンビン生成におけるこの特異な役割により、第Xa因子は治療的介入のための魅力的な標的となっている。
【0007】
遊離型第Xa因子およびプロトロンビナーゼ複合体(第Xa因子、第Va因子、カルシウムおよびリン脂質)に組み込まれた第Xa因子の両方がオタミキサバンによって阻害される。第Xa因子の阻害は、阻害剤と酵素の間での直接の複合体形成によって得られ、従って血漿補因子、アンチトロンビンIIIとは無関係である。前記化合物を、第Xa因子が誘導するプロトロンビンからのトロンビンの形成を防止する所望作用を達成するように、持続的静脈内注入、ボーラス静脈内投与または任意の他の非経口経路によって投与することにより、有効な第Xa因子の阻害が達成される。インビボ実験は、オタミキサバンが血栓症のげっ歯動物、イヌおよびブタモデルにおいて極めて有効であることを明らかにしている。加えて、最近の臨床所見は、オタミキサバンがヒトにおいても有効であり、安全で、良好に耐容され、従って急性冠動脈症候群の治療のための大きな潜在的可能性を有することを示している(K.R.Guertin and Yong−Mi Choi;2007;Current Medicinal Chemistry,Vol.14,No.23;p.2471−2481)。用量範囲臨床試験における臨床所見は、オタミキサバンがプロトロンビンフラグメント1+2を最高用量レジメンの未分画ヘパリンよりも有意に低減したことを示す(Cohen et al.,Circulation,Vol.115,No.20,May 2007,pages 2642−2651)が、前記臨床所見は年齢または腎障害を比較したデータを示していない。さらなる臨床試験は、オタミキサバンが、通常の併用薬を服用している安定な冠動脈疾患の患者において、このうちの一部は軽度の腎障害を有するが、用量依存的で迅速な直接の第Xa因子阻害を誘導することを明らかにした(Hinder et al.,Clinical Pharmacology and Therapeutics,Vol.80,No.6,2006,pages 691−702)。
【0008】
メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−ト塩酸塩の結晶形態である2−ブタノールヘミ溶媒和物がUS7,034,160に開示されている。メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−ト塩酸塩の結晶形態である2−ブタノールヘミ溶媒和物は、2−ブタノールを固体医薬組成物における使用には好ましくない溶媒和物として含み、吸湿性化合物である。
【0009】
吸湿性は、物質が吸収または吸着のいずれかを通して周囲環境から水分子を誘引し、保持する能力であり、吸収または吸着材料は、水分子がこの工程で材料分子の間に「懸濁」すると共に物理的に「変化」していき、材料の体積、粘度の幾分かの増大または他の物理的特徴の変化を生じる。従って、吸湿性化合物は一般に固体医薬組成物における使用には極めて不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第97/24118号
【特許文献2】米国特許第7,034,160号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】K.R.Guertin and Yong−Mi Choi;2007;Current Medicinal Chemistry,Vol.14,No.23;p.2471−2481
【非特許文献2】Cohen et al.,Circulation,Vol.115,No.20,May 2007,pages 2642−2651
【非特許文献3】Hinder et al.,Clinical Pharmacology and Therapeutics,Vol.80,No.6,2006,pages 691−702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
周囲環境からの水分子の吸収または吸着が少ないメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの塩を見出すことが本発明の目的である。メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩は、周囲環境からの水分子の吸収または吸着が良好に低減されていることが認められた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの実施形態では、本発明は、式I:
【0014】
【化3】
に例示する構造を示す、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩に関する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、結晶形態または少なくとも部分的に結晶形態である、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩に関する。
【0016】
1つの実施形態では、本発明は、式Iに例示する構造を示す、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩に関する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、結晶形態または少なくとも部分的に結晶形態である、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩に関する。
【0018】
多形性は、単一化合物が2以上の形態または結晶構造で存在する能力である。異なる多形は、同じ分子式を共有する別個の固体であり、さらに各々の多形は別個の物理的性質を有し得る。単一化合物が様々な多形形態を生じさせることがあり、これらの各々の形態は異なる別個の物理的性質、例えば異なる溶解度プロフィール、異なる熱力学的安定性、異なる結晶化挙動、異なるろ過性、異なる融点温度および/または異なるX線回折ピークなどを有し得る。異なる多形形態の物理的性質の相違は、固体中の隣接する分子の異なる配向および分子間相互作用から生じる。化合物の多形形態は、X線回折によっておよび赤外分光法またはラマン分光法などの他の方法によって識別することができる。
【0019】
「非晶質」とは、室温でCuKα線を用いて透過法で測定したX線粉末回折パターンにおいて、これらの回折角順序の特定角度2θによって互いから分離することができる2θ角度で特徴的な反射を示さない固体を意味する。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、結晶塩が、室温でCuKα線を用いて透過法で測定したX線粉末回折パターンにおいて19.8、18.8および17.9°2θ各々±0.2°2θ特徴的な反射を示す、式Iの結晶安息香酸塩に関する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、結晶塩が、室温でCuKα線を用いて透過法で測定したX線粉末回折パターンにおいて22.0、19.8、18.8、17.9、15.7および13.6°2θ各々±0.2°2θ特徴的な反射を示す、式Iの結晶安息香酸塩に関する。
【0022】
特徴的な反射の選択は、指定角度2θにおける反射の数によって決定した。
【0023】
別の実施形態では、式Iの結晶安息香酸塩はまた、透過モードでCuKα線を用いて得られた、実質的に図1に示すものによるX線粉末回折パターンを特徴としてもよく、ここで、図に示す反射の強度ならびに上記で指定した反射の強度は必須条件ではなく、変化し得る。
【0024】
式Iの結晶安息香酸塩はまた、この粉末パターンを指標とすることによって決定された結晶格子パラメータによっても特徴づけられ得る。式Iの結晶塩は、a=33.524Å、b=7.928Å、c=9.896Å、体積=5947Åの斜方晶系に結晶化する。
【0025】
さらに、式Iの結晶安息香酸塩はまた、25℃で測定した動的蒸気吸着(DVS)の水蒸気吸着・脱着等温線によっても特徴づけられ得る。吸着サイクルを開始する前に、式Iの結晶塩の試料を乾燥窒素ガスで処理する。実施例に示すように、吸着・脱着等温線はほとんど同じであり、80%室内湿度(RH)で1.1%および95%RHで2.0%の中等度の水分取り込みが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】室温でCuKα線を用いて透過モードで測定した、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの結晶安息香酸塩のX線粉末回折パターン(x軸:回折角2θ[°];y軸:相対強度)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩は、安息香酸または安息香酸の塩を添加した水溶液もしくはアルコール水溶液または他の適切な溶媒中にメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トを溶解することによっても調製し得る。撹拌しながら、混合物を65℃に加熱して透明な溶液を生成し、この後一晩冷却して沈殿物を得る。得られた沈殿物をろ過し、水で洗浄して、減圧下で乾燥することができる。
【0028】
一般に、(以下の式Iの安息香酸塩の中の)本発明のメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの結晶安息香酸塩は、式Iの化合物の溶液または式Iの化合物の懸濁液または式Iの化合物の固体から出発して、式Iの化合物を結晶化または再結晶化することによって得られる。式Iの化合物の溶液または式Iの化合物の懸濁液は、式Iの化合物の化学合成の最後に得ていてもよく、またはあらかじめ合成した式Iの粗化合物を溶解または懸濁することによって得て-いてもよい。「式Iの粗化合物」という用語は、式Iの化合物の任意の形態、例えば化学合成から直接得られた物質、式Iの化合物の別個の結晶形態または非晶質物質を包含する。
【0029】
より具体的には、本発明の式Iの結晶塩は、(a)例えば式Iの粗化合物をアルコール、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノールなどの適切な溶媒に溶解するまたは懸濁することにより、式Iの化合物の溶液または懸濁液を提供する段階;ここで、式Iの化合物の溶液は一般に透明な溶液であり、場合によりろ過されていてもよい、(b)かき混ぜるなどの撹拌を行いながらまたは撹拌を行わずに、溶液または懸濁液を維持し、加熱し、冷却しおよび/または濃縮して、および/または1以上のさらなる溶媒を添加して、所望の別個の結晶形態もしくは溶媒和物を形成するまたは所望の別個の結晶形態もしくは溶媒和物の形成を可能にする段階、ならびに(c)式Iの別個の結晶塩を単離する段階によって得ることができる。
【0030】
式Iの化合物の結晶形態および溶媒和物を調製する方法は、従来の装置を用いておよび標準的な手順に従って実施することができる。例えば、段階(b)における溶液または懸濁液の濃縮は、大気圧または減圧下で溶媒を部分的にまたは完全に蒸留除去することによって実施し得る。段階(c)での結晶形態または溶媒和物の単離は、ろ過または真空ろ過または遠心分離などの任意の従来の技術によって実施し得る。単離はまた、例えば高温および/または減圧を適用することにより、例えば中等度の減圧下にほぼ室温で、即ち約18℃から約65℃までの温度、例えば約20℃または約65℃で乾燥することも含み得る。
【0031】
好ましい実施形態では、結晶化を促進するために段階(a)または段階(b)で溶液または懸濁液に種結晶を入れてもよい。種結晶添加は、好ましくは既に調製された少量の式Iの結晶塩を用いて行う。
【0032】
(以下の式Iの安息香酸塩の中の)本発明のメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩は、第Xa因子を阻害するのに有用であり得る。従って、本発明は、第Xa因子の産生を阻害することによって調節され得る病的状態の治療または予防のための方法を提供する。
【0033】
本発明の式Iの安息香酸塩で治療され得る病的状態の例には、例えば、急性心筋梗塞(AMI)、非ST上昇型心筋梗塞、不安定狭心症、血栓塞栓症、血栓溶解療法および経皮的冠動脈形成術(PTCA)に関連する急性血管閉塞症、一過性脳虚血発作、脳卒中、間欠性跛行および再狭窄が含まれる。
【0034】
本明細書で述べる式Iの安息香酸塩は、従って、中でも特に、トロンビンではなく凝固カスケードにおける最後から2番目の酵素、第Xa因子を阻害するこれらの一般能力によって血液凝固を阻害するために有用であり得る。本発明の範囲内の式Iの安息香酸塩は、インビボ試験およびインビトロ試験を含む、文献に記載されている試験によれば、著明な薬理学的活性を示すことができ、インビトロ試験はヒトおよび他の哺乳動物における薬理学的活性に相関すると考えられている。例えば、遊離型第Xa因子およびプロトロンビナーゼ複合体(第Xa因子、第Va因子、カルシウムおよびリン脂質)に組み込まれた第Xa因子の両方が阻害され得る。第Xa因子の阻害は、阻害剤と酵素の間での直接の複合体形成によって得られると考えられ、従って血漿補因子、アンチトロンビンIIIとは無関係である。本発明による式Iの安息香酸塩を、第Xa因子が誘導するプロトロンビンからのトロンビンの形成を防止する所望作用を達成し得るように持続的静脈内注入、ボーラス静脈内投与または任意の他の適切な経路によって投与することにより、有効な第Xa因子の阻害が達成され得る。
【0035】
抗凝固療法における使用に加えて、第Xa因子阻害剤は、トロンビンの生成が病理学的役割を果たし得る他の疾患の治療または予防においても有用であり得る。例えば、トロンビンは、細胞表面のトロンビン受容体の特異的切断および活性化を介して多くの異なる細胞型を調節する能力により、関節炎、癌、アテローム性動脈硬化症およびアルツハイマー病などの慢性および変性疾患の罹患率および死亡率に寄与するとの説が提案されてきた。第Xa因子の阻害はトロンビンの生成を有効にブロックすると考えられ、従って様々な細胞型へのトロンビンの病理学的作用を中和し得る。
【0036】
本発明の方法は、好ましくは、本発明の式Iの安息香酸塩の医薬的有効量を、好ましくは1以上の医薬として許容される担体または賦形剤と組み合わせて、患者に投与することを含む。医薬組成物と担体および/または賦形剤の相対的比率は、例えば材料の溶解度および化学的性質、選択される投与経路ならびに標準的な製薬慣例によって決定され得る。
【0037】
予防または治療のために最も適切である式Iの安息香酸塩の投薬量は、投与の形態、選択される化合物の特定の新規形態および治療中の特定の患者の生理学的特徴によって異なり得る。概して、最初は少量の投薬量を使用し、必要に応じて、状況下での所望効果に達するまで少量ずつ漸増させ得る。
【0038】
一般的に言えば、成人では、適切な用量は、約0.01から約100mg/kg体重の範囲、ならびにこれらの中の範囲および特定用量のすべての組合せおよび部分的組合せにわたり得る。好ましい用量は、吸入による場合は1日当たり約0.01から約10mg/kg体重、経口投与による場合は1日当たり約0.01から約100mg/kg体重、好ましくは0.1から70、より好ましくは0.5から10mg/kg体重、および静脈内投与では1日当たり約0.01から約50mg/kg体重、好ましくは0.01から10mg/kg体重であり得る。各々特定の場合に、用量は、治療される被験者に特有の因子、例えば年齢、体重、全般的な健康状態および医薬品の効果に影響を及ぼし得る他の特徴などに応じて決定され得る。
【0039】
本発明による式Iの安息香酸塩は、所望治療効果を得るために必要な頻度で投与し得る。一部の患者は、より高用量または低用量に速やかに応答し、はるかに低い維持用量で十分であることが認められ得る。別の患者については、各々の特定患者の生理学的必要条件に応じて、1日当たり約1から約4回分用量の割合で長期的な治療を受ける必要があり得る。一般に、活性な生成物を1日当たり約1から約4回経口的に投与し得る。また別の患者については、1日当たり1回または2回分以下の用量を処方する必要があり得ることは言うまでもない。
【0040】
本発明の式Iの安息香酸塩は、経口剤形で、例えば錠剤、カプセル(これらの各々が徐放製剤または持続放出製剤を含む。)、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル、チンキ、懸濁液、シロップおよび乳剤として投与し得る。投与に適する固体剤形(医薬組成物)は、一般に投与単位当たり約1mgから約1000mgの式Iの安息香酸塩を含有し得る。
【0041】
錠剤またはカプセルなどの固体形態での経口投与のために、式Iの安息香酸塩を、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸ジカルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール等のような、非毒性の医薬として許容される不活性担体と組み合わせることができる。
【0042】
好ましくは、固体剤形は、有効成分に加えて、本明細書では「賦形剤」と称する多くの付加的な成分を含み得る。これらの賦形剤には、中でも特に、希釈剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤および崩壊剤が含まれる。着色剤も組み込まれ得る。本明細書で使用される「希釈剤」は、製剤に体積を与えて錠剤を圧縮のために実際的な大きさにし得る作用物質を指す。希釈剤の例はラクトースおよびセルロースである。本明細書で使用される「結合剤」は、錠剤が圧縮後も無傷のままであることを確実にするために粉末材料に凝集性を与えるため、ならびに粉末の自由流動性を改善するために使用され得る作用物質を指す。典型的な結合剤の例には、ラクトース、デンプンおよび様々な糖類が含まれる。本明細書で使用される「潤滑剤」は、圧縮装置への錠剤の付着を防ぐことおよび圧縮前またはカプセル化の前の顆粒の流動を改善することを含む幾つかの機能を有する。潤滑剤は、ほとんどの場合疎水性材料である。しかしながら、潤滑剤の過度の使用は、薬剤物質の崩壊度が低いおよび/または溶解が遅延した製剤を生じさせ得るので、望ましくない。本明細書で使用される「流動促進剤」は、顆粒材料の流動特性を改善し得る物質を指す。流動促進剤の例には、滑石およびコロイド状二酸化ケイ素が含まれる。本明細書で使用される「崩壊剤」は、投与後の固体剤形の分解または崩壊を促進するために製剤に添加される物質または物質の混合物を指す。崩壊剤としての機能を果たし得る材料には、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ガムおよび架橋ポリマーが含まれる。「超崩壊剤」と称される崩壊剤の群は、一般に固体剤形において低レベルで、典型的には投与単位の総重量に対して1重量%から10重量%で使用される。クロスカルメロース、クロスポビドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムは、それぞれ架橋セルロース、架橋ポリマーおよび架橋デンプンの例である。デンプングリコール酸ナトリウムは30秒未満で7倍から12倍に膨張し、これを含有する顆粒剤を有効に崩壊させる。
【0043】
本開示の教示を参照して、当業者に明らかであるように、式Iの結晶安息香酸塩は、溶解した場合、結晶構造を失い、従って式Iの安息香酸塩の溶液であるとみなされる。しかしながら、本発明のすべての形態は、式Iの結晶安息香酸塩が、例えば溶解または懸濁され得る液体製剤の調製のために使用し得る。加えて、式Iの結晶安息香酸塩は固体製剤に組み込み得る。
【0044】
以下の非限定的実施例は、本発明の式Iの安息香酸塩を調製し、使用するための発明人の好ましい方法を例示する。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
化合物(III)の調製
【0046】
【化4】
TsOHは、式CHSOを有するp−トルエンスルホン酸である。TsOHは一水和物を指す。反応器に化合物(IIa)(100.0g)および無水テトラヒドロフラン(THF)(320g)を充填した。生じた懸濁液を−20±3℃に冷却し、リチウムヘキサメチルジシラジド(LiHMDS)(475.6g、THF中1.3M溶液)を55分間かけて添加して、−20±3℃で20分間撹拌した。次にTHF中のα−ブロモ−m−トルニトリル(THF 181g中65.1g)を、温度を−20±3℃に維持しながら40分間かけて反応器に充填し、さらに30分間撹拌した。安息香酸(126.6g)を固体として反応器に充填した。次に水(1000g)を添加し、混合物を65±3℃のジャケット温度および200−233mbarの真空度で蒸留した。57℃の一定なポット温度および45℃の一定なヘッド温度に蒸留した後、蒸留を停止した。トルエン(432g)を熱溶液に添加し、10±2℃まで冷却しながら撹拌した。次に生じた懸濁液をろ過し、ろ過ケーキを水(250g)およびトルエン(432g)で洗浄した。化合物(III)を窒素流下に45−50℃、約350mbar真空度で、一定重量になるまで24時間乾燥した。単離した固体の重量は76.0gであった(収率62.0%)。
【0047】
[実施例2]
化合物(V)の調製
【0048】
【化5】
化合物(III)をジクロロメタンと炭酸ナトリウム水溶液との間で分配した。有機相((III)の遊離塩基を含有する。)をさらなる炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧下で蒸留して、溶媒をジメチルホルムアミド(DMF)と交換した。この溶液を(III)の重量/重量含量に関して検定した。DMF中の(IV)((III)に対して1.0当量)の懸濁液に、2当量の4−メチルモルホリンおよび1.1当量のO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)を添加した。この混合物を、エステルの活性化が完了するまで周囲温度で撹拌した(約90分間)。化合物(III)(1当量)のDMF溶液を添加し、生じた溶液を一晩撹拌して、この後、HPLCは反応が完了したことを示した。水を75℃で添加し、混合物を冷却して生成物を結晶化させた。混合物を5℃に冷却し、ろ過して、ろ過ケーキを水で洗浄した。生成物を減圧下に70℃で乾燥した。
【0049】
[実施例3]
化合物(VI)の調製
【0050】
【化6】
十分に撹拌された反応器中で、ジクロロメタン450mL中の化合物(V)45gを水450g中のモノペルオキシフタル酸マグネシウム61g(利用可能な酸素に基づき66.4%、1.5当量)と、反応が完了するまで少なくとも5時間反応させた。相を分離し、有機相を等容量の水、5%重炭酸ナトリウム水溶液および水で連続的に洗浄した。生じた溶液を約40重量%溶液に濃縮し、メチルイソブチルケトン(MIBK)180gで希釈した。さらに蒸留して残留ジクロロメタンを除去し、適切な結晶を用いて種入れして、冷却し、生成物を結晶固体として得た。結晶をろ過し、MIBK 30gで洗浄して、減圧下に50℃で乾燥し、化合物(VI)41.8gを得た(収率89.3%)。
【0051】
[実施例4]
化合物(VII)の調製
【0052】
【化7】
200mLのジャケット付き反応フラスコに化合物(VI)(50.0g、116mmol)およびメタノール(50mL)を充填した。この混合物を−5℃に冷却し、部分的真空(約100torr)を確立した後、密封した。反応温度を0℃未満に維持しながら無水HCl(52.2g、1.43mol)を添加した。反応物を閉鎖条件下に0±1℃で撹拌した。16時間後、反応が完了した(HPLCにより2 A%(VI)未満)。中間体生成物溶液に、温度を5℃未満に維持しながら無水メタノール(100mL)を添加した。0℃未満の温度を保持しながら溶液をNH(27.7g、1.62mol)で処理した。混合物を室温に温める前に、蒸留水に溶解したアリコートのpH検査を行った(8−10のpHはアンモニアの十分な変化を示す。)。反応物を20℃で一晩撹拌し、この時点で反応が完了した。
【0053】
[実施例5]
溶媒添加による化合物(VIII)の調製
【0054】
【化8】
実施例4からの塩化アンモニウムスラリーに2−ブタノール(840mL)を添加し、生じた混合物を70℃に温めながら1時間撹拌した。塩化アンモニウムを熱ろ過によって除去し、ケーキを2−ブタノール160mL中のメタノール20mLの溶液で洗浄した。ろ液を合わせ、種結晶0.5gを添加した。混合物を周囲温度で一晩撹拌した。スラリーを−15℃に冷却し、完全な結晶化を確実にするため2時間保持した。固体をろ過し、反応器およびケーキを2−ブタノール165mLで洗浄した。固体を減圧下に45℃から50℃で窒素ブリードを行って乾燥し、化合物(VIII)44.3g(73.2%)をオフホワイト色結晶固体として得た。
【0055】
[実施例6]
安息香酸塩の調製
実施例5で調製した化合物(一塩酸塩−ヘミ2−ブタノール溶媒和物)4gを熱水80mlに溶解し、固体安息香酸ナトリウム1.11gを添加することによって材料を調製した。撹拌しながら、混合物を一晩冷却した。得られた沈殿物をろ過し、水で洗浄して、減圧下に40℃で6時間乾燥した。収率は79.4%であった。
【0056】
NMRデータは、得られた塩が安息香酸とメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの1:1比率であり、以下の図式に例示する構造を示すことを確認した:
【0057】
【化9】
【0058】
【表1】
DMSO はジメチルスルホキシドを意味する。
【0059】
NMR化学シフトの完全な帰属については表1参照。
【0060】
【表2】
【0061】
または、水100mL中の実施例4で調製した化合物5.0gの溶液に安息香酸ナトリウム2.2gを添加した。混合物を、均一になるまで蒸気浴で加熱した。炭(約2g)を添加し、この混合物をセライト(登録商標)でろ過して、水20mLで洗浄した。直ちに結晶化が始まった。2時間冷却した後、固体を収集し、水で洗浄した。固体を50℃で真空オーブンにおいて3日間乾燥した後、3.9g(67%)を収集した。H NMRは、塩を安息香酸とメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの1:1比率と確認した。
【0062】
[実施例7]
示差走査熱量測定(DSC)
Mettler DSC822e(モジュールDSC822e/700/109/414935/0025)を用いてDSC測定を実施した。密閉用の蓋とピンホールを備えた40μLアルミニウムるつぼを使用した。すべての測定は、50mL/分の窒素ガス流中、10°/分の加熱速度で実施した。測定したデータはSTARe V8.10ソフトウェアによって評価した。
【0063】
使用した結晶形態は実施例6で調製したものであり、25℃から300℃までの加熱の間に216.01℃で初期ピークおよび221.15℃でピークを示した。
【0064】
[実施例8]
結晶形態の調製
エタノール2mL中の実施例6で調製した式Iの安息香酸塩0.190gの溶液を65℃から0℃まで急速に冷却することによって結晶形態を調製した。沈殿が生じなかったので、試料を0℃で一晩放置した。沈殿物を真空ろ過によって単離し、この後減圧下に25℃で乾燥した。
【0065】
または、エタノール5.0mL中の実施例6で調製した式Iの安息香酸塩0.200 gの撹拌溶液を、18時間で65℃から10℃まで制御冷却することによって結晶形態を調製した。沈殿物を真空ろ過によって単離した。
【0066】
または、2−プロパノール15mLおよび水1.0mL中の実施例6で調製した式Iの安息香酸塩0.201gの撹拌溶液を、18時間で65℃から10℃まで制御冷却することによって結晶形態を調製した。沈殿が生じなかったので、溶媒を65℃で蒸発させた。
【0067】
または、実施例6で調製した式Iの安息香酸塩0.217gを約65℃でエタノール5.0mL中に溶解することによって結晶形態を調製した。次に溶媒を同じ温度で一晩撹拌溶液から蒸発させた。固体残留物を減圧下に室温で乾燥した。
【0068】
または、実施例6で調製した式Iの安息香酸塩0.197gを約65℃で2−プロパノール10mLおよび水1.0mLに溶解することによって結晶形態を調製した。次に溶媒を同じ温度で一晩、撹拌溶液から蒸発させた。固体残留物を減圧下に室温で乾燥した。
【0069】
[実施例9]
動的蒸気吸着(DVS)
水分吸着/脱着等温線をSurface Measurement SystemsからのDVS−1000で記録した。2サイクルを25℃で実施し、試料を最初に乾燥窒素ガスで処理して、次に相対湿度を0%から95%まで段階的に上昇させ、この後再び0%に低下させて、試料の重量を測定した。両サイクルについての典型的な総測定時間は約20から30時間であった。
【0070】
実施例8で調製したメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩についての測定データを以下の表2に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
「RH」は相対湿度を意味する。空気−水混合物の相対湿度は、指示温度での飽和水蒸気圧に対する混合物中の水蒸気の部分圧の比率と定義される。
【0073】
DVSは、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩に関して80%RHで1.1%および95%RHで2.0%の中等度の水分取り込みを示す。
【0074】
DVS比較実験:
実施例5で調製したメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−ト一塩酸塩−ヘミ2−ブタノール溶媒和物。
【0075】
実施例5で調製したメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−ト一塩酸塩−ヘミ2−ブタノール溶媒和物についての測定データを以下の表3に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
DVSは、メチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−ト一塩酸塩−ヘミ2−ブタノール溶媒和物に関して60%RHで3.69%、80%RHで17.79%、90%RHで26.66%および95%RHで34.13%の強い水分取り込みを示す。
【0078】
[実施例10]
示差走査熱量測定(DSC)
Mettler DSC822e(モジュールDSC822e/700/109/414935/0025)を用いてDSC測定を実施した。密閉用の蓋とピンホールを備えた40μLアルミニウムるつぼを使用した。すべての測定は、50mL/分の窒素ガス流中、10°/分の加熱速度で実施した。測定したデータはSTARe V8.10ソフトウェアによって評価した。
【0079】
使用した結晶形態は実施例8で調製したものであり、25℃から300℃までの加熱の間に225.57℃で初期ピークおよび229.02℃でピークを示した。
[実施例11]
X線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折を、CuKα線(波長は1.54060オングストロームである。)および線形位置敏感型検出器を用いてStoe Stadi−P透過回折計で実施した。特に明記しない限り、X線粉末回折は室温で実施した。試料は平らな標本で検討した。測定したデータを、WinXPOW V2.12ソフトウェアを用いて評価し、プロットした。
【0080】
実施例8で調製したメチル(2R,3R)−2−{3−[アミノ(イミノ)メチル]ベンジル}−3−{[4−(1−オキシドピリジン−4−イル)ベンゾイル]アミノ}ブタノエ−トの安息香酸塩の観察されたX線粉末回折パターンを図1に表示する(図1)。図に示されているX線粉末回折パターンはバックグラウンドを差し引いている。
【0081】
°(度)で表した2θ(2シータ)角度は特徴的な反射の数として特定される。°で表した2θ角度は図1において以下の値を有しており、相対強度を括弧内に示す:
【0082】
【表5】
図1