(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザビームを放射するレーザソースと、EUV光放射材料の小滴が照射場所でレーザビームにより照射されるプラズマチャンバーと、レーザビームをプラズマチャンバー内の焦点に収束させる収束レンズと、を備えるEUV光源において収束レンズの焦点をコントロールする方法であって、
一連の時点の各時点にレーザビームによりレンズに生じる熱負荷の量を決定する段階と、
一連の時点の各時点に、熱負荷の量によりレンズの公称焦点に比して生じるレンズの焦点の予想変化を決定する段階と、
一連の時点の各時点に、熱負荷の量によりレンズの公称焦点に比して生じるレンズの焦点の予想変化を補償するようにレンズの位置を調整して、焦点が一連の時点にわたり照射場所に実質的に留まるようにする段階と、を含み、
一連の時点の各時点に、熱負荷によりレンズの公称焦点に比して生じるレンズの焦点の予想変化を決定する前記段階は、焦点の予想変化をレンズに生じる熱負荷に関連付けるレンズの数学モデルを使用して、前記決定された熱負荷に基づいてレンズの焦点の予想変化を計算することを含み、
前記レンズの数学モデルは、レンズを第1質量及び第2質量としてモデリングする、方法。
各一次減衰指数式は、利得定数及び変位定数を有し、そして一連の時点の各時点にレンズの公称焦点に比して生じるレンズの焦点の予想変化を決定する前記段階は、各定数を決定するようにレンズを校正することを更に含む、請求項4に記載の方法。
レーザビームを放射するレーザソースと、EUV光放射材料の小滴が照射場所でレーザビームにより照射されるプラズマチャンバーと、レーザビームをプラズマチャンバー内の焦点に収束させる収束レンズと、を備えるEUV光源において収束レンズの焦点をコントロールする方法を遂行するために、プロセッサによって実行可能なプログラムが実施される非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体であって、
前記方法は、
一連の時点の各時点にレーザビームによりレンズに生じる熱負荷の量を決定し、
一連の時点の各時点にレーザビームによりレンズに生じる熱負荷の量によりレンズの公称焦点に比して生じるレンズの焦点の予想変化を一連の時点の各時点に決定し、
一連の時点の各時点に、熱負荷の量によりレンズの公称焦点に比して生じるレンズの焦点の予想変化を補償するようにレンズの位置を調整して、焦点が一連の時点にわたり照射場所に実質的に留まるようにする、
段階を含み、
一連の時点の各時点にレーザビームによりレンズに生じる熱負荷の量によりレンズの公称焦点に比して生じるレンズの焦点の予想変化を一連の時点の各時点に決定する前記段階は、焦点の予想変化をレンズに生じる熱負荷に関連付けるレンズの数学モデルを使用して、前記決定された熱負荷に基づいてレンズの焦点の予想変化を計算することを含み、
前記レンズの数学モデルは、レンズを第1質量及び第2質量としてモデリングする、非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体。
【背景技術】
【0003】
半導体産業は、益々小さくなる集積回路寸法を印刷できるリソグラフィー技術を開発し続けている。超紫外(EUV)光(軟x線とも称される)は、一般的に、波長が10から120nmの電磁放射として定義される。現在、EUVリソグラフィーは、一般的に、波長が10−14nmの範囲のEUV光を含むと考えられ、そしてシリコンウェハのような物質において、例えば、32nm以下の特徴部のような非常に小さな特徴部を形成するのに使用される。これらシステムは、非常に信頼性が高く且つ費用効果の高いスループット及び合理的なプロセス寛容度を備えたものでなければならない。
【0004】
EUV光を発生する方法は、必ずしもこれに限定されないが、材料を、例えば、EUV範囲において1つ以上の輝線(emission line)を伴うキセノン、リチウム、スズ、インジウム、アンチモン、テルル、アルミニウム、等の1つ以上の元素を有するプラズマ状態へと変換することを含む。レーザ発生型プラズマ(LPP)としばしば称される1つのそのような方法では、望ましい輝線放射元素を有する材料の小滴、流れ又は群れのようなターゲット材料を照射場所においてレーザビームで照射することにより必要なプラズマを発生することができる。
【0005】
輝線放射元素は、純粋な形態又は合金の形態、例えば、望ましい温度において液体である合金でもよいし、或いは液体のような別の材料と混合又は分散されてもよい。このターゲット材料及びレーザビームをプラズマ開始のために望ましい照射場所に同時に送り込む場合には、良好なプラズマを得、ひいては、良好なEUV光を得るためにターゲットに適切に当てる必要があるので、幾つかのタイミング及びコントロールの問題が生じる。
【0006】
1つのそのような問題は、レーザビームを照射場所に収束させる収束レンズの存在に関する。(レーザ光源と照射場所との間には他のレンズもあるが、ビームを照射場所に直接収束させるのは最後のレンズだけである。)収束レンズの焦点又は「くびれ」は、ターゲット材料が配置される照射場所に一致し、プラズマを形成する上でレーザエネルギーの最大の作用が得られるのが望ましい。ここでは、フォーカル「ポイント」(focal “point”)ではなく、フォーカル「スポット」(focal “spot”)及び「くびれ」という語が使用される。というのは、物理的レンズは、理論的数学的に完全なレンズで見た実際のポイントではなく、実際上、測定可能な巾の最も狭いスポット、即ちフォーカルスポット(以下、焦点)又はくびれに焦点を合わせるからである。
【0007】
収束レンズは、所与の温度において特定の距離の公称焦点長さ(焦点の中心)を有する。従って、他の作用がない場合には、レンズの焦点は、公称焦点長さに対応するレーザ経路の特定ポイントに最大レーザ強度を発生する。しかしながら、レーザビームがレンズを通過するときにレンズがレーザビームからエネルギーを吸収することが良く知られており、従って、レンズは、その焦点長さを変化させ得る熱作用を受けることが予想される。
【0008】
レンズの熱負荷が一定であり、例えば、レーザが連続する場合には、レンズは、典型的に、数分程度の期間中、この熱作用の定常状態に到達する。この定常的な熱負荷のもとにあるレンズの焦点長さは、容易に決定することができ、レンズがそのような負荷のもとにないときではなく、レンズが熱負荷のものにあるときにレンズの焦点が照射場所に位置されるようにレンズが配置される。
【0009】
しかしながら、レンズが定常的な熱負荷に到達するに必要な時間よりは短いが、レンズにある程度の熱負荷を生成するに足るほどの長い期間でレーザがオン及びオフに切り換えられる場合には、所与の瞬間にレンズにおける特定量の熱負荷に基づいて焦点が若干移動し得る。
【0010】
レーザをオン及びオフに切り換える方法は、少なくとも2つある。第1に、EUVシステムでは、多くの集積回路生産システムと同様に、一般的に、EUVビームが照射されるウェハを保持する「ボート」と称する容器があり、このボートがウェハの新たなセットをEUVビーム路に配置するように切り換えられるときには、レーザが典型的にターンオフされ、1つのボードが除去されて次のボートが挿入される期間中は、EUV光が発生されない。これは、一般的に、1分程度を要し、その後、レーザが再びターンオンされ、従って、レーザがターンオフされるとき及びそれが再びターンオンされるときの両方に過渡的な熱作用を生じさせる。
【0011】
更に、新規なシステムは、レーザパルスを使用し、ユーザがパルスの状態、ひいては、EUV光の発生をセットできるようにする。1つの例において、ウェハに露光フィールドを照射するパルスのバーストは、40KHzのパルス繰り返し数で各々30nsの20,000個のパルスを含み、全バーストは、0.5秒間続く。バーストとバーストの間に、ウェハを保持するスキャナは、異なる露光フィールドの照射を許すためにウェハを再整列し、この再整列に、例えば、0.1秒を要する。
【0012】
デューティサイクルは、光源、即ちレーザが指定のパルス繰り返し数で動作する時間の割合であると考えられる。一般的に、約20%以上デューティサイクルが変化すると、レンズに熱過渡状態が生じ、それらの過渡状態は、安定するのに数分を要する。
【0013】
レンズの焦点長さの変化量は、特定のレンズごとに異なり、そしてあまり大きいとは思われず、例えば、公称焦点長さが300mmのレンズは、いずれかの方向に約1mm変化し、即ち299から301mmまで変化し、そしておそらくは、それ未満である。しかしながら、典型的なターゲットのサイズ30ミクロンと比較すると、焦点のこの動きは、レーザビームのくびれとターゲットとの間の結合を減少するに充分であり、従って、プラズマの発生に問題を招く。
【0014】
EUVシステムにおいて熱作用を補償する従来の試みは、レーザ収束レンズの焦点ではなく、EUVビームの焦点及びそれにより生じるスキャナの露光で関するものであった。それらは、著しく異なる問題である。スキャナは、EUV光発生の部分ではなく、従って、EUVビームの焦点が変化しても、EUV光源により発生されるパワーが変化せず、EUVビームの最大強度の位置が変化するだけである。従って、EUVビームの焦点長さのそのような変化を補償する試みでは、スキャナに受け取られるパワーを時間と共に単に計算すれば充分である。というのは、スキャナが焦点に位置されているか否かでEUV光源により発生されるパワーが変化することはなく、スキャナが最適な焦点にない場合には、EUVビームのパワー減少の補償が、一般的に、露光時間の延長により与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
レーザ発生型プラズマ(LPP)超紫外(EUV)光システムにおいて照射場所のターゲット材料にレーザビームを収束するために使用されるレンズの焦点に対する熱作用を補償するための方法及び装置について説明する。
【0023】
1つの実施形態において、そのような熱作用を補償する方法は、光システムのEUVエネルギー出力をサンプル間隔で測定し、その測定されたEUVパワーから収束レンズに対する熱負荷を推定し、その熱負荷による焦点長さの変化を補償するようにレンズの位置を調整し、そしてレンズの位置を測定してそれが実質的に望ましい位置に留まるよう保証することを含む。
【0024】
図1は、典型的なLPP EUVシステム100のあるコンポーネントを示す。CO
2レーザのような駆動レーザ101は、レーザビーム102を発生し、これは、ビーム配送システム103及び収束レンズ104を通過する。収束レンズ104は、照射場所105に公称焦点を有する。小滴発生器106は、適当なターゲット材料の小滴107を発生し、この材料は、レーザビーム102が当たると、EUV光を放出するプラズマを発生する。ミラー108は、プラズマからのEUV光をミラー108の焦点である位置109に収束させる。位置109は、典型的に、EUV光に露出されるウェハのボートを収容するスキャナ(図示せず)内にあり、現在照射されているウェハを収容するボートの位置が位置109にある。ある実施形態では、複数の駆動レーザ101があって、全てのビームが最終的な収束レンズ104に収斂する。
【0025】
一形式のLPP EUV光源は、CO
2レーザと、反射防止コーティング及び約6から8インチのクリアアパーチャーをもつZnSe(セレン化亜鉛)レンズとを使用する。実験観察が示すように、そのようなレンズの熱変化によるレンズの焦点長さの変化は、一方が他方より迅速に生じる異なる時間スケールで生じる2つの作用を含むと思われる。迅速な作用は、レンズのある部分の質量が比較的小さくて迅速に加熱し、約1分半以内に熱的安定性に達することを示すと思われ、この小さな質量は、レンズのコーティング又はレンズのマウント部であると考えられる。他方の作用は、低速で、3分以上かかり、従って、大きな質量によるものと思われ、この大きな質量は、レンズの材料それ自体であり、この場合は、セレン化亜鉛と考えられる。又、2つの作用は、互いに逆方向に生じ、即ち迅速な熱作用は、レンズの焦点長さを増加させ、一方、低速な作用は、レンズの焦点長さを短縮させる。
【0026】
これらの観察から、レンズに対する熱作用によるレンズの焦点長さの予想変化を表わす数学モデルが開発された。以下に詳細に述べるように、このモデルは4つの定数を含む。そのうちの2つは、熱作用が生じる速度を表わす「時」定数である。他の2つの定数は、特定量のパワーを受けるレンズの熱作用により生じると予想されるレンズの焦点長さの変化量を表わす変位スケールである。
【0027】
製造プロセスの制約のために、いずれの2つのレンズも、全く同じプロセスにより作られたとしても、若干異なることが予想される。各レンズの質量、及び施されるコーティングの特性又は厚みも、一般的に、若干異なる。従って、各レンズは、時定数及びそれらの時定数に対応するスケールを決定するために、校正され且つモデルと比較されることが好ましい。
【0028】
図2は、本発明の1つの実施形態による方法の簡単なフローチャートである。ステップ201において、ある時間間隔にわたるシステムの合計EUVエネルギー出力がセンサで測定される。EUV出力は、レーザパワーの代用として使用される。というのは、EUVシステムによって出力されるパワーは、プラズマを発生するレーザパワーに関連し、ひいては、レンズへ入力されるレーザパワーに関連しているからである。他の実施形態では、レーザパワーそれ自体が直接測定されてもよい。
【0029】
次いで、ステップ202において、合計EUVエネルギー出力は、サンプル時間間隔で除算されて、単位時間当たりの平均パワーを得る。ステップ203において、測定された平均パワーからのレンズに対する熱負荷が前記数学モデルに基づき推定される。次いで、熱負荷から予想される焦点長さ変化がステップ204において計算される。ステップ205では、熱負荷による焦点長さの変化を補償するようにレンズの位置が調整されて、焦点を時間と共に照射場所に実質的に保持する。
【0030】
ステップ206において、フィードバックループを使用して、レンズの実際の位置をその予想位置と比較し、必要に応じて位置を調整する。これは、例えば、直線変位を測定するのに使用される既知の電気的変圧器の一形式である直線的可変差動変圧器(LVDT)で行うことができる。これは、更に、システムが動作されるときにレンズの焦点を時間と共に実質的に照射場所に留めることができる。
【0031】
熱作用を補償するのに使用されるレンズの動きの数学モデルについて以下に説明する。熱作用は、一般的に、レンズに入る平均パワーに基づいて熱作用状態を生じさせる2つのローパスフィルタとしてモデリングされる。レンズの変位は、2つの熱作用状態に比例する。
【0032】
各熱プロセスは、一次減衰指数方程式としてモデリングされ、時間tにおいて、熱状態X
thermal[t]は、次のように表される。
【数1】
但し、αは、各熱プロセスの時定数である。高速及び低速熱プロセスは、もちろん、異なる時定数を有する。
【0033】
この場合も、EUV出力パワーは、レーザパワーの代用として使用されて、レンズに対する熱作用を決定する。時間tにLPP EUVシステムシステムにより出力される平均パワーP
avg[t]は、次のように表される。
【数2】
ある期間にわたるシステムの出力パワーの合計∫EUVが経過時間Δtに対して微分されて、平均パワーを得る。
【0034】
時間tにおけるレンズの熱状態、及びそれにより焦点を一定の照射場所に保持するのに必要なレンズの動きは、次のように表される。
【数3】
X
thermal1[t]及びX
thermal2[t]は、各々、低速及び高速熱作用によるレンズの熱状態を表わす。遅延ファクタq
-1は、乗算する値が以前のサンプル時間t−1からのものであることを指示する。Lens[t]は、必要なレンズの動きである。これらの式は、平均パワーを、レンズを動かすための距離の値に変換する。
【0035】
モデルは、4つの定数を含み、そのうちの2つτ
1及びτ
2は、時間に関連した単位なし定数であり、一方は、高速熱作用を表わし、そして他方は、低速熱作用を表わす。導出を容易にするため前記減衰指数形態においてK=1/αと仮定し、そしてラプラス変換及び離散的時間ドメインを、コンピュータでサンプルされたかのように使用すれば、τ
1及びτ
2は、次のように表されることが数学的に示される。
【数4】
但し、α
1及びα
2は、各熱プロセスの時定数である。
【0036】
他の2つの定数g
1及びg
2は、特定量のパワーを受けるレンズの熱作用により生じると予想されるレンズの焦点長さの変化量を表わし且つ単位パワー当たりの距離の単位で測定される変位定数である。各X
thermal[t]は、平均電力に基づくので、それも、ワット又はミリワットのようなパワーの単位であり、従って、単位パワー当たりの距離のg値がパワーの単位数で乗算されるので、Lens[t]の値は、距離となる。
【0037】
従って、一方の変位定数は、小さなレンズ質量に対する所与のパワーの高速熱作用により生じる短い期間における焦点長さの予想変化を示し、他方の変位定数は、大きなレンズ質量に対する低速熱作用により生じる短い期間における焦点長さの予想変化を示す。又、大きな値のτは、迅速に変化するX
thermal[t]の値を生じ、従って、高速熱作用を表わす。
【0038】
「高速」変位定数に熱状態の高速変化を乗算すると、高速熱作用を補償するためにレンズを動かさねばならない距離が得られる。同様に、「低速」変位定数に熱状態の低速変化を乗算すると、低速熱作用を補償するためにレンズを動かさねばならない距離が得られる。それらを加算すると、両熱作用を補償するために必要なレンズの合計移動が得られる。この場合も、2つの動きは、互いに逆方向である。
【0039】
熱状態の式X
thermal1[t]及びX
thermal2[t]を提示する別の仕方は、次の通りであることが数学的に容易に明らかであろう。
【数5】
従って、時間tにおける各熱状態は、時間t−1における熱状態、平均パワーP
avg[t]、及びτの関連値に基づく。上述したように、P
avg[t]は、ある期間にわたり出力パワーを積分し、次いで、時間で微分することにより、即ち積分されたパワーに、時間tとt−1との間の期間Δtを乗算することにより、容易に計算することができる。当業者に容易に明らかなように、熱状態X
thermal1[t]及びX
thermal2[t]を計算するこの方法は、上述した以前の形態よりもコンピュータコードで容易に実施され、従って、この後者の形態は、「擬似コード」と称される。
【0040】
又、定常状態では、各熱状態が変化せず、即ちX
thermal[t]=X
thermal[t−1]であり、そして熱状態X
thermal[t]は、丁度平均パワーP
avg[t]である。従って、2つのレンズの動きの和は、定常状態のもとで焦点を照射場所に保持するためにレンズを移動する必要のある量となる。
【0041】
上述したように、各レンズは異なるので、τ
1、τ
2、g
1及びg
2の値を決定するためには、レンズを校正しなければならない。レンズを校正するため、予想デューティサイクルがシミュレーションされる。レーザへのパワーは、「オフ」又は最小パワー状態から、LPP EUVシステムの意図された使用で予想される出力へと増加される。熱過渡状態が推定され、熱作用を補償すると共に、焦点を照射場所に保持し且つEUVパワー出力を一定に保持する試みにおいてレンズが移動される。
【0042】
従って、例えば、システムは、1%デューティサイクルでスタートして、300mmであるレンズの公称焦点長さを決定する(レンズは、何かに収束して焦点を決定しなければならないので)。システムのユーザが80%のデューティサイクルで実行することを予想する場合には、そのデューティサイクルに対応するレベルにパワーが増加される。80%デューティサイクルにおける平均レーザパワーが20ワットの場合には、システムが「オフ」状態から80%デューティサイクルへ至るのをシミュレーションするようにパワーが1ワットから20ワットへ迅速に増加される。
【0043】
最初に、EUV出力がほぼ段階関数で急激に増加する。しかしながら、レンズが加熱するにつれて、その焦点が変化し、EUV出力は、レンズの位置をある程度調整しないと、一定に留まらない。焦点長さのこの変化は、上述したように時間と共に生じ、従って、高速及び低速の両熱作用を補償するためにレンズをどれほど速く移動すべきか決定し、そしてそれに応じて数学的モデルの定数をセットするために校正が試みられる。
【0044】
これは、最小パワー状態と全熱負荷、即ち定常状態との間にEUV出力を常時その最大レベル又はその付近に保持するレンズ移動の軌道を生成するよう求めることにより行われる。レーザは、望ましいデューティサイクルでターンオンされ、次いで、レンズは、ほぼ一定の間隔、例えば、1秒で移動され、それにより、EUV出力が測定される。レンズの移動は、手動で行われてもよいし、自動的に行われてもよい。
【0045】
最初に高速熱作用についてτ[fast]の値及び変位定数g[fast]を決定するのが効率的であると考えられる。というのは、単に、高速熱作用は、1分半で安定状態に到達し、一方、低速熱作用は、安定状態に到達するのにより長くかかるからである。以下の説明は、この解決策を取るが、何らかの理由で望ましい場合には、低速熱作用を最初に取り扱うこともできる。
【0046】
EUV出力パワーを一定に保持する試みにおいて、毎秒一度、レーザがターンオンされ、そしてレンズが照射場所から若干離れるように移動される(この場合も、高速作用は、レンズの焦点長さを長くする)。このプロセスは、レーザを何回もオフ及びオンに切り換えることにより必要に応じて繰り返され、やがて、1分半の期間中にEUV出力を望ましい余裕内でほぼ一定に保持する適当な軌道が決定される。
【0047】
軌道が決定されると、焦点長さの最大の変化が明らかとなり、これは、高速熱作用に対する変位定数g[fast]の値である。高速熱作用に対する利得τ[fast]の値は、出力EUVパワーを一定に保持するためにレンズをどれほど速く移動しなければならないかに依存する。当業者であれば、レンズの必要な移動が次の一次指数式を表わす曲線により近似されるようにτ[fast]をどのようにセットするか明らかであろう。
【数6】
【0048】
これが行われると、同様のプロセスを引き続き行って、低速熱作用の長い期間中にほぼ一定のEUVパワー出力を生じる軌道を決定する。この場合も、レーザがオン及びオフに切り換えられ、レンズが移動されて、EUV出力パワーを一定に保持するよう試みられる。しかしながら、今度は、高速熱作用によるレンズ位置の最大の調整に到達すると、レンズは、逆方向に照射場所に向かって移動される。というのは、低速熱作用がレンズの焦点距離を短くするからである。利得τ[slow]の値は、高速利得定数と同様にセットされ、レンズの移動が、この場合も、上述した一次指数式で近似されるようにする。
【0049】
この場合も、軌道が決定されると、両熱作用を補償するのに必要なレンズの最終的位置が明らかとなる。低速熱作用に対する変位定数g[slow]は、レンズの最終位置を生じるためにg[fast]及びg[slow](即ち、前記式のg
1及びg
2)の和に必要な変位であると考えられる(変位は、互いに逆方向であるために符号が異なることを想起されたい)。
【0050】
例えば、特定のレンズの校正において、レンズの焦点長さが最終的に300mmから299.5mmに短縮することが決定され、即ち定常状態において、焦点を照射場所に保持し且つレーザパルス当たり最大のEUV出力を維持するためにレンズを照射場所へ0.5mm接近させねばならないことが決定される。しかしながら、レンズは、最初に、高速熱作用を補償するため照射場所から0.1mm離れるように移動させ、次いで、低速熱作用が効果を発するときに照射場所に向かって戻るようにゆっくりと0.6mm移動させねばならないことも決定される。このケースでは、g[fast]が−0.1mmであり、そしてg[slow]が0.6mmであり(正の方向は、照射場所に向かう方向と定義される)、上述したように、その和は、定常状態において出力を最大に保持するために最終的に0.5mmの移動が必要であるとの結果を生じる。
【0051】
前記説明は、校正中にレンズを移動することに関するものであるが、別の実施形態では、もし容易であれば、校正中にレーザビームの軸に沿って照射ターゲット材料を移動することができ、これも、ターゲット材料をレンズの焦点くびれ内に保持しようとするものであることに注意されたい。しかしながら、これは、システムの実際の動作中に行われるものではない。
【0052】
定数が計算されると、前記レンズ移動モデルがハードウェアで実施され、EUVシステムの動作中にレンズが自動的に移動されるようにする。
図3は、上述した数学モデルを使用してレンズの望ましい位置を計算するための論理回路の一実施形態を示す。上述したように、論理回路は、本質的に2つのローパスフィルタを表わし、その一方は、高速熱作用に対応する移動を計算するためのものであり、そして他方は、低速熱作用のためのものである。
【0053】
サンプル期間にわたって受け取られるEUV出力エネルギー及びサンプル期間の長さが回路に入力され、そしてエネルギー対パワー計算器301によって受け取られ、この計算器は、サンプル期間中に生じる平均パワーを計算する。計算された平均パワーの数値は、2つの加算器302及び303へ供給され、そしてそれら加算器から2つの熱負荷推定器304及び305へ供給される。第1のサンプル期間の終わりに、加算器302及び303へフィードバックされる第2の信号はなく、従って、計算された平均パワーは、熱負荷推定器304及び305へ供給される。
【0054】
以下の説明は、熱負荷推定器304を含むフィルタが高速熱作用を補償するのに必要なレンズの移動を計算し、そして熱負荷推定器305を含むブロックが低速熱作用について計算すると仮定したものであるが、これらは、当然、逆にすることもできる。高速熱作用について最初に述べると、熱負荷推定器304は、決定された利得τ[fast]を平均パワーに乗算して、高速熱作用によるレンズの推定熱負荷、即ちパワー測定値を決定する。
【0055】
それにより得られる推定熱負荷は、次いで、単位遅延回路306及び別の加算器308へ送られる。単位遅延回路306は、1サンプル期間の遅延の後に推定熱負荷を加算器302へフィードバックする。又、単位遅延回路306は、1サンプル期間の同じ遅延の後に推定熱負荷を加算器308にも送る。
【0056】
時間kとして定義された第2のサンプル期間の終わりに、熱負荷推定器304への入力は、第2の間隔中の平均パワーから、第1サンプル期間からの推定熱負荷を差し引いたものであり、即ち時間kに計算された平均パワーより時間k−1の推定熱負荷だけ少ないものである。この入力から、熱負荷推定器304は、今度は、時間kにおける推定熱負荷の変化を計算する。
【0057】
第1のサンプル期間の終わり、時間k−1に、加算器308は、最初、上述した推定熱負荷を受け取る。第2のサンプル期間の終わり、即ち時間kに、加算器308は、熱負荷推定器304から時間kの推定熱負荷を、及び単位遅延回路306から時間k−1の推定熱負荷を受け取る。これらには、互いに逆の符号が与えられ、加算器308の出力が、各サンプル期間の終わりの高速熱作用からのレンズに対する推定熱負荷の変化のパワー測定値であるようにする。(従って、第1の期間の終わりの加算器308の出力は、以前の熱負荷がゼロであったとき以来の、最初の推定熱負荷を正確に与える。)
【0058】
加算器308の出力は、ステップ計算器310へ送られ、この計算器は、加算器308のパワー測定出力(ワット又はミリワット)を、レンズに対する熱負荷の変化を補償するためにレンズを移動しなければならない、例えば、ミクロンのような特定距離のステップ数へと変換する。ステップ計算器310に使用される値は、前記数学モデルに使用される変位g[fast]に直接関係しており、ステップ数は、ステップが例えば1ミクロンとして定義されるか又は10ミクロンとして定義されるかに基づいて変化することが明らかである。
【0059】
加算器303及び309、熱負荷推定器305、単位遅延回路307及びステップ計算器311を含む他方のフィルタも、同様に機能する。しかしながら、熱負荷推定器に使用される利得は、τ[slow]であり、そしてステップ計算器311に使用される値は、g[slow]に関係している。
【0060】
ステップ計算器310及び311の出力は、加算器314により加算され、高速熱作用及び低速熱作用を合成したものを補償するためにレンズを移動しなければならないステップ数(ひいては、ステップが各々特定距離であるから距離)を得る。計算されたステップ数は、それに応じてレンズを移動するサーボへ送られる。
【0061】
又、熱負荷推定器304及び305のパワー出力は、電圧計算器312及び313にも供給され、ここで、ワット当たりの電圧に変換され(ステップ計算器310及び311のワット当たりのステップではなく)、次いで、
図4を参照して以下に述べるようにレンズ位置の監視に使用するために加算器315によって加算される。
【0062】
熱負荷推定器304の利得は、熱負荷推定器305より大きく、そして加算器308の出力は、最初、高速熱作用を反映して加算器309より速く増加することが明らかであろう。従って、ステップ計算器310のレンズ移動に対する作用は、最初、ステップ計算器311より優勢である。しかしながら、同じ理由で、加算器308の出力も、高速熱作用の定常状態を反映して、その最大点に到達し、次いで、ゼロへ迅速に降下し、そしてより長い期間にわたって、ステップ計算器311の出力は、合計熱作用に対する大きな質量の大きな貢献を反映して、増加して、レンズ移動における優勢なファクタとなる。
【0063】
又、最終的な定常状態において、各ステップ計算器がその最大移動に貢献した後、レンズは、高速熱作用及び低速熱作用により指定された最大移動の差によって決定された位置へ移動することも明らかである。(これも、典型的にそうであるように、熱作用が互いに逆方向であると仮定している。それらが同じ方向である場合には、最終的な位置は、各々の最大移動の和となる。)一般的に、低速熱作用は、おそらく、大きな質量のために高速熱作用より大きな最終的なレンズ移動を生じさせるが、あるケースでは、ほぼ同じ移動量を生じさせ、これは、定常状態において、最大パワーを維持するためにレンズをそれほど移動する必要がないことを意味する。
【0064】
図3の論理回路は、次の式を表わすコンピュータコードによって表わされることが明らかである。サンプルポイントkへ分割される充分に長い期間に対して、
【0065】
最大出力パワーを維持するためにレンズをどこに配置すべきかが前記方法によって決定されると、レンズを実際に移動しそして選択された望ましい位置にレンズが配置されたことを確認するメカニズムが望まれる。
図4は、レンズを移動しそしてその位置を確認する論理回路の一実施形態を示す。
【0066】
レンズの位置が測定されそして電圧で表される。これは、例えば、直線変位を測定するのに使用される既知の電気的変圧器の一形式である直線的可変差動変圧器(LVDT)を使用することにより行われる。この測定による電圧が加算器401へ供給される。加算器401は、
図3の加算器315からの信号、即ち電圧計算器312及び313からのワット当たりの電圧も受け取り、これは、レンズの望ましい位置を表わす。これらの電圧は、同様のスケール上にあって互いに逆の極性を有するように決定される。
【0067】
加算器401は、LVDTからのレンズの実際の位置を表わす電圧を、レンズの望ましい位置を表わす加算器315からの電圧に加算し、それら電圧間の差は、エラー、即ちレンズがその望ましい位置からどれほど離れているかを表わす。このエラー電圧は、次いで、推定器402によってスケーリングされて、加算器403へ供給される。
【0068】
加算器403の出力は、コンバータ405へ供給され、該コンバータは、レンズをその実際の位置から望ましい位置に到達するために移動しなければならない所定サイズのステップの数へ電圧を変換するように構成される。従って、コンバータ405の出力は、電圧当たりのステップである。丸め器406は、コンバータ405から計算されたステップ数を受け取り、そしてその計算されたステップ数を、それに最も近い整数に丸める。というのは、レンズは、1ステップより小さい移動はできないからである。
【0069】
飽和リミッタ407は、所与の時間間隔で実行されるステップの数を制限する。例えば、計算されたステップ数が50であり、時間間隔が1秒であるが、典型的にレンズを1秒に20ステップしか移動できない場合には、飽和リミッタ407は、ステップ数を20にカットする。その結果、計算された実際のステップ数又は制限されたステップ数が加算器408へ供給され、そしてモータへ出力され、レンズをその決定されたステップ数で移動させる。
【0070】
加算器408の出力は、単位遅延409を通してフィードバックされ、そしてコンバータ410により電圧へ変換されて戻される。これは、実際にどんなステップが取られたか指示する。例えば、計算上50ステップとなるが、上述したように20ステップしか取られない場合には、このようなフィードバックがないと、全50ステップが取られたと仮定され、従って、その後の計算が誤ったものになり得る。それにより生じる「再変換」された電圧は、加算器403へフィードバックされて、推定器402の出力から減算され、既に取られたステップが、修正が望まれるエラー値を減少させる。
【0071】
加算器403の出力は、単位遅延回路404を経ての1つのサンプル期間の時間遅延後に加算器401へフィードバックもされる。加算器403の出力は、上述したように修正ステップの数を計算するのに使用されるので、推定器402への入力の目的上、以前のエラーを補償するのに必要なステップが取られたと仮定する。上述したように、加算器403により出力されるエラー信号は、コンバータ410からの信号によって既に減少され、従って、既に取られたステップの指示を含むことに注意されたい。
【0072】
又、加算器408は、
図3の加算器314からの熱作用を修正するためにレンズを移動するのに必要なステップの数も受け取ることに注意されたい。従って、モータへの出力は、
図3の回路により決定された熱作用を修正するのに必要なステップの数と、
図4のこの回路により決定された実際の位置を望ましい位置へ修正するのに必要なステップの数との合成である。
【0073】
図5Aは、本発明の一実施形態により収束レンズの焦点長さの変化を修正するためにEUVシステムにおいて時間に伴う収束レンズの移動を示すグラフである。比較のために、
図5Bは、ここに述べる数学モデルを使用する論理的なレンズについて予想される理想的なサンプル曲線を示す。実際のグラフは、論理的なものと同様であり、レンズの移動は、一般的に、ここに述べる数学モデルに対応することが明らかである。1分のうちの最初の部分(
図5Bにおける10秒)には、高速熱作用による一方向の初期の変位がある。これに続いて、低速熱作用による逆方向の低速変位が数分にわたって生じる。両方の移動は、一般的に、ここに述べる数学モデルによって予想される。
【0074】
ここに開示した方法及び装置は、幾つかの実施形態を参照して上述した。この開示に鑑み、当業者には他の実施形態も明らかであろう。ここに述べる方法及び装置のある観点は、上述した実施形態で述べた以外の構成を使用して、或いは上述した以外の要素に関連して、容易に実施することができる。例えば、異なるアルゴリズム及び/又は論理回路、おそらくは、ここに述べたものより複雑なもの、及びおそらくは、異なる形式の駆動レーザ及び/又は収束レンズを使用することができる。
【0075】
又、ここに述べた方法及び装置は、プロセス、装置、又はシステムを含む多数の仕方で実施できることも明らかであろう。又、ここに述べる方法は、そのような方法を遂行するようにプロセッサに命令するプログラムインストラクションによって実施され、そしてそのようなインストラクションは、ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、光学ディスク、例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタル多様性ディスク(DVD)、フラッシュメモリ、等、のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録され、或いはコンピュータネットワークにおいてはプログラムインストラクションが光学的又は電子的通信リンクを経て送られる。ここに述べる方法のステップの順序は、本開示の範囲内で変更できることにも注意されたい。
【0076】
実施形態に対するこれら及び他の変形は、特許請求の範囲のみにより限定される本開示によって網羅されるものとする。