(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
NCO−OH反応性またはSi(OR)−反応性系の架橋反応用の触媒組成物であって、前記触媒が、Sn、Zn、Ti、Zr、Pb、Bi、Fe、Co、Ni、Mn、V、またはAlから選択される金属原子と、環状α−ヒドロキシケト−5−、6−または7−員環化合物から選択される遅延物質とを含有する、該触媒組成物。
【背景技術】
【0002】
EP1857480は、Sn触媒と遮断剤を含有する2-成分系接着剤を開示する。ここで、ヒドロキシキノリン化合物が遮断剤として記載されている。US2006/0180274は、芳香族窒素含有化合物をさらに含有する、Bi触媒を有する1K−PU系を開示する。
【0003】
US6084026は、イソシアネートとポリオール化合物を含有する架橋系を記載し、N含有環、β−ジカルボニル化合物またはαヒドロキシ化合物類由来の物質と共に、カルボン酸またはスルホン酸を付加的に含有しなければならない。環状αヒドロキシケトンは記載されていない。
【0004】
US2008/0099141は、PU接着剤を用いる積層品の接着を開示し、金属触媒が遮断剤と共に添加される。後者は、1,2-ジフェノール化合物またはメルカプト化合物として記載されている。
【0005】
DE19840318は、イソシアネート含有プレポリマーとポリオールの反応性化合物を開示する。これらは、触媒の組み合わせを含み、該触媒は、第三級アミンと加水分解性ハロゲン化合物の存在下での、有機錫または有機ビスマス化合物と、隣接したヒドロキシル基を有する反応性ポリフェノールまたはチオール含有化合物との反応生成物である。
【0006】
DE4444249は、ポリウレタンを製造するための触媒組成物を開示し、それは、少なくとも1種の第3級アミンと少なくとも1種の有機酸を含有する。これに関連して、安息香酸は、有機酸として添加され、それは、芳香族環に結合した少なくとも1種の更なるNCO−反応性基をさらに含有する。スズ触媒は記載されていない。
【0007】
DE3709631は、ヒドロキシル化合物とイソシアネート化合物の反応に対して活性化可能な触媒を記載する。アミン活性剤の存在下で、活性化可能な触媒は機能し、スズまたはビスマス触媒およびモル過剰の複合体形成物質(complexant)を含有する。第3級アミンの存在下での反応性ポリフェノールまたはメルカプト化合物が、複合体形成物質として記載されている。α−ヒドロキシケトンもさらに記載されているが、α−ヒドロキシケトンを単独で用いることは記載されていない。
【0008】
イソシアネートと水の反応によるポリウレタン架橋反応、またはイソシアネートとOH成分の反応によるポリウレタン架橋反応は、金属またはアミン触媒により加速されることが知られている。これに関連して、可能な限り急速な反応をもたらすことが望まれる場合が多い。一方、触媒は、穏やかな反応性をもたらすことも知られている。このことは、原料に対する加工時間をより長くできるので、接着剤またはシーラントとして施される組成物を、硬化の開始時でも所望により加工できる。しかしながら、このような遅滞触媒の欠点は、必然的に、対応する組成物の完全な架橋を長時間にしてしまうことである。このような組成物は、この最終硬化の後でのみさらに加工でき、支持体は、適所に留まり所望の配置を得るために予め固定されるべきである。その結果、これらの長い反応時間は、更なる加工に対する欠点となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る組成物は、NCO基またはシラン基を有する少なくとも1種のポリマーを含有する組成物である。これに関連して、主鎖に官能基を含有するポリマーも関係でき、同様の基を有するオリゴマーも関連でき、混合物も関連できる。また、本発明に係る組成物は、少なくとも2つのNCO−反応性基を有するポリマーと架橋するモノマーまたはオリゴマーポリイソシアネートを含有するものである。組成物は、他の成分を含有できる。
【0014】
本発明に係る組成物は、他の添加剤と共に、第1成分としてNCO基含有プレポリマーまたはポリイソシアネートを含有し、少なくとも2つのNCO基反応性官能基を有する第2成分として少なくとも1種の架橋剤を含有する、2成分系組成物であることができる。本発明に係る別の組成物は、他の添加剤と共に、NCO基含有プレポリマーを含有する1成分系組成物であることができる。本発明に係る別の組成物は、他の添加剤と共に、シラン基含有プレポリマーを含有する組成物であることができる。
【0015】
さらに、金属触媒と、発明に要求される少なくとも1種の遅延物質は1成分中に含有され、遅延物質は、例えば、環状αヒドロキシケトン、例えばαヒドロキシケト5−,6−または7員環化合物および/または所望により置換された2,3,4−または3,4,5−トリフェノール誘導体などである。
【0016】
NCO基を有するポリマーの例には、ポリオール成分と少なくとも化学量論的に過剰の二官能性イソシアネートを反応させることにより得ることができる少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーが含まれる。
【0017】
本発明において、PUプレポリマーは、OH基またはNH基含有化合物と、過剰量のポリイソシアネートとの反応生成物である。PUプレポリマーの合成に使用できるポリマーおよびポリイソシアネートは、当業者に既知である。それらは、ポリオールに関係し、または、接着剤における適用で既知の第二級および/または第一級アミノ基を有する相当する化合物に関係する。20000g/mol以下の分子量(重量平均分子量、M
N、GPCにより測定できる)を有するポリオールが、これらのプレポリマーを合成するのに特に適当である。それらは、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、アルキレンポリオールに基づくポリオールであってもよく、または他の実施態様のように、NH基を有する類似した化合物であってもよい。
【0018】
これに関連して、ポリオール成分またはポリアミンは、低分子量(例えば約60g/mol〜1500g/molの分子量)であってよいが、高分子量ポリマー(例えば1500〜20000g/molの分子量)を反応させることもできる。複数個の官能基(好ましくは、ポリマー上に平均2個の反応性基が存在すべきである)を有する化合物を反応させることもできる。OH基を含有する出発化合物が好ましく、特に、ジオールが好ましい。
【0019】
プレポリマーの合成において、2以上のイソシアネート基を有するそれ自体既知のポリイソシアネートを、ポリイソシアネートとして添加できる。適当なポリイソシアネートは、芳香族イソシアネート、脂肪族または脂環式イソシアネートである。これらの例には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、および異性体の混合物、水素化MDI(H12MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジ−およびテトラアルキレンジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)の異性体、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ジイソシアナト−2,4,4−トリメチルヘキサン、1−イソシアナトメチル−3−イソシアナト−1,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、リンまたはハロゲン含有ジイソシアネート、テトラメトキシブタン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、メチレントリフェニルトリイソシアネート(MIT)、1,4−ジイソシアナトブタン、1,12−ジイソシアナトドデカン、またはダイマー脂肪酸ジイソシアネートが含まれる。ジイソシアネートの三量化またはオリゴマー化により、またはジイソシアネートとヒドロキシル基またはアミノ基を含有する多官能性化合物とを反応させることにより製造される、多官能性イソシアネートも添加できる。ジイソシアネートが好ましく使用される。
【0020】
反応制御は、イソシアネートの量により影響を与えることができる。大過剰のイソシアネートを用いる場合、OH基をイソシアネート基により官能基化させたPUプレポリマーが形成される。ここで、分子量のほんの僅かな上昇が得られる。イソシアネートのより少ない量を用いる場合には、または反応を段階的に行う場合には、プレポリマーの分子量が、出発化合物と比べて上昇することが知られている。この場合、過剰のイソシアネートを完全な反応に対して用いることを全体において確保しなければならない。
【0021】
ポリオール化合物とイソシアネートとの反応は、既知の方法により行うことができる。未反応のイソシアネートは、反応混合物中に存在できる。別の態様は、ごく僅かな量の未反応モノマーイソシアネートを混合物中に存在させることを反応制御の種類により確保する。更なる態様は、特に低いモノマー含有量を有する生成物を製造できるように、未反応ジイソシアネートを留去する。
【0022】
反応性NCO基を有する既知のPUプレポリマーを、本発明に使用できる。このようなプレポリマーは、当業者に既知であり、市販のプレポリマーであってもよい。ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとジイソシアネートとの反応に基づくPUプレポリマーは、本発明において特に好ましい。本発明において、適当なPUプレポリマーは、一般的に500〜約30000g/モル、好ましくは15000g/モルまで、特に1000〜5000g/モルの分子量を有する(数平均分子量、M
N、ポリスチレン標準試薬を用いGPCにより測定できる)。
【0023】
本発明において、PUプレポリマーは、他の類似したまたは異なるポリイソシアネートとプレポリマーの混合物を含むものと理解されるべきである。それらは、プレポリマーの生成反応において既に得られたものであってもよいが、組成物に後ほど添加されてもよい。2K−NCO組成物としての別の実施態様は、さらに反応しないNCO反応性成分としてポリイソシアネートのみを用いる。ポリイソシアネートは、脂肪族、芳香族またはポリマーイソシアネートであることができ、それらは、上述されている。
【0024】
適当なPUプレポリマーまたはポリイソシアネートは、他の助剤および添加剤を含有できる。ただし、イソシアネート基と反応できない成分のみが添加されることに注意すべきである。
【0025】
上記プレポリマーは、1K−PUとして使用できる。それらは、後に水または水分と架橋する。好ましい実施態様は、2K−PUとしてプレポリマーを使用する。それは、施す直前に、更なる成分Bと、反応性プレポリマーと架橋する本発明に係る2K−PU組成物を混合する必要がある。
【0026】
成分Bは、イソシアネート基と反応する少なくとも2個の基を有する少なくとも1つの化合物を含んでいなければならない。これらは、例えばSH、COOH、NHまたはOH基であり得る。ポリオールが特に好ましく、ポリオールは異なる化学構造または異なる分子量のポリオールの混合物であってもよい。これらの化合物は、架橋剤として機能する。
【0027】
多くのポリオールは、成分Bにおけるポリオール成分として用いるのに適する。例えば、それらは、1分子当たり2個から10個までのOH基を有するものであってもよい。それらは、脂肪族化合物、芳香族化合物であってもよく、適切な数のOH基を有するポリマーも使用できる。それらは、イソシアネート基と十分な反応性を示す限り、第1級または第2級OH基であることができる。
【0028】
このようなポリオールの例は、好ましくは2〜10個のOH基を有する、特にC2〜C36の炭素原子を有する低分子量脂肪族または芳香族ポリオールである。その例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール−14、ヘキサンジオール−16、オクタンジオール−18、ダイマー脂肪酸ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたは糖アルコールなどのC2〜C24ポリオール;レゾルシノール、ピロガロール、ヒドロキノンまたはそれらの誘導体または他の芳香族ポリオールなどの単環式ポリオールである。
【0029】
適当なポリオール化合物の別の群は、少なくとも2つの官能基と適当な分子量を有する限り、ポリマーラクトンまたはポリアセタールである。OH官能性ポリ(メタ)アクリレートは、適当なポリオールの更なる群である。このようなポリ(メタ)アクリレートは、例えばエチレン性不飽和モノマーの重合により得られ、多くのモノマーは、OH基を付加的に有する。OH基を含有するポリウレタンは、更なるポリオールの群である。ここで、既知のポリウレタンは、ポリオールと、より少ない化学量論量のイソシアネートとの反応生成物として製造できる。
【0030】
他の適当なポリオールの群は、例えばポリエーテルである。これらは、2〜4個の炭素原子を有するアルキレンオキシドと低分子量アルコールとの反応生成物である。このような化合物の例は、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−THFである。
【0031】
ポリオール化合物の他の適当な群は、ポリエステルポリオールである。接着剤の技術分野において既知のポリエステルポリオールを使用できる。それは、例えば、ジオール、特に低分子量アルキレンジオール若しくはポリエーテルジオールとジカルボン酸との反応生成物であり得る。これらは脂肪族若しくは芳香族カルボン酸またはそれらの混合物であり得る。所望により、これらのカルボン酸のエステルまたは無水物も反応させることができる。当業者はこのようなポリエステルポリオールが開発されていることを知っている。
【0032】
適当なポリオールの別の群は、ポリカーボネートポリオールである。それらは、低分子量ジオールと昇華環状カーボネートとの反応により製造できる。このようなポリオールは、当業者において既知であり、商業的に入手できる。
【0033】
ポリオールの分子量は、約50〜約20000g/mol、特に250〜10000g/molである。このようなポリオールは商業的に入手できる。
【0034】
本発明の別の実施態様は、反応性の、−Si(OR)
n(n=2または3)を組み込んだポリマーを用いる。これらのシラン架橋系は、水が存在しない場合に貯蔵安定性を示す。ポリマーは、製造する間に組み込まれたシラン架橋基を含有するポリマー、または、シラン架橋基が後に反応的に組み込まれたポリマーとして使用できる。ポリマーの例は、ホモポリマーまたはコポリマーとして、統計的またはブロックコポリマーとしての、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステルであることができる。シラン基は、シラン含有モノマーとの共重合により組み込まれてもよく、または、ポリマーの適当な基と反応できる二官能性シラン含有化合物を用いる後の官能化により組み込まれてもよい。このようなポリマーの分子量(M
N)は、20000g/mol以下であることができる。特に、それらは液体ポリマーである。適当なシラン含有ポリマーは、既知であり、商業的に入手できる。
【0035】
2K−シラン架橋系も既知であり、第二成分も同様にシランプレポリマーを含有できるが、第2成分において低分子量シランを使用することもできる。あるいは、第2成分は、水を含んでもよい。さらに、これらの第二成分は、常套の既知の添加剤および助剤を付加的に含有してもよい。
【0036】
本発明に係る、1K−または2K−組成物は、さらに助剤を含有できる。これらは、貯蔵安定性の組成物を得るために、ポリマーの反応性基に対して不活性であるべきである。これらは、一般的に添加され、所望の方法で重要な構成要素の特性、例えば、それらの加工性、保存期間を改良するため、および使用分野における実用的な性能をさらに付与するための物質であること理解できる。これらの例は、微粉化した着色剤、充填剤、レベリング剤、湿潤剤、チキソトロープ剤、樹脂、老化防止剤、安定剤、光安定剤、可塑剤、溶剤および/または接着促進剤である。
【0037】
適当な充填剤は、イソシアネートに対して反応性を示さない無機化合物であり、例えば、チョーク、被覆チョーク、石灰粉末、カルシウムマグネシウムカーボネート、酸化アルミニウム、および水酸化アルミニウム、沈降ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、ガラス、中空球、二酸化チタン、硫酸バリウム、または粉末として存在できる、すなわち、1〜200μmの範囲の粒径、特に3〜50μmの粒径を有する、金属の低溶解性酸化物、硫酸塩、カーボネートである。混合の後、このような充填剤は組成物中に分散される。
【0038】
本発明に係る組成物は、更なる成分として増粘樹脂を含有できる。この樹脂は、更なる粘着性をもたらす。これらの例には、芳香族、脂肪族、または脂環式炭化水素樹脂、変性した天然樹脂、コロフォニー、テルペン樹脂、アクリル酸コポリマーまたはスチレンポリマーが含まれる。
【0039】
可塑剤を、任意付加的な成分として含有できる。それらは、粘度または柔軟性を調整するのに好ましく使用され、ポリマーと高い相溶性を示すべきである。可塑剤の適当な例は、医薬用ホワイトオイル、ナフテン鉱油、パラフィン炭化水素油、ポリプロピレンオリゴマー、ポリブテンオリゴマー、ポリイソプレンオリゴマー、水素化されたポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンのオリゴマー、ベンゾエートエステル、フタル酸エステル、アジペート、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールである。
【0040】
さらに、レベリング剤、チキソトロープ剤、安定剤および/または光安定剤を含有できる。このような添加剤は、種々の適用目的に関する当業者において既知である。NCO基に対して不活性である限り、溶剤も添加できる。
【0041】
本発明に係る組成物は、金属触媒を含有しなければならない。これは、有機基と共に金属原子を有する化合物に関する。金属の例は、スズ、チタン、亜鉛、鉛、ビスマス、鉄、コバルト、ニッケル、カルシウム、バリウム、マンガン、バナジウム、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムである。これらは、カルボン酸塩、キレート、例えばアセチルアセトネート、ヒドロキシド、アルコラート、フェノラート、酸化物、および混合物など、金属触媒の技術分野において既知の状態で存在できる。
【0042】
それらは、特に、カルボン酸塩、酸化物、水酸化物またはアセチルアセトネートとしてSn、Fe,Ti、Al、BiまたはZrから構成される化合物に特に関連する。それは、組成物の合計量に基づき、0.001〜10重量%の範囲の量で存在し、0.01〜5重量%、特に0.01〜3重量%が好ましい。
【0043】
さらに、本発明に係る組成物は、10重量%までの少なくとも1種の遅延物質を含有しなければならない。遅延物質は、最初は、金属触媒と共に、架橋反応をゆっくりと進め、時間と共に反応速度をより速くする化合物を意味する。それは、キレート化合物などの触媒と反応でき、混合した中間体として触媒と共に添加でき、または架橋性組成物にそれ自体が添加されてもよい。遅延物質は、環状α−ヒドロキシケトンおよび/または3つの隣接OH基を有するトリフェノールから選択される。α−ヒドロキシケトンは、種々の構造を有することができる。それらは、脂肪族または脂環式化合物であってもよく、例えば、1以上の環化フェニル環を有する芳香族化合物も使用できる。それらは、骨格上に置換基を有してもよく;同種の基を複数有する物質を使用することも可能である。3つの隣接OHフェノール基を有するトリフェノールも、本発明の効果を有する物質の別の分類として使用できる。それらは、例えば、アルキル置換基または芳香族環などの置換基を有することができる。
【0044】
特に、α−ヒドロキシケトンは、ケト基と隣接したα−OH基を有する環状の5−,6−または7員環構造に関する。ヘテロ原子、例えば、O、NまたはSも、環中に含有されてもよい。1以上の所望による付加的な置換アルキルまたはアリール置換基を含有してもよい。不飽和基も可能である。化合物の適当な種類は、式(i)、(ii)、(iii)、(iV)、(V)または(vi)により表すことができる(1〜3個のR
1基を環に有することができる)
【0045】
【化1】
(式中、X=NH、O、Sであり、
R
1=C
1〜C
12アルキル;環状5−6員環アルキル基;OH置換アルキル基、エーテル、エステル、アミド、カルボキシル基を有するアルキル基;アリール基または水素である。)
【0046】
適当な脂肪族化合物の例は、α位置に少なくとも1つのOH基を有するヒドロキシルケトンである。1,2-ジケトンのビニル形態も特に適当である。環状ヒドロキシケトンも特に適当である。このような化合物は1種以上の置換基を有してもよい。環状または直鎖アルキル基も、置換基R
1として好ましく、それらは芳香族環を形成できる。同様に、R
1基は、不飽和基、更なるOH基、カルボキシル基、エステルまたはアミド基またはエーテル基などの更なる置換基を有することができる。複数のヒドロキシケト構造も、R
1を介して相互に結合できる。例えば、ヒドロキシ−4−ピロン、フラノン、チオフラノン、1−アルキルピロール、ベンゾキノン、ナフトキノン、ピラノン、ヒドロピリジノンまたは対応する7員環ケトン構造も選択できる。これらの例は、2,5-ジメチル−4−ヒドロキシ−フラノン、2−ヒドロキシエチル−4−ヒドロキシ−フラノン、2−ヒドロキシエチル−1,4−ナフトキノン、マルトール、エチルマルトール、コウジ酸、α−トロポロン、5−アルキル−トロポロン、5−ヒドロキシアルキル−トロポロン、β−ツヤプリシン(β-thujaplicine)、フラボノ−ル、モリン、フィセチンまたは対応する構造を有する化合物である。
【0047】
好ましい適当な、5−、6−または7員環を有する環状α−ヒドロキシケトン構造は、更なるヒドロキシアルキル基、例えば、CH
2−OH、C
2H
4−OHまたはC
3H
6−OH基、特に、式(VII)に記載されるような構造を有する:
【0049】
本発明の別の実施態様は、遅延物質として3つの隣接したOH基を有するトリフェノールを用いる。これに関連して、それらは、以下の一般式の化合物である:
【0050】
【化3】
(式中、R
2=H;C1〜C12アルキル基、環状5−または6員環アルキル基;アミノ、エーテル、カルボキシル、エステル、アミド基を有するこれらの化合物;OH置換アルキル基;または芳香族6員環である。特に、−OH、−COOHまたはエステル置換基が適当である。これらの化合物の例は、没食子酸、C1、C2、C3〜C12アルコールを有する没食子酸エステル、タンニン、ピロガロール、5−アルキル−ピロガロール、または、複数のこのようなトリフェノール置換基を有する化合物である。1−R
2−3,4,5−OHフェノール誘導体が特に適当であり、R
2は、酸素含有官能基で置換されたシクロアルキル基またはアルキル基を意味すべきである。
【0051】
遅延物質は、同種の官能基を複数個有してもよい。しかし、全体の分子量は500g/mol未満である。本発明に係る組成物が、10重量%以下、特に0.001〜5重量%のα−ヒドロキシケトンおよび/またはトリフェノールを含有するように量は選択される。金属原子に基づき、0.25〜4モルの遅延化合物が含有されるべきであり、単独でまたは混合物で含有される。反応速度が用途における要求と一致するように、量を選択できる。
【0052】
あらゆる理論から独立するが、遅延化合物は、金属原子と錯体を形成し、その後、所望の触媒効果を示す。
【0053】
本発明の対象は、少なくとも1種の上記金属化合物と、遅延化合物、例えば、α−ヒドロキシケトンおよび/または所望により置換されたトリフェノールなどから構成される触媒組成物である。触媒混合物が無色となるように物質を選択できる。触媒組成物自身は液体であってもよいが、非反応性の溶剤、オイルまたは可塑剤中に溶解させてもよく、または分散させてもよい。極少量の触媒混合物が架橋性組成物中で使用されるので、溶剤の添加量は重要ではない。別の実施態様は、固体の担体材料、例えば不活性粉末ポリマーまたは高い表面積を有する無機粉末などに設けられる触媒組成物を使用する。したがって、遅延化合物は、担体材料の表面に結合されている。別の実施態様は、ポリマー骨格上に遅延物質を化学的に結合させ、その後、この反応生成物に適当な金属化合物を添加する。本発明に係る触媒混合物は、遅延物質を含有する。所望の触媒性能を得るために、1実施態様において、更なる触媒活性化合物を含有しない。例えば、更なるアミノ、または第3級アミノ化合物を含有しない。
【0054】
本発明の特定の実施態様は、金属原子としてSnまたはBiを含有する触媒混合物を用いる。別の実施態様は、硫黄原子または窒素原子およびチオ基を特に含有しない遅延化合物を用いる。別の好ましい実施態様は、錯体形成基に加えて、別の官能基、特にR
1またはR
2基において、例えばOH、エステルまたはカルボキシル基を有する遅延化合物を使用する。
【0055】
これらの触媒組成物は、1または2成分系の触媒作用に使用できる。それらは、NCO−OH反応を介して架橋でき、またはシラン縮合できる組成物に特に適している。
【0056】
本発明における組成物は、架橋性1K−または2K−組成物に関する。それらは、反応性基、例えばイソシアネート基または加水分解性シラン基を含有する1種以上のポリマーを含有する。ポリマーに加えて、更なる成分、例えば、上述したような、樹脂、可塑剤、接着促進剤、反応性希釈剤、溶剤、顔料、または充填剤を含有できる。所望により、組成物は既知の触媒、例えば、第3級アミン、例えば、DABCO、DBU、DBNまたはポリマーアミンなどを含有できる。
【0057】
1K−系の場合、それらは、NCO基を有するポリマーに関係する。組成物を施した後、それは空気中の湿気に曝される。これらのNCO系は、支持体上の湿気および周囲湿度の存在下で架橋する。架橋は、本発明による触媒により加速される。
【0058】
別の実施態様は、アルコキシシラン基を介して架橋できる1K−系としてポリマーを使用する。組成物を施した後、それは空気中の湿気に曝される。これらの系は、支持体上の湿気および周囲湿度の存在下で架橋する。架橋は、本発明による触媒により同様に加速される。
【0059】
特に好ましい実施態様は、2K−コーティング系を用いる。ここで、1つの成分はNCO含有成分であることができる。これは、モノマーイソシアネートまたはオリゴマーイソシアネートであってもよいが、上記のNCO含有PUプレポリマーを使用することも可能である。更なる成分は、第1成分のNCO基と反応できる基を有するポリマーを含有する。混合した後、両成分は、通常、自然と反応する。反応を、本発明による触媒により加速できる。触媒組成物がOH−成分中に混合されることが好ましい。
【0060】
2K−組成物は、上記した1K−NCO−またはシラン−系から成る、本発明に係る触媒混合物と併用できる。したがって、第2成分は、常套の相溶性で不活性のポリマーおよび添加剤を含有できるが、架橋するのに十分な量の水を、さらに含有する。その後、両成分の混合物は、同様に架橋性組成物をもたらす。
【0061】
架橋性NCO−反応性系に関する実施態様において、環状α−ヒドロキシケトンまたは所望により置換されたトリフェノールを、架橋反応の途中で、架橋された化合物内に組み込んでもよい。官能性基も、NCO基と反応できる。このことは、恒久的に組み込まれた錯体形成リガンドを架橋した化合物が含有することをもたらす。このことはまた、もたらされる金属触媒の低減された移動を可能にする。
【0062】
本発明に係る組成物は、接着剤、シーラント、埋め込み用化合物またはコーティング剤として使用できる。コーティング剤は、支持体表面に容易に施すことができ、噴霧できるように、通常、低粘度状態で使用される。シーラントとしての実施態様においては、それ自体が流動しないことの多い、高粘度組成物が通常選択される。それらは、チキソトロピック特性を有することができ、すなわち、施された化合物がもはや流動しないまたは滑らないように、施した後に流動限界が直ちに形成される。接着剤としての実施態様において、自由流動性でチキソトロピック性の接着剤が知られている。溶剤または可塑剤を含有しない実施態様も可能である。
【0063】
本発明に係る組成物は、金属原子から成る触媒と、遅延化合物とを含有する。触媒と2K−組成物の混合は、無水の状態では貯蔵安定性を損なわないか、または成分が分離されている場合には貯蔵安定性を損なわない。1K−または好ましくは2K−組成物が混合されるか施された場合に、架橋反応は開始する。触媒組成物により誘導される初期反応は遅延する。すなわち、成分が混合された後、最初の数分間は、遅い反応のみが生じる。この期間は、誘導期と称される。誘導期が終了した時に、本発明に係る触媒混合物の触媒活性は、架橋系において増加する。架橋反応は著しく加速され、例えば粘度の上昇または架橋の急速な増加により、それは明らかにされる。
【0064】
本発明に係る触媒組成物は、独立して調製できる。それらは、貯蔵安定性および架橋性であり、組成物は成分の早期の反応をもたらさない。適当な触媒混合物を含有する架橋性化合物は、支持体に施された後に、施した直後または接着後にそれらの相対位置を修正でき改良できる材料を提供する。しかしながら、誘導期の終了後に、それらは急速な架橋反応を生じさせる。このことは、接着結合が損なわれることなく、接着接合した支持体を組み合わせた直後に更に該支持体を加工できることを意味する。
【実施例】
【0065】
本発明は、以下の実施例を用いることによって、より詳細に説明される。
【0066】
実施例1:
250mg/KOH g FKの総ヒドロキシル価を有する、トリメチロールプロパン(約3.8%)とアジピン酸/ネオペンチルグリコールのポリエステルポリオール(M.約530g/mol、ヒドロキシル価=210)とから成る液体ポリオール混合物を調製した。これに0.01%DOTL(スズ触媒)を混合した(成分1)。
【0067】
このポリオール成分を、40°にてDesmodur N3300(HDIイソシアヌレート)と1:1の重量比で混合した。
【0068】
その後、(EN ISO2555に従い、ブルックフィールドRVDT−IIを用いる)粘度測定により、40℃での反応を測定した。試験シリーズは、以下のものを用いて行った:
V1:説明の通り(比較例)
V2:+0.1%DOTL(比較例)
V3:V2+0.1%コウジ酸
V4:V2+0.25%コウジ酸
V5:V2+0.15%没食子酸
V6:V2+0.3% 8−OH−キノリン(比較例)
【0069】
【表1】
【0070】
完全な架橋は、NCO基によるIR分光光度法を用いて測定した(ベースラインに対するピーク高さ)。
【0071】
本発明に係る試験は、初期により遅い反応を示すが、より速い完全な架橋を示す。
【0072】
フィルムを、接着剤V1(比較例)およびV4を用いて接着した。接着したサンプルを、通常環境中、25℃にて貯蔵した。
【0073】
構造1(S1):PET 12μm/PE70μm
構造2(S2):PET 12μm/CPP50μm
【0074】
コーティング重量2g/m
2、25℃で貯蔵/硬化をおこなう。
構造の引き裂きが観察されるまでの時間を測定した。
S1/V1 4d、3.5N/15mm(比較例)
S1/V4 3d、3.4N/15mm
S2/V1 7d、3.5N/15mm(比較例)
S2/V4 4d、3.4N/15mm
【0075】
本発明に係る接着結合は、より長い加工時間を備えながらも、より急速な硬化を示す。
【0076】
12μmPETと70μmCPPの積層体を、コーティング重量2g/m
2でV4およびV6から製造し、25℃にて14日間硬化させた。14.4×14.4cmの袋を製造し、100mlの水または3%の酢酸を充填し、シーリングにより密封した。その後、サンプルを、オートクレーブ中で30分間121℃にて加熱し、内容物(水、酢酸)を触媒成分試験に付した。V4からのSnおよびコウジ酸は、検出限界超えて観察されなかった。比較試験V6において、8−ヒドロキシキノリンが、両溶媒中に観察された。
【0077】
実施例2:
ヒマシオイル(50%)およびチョーク(50%)からポリオール成分を製造した。これに0.02%DOTL(スズ触媒)を混合した。
【0078】
4:1の割合で、成分をそのままのMDIと混合した。
初期粘度は、1500mPas(25℃)であった。100,000mPasに到達した時間を測定した。
【0079】
V7 遅延物質を用いない 17分(比較例)
V8 0.05%のコウジ酸を添加した 102分
【0080】
本発明に係る組成物は、埋め込み用化合物に対する遅延効果を示した。
【0081】
実施例3:
PPG400およびPPG1000(1:1)、ならびに13%の残存NCO含有量を有する4,4−MDIからプレポリマーを製造した。
【0082】
これに、ポリエーテルポリオールPPGジオール(1000)/PPGトリオール(450)/PPGトリオール(1000)(NCO:OH=1.4:1)を10/10/80の含有量で有するポリマー混合物である第2成分を添加した。
【0083】
触媒(DOTL、スズ触媒)を、遅延物質と共にポリオール成分中に、所望により混合した。
【0084】
その後、反応を、粘度測定により40℃にて観察した。
【0085】
試験シリーズは、以下のものを用いて行った:
V9: 触媒を用いない例3(比較例)
V10: V9+0.1%DOTL(比較例)
V11: V9+0.25%タンニン
V12: V9+0.1%コウジ酸
V13: V9+0.25%コウジ酸
V14: V9+0.5%没食子酸
V15: V9+0.5%カテコール(比較例)
V16: V9+0.5% 3,4-ヒドロキシケイ皮酸(比較例)
【0086】
【表2】
【0087】
粘度の増加として観察される反応速度は、芳香族イソシアネートを介する架橋であることを考慮しても、遅延反応を示した。