(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結晶性遮断タングステン膜成膜の終了後、前記主タングステン膜成膜までの時間を20〜270secとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタングステン膜の成膜方法。
前記主タングステン膜の膜厚が10〜25nmの場合に、前記結晶性遮断タングステン膜の膜厚は3nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタングステン膜の成膜方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
<成膜装置>
図1は本発明に係るタングステン膜の成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、成膜装置100は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等により円筒状あるいは箱状に成形された処理容器2を有している。この処理容器2内には、容器底部より起立する支柱4上に、断面L字状の保持部材6を介して被処理基板である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)Sを載置するための載置台8が設けられている。この支柱4および保持部材6は、熱線透過性の材料、例えば石英により構成されており、また、載置台8は、厚さ1mm程度の例えばカーボン素材、アルミニウム化合物等により構成されている。
【0024】
この載置台8の下方には、複数本、例えば3本のリフタピン10(2本のみ図示)が設けられ、各リフタピン10の基端部は、円弧状の支持部材12により支持されている。この支持部材12には容器底部を貫通して設けられた押し上げ棒14が取り付けられており、押し上げ棒14はアクチュエータ18により昇降されるようになっている。そして、アクチュエータ18により押し上げ棒14を上下動させることにより、支持部材12を介してリフタピン10を上下動させ、リフタピン10を載置台8に貫通して設けられたピン孔16に挿通させてウエハSを持ち上げるようになっている。押し上げ棒14の容器底部の下方へ貫通した部分には、処理容器2内の気密状態を保持するために伸縮可能なベローズ20が設けられている。
【0025】
載置台8の周縁部には、ウエハSの周縁部を保持してこれを載置台8側へ固定するためのセラミック製のリング状をなすクランプリング22が設けられており、このクランプリング22は、支持棒24を介してリフタピン10側に連結されており、リフタピン10と一体的に昇降するようになっている。リフタピン10および支持棒24も石英等の熱線透過材料により構成されている。
【0026】
載置台8の直下の容器底部には、石英等の熱線透過材料よりなる透過窓26がOリング等のシール部材28を介して気密に設けられており、その下方には、透過窓26を囲むように箱状の加熱室30が設けられている。この加熱室30内には加熱手段として複数の加熱ランプ32が反射鏡も兼ねる回転台34に取り付けられており、この回転台34は、回転モータ36により回転される。したがって、加熱ランプ32より放出された熱線は、透過窓26を透過して載置台8の下面を照射してこれを加熱し得るようになっている。なお、加熱手段として加熱ランプ32に代えて、載置台8に埋め込んだ抵抗加熱ヒータを用いるようにしてもよい。
【0027】
載置台8の外周側には、多数の整流孔38を有するリング状の整流板40が、上下方向に環状に成形された支持コラム42により支持された状態で設けられている。整流板40の内周側には、クランプリング22の外周部と接触してこの下方にガスが流れないようにするリング状の石英製アタッチメント44が設けられる。
【0028】
整流板40の下方の底部には排気口46が設けられ、この排気口46には、排気管52が接続されている。この排気管52の途中には圧力調整弁48、真空ポンプ50が設けられている。そして、真空ポンプ50により処理容器2内を真空引きして、その中を所定の圧力に維持する。処理容器2の側壁には、処理容器2内に対してウエハSを搬入出するための開口54が設けられ、この開口54はゲートバルブ56により開閉可能となっている。
【0029】
一方、処理容器2の天井部には、その中へ所定のガスを導入するためのガス導入手段であるシャワーヘッド60が設けられている。このシャワーヘッド60は、例えばアルミニウム合金等により円形箱状に成形され、その天井部にはガス導入口61が設けられている。シャワーヘッド60の下面には、ガス導入口61からシャワーヘッド60の内部へ供給されたガスを放出するための多数のガス吐出孔62が均等に形成されており、ウエハSの上方の処理空間に対して均等にガスを放出するようになっている。シャワーヘッド60の内部には、多数のガス分散孔64を有する拡散板65が配設されており、シャワーヘッド60内へ導入されたガスを拡散してウエハ面に、より均等にガスを供給するようになっている。
【0030】
ガス導入口61には、ガス供給部70のガス配管71が接続されている。ガス供給部70は、このガス配管71と、ガス配管71から分岐した複数の分岐配管72とを有しており、かつ各分岐配管72に接続された、ClF
3ガス源73、WF
6ガス源74、Arガス源75、N
2ガス源76、SiH
4ガス源77、H
2ガス源78を有している。ClF
3ガス源73からは、クリーニングに用いるClF
3ガスが供給される。また、WF
6ガス源74からはタングステン原料であるWF
6ガスが供給される。Arガス源75、N
2ガス源76からはパージガスや希釈ガスとして用いるArガス、N
2ガスが供給される。パージガスや希釈ガスとしては、他の不活性ガスを用いることもできる。SiH
4ガス源77からはイニシエーション処理およびSi吸着処理に用いられるSiH
4ガスが供給される。さらに、H
2ガス源78からはWF
6の還元ガスとしてH
2ガスが供給される。
【0031】
これらガス源が接続された分岐配管にはそれぞれマスフローコントローラのような流量制御器79と、その前後の開閉弁80とが設けられている。なお、図示していないが、載置台8の下方の空間にバックガス(パージガス)としてArガスを供給するバックガスArラインも設けられている。
【0032】
この成膜装置100は、成膜装置100の各構成部、例えばアクチュエータ18、加熱ランプ32の電源、真空ポンプ50、マスフローコントローラ79、開閉弁80等を制御するための制御部90を有している。この制御部90は、各構成部の制御を実行するマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ91と、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース92と、成膜装置100で実行される処理をコントローラ91の制御にて実現するための制御プログラムや、各種データ、および処理条件に応じて処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部93とを備えている。なお、ユーザーインターフェース92および記憶部93はコントローラ91に接続されている。
【0033】
上記処理レシピは記憶部93の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0034】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース92からの指示等にて任意のレシピを記憶部93から呼び出してコントローラ91に実行させることで、コントローラ91の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0035】
<成膜方法>
次に、以上のように構成された成膜装置100を用いて行われる成膜方法の実施形態について説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
・第1の例
図2は本発明の第1の実施形態の第1の例に係る成膜方法のフローチャート、
図3は各工程を示す工程断面図である。
【0037】
まず、最初に、
図3(a)のようにSiO
2等からなる層間絶縁膜101の上に、表面のバリア層としてTiN膜102が形成されたウエハSを準備し、処理容器2内に搬入する(ステップ1)。なお、層間絶縁膜101には実際にはホール(コンタクトホールまたはビアホール)が形成されているが、便宜上
図3ではホールを省略している。
【0038】
次いで、処理容器2内を所定の減圧雰囲気にし、加熱ランプ32により載置台8を介してウエハSを載置台温度で350〜500℃、例えば410℃になるように加熱しつつ、処理容器2内にシラン(SiH
4)ガスおよびH
2ガス等を導入して、タングステンの核形成に先立ってウエハSの表面にSiの核を形成するイニシエーション処理を行う(ステップ2)。イニシエーション処理は、
図3(b)に示すように、Wの核形成が均一に行われるように下地のTiN膜102の全面にSi等の核103を形成する処理であり、ここではSiH
4を吸着させてSiの核を形成する。実際にはSiH
4は熱分解されて、SiH
x(x<4)として吸着される。
【0039】
このイニシエーション処理の条件の好ましい範囲を以下に示す。
・温度:350〜500℃(載置台温度)
・処理容器内の圧力:2666〜20000Pa
・SiH
4流量:300〜800sccm(mL/min)
・H
2流量:100〜1000sccm(mL/min)
・時間:5〜120sec
なお、イニシエーション処理に用いるガスとしてはSiH
4ガスに限らず、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、B
2H
6、H
2、PH
3等を用いることができる。B
2H
6、H
2、PH
3を用いる場合には、それぞれB、P、Hが核として形成されるが、SiH
4、Si
2H
6、SiH
2Cl
2等を用いてSiの核を形成することが好ましい。また、イニシエーション処理は必須ではない。
【0040】
次に、載置台8の加熱温度を維持したまま、タングステンの核生成(Nucleation)のための初期タングステン膜104の成膜を行う(ステップ3、
図3(c))。初期タングステン膜の成膜は、
図4に示すようにタングステン原料ガスであるWF
6ガスの供給と、還元ガスであるH
2ガスの供給とをパージ工程を挟んで複数回繰り返す、ALD(Atomic Layer Deposition)あるいはSFD(Sequential Flow Deposition)により行う。初期タングステン膜の成膜の期間、ArガスおよびN
2ガスの一方または両方を所定量流してもよく、この場合には、パージ工程ではWF
6ガスおよびH
2ガスの供給を停止し、Arガスおよび/またはN
2ガスをパージガスとして機能させる。パージ工程においては、パージガスを流さず、真空引きのみを行ってもよい。なお、
図4におけるパージ工程を表す凸部は、単にパージ工程を行うことを示しているに過ぎず、ガスのオンオフを示すものではない。すなわち、上述のようにArガスおよび/またはN
2ガスをパージガスと機能させる場合には、これらのガスは処理の期間中、流したままであるし、真空引きのみの場合にはパージ工程ではガスを流さないが、工程としては存在しているのでそのことを示している。
【0041】
このように、還元ガスとして水素ガス(H
2ガス)を用い、ALDまたはSFDの手法を用いることにより、還元ガスとしてSiH
4やB
2H
6を使用した場合のように、膜中にシリコン(Si)やボロン(B)が混入することがなく、また残留するフッ素(F)の量も減少させることができるので、不純物の少ない良質の初期タングステン膜を形成することができる。なお、ガスの導入の順序は問わないが、最初に還元ガスであるH
2ガスを流すことが好ましい。
【0042】
この初期タングステン膜成膜の条件の好ましい範囲を以下に示す。
・温度:350〜500℃(載置台温度)
・圧力:100〜8000Pa
・1サイクル当たりの時間:4〜20sec
・繰り返し回数:3〜100回
・WF
6流量:50〜500sccm(mL/min)
・H
2流量:500〜12000sccm(mL/min)
・Ar流量:3000〜14000sccm(mL/min)
・N
2流量:0〜4000sccm(mL/min)
・膜厚:0.5〜3.0nm
【0043】
このような初期タングステン膜の成膜の後、載置台8の温度を同じ温度に維持したまま、初期タングステン膜104の表面に核形成のための物質を含むガスを吸着させ、核105を形成する吸着処理を行い(ステップ4、
図3(d))、さらに同様の温度で初期タングステン膜の結晶性を遮断する結晶性遮断タングステン膜106を成膜する(ステップ5、
図3(e))。その後、同様の温度で主タングステン膜107の成膜を行う(ステップ6、
図3(f))。
【0044】
ステップ4の吸着処理とステップ5の結晶性遮断タングステン膜の成膜は、初期タングステン膜の結晶性を主タングステン膜に引き継がないようにするために行う処理である。
【0045】
図5に示すように、下地であるTiN膜102の結晶は柱状晶であるため、初期タングステン膜104はTiN膜の結晶性に影響されて柱状晶となる。このまま初期タングステン膜104の上に主タングステン膜107を形成すると、主タングステン膜107も初期タングステン膜104の影響を受けて柱状晶的な結晶となる。柱状晶は結晶粒界が垂直に存在し、その結晶粒界の存在により膜の抵抗が高くなる。したがって、たとえ初期タングステン膜として不純物の少ない膜が形成されたとしても、最終的に形成されるタングステン膜の抵抗は高いものとなってしまう。
【0046】
そこで、本例では、ステップ4の吸着処理とステップ5の結晶性遮断タングステン膜の成膜を行って、初期タングステン膜の結晶性を引き継がない状態で主タングステン膜を成膜できるようにし、主タングステン膜の結晶を十分に大きく成長させることを可能にする。これにより、タングステン膜の抵抗を極めて低いものとすることができる。
【0047】
ステップ4の吸着処理は、処理容器2内に核形成のための物質を含む吸着ガスを供給して、
図6に示すように柱状晶である初期タングステン膜104の上にそのガスを吸着させて核105を形成させ、初期タングステン膜104の結晶性を遮断する。吸着処理の時間は、吸着ガスの流量にもよるが、10sec以上であることが好ましい。この吸着処理は、本実施形態では、処理容器2内に吸着ガスとしてSi化合物であるSiH
4ガスを供給し、初期タングステン膜104の表面にSiH
4ガスを吸着させ、Siの核105を形成する。このとき、実際にはSiH
4は熱分解されて、SiH
x(x<4)として吸着される。このとき、SiH
4ガスが局部的に熱分解しないように、H
2ガスも併せて導入する。このときのSiH
4ガスの吸着は、極薄くてよく、単分子膜程度でよい。したがって、吸着されるSiの量は極わずかであり、タングステン膜の抵抗をほとんど上昇させない。
【0048】
吸着ガスとしてSiH
4ガスを用いた場合の吸着処理の条件の好ましい範囲を以下に示す。
・温度:350〜500℃(載置台温度)
・処理容器内の圧力:500〜20000Pa
・SiH
4流量:300〜800sccm(mL/min)
・H
2流量:100〜1000sccm(mL/min)
・時間:10〜120sec
【0049】
具体的な条件例としては、以下のものを挙げることができる。
・温度:410℃
・処理容器内の圧力:1000Pa
・SiH
4流量:700sccm(mL/min)
・H
2流量:500sccm(mL/min)
・時間:20sec
なお、吸着処理に用いる吸着ガスとしてはSiH
4ガスに限らず、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、B
2H
6、H
2、PH
3等を用いることができる。吸着ガスとしてB
2H
6、H
2、PH
3を用いる場合には、それぞれB、P、Hが核として形成されるが、吸着ガスとしてSiH
4、Si
2H
6、SiH
2Cl
2等のシリコン化合物を用いてSiの核を形成することが好ましい。
【0050】
ステップ5により成膜される結晶性遮断タングステン膜106は、ステップ4の吸着処理によりガスを吸着させて表面にSi等の核を形成することにより、初期タングステン膜104の結晶性を引き継がないタングステン膜として形成され、その後に形成される主タングステン膜107の結晶性を初期タングステン膜の結晶性から遮断する作用を有する。
【0051】
この結晶性遮断タングステン膜の成膜は、タングステン原料ガスであるWF
6ガスと、還元ガスであるH
2ガスとを処理容器2内に供給して加熱されたウエハS上でこれらを反応させるCVDにより行われる。このとき、ArガスおよびN
2ガスの一方または両方を所定量流してもよい。
【0052】
この結晶性遮断タングステン膜106は、遮断性が高く、かつ主タングステン膜の結晶が成長しやすいように、より緻密な膜とする必要があり、そのために、主タングステン膜107の成膜の際よりもタングステン原料であるWF
6ガスの流量を少なくし、圧力を低圧にする。また、結晶性遮断タングステン膜106の膜厚が12nmを超えると膜の比抵抗が上昇する傾向になるため、結晶性遮断タングステン膜106の膜厚は11.5nm以下が好ましい。また、より効果を高める観点から結晶性遮断タングステン膜106の膜厚は0.5nm以上が好ましい。
【0053】
この結晶性遮断タングステン膜成膜の条件の好ましい範囲を以下に示す。
・温度:350〜500℃(載置台温度)
・圧力:100〜26667Pa
・WF
6流量:5〜200sccm(mL/min)
・H
2流量:100〜12000sccm(mL/min)
・Ar流量:1000〜14000sccm(mL/min)
・N
2流量:0〜4000sccm(mL/min)
・膜厚:0.5〜11.5nm
【0054】
具体的な条件例としては、以下のものを挙げることができる。
・温度:410℃(載置台温度)
・圧力:1000Pa
・WF
6流量:60sccm(mL/min)
・H
2流量:4000sccm(mL/min)
・Ar流量:6000sccm(mL/min)
・N
2流量:2000sccm(mL/min)
・膜厚:6nm
【0055】
ステップ6において成膜される主タングステン膜107は、コンタクトホールやビアホールを完全に埋め込むためのものであり、結晶性遮断タングステン膜106と同様、タングステン原料ガスであるWF
6ガスと、還元ガスであるH
2ガスとを処理容器2内に供給して加熱されたウエハS上でこれらを反応させるCVDにより行われる。このとき、ArガスおよびN
2ガスの一方または両方を所定量流してもよい。この主タングステン膜107の成膜は、所望のスループットでコンタクトホールやビアホールを埋めるために、結晶性遮断タングステン膜106の成膜の際よりも原料ガスであるWF
6ガスの流量を多くし、かつ高圧にして行われる。
【0056】
この主タングステン膜107の成膜の際には、この膜をより低抵抗にする観点から、結晶性遮断タングステン膜106と非連続で成膜を行うことが好ましい。すなわち、
図7に示すように、結晶性遮断タングステン膜106の成膜後、主タングステン膜107の成膜時の圧力に上昇させる際に、WF
6ガスを停止する。また、より低抵抗な膜を形成する観点から、結晶性遮断タングステン膜106の成膜終了後、主タングステン膜107の成膜開始までの時間tを20〜270secの範囲とすることが好ましい。時間tをこの範囲にすることにより、主タングステン膜の成膜速度が若干低下し、それにともなって主タングステン膜の比抵抗が低下する傾向にある。
【0057】
この主タングステン膜成膜の条件の好ましい範囲を以下に示す。
・温度:350〜500℃(載置台温度)
・圧力:2666〜26667Pa
・WF
6流量:150〜700sccm(mL/min)
・H
2流量:1000〜12000sccm(mL/min)
・Ar流量:1000〜14000sccm(mL/min)
・N
2流量:0〜4000sccm(mL/min)
【0058】
具体的な条件例としては、以下のものを挙げることができる。
・温度:410℃(載置台温度)
・圧力:10666Pa
・WF
6流量:250sccm(mL/min)
・H
2流量:2200sccm(mL/min)
・Ar流量:4000sccm(mL/min)
・N
2流量:2000sccm(mL/min)
【0059】
また、結晶性遮断タングステン膜成膜の圧力から主タングステン膜成膜の圧力まで圧力上昇させる際の条件の好ましい範囲を以下に示す。
・H
2流量:1000〜12000sccm(mL/min)
・Ar流量:1000〜14000sccm(mL/min)
・N
2流量:0〜4000sccm(mL/min)
・圧力上昇速度:35〜1000Pa/sec
【0060】
具体的な条件例としては、以下のものを挙げることができる。
・H
2流量:6000sccm(mL/min)
・Ar流量:7000sccm(mL/min)
・N
2流量:2000sccm(mL/min)
・圧力上昇速度:950Pa/sec
【0061】
以上のように、WF
6ガスとH
2ガスを用いてALDまたはSFDにより初期タングステン膜を成膜することにより、SiやBの膜中への混入が防止され、かつ吸着処理、結晶性遮断タングステン膜の存在により、初期タングステン膜の結晶性の影響を受けずに主タングステン膜を大きく粒成長させることが可能であるため、形成されるタングステン膜は不純物が少なくかつ大きな結晶粒を有するものとなり、従来よりも著しく比抵抗の小さいタングステン膜を得ることができる。また、還元ガスとしてB
2H
6ガスを用いないので、Bの拡散により下地との密着性が圧下したり、電気特性を悪化させたりする問題は生じない。
【0062】
また、主タングステン膜を結晶性遮断タングステン膜と非連続に成膜し、結晶性遮断タングステン膜の成膜を終了してから主タングステン膜の成膜を開始するまでの時間を20〜270secの範囲にすることにより、膜の比抵抗をより低下させることができる。具体的には、初期成膜をSiH
4還元で行っていた従来のW膜が膜厚50nmで比抵抗が28μΩcm程度であったものを本実施形態により10μΩcm程度と著しく低下させることができる。
【0063】
・第2の例
図8は本発明の第1の実施形態の第2の例に係る成膜方法のフローチャートである。本例は、第1の例のステップ4の吸着処理を行わない点が第1の例とは異なっており、その他の工程は第1の例と同様に行う。すなわち、
図3(a)の構造のウエハSを処理容器2内に搬入し(ステップ1)、必要に応じてイニシエーション処理を行い(ステップ2)、初期タングステン膜を成膜し(ステップ3)、結晶性遮断タングステン膜を成膜し(ステップ5)、主タングステン膜を成膜する(ステップ6)。
【0064】
これらステップ1、2、3、5、6は第1の例と同様に行う。また、第1の例と同様、主タングステン膜の成膜の際には、結晶性遮断タングステン膜と非連続で成膜を行うことが好ましく、また、結晶性遮断タングステン膜の成膜終了後、主タングステン膜の成膜開始までの時間を20〜270secの範囲とすることが好ましい。
【0065】
本例では、吸着処理を行わない分、第1の実施形態よりも主タングステン膜の結晶性を初期タングステン膜の結晶性から遮断する効果は幾分低下するものの、結晶性遮断タングステン膜によりその効果が維持されるため、従来よりも比抵抗の小さいタングステン膜を得ることができる。具体的には、初期成膜をSiH
4還元で行っていた従来のW膜が膜厚50nmで比抵抗が28μΩcm程度であったものを本実施形態により13μΩcm程度まで低下させることができる。
【0066】
・第3の例
図9は本発明の第1の実施形態の第3の例に係る成膜方法のフローチャートである。本例は、第1の例のステップ5の結晶性遮断タングステン膜の成膜を行わない点が第1の例とは異なっており、その他の工程は第1の例と同様に行う。すなわち、
図3(a)の構造のウエハSを処理容器2内に搬入し(ステップ1)、必要に応じてイニシエーション処理を行い(ステップ2)、初期タングステン膜を成膜し(ステップ3)、吸着処理を行い(ステップ4)、主タングステン膜を成膜する(ステップ6)。
【0067】
これらステップ1、2、3、4、6は第1の例と同様に行う。また、主タングステン膜の成膜の際には、吸着処理終了後、主タングステン膜の成膜開始までの時間を20〜270secの範囲とすることが好ましい。これにより、この範囲で成膜速度が若干低下し、それにともなって比抵抗が低下する傾向にある。
【0068】
本例では、結晶性遮断タングステン成膜を行わない分、第1の例よりも主タングステン膜の結晶性を初期タングステン膜の結晶性から遮断する効果は幾分低下するものの、吸着処理によりその効果が維持されるため、従来よりも比抵抗の小さいタングステン膜を得ることができる。具体的には、初期成膜をSiH
4還元で行っていた従来のW膜が膜厚50nmで比抵抗が28μΩcm程度であったものを本実施形態により15μΩcm程度まで低下させることができる。
【0069】
・第1の実施形態における実験結果
次に、第1の実施形態の実験結果について説明する。
1.実験例1
ここでは、上記手順に従って、SiO
2膜の上に形成されたTiN膜の上に、イニシエーション処理、原料ガスとしてのWF
6ガスと還元ガスとしてH
2ガスを用いたALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜(膜厚10nm)、SiH
4による吸着処理(20sec)、WF
6ガスおよびH
2ガスを用いた結晶性遮断タングステン膜の成膜(圧力:1000Pa、WF
6流量:60sccm、H
2流量:4000sccm、膜厚:6nm)を行い、さらに結晶性遮断タングステン膜成膜の終了後、70sec後にWF
6ガスおよびH
2ガスを用いた主タングステン膜を成膜し(圧力:10666Pa、WF
6流量:250sccm、H
2流量:2200sccm)、タングステン膜を作製した(H
2還元膜)。この際の温度は全て410℃とした。また、比較のため、ALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜の際に還元ガスとしてSiH
4ガスを用いたタングステン膜(SiH
4還元膜)、およびALDあるいはSFDによる初期タングステン膜成膜の際に還元ガスとしてB
2H
6ガスを用いたタングステン膜(B
2H
6還元膜)も作製した。
【0070】
これらのタングステン膜について、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮影した。その結果を
図10に示す。これらに示すように、SiH
4還元膜、B
2H
6還元膜は、いずれもタングステン膜の結晶が柱状晶的あるのに対し、H
2還元膜では結晶粒が大きく成長していることがわかる。
【0071】
図11は、これら膜の膜厚と比抵抗との関係を示したものであるが、本発明のH
2還元膜の比抵抗が最も低いことが確認された。これはH
2還元膜ではタングステン膜の結晶粒が大きく成長しているためと考えられる。
【0072】
次に、SiO
2膜の上に形成されたTiN膜の上に、それぞれ上記H
2還元による初期タングステン膜、SiH
4還元による初期タングステン膜、B
2H
6還元による初期タングステン膜のみを成膜したサンプルを作製して、これら初期タングステン膜について二次イオン質量分析(SIMS)により、深さ方向の不純物(F、Si、B)濃度を測定した。その結果を
図12に示す。
図12の(a)はF濃度を示すもの、(b)はSiの二次イオン強度を示すもの、(c)はB濃度を示すものである。これらに示すように、H
2還元による初期タングステン膜は他の初期タングステン膜に比べて不純物濃度が低いことがわかる。また、膜厚10nmにおける比抵抗が、SiH
4還元による初期タングステン膜では196μΩcm、B
2H
6還元による初期タングステン膜では151μΩcmであるのに対し、H
2還元による初期タングステン膜では74μΩcmであることが確認された。このことより、不純物濃度が低いことに起因して比抵抗が低くなっていることが確認された。
【0073】
2.実験例2
ここでは、SiO
2膜の上に形成されたTiN膜の上に、イニシエーション処理、原料ガスとしてのWF
6ガスと還元ガスとしてのH
2ガスを用いたALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜(膜厚2nm)を行った後、SiH
4による吸着処理をそれぞれ0sec(なし)、10sec、20sec、40sec行い(圧力:1000Pa、SiH
4流量:700sccm)、その後、それぞれWF
6ガスおよびH
2ガスを用いた結晶性遮断タングステン膜の成膜(圧力:1000Pa、WF
6流量:60sccm、H
2流量:4000sccm、膜厚:6nm)を行い、さらに結晶性遮断タングステン膜成膜の終了後、70sec後にWF
6ガスおよびH
2ガスを用いた主タングステン膜を成膜し(圧力:10666Pa、WF
6流量:250sccm、H
2流量:2200sccm)、膜厚約50nmのタングステン膜を作製した。なお、この際の温度は全ての工程で410℃とした。
【0074】
以上のようにして作製したタングステン膜について、吸着処理時間と膜の比抵抗の関係を
図13に示す。この図に示すように、吸着処理が0sec(吸着処理なし)のものは比抵抗が13μΩcmであったが、吸着処理を行うことにより時間にかかわらず10μΩcm程度まで低下することが確認された。ただし、吸着処理なしのものでも、従来よりも低い比抵抗が得られている。
【0075】
3.実験例3
ここでは、SiO
2膜の上に形成されたTiN膜の上に、イニシエーション処理、原料ガスとしてのWF
6ガスと還元ガスとしてのH
2ガスを用いたALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜(膜厚2nm)を行った後、SiH
4による吸着処理を20sec行い、さらにWF
6ガスおよびH
2ガスを用いた結晶性遮断タングステン膜の成膜(圧力:1000Pa、WF
6流量:60sccm、H
2流量:4000sccm)を、それぞれ膜厚0nm(なし)、3nm、6nm、12nmとして行い、その後、それぞれ結晶性遮断タングステン膜成膜の終了後、70sec後にWF
6ガスおよびH
2ガスを用いた主タングステン膜を成膜し(圧力:10666Pa、WF
6流量:250sccm、H
2流量:2200sccm)、タングステン膜を作製した。なお、この際の温度は全ての工程で410℃とした。
【0076】
以上のようにして作製したタングステン膜について、結晶性遮断タングステン膜の膜厚と膜の比抵抗および膜厚との関係を
図14に示す。この図に示すように、結晶性遮断タングステン膜が0nm(結晶性遮断タングステン膜なし)のものは比抵抗が15μΩcm(ただし膜厚が80nmと厚いので50nmではより高い値となる)であったものが、結晶性遮断タングステン膜が3nm、6nmでは10μΩcm程度まで低下していることがわかる。しかし、結晶性遮断タングステン膜が12nmの場合には20μΩcmとかえって高くなることが確認された。このことから、0.5〜11.5nm程度の適度の厚さの結晶性遮断タングステン膜を形成することによりタングステン膜の比抵抗が低下することが確認された。ただし、結晶性遮断タングステン膜なしのものでも、従来よりも低い比抵抗が得られている。
【0077】
4.実験例4
ここでは、SiO
2膜の上に形成されたTiN膜の上に、イニシエーション処理、原料ガスとしてのWF
6ガスと還元ガスとしてのH
2ガスを用いたALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜(膜厚2nm)を行った後、SiH
4による吸着処理を20sec行い、さらにWF
6ガスおよびH
2ガスを用いた結晶性遮断タングステン膜の成膜(圧力:1000Pa、WF
6流量:60sccm、H
2流量:4000sccm、膜厚:6nm)を行い、その後、結晶性遮断タングステン膜成膜の終了後、それぞれ15sec後、70sec後、140sec後、280sec後にWF
6ガスおよびH
2ガスを用いた主タングステン膜を成膜し(圧力:10666Pa、WF
6流量:250sccm、H
2流量:2200sccm)、タングステン膜を作製した。なお、この際の温度は全ての工程で410℃とした。
【0078】
以上のようにして作製したタングステン膜について、結晶性遮断タングステン膜成膜終了から主タングステン膜成膜開始までの時間t(sec)と膜の比抵抗および膜厚との関係を
図15に示す。この図に示すように、tが140secまでは、時間tを長くすると主タングステン膜成膜の際の成膜速度が低下し、比抵抗は低下する傾向にあることがわかる。しかし、tが280secになると比抵抗が高くなる傾向があることがわかった。このことから結晶性遮断タングステン膜成膜終了から主タングステン膜成膜開始までの時間を20〜270sec程度にすることにより、比抵抗をより低くできることが確認された。
【0079】
以上のように、初期タングステン膜の成膜の還元ガスとしてH
2ガスを用い、その後吸着処理および結晶性遮断タングステン膜の成膜を適正な条件で行い、さらに結晶性遮断タングステン膜成膜終了から主タングステン膜成膜開始までの時間を最適化して主タングステン膜の成膜を行うことにより、膜厚50nmで10μΩcmという極めて低い比抵抗が得られることが確認された。従来の初期タングステン膜をSiH
4ガスを用いて行っていたタングステン膜では膜厚50nmで28μΩcmであるから、従来よりも65%も比抵抗が低下したことが確認された。なお、参考のため、還元ガスとしてSiH
4ガスを用いた初期タングステン膜成膜を行い、その後吸着処理および結晶性遮断タングステン膜の成膜を適正条件で行い、さらに結晶性遮断タングステン膜成膜終了から主タングステン膜成膜開始までの時間を最適化して主タングステン膜の成膜を行った場合についても比抵抗を測定したが、比抵抗は20μΩcmまでしか低下しないことが確認された。
図16にこれら膜厚50nmのときの比抵抗の値を比較して示す。
【0080】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
まず、本実施形態の前提となる実験結果について説明する。第1の実施形態では、主タングステン膜の膜厚を従来の配線や埋め込み層の用途に適した50nm程度をターゲットにした実験結果に基づいているが、最近では10〜30nm程度の用途も存在するため、膜厚を変化させた際の膜の比抵抗を把握した。
【0081】
ここでは、SiO
2膜の上に形成されたTiN膜の上に、イニシエーション処理、原料ガスとしてのWF
6ガスと還元ガスとしてのH
2ガスを用いたALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜(膜厚2nm)を行った後、SiH
4による吸着処理と結晶性遮断タングステン膜の成膜を行ったもの(ケースA)、SiH
4による吸着処理のみを行ったもの(ケースB)、結晶性遮断タングステン膜の成膜のみを行ったもの(ケースC)、これら両方とも行わなかったもの(ケースD)について、最終処理終了の70sec後に膜厚を変化させて主タングステン膜の成膜を行った。
【0082】
なお、温度は全て410℃とし、各処理の条件は以下の通りとした。
・SiH
4による吸着処理
圧力:1000Pa
SiH
4流量:700sccm
時間:20sec
・結晶性遮断タングステン膜の成膜
圧力:1000Pa
WF
6流量:60sccm
H
2流量:4000sccm
膜厚:6nm
・主タングステン膜の成膜
圧力:10666Pa
WF
6流量:250sccm
H
2流量:2200sccm
【0083】
図17にこのようにして形成したタングステン膜の膜厚と比抵抗の関係を示す。
図17に示すように、SiH
4による吸着処理および結晶性遮断タングステン膜の成膜の両方を行ったケースAでは、膜厚が25nm以上で比抵抗が低い値を示すが、膜厚が25nm以下、特に10〜25nm付近では、極端に比抵抗が上昇してしまうことが判明した。SiH
4による吸着処理および結晶性遮断タングステン膜の成膜の両方を行わなかったものについても同様の膜厚範囲で多少比抵抗の増加が見られる。
【0084】
この原因を調査するため、これらの膜表面のX線回折を行った。その結果を
図18に示す。その結果、SiH
4による吸着処理および結晶性遮断タングステン膜の成膜の両方を行ったケースAでは、膜厚9.3nm、23.8nmにおいて、α−Wを示すピークの他、β−Wを示す比較的強いピークが観察された。また、これらの両方を行わなかったケースDでも膜厚19.2nmおいてβ−Wのピークが多少観察された。
【0085】
タングステン(W)には、α相(α−W)とβ相(β−W)の2つの結晶相があり、両者の違いは抵抗率にある。すなわち、バルク材でのα−Wの比抵抗が5.33μΩcm(22℃)であるのに対し、β−Wは300〜1000μΩcmと高い。したがって、膜厚10〜25nm付近において比抵抗が上昇したのは、β−Wの存在によるものと考えられる。また、SiH
4による吸着処理および結晶性遮断タングステン膜の成膜の両方を行ったケースAにおいては、膜厚が50nm程度において、α−Wのピークが極めて強く現出していることから、β−Wの存在がその上に形成されるα−Wの結晶性を高める作用を有しているとも推測される。
【0086】
このようなβ−Wによる比抵抗の上昇を解消する手法としてアニールに注目した。
図19は、SiH
4による吸着処理と結晶性遮断タングステン膜の成膜を行ったもの(上記ケースA)について、膜厚を変化させて主タングステン膜の成膜を行ったもの、および主タングステン膜の成膜後にN
2ガス雰囲気において800℃で30minのアニールを施したものについて比抵抗を測定した結果を示す図である。
【0087】
この図に示すように、成膜後アニールを行うことにより全体的に比抵抗が低下し、特に膜厚が10〜25nmの範囲で比抵抗の低下率が大きいものとなった。
【0088】
次に、膜厚20nmと50nmの膜について、成膜したまま(as depo)とアニール後のX線回折結果を調査した。その結果を
図20に示す。この図に示すように、膜厚20nmではas depoでβ−Wのピークが確認されるが、アニールによりβ−Wのピークが消失していることがわかる。このことは、結晶構造がβ−Wからα−Wに変化することにより、比抵抗が低下したことを強く裏付けている。また、膜厚50nmでは、アニール前後でいずれもβ−Wのピークは存在しないが、アニールによりX線回折では検出されない内部のβ−Wがα−Wに変化したため、比抵抗が低下したものと考えられる。また、
図19から、アニールを行うことにより、膜厚が10nm以上のいずれの膜厚においても、比抵抗が10μΩcm前後の極めて低い値となり、特に膜厚が40nm以上で8μΩcm以下の極めて低い値となることが確認された。
【0089】
また、アニールした後のタングステン膜の表面および断面をSEMにより観察した結果、アニールによる表面状態の違いや体積変化等は見られなかった。
【0090】
そこで本実施形態では、上記第1の実施形態の第1の例〜第3の例のようにして主タングステン膜を成膜した後、アニールを行う。具体的には、
図3(a)に示す構造のウエハSを準備し、
図21に示すように、ウエハSを処理容器2内に搬入し(ステップ1)、必要に応じてイニシエーション処理を行い(ステップ2)、初期タングステン膜を成膜し(ステップ3)、吸着処理を行い(ステップ4)、結晶性遮断タングステン膜を成膜し(ステップ5)、主タングステン膜を成膜し(ステップ6)、アニールを施す(ステップ7)。ステップ4とステップ5はいずれかを省略してもよい。
【0091】
アニールは、ステップ6の主タングステン膜の成膜終了後、処理容器2内をパージし、処理容器2内にアニール雰囲気を形成するためのガス、例えばN
2ガス源76からN
2ガスを導入しつつ加熱ランプ32により載置台8を介してウエハSを加熱する。ステップ6終了後、別個に設けられたアニール装置でアニールしてもよい。
【0092】
この際の加熱温度については、主タングステン膜の膜厚が50nmのタングステン膜でアニール温度を500〜800℃の間で変化させてN
2ガス雰囲気でアニールを行い、比抵抗を測定した結果、
図22に示すように、アニール温度が600℃までは、比抵抗がas depoとほぼ同じ値となったが、700℃以上では比抵抗が低下しているのがわかる。このことから、アニール温度は700℃以上が好ましい。
【0093】
また、アニール雰囲気については、膜厚50nmのタングステン膜でアニールの雰囲気をN
2ガス雰囲気とH
2ガス雰囲気で変化させて800℃でアニールした結果、
図23に示すように、比抵抗の値がほぼ同等であり、アニールの効果は雰囲気に依存しないことがわかった。したがって、アニールの際には、N
2ガスに代えてH
2ガス源78からH
2ガスを処理容器2内に導入しても構わないし、Arガス源75からArガスを導入しても構わない。アニール用に他のガスを供給するようにしてもよい。別個に設けられたアニール装置でアニールする場合には、適宜のガスを導入するようにすればよい。
【0094】
以上のように、本実施形態では、還元ガスとしてH
2ガスを用いたALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜、SiH
4による吸着処理、WF
6ガスおよびH
2ガスを用いた結晶性遮断タングステン膜の成膜、および主タングステン膜を成膜後、アニールを行うことにより、膜中のβ−Wをα−Wに変化させて膜の比抵抗を低下させる。特に、β−Wが多く晶出して比抵抗が大きく上昇する膜厚25nm以下において、大きな比抵抗低下効果を発揮する。また、25nm以上の膜厚においても、内部に残存するβ−Wをα−Wに変化させることにより、比抵抗をより低くすることができ、8μΩcm以下といった、従来では考えられない低い値を得ることができる。
【0095】
本実施形態に従って成膜およびアニールを行ったタングステン膜と、初期タングステン膜を従来のSiH
4ガスまたはB
2H
6ガスを用いて成膜した後、主タングステン膜を成膜し、アニールを行ったタングステン膜の比抵抗を実際に比較した結果、本実施形態では7.3μΩcm(膜厚50nm)と著しく低い値であったのに対し、初期タングステン膜の成膜にSiH
4ガスを用いたもの、およびB
2H
6ガスを用いたものは、アニールによって比抵抗が低下したものの、それぞれ18.4μΩcm、11.6μΩcmといずれも本実施形態のものよりも高い値となった。
【0096】
(第3の実施形態)
次に第3の実施形態について説明する。
ここでは、主タングステン膜の膜厚が25nm以下と薄い場合における結晶性遮断タングステン膜の膜厚の影響を検討した結果に基づく。
【0097】
図24は、結晶性遮断タングステン膜の膜厚を変化させた場合の、主タングステン膜の膜厚と比抵抗の関係を示す図である。
図24では、TiN膜の上に、以下の条件で、イニシエーション処理、初期タングステン膜の成膜、SiH
4による吸着処理、結晶性遮断タングステン膜の成膜(結晶性遮断タングステン膜なしの場合も含む)、主タングステン膜の成膜を行った結果を示す。
【0098】
・SiH
4による吸着処理
圧力:10666Pa
SiH
4流量:700sccm
時間:60sec
・結晶性遮断タングステン膜の成膜
圧力:1000Pa
WF
6流量:200sccm
H
2流量:4000sccm
膜厚:0〜4nm
・主タングステン膜の成膜
圧力:10666Pa
WF
6流量:250sccm
H
2流量:2200sccm
・温度
全ての処理において410℃
【0099】
図24に示すように、主タングステン膜の膜厚が25nm以上であれば、結晶性遮断タングステン膜がいずれの厚さにおいても、結晶性遮断タングステン膜を設けない場合よりも比抵抗が低くなるが、主タングステン膜が25nm以下では、結晶性遮断タングステン膜の膜厚が厚くなるほど、上述したβ−Wに起因する抵抗の上昇が大きくなることがわかる。具体的には、結晶性遮断タングステン膜の膜厚が4nmでは、主タングステン膜の膜厚が25nmですでに比抵抗の上昇が始まっており、主結晶性遮断タングステン膜の膜厚が3nmでは、主タングステン膜の膜厚が22nm程度で比抵抗の上昇が始まり、結晶性遮断タングステン膜の膜厚が1.5nmでは、主タングステン膜の膜厚が17nm程度で比抵抗の上昇が始まり、結晶性遮断タングステン膜の膜厚が1nmでは、主タングステン膜の膜厚が16nm程度で比抵抗の上昇が始まる。
【0100】
このことから、主タングステン膜の膜厚が25nm以上の場合には、結晶性遮断タングステン膜の膜厚が0.5nm以上であれば有効であり、主タングステン膜の膜厚が25nm以下(10〜25nm)の場合には、結晶性遮断タングステン膜の膜厚が3nm以下であることが好ましく、1.5nm以下であることがより好ましい。また、0.5〜3nmの範囲が好ましく、さらには、0.5〜1.5nmの範囲が好ましい。なお、本実施形態では、初期タングステン膜の表面に核生成のための物質を含むガスを吸着させる工程(SiH
4による吸着処理)が存在しない場合にも同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の条件で成膜した後に第2の実施形態と同様にアニールしてもよい。
【0101】
(他の実施形態)
・初期タングステン膜の成膜
上記実施形態では初期タングステン膜の成膜の際に、タングステン原料ガスであるWF
6ガスの供給と、還元ガスであるH
2ガスの供給との間のパージを、Arガスおよび/またはN
2ガスをパージガスとして機能させて行ったが、このパージを真空引きのみで行うことにより、その後の吸着処理、結晶性遮断タングステン膜の成膜、主タングステン膜の成膜により形成されたタングステン膜の比抵抗を低下させることができる。
【0102】
そのことを
図25に示す。
図25は、初期タングステン膜の成膜の際のパージをArガスおよびN
2ガスをパージガスとして機能させて行った場合(ケースE)と、全てのガスの供給を停止して真空引きした場合(ケースF)における、膜厚と比抵抗との関係を示す図である。なお、ここでは1回のパージ時間を1.5secとし、タングステン原料ガスであるWF
6ガスの供給と、還元ガスであるH
2ガスの供給とを27回繰り返し、膜厚2nmの初期タングステン膜を形成し、吸着処理、結晶性遮断タングステン膜の成膜、主タングステン膜の成膜については、
図17の結果を得た実験と同様の条件とした。なお、処理温度は全ての処理で410℃とした。
【0103】
図25に示すように、初期タングステン膜の成膜の際のパージを、全てのガスを停止して真空引きにより行うことにより、パージガスによるパージよりも比抵抗が低下することが確認された。これは、真空引きによるパージによって、膜中のフッ素(F)等の不純物が低下したためと推測される。また、いずれも、膜厚10〜25nm付近において、比抵抗が高くなる。
【0104】
このように初期タングステン膜のパージを真空引きで行った場合にも、成膜後のアニールは有効である。その結果を
図26に示す。
図26は上記ケースEおよびケースFと、これらにそれぞれN
2ガス雰囲気において800℃で30minのアニールを施した場合(ケースG、ケースH)について、膜厚と比抵抗との関係を示す図である。
【0105】
図26に示すように、アニールすることにより、初期タングステン膜形成時のパージをパージガスで行ったものも、真空引きで行ったものも比抵抗が低下し、特に膜厚10〜25nmの比抵抗が高い部分においてその低下率が大きいものとなった。また、アニールを行ったものについても、パージを真空引きで行ったもの(ケースH)のほうが低い比抵抗を示した。
【0106】
・イニシエーション処理
上記実施形態ではイニシエーション処理の際にSiH
4ガスを用いた例を示したが、B
2H
6ガスを用いても良好な結果が得られる。そのことを
図27に示す。
図27は、イニシエーション処理をSiH
4で行った場合(ケースI)と、B
2H
6で行った場合(ケースJ)における、膜厚と比抵抗との関係を示す図である。ここでは、SiO
2膜の上に形成されたTiN膜の上に行うイニシエーション処理を、ケースIでは、圧力:10666Pa、SiH
4流量:700sccm、H
2流量:500sccmの条件で行い、ケースJでは圧力10666Pa、B
2H
6流量:35sccm、H
2流量:1165sccmの条件で行った後に、原料ガスとしてのWF
6ガスと還元ガスとしてのH
2ガスを用いALDあるいはSFDによる初期タングステン膜の成膜(膜厚2nm)を行い、その後の、吸着処理、結晶性遮断タングステン膜の成膜、主タングステン膜の成膜については、
図17の結果を得た実験と同様の条件とした。なお、処理温度は全ての処理で410℃とした。
【0107】
図27示すように、いずれも膜厚が薄い部分で比抵抗が上昇しており、膜厚15〜23nmの範囲ではB
2H
6でイニシエーション処理したケースJのほうが比抵抗が低くなっているが、膜厚23nmより厚い範囲ではいずれも低い抵抗値が得られており、SiH
4でイニシエーション処理したケースIのほうがB
2H
6で処理したケースJよりも比抵抗が低くなっている。
【0108】
これらのうち、主タングステン膜の膜厚が35nmのサンプルについて、後方散乱電子回折(EBSD)により表面の結晶状態を観察した。その結果、SiH
4でイニシエーション処理するほうがB
2H
6で処理するよりも結晶粒径が大きくなり、また、Wの比抵抗を下げる(110)面の量もSiH
4で処理するほうが多くなることが確認された。このことから、イニシエーション処理はB
2H
6を用いるよりもSiH
4を用いたほうがより効果的であることがわかる。
【0109】
結果を示していないが、いずれの場合にも成膜後にアニールを行うことにより、比抵抗が低下し、SiH
4を用いたほうが低い比抵抗を示す。
【0110】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、全ての工程を同じ温度で実施した例を示したが、工程毎に温度を変えて適正化してもよい。また、上記実施形態では、基板として表面にTiN膜が形成されたものを用い、その上にタングステン膜を成膜する例を示したが、TiN膜の上に成膜する場合に限るものではない。さらに、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハはシリコンであっても、GaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体でもよく、さらに、半導体ウエハに限定されず、液晶表示装置等のFPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。