特許第5960015号(P5960015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960015画像表示システム、放射線画像撮影システム、画像表示制御プログラム、及び画像表示制御方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960015
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】画像表示システム、放射線画像撮影システム、画像表示制御プログラム、及び画像表示制御方法。
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20160719BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
   A61B6/02 300M
   A61B6/00ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-218256(P2012-218256)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-68880(P2014-68880A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】菅原 將高
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−068506(JP,A)
【文献】 特開2011−024622(JP,A)
【文献】 特開2007−130487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から前記放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して前記放射線画像検出器により前記角度毎に撮影された複数の放射線画像を前記放射線画像検出器から取得し、取得した複数の放射線画像に基づいて、前記放射線画像検出器の検出面を基準として再構成した断層画像を生成する断層画像生成手段と、
前記乳房のニップルの前記検出面を基準とした高さを特定する高さ特定手段と、
表示手段に前記断層画像と共に、前記高さ特定手段で特定した前記ニップルの高さに関する情報及び前記表示手段に表示させる前記断層画像の前記検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制を行う表示制御手段と、
を備えた画像表示システム。
【請求項2】
前記断層画像生成手段は、第1の撮影により得られた複数の放射線画像に基づいて第1断層画像を生成し、かつ、前記乳房に対する検出面の角度を前記第1の撮影と異ならせて撮影した第2の撮影により得られた複数の放射線画像に基づいて第2断層画像を生成し、
前記表示手段に表示された前記第1断層画像中で指定された関心物及び領域の少なくとも一方の前記第2断層画像中における対応位置を特定する位置特定手段を備え、
前記高さ特定手段は、前記第2断層画像の撮影における検出面を基準とした前記ニップルの高さを特定し、
前記表示制御手段は、前記第2断層画像と共に、前記高さ特定手段で特定した前記第2断層画像に対する前記ニップルの高さに関する情報、前記表示手段に表示させる前記第2断層画像の前記検出面を基準とした高さに関する情報、及び前記位置特定手段で特定した対応位置を示す情報を表示させる制を行う
請求項1に記載の画像表示システム。
【請求項3】
前記第1断層画像を前記表示手段に表示させる場合、
前記高さ特定手段は、前記第1断層画像の撮影における検出面を基準とした前記ニップルの高さを特定し、
前記表示制御手段は、前記第1断層画像と共に、前記高さ特定手段で特定した前記第1断層画像に対する前記ニップルの高さに関する情報、及び前記表示手段に表示させる前記第1断層画像の前記検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制御を行う、
請求項2に記載の画像表示システム。
【請求項4】
前記位置特定手段は、前記ニップルの位置を基準にして、前記第1断層画像中で指定された関心物及び領域の少なくとも一方の前記第2断層画像中での位置を特定する、請求項2または請求項3に記載の画像表示システム。
【請求項5】
前記位置特定手段は、前記第1断層画像中での位置と前記第2断層画像中での位置との予め定められた対応関係に基づいて、前記第1断層画像中で指定された関心物及び領域の少なくとも一方の前記第2断層画像中での位置を特定する、請求項2または請求項3に記載の画像表示システム。
【請求項6】
前記高さ特定手段は、前記断層画像生成手段で生成された複数の断層画像から抽出された前記ニップルの画像を含む断層画像に基づいて、前記ニップルの前記検出面を基準とした高さを特定する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像表示システム。
【請求項7】
前記ニップルの画像を含む断層画像の指定を受け付ける受付手段を備え、
前記高さ特定手段は、前記受付手段で受け付けた断層画像に基づいて、前記ニップルの前記検出面を基準とした高さを特定する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の画像表示システム。
【請求項8】
放射線照射部から照射された放射線を射線画像検出器により検出して放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置により撮影された放射線画像を取得する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像表示システムと、
前記画像表示システムにより制御される表示手段と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項9】
放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から前記放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して前記放射線画像検出器により前記角度毎に撮影された複数の放射線画像を前記放射線画像検出器から取得し、取得した複数の放射線画像に基づいて、前記放射線画像検出器の検出面を基準として再構成した断層画像を生成する断層画像生成手段と、
前記乳房のニップルの前記検出面を基準とした高さを特定する高さ特定手段と、
表示手段に前記断層画像と共に、前記高さ特定手段で特定した前記ニップルの高さに関する情報及び前記表示手段に表示させる前記断層画像の前記検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制を行う表示制御手段として、
コンピュータを機能させるための画像表示制御プログラム。
【請求項10】
放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から前記放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して前記放射線画像検出器により前記角度毎に撮影された複数 放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から前記放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して前記放射線画像検出器により前記角度毎に撮影された複数の放射線画像を前記放射線画像検出器から取得し、取得した複数の放射線画像に基づいて、前記放射線画像検出器の検出面を基準として再構成した断層画像を生成する断層画像生成工程と、
前記乳房のニップルの前記検出面を基準とした高さを特定する高さ特定工程と、
表示手段に前記断層画像と共に、前記高さ特定手段で特定した前記ニップルの高さに関する情報及び前記表示手段に表示させる前記断層画像の前記検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制を行う表示制御工程と、
を備えた画像表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示システム、放射線画像撮影システム、画像表示制御プログラム、及び画像表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療診断を目的として、患者である被検者の被写体に放射線を照射させて、放射線画像撮影装置により、放射線画像の撮影が行われている。このような放射線画像撮影装置として、被検者の乳房の放射線画像を撮影する、いわゆるマンモグラフィと称されるものが知られている。
【0003】
また、撮影方法として、乳房に対して複数の方向から放射線を照射して放射線画像を撮影し、撮影した放射線画像に基づいて断層画像を生成する、トモシンセシス撮影が知られている。
【0004】
トモシンセシス撮影では、一般的に複数の断層画像を生成するため、診断等のために断層画像を読影する医師等のユーザに対して、読影している断層画像が、どの位置(スライス)にあたるかを表示する技術がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、トモシンセシス撮影により得られた乳房断層画像データを表示する際に、乳房を側面から観察した模式的なサムネイルを用いて、現在どのスライスが表示されているのか表すバーを表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−94397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
断層画像中で腫瘤や石灰化等の関心物の画像を見つけた場合に、当該断層画像の位置、例えば、上記特許文献1では、どのスライスであるかが認識できても、見つけた関心物の位置、特に三次元位置を把握しづらい場合がある。
【0008】
特に、マンモグラフィでは、一般に乳房Nを圧迫した状態で撮影を行うため、圧迫状態が変化した場合、例えば、非圧迫状態における関心物の位置が把握しづらい場合がある。
【0009】
本発明は、関心物の位置が把握しやすくなる画像表示システム、放射線画像撮影システム、画像表示制御プログラム、及び画像表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の画像表示システムは、放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して放射線画像検出器により角度毎に撮影された複数の放射線画像を放射線画像検出器から取得し、取得した複数の放射線画像に基づいて、放射線画像検出器の検出面を基準として再構成した断層画像を生成する断層画像生成手段と、乳房のニップルの検出面を基準とした高さを特定する高さ特定手段と、表示手段に断層画像と共に、高さ特定手段で特定したニップルの高さに関する情報及び表示手段に表示させる断層画像の検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制を行う表示制御手段と、を備える。
【0011】
また、本発明の画像表示システム断層画像生成手段は、第1の撮影により得られた複数の放射線画像に基づいて第1断層画像を生成し、かつ、乳房に対する検出面の角度を第1の撮影と異ならせて撮影した第2の撮影により得られた複数の放射線画像に基づいて第2断層画像を生成し、表示手段に表示された第1断層画像中で指定された関心物及び領域の少なくとも一方の第2断層画像中における対応位置を特定する位置特定手段を備え、高さ特定手段は、第2断層画像の撮影における検出面を基準としたニップルの高さを特定し、表示制御手段は、第2断層画像と共に、高さ特定手段で特定した第2断層画像に対するニップルの高さに関する情報、表示手段に表示させる第2断層画像の検出面を基準とした高さに関する情報、及び位置特定手段で特定した対応位置を示す情報を表示させる制を行うことが好ましい。
【0012】
なお、本発明の画像表示システムは、第1断層画像を表示手段に表示させる場合、高さ特定手段は、第1断層画像の撮影における検出面を基準としたニップルの高さを特定し、表示制御手段は、第1断層画像と共に、高さ特定手段で特定した第1断層画像に対するニップルの高さに関する情報、及び表示手段に表示させる第1断層画像の検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制御を行うようにしてもよい。
なお、本発明における位置特定手段は、ニップルの位置を基準にして、第1断層画像中で指定された関心物及び領域の少なくとも一方の第2断層画像中での位置を特定するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明における位置特定手段は、第1断層画像中での位置と第2断層画像中での位置との予め定められた対応関係に基づいて、第1断層画像中で指定された関心物及び領域の少なくとも一方の第2断層画像中での位置を特定するようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の画像表示システムの高さ特定手段は、断層画像生成手段で生成された複数の断層画像から抽出されたニップルの画像を含む断層画像に基づいて、ニップルの検出面を基準とした高さを特定するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の画像表示システムは、ニップルの画像を含む断層画像の指定を受け付ける受付手段を備え、高さ特定手段は、受付手段で受け付けた断層画像に基づいて、ニップルの検出面を基準とした高さを特定するようにしてもよい。
【0017】
本発明の放射線画像撮影システムは、放射線照射部から照射された放射線を射線画像検出器により検出して放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置と、放射線画像撮影装置により撮影された放射線画像を取得する本発明の記載の画像表示システムと、画像表示システムにより制御される表示手段と、を備える。
【0018】
本発明の画像表示制御プログラムは、放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して放射線画像検出器により角度毎に撮影された複数の放射線画像を放射線画像検出器から取得し、取得した複数の放射線画像に基づいて、放射線画像検出器の検出面を基準として再構成した断層画像を生成する断層画像生成手段と、乳房のニップルの検出面を基準とした高さを特定する高さ特定手段と、表示手段に断層画像と共に、高さ特定手段で特定したニップルの高さに関する情報及び表示手段に表示させる断層画像の検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制を行う表示制御手段として、コンピュータを機能させるためのものである。
【0019】
本発明の画像表示制御方法は、放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して放射線画像検出器により角度毎に撮影された複数 放射線画像検出器に対向して設けられた放射線照射部から放射線画像検出器上の乳房に対して異なる角度から放射線を照射して放射線画像検出器により角度毎に撮影された複数の放射線画像を放射線画像検出器から取得し、取得した複数の放射線画像に基づいて、放射線画像検出器の検出面を基準として再構成した断層画像を生成する断層画像生成工程と、乳房のニップルの検出面を基準とした高さを特定する高さ特定工程と、表示手段に断層画像と共に、高さ特定手段で特定したニップルの高さに関する情報及び表示手段に表示させる断層画像の検出面を基準とした高さに関する情報を表示させる制を行う表示制御工程と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、関心物の位置が把握しやすくなる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態の放射線画像撮影システムの一例の全体構成の概略を示す概略構成図である。
図2】本実施の形態の放射線画像撮影装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施の形態の放射線画像撮影装置の撮影時における構成の一例を示す構成図である。
図4】本実施の形態の放射線画像撮影装置の撮影時の説明を行うための説明図である。
図5】本実施の形態の放射線画像処理装置の画像表示制御処理機能を中心にした構造の一例を示すブロック図である。
図6】本実施の形態の放射線画像処理装置で実行される画像表示制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態の画像表示制御処理中のニップル高さ特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】本実施の形態の乳房画像及び情報画像を含む断層画像を説明するための説明図である。
図9】本実施の形態におけるCC撮影の際に乳房が圧迫板により圧迫された状態と、MLO撮影の際に乳房が圧迫板により圧迫された状態を説明するための説明図である。
図10】本実施の形態におけるCC撮影による断層画像におけるユーザの関心物画像を含む領域の指定、及びMLO撮影による指定位置のマーキングを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態は本発明を限定するものではない。
【0023】
まず、本実施の形態の放射線画像撮影システム全体の概略構成について説明する。図1には、本実施の形態の放射線画像撮影システムの全体構成の一例の概略構成図を示す。
【0024】
本実施の形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール16を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System:放射線情報システム)から入力された指示(撮影メニュー)に基づいて、医師や放射線技師等の操作により放射線画像の撮影を行う機能を有するものである。なお、本実施の形態では、医師等、撮影された放射線画像により石灰化、腫瘤、及び乳腺等の関心物の観察、診察、及び診断等を行う者や放射線技術士やオペレータ等を「ユーザ」と称する。また、ユーザの観察、診察、及び診断等の対象となる、石灰化や腫瘤等の病変部位や組織を「関心物」と称する。なお、関心物は、人体組織以外のものであってもよい。
【0025】
また、本実施の形態の放射線画像撮影システム1は、放射線画像をコンソール16のディスプレイ50や放射線画像読影装置18に表示させることにより、医師や放射線技師等に放射線画像を読影させる機能を有するものである。
【0026】
本実施の形態の放射線画像撮影システム1は、放射線画像撮影装置10、放射線発生装置12、放射線画像処理装置14、コンソール16、記憶部17、放射線画像読影装置18、及び電子カセッテ20を備えている。
【0027】
放射線発生装置12は、放射線照射制御ユニット22を備えている。放射線照射制御ユニット22は、放射線画像処理装置14の放射線制御部62の制御に基づいて放射線照射部28から放射線Xを撮影台32上の被検者Wの撮影対象部位(乳房N)に照射させる機能を有している。
【0028】
被検者Wを透過した放射線Xは、撮影台32内部に保持された電子カセッテ20に照射される。電子カセッテ20は、被検者Wを透過した放射線Xの線量に応じた電荷を発生し、発生した電荷量に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成して出力する機能を有するものである。
【0029】
本実施の形態では、電子カセッテ20により出力された放射線画像を示す画像情報は、放射線画像処理装置14を介してコンソール16に入力される。本実施の形態のコンソール16は、無線通信(LAN:Local Area Network)等を介して外部システム(RIS)等から取得した撮影メニューや各種情報等を用いて、放射線画像撮影装置10、放射線発生装置12、及び電子カセッテ20の制御を行う機能を有している。また、本実施の形態のコンソール16は、放射線画像処理装置14との間で放射線画像の画像情報を含む各種情報の送受信を行う機能を有する。
【0030】
本実施の形態のコンソール16は、サーバー・コンピュータとして構成されており、制御部49、ディスプレイドライバ48、ディスプレイ50、操作入力検出部52、操作パネル54、I/O部56、I/F部57、及びI/F部58を備えて構成されている。制御部49、ディスプレイドライバ48、操作入力検出部52、及びI/O部56は、システムバスやコントロールバス等のバス59を介して相互に情報等の授受が可能に接続されている。
【0031】
制御部49は、コンソール16全体の動作を制御する機能を有しており、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)を備えている。CPUは、コンソール16全体の動作を制御する機能を有しており、ROMには、CPUで使用される制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する機能を有しており、HDD(ハードディスク・ドライブ)は、各種データを記憶して保持する機能を有している。
【0032】
ディスプレイドライバ48は、ディスプレイ50への各種情報の表示を制御する機能を有している。本実施の形態のディスプレイ50は、撮影メニューや放射線画像及び断層画像等を表示する機能を有している。操作入力検出部52は、操作パネル54に対する操作状態を検出する機能を有している。操作パネル54は、放射線画像の撮影に関する操作指示を、ユーザが入力するためのものである。本実施の形態では操作パネル54は、例えば、タッチパネル、タッチペン、複数のキー、及びマウス等を含んで構成されている。なお、タッチパネルとして構成する場合は、ディスプレイ50と同一として構成してもよい。
【0033】
また、I/O部56及びI/F部58は、無線通信により、放射線画像処理装置14を介して放射線画像撮影装置10、放射線発生装置12、及び電子カセッテ20との間で各種情報や画像情報等の送受信を行う機能を有している。また、I/F部57は、RISとの間で、各種情報の送受信を行う機能を有している。
【0034】
本実施の形態の放射線画像処理装置14は、システム制御部60、放射線制御部62、パネル制御部64、画像処理制御部66、I/F部67、及び撮影制御部68を備えている。
【0035】
システム制御部60は、放射線画像処理装置14全体を制御する機能を有すると共に、放射線画像撮影システム1を制御する機能を有している。放射線制御部62は、コンソール16の指示等に基づいて、放射線発生装置12の放射線照射制御ユニット22を制御する機能を有している。パネル制御部64は、コンソール16の指示等に基づいて、電子カセッテ20を制御する機能を有している。画像処理制御部66は、放射線画像に対して各種画像処理を施す機能を有している。撮影制御部68は、コンソール16の指示等に基づいて、放射線画像撮影装置10を制御する機能を有している。システム制御部60、放射線制御部62、パネル制御部64、画像処理制御部66、及び撮影制御部68は、システムバスやコントロールバス等のバス69を介して相互に情報等の授受が可能に接続されている。
【0036】
本実施の形態の記憶部17は、撮影された放射線画像及び当該放射線画像に関係する情報を記憶する機能を有するものである。記憶部17としては、例えば、HDD等が挙げられる。
【0037】
また、本実施の形態の放射線画像読影装置18は、撮影された放射線画像をユーザが読影するための機能を有する装置であり、特に限定されないが、いわゆる、読影ビューワやコンソール、及びタブレット端末等が挙げられる。本実施の形態の放射線画像読影装置18は、パーソナル・コンピュータとして構成されており、コンソール16や放射線画像処理装置14と同様に、CPU、ROM、RAM、HDD、ディスプレイドライバ、ディスプレイ24、操作入力検出部、操作パネル26、I/O部、及びI/F部を備えて構成されている。なお、図1では、記載が煩雑になるのを避けるため、これらの構成のうち、ディスプレイ24及び操作パネル26のみを示し、その他の記載を省略している。
【0038】
次に、本実施の形態の放射線画像撮影装置10の構成について詳細に説明する。図2に、本実施の形態の放射線画像撮影装置10の構成の一例の概略構成図を示す。また、図3に、本実施の形態の放射線画像撮影装置10の撮影時における構成の一例の構成図を示す。また、図4に、本実施の形態の放射線画像撮影装置10の撮影時の説明を行うための説明図を示す。
【0039】
図2図4に示すように、本実施の形態の放射線画像撮影装置10は、被検者Wが立った立位状態において、被検者Wの乳房N、を放射線(例えば、X線)により撮影する装置であり、例えば、マンモグラフィと称される。なお、以下では、撮影の際に放射線画像撮影装置10に被検者Wが対面した場合の被検者Wに近い手前側を放射線画像撮影装置10の装置前方側とし、放射線画像撮影装置10に被検者Wが対面した場合の被検者Wから離れた奥側を放射線画像撮影装置10の装置後方側とする。また、放射線画像撮影装置10に被検者Wが対面した場合の被検者Wの左右方向を放射線画像撮影装置10の装置左右方向として説明する(図2図4の各矢印参照)。
【0040】
また、放射線画像撮影装置10としては、被検者Wがイス(車イスを含む)等に座った座位状態において、その被検者Wの乳房Nを撮影する装置であってもよく、少なくとも被検者Wの上半身が立位した状態でその被検者Wの乳房Nが左右別個に撮影可能な装置であればよい。
【0041】
放射線画像撮影装置10は、図2に示すように、装置前方側に設けられた側面視略C字状の測定部70と、測定部70を装置後方側から支える基台部72と、を備えている。
【0042】
測定部70は、立位状態にある被検者Wの乳房Nと当接する平面状の撮影面34が形成された撮影台32と、乳房Nを撮影台32の撮影面34との間で圧迫するための圧迫板36と、撮影台32及び圧迫板36を支持する保持部76と、を備えて構成されている。
【0043】
また、測定部70は、管球等の放射線源30が設けられ、放射線源30から撮影面34に向けて検査用の放射線を照射する放射線照射部28と、保持部76とは分離され放射線照射部28を支持する支持部77とを備えている。
【0044】
測定部70には、基台部72に回動可能に支えられている回動軸74が設けられている。回動軸74は、支持部77に対して固定されており、回動軸74と支持部77は一体に回動するようになっている。
【0045】
保持部76に対しては、回動軸74が連結されて一体に回動する状態と、回動軸74が分離されて空転する状態とに切り替え可能とされている。具体的には、回動軸74及び保持部76にそれぞれギアが設けられ、このギア同士の噛合状態・非噛合状態を切替えるようになっている。なお、回動軸74の回動力の伝達・非伝達の切替えは、種々の機械要素を用いることができる。
【0046】
保持部76は、撮影面34と放射線照射部28とが所定間隔離れるように撮影台32と放射線照射部28とを支持するとともに、圧迫板36と撮影面34との間隔が可変であるように圧迫板36をスライド移動可能に保持している。
【0047】
乳房Nが当接する撮影面34は、放射線透過性や強度の観点から、例えば、カーボンで形成されている。撮影台32の内部には、乳房N及び撮影面34を通過した放射線が照射され、その放射線を検出する電子カセッテ20が配置されている。電子カセッテ20が検出した放射線が可視化されて放射線画像が生成される。電子カセッテ20は画像情報を担持する放射線の照射を受けて画像情報を記録し、記録した画像情報を出力するものであり、照射された放射線の線量に応じて発生した画素毎の電荷を画像情報として検出する放射線検出器を備えている。電子カセッテ20は、例えば、放射線感応層を配置し、放射線をデジタルデータに変換して出力するFPD(Flat Panel Detector)として構成されている。
【0048】
本実施の形態の放射線画像撮影装置10は、少なくとも、被写体としての乳房Nに対して、複数の方向から撮影を行うことができる装置とされている。図3及び図4は、それぞれ、当該撮影時における放射線画像撮影装置10の姿勢、当該撮影時における放射線照射部28の位置を示している。図3及び図4に示すように、当該撮影は、支持部77を傾けて撮影を行うものである。
【0049】
放射線画像撮影装置10では、図4に示すように、乳房Nに対して複数の方向から撮影(トモシンセシス撮影)を行う場合、保持部76に対して回動軸74が空転して撮影台32と圧迫板36が動かず、支持部77が回動することにより放射線照射部28のみが円弧状に移動する。なお、本実施の形態では、図4に示すように角度αから所定角度θずつ撮影位置を移動させて、放射線照射部28の位置がP1〜PNのN箇所で撮影が行われる。
【0050】
また、本実施の形態の放射線画像撮影装置10では、乳房Nに対して、CC(Cranio & Caudal:頭尾方向)撮影とMLO(Mediolateral−Oblique:内外斜位方向)撮影との両者を行うことができる装置とされている。なお、CC撮影時においては、撮影面34が上方を向いた状態に保持部76の姿勢が調整されると共に、放射線照射部28が撮影面34に対して上方に位置する状態に保持部76の姿勢が調整される。これにより、立位状態の被検者Wの頭側から足側に向かって、放射線照射部28から乳房Nへ放射線が照射されて、CC撮影がなされる。また、MLO撮影時では、一般的に、CC撮影時に比べて撮影台32を45°以上90°未満回転させた状態に保持部76の姿勢が調整され、撮影台32の装置前方側の側壁角部32Aに被検者Wの腋窩を当てるようにポジショニングされる。これにより、被検者Wの胴体の軸中心側から外側へ向かって、放射線照射部28から乳房Nへ放射線が照射されて、MLO撮影がなされる。
【0051】
次に、本実施の形態の放射線画像処理装置14において画像表示制御処理を行う機能について説明する。図5に、放射線画像処理装置14の画像表示制御処理機能を中心にした構造の一例のブロック図を示す。
【0052】
放射線画像処理装置14は、システム制御部60、放射線制御部62、パネル制御部64、画像処理制御部66、I/F部67、撮影制御部68、断層画像生成部80、ニップル高さ特定部82、画像表示制御部84、位置検出部85、及び記憶部86を備えている。これらは、コントロールバスやデータバス等のバス69を介して互いに情報等の授受が可能に接続されている。
【0053】
システム制御部60は、放射線画像処理装置14全体の動作を制御する機能を有するものであり、CPU90、ROM92、RAM94、及びHDD96を含んでいる。CPU90は、具体的には、ROM92に格納されているプログラムを実行することにより放射線画像処理装置14全体の制御を行っている。なお、本実施の形態では、プログラムは、予めROM92に格納されている構成としているがこれに限らず、プログラムをCD−ROMやリムーバブルディスク等の記録媒体等に記憶しておき記録媒体からROM92等にインストールするようにしてもよい。また、インターネット等の通信回線を介して外部装置からROM92等にインストールするようにしてもよい。RAM94は、CPU90でプログラムを実行する際の作業用の領域を確保するものである。HDD96は、各種データを記憶して保持するものである。
【0054】
放射線制御部62は、I/F部67を介してコンソール16等から照射指示を受け付けると、指定された曝射条件に基づいて設定された撮影メニューに従って、放射線照射部28に設けられた放射線源30から撮影面34に対して放射線を照射させる。I/F部67を介して受け付ける曝射条件には、管電圧、管電流、照射時間、及び姿勢情報等が含まれている。姿勢情報には、乳房Nに対して複数の方向から撮影を行う場合の撮影位置(撮影姿勢、角度)を表す情報等が含まれている。
【0055】
なお、これらの曝射条件や姿勢情報等は、コンソール16等からユーザが設定するようにしてもよいし、他の制御装置(RIS)等から得るようにしてもよいし、予め記憶部86等に記憶させておいてもよい。
【0056】
各種情報の設定を受け付けると、放射線制御部62は、設定された各種情報に基づいて撮影メニューに従って、放射線照射部28から放射線Xを被検者Wの撮影部位(乳房N)に照射させて放射線画像の撮影を実行する。撮影制御部68は、複数の方向から撮影を行う場合には、撮影面34が上方を向いた状態に保持部76の姿勢を調整すると共に放射線照射部28が撮影面34に対して上方に位置する状態に支持部77の姿勢を調整する。そして、トモシンセシス撮影を行う場合は、撮影制御部68及び放射線制御部62は、図4に示すように、支持部77を回動させて放射線照射部28を円弧状に角度αから角度θずつ移動させて撮影条件に基づいて放射線照射部28に設けられた放射線源30から撮影面34に対して異なる角度で個別に放射線Xを照射させる。パネル制御部64は、撮影メニューに従って、電子カセッテ20を駆動する。電子カセッテ20は、放射線Xが照射されると、放射線画像を示す画像情報をパネル制御部64を介して放射線画像処理装置14へ出力する。本実施の形態では、電子カセッテ20によって、乳房Nを透過した放射線の照射を受けて、N枚の放射線画像を示す画像情報が得られる。
【0057】
断層画像生成部80は、トモシンセシス撮影により得られた複数の放射線画像から、断層画像を再構成して、撮影面34に平行な断層画像を生成する機能を有するものである。なお、本実施の形態では、「平行」としているが、略平行も含むものとする。
【0058】
断層画像生成部80は、P1、P2、P3、・・・、PNの位置で撮影された複数の放射線画像から断層画像を生成する。放射線源30が各位置から放射線を照射する撮影角度によって、関心物が放射線画像上に投影される位置が異なる。そこで、断層画像生成部80では、放射線画像撮影装置10から当該放射線画像を撮影した際の撮影条件を取得し、当該撮影条件に含まれる撮影角度に基づいて、複数の放射線画像間における関心物の移動量を算出して、公知の再構成方法に基づいて断層画像の再構成を行う。
【0059】
記憶部86は、各種情報を記憶しておくためのものであり、いわゆる大容量ハードディスク等が挙げられる。本実施の形態では、放射線画像撮影装置10から取得した放射線画像や、断層画像生成部80により生成された断層画像を一時的に格納する。
【0060】
ニップル高さ特定部82は、撮影の際の乳房Nのニップルの撮影面34を基準とした高さ(以下、単に、「ニップルの高さ」と称する)を特定する機能を有するものである。本実施の形態では、断層画像生成部80で生成された複数の断層画像から抽出または指定されたニップルの画像を含む断層画像に基づいて、ニップルの高さを特定する。
【0061】
位置検出部85は、CC撮影またはMLO撮影の一方により得られた断層画像中で関心物及び領域の少なくとも一方がユーザにより指定された場合に、指定された位置に対応する他方の撮影により得られた断層画像中での位置を検出する機能を有している。
【0062】
画像表示制御部84は、コンソール16のディスプレイ50や放射線画像読影装置18のディスプレイ24に対する各種画像の表示をI/F部67を介して制御する機能を有している。本実施の形態の画像表示制御部84は、断層画像生成部80で生成した断層画像と共に、ニップル高さ特定部82で特定したニップルの高さに関する情報及び当該断層画像のスライス高さに関する情報を表示させるよう制御する。
【0063】
次に、本実施の形態の放射線画像撮影システム1の作用について図面を参照して説明する。
【0064】
まず、本実施の形態の放射線画像撮影装置10における放射線画像の撮影について説明する。放射線画像の撮影を行なう場合、放射線画像撮影装置10は、撮影メニューに従って撮影が実行される。
【0065】
放射線画像撮影装置10は、CC撮影の撮影指示が入力された場合、撮影面34が上方を向いた状態に保持部76の姿勢を調整すると共に放射線照射部28が撮影面34に対して上方に位置する状態に支持部77の姿勢を調整する。また、MLO撮影が指示された場合、撮影台32を所定の角度回転させて撮影面34を傾けた状態に保持部76の姿勢を調整する。
【0066】
被検者Wは、放射線画像撮影装置10の撮影面34に乳房Nを当接させる。放射線画像撮影装置10は、この状態でユーザから圧迫開始の操作指示が行なわれると、圧迫板36が撮影面34に向けて移動する。
【0067】
本実施形態に係る放射線画像撮影装置10は、この状態で、乳房Nに対して複数の方向から撮影を行うトモシンセシス撮影を行う撮影指示が入力された場合、支持部77のみを回動させて放射線照射部28を円弧状に移動させて、図4に示すように、角度αから所定角度θずつ撮影位置を移動させて、放射線照射部28の位置がP1〜PNのN箇所で各々撮影条件に基づいた放射線の照射を行う。放射線照射部28から個別に照射された放射線は、それぞれ乳房Nを透過した後に電子カセッテ20に到達する。
【0068】
電子カセッテ20は、放射線が照射されると、照射された放射線画像を示す画像情報をそれぞれパネル制御部64へ出力する。上記のように、放射線照射部28の位置がP1〜PNのN箇所で放射線の照射が行われた場合には、N枚の放射線画像の画像情報をパネル制御部64へ出力する。
【0069】
放射線画像処理装置14では、放射線画像撮影装置10から入力された、トモシンセシス撮影によるN枚の放射線画像から再構成した断層画像、及びニップルの高さに関する情報をコンソール16のディスプレイ50や放射線画像読影装置18のディスプレイ24に表示させる画像表示制御処理を行う。
【0070】
次に、当該画像表示制御処理について詳細に説明する。図6に、本実施の形態の放射線画像処理装置14で実行される画像表示制御処理の流れの一例のフローチャートを示す。
【0071】
ステップS100では、断層画像生成部80により断層画像を生成する。パネル制御部64を介して電子カセッテ20から取得した放射線画像の画像情報は、記憶部86に一旦、記憶される。
【0072】
断層画像生成部80は、上述したように、公知の再構成方法に基づいて所定のスライス厚で断層画像の再構成を行う。生成された複数の断層画像は、記憶部86に一旦、記憶させておく。なお、本実施の形態では、断層画像の撮影面34からの高さを「スライス厚さ」と称している。
【0073】
次のステップS102では、ニップルの高さを特定するための特定処理を行う。図7に、ニップルの高さの特定処理の流れの一例のフローチャートを示す。
【0074】
ステップS200では、ユーザによる指定を受け付けたか否か判断する。本実施の形態では、ニップルの高さは、ユーザが指定した断層画像、または、抽出したニップルの画像を含む断層画像に基づいて特定する。本ステップでは、いずれにより特定するかを判断する。コンソール16または放射線画像読影装置18からユーザが断層画像を指定する旨の指示を受け付けた場合は、肯定されてステップS202へ進む。
【0075】
ステップS202では、画像表示制御部84により、生成した複数の断層画像をコンソール16または放射線画像読影装置18のいずれか、指示を受け付けた方のディスプレイ(ディスプレイ50またはディスプレイ24)に表示するよう制御する。
【0076】
ユーザは、表示された複数の断層画像の中から、ニップル画像が含まれている断層画像を選択して、操作パネル54や操作パネル26により放射線画像処理装置14に対して指定する。次のステップS204では、ユーザにより指定された断層画像をI/F部67を介して受け付ける。なお、ユーザは、複数の断層画像を指定してもよい。
【0077】
次のステップS206では、指定された断層画像からニップルの高さを特定した後、本処理を終了する。ニップルの高さを特定する方法は、例えば、指定された断層画像が1つならば、当該断層画像のスライス高さをニップルの高さと特定すればよい。また、指定された断層画像が複数ならば、これらのうちスライス位置が中間となる断層画像のスライス高さをニップルの高さと特定してもよいし、これら断層画像のスライス高さの中央値をニップルの高さと特定してもよい。どのような方法を用いるかは、予め定めておけばよい。
【0078】
一方、抽出したニップルの画像を含む断層画像に基づいて特定する場合は、ステップS200で否定されてステップS208へ進む。
【0079】
ステップS208では、ニップル高さ特定部82が、断層画像からスキンライン(乳房画像の境界線)を検出し、次のステップS210では、検出したスキンラインに基づいて、ニップル画像が含まれる断層画像を抽出する。具体的には、公知の方法を用いればよく、例えば、スキンラインの傾きを検出する等の処理によりニップル画像が含まれる断層画像を抽出する。
【0080】
次のステップS212では、抽出した断層からニップルの高さを特定した後、本処理を終了する。ニップルの高さを特定する方法は、例えば、抽出された断層画像が1つならば、当該断層画像のスライス厚をニップルの高さと特定すればよい。また、抽出された断層画像が複数ならば、これらのうちスライス位置が中間となる断層画像のスライス高さをニップルの高さと特定してもよい。また例えば、これら断層画像のスライス高さの中央値をニップルの高さと特定してもよい。この場合、当該中央値に対応するスライス高さの断層画像が生成されていなくてもよい。また例えば、これら断層画像を比較して、ニップル画像の位置が、胸壁側から最も離れている断層画像のスライス高さをニップルの高さと特定してもよい。なお、どのような方法を用いるかは、予め定めておけばよい。
【0081】
このようにしてステップS102のニップルの高さ特定処理でニップルの高さが特定されると、次のステップS104では、画像表示制御部84が、ユーザが使用しているディスプレイ(ディスプレイ50またはディスプレイ24)に、断層画像、ニップルの高さ、及び断層画像のスライス高さを表示させるよう制御する。
【0082】
これにより、ディスプレイ50またはディスプレイ24に、断層画像と共に、ニップルの高さ及び断層画像のスライス高さが表示される。当該表示の具体的一例を図8に示す。図8は、乳房画像NGを含む断層画像DGを表している。当該断層画像DG上には、乳房画像NGが表示されていない領域に、当該断層画像DGのスライス高さ及びニップルの高さを示す情報画像IGが表示されている。図8に示した情報画像IGでは、図面における下側を撮影面34として圧迫板36により圧迫された乳房Nの厚みを表すスケールを模した軸に対して、スライス高さを示した印(IGD)及びニップルの高さ(位置)を示した印(IGP)を表示させている。具体的一例として、図8に示した情報画像IG中の印IGDでは、スライス高さが49mmの場合を示している。
【0083】
当該情報画像IGにより、図8に示した断層画像DGは、ニップルよりも上の位置にあたることをユーザは認識することができる。図8に示した乳房画像NG中に、腫瘤や石灰化等の関心物Sの関心物画像SGが含まれている場合、関心物Sは、ニップルよりも上側にあることがわかる。また、図8に示した断層画像DG中は、ニップル画像が含まれていないが、乳房画像NGの中央部付近にニップルが有ると推定すると、関心物Sがニップルに対して左右のいずれにあるかがわかる。
【0084】
このように、断層画像DGと共に、情報画像IGを表示させることにより、断層画像DG中に含まれる関心物画像SGに対応する関心物のニップルを基準にした、おおよその位置を把握することができる。
【0085】
次のステップS106では、ディスプレイ(ディスプレイ50またはディスプレイ24)に表示させている断層画像DG内で関心物S(関心物画像SG)または領域が指定されたか否か判断する。本実施の形態では、CC撮影及びMLO撮影のいずれか一方の撮影により得られた断層画像内の関心物画像SGまたは領域が指定された場合に、指定された関心物画像SGまたは領域の位置が、他方の撮影により得られた断層画像内のどの位置にあたるかを特定し、他方の撮影により得られた断層画像と共に、特定した位置を示すマークを表示させるよう制御する。
【0086】
一般的に、CC撮影により得られた断層画像と、MLO撮影により得られた断層画像とでは、同一の関心物であっても、同一箇所、同一形状に写らない。図9を参照して具体的に説明する。図9は、CC撮影の際に乳房Nが圧迫板36により圧迫された状態と、MLO撮影の際に乳房Nが圧迫板36により圧迫された状態を示している。なお、図9中に点線で示したのは、断層画像のスライス面である。図9に示すように、CC撮影とMLO撮影とでは、乳房Nの圧迫状態が異なっている。また、撮影方向が異なっている。そのため、撮影面34を基準として見ると、ニップルPの位置、及び関心物Sの位置が、CC撮影と、MLO撮影とでは異なってしまう。これにより、例えば、CC撮影により得られた断層画像中で見つけた関心物Sの画像をMLO撮影により得られた断層画像中で見ようとする場合、関心物Sを見つけたCC撮影の断層画像と同じスライス高さの断層画像を見ても、関心物Sの画像(関心物画像SG)が写っていない場合がある。また、関心物Sの位置や形状が異なるため、ユーザが、関心物画像SGを見つけにくい場合がある。
【0087】
そこで、本実施の形態では、このような場合に、ユーザが観察したい関心物の位置を示すマークを断層画像中に表示させることにより、ユーザが関心物画像SGを見つけ易くなるようにしている。
【0088】
断層画像DGを読影するユーザは、表示されている断層画像DG中の関心物画像SG、または領域を、操作パネル54または操作パネル26により指定する。例えば、ユーザは、関心物画像SGそのものや、関心物画像SGを含む領域を指定する。図10(1)に、ユーザが関心物画像SGを含む領域を指定した具体的例を示す。図10(1)では、CC撮影により得られた断層画像DG中の関心物画像SGを含む領域MGをユーザが指定した状態を示している。以下、具体的例として図10に示したように、CC撮影により得られた断層画像DG中で指定された関心物画像SG、または領域の位置(以下、「指定位置」と称する)に対応する位置をMLO撮影により得られた断層画像DG中にマークする場合について説明する。
【0089】
このようにしてユーザが指定した場合は、ステップS106で肯定されてステップS108へ進む。ステップS108では、位置検出部85により指定された指定位置を検出する。関心物画像SGが指定された場合は、関心物画像SGに対応する関心物Sの位置を検出する。また、領域が指定された場合は、領域の位置、または公知の画像解析の手法等を用いて領域内の関心物SG画像を検出し、検出した関心物SG画像に対応する関心物Sの位置を検出する。さらに、次のステップS110では、位置検出部85により、ステップS108で検出した指定位置に対応する他方の撮影中での指定位置を特定する。図10に示した場合では、指定位置がMLO撮影ではどこにあたるのかを特定する。
【0090】
ここで、検出する「位置」とは、撮影面34を基準とした、左右及び高さ方向の三次元位置をいう。CC撮影における関心物Sの位置の検出方法は、限定されないが、ニップルPの位置を基準とした位置(例えば、ニップルPからの距離等)を算出することが好ましい。
【0091】
また、MLO撮影における指定位置の特定方法は、例えば、関心物Sの位置の検出方法と同様に、ニップルPの位置を基準として算出することが挙げられる。また例えば、CC撮影における三次元位置と、MLO撮影における三次元位置との対応関係を表すテーブル、または換算式等を予め得ておき、当該対応関係に基づいて特定することが挙げられる。いずれの方法を用いるかは、特定精度等に基づいて、予め定めておけばよい。
【0092】
MLO撮影での指定位置が特定されると、次のステップS112では、断層画像生成部80により、MLO撮影により得られた複数の放射線画像に基づいて、公知の再構成方法に基づいて所定のスライス厚で断層画像の再構成を行う。
【0093】
次のステップS114では、ステップS110で特定した指定位置に対応するMLO撮影の断層画像を特定する。なお、特定した指定位置そのものに対応する断層画像が生成されていない場合、生成されている断層画像のうち、位置が最も近いものを特定すればよい。
【0094】
次のステップS116では、上述したステップS102と同様に、MLO撮影の断層画像におけるニップルPの高さを特定する特定処理を行った後、ステップS118へ進む。
【0095】
ステップS118では、画像表示制御部84が、ユーザが使用しているディスプレイ(ディスプレイ50またはディスプレイ24)に、MLO撮影による断層画像DGと、ニップルPの高さ及び断層画像のスライス高さ(情報画像IG)と、指定位置を表すマークMGと、を表示させるよう制御する。表示させる画像の具体的例を図10(B)に示す。
【0096】
本実施の形態では、MLO撮影による断層画像DGを表示させる際に、ステップS114で特定した断層画像DGを初期表示させる。これにより、ディスプレイ(ディスプレイ50またはディスプレイ24)には、ユーザが指定した関心物画像SG等が含まれる断層画像DGが初期表示される。なお、このように初期表示させなくてもよいが、その場合、上記ステップS114の処理を省略してよい。
【0097】
なお、乳房Nの状態や圧迫の仕方により、関心物Sの位置が変化してしまうため、一方の撮影(CC撮影)における指定位置が他方の撮影(MLO撮影)において正確に特定できない懸念がある。しかしながら、大まかな位置が予め分かることにより、ユーザは、関心物画像SGを容易に見つけ出すことができるようになる。なお、このような場合を考慮して、指定位置を示すマークMGを、特定した指定位置を含み、特定した指定位置よりも大きな範囲を示すように表示させるようにしてもよい。また、指定位置を示すマークMGを表示させるのではなく、ディスプレイ(ディスプレイ50またはディスプレイ24)の断層画像DGを表示させる画像領域を予め複数の領域(分割領域)に分割しておき、特定した指定位置が含まれる分割領域がいずれであるかを示す情報を表示させるようにしてもよい。
【0098】
このようにしてステップS118の処理が終了すると、ステップS106に戻る。ステップS106で肯定された場合は、本処理を繰り返す。一方、否定された場合は、ステップS120へ進む。ステップS120では、本処理を終了するか否か判断する。他の断層画像を生成する等本処理を終了しない場合は、否定されてステップS100に戻り本処理を繰り返す。一方、終了する場合は、肯定されて本処理を終了する。
【0099】
以上、説明したように本実施の形態では、断層画像生成部80で断層画像DGを生成し、ニップル高さ特定部82により、生成した断層画像DGに基づいて、撮影面34を基準としたニップルPの高さを特定する。画像表示制御部84は、生成した断層画像DGと共に、ニップルPの高さ及び表示されている断層画像DGのスライス高さを示す情報画像IGが表示されるよう、I/F部67を介してディスプレイ(ディスプレイ50、ディスプレイ24)の表示を制御する。
【0100】
このように情報画像IGを断層画像DGと共に表示させることにより、関心物Sの関心物画像SGを見つけたユーザは、当該関心物Sの、ニップルPに対する位置を把握することができる。
【0101】
従って、乳房Nの圧迫状態が変化した場合、例えば、非圧迫状態や、撮影方法が変化した場合でも、関心物Sの位置が把握しやすくなる。
【0102】
なお、本実施の形態では、情報画像IGに断層画像DGのスライス高さを示した印IGDを表示させているが、印IGDは表示させなくてもよい。少なくともニップルPの高さを示した印IGPが表示されることにより、ニップルPの高さをユーザが認識できるようになり、ニップルPを基準とした関心物Sの三次元位置が把握しやすくなる。
【0103】
また、情報画像IG、スライス高さを示した印IGD、及びニップルPの高さを示した印しIGPについても、特に限定されない。なお、これらの表示位置は、乳房画像NGが表示されていない領域とすることが好ましい。
【0104】
なお、本実施の形態では、CC撮影及びMLO撮影を行う場合について説明したがこれに限らず、例えば、MLO撮影に替わって、ML撮影(側面方向撮影)を行ってもよい。また、CC撮影及びMLO撮影に加えて、さらにML撮影を行うようにしてもよい。
【0105】
なお、情報画像IGの表示の仕方は、本実施の形態(図8参照)に限らず、表示されている断層画像DGのスライス高さと、ニップルPの高さとが示されていればよい。また、図8では、ニップルPの高さを点(円)で示しているが、一般にニップルPには厚みがあるため、当該厚みを考慮して、ニップル画像を検出した全ての断層画像DGのスライス高さの範囲を表示することにより、ニップルPの高さ(位置)を示すようにしてもよい。
【0106】
また、本実施の形態では、断層画像DGを用いてニップルPの高さを特定しているが、これに限らず、例えば、生成した断層画像DGに基づいてさらに2次元画像を生成し、生成した2次元画像を用いてニップルPの高さを特定するようにしてもよい。また、断層画像DGを生成するために、電子カセッテ20から取得した放射線画像を用いてニップルPの高さを特定するようにしてもよい。
【0107】
また、特定したニップルPの高さを、生成した断層画像DGや、電子カセッテ20から取得した放射線画像と対応付けて記憶させておいてもよい。なお、このように断層画像DGまたは放射線画像と対応付けてニップルPの高さが記憶されている場合は、上記で説明したニップルPの高さの特定処理は行わず、記憶されているニップルPの高さを取得するようにすればよい。
【0108】
また、本実施の形態では、ニップルPの高さを特定する特定処理において、生成した断層画像DGを表示させ、その中からユーザが断層画像DGを指定する場合について説明したが、ユーザが指定する方法は、これに限らない。例えば、疑似三次元画像を表示させ、当該画像上のポイントをユーザが指定することにより、近傍のスライス位置(高さ)を取得し、当該スライス高さをニップルPの高さとして特定してもよい。
【0109】
また、放射線画像の撮影に用いられる放射線は、特に限定されるものではなく、X線やγ線等を適用することができる。
【0110】
その他、本実施の形態で説明した放射線画像撮影システム1、放射線画像撮影装置10、及び放射線画像処理装置14の構成及び動作は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。また、本実施の形態で説明した放射線画像の撮影の流れや画像表示制御処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0111】
1 放射線画像撮影システム
10 放射線画像撮影装置
14 放射線画像処理装置
24、50 ディスプレイ
26、54 操作パネル
34 撮影面 (検出面)
60 システム制御部
67 I/F部
80 断層画像生成部
82 ニップル高さ特定部
84 画像表示制御部
85 位置検出部
N 乳房、P ニップル、W 被検者
NG 乳房画像、DG 断層画像、IG 情報画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10