特許第5960159号(P5960159)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5960159誤用を防止することを目的とする経口投与用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5960159
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】誤用を防止することを目的とする経口投与用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/02 20060101AFI20160719BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 9/26 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20160719BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20160719BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   A61K47/02
   A61K47/14
   A61K47/18
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/10
   A61K47/38
   A61K9/20
   A61K9/26
   A61K31/437
   A61K31/5513
   A61K31/519
   A61P25/20
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-543787(P2013-543787)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2013-545784(P2013-545784A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011072933
(87)【国際公開番号】WO2012080408
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年10月15日
(31)【優先権主張番号】1060655
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルチネ,アニツク
(72)【発明者】
【氏名】ルージヨ,オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】矢口 佳克
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0196476(US,A1)
【文献】 特表2003−503340(JP,A)
【文献】 特開2009−179603(JP,A)
【文献】 特表2002−531499(JP,A)
【文献】 特開2001−058944(JP,A)
【文献】 特表2011−506279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/02
A61K 9/20
A61K 9/20
A61K 9/26
A61K 31/437
A61K 31/519
A61K 31/5513
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/18
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与用の医薬組成物であって、乱用の対象になり得る有効成分またはその薬学的に許容される塩の1つを含むこと、および前記医薬組成物が、アルコールを場合によって含む水性飲料に導入された場合、後者との接触により視覚的手段を発生させる成分を含むことを特徴とし、前記視覚的手段が、飲料の混濁、不溶性粒子の形成、ならびに発泡、錠剤の浮遊およびこれらの視覚的手段の組合せから選択される少なくとも1つの他の視覚的手段に相当し、飲料の前記混濁を発生させる成分が二酸化チタン粒子を含み、且つ前記不溶性粒子の形成を提供する成分がベヘン酸グリセリルを含む、医薬組成物。
【請求項2】
飲料の混濁を発生させる成分が二酸化チタン粒子からなることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
少なくとも15mgの二酸化チタン粒子を含むことを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの発泡剤を含むことを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
発泡剤が、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、L−リシン炭酸塩、アルギニン炭酸塩、セスキ炭酸ナトリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、アルカリ金属の、アルカリ土類金属のまたはアミノ酸の炭酸塩または重炭酸塩から選択される二酸化炭素発生剤のみから構成され、有利には、二酸化炭素発生剤が炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび架橋ポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つの崩壊剤を、さらに含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトールおよびそれらの混合物から選択される、少なくとも1つのポリオール型の可溶性物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ポリオール型の可溶性物質の量が、組成物の総重量に対して、20から50重量%であることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
口内急速崩壊用であることを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
有効成分が、pH5以下で可溶性であり、ならびに5を上回るpHで透過性である、ポリマーに基づくコーティング剤で被覆されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム誘導体、植物ゴムおよびそれらの誘導体、アルギン酸誘導体、ポリエチレングリコールおよびそれらの誘導体、デンプンおよびそれらの誘導体、シリカおよびそれらの誘導体、ポリメタクリレートならびにアクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーから選択される少なくとも1つの親水性添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
錠剤の形態で提供されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
乱用の対象になり得る有効成分が催眠性化合物であり、催眠性化合物がベンゾジアゼピン、シクロピロロン、ピラゾロピリミジンまたはイミダゾピリジンのカテゴリーに属することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
(1)乱用の対象になり得る有効成分またはその薬学的に許容される塩の1つに基づく被覆顆粒、およびpH5以下で可溶性であり、5を上回るpHで透過性であるポリマーに基づくコーティング剤を含む内相、(2)錠剤がアルコールを場合によって含む水性飲料に導入された場合、飲料の混濁ならびに錠剤の発泡、不溶性粒子の形成、錠剤の浮遊およびこれらの視覚的手段の組合せから選択される少なくとも1つの他の視覚的手段に相当する視覚的手段を発生させる成分を含む外相を含む医薬錠剤であって、飲料の前記混濁を発生させる成分が二酸化チタン粒子を含み、ならびに前記外相が少なくとも1つの崩壊剤および場合により少なくとも1つのポリオール型の可溶性物質をさらに含む、医薬錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、その組成物がその中に存在する有効成分の起こり得る誤用を防止することを可能にする経口医薬剤形の分野である。したがって、本発明は、第三者を犠牲にする乱用を防止することを目的とする経口投与用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による医薬組成物に含めることができる有効成分は、場合によって乱用の対象になり得る化合物である。したがって、次のカテゴリーの有効成分、すなわち、鎮痛薬、抗不安薬または催眠薬を挙げることができる。
【0003】
鎮痛薬のうち、メタドンについて、弱オピエート鎮痛薬のうち、コデインおよびその誘導体、デキストロプロポキシフェンもしくはトラマドールについて、または混合オピオイド鎮痛薬のうち、ブプレノルフィンもしくはペンタゾシンなどのモルヒネアゴニスト/アンタゴニスト、モルヒネならびにペチジン、デキストロモラミド、オキシコドン、フェンタニルおよびタムジェシックなどのモルヒネ様作用薬を挙げることができる。
【0004】
抗不安薬のうち、ジアゼピン、メダゼパム、オキサゼパム、ロラゼパム、ベンゾジアゼピン、メプロバベメート、ヒドロキシジンまたはブスピロンを挙げることができる。
【0005】
抗ヒスタミンフェネルガン、ジゴキシンおよびジギタリンなどのジギタリス様化合物ならびに抗ビタミンKクマリンも挙げることができる。
【0006】
催眠性化合物は、それらの作用持続時間が短いか長いかにかかわりなく、いかなる治療用カテゴリーにも属し得る。例としては、以下のものがある。
−トリアゾラム、ロプラゾラム、ニトラゼパム、ロルメタゼパム、テマゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、ブロチゾラム、シノラゼパム、ハロキサゾラムまたはドキセファゼパムおよびそれらの薬学的に許容される塩、例えば、メシル酸ロプラゾラムなどのそれらの催眠活性が認められたベンゾジアゼピンのカテゴリーの化合物、
−シクロピロロン治療用カテゴリーのゾピクロン、特に(R)−ゾピクロン、
−ピラゾロピリミジン治療用カテゴリーのザレプロン、
−イミダゾピリジン治療用カテゴリーのゾルピデムおよびその薬学的に許容される塩。特に好ましいゾルピデム塩の1つは、ヘミ酒石酸ゾルピデム(または酒石酸ゾルピデムとしても知られている)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、乱用の危険にさらされている有効成分またはその薬学的に許容される塩の1つを含み、患者のために患者の要求に応じた治療の質を保証すると同時に誤用を防ぐことができる、経口投与を目的とする医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による組成物は、期待通りに経口投与の後に有効成分の放出をもたらすことおよびそれが場合によってアルコール性である飲料に導入された場合、後者との接触により視覚的手段を発生させることの両方を可能にする。これらの視覚的手段は、前記飲料が人に、その人に知られずに投与されることを防ぐことを可能にするものであり、その人は、その人の飲料中の異物(すなわち、医薬組成物)の存在によって速やかに視覚的に注意を喚起される。
【0009】
第三者を犠牲にする医薬有効成分の乱用を防ぐことを目的とした経口投与用の医薬組成物の提供は、特許出願WO00/38649において既になされた。記載された組成物により発生する視覚的手段は、錠剤の浮遊、または発泡と場合によって組み合わされた不溶性粒子の形成、またはこれらの視覚的手段の組合せのいずれかに相当する。しかし、下記のような飲料の混濁からなる視覚的手段は、記載も示唆もなされていない。この視覚的手段は、本発明による組成物が経口投与される患者に対して問題を引き起こしたり、不快感をもたらしたりせずに、飲料中の医薬組成物の容易で、速やかな検出を可能にする。
【0010】
(発明の要旨)
より詳細には、本発明の対象は、乱用または誤用の対象になり得る有効成分、好ましくは催眠性、鎮痛性もしくは不安緩解性化合物またはその薬学的に許容される塩の1つを含み、それが、アルコールを場合によって含む水性飲料に導入された場合、飲料の混濁ならびに発泡、不溶性粒子の形成、組成物の浮遊およびこれらの視覚的手段の組合せから選択される少なくとも1つの他の視覚的手段に相当する視覚的手段を発生させる成分を含むことを特徴とする経口投与用の医薬組成物であって、飲料の前記混濁を発生させる成分が二酸化チタン粒子を含む、医薬組成物である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、飲料の前記混濁を発生させる成分は、二酸化チタン粒子からなっている。
【0012】
好ましくは、医薬組成物は、少なくとも15mg、好ましくは少なくとも20mgの二酸化チタン粒子を含む。有利には、医薬組成物は、15mgの二酸化チタン粒子を含む。
【0013】
一実施形態によれば、組成物は、少なくとも1つの発泡剤を含む。
【0014】
他の特定の実施形態によれば、発泡剤は、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、L−リシン炭酸塩、アルギニン炭酸塩、セスキ炭酸ナトリウムおよびそれらの混合物などの、アルカリ金属の、アルカリ土類金属のまたはアミノ酸の炭酸塩または重炭酸塩から好ましくは選択される二酸化炭素発生剤のみから構成され、有利には、二酸化炭素発生剤は炭酸カルシウムである。
【0015】
他の特定の実施形態によれば、医薬組成物は、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸/ステアリン酸グリセリルおよびベヘン酸グリセリル、水素添加植物油およびそれらの誘導体、植物および動物ワックスならびにそれらの誘導体、水素添加ひまし油およびそれらの誘導体、ならびにセチルエステルおよびアルコールから選択される親油性添加剤をさらに含み、好ましくは、親油性添加剤は、ベヘン酸グリセリルである。
【0016】
他の代替形態によれば、医薬組成物は、好ましくはカルボキシメチルスターチナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび架橋ポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つの崩壊剤、より有利には架橋ポリビニルピロリドンをさらに含む。
【0017】
崩壊剤は、組成物の総重量に対して、好ましくは2から15(両端を含む)重量%、より好ましくは4から12(両端を含む)重量%の範囲で変化する。
【0018】
他の代替形態によれば、医薬組成物は、好ましくはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトールおよびそれらの混合物から選択されるポリオール型の可溶性物質をさらに含む。
【0019】
好ましくは、ポリオール型の可溶性物質の量は、組成物の総重量に対して、20から50重量%、より好ましくは30から45重量%である。
【0020】
好ましい実施形態によれば、医薬組成物は、口内急速崩壊用である。
【0021】
他の好ましい実施形態によれば、有効成分は、pH5以下で可溶性であり、5を上回るpHで透過性であるポリマーに基づくコーティング剤で被覆されている。
【0022】
代替形態によれば、医薬組成物は、好ましくはセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム誘導体、植物ゴムおよびそれらの誘導体、アルギン酸誘導体、ポリエチレングリコールおよびそれらの誘導体、デンプンおよびそれらの誘導体、シリカおよびそれらの誘導体、ポリメタクリレートならびにアクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーから選択される少なくとも1つの親水性添加剤をさらに含む。
【0023】
好ましくは、医薬組成物は、錠剤の形態で提供される。
【0024】
好ましい代替形態によれば、有効成分は、より好ましくは100から300μm、有利には100から250μmの平均粒径を有する顆粒の形態である。
【0025】
乱用の対象になり得る有効成分は、好ましくは催眠性化合物であり、催眠性化合物は、好ましくはベンゾジアゼピン、シクロピロロン、ピラゾロピリミジンまたはイミダゾピリジンのカテゴリーに属する。有効成分が催眠性化合物である特定の場合において、それは、好ましくはトリアゾラム、ロプラゾラム、ニトラゼパム、ロルメタゼパム、テマゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、ブロチゾラム、シノラゼパム、ハロキサゾラム、ドキセファゼパム、ゾピクロン、(R)−ゾピクロン、ザレプロンまたはゾルピデムおよびそれらの薬学的に許容される塩から選択される。より好ましくは、催眠性化合物は、ゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩の1つである。よりいっそう好ましくは、ゾルピデム塩は、ヘミ酒石酸ゾルピデムである。
【0026】
本発明はまた、(1)乱用の対象になり得る有効成分またはその薬学的に許容される塩の1つ、特に催眠性化合物に基づく被覆顆粒、およびpH5以下で可溶性であり、5を上回るpHで透過性であるポリマーに基づくコーティング剤を含む内相、(2)錠剤がアルコールを場合によって含む水性飲料に導入された場合、飲料の混濁ならびに錠剤の発泡、不溶性粒子の形成、錠剤の浮遊およびこれらの視覚的手段の組合せから選択される少なくとも1つの他の視覚的手段に相当する視覚的手段を発生させる成分を含む外相を含む医薬錠剤であって、飲料の前記混濁を発生させる成分が二酸化チタン粒子を含み、好ましくは二酸化チタン粒子からなり、前記外相が少なくとも1つの崩壊剤および場合により少なくとも1つのポリオール型の可溶性物質をさらに含む、医薬錠剤に関する。
【0027】
本発明による組成物は、起こり得る誤用時に明らかにされることを意図した成分の存在による悪影響を受けない有効成分の放出および作用を有するという利点を示す。
【0028】
本発明の文脈において、医薬組成物は、持続放出、制御放出または好ましくは即時放出医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の特定の形態による被覆顆粒の調製の主要な段階を示す(FABは空気流動層を意味する。)。
図2】本発明の特定の形態による錠剤の調製の主要な最終段階を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の特定の形態によれば、組成物は、口内急速崩壊用である(または口腔内崩壊組成物としても知られている)。また有利には、本発明による組成物は、それが飲料に導入された場合にその誤用防止特性を示すが、口内ではそれらを示さない。
【0031】
本発明の文脈において、「視覚的手段」という用語は、アルコールを場合によって含む水性飲料中の本発明による組成物の存在を示し、例えば、混濁の、発泡の、色素の、飲料の表面における組成物の浮遊の、飲料の表面における、容器の縁における、飲料中および/または容器の底における不溶性粒子の形成の形態をとり得る要素を意味する。
【0032】
水性飲料は、透明、半透明または不透明であり得、着色されているまたは無色であり得、アルコールを場合によって含み得る。それは、特にコーヒー、茶、ワイン、蒸留酒、シャンパン、日本酒、アルコールの添加を場合によって伴う、コーラ型の発泡性清涼飲料などの任意の発泡性清涼飲料、アルコールを含むもしくは含まない、他の炭酸飲料、または果汁に、アルコールに基づくカクテルもしくは液体混合物などに相当する。本発明による組成物は、透明または半透明飲料に特に適している。
【0033】
本発明による経口投与用の組成物は、錠剤または任意の他の固形剤形の形態で提供する。本発明による組成物は、従来型(単層)錠剤または特に2もしくは3層の多層錠剤の形態で提供することができる。医薬組成物が制御放出または持続放出用である場合、組成物は、多層錠剤であり、1つの層が他の層と異なる特定の崩壊時間を示すことが可能である。組成物は、従来の硬ゼラチンカプセル(散剤を含むもしくは微顆粒剤を含む)または散剤もしくは顆粒剤を含むサシェ剤の形態でもあり得る。好ましくは、本発明による組成物は、錠剤である。
【0034】
本発明による医薬組成物は、従来の経口投与に許容できるサイズを有する。したがって、800mg未満、好ましくは500mg未満、より特定すれば400mg未満の重量を有する組成物(例えば、100mg、150mg、200mg、250mgまたは400mgの重量を有する組成物など)が優先される。
【0035】
本発明による組成物の成分の少なくとも1つは、組成物がアルコールを場合によって含む水性飲料に導入された場合に飲料の混濁を発生させる。飲料のこの混濁は、組成物中の二酸化チタン(TiO)の存在によって特に有利に得られる。
【0036】
TiOは、より詳細には白色である。それは、粒子の形態で提供される。これらの粒子は、一般的に水および有機溶媒に不溶性である。組成物、好ましくは錠剤が飲料中で崩壊すると、組成物中に存在するTiO粒子が飲料の消費者にとりわけ目に見える飲料中懸濁液を形成する。
【0037】
TiO粒子は、無味無臭の白色粉末の形態である。粒子の寸法は、約0.3μm、一般的に最大限でも1μmであり、しばしば約100μmの凝集体を形成する。二酸化チタンは、特に、Titanium Dioxide 3328(登録商標)の名称のもとでBrenntagにより販売されている。TiO粒子は、好ましくは10m/gを超え、有利には200m/g未満の比表面積を示す。さらに詳細には、TiO粒子の比表面積は、10m/gを超え、15m/g未満である。
【0038】
より特定すれば、特に錠剤の形態の本発明による組成物は、少なくとも15mgまたは少なくとも20mgのTiO粒子(例えば、錠剤当たり15、30または60mgなど)を含む。この最小限の量は、飲料を含むコップまたはカップなどの容器における検出を可能にする(飲料の容積は多くて250ml、好ましくは200または75ml、さらに4clである。)。組成物において、二酸化チタン粒子の量は、組成物の総重量に対して、好ましくは8から30重量%である。有利には、二酸化チタン粒子の量は、組成物の総重量に対して、好ましくは10から25重量%である(例えば、12、15または20%など)。
【0039】
本発明の特定の形態によれば、視覚化手段は、混濁および発泡に少なくとも相当する。この形態によれば、本発明による組成物は、乱用の対象になり得る有効成分、好ましくは催眠性、鎮痛性もしくは不安緩解性化合物またはその薬学的に許容される塩の1つ、二酸化チタン粒子および少なくとも1つの発泡剤、好ましくは二酸化炭素を発生する物質のみから構成される発泡剤を含む。
【0040】
したがって、他の視覚化手段の1つは、発泡である(組成物がアルコールを場合によって含む水性飲料に導入される場合)。発泡は、一般的に下記のような発泡剤によって得られる。錠剤の(またはその崩壊粒子の)浮遊は、発泡によって場合によって得ることができる。
【0041】
発泡剤は、二酸化炭素を発生する物質および薬学的に許容される酸化合物からなる、または飲料の酸性が発泡を可能にする、二酸化炭素を発生する物質のみからなる、いずれかの発泡対の形態で提供することができる。
【0042】
二酸化炭素を発生する物質は、通常アルカリ金属の、アルカリ土類金属のもしくはアミノ酸の炭酸塩または重炭酸塩である。例えば、二酸化炭素を発生する物質として、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、L−リシン炭酸塩、アルギニン炭酸塩、セスキ炭酸ナトリウムまたはそれらの混合物を挙げることができる。二酸化炭素を発生する物質として、炭酸カルシウムが優先される。
【0043】
薬学的に許容される酸化合物は、酸無水物、モノカルボン酸、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸部分塩である。薬学的に許容される酸化合物は、より特定すれば、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、フマル酸、ニコチン酸、アセチルサリチル酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、無水グルタル酸、無水クエン酸、マレイン酸、マロン酸、クエン酸一ナトリウムおよび無水コハク酸から選択することができる。
【0044】
発泡発生の組合せとして、炭酸カルシウムおよび無水クエン酸からなる発泡の組合せが優先される。
【0045】
二酸化炭素を発生する物質は、二酸化炭素を発生するいくつかの上述の物質の混合物により構成され得る。
【0046】
発泡剤において、酸化合物の含量は、一般的に酸化合物のモル数と二酸化炭素発生剤のモル数の比が1から2までとなるように選択される。
【0047】
好ましい形態によれば、発泡剤は、二酸化炭素を発生する物質のみから構成されている。この形態によれば、本発明による組成物は、薬学的に許容される酸化合物を欠いている。この形態によれば、二酸化炭素を発生する物質は、上で述べたものの1つであり得、好ましくは炭酸カルシウムである。
【0048】
これは、誤用の状況で用いられる飲料の大多数が酸性(7未満のpH)であり、したがって、それらが、二酸化炭素を発生する物質が存在する場合にのみ発泡が起こることを可能にすることが見いだされたためである。さらに、この形態は、口は一般的に非酸性pHであるので、組成物の経口投与時に口内で起こる発泡の現象を有さないという利点を示す。
【0049】
この状況において、発泡剤の量は、組成物の総重量に対して、好ましくは5から25重量%、有利には10から20(両端を含む)重量%、さらに詳細には15重量%である。
【0050】
組成物は、たとえ錠剤が浮かなくてもまたは直ちに浮かなくても、目に見える不溶性粒子を放出し得る。
【0051】
特定の形態によれば、飲料の表面および/または容器の壁上に見える二酸化チタン以外の不溶性粒子の形成を可能にするために、組成物または特に錠剤は、1つまたは複数の親油性添加剤も含む。
【0052】
親油性添加剤のうち、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸/ステアリン酸グリセリルおよびベヘン酸グリセリル、水素添加植物油およびそれらの誘導体、植物および動物ワックスならびにそれらの誘導体、水素添加ひまし油およびそれらの誘導体、ならびにセチルエステルおよびアルコールを挙げることができる。親油性添加剤のうち、ベヘン酸グリセリルが優先される。
【0053】
組成物中の親油性添加剤の量は、特に、有効成分の、組成物中に存在する他の成分のおよびそれらの各量の関数として広い範囲内で変化し得る。大きさの程度を示すと、また有利には、親油性添加剤の量は、組成物の総重量に対して、0.05から15(両端を含む)重量%、好ましくは0.1から6重量%、有利には0.2から5(両端を含む)(例えば、0.25、3または4)重量%まで変化し得る。
【0054】
組成物、特に錠剤は、液体中でまたはその表面において、特に発泡の作用のもとで崩壊し得る。崩壊が起こるとき、塊の形成が認められ、塊が浮き、おそらく容器の壁に付着した状態になりおよび/または液体中に懸濁した状態になる。
【0055】
本発明の特定の形態によれば、視覚的手段は、少なくとも混濁、発泡および不溶性粒子の形成に相当する。この形態によれば、本発明による組成物は、乱用の対象になり得る有効成分、好ましくは催眠性、鎮痛性もしくは不安緩解性化合物またはその薬学的に許容される塩の1つ、二酸化チタン粒子、少なくとも1つの発泡剤、好ましくは二酸化炭素を発生する物質のみから構成される発泡剤および少なくとも1つの親油性添加剤を含む。
【0056】
したがって、不溶性粒子は、本発明による組成物中の親油性添加剤の存在によって得ることができる。
【0057】
組成物、特に錠剤は、任意の飲料との接触により出現する粘性をさらに示し得る。この特性は、組成物の、特に錠剤の膨潤にも反映される発泡によりおそらく発生するガスの補足を可能にする。この時に生ずる密度の低下は、飲料の表面における錠剤の保持をもたらすことを可能にし、それにより、組成物のまたはその崩壊粒子の浮遊を可能にする。そのような粘性は、1つまたは複数のゲル化性(gelifiable)化合物によって得ることができる。
【0058】
ゲル化性化合物は、組成物の(特に錠剤の)膨潤を、および発泡剤により生成したガスの補足を場合によってもたらす1つまたは複数の親水性添加剤を含み得る。ゲル化性化合物は、親油性および親水性添加剤の混合物に相当し得る。
【0059】
本発明による組成物は、さらに少なくとも1つの親水性添加剤を場合によって含む。親水性添加剤のうち、セルロースの誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(50から1250kDaの分子量)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(10から1500kDaの分子量)、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、植物ゴムおよびそれらの誘導体、アルギン酸誘導体、ポリエチレングリコールおよびそれらの誘導体、デンプンおよびそれらの誘導体、シリカおよびそれらの誘導体、ポリメタクリレートならびにアクリル酸およびメタクリル酸のコポリマーを挙げることができる。
【0060】
ゲル化性化合物、親水性添加剤または親油性添加剤の成分の少なくとも1つは、アルコールに対する小さい溶解度を有するように選択することができる。
【0061】
したがって、アルコール性液体または45より大きい度数を有する飲料に対する小さい溶解度を有する本発明による組成物、特に錠剤は、液体または飲料に不溶性粘性粒子の懸濁液の外観を与える。
【0062】
最後に、着色剤などの他の視覚的手段を本発明による組成物に有利に加えることができる。これは、飲料が半透明飲料または果汁である場合に特に有用である。したがって、この着色剤は、飲料を着色し得る。着色剤は、一般的に黒色でもなく白色でもない。
【0063】
本発明による錠剤に用いることができる着色剤のうち、インジゴチン、コチニールレッド、オレンジイエローS、アルラレッドAC、酸化鉄、ククルミン、リボフラビン、タルトラジン、キノリンイエロー、アゾルビン、アマランス、カルミン、エリスロシン、レッド2G、パテントブルーV、ブリリアントブルーFCF、クロロフィル、クロロフィル第二銅錯体、グリーンS、カラメル、ブリリアントブラックBN、木炭、ブラウンFKおよびHT、カロテン、アナトーエキス、パプリカエキス、リコピン、ルテイン、カンタキサンチン、ビートルートレッド、アントシアニン、リソールルビンBKまたは消費に適する他の着色剤を挙げることができる。
【0064】
他の添加物は、錠剤の組成を有利に完成させ得る。
【0065】
したがって、商品名Primojel(登録商標)のもとにAvebeにより販売されている製品もしくは商品名Explotab(登録商標)のもとにJRS Pharmaにより販売されている製品などのカルボキシメチルスターチナトリウム(500から1000kDaの分子量)、クロスカルメロースナトリウムという用語によっても表される架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、または商品名Kolidon(登録商標)CLのもとにBASFにより販売されている製品などの架橋ポリビニルピリドンもしくはクロスポビドンなどの崩壊剤を加えることができる。架橋ポリビニルピロリドンは極めて特定すれば好ましい。
【0066】
最後に、錠剤の技術的調製により、以下の錠剤成形剤も導入することになり得る。
−ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリル、400から7000000の分子量を有するポリエチレングリコール、水素添加ひまし油、ベヘン酸グリセリル、一、二もしくは三置換グリセリドまたはJRS PharmaによりPruv(登録商標)の名称のもとに販売されているフマル酸ステアリルナトリウムなどの滑沢剤、
−コロイド状シリカまたは任意の他のシリカ、例えば、Aeosilの商品名のもとにDegussaにより販売されている製品などの流動促進剤、
−デンプンなどの結合剤、緩衝剤、吸収剤、ラクトースなどの賦形剤および任意の他の薬学的に許容される添加物。
【0067】
上で示したように、本発明の特定の形態によれば、組成物は、口内急速崩壊用である(または口腔内崩壊組成物としても知られている)。また有利には、本発明による組成物は、それが飲料に導入された場合にその誤用防止特性を示すが、口内ではそれらを示さない。
【0068】
「口内急速崩壊」という用語は、3分未満に、好ましくは30秒未満(例えば、15、20または30秒で)に崩壊する錠剤を意味すると理解される。崩壊は、Sotax DT3型の装置を用いて欧州薬局方のセクション2.9.1に記載されている試験に準拠して測定することができる(試験は、ディスク(複数可)を用いてまたは用いずに行うことができ、好ましくは、ディスクはフィルムコート錠剤の形態の組成物について用いられるが、試験は、好ましくは口腔内崩壊錠剤の形態についてはディスクを用いずに行う)。
【0069】
本発明による組成物は、上で述べたような少なくとも1つの崩壊剤、特に、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムまたは架橋ポリビニルピロリドン、より有利には架橋ポリビニルピロリドンを含む。
【0070】
組成物中の崩壊剤の量は、特に、有効成分の、組成物中に存在する他の成分のおよびそれらの各量の関数として、広い限界内で変化し得る。大きさの程度を示すと、また有利には、崩壊剤の量は、組成物の総重量に対して、2から15(両端を含む)重量%、好ましくは4から12(両端を含む)重量%、有利には7から10(両端を含む)(例えば、10)重量%まで変化し得る。
【0071】
本発明による組成物は、ポリオール(または糖アルコール)型の少なくとも1つの可溶性物質をさらに含み得る。ポリオール(または糖アルコール)は、カルボニル基(すなわち、アルデヒドまたはケトン)が還元されて第一級または第二級ヒドロキシル基となる糖の水素添加形である。特に、希釈可溶性物質は、13個未満の炭素原子、好ましくは5個から12個の炭素原子(両端を含む)のポリオールから選択され、このポリオールは、好ましくはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトールおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、マンニトールを用いる。前記可溶性物質は、顆粒、粉末または顆粒および粉末の混合物の形態で用いる。顆粒は、一般的に100から500マイクロメートルの平均直径を示し、粉末の形態において、可溶性物質は、一般的に、100マイクロメートル未満、特に10から90マイクロメートルの平均直径を示す。
【0072】
組成物中の可溶性物質の量は、特に、有効成分の、組成物中に存在する他の成分のおよびそれらの各量の関数として、広い限界内で変化し得る。大きさの程度を示すと、また有利には、結合特性を有する希釈可溶性物質の量は、組成物の総重量に対して、20から50(両端を含む)重量%、好ましくは30から45(両端を含む)重量%(例えば、31、32、33、34、35、42および43)重量%まで変化し得る。
【0073】
したがって、組成物が口内急速崩壊用である場合、組成物は、さらに有利には少なくとも1つの崩壊剤および少なくとも1つのポリオール型の賦形剤を含む。
【0074】
本発明の代替形態によれば、本発明による組成物中の有効成分は、有効成分の不快な味を隠すために被覆、カプセル封入および/または前処理する。これは、ゾルピデム、特にゾルピデム酒石酸塩のような有効成分が隠さなければならない可能性がある苦い味を有するためである。特に造粒、場合によって流動化空気層中のコーティングなどの様々な技術を、味が患者にとって不快である有効成分の味を隠すという状況において用いることができる。これらの技術に関連して用いられる味を隠すための化合物は、ポリマー、すなわち、セルロース誘導体(HPC、HPMC、EC)、メタクリル酸誘導体(Eudragit範囲)およびポリ酢酸ビニル誘導体であり得る。超臨界CO相法によるまたは単純もしくは複合コアセルベーション法によるマイクロカプセル化を構想することも可能である。同じ上述のマスキングポリマーは、キトサン、アルギン酸塩またはゼラチン型の他の添加剤とともに用いることができる。「熱」(噴霧乾燥)または「冷」(噴霧冷却)噴霧法も有効成分の味を隠すために用いることができる。「噴霧冷却」技術は、WO2004/058137に記載されており、脂肪マトリックスを融解し、有効成分をその中に組み込むことからなる。後者は、脂肪酸または脂肪酸のエステルまたは脂肪アルコールまたはワックスまたはそれらの混合物からなる脂肪相中に溶解または分散する。溶融混合物は、その後、蠕動ポンプにより二流体ノズルに送られ、そこで多かれ少なかれ微細な液滴(適用されるパラメーターによって)に霧化される。最終的に、液滴は、噴霧チャンバー内で冷空気の気流により冷却され、脂肪マトリックス全体に分散した有効成分を含む固形の顆粒に変換される。熱溶融コーティング法の使用を構想することも可能である。熱溶融コーティング法は、特に、(a)結合剤、好ましくは親水性ポリマーまたは熱融合性物質(セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース)、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ショ糖、ゴム、デンプン、ゼラチンもしくはマクロゲル(ポリエチレングリコール)など)から選択される親水性物質の存在下で塊状となった有効成分粒子からなる粒状中心、ならびに(b)脂肪マトリックス(ステアリン酸、パルミチン酸もしくはミリスチン酸、純粋もしくは混合物として、および/またはそれらの対応する脂肪アルコールなど)からなる前記粒状中心のコーティング層を含む有効成分組成物を調製することにあるものである。この技術は、特に、出願会社により2010年4月21日に出願された特許出願FR1053034に記載されている。
【0075】
これらの技術は、減速されない酸性媒体への有効成分の溶解を可能にすると同時に適切な味のマスキングを有する医薬組成物を得ることを可能にする。
【0076】
本発明の特定の実施形態によれば、有効成分は、pH5以下で可溶性であり、5を上回るpHで透過性であるポリマーに基づくコーティング剤で被覆されている。そのようなものとして、Eudragit(登録商標)E100(顆粒の形態の)またはEudragit(登録商標)EPO(粉末の形態の)などの商標Eudragit(登録商標)EのもとにEvonik(登録商標)により販売されたE型のアミノ−メタクリレートコポリマーを特に挙げることができる。粉末の形態のアミノ−メタクリレートコポリマー(Eudragit(登録商標)EPOなど)が極めて特別に優先される。
【0077】
本発明による組成物に加わる有効成分は、約100μmの平均直径を有する結晶の形態で一般的に提供される。有利には、特にそれが被覆される場合、好ましくは100から300μm、有利には100から250μmの平均粒径を示すために有効成分をあらかじめ粒状にする。造粒は、例えば、従来の技術に従って、異なる化合物を混合し、均一な粉末を得るために、アルコール性、水性または水性/アルコール性溶液で湿らせ、次いで、流動化空気層中で所定の残存水分百分率が得られるまで乾燥することにより実施することができる。100から300μm、有利には100から250μmの平均粒径を示す顆粒を回収するために、その後、顆粒を好ましくはふるい分けする。溶液は、有利には、例えば、ポリビニルピロリドン(28から1500kDaの分子量)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(もしくはハイプロメロース)、上述のE型のアミノ−メタクリレートコポリマーまたは任意の他の薬学的に許容される結合剤などの結合剤を含む。アミノ−メタクリレートコポリマーを用いることが好ましい。
【0078】
有効成分のコーティングは、例えば、上で得られた有効成分の顆粒を上で定義したコーティング剤を含む溶液と混合し、その後、流動化空気層中で乾燥することによるなどの従来の技術により実施する。したがって、溶液は、pH5以下で可溶性であり、5を上回るpHで透過性である少なくとも1つのポリマーからなるコーティング剤を含み、さらに、それは、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの可塑剤、少なくとも1つのブロッキング防止剤、少なくとも1つの溶媒および好ましくはこれらの成分の混合物を含む。好ましくは、顆粒上に堆積させる溶液の乾燥物質の量は、被覆顆粒の総重量に対して、50から99重量%、有利には60から70(両端を含む)重量%である。好ましくは、溶液中のコーティング剤の量は、被覆顆粒の総重量に対して、50から70重量%、より好ましくは60から65重量%である。
【0079】
本発明による錠剤は、当業者に知られている従来の錠剤成形技術により、粉末を混合し、および/または例えば、ロータリープレスを用いて造粒することにより得ることができる。したがって、本発明による組成物の成分は、後に場合によって乾燥し、次いで錠剤成形するために、溶液中でまたは粉末および/もしくは顆粒の形態のいずれかで互いに混合する。錠剤成形に必要な混合物は、成分の乾式造粒または直接混合により得ることができる。したがって、成分は、上で示したものであり、特に有効成分、上述のように、特に場合によって被覆、カプセル封入および/または前処理された顆粒の形態のもの、二酸化チタン粒子、誤用に備える1つまたは複数の他の成分ならびに例えば、崩壊剤、ポリオール型の可溶性物質、または滑沢剤、流動促進剤および/もしくは結合剤などの本文において上で示したものなどの場合による他の成分である。
【0080】
錠剤は、円柱状、レンズ状、球状、卵形または容易な投与および容易な嚥下を可能にする他の形状をとり得る。
【0081】
さらに、フィルムコーティングを本発明による錠剤に施すことができ、フィルムコーティングは、それにより錠剤の外表面上に見いだされる。このフィルムコーティングは、特に、例えば、光に対する有効成分の保護を目的とするまたは組成物の内相に存在する着色剤を隠すことを目的とする。このコーティングは、組成物が口腔内崩壊性でない場合、より特定すれば構想することができる。このフィルムは、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのポリマー材料および二酸化チタンなどの乳白剤を含む基材を有し得る。
【0082】
このフィルムは、ポリエチレングリコール(例えば、400型の)などの可塑剤および/または滑沢剤をさらに添加し、酸化鉄またはインジゴチンレーキなどの着色剤により場合によって着色することができる。
【0083】
乱用することができる有効成分は、本発明の特定の形態によれば、催眠性化合物であり、催眠性化合物は、好ましくはベンゾジアゼピン、シクロピロロン、ピラゾロピリミジンまたはイミダゾピリジンのカテゴリーに属する。これは、より特定すればトリアゾラム、ロプラゾラム、ニトラゼパム、ロルメタゼパム、テマゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、ブロチゾラム、シノラゼパム、ハロキサゾラム、ドキセファゼパム、ゾピクロン、(R)−ゾピクロン、ザレプロンまたはゾルピデムおよびそれらの薬学的に許容される塩から選択される。特に、催眠薬は、ゾルピデムまたはその塩の1つ、より詳細にはヘミ酒石酸ゾルピデム(または酒石酸ゾルピデムとしても知られている)である。他の形態によれば、催眠薬は、(R)−ゾピクロンである。
【0084】
必要な有効成分の量は、通常投与されるものと同じである。
【0085】
例として、ヘミ酒石酸ゾルピデムの量は、2から10mg、例えば、2.5、5および10mgなどである。
【0086】
本発明による錠剤の特定の実施形態は、例えば、(1)上述のような乱用の対象になり得る有効成分またはその塩の1つ、特に催眠性化合物に基づく被覆顆粒、およびpH5以下で可溶性であり、5を上回るpHで透過性であるポリマーに基づくコーティング剤を含む内相、(2)錠剤がアルコールを場合によって含む水性飲料に導入された場合、飲料の混濁ならびに錠剤の発泡、錠剤の浮遊、不溶性粒子の形成およびこれらの視覚的手段の組合せから選択される少なくとも1つの他の視覚的手段に相当する視覚的手段を発生させる成分を含む外相を含む錠剤であって、飲料の前記混濁を発生させる成分が二酸化チタン粒子を含み、好ましくは二酸化チタン粒子からなり、前記外相が少なくとも1つの崩壊剤および場合により少なくとも1つのポリオール型の可溶性物質をさらに含む、錠剤である。
【0087】
好ましくは、外相は、二酸化チタン粒子、少なくとも1つの親油性添加剤および好ましくは二酸化炭素を発生する物質を含む。有利には、外相またはより一般的には錠剤は、薬学的に許容される酸化合物を欠いている。
【0088】
特定の形態によれば、本発明による錠剤は、二酸化チタン粒子、炭酸カルシウムおよびベヘン酸グリセリルを含み、薬学的に許容される酸化合物を欠いている外相を含む。
【0089】
この特定の実施形態は、上述の理由のために特に有利である。すなわち、本発明による錠剤は、飲料であって、アルコールを場合によって含むものである飲料に導入された場合に、後者との接触により視覚的手段を発生させることができ、飲料に導入された場合には、その誤用防止特性を示すが、口内ではそれらを示さず、有効成分の放出および作用は、経口投与された場合に、予想通りである。有効成分の放出および作用は、起こり得る誤用時に示されることを意図した成分の錠剤中の存在による悪影響を受けない。
【0090】
特定の形態によれば、本発明による錠剤は、ゾルピデムまたはその薬学的に許容される塩の1つが含まれている場合に0.1から40重量%、好ましくは1から5重量%の有効成分を含み、錠剤当たり少なくとも15mgの二酸化チタン粒子を含み、5から25重量%、好ましくは10から20重量%の発泡剤を含み、0.05から15%(両端を含む)、好ましくは0.1から6%の親油性添加剤を含み、2から15%(両端を含む)、好ましくは4から12%(両端を含む)の崩壊剤を含み、20から50%、好ましくは30から45%のポリオール型の可溶性物質を含み、百分率は、錠剤の総重量を基準にして表す。
【0091】
本発明の他の対象は、本発明による少なくとも1つの組成物のそれを必要とする対象への経口投与を含む、治療上の処置方法である。ゾルピデムなどの催眠性有効成分の場合、治療法は、不眠症、特に時折の、一過性のまたは慢性の不眠症を特に治療することを目的とする。
【0092】
最後に、本発明は、治療上の処置方法に用いる本発明による組成物に関し、前記組成物は、その乱用を防止することを可能にする。ゾルピデムなどの催眠性有効成分の場合、治療上の処置は、特に、不眠症、特に時折の、一過性のまたは慢性の不眠症の治療である。
【0093】
対象は、より特定的には哺乳動物、極めて特定すればヒトである。
【0094】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、その範囲を限定することを望むものではない。
【実施例】
【0095】
実施例1
口腔内崩壊酒石酸ゾルピデム錠剤、用量10mg
製造法(図1および2参照)
酒石酸ゾルピデムを流動層中で無水コロイドシリカと混合する。その後、混合物を流動層中でアミノ−メタクリレートコポリマーの懸濁液を用いて造粒する。この懸濁液は、アミノ−メタクリレートコポリマーの供給者の推奨に従って、アミノ−メタクリレートコポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸および水和コロイドシリカを精製水中に分散させることにより調製する。
【0096】
酒石酸ゾルピデム/無水コロイドシリカ混合物は、上部噴霧器によりアミノ−メタクリレートコポリマーに基づく懸濁液を噴霧し、次いで乾燥することにより造粒する。
【0097】
得られた乾燥顆粒は、100μmから250μmのサイズを有する粒子を選択するように、選別し、ふるい分けする。
【0098】
選択された顆粒は、その後、ウルスター(Wurster)カラムを装着した流動層中でアミノ−メタクリレートコポリマーのこの同じ懸濁液で被覆する(底部噴霧器噴霧工程)。懸濁液の量が堆積されたならば、顆粒を乾燥し、次いで、100μmから250μmのサイズを有する粒子のみを保持するように、ふるい分けする。
【0099】
【表1】
【0100】
得られた被覆顆粒をその後、タンブラーミキサーでマンニトール、架橋ポリビニルピロリドン、アスパルテーム、二酸化チタン粒子、ベヘン酸グリセリルおよび炭酸カルシウムを含む外相と混合する。最後に、混合物をタンブラーミキサーでフマル酸ステアリルナトリウムを用いて滑沢処理する。
【0101】
用いるマンニトールは、粉末(Pearitol 160C)の、顆粒(Parteck M200)のまたは粉末と顆粒の混合物の形態であり、特に、60/40−100/0の範囲で変化する粉末/顆粒重量百分率の比を試験した。
【0102】
得られた最終混合物をロータリー打錠プレスで錠剤化する。
【0103】
組成は、表1に詳細に記載する。
【0104】
崩壊は、Sotax DT3型の装置を用いて欧州薬局方のセクション2.9.1に記載されている試験に準拠して測定した。試験は、ディスクを用いずに行った。得られた結果は、13秒である。
【0105】
誤用防止の有効性は、錠剤を各種飲料に導入することにより評価した。得られた結果を以下の表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
実施例2
口腔内崩壊酒石酸ゾルピデム錠剤、用量5mg
5mgで投与する口腔内崩壊酒石酸ゾルピデム錠剤を実施例1で述べたのと同じ製造法により製造する。
【0108】
組成は、以下の表3に詳細に記載する。
【0109】
【表3】
【0110】
崩壊は、Sotax DT3型の装置を用いて欧州薬局方のセクション2.9.1に記載されている試験に準拠して測定した。試験は、ディスクを用いて行った。得られた結果は、14秒である。
【0111】
実施例3
口腔内崩壊酒石酸ゾルピデム錠剤、用量2.5mg
2.5mgで投与する口腔内崩壊酒石酸ゾルピデム錠剤を実施例1で述べたのと同じ製造法により製造する。
【0112】
組成は、以下の表4に詳細に記載する。
【0113】
【表4】
【0114】
崩壊は、Sotax DT3型の装置を用いて欧州薬局方のセクション2.9.1に記載されている試験に準拠して測定した。試験は、ディスクを用いずに行った。得られた結果は、14秒である。
【0115】
実施例4
フィルムコート酒石酸ゾルピデム錠剤、用量10mg
製造法:
酒石酸ゾルピデム、ラクトース、微結晶セルロースおよびカルボキシメチルスターチナトリウムを混合造粒機で混合し、次いで、水性ヒプロメースベースの溶液を用いて造粒する。
【0116】
得られた顆粒をその後、流動層に移し、乾燥する。次いで、乾燥顆粒を選別する。得られた選別粒子をタンブラーミキサーでステアリン酸マグネシウムを用いて滑沢処理し、次いで、二酸化チタン、ベヘン酸グリセリル、着色剤および炭酸カルシウムである誤用防止剤を混合物に加える。次いで、合わせたものをタンブラーミキサーで均質化する。
【0117】
最後に、得られた混合物をロータリー打錠プレスで錠剤化する。
【0118】
崩壊は、Sotax DT3型の装置を用いて欧州薬局方のセクション2.9.1に記載されている試験に準拠して測定した。試験は、ディスクを用いて行った。得られた結果は、1分12秒である。
【0119】
組成は、以下の表5に詳細に記載する。
【0120】
【表5】
【0121】
誤用防止の有効性は、錠剤を各種飲料に導入することにより評価した。得られた結果を以下の表6に示す。
【0122】
【表6】
【0123】
実施例5
口腔内崩壊酒石酸ゾルピデム錠剤、用量2.5mg、5.0mgおよび10.0mg
そのように投与する口腔内崩壊酒石酸ゾルピデム錠剤を実施例1で述べたのと同じ製造法により製造する。
【0124】
組成は、以下の表7、8および9に詳細に記載する。
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
【表9】
【0128】
崩壊は、Sotax DT3型の装置を用いて欧州薬局方のセクション2.9.1に記載されている試験に準拠してこれらの錠剤について測定した。試験は、ディスクを用いずに行った。得られた結果は、これらの3つの組成物について約17秒である。
【0129】
誤用防止の有効性は、これらの錠剤を各種飲料に導入することにより評価した。得られた結果は、3つの組成物について同様である。3つの組成物についてそのように得られた結果を以下の表10に示す。
【0130】
【表10】
【0131】
実施例6
口腔内崩壊ゾピクロン錠剤、用量7.5mg
7.5mgで投与する口腔内崩壊ゾピクロン錠剤を実施例1で述べたのと同じ製造法により製造する。
【0132】
組成は、以下の表11に詳細に記載する。
【0133】
【表11】
【0134】
誤用防止の有効性は、これらの錠剤を各種飲料に導入することにより評価した。得られた結果を以下の表12に示す。
【0135】
【表12】
図1
図2