【実施例】
【0033】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、明細書全体から把握できる発明及び実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0034】
(実施例1)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が22at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0035】
原料が溶解した後、溶湯温度を990℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を30mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、200°C/minの冷却速度となった。
【0036】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡で観察した。その結果、CuにGaが固溶したζ相中にGa濃度が高いγ相(偏析相、異相)が微細かつ均一に分散しており、そのγ相のサイズは3μmであり、D
≦7×C−150の関係式を満たしていた。酸素濃度は10wtppm未満であった。また、不純物含有量は、P:1.5wtppm、Fe:2.4wtppm、Ni:1.1wtpm、Ag:7wtppmであった。このように酸素量、不純物含有量が少なく、γ相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
また、X線回折法で観察した結果、ζ相とγ相のピークしか観察されなかったことから、この鋳造組織はこの2相のみからなることを確認した。
【0037】
【表1】
【0038】
(実施例2)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が22at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0039】
原料が溶解した後、溶湯温度を990℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を90mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、600°C/minの冷却速度となった。
【0040】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡で観察した。その結果、CuにGaが固溶したζ相中にGa濃度が高いγ相(偏析相、異相)が微細かつ均一に分散しており、そのγ相のサイズは2μmであり、D
≦7×C−150の関係式を満たしていた。酸素濃度は10wtppmであった。また、不純物含有量は、P:1.3wtppm、Fe:2.1wtppm、Ni:0.9wtpm、Ag:5.8wtppmであった。
このように酸素量、不純物含有量が少なく、γ相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
また、X線回折法で観察した結果、ζ相とγ相のピークしか観察されなかったことから、この鋳造組織はこの2相のみからなることを確認した。
【0041】
(実施例3)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が25at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0042】
原料が溶解した後、溶湯温度を990℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を30mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、200°C/minの冷却速度となった。
【0043】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図1に示す。この結果、CuにGaが固溶したζ相中にGa濃度が高いγ相(偏析相、異相)が微細かつ均一に分散しており、そのγ相のサイズは11μmであり、D
≦7×C−150の関係式を満たしていた。酸素濃度は20wtppmであった。また、不純物含有量は、P:1.4wtppm、Fe:1.5wtppm、Ni:0.7wtpm、Ag:4.3wtppmであった。
このように酸素量、不純物含有量が少なく、γ相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
また、X線回折法で観察した結果、
図8(左図)に示すように、ζ相とγ相のピークしか観察されなかったことから、この鋳造組織はこの2相のみからなることを確認した。
【0044】
(実施例4)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が25at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0045】
原料が溶解した後、溶湯温度を990℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を90mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、600°C/minの冷却速度となった。
【0046】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面を観察した。FE−EPMAの面分析結果を
図7(左上図)に示す。その結果、CuにGaが固溶したζ相中にGa濃度が高いγ相(偏析相、異相)が微細かつ均一に分散しており、そのγ相のサイズは8μmであり、D
≦7×C−150の関係式を満たしていた。酸素濃度は10wtppmであった。また、不純物含有量は、P:0.8wtppm、Fe:3.2wtppm、Ni:1.4wtpm、Ag:6.7wtppmであった。
このように酸素量、不純物含有量が少なく、γ相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
【0047】
(実施例5)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が29at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0048】
原料が溶解した後、溶湯温度を970℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を30mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、200°C/minの冷却速度となった。
【0049】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2に示す。その結果、CuにGaが固溶したζ相中にGa濃度が高いγ相(偏析相、異相)が微細かつ均一に分散しており、そのγ相のサイズは46μmであり、D
≦7×C−150の関係式を満たしていた。酸素濃度は10wtppmであった。また、不純物含有量は、P:0.6wtppm、Fe:4.7wtppm、Ni:1.5wtpm、Ag:7.4wtppmであった。
このように酸素量、不純物含有量が少なく、γ相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
【0050】
(実施例6)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が29at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0051】
原料が溶解した後、溶湯温度を970℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を90mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、600°C/minの冷却速度となった。
【0052】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面を観察した。FE−EPMAの面分析結果を
図7(左下図)に示す。その結果、CuにGaが固溶したζ相中にGa濃度が高いγ相(偏析相、異相)が微細かつ均一に分散しており、そのγ相のサイズは43μmであり、D
≦7×C−150の関係式を満たしていた。酸素濃度は20wtppmであった。また、不純物含有量は、P:0.9wtppm、Fe:3.3wtppm、Ni:1.1wtpm、Ag:5.4wtppmであった。
このように酸素量、不純物含有量が少なく、γ相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
また、X線回折法で観察した結果、
図8(右図)に示すように、ζ相とγ相のピークしか観察されなかったことから、この鋳造組織はこの2相のみからなることを確認した。
【0053】
(比較例1)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が25at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料5kgをφ200のカーボン製坩堝に入れ、坩堝内をArガス雰囲気にし、1100℃で2時間加熱し溶解した。また、このとき、昇温速度を10℃/minとした。次に、1100℃〜200℃まで冷却速度を約10℃/minとして、坩堝内で自然冷却して溶解した金属を凝固させた。
【0054】
得られた鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面を観察した。その結果、ζ相中に析出したγ相(偏析相、異相)のサイズは8μmとなり、D
≦7×C−150の関係式を満たさなかった。なお、酸素濃度は20wtppm超であり、不純物含有量は、P:6wtppm、Fe:10wtppm、Ni:2.2wtpm、Ag:10wtppmであった。
このように大きなγ相(偏析相)が存在するCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすると、パーティクルの発生が増加してしまい、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。
【0055】
(比較例2)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が25at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0056】
原料が溶解した後、溶湯温度を990℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を20mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、130°C/minの冷却速度となった。
【0057】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図3に示す。その結果、
図5に示されるように、2つの相(γ相とζ相)が、交互に数ミクロン間隔に薄い板状あるいは楕円状に存在するラメラー組織(層状組織)が現れ、γ相は均一かつ微細に分散していなかった。なお、酸素濃度は20wtppmであり、不純物含有量は、P:1.4wtppm、Fe:2.2wtppm、Ni:1wtpm、Ag:5.9wtppmであった。
このようなラメラー組織が部分的に存在する鋳造組織のCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすると、パーティクルの発生が増加してしまい、良好なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。
【0058】
(比較例3)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が25at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料5kgをφ200のカーボン製坩堝に入れ、坩堝内をArガス雰囲気にし、1100℃で2時間加熱し溶解した。また、このとき、昇温速度を10℃/minとした。次に、1100℃〜200℃まで冷却速度を約10℃/minとして、坩堝内で自然冷却して溶解した金属を凝固させた。
【0059】
得られた鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図4に、FE−EPMAの面分析結果を
図7(右上図)に示す。この結果、ζ相中に析出したγ相(偏析相、異相)のサイズは43μmとなり、D
≦7×C−150の関係式を満たさなかった。また、酸素濃度は40wtppmと高くなった。なお、不純物含有量は、P:4wtppm、Fe:8.2wtppm、Ni:1.3wtpm、Ag:9wtppmであった。
このように大きなγ相(偏析相)が存在するCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすると、パーティクルの発生が増加してしまい、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。
【0060】
(比較例4)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が29at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱して溶解した。
この溶解品を水アトマイズによって、粒径90μm未満のCu−Ga合金粉末を作製した。このようにして作製したCu−Ga合金粉末を、600℃で2時間、面圧250kgf/cm
2でホットプレス焼結した。
【0061】
この焼結片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面
を顕微鏡で観察した。この結果、γ相のサイズは10μmと微細であったが、酸素含有量が320wtppmと高くなった。また、不純物含有量は、P:15wtppm、Fe:30wtppm、Ni:3.8wtpm、Ag:13wtppmと高くなった。
このように酸素含有量、不純物含有量が高いCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすると、パーティクルの発生が増加してしまい、良好なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。
【0062】
(比較例5)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が29at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0063】
原料が溶解した後、溶湯温度を970℃(融点より約100℃高い温度)になるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳造片が引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を20mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、130°C/minの冷却速度となった。
【0064】
この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図5に示す。この結果、ζ相中に析出したγ相のサイズが67μmとD
≦7×C−150の関係式を満たず、またγ相のサイズは不均一であった。なお、酸素濃度は20wtppmであり、不純物含有量は、P:0.6wtppm、Fe:4.5wtppm、Ni:1.3wtpm、Ag:7.2wtppmであった。
このような不均一なγ相が存在するCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすると、パーティクルの発生が増加してしまい、良好なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。
【0065】
(比較例6)
銅(Cu:純度4N)と、Ga濃度が29at%の組成比となるように調整したGa(純度:4N)とからなる原料5kgをφ200のカーボン製坩堝に入れ、坩堝内をArガス雰囲気にし、1100℃で2時間加熱し溶解した。また、このとき、昇温速度を10℃/minとした。次に、1100℃〜200℃まで冷却速度を約10℃/minとして、坩堝内で自然冷却して溶解した金属を凝固させた。
【0066】
得られた鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、水で2倍希釈した硝酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図6に、FE−EPMAの面分析結果を
図8(右下図)に示す。この結果、ζ相中に析出したγ相(偏析相、異相)のサイズは100μm超となり、D
≦7×C−150の関係式を満たさなかった。また、酸素濃度は70wtppmと高くなった。なお、不純物含有量は、P:7wtppm、Fe:9.5wtppm、Ni:2.1wtpm、Ag:8wtppmであった。
このように極めて粗大なγ相(偏析相)が存在するCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすると、パーティクルの発生が増加してしまい、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。