(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
第1実施例
図1〜
図5を参照して、以下に本発明によるマイクロリソグラフィ用の光学結像装置で使用される本発明による光学装置の好ましい実施形態を説明する。
【0031】
図1は、193nmの波長を有するUV領域の光で作動するマイクロリソグラフィ装置101の形態の本発明による光学結像装置の好ましい実施形態の概略図を示す。
【0032】
マイクロリソグラフィ装置101は、照明系102、マスクテーブル103の形態のマスク装置、対物レンズ104の形態の光学投影系、ウェーハテーブル105の形態の基板装置を備える。照明系102は、波長193nmの投影光束(詳述しない)によってマスクテーブル103に配置されたマスク103.1を照明する。マスク103.1には投影パターンが位置し、投影パターンは、投影光束によって、対物レンズ104に配置された光学素子を介して、ウェーハテーブル105に配置されたウェーハ105.1の形態に基板に投影される。
【0033】
投影系102は、(図示しない)光源の他に光学的に有効な構成素子のグループ106を備え、グループ106は、特に一連の光学素子、例えば光学素子106.1を備える。さらに対物レンズ104は光学的に有効な構成素子の別のグループ107を備え、このグループ107は、
図1〜
図4に極めて概略的に(平行な面を有するプレートとして)示す一連の光学素子、例えば光学素子107.1を備える。193nmの作動波長を有する本実施例では、光学素子106.1,107.1は屈折性の光学素子である。しかしながら、本発明の他の変化態様(特に他の作動波長)では屈折性、反射性または回折性の(任意に構成された光学面を有する)光学素子を単独で、または任意の組み合わせで使用することもできる。
【0034】
光学グループ106および107の光学的に有効な構成素子は、本実施例では直線状に構成されたマイクロリソグラフィ装置101の光軸101.1を規定する。しかしながら、本発明の他の変化態様では、任意に屈曲した、または折り曲げられた光軸延びを設けてもよいことは自明である。
【0035】
グループ107の光学的に有効な構成素子は、対物レンズ104のハウジング104.1で適宜な光学装置で保持される。
図2は、光学モジュール109と支持構造部110とを備える本発明による装置108の極めて概略的な図を示す。
【0036】
支持構造部110は、対物レンズ104のハウジング104.1に結合されており、光学モジュール109を支持する。このために、支持構造部110は、(場合によっては他の支持素子と並んで)一連の支持ユニット110.1を備え、支持ユニット110.1は、支持リング110.2および光学モジュール109に結合されている。支持リング110.2は、対物レンズ104のハウジング104.1またはハウジング104.1の構成部分に堅固に結合されている。
【0037】
光学モジュール109は、光学素子107.1を保持する保持装置111を備える。このために、保持装置111は保持リング111.1の形態の保持構造部を備え、保持リング111.1では複数の保持ユニット112が支持される。保持ユニット112は光学素子107.1に結合されている。本実施例では、保持ユニット112は光学素子107.1に直接に係合する。しかしながら、本発明の他の変化態様では、保持ユニットの少なくとも一部と光学素子との間にさらに1つ以上の他の中間素子、例えば別の(内部)保持リングが配置されており、これにより、光学素子と関連保持ユニットとの間の力作用が関連中間素子によって得られるようにすることもできる。
【0038】
本実施例では、保持ユニット112の一部は、複数の位置決めユニット113を有する位置決め装置として構成されており、保持ユニット112の他の部分は、複数の変形ユニット114を有する変更装置として構成されている。
【0039】
位置決めユニット113は、(以下にさらに詳述するように)まずスペースにおける光学素子107.1の位置および/または配向を調節するための役割を果たすように構成されている。位置決め装置113は(少なくとも部分的には)、光学素子107.1の位置および/または配向を(一回または時々)調節するために適宜に調整可能に構成された受動的な構成素子であってもよい。
【0040】
好ましくは、位置決め装置113は(少なくとも部分的に)、マイクロリソグラフィ装置101の作動時に光学素子107.1の位置および/または配向を能動的に調整する能動的な構成素子である。このために、それぞれの位置決めユニット113は、制御装置115によって適宜に制御される1つ以上の能動的な位置決め素子113.1(例えば既知のアクチュエータ)を備えている。
【0041】
これに対して、変形ユニット114は(以下にさらに詳述するように)、まず光学素子107.1の幾何学配置を調節するための役割を果たすように構成されている。換言すれば、変形ユニット114は、例えば特許文献1により既知のように、光学素子107.1に意図的に所定の変形を付与し、これにより、マイクロリソグラフィ装置101の光学素子107.1および/または1つ以上の他の光学素子を少なくとも部分的に補正するように構成されている。
【0042】
このために、変形ユニット114は制御装置115に結合されており、制御装置115は適宜な制御信号を変形ユニット114に伝達する。制御装置115は、制御装置115に接続された検出ユニット116の検出信号に基づきこれら制御信号を決定する。検出ユニット116によって、既知の方法で、補正すべきそれぞれの結像誤差の現在の値を表す1つ以上の現在の値が検出される。
【0043】
これにより、マイクロリソグラフィ装置101の作動時に、光学素子107.1の能動的な変形によって基板105.1におけるマスク103.1の投影パターンの結像時に生じる1つ以上の結像誤差の能動的な(少なくとも部分的な)補正を行うことが可能である。この場合、結像プロセスに遅延をもたらさず、したがって、マイクロリソグラフィ装置101の処理量を損なわない十分に高い制御帯域を得ることができる。
【0044】
図2に示すように、本実施例では、3つの第1支持箇所の領域に3つの支持ユニット110.1が設けられており、これらの支持ユニット110.1は光学モジュール109の周囲に一様に分配して配置されている。本実施例では、支持ユニット110.1は、それぞれ2脚の形式で構成されており、これにより形成される光学素子109の支持部は6脚の形式で構成されており、これらの6脚により、(所定の固有周波数を有する)光学素子109の静的に規定された支持部が得られる。
【0045】
しかしながら、本発明の他の変化形態では、光学モジュールの任意の他の支持部を選択してもよい。しかしながら、好ましくは一般に、光学モジュールの不都合な変形をできるだけ防止するための静的に規定された支持部が選択される。
【0046】
光学モジュール109は、本実施例では結合ユニット117によって支持構造部110の支持ユニット110.1に、簡単に解除可能に、したがって交換可能に結合されている。簡単な交換可能性は、本発明では、とりわけ、対物レンズ104の他の構造的統一性、ならびに対物レンズ104の組付け後に生じる、光学素子グループ107の他の光学素子間の固定された構造的および空間的関係を損なうことなしに、光学モジュール109と支持ユニット110.1との間の結合を簡単に解除することができることが保証される。
【0047】
このことは、一方では、結合ユニット117が、結合を解除するためまたは結合を後に再び形成するために適宜に簡単にアクセス可能となっており、他方では、対物レンズ104の他の光学素子間の空間的関係を損なうことなしに対物レンズハウジング104.1から光学モジュール109を除去することが可能であることにより、実施することができる。
【0048】
これにより、このような積極的な変形により従来の解決方法よりも単純かつ軽量に光学素子107.1を構成することが可能となる。したがって、これにより、光学素子107.1および光学モジュール109の残りの構成素子を対物レンズ104またはマイクロリソグラフィ装置101の耐用寿命に合わせて設計する必要はなくなる。むしろ、簡単な交換可能性により、耐用寿命に到達した場合に単純に交換される簡単で軽量に構成された光学素子を用いることが可能となる。
【0049】
光学モジュール109の構成素子の耐用寿命に対する要求が緩和されたことにより、一方では光学素子107.1のために横断面が対応して薄く構成された素子を用いることが可能となり、他方では、位置決めユニット113および変形ユニット114のために適宜に軽量で、したがって小型に構成された構成素子を用いることが可能となる。その結果、比較可能な小さいスペースに光学モジュール109を格納することができる。これにより、場合によっては、従来では光学素子107.1の領域に能動的な変形をもたらさなかった対物レンズ104の既存の設計で、光学結像システムの設計(特に光軸101.1に沿った素子グループ107の光学素子の間隔)を変更する必要なしに、このような能動的な変形を実施することが可能である。
【0050】
本実施例では、結像ユニット117は、それぞれの支持ユニット110.1における、光学モジュール109に向いた端部に配置されている。しかしながら、本発明の他の変化態様では、それぞれの結合ユニットは対応した支持ユニットの中間領域に配置されているか、または支持ユニットにおける光学モジュールに向いていない端部に配置されていてもよいことは自明である。換言すれば、それぞれの支持ユニットの少なくとも一部を光学モジュールと一緒に交換することも可能である。
【0051】
図3に示すように、本実施例では、光学素子107.1の周囲に一様に分配して配置された3つの位置決めユニット113が設けられている。本実施例では、位置決めユニット113はそれぞれ2脚の形式で構成されており、これにより形成される位置決め装置は、全体として6脚の形式で構成されており、これらの6脚により、(所定の固有周波数を有する)光学素子109の静的に規定された支持部が(基本的に)実施される。
【0052】
変形ユニット114は、光学素子107.1の周囲で位置決めユニット113の間に一様に分配して配置されており、これにより、全体として光学素子107.1の周囲で保持ユニット112の一様な分配が生じる。
【0053】
図2に示すように、変形ユニット114は、保持リング111.1に支持されたアクチュエータユニット114.1および伝達素子としての弾性レバーアーム114.2によってそれぞれ形成されている。弾性レバーアーム114.2の一端は、光学素子107.1の周囲に堅固に固定されており、弾性レバーアーム114.2は他端の領域でアクチュエータユニット114.1に結合されている。アクチュエータユニット114.1の作動方向(すなわち、アクチュエータユニット114.1が最初の力作用Fを加える方向)は、(アクチュエータユニット114.1による力作用のない)ニュートラル状態では、レバーアーム114.2の長手方向軸線に対して垂直方向に延在する。レバーアーム114.2の長さLおよび曲げ剛性によって、アクチュエータユニット114.1と光学素子107.1における変形ユニット114の作用点との間の力作用または運動伝達を調整することができる。
【0054】
図4は、光学モジュール109の機械的な同等の回路図を示し、光学モジュール109の異なった断面が簡略化された代替構成素子によって示されている。したがって、それぞれのi番目の位置決め素子113.1と光学素子107.1との間の部分は、第1剛性C1iの単純なばね118.1によって示され、位置決め素子113.1と支持構造部110との間の区分は、第2剛性C2iのばね118.2によって示されている。支持構造部110は、この同等システムではほぼ無限に剛性を有するものと仮定される。
【0055】
変形ユニット114のための比較可能なアプローチが選択され、この場合、それぞれのアクチュエータユニット114.1と光学素子107.1との間の区画は、第3剛性C3jの単純なばね118.3によって示され、アクチュエータユニット114.1と支持構造部110との間の区画は、第4剛性C4jのばね118.4によって示されている。
【0056】
剛性C1i〜C4jは、それぞれ関連光学素子に加えられている(主要)負荷(すなわち、力および/またはモーメント)の方向の剛性に対して等価剛性であることを述べておく。このような等価剛性は、アクチュエータユニット114.1の場所で作動方向Fに生じる伝達素子114.2の計算上の剛性またはアクチュエータユニット114.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性である。
【0057】
換言すれば、それぞれの等価剛性は、アクチュエータユニット114.1または位置決め素子113.1の場所に関係した(計算上の)剛性であり、この剛性は、アクチュエータユニット114.1または位置決め素子113.1の場所で(アクチュエータユニット114.1または位置決め素子113.1の)作用負荷および変位から決定され、
(i)アクチュエータユニット114.1または位置決め素子113.1の場所で、
(ii)アクチュエータユニット114.1または位置決め素子113.1の場所で作用する作用負荷、
(iii)(作用負荷によって生じる)関連構成素子の変形から生じる。
【0058】
本実施例では、i(=3)位置決めユニット113が(光学素子107.1を支持する場合に光学素子に作用する)力作用の方向にできるだけ堅固に構成されている。すなわち、それぞれの第1および第2剛性C1iおよびC2iはできるだけ高く選択され、これにより、あらかじめ規定可能な高い固有周波数で光学素子107.1の位置および配向が規定される。したがって、構成素子の実際の剛性は、支持部の所望の固有周波によって決定される。このために、一方では位置決め素子113.1と光学素子107.1との間のそれぞれの結合は適宜に堅固に行われる。さらに他方では、位置決め素子113.1と保持リング111.1との間の結合も適宜に堅固に行われる。最終的に、支持部は保持リング111.1自体によってこの領域でできるだけ堅固に構成されている。
【0059】
保持リング111.1を堅固に構成するための手間を少なく保持するために、本実施例では、それぞれの位置決めユニット113は第2支持箇所に配置されており、第2支持箇所は、光学モジュール109が支持構造部で支持されている第1支持箇所のいずれかの領域に位置し、これにより、光学モジュール109の支持部の剛性に対する保持リング111.1の剛性の影響が低く保持される。
【0060】
位置決め装置113.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性は、本実施例では、少なくとも位置決め素子113.1の作用方向における剛性に対応している。
【0061】
しかしながら、本発明の他の変化態様では、位置決め素子113.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性は、位置決め素子113.1の作用方向における剛性の少なくとも5%〜10%に対応する。したがって、位置決め素子113.1は保持リング111.1よりも堅固であってよい。特に位置決め素子113.1の剛性は、位置決め素子113.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性を著しく上回る(場合によっては、位置決め素子113.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性の10倍〜20倍)。
【0062】
しかしながら、本発明の他の変化態様では、位置決め素子113.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性が、位置決め素子113.1の剛性より大きくてもよいことは自明である。このような場合、位置決め素子113.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性は、位置決め素子113.1の作用方向における剛性の、好ましくは150%まで、有利には200%までである。
【0063】
関連位置決め素子113.1自体は、本実施例では、同様に作用方向(ひいては力作用方向)に高い剛性を有し、適宜な機械的特性を備え、十分な調整領域を有する任意の適宜なアクチュエータであってもよい。
【0064】
反対に、j(=9)変形ユニット114は、本実施例では、(光学素子107.1が支持されている場合に光学素子に作用する)負荷作用(すなわち、力作用および/モーメント作用)の方向にできるだけ軟性に構成されており(すなわち、少なくともそれぞれ第3および第4剛性C3jおよびC4jのいずれかは、特に第1および第2剛性C1i〜C2iに対して著しく低く選択されている)、これにより、それぞれの変形ユニット114について光学素子107.1以外の剛性による形状関数FDjに対する影響ができるだけ小さくなる。
【0065】
形状関数FDjは、本発明の意味では、場合によっては3つの位置決め素子113.1によって調節可能な光学素子107.1の固体移動を差し引いた後の、アクチュエータユニット114.1の領域における所定の(定格の)変位および/または所定の(定格の)負荷作用(力作用および/またはモーメント作用)に対する光学素子114の変形反応を意味する。形状関数は、光学素子107.1の剛性にのみ関係する場合、それぞれのアクチュエータ位置について簡単に(例えば分析的に)あらかじめ決定可能である。
【0066】
変形ユニット114の構成に応じて、これらの負荷は、純粋なモーメント、純粋な力または力とモーメントとの組み合わせであってよい。本実施例では、アクチュエータユニット114.1に線形に作用するアクチュエータが使用される場合、弾性レバーアーム114.2を介して(光学素子107.1の周方向に対して接線方向に延在する軸を中心とした)モーメントおよび(光軸101.1に対して実質的に平行な)力が光学素子に導入される。しかしながら、本発明の他の変化態様では、とりわけ、アクチュエータユニットがレバーアームひいては光学素子にモーメントのみを導入する場合もある。
【0067】
個々の変形ユニット114の間における形状関数FDjが上述のように簡単に算出される場合、有利には、形状関数FDjがわかっていれば、手間のかかる制御アルゴリズムなしに簡単な制御によって十分な近似で光学素子107.1の所定の変形を調節することが可能である。この場合、形状関数FDjは論理的に(例えば適宜なシミュレーション計算により)および/または実験的に(例えば適宜な測定によって)あらかじめ算出し、対応したモデルとして制御装置115に保存してもよい。
【0068】
好ましくは、第3剛性C3jは、第4剛性C4jに対して特に小さく選択され、これにより、個々の変形ユニット114における剛性C4jによる形状関数FDjの妨害が小さく保持される。この場合、第4剛性C4jに対する要求、特に保持リング111.1に導入される剛性値が低く押さえられる。したがって、この場合、保持リング111.1は特に堅固に構成されている必要はなく、このことは、光学モジュール109の構成にスペース要求に積極的な影響を及ぼす。
【0069】
好ましくは、第3剛性C3jと第4剛性C4jとの間の比は、(それぞれの負荷方向で、)第4剛性C4jが第3剛性C3jの少なくとも500倍、有利には少なくとも100倍となるように選択される。これにより、特に好ましくは、形状関数FDjの妨害を小さくすることができる。
【0070】
第4剛性C4jに対して第3剛性C3jが低い場合、アクチュエータユニット114.1には、所定の制御信号に関係して作用方向に所定の変位を生成する単純な変位アクチュエータを使用することができる。これにより、特に簡単に構成された制御を行うことができる。なぜなら、一般にこのような変位アクチュエータは、所定の調節距離の規定(およびチェック)を極めて容易に行うことができるからである。アクチュエータの種類に応じて、例えば、アクチュエータの簡単な規定または回転数の計数のみが必要となる。
【0071】
アクチュエータユニット114.1の剛性に関して、第3剛性C3j、すなわち、それぞれのアクチュエータユニット114.1の場所に関係した(アクチュエータユニット114.1と光学素子107.1との間の伝達素子としての)弾性レバーアーム114.2の剛性は、それぞれのアクチュエータユニット114.1の作動方向に、好ましくは作動方向におけるアクチュエータユニット114.1の剛性よりも著しく低い。好ましくは、アクチュエータユニット114.1の場所に関係した弾性レバーアーム114.2の剛性は、作動方向におけるアクチュエータユニット114.1の剛性のせいぜい0.1%である。
【0072】
この場合にもアクチュエータユニット114.1は、好ましくは、(位置決め素子113.1に類似して)作用または作動方向に比較的高い剛性を有するユニットである。特にアクチュエータユニット114.1の剛性および保持リング111.1の剛性は、アクチュエータユニット114.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性が本実施例では(関連した変形ユニット114の作用点の領域で)作用方向におけるアクチュエータユニット114.1の剛性にほぼ対応するように相互に調整されていてもよい。
【0073】
しかしながら、本発明の他の実施態様では、アクチュエータユニット114.1の場所に関連した保持リング111.1の剛性は、作用方向における位置決め装置113.1の剛性の少なくとも5%〜10%である。したがって、アクチュエータユニット114.1は、保持リング111.1よりも剛性が高い。特にアクチュエータユニット114.1の剛性は、アクチュエータユニット114.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性を著しく上回る(場合によっては、アクチュエータユニット114.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性の10〜20倍である)。
【0074】
しかしながら、本発明の他の変化態様では、アクチュエータユニット114.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性は、アクチュエータユニット114.1の剛性よりも大きくてもよいことは自明である。このような場合、アクチュエータユニット114.1の場所に関係した保持リング111.1の剛性は、作用方向におけるアクチュエータユニット114.1の剛性の好ましくは150%まで、有利には200%までである。したがって、保持リング111.1はアクチュエータユニット114.1よりも剛性が高い。
【0075】
本発明の他の実施態様では、アクチュエータユニット114.1は、所定の制御信号に関係して所定の力を作用方向に生成するアクチュエータである。この場合、アクチュエータユニット114.1の支持部の剛性は、アクチュエータユニット114.1の所定の力作用により、形状関数FDjに重大な影響を及ぼすことはないので、支持構造部または保持リング111.1の構成の側ではほぼないという利点が得られる。
【0076】
これら2つの場合、全体として形状関数FDjの妨害を小さくするためには第3剛性C3jのばらつきができるだけ小さい場合、いずれにしても有利である。
【0077】
本実施例では、支持ユニット110.1の領域に位置決めユニット113が配置されていることにより変形ユニット114の操作による光学素子107.1の位置および/または配向への保持リング111.1の変形の影響を低減する。しかしながら、このような支持ユニットに隣接する位置決めユニットの配置が付与されていない本発明の他の変化態様では、位置決めユニット113による能動的な変更によって生じた光学素子の位置および/または配向の変更を簡単に補正することが可能である。
【0078】
本実施例では、支持ユニット110.1は、光学モジュール109の位置および/または配向を変更することができる能動的なユニットとして構成されている。このために、支持ユニット110.1は、いずれにしても制御装置115に結合されており、この制御装置によって必要に応じて適宜に制御される。支持ユニット110.1のためには対応した能動的な調整を可能とする任意の適宜なアクチュエータを使用することができる。
【0079】
これにより、例えば、光学結像システムの上記設定を素早く切り換えるために、特に光学モジュール109、ひいては光学素子107.1の位置および/または配向の大まかな、またはより大幅な変更を行い、かつ光学素子107.1の位置および/配向の微調節を位置決めユニット113によって行い、光学素子107.1の幾何学配置の微調節を変形ユニット114によって行うことが可能となる。
【0080】
さらに、場合によっては(基板105.1の露光時の作動位置から異なった)交換位置に光学モジュール109を移動させ、交換位置で結合ユニット117を簡単に解除することができ、光学モジュール109を対物レンズ104から簡単に除去することができる。
【0081】
しかしながら、本発明の他の変化態様では、支持ユニットを少なくとも部分的に受動的な素子として構成してもよい。この場合、もちろん支持ユニット手動の調整可能性を設けてもよい。
【0082】
本実施例では、光学素子107.1の位置/配向の調節、および特に光学結像システムの結像誤差の補正は、次のようにしてマイクロリソグラフィ装置101の作動時に光学素子107.1の能動的な変形により行うことができる。
【0083】
図5は、マイクロリソグラフィ装置101によって実施され、本発明による光学素子を支持する方法を使用することができる結像方法のフロー図を示す。
【0084】
まずステップ119.1で方法プロセスが開始される。ステップ119.2で、
図1に示したマイクロリソグラフィ装置101の構成素子が、基板105.1へのマスク103.1の投影パターンの上記結像を行うことができる状態に移行される。
【0085】
結像ステップ119.3で、ステップ119.4における基板105.1の露光に平行して、上述のような、光学結像システムの結像誤差を表す少なくとも1つの変数の実際値の検出が検出装置116によって行われ、制御装置115へのこれらの変数の検出値の伝達が行われる。次いで制御装置115では、このステップ119.4でこの変数の現在の検出値と、マイクロリソグラフィ装置101の現在の作動状態のために規定された、この変数のための目標値との比較が行われる。この比較により、制御装置115は、光学素子107.1の幾何学配置のための既定値、したがって、光学素子107.1の変形のための規定値を算出し、これにより、変形ユニット114のアクチュエータユニット114.1のための制御信号を決定する。
【0086】
さらに制御装置115は、この比較から光学素子107.1の位置および/または配向のための既定値を決定し、これにより、位置決めユニット113の位置決め素子113.1のための制御信号を決定する。この場合、必要に応じて、変形ユニット114の調節すべき力作用により生じる光学素子107.1の位置および/または配向の変更が考慮される。このために、制御装置115は、位置決め素子113.1の力作用に関係して光学素子107.1の位置および/または配向の予想される変化を表す、光学モジュール109の記憶された(あらかじめ論理的および/または実験的に算出された)モデルにアクセスする。
【0087】
場合によっては、制御装置115は、上記比較から、および/または実施すべき結像プロセスからの他の規定値に基づいて、光学モジュール109、ひいては光学素子107.1の位置および/または配向のための既定値を算出し、これにより、支持ユニット110.1のための制御信号を決定する。
【0088】
ステップ119.5で、制御装置115は上述のように、変形ユニット114のアクチュエータユニット114.1、位置決めユニット113の位置決め素子113.1、および場合によっては算出した制御信号を有する支持ユニット110.1を制御し、これにより、光学モジュール109、特に光学素子107.1の現在の状態と、現在の作動状態のために規定された目標状態とのずれ、特に現在の結像誤差に反作用をもたらす。
【0089】
この場合、負荷方向に低い変形ユニット114の剛性は、位置決めユニット113による光学素子107.1の位置および/または配向の補正が、変形ユニット114によって調節された光学素子107.1の幾何学配置に概して無視できる比較的小さい変化のみをもたらし、これにより、光学素子107.1の実際の幾何学配置を検出する対応した制御ループを省略できるという利点を有する。
【0090】
次にステップ119.6で、さらに別の結像ステップを行うべきか否かがチェックされる。チェックすべきでない場合、方法ステップはステップ119.7で終了する。そうでなければ、ステップ119.3に戻る。
【0091】
本実施例では、光学素子107.1は、位置決めユニット113および変形ユニット114によって保持リング111.1で支持される。しかしながら、本発明の他の変化態様では、さらに保持リングで光学素子のさらなる支持を行ってもよいことは自明である。例えばこのようなさらなる支持は、
図2に概略的に点線輪郭120によって示すように、従来から既知の重力補償装置によって行ってもよい。重力補償装置120は、光学素子107.1の周囲に一様に分配された多数の軟性なばね素子であってもよい。ばね素子は、受動的および/または能動的な装置として構成されていてもよく、従来のように光学素子107.1の重力の少なくとも大部分を吸収する。
【0092】
さらに本発明の実施例における光学素子107.1の支持部は直立の支持部として示されている(すなわち、保持リング111.1は光学素子107.1を下方から支持する)。しかしながら、光学素子の支持部は、懸吊式の支持部として構成されていてもよく、したがって、光学素子は(下方から)支持リングに懸吊される。しかしながら、本発明の他の変化態様では、鉛直方向に関して光学素子を他の任意の配向とすることももちろんできることは自明である。
【0093】
第2実施例
次に
図1〜
図5および
図6を参照して、光学装置108の代わりに対物レンズ104で使用することのできる本発明による光学装置208の別の有利な実施例を説明する。光学装置208は、構成および機能において基本的に光学装置108に対応しており、したがって、ここでは相違点のみを説明する。特に同一または同様の構成素子には値100を加えた符号を付す。以下に特に述べない限り、これらの構成素子の特性および機能に関しては第1実施例についての上記説明を参照されたい。
【0094】
光学装置208は、変形ユニット214の構成および光学素子207.1との結合に関してのみ光学装置108とは異なっている。
図6は、位置に関して
図2に示した詳細VIに対応した光学装置208の詳細を示す。
【0095】
極めて概略的な
図6からわかるように、この実施例では、変形ユニット214の伝達素子214.2は支持リング211.1にジョイント式に支承されたレバーアームとして(両端の間に)構成されている。保持リング211.1のジョイント式支承は任意に構成してよい。好ましくは、固体ジョイントの形式で構成されている。
【0096】
ここでもレバーアーム214.2の一端はアクチュエータユニット214.1に結合されており、他端はフォーク状に構成されており、それぞれ1つの弾性部分214.3および214.4によって両側から(したがって、本実施例における光学素子207.1の水平方向の構成位置では上方および下方から)光学素子207.1の周囲の突出部207.2に作用する。この構成ではレバーアーム214.2の剛性および/または弾性部分214.3および214.4によって伝達素子214.2の上述の低い剛性を達成し、調節することができる。
【0097】
この構成は、周囲で既に1つの(周方向の)または複数の(たいていは一様に分配された)このような突出部207.2を備える従来の光学素子の構成と共に簡単に使用することができるという利点を有する。特に有利には、この解決方法は、従来から既知の方法で、(場合によっては他の支持装置とならんで)
図6に破線輪郭220によって示すように、光学素子207.1の周囲に分配され、光学素子207.1の周方向フランジ207.2に係合する多数のばね素子を備える重力補償装置によって支持された基本的に既知の構成に光学素子207.1を適用することもできる。
【0098】
しかしながら、本発明の他の変化態様では、伝達素子の他の任意の構成を選択することもできることは自明である。以下に詳述するように、特に光学素子に所定に変形を直接に付与するために伝達素子自体および光学素子との結合部を特に堅固に構成することが可能である。
【0099】
第3実施例
以下に
図1、
図4、
図5および
図7を参照して、光学装置108の代わりにマイクロリソグラフィ装置101で使用することができ、
図5に示した方法を実施することができる本発明による光学装置308の別の好ましい実施例を説明する。光学装置308は、構成および機能において基本的に
図2に示した光学装置108に対応しており(光学装置308のためにも
図4に示した機械的に同等の回路図を使用することができる)、したがって、ここでは相違点のみを説明する。特に同一または同様の構成素子には値200を加えた符号を付す。以下に特に述べない限り、これらの構成素子の特性および機能に関しては第1実施例についての上記説明を参照されたい。
【0100】
光学装置308と光学装置108との相違点は保持ユニット312の構成にある。ここでも光学素子307.1の周囲に一様に分配された一連の変形ユニット314が設けられており、この変化態様では位置決めユニット113の代わりに重力補償装置320が設けられている。重力補償装置320は、光学素子307.1の周囲に一様に分配された多数の軟性のばね素子を備え、ばね素子は、従来のように光学素子307.1の重量を吸収する。この場合、ばね素子320.1はもちろん比較的堅固に構成されている(すなわち、
図4の第1剛性C1iはC3jよりも500倍〜1000倍だけ高い)。
【0101】
変形ユニット314は、高解像度の小さい調節距離を提供する、同様に(作動方向に)比較的堅固なそれぞれ1つのアクチュエータユニット314.1を備える。このために、この条件を満たす基本的に任意のアクチュエータを使用することができる。例えば、このために適宜な動力伝達部による回転駆動によって鉛直方向運動を生成する圧電式アクチュエータ、機械式線形駆動装置などを使用することができる。このようなアクチュエータは、特に小型に構成することができるという利点を有する。
【0102】
さらにj変形ユニット314は、本実施例では(光学素子307.1を支持する場合に光学素子に作用する)力作用の方向にできるだけ堅固に構成されており(すなわち、第3剛性C3jは比較的高い)、これにより、支持部の規定可能な比較的高い固有周波数が得られる。このことは、伝達素子314.2の領域で、例えば、光学素子の適宜に堅固な半径方向の延長部として構成されていることにより実施してもよい。例えば、単純に光学素子307.1にモノリシック成形されたレバーアーム314.2であってもよい。
図4に示したここでは位置jにおける保持リング311.1の剛性を表す2つの剛性C2jおよびC4jについては以下にさらに説明する。
【0103】
上述の構成によって、場合によってはそれぞれの変形ユニット314の機能関数FDjについて比較的多数の作用パラメータが生じる。したがって、それぞれのアクチュエータユニット314.1は、同じ調整距離または同じ変位Vで別の形状関数FDjならびに他の固体運動をもたらす。これらは(光学素子307.1の周方向における)それぞれの変形ユニット314の位置および第1剛性、第3剛性C1j,C3jおよび第4剛性C4jのそれぞれの値に関係している。
【0104】
上述のように、本発明の意味では形状関数FDjは、アクチュエータユニット314.1の領域における所定の(定格の)変位および/または所定の(定格の)力作用に対する変形ユニット314の変形反応を意味する。したがって、形状関数FDjは、所定の変位および/または力作用を光学素子307.1に導入する負荷をも表す。
【0105】
上述のように個々の変形ユニット314の間の形状関数FDjのばらつきが比較的大きい場合には、第4剛性C4jができるだけ高く、したがって、特に保持リング311.1が特に堅固に構成されている場合には有利であり、これにより、いずれか1つの変形ユニット314の操作により生じる保持リング311.1の変形が他の変形ユニット314の位置および/または配向に及ぼす影響ができるだけ小さく保持される。
【0106】
剛性C1j,C3jが相互に理想的に等しく無限に堅固であると想定される保持リング311.1では、アクチュエータユニットが等間隔で同じ周囲に配置された場合、それぞれのアクチュエータユニットについて等しい形状関数が生じる。
【0107】
この場合、形状関数FDjがわかっていれば、手間のかかる制御アルゴリズムなしに簡単な制御によって十分な近似で光学素子307.1の所定の変形を調節することが可能である。この場合、形状関数FDjは論理的に(例えば適宜なシミュレーション計算により)および/または実験的に(例えば適宜な測定によって)あらかじめ算出し、適宜なモデルとして制御装置315に保存してもよい。
【0108】
制御装置315では、次いで
図5に示したステップ119.4で補正すべき結像誤差を表す変数の現在の検出値と、マイクロリソグラフィ装置101の現在の作動状態のために規定されたこの変数のための目標値との比較が行われる。この比較により、制御装置315は(例えば、保存された関数FDjに基づいた適宜な調整により)光学素子307.1の幾何学配置についての規定値、したがって光学素子307.1の変形のための規定値および光学素子307.1の位置および配向のための規定値を算出し、これにより、変形ユニット314のアクチュエータユニット314.1のための制御信号を決定し、これら制御信号により、光学素子307.1の位置および配向が調整される。このために、制御装置315は光学モジュール309の記憶された(あらかじめ論理的および/または実験的に算出された)モデルにアクセスする。
【0109】
場合によっては、制御装置315は、上記比較および/または実施される結像プロセスからの他の規定値に基づき、さらに光学モジュール309、ひいては光学素子307.1の位置および/または配向のための規定値を算出し、これにより支持ユニット310.1のためのさらなる制御信号を決定する。
【0110】
このステップ119.5で、上述のように、制御装置315は算出した制御信号により変形ユニット314のアクチュエータユニット314.1、および必要に応じて支持ユニット310.1を制御し、これにより、光学モジュール309、特に光学素子307.1の現在の状態と、現在の作動状態のために規定された目標値とのずれ、特に現在の結像誤差に反作用をもたらす。
【0111】
上述の構成は、とりわけアクチュエータに関して、特に小型に構成することができ、したがって、既存の光学設計に光学素子の能動的な変形を組み入れるために特に良く適しているという利点を有する。場合によっては、この変化態様では、光学結像システムの既存の構成に、これまでの光学素子のいずれかに、光学モジュール309に配置された光学結像素子307.1を代替させることが、光学結像システムの残りの構成を変更する必要なしに可能となる。
【0112】
この場合、支持ユニット310.1は、ここでも有利には光学モジュール309に解除可能に結合されており、これにより、光学モジュール309の簡単な交換可能性が確保される。しかしながら、本発明の他の変化態様では、光学モジュールと支持構造部との間のこのような簡単に解除可能な結合部はなくてもよいことは自明である。
【0113】
本実施例でもアクチュエータユニット314.1のために、所定の制御信号に関係して作用方向に所定の変位をもたらす簡単な変位アクチュエータを使用してもよい。アクチュエータユニット314.1は、本発明の他の変化態様では、所定の制御信号に関係して所定の力を作用方向にもたらす力アクチュエータであってもよい。これら2つの場合、全体として小さい形状関数FDjの妨害を達成するためには第3剛性C3jのばらつきができるだけ小さい場合にはいずれにしても有利である。
【0114】
さらに本発明の実施例における光学素子307.1の支持部は懸吊式の支持部として示されている(すなわち、光学素子107.1は下方から保持リング111.1に懸吊される)。しかしながら、光学素子の支持部は直立式の支持部として構成されていてもよく、したがって、光学素子は(上方から)支持リングで支持される。このために、特に例えば
図6に示した装置に類似した構成を選択してもよい。さらに本発明の他の変化態様では、鉛直方向に関して光学素子を他の任意の配向とすることももちろんできることは自明である。
【0115】
第4実施例
以下に
図1、
図4、
図5および
図8を参照して、光学装置108の代わりにマイクロリソグラフィ装置101で使用することができ、
図5に示した方法を実施することができる本発明による光学装置408の別の好ましい実施例を説明する。光学装置408は、構成および機能において基本的に
図7に示した光学装置308に対応しており(光学装置408のためにも
図4に示した機械的に同等の回路図を使用することができる)、したがって、ここでは相違点のみを説明する。特に同一または同様の構成素子には値400を加えた符号を付す。以下に特に述べない限り、これらの構成素子の特性および機能に関しては第3または第1実施例についての上記説明を参照されたい。
【0116】
光学装置408と光学装置308との相違点は保持ユニット412の構成にある。本実施例では、保持ユニット412は、光学素子307.1の周囲に一様に分配された一連の変形ユニット414のみを備えている。変形ユニット414は、ここでもそれぞれ1つの(作動方向に)比較的堅固なアクチュエータユニット414.1を備え、アクチュエータユニット114.1は、高解像度の小さい調節距離を提供する。このためには、このような要求を満たす基本的に任意のアクチュエータを使用することができる。例えば、このために適宜な動力伝達部による回転駆動によって鉛直方向の運動を生成する圧電アクチュエータ、機械的線形駆動装置を使用することができる。このようなアクチュエータは、特に小型に構成することができるという利点を有する。
【0117】
さらにj変形ユニット414は、本実施例でも(光学素子407.1を支持する場合に光学素子に作用する)力作用の方向にできるだけ堅固に構成されており(すなわち、第3剛性C3jおよび第4剛性C4jは同様に比較的高い)、これにより、支持部の規定可能な比較的高い固有周波数が得られる。
【0118】
上述の構成により、場合によっては、それぞれの変形ユニット414の形状関数FDjに比較的大きいばらつきが生じる。したがって、それぞれのアクチュエータユニット414.1は、同じ調節距離または同じ変位Vで他の形状関数FDjおよび他の固体運動を生成する。これらは(光学素子407.1の周方向における)それぞれの変形ユニット414の位置および第3剛性C3jおよび第4剛性C4jのそれぞれの値に関係する。
【0119】
上述のように、本発明の意味では形状関数FDjは、アクチュエータユニット414.1の領域における所定の(定格の)変位および/または所定の(定格の)負荷作用(力作用および/またはモーメント作用)に対する変形ユニット414の変形反応を意味する。したがって、形状関数FDjは、所定の変位および/または力作用を光学素子407.1に導入する負荷をも表す。
【0120】
形状関数FDjの妨害を低減するために変形ユニット414および保持リング411.1を構成するための手間を少なくするには、本実施例では測定装置421が設けられている。環状の基準構造部421.1、および基準構造部421.1の周囲に(好ましくは一様に)分配して配置された複数の測定ユニット421.1を備える。
【0121】
それぞれの測定ユニット421.2は、任意の形式で、光学素子407.1の幾何学配置を表す測定値を検出する。本実施例では、このために、基準構造部421.1における基準点(例えば、それぞれの測定ユニット421.2と基準構造部421.1との結合部の領域の点)と光学素子407.1における対応した測定点との間の間隔を表す測定値が検出される。このために、任意の適宜な測定原理(干渉計原理、容量式原理、光ファイバセンサ、物差しなど)を個別に、または間隔を十分に正確に検出することを可能とする組み合わせで使用することができる。しかしながら、本発明の他の変化態様では、このような間隔測定に代替的または付加的に、光学素子の現在の幾何学配置の推定を可能にする他の任意の測定原理を使用することもできる。
【0122】
個々の測定ユニット421.2によって検出された関連測定変数の値によって1つ以上の検出値を決定することができ、これら検出値により、光学素子407.1の現在の幾何学配置および現在の変形を推定することが可能となる。この場合、間隔測定の使用は、本実施例では、光学素子407.1の位置および/または配向の推定が可能となるという利点をさらに有する。
【0123】
制御装置415では、次いで
図5に示すステップ119.4で、補正すべき結像誤差を表す変数の現在の検出値と、マイクロリソグラフィ装置101の現在の作動状態のために規定された、この変数のための目標値との比較が行われる。この比較により、制御装置415は、(例えば、保存された関数FDjに基づいた適宜な調整により)光学素子407.1の幾何学配置のための既定値、したがって、光学素子407.1の変形のための規定値および光学素子407.1の位置および配向のための規定値を算出し、これにより、変形ユニット414のアクチュエータユニット414.1のための制御信号を決定し、これら制御信号により、光学素子407.1の位置および配向が調整される。このために、制御装置415は光学モジュール409の記憶された(あらかじめ論理的および/または実験的に算出された)モデルにアクセスする。さらに制御装置415は、光学素子407.1の現在の変形、位置および/または配向を表す上述のようにして算出された検出値を考慮する。
【0124】
場合によっては、制御装置415は、上記比較および/または実施すべき結像プロセスにおける他の規定値から、光学モジュール409、ひいては光学素子407.1の位置および/または配向のためのさらなる既定値を算出し、これにより、支持ユニット410.1のための制御信号を決定する。
【0125】
このステップ119.5で、上述のように、制御装置415は算出した制御信号により変形ユニット414のアクチュエータユニット414.1、および必要に応じて支持ユニット410.1を制御し、これにより、光学モジュール409、特に光学素子407.1の現在の状態と、現在の作動状態のために規定された目標値とのずれ、特に現在の結像誤差に反作用をもたらす。この場合、光学素子407.1の現在の状態(基準構造部421.1に対する変形、位置および/または配向)が測定装置421によって連続的に検出され、制御装置415で処理され、このようにして構成された制御ループにより現在の目標状態が素早く達成される。
【0126】
測定装置421を有する上記構成は、(特に保持ユニット412および保持リング411.1の)剛性に関してあらかじめ規定された所定の固有周波数を得ること以外には、光学素子407.1の支持によって特に他の要求満たす必要はなく、したがって、この点ではより多くの自由があるという利点を有する。特に任意の適宜なアクチュエータおよび任意の適宜な伝達素子を使用してもよい。しかしながら、好ましくは変形ユニット414および保持リング411.11のためにはできるだけ高い剛性が設けられている。
【0127】
このようにして得られた設計の自由により、光学モジュール409の構成素子を、スペースを最適化した状態で構成することが可能となり、したがって、このような解決方法は、既存の光学設計に光学素子の能動的な変形を組み入れるために特に良く適している。場合によっては、この変化態様では、光学結像システムの既存の構成で、光学モジュール409に配置された光学結像素子407.1を従来の光学素子のいずれかに代替させることが、光学結像システムの残りの構成を変更する必要なしに可能となる。
【0128】
この場合、支持ユニット410.1は、ここでも有利には光学モジュール409に解除可能に結合されており、これにより、光学モジュール409の簡単な交換可能性が確保される。しかしながら、本発明の他の変化態様では、光学モジュールと支持構造部との間のこのような簡単に解除可能な結合部はなくてもよいことは自明である。
【0129】
本実施例でもアクチュエータユニット414.1のために、所定の制御信号に関係して作用方向に所定の変位をもたらす簡単な変位アクチュエータを使用してもよい。アクチュエータユニット414.1は、本発明の他の変化態様では、所定の制御信号に関係して作用方向に所定の力をもたらす力アクチュエータであってもよい。
【0130】
基準構造部421.1の構成に関して、基準構造部421.1は、好ましくは熱的および/または機械的な妨害に対してできるだけ小さい感度を有していることを述べておく。したがって、基準構造部421.1は、低い熱膨張率および高い剛性を有する1つ以上の材料によって構成される。このような材料の例は、SiO2、ガラスセラミック、インバール(登録商標)などである。
【0131】
ここで完全性のために、このような材料選択は、本発明の全ての実施例におけるそれぞれの光学モジュールおよびそれぞれの支持構造部の他の構成素子のためにも当然ながら有利であり得ることを述べておく。
【0132】
本実施例では、基準構造部421.1は保持リング411.1で支持されている。しかしながら、本発明の他の変化態様では、基準構造部は支持構造部410.2で支持されていてもよいことは自明である。
【0133】
本実施例では、基準構造部421.1の支持は、好ましくは、保持リング411.1の変形が基準構造部421.1の位置および/または配向にできるだけ影響を及ぼさないように構成されている。このことは、本実施例では、基準構造部が3つの支持箇所の領域で静的に規定されて保持リング411,1で支持されており、これら支持箇所が、保持リング411.1が支持ユニット410.1によって支持された3つの支持箇所の領域に配置されていることにより実施される。
【0134】
第5実施例
以下に、
図1、
図4、
図5および
図9を参照して、光学装置108の代わりにマイクロリソグラフィ装置101で使用することができ、
図5に示した方法を実施することができる本発明による光学装置508の別の好ましい実施例を説明する。光学装置508は、構成および機能において基本的に
図2に示した光学装置108に対応しており(光学装置508のためにも
図4に示した機械的に同等の回路図を使用することができる)、したがって、ここでは相違点のみを説明する。特に同一または同様の構成素子には値400を加えた符号を付す。以下に特に述べない限り、これらの構成素子の特性および機能に関しては第1実施例についての上記説明を参照されたい。
【0135】
光学装置508と光学装置108との唯一の相違点は、変形ユニット514が保持リング511.1に直接に支持されているのではなく(その他の点では変形ユニット114と同一に構成されている)、支承リング522の形態の(保持リング511.1とは)別個の支承構造部に支持されていることである。この支承リング522は、(好ましくは静的に規定されて)保持リング511.1で支持されており(本実施例では懸吊されており)、保持リング511.1では、光学素子507.1が位置決めユニット513(位置決めユニット113と同一に構成されている)を介して支持されている。他の点では光学モジュール509は光学モジュール109と同一である。
【0136】
本実施例では、支承リング522の支持部は、好ましくは、保持リング511.1の変形が支承リング522の位置および/または配向にできるだけ小さい影響を及ぼすように構成されている。このことは、本実施例では、支承リング522が、3つの支持箇所の領域で静的に規定されて保持リング511.1で支持されており、これら支持箇所が、保持リング511.1が支持ユニット510.1によって支持構造部510.2で支持された3つの支持箇所の領域に配置されていることにより実施される。
【0137】
保持構造部とは別個のこのような支承構造部により、例えば、既存の光学モジュールまたはこのような光学モジュールの既存の構成に、光学素子の能動的な変形を付与することが容易に可能である。この場合、このような別個の支承構造部は、第1実施例に関連して説明したような構成においてのみならず他の構成でも使用することができることは自明である。むしろ、任意の他の構成、特に他の実施例による構成でも使用することができる。
【0138】
図9に破線輪郭521により示すように、本発明の他の変化態様では、(例えば、測定装置421とほぼ同一の構成および機能を備える)測定装置が同様に別個の支承構造部522で支持されている。
【0139】
対物レンズの光学的に有効な素子のみを能動的に変更する実施例に基づいて、本発明を説明した。しかしながら、本発明は、当然ながら他の光学的に有効な素子、例えば、照明装置の光学素子または結像装置の他の光学的に有効な構成素子、特にマスク装置および/または基板装置の構成素子などを能動的に変形するためにも使用することができることをここでもう一度述べておく。
【0140】
本発明をマイクロリソグラフィ分野の実施例に基づき説明したが、本発明は、他の任意の用途または結像方法において、特に結像に使用される光の任意の波長で使用することもできることを最後に述べておく。