特許第5961001号(P5961001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961001
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】基板吸着状態の監視方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20160719BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20160719BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20160719BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20160719BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20160719BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20160719BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20160719BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H01L21/302 101G
   H01L21/31 C
   H02N13/00 D
   C23C16/458
   C23C16/50
   !H05H1/46 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-29586(P2012-29586)
(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2013-168428(P2013-168428A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】森本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】福本 英範
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 功一
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−109350(JP,A)
【文献】 特開2004−047512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 16/458
C23C 16/50
H01L 21/3065
H01L 21/31
H02N 13/00
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いた処理槽と、
前記処理槽内に配された支持部材と、
前記支持部材に接して配された基板と、
前記支持部材に付属し、前記支持部材と前記基板の温度を制御する手段と、
前記基板の近傍にプラズマを発生させる手段と、を備えてなるプラズマ処理装置を用い、
前記基板がプラズマに曝される雰囲気へ移行し、前記プラズマによって供給される熱を前記基板が吸収し、
前記基板が前記プラズマに曝される間、前記温度を制御する手段の出力が、所定の時間ほとんど変化がない後、急峻な減少を示す第一信号を検知することにより
前記第一信号を用いて前記支持部材に対する前記基板の吸着状態が、正常に吸着されていない状態から、正常に吸着された状態へ遷移したことを判定する工程を有する、ことを特徴とする基板吸着状態の監視方法。
【請求項2】
前記基板が、プラズマに曝されない雰囲気において、
前記温度を制御する手段によって供給される熱を前記基板が吸収し、
前記温度を制御する手段の出力変動を示す第二信号を検知することにより
前記第二信号を用いて前記支持部材に対する前記基板の吸着状態を判定する工程を有す
る、ことを特徴とする請求項1に記載の基板吸着状態の監視方法。
【請求項3】
前記支持部材が静電チャックである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の基板吸着状態の監視方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板吸着状態の監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板に対する成膜やエッチング等の工程において、プラズマを用いた処理は、基板を支持部材に載置し、固定した状態で行われる。基板を支持部材に固定する手段としては、静電チャック方式の基板吸着装置が、広く用いられている。この静電チャック方式の基板吸着装置は、プラズマ処理層内のサセプタ上部に固定されるものであり、例えば、円盤状の誘電体からなる静電チャックプレートに、吸着電極が内在した構成となっている。そして、プラズマを用いて処理する際に、静電チャックプレート中の吸着電極に対して電圧を印加し、帯電した吸着電極から発生する電気的な引力により、基板を静電チャックプレートに吸着保持できるようになっている。
【0003】
ところが、基板と静電チャックプレートの間に異物があったり、基板が沿っていたりする場合には、基板と静電チャックプレートの間の距離が変動してしまい、安定した吸着力が維持できなくなる虞がある。またその場合には、吸着力が基板面内の位置によってばらついてしまう虞がある。安定性、面内均一性を欠いた不完全な吸着状態で、成膜やエッチング等の処理を行った場合、基板面内における処理ばらつきが生じやすくなる。こうした処理ばらつきによる歩留り低下を避ける従来の方法として、基板吸着状態を監視し、異常を検出する方法が、特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1によれば、基板と静電チャックプレートとの間の隙間にガスを導入し、この隙間の圧力変化を測定することにより、基板吸着状態を監視することができる。そして、監視により吸着状態が不完全であれば、基板を無駄に処理することを避けることができ、別途対策を立てることにより、歩留り低下を避けることができる。
【0005】
しかしながら、このような従来の方法で基板吸着状態を監視する場合、従来の基板吸着装置に対し、基板と静電チャックプレートの間に圧力測定用のガスを導入する機能および該ガスを蓄える設備を追加するための大規模な改造が必要となる。
【0006】
また、監視を行うたびにガスが消費されるため、ガスの残量が一定に保たれるように補充する必要がある。ガスの残量管理およびガス補充にともなう手間とコストが余計にかかってしまう。
【0007】
また、従来の方法では、基板全体としての吸着状態を監視することができるが、吸着状態が悪い場合、基板と静電チャックとの間で正常に熱のやり取りが行われたかどうかを特定するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−87480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものであり、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際の基板と支持部材との吸着状態を、基板の支持部材に付属する温度制御手段の出力電力の変動に基づいて監視する、基板吸着状態の監視方法を提供することを、第一の目的とする。
【0010】
また本発明は、プラズマに曝されない雰囲気と、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際の基板と支持部材との吸着状態を、プラズマ処理層内に配された温度計測手段により計測される基板の温度変化に基づいて監視する、基板吸着状態の監視方法を提供することを、第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る基板吸着状態の監視方法は、プラズマを用いた処理槽と、前記処理槽内に配された支持部材と、前記支持部材に接して配された基板と、前記支持部材に付属し、前記支持部材と前記基板の温度を制御する手段と、前記基板の近傍にプラズマを発生させる手段と、を備えてなるプラズマ処理装置を用い、前記基板がプラズマに曝される雰囲気へ移行し、前記プラズマによって供給される熱を前記基板が吸収し、前記基板が前記プラズマに曝される間、前記温度を制御する手段の出力が、所定の時間ほとんど変化がない後、急峻な減少を示す第一信号を検知することにより、前記第一信号を用いて前記支持部材に対する前記基板の吸着状態が、正常に吸着されていない状態から、正常に吸着された状態へ遷移したことを判定する工程を有する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に係る基板吸着状態の監視方法は、請求項1において、前記基板が、プラズマに曝されない雰囲気において、前記温度を制御する手段によって供給される熱を前記基板が吸収し、前記温度を制御する手段の出力変動を示す第二信号を検知することにより、前記第二信号を用いて前記支持部材に対する前記基板の吸着状態を判定する工程を有する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項に係る基板吸着状態の監視方法は、請求項1または2において、前記支持部材が静電チャックである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る基板吸着状態の監視方法では、支持部材に付属した温度制御手段により、基板吸着状態に対応した出力電力の変化を検知する。そして、この出力電力の変化に基づいて、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際の基板と支持部材との吸着状態を、監視することができる。
【0018】
また、本発明に係る基板吸着状態の監視方法では、プラズマを用いた処理層内に配された、温度計測手段により、基板吸着状態に対応した基板温度の変化を検知する。そして、この温度変化に基づいて、プラズマに曝されない雰囲気と、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際の基板と支持部材との吸着状態を、監視することができる。
【0019】
また、本発明に係る基板吸着装置は、基板吸着状態に対応した出力電力の変化を検知する温度制御手段および/または基板吸着状態に対応した基板温度の変化を検知する温度計測手段を備えている。したがって、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際に、前記出力電力の変化および/または基板温度の変化に基づいて、基板の吸着状態を監視することを可能とする、基板吸着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係る基板吸着装置を備えた、プラズマ処理装置の断面図である。
図2】(a)支持部材の温度を調整する工程およびプラズマ処理後に基板を搬出する工程を示す図である。 (b)基板を搬入し、支持部材に吸着させて基板を昇温または降温させる工程、およびプラズマを用いた処理後にプラズマを消去する工程を示す図である。 (c)処理槽内にプラズマを発生させる工程を示す図である。
図3】(a)プラズマ処理に際し、基板の支持部材への異常な吸着状態を示す図である。 (b)プラズマ処理に際し、基板の支持部材への吸着状態の変化を示す図である。
図4】温度制御手段の出力に基づいた、プラズマに曝されない雰囲気における基板吸着状態の変化を示す図である。
図5】第二実施形態に係る基板吸着装置を備えた、プラズマ処理装置の断面図である。
図6】(a)プラズマ処理に際し、基板の支持部材への異常な吸着状態を示す図である。 (b)プラズマ処理に際し、基板の支持部材への吸着状態の変化を示す図である。
図7】第三実施形態に係る基板吸着装置を備えた、プラズマ処理装置の断面図である。
図8】温度制御手段の出力に基づいた、基板吸着状態の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0022】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態に係るプラズマ処理装置100と、それに付設される温度制御手段104、および直流電源108の概略構成を示す図である。プラズマ処理装置100は、プラズマ処理槽101と、プラズマを発生させる手段(不図示)と、処理槽101の内部の底面に配されたサセプタ110と、サセプタ110の上部に固定され、被処理基板103を支持する部材(支持部材)102と、を備える。
【0023】
支持部材102は、少なくとも基板103が接して配される領域においては、平坦な形状をなす。また、支持部材102は、その内部に吸着電極109aと吸着電極109bとからなる吸着電極対109を備えた静電チャック方式の基板吸着体をなす。この静電チャック方式の基板吸着体は、例えば、円盤状の誘電体からなり、電極109aと109bとの間に直流電源108から供給される電圧を印加すると、電極109aおよび109bは、それぞれ正または負に帯電する。
【0024】
電極109aおよび109bを帯電状態にした上で、基板103を支持部材102に近づけると、吸着部109a、109bが発する電気的な引力により、基板103の支持部材102との接触面が、支持部材102と引き合うように帯電する。これにより、プラズマを用いて処理する際に、基板を静電チャックプレートに吸着保持できるようになっている。したがって支持部材102は、基板に対する成膜やエッチング等の工程において、プラズマを用いた処理を行う際に、基板を空間的に固定する手段として用いることができる。
【0025】
また、支持部材102は、基板103との接触面102Sにおいて、基板103への熱の供給や基板103からの熱の吸収を行い、基板103の温度を制御する温度制御部105を有する。
【0026】
温度制御部105は、温度制御手段104と電気的に接続され、温度制御手段104から印加される電力により動作する。温度制御手段104が温度制御部105に印加する電力は、温度制御部105が、基板103に供給する熱量あるいは基板103から吸収する熱量を制御し、その結果として、基板103の温度を制御する。すなわち、温度制御手段104は、温度制御部105を介して、基板103を加熱する手段(加熱手段)あるいは冷却する手段(冷却手段)として機能する。
【0027】
また、温度制御手段104は、温度制御部105を介して、基板103を予め設定した温度となるまで加熱あるいは冷却し、その温度を保つ手段(保温手段)としても機能する。
【0028】
図2(a)〜(c)は、プラズマ処理装置100を用いた、プラズマ処理の工程を説明する図である。図2(a)〜(c)は、後述する第二、第三実施形態に対しても適用することができる。まず、プラズマ処理槽101内に配された支持部材102の初期温度を設定する(図2(a))。
【0029】
次に、プラズマ処理層内101内に基板103を搬入し、支持部材102に載置する(図2(b))。そして、支持部材102に内在する吸着電極対に電圧を印加し、そこから発生する電気的な引力により、基板103を支持部材102に吸着させ、温度制御を行う。
【0030】
次に、反応ガスを導入し、プラズマ処理槽101内が所望の圧力となるように設定する。この状態で電圧を印加し、プラズマ処理層101内において、プラズマ雰囲気Pを発生させる(図2(c))。このとき、プラズマ雰囲気Pが基板103の近傍の領域に達するように、基板103の位置あるいはプラズマ雰囲気Pの発生条件を調整する必要がある。
【0031】
次に、プラズマを用いたプロセス処理の終了後、電圧を下げ、処理槽内のプラズマ雰囲気Pを消去する(図2(b))。
【0032】
そして最後に、プラズマ雰囲気P中で処理された基板103を、処理槽101から搬出する(図2(a))。なお、図1では、サセプタ110および支持部材102が処理槽101内の底面に設けられている例を示しているが、これらは処理槽101内のどこに設けられていてもよい。
【0033】
続いて、第一実施形態の構成に基づき、基板103のプラズマからの吸熱に基づいて、基板吸着状態を監視する方法を説明する。
【0034】
温度制御手段104は、温度制御部105を介して基板103を予め設定した温度に保つように機能する。基板103が支持部材102に正常に吸着されている場合には、基板103と温度制御部105との間に熱のやり取りが行われる。温度制御手段104は、このやり取りされた熱によって変化する基板103の温度を、予め設定された温度に戻すように、温度制御部105に対して電力を印加する。
【0035】
すなわち、支持部材に吸着されることにより、基板103の温度が下がった場合には、温度制御手段104は、温度制御部105に対して出力する電力を高めるように動作する。また、支持部材に吸着されることにより、基板103の温度が上がった場合には、温度制御手段104は、温度制御部105に対して出力する電力を低めるように動作する。
【0036】
したがって、温度制御部105が温度制御手段104から印加される電力は、基板103が支持部材102に正常に吸着され、温度制御部105に対し、熱を放出または吸収した時において変動する。一方、基板103が支持部材102に正常に吸着されていない場合には、基板103は温度制御部105に対して、熱の放出も吸収も起きないため、温度制御部105が温度制御手段104から印加される電力は、プラズマ雰囲気の有無によらず、一定に保たれる。
【0037】
ここで、第一実施形態に係る基板吸着状態の監視を実施した例を示し、監視方法について具体的に説明する。
【0038】
図3(a)は、図1に示したプラズマ処理装置100において、プラズマ処理中に基板103が支持部材102に正常に吸着されていない場合の、温度制御手段104の出力(電力)変化を示すグラフである。このグラフは、実験結果に基づくものである。横軸が経過時間、縦軸が温度制御手段104の出力を示している。ここで、プラズマが発生した時刻をtとしている。
【0039】
このグラフによれば、温度制御手段104の出力は、時刻t以後ほとんど変化がない。これは、支持部材に内在する温度制御部105は、プラズマ雰囲気に曝されて温度が上昇しているはずの基板103から熱を吸収していない様子を示している。すなわち、図3(a)のグラフから、基板103は支持部材102に正常に吸着されていない状態であったことが分かる。
【0040】
図3(b)は、プラズマ処理中のある時刻tを境に何らかの原因で、基板103が支持部材102に正常に吸着されていない状態から、正常に吸着された状態に遷移した場合の、温度制御手段104の出力(電力)の変化を示すグラフである。このグラフは、実験結果に基づくものである。横軸が経過時間、縦軸が温度制御手段104の出力を示している。ここで、プラズマが発生した時刻をtとしている。
【0041】
このグラフによれば、温度制御手段104の出力が、ある時刻t〜tの間ではほとんど変化しないが、時刻tにおいて、急峻な減少している。これは、時刻t〜tの間では、支持部材102に内在する温度制御部105は、プラズマ雰囲気に曝されて温度が上昇しているはずの基板103から熱を吸収していない様子を示している。そして、時刻tにおいて、基板103から熱を吸収した様子を示している。すなわち、図3(b)のグラフから、時刻t〜t間では、基板103は支持部材102に正常に吸着されていない状態であったが、時刻tにおいて基板が正常に吸着した状態となったことが分かる。
【0042】
図3(a)、(b)に示した実施例によれば、温度制御手段104が温度制御部105に対して出力する電力を監視し、基板103がプラズマ雰囲気Pに曝されている間における出力電力の変動の有無を示す信号(第一信号)を検知することにより、基板103の支持部材102に対する吸着状態を判定することができる。
【0043】
すなわち、第一実施形態に係る基板吸着状態の監視方法によれば、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際の、基板と支持部材との吸着状態を監視することができる。そして、監視により吸着状態が不完全である場合には、基板を無駄に処理することを避けることができ、別途対策を立てることにより、歩留り低下を避けることができる。
【0044】
また、第一実施形態に係る基板吸着状態の監視方法は、従来の監視方法と異なり、基板と支持部材との隙間に導入されたガスの圧力変化の測定を必要としない。したがって、既存の基板吸着装置に対し、基板と支持部材との隙間に圧力測定用のガスを導入する機能および該ガスを蓄える設備を追加するための大規模な改造を回避することができる。そして、ガスの残量管理およびガス補充にともなう手間とコストをなくすことができる。
【0045】
以上説明した基板吸着状態の監視方法は、基板のプラズマからの吸熱に基づくものであったが、温度制御手段自身が基板に供給する熱に基づいて、基板吸着状態を監視することもできる。以下に、温度制御手段が基板に供給する熱に基づいて、基板吸着状態の監視を実施した例を示し、この監視方法について具体的に説明する。
【0046】
図4は、図1に示したプラズマ処理装置100において、支持部材102に基板103を載置する過程の、温度制御手段104の出力(電力)変化を示すグラフである。このグラフは、実験結果に基づくものである。横軸が経過時間、縦軸が温度制御手段104の出力を示している。
【0047】
このグラフによれば、温度制御手段104の出力は、ある時刻tにおいて上昇している。これは、時刻tにおいて、基板103が支持部材102を介して温度制御部105から熱を吸収したため、これを補うために、温度制御手段104から温度制御部105に印加する電圧が高められた様子を示している。すなわち、時刻tにおいて、基板102が支持部材103に吸着された状態になったことが分かる。
【0048】
図4に示した実施例によれば、基板103がプラズマ雰囲気Pに曝されていない状況であっても、温度制御手段104が温度制御部105に対して出力する電圧を監視し、出力電圧の変動の有無を示す信号(第二信号)を検知することにより、基板103の支持部材102に対する吸着状態を判定することができる。
【0049】
<第二実施形態>
図5は、第二実施形態に係るプラズマ処理装置200と、それに付設される温度計測手段206、および直流電源208の概略構成を示す図である。プラズマ処理装置200は、プラズマ処理槽201と、プラズマを発生させる手段(不図示)と、処理槽201の内部の底面に配されたサセプタ210と、サセプタ210の上部に固定され、被処理基板203を支持する部材(支持部材)202と、を備える。
【0050】
支持部材202は、基板203の温度を制御する温度制御部を備える代わりに、基板203の温度を計測する温度計測部207を備えた構成となっている。その他の部分の構成については、第一実施形態と同様である。
【0051】
なお、図5においては、温度計測部207が基板203に接するように支持部材202に内在する例を示しているが、温度計測部207の設けられる場所が限定されることはなく、また基板203に対して接触していなくてもよい。また、温度計測部207は複数設けられてもよい。
【0052】
温度計測部207は、基板203の温度を計測する。計測された温度は、温度計測部207と、電気的に接続された温度計測手段206において検知される。
【0053】
続いて、第二実施形態の構成に基づき、基板203のプラズマからの吸熱に基づいて、基板吸着状態を監視する方法を説明する。
【0054】
図2(c)に示すプラズマを発生させる工程において、プラズマ雰囲気Pに曝された基板203は、熱を吸収し、時間とともに温度が上昇する。このとき、基板203が支持部材202に正常に吸着されている場合には、基板203が吸収した熱は支持部材202に内在された温度制御部205に対して放出される。したがって、基板203が支持部材202に正常に吸着されていれば、プラズマ雰囲気Pの有無によらず、基板の温度は一定に保たれる。
【0055】
ところが、基板203が支持部材202に正常に吸着されていない場合、すなわち、基板103の一部または全部が支持部材から離れている場合には、基板203が吸収した熱は、支持部材202に対して放出されることがない。したがって、プラズマが発生している間は、基板203はプラズマ雰囲気Pから吸収した熱を蓄積し、温度が上がり続ける。
【0056】
ここで、第二実施形態に係る基板吸着状態の監視を実施した例を示し、監視方法について具体的に説明する。
【0057】
図6(a)は、図5に示したプラズマ処理槽200において、プラズマ処理中に基板203が支持部材202に正常に吸着されていない場合の、基板203の温度変化を示すグラフである。このグラフは、実験結果に基づくものである。横軸が経過時間、縦軸が基板203の温度を示している。ここで、プラズマが発生した時刻をtとしている。
【0058】
このグラフによれば、後半において、基板203の温度が単調に増加している。これは、プラズマ雰囲気に曝されることにより、基板203が熱を吸収し、吸収した熱が放出されないため、時間の経過とともに蓄積して行く様子を示している。すなわち、図6(a)のグラフから、基板203は支持部材202に正常に吸着されていない状態であったことが分かる。
【0059】
図6(b)は、プラズマ処理中のある時刻tを境に何らかの原因で、基板203が支持部材202に正常に吸着されていない状態から、正常に吸着された状態に遷移した場合の、基板203の温度変化を示すグラフである。横軸が経過時間、縦軸が基板203の温度を示している。ここで、プラズマが発生した時刻をtとしている。
【0060】
このグラフによれば、基板203の温度は、時刻tまでは単調に増加している。そして、時刻tにおいて、急峻な減少を示した後に一定値を保っている。これは、時刻tまでは、プラズマ雰囲気に曝されることにより基板203が熱を吸収し、吸収した熱が放出されないため、時間の経過とともに熱が蓄積して行く様子を示している。そして、時刻tにおいて、基板203が、プラズマ雰囲気Pに曝されることにより吸収した熱を放出し、熱平衡状態となった様子を示している。すなわち、図6(b)のグラフから、時刻t〜tの間では、基板203は支持部材202に正常に吸着されていない状態であったが、時刻tにおいて正常に吸着された状態となったことが分かる。
【0061】
図6(a)、(b)に示した実施例によれば、温度計測手段206において、温度制御部207を介して計測される基板203の温度を監視し、その変動を示す信号(第三信号)を検知することにより、基板203の支持部材202に対する吸着状態を判定することができる。
【0062】
すなわち、第二実施形態に係る基板吸着状態の監視方法によれば、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際の、基板と支持部材との吸着状態を監視することができる。そして、監視により吸着状態が不完全である場合には、基板を無駄に処理することを避けることができ、別途対策を立てることにより、歩留り低下を避けることができる。
【0063】
また、第二実施形態に係る基板吸着状態の監視方法は、従来の監視方法と異なり、基板と支持部材との隙間に導入されたガスの圧力変化の測定を必要としない。したがって、既存の基板吸着装置に対し、基板と支持部材との隙間に圧力測定用のガスを導入する機能および該ガスを蓄える設備を追加するための大規模な改造を回避することができる。そして、ガスの残量管理およびガス補充にともなう手間とコストをなくすことができる。
【0064】
また、第二実施形態に係る基板吸着装置において、温度計測部が、基板面内の複数箇所の温度を別々に計測できるように設ければ、基板吸着状態が悪い場合、基板のどの箇所にその原因があるのかを特定することができる。
【0065】
<第三実施形態>
図7は、第三実施形態に係るプラズマ装置300と、それに付設される温度制御手段304、温度計測手段306、および直流電源308の概略構成を示す図である。プラズマ処理装置300は、プラズマ処理槽301と、プラズマを発生させる手段(不図示)と、処理槽301の内部の底面に配されたサセプタ310と、サセプタ310の上部に固定され、被処理基板303を支持する部材(支持部材)302と、を備える。
【0066】
支持部材302は、基板303との接触面302Sにおいて、基板303への熱の供給や基板からの熱の吸収を行い、基板303の温度を制御する温度制御手段304を有する。
【0067】
支持部材302は、基板303の温度を計測する温度計測部307を備えた構成となっている。その他の部分の構成については、第一実施形態あるいは第二実施形態と同様である。
【0068】
一方、図2(c)に示すプラズマを発生させる工程において、プラズマ雰囲気Pに曝された基板303は、熱を吸収し、時間とともに温度が上昇する。このとき、基板303が支持部材302に正常に吸着されている場合には、基板303が吸収した熱は支持部材302に内在された温度制御部305に対して放出される。したがって、基板303が支持部材302に正常に吸着されていれば、プラズマ雰囲気Pの有無によらず、基板の温度は一定に保たれる。
【0069】
ところが、基板203が支持部材202に正常に吸着されていない場合、すなわち、基板103の一部または全部が支持部材から離れている場合には、基板203が吸収した熱は、支持部材202に対して放出されることがない。したがって、プラズマが発生している間は、基板203はプラズマ雰囲気Pから吸収した熱を蓄積し、温度が上がり続ける。
【0070】
温度制御部305が温度制御手段304から供給される電力は、基板303が支持部材に正常に吸着され、温度制御部305に対し、熱を放出した時にのみ変動する。そして、基板303が支持部材302に正常に吸着されていない場合には、温度制御部305が温度制御手段304から供給される電力は、プラズマ雰囲気の有無によらず、一定に保たれる。
【0071】
以上より、温度制御手段304が温度制御部305に対して出力する電力を監視し、基板303がプラズマ雰囲気Pに曝されている間における出力電圧の変動の有無を示す信号(第一信号)を検知することにより、基板303の支持部材302に対する吸着状態を判定することができる。
【0072】
温度計測手段306において、温度制御部307を介して計測される基板303の温度を監視し、その変動を示す信号(第三信号)を検知することにより、基板303の支持部材302に対する吸着状態を判定することができる。
【0073】
すなわち、第三実施形態に係る基板吸着状態の監視方法によれば、プラズマに曝されない雰囲気からプラズマに曝される雰囲気に移行する際の、基板と支持部材との吸着状態を監視することができる。そして、監視により吸着状態が不完全である場合には、基板を無駄に処理することを避けることができ、別途対策を立てることにより、歩留り低下を避けることができる。
【0074】
また、第三実施形態に係る基板吸着状態の監視方法は、従来の監視方法と異なり、基板と支持部材との隙間に導入されたガスの圧力変化の測定を必要としない。したがって、既存の基板吸着装置に対し、基板と支持部材との隙間に圧力測定用のガスを導入する機能および該ガスを蓄える設備を追加するための大規模な改造を回避することができる。そして、ガスの残量管理およびガス補充にともなう手間とコストをなくすことができる。
【0075】
また、第三実施形態に係る基板吸着装置において、温度計測部が、基板面内の複数箇所の温度を別々に計測できるように設ければ、基板吸着状態が悪い場合、基板のどの箇所にその原因があるのかを特定することができる。
【0076】
以上説明した基板吸着状態の監視方法は、基板のプラズマからの吸熱に基づくものであったが、温度制御手段自身が基板に供給する熱に基づいて、基板吸着状態を監視することもできる。以下に、温度制御手段が基板に供給する熱に基づいて、基板吸着状態の監視を実施した例を示し、この監視方法について具体的に説明する。
【0077】
図8は、図7に示した第三実施形態に係るプラズマ処理装置300において、支持部材302に基板303を載置する過程における、基板303の温度変化を示すグラフである。このグラフは、実験結果に基づくものである。横軸が経過時間、縦軸が基板303の温度を示している。
【0078】
このグラフによれば、基板303の温度は、ある時刻tにおいて上昇している。これは、時刻tにおいて、基板303が支持部材302に対して熱を吸収している様子を示している。すなわち時刻tにおいて、基板302が支持部材303に吸着された状態になったことが分かる。
【0079】
図8に示した実施例によれば、温度計測手段306において、温度制御部307を介して計測される基板303の温度を監視し、その変動を示す信号(第四信号)を検知することにより、基板303の支持部材302に対する吸着状態を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、被処理基板を支持部材に吸着させた状態において、プラズマ処理を行う場合に対し、広く適用することが出来る。
【符号の説明】
【0081】
100、200、300・・・プラズマ処理装置、101、201、301・・・プラズマ処理槽、102、202、302・・・支持部材、103、203、303・・・基板、104、304・・・温度制御手段、105、305・・・温度制御部、206、306・・・温度計測手段、207、307・・・温度計測部、108、208、308・・・直流電源、109、209、309・・・吸着電極対、110、210、310・・・サセプタ、プラズマ雰囲気P。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8