(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線基地局と移動局との間で、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)方式に従って所定時間のフレーム長内でサブフレームの送受信を行い、前記サブフレームの送受信を前記フレーム長毎に繰り返す無線通信装置において、
受信したサブフレームの先頭を検出し、フレーム同期検出タイミングパルスを生成するフレーム同期検出部と、
前記フレーム同期検出部により生成された前回のフレーム同期検出タイミングパルスと今回のフレーム同期検出タイミングパルスとの間で、内部クロックに同期した信号パルスをカウントし、パルス数を求めるフレーム周期検出カウンタと、
前記フレーム周期検出カウンタにより求めたパルス数からフレーム受信周期を算出し、前記フレーム受信周期に基づいて、前記無線基地局と移動局との間の伝搬遅延時間を算出する伝搬遅延時間算出部と、
前記伝搬遅延時間算出部により算出された伝搬遅延時間が長い場合はフレーム長が長くなるように、前記伝搬遅延時間が短い場合はフレーム長が短くなるように、前記フレーム長を設定するフレーム長設定部と、を備え、
前記フレーム長設定部により設定されたフレーム長に応じた時間長のサブフレームを送信する、ことを特徴とする無線通信装置。
無線基地局と移動局との間で、時分割複信方式に従って所定時間のフレーム長内でサブフレームの送受信を行い、前記サブフレームの送受信を前記フレーム長毎に繰り返す無線通信方法において、
サブフレームを受信するステップと、
前記受信したサブフレームの先頭を検出し、フレーム同期検出タイミングパルスを生成するステップと、
先に生成したフレーム同期検出タイミングパルスと、その後に生成したフレーム同期検出タイミングパルスとの間で、内部クロックに同期した信号パルスをカウントし、パルス数を求めるステップと、
前記パルス数からフレーム受信周期を算出するステップと、
前記フレーム受信周期に基づいて、前記無線基地局と移動局との間の伝搬遅延時間を算出するステップと、
前記伝搬遅延時間が長い場合はフレーム長が長くなるように、前記伝搬遅延時間が短い場合はフレーム長が短くなるように、前記フレーム長を設定するステップと、
前記設定したフレーム長に応じた時間長のサブフレームを送信するステップと、
を有することを特徴とする無線通信方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による無線通信装置が設けられた無線基地局と移動局とが1対1で対向した通信システムを示す概略図である。無線基地局及び移動局のそれぞれに、本発明の実施形態による無線通信装置が設けられている。無線基地局と移動局との送受信間距離は0〜100kmであり、互いに離れた状態でTDD方式に基づいて通信を行う場合を想定する。移動局は、例えばヘリコプター、飛行機、新幹線等に搭載されている。
【0022】
図2は、本発明の実施形態による無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図1に示した通信システムにおいて、無線基地局に設けられた無線通信装置の構成と移動局に設けられた無線通信装置の構成とは同一である。この無線通信装置1は、無線基地局に設けられているものとして説明する。無線通信装置1は、信号処理部2、送受信高周波部3及び送受信アンテナ4を備えている。信号処理部2は、A/D(Analog/Digital:アナログ/デジタル)変換部10、直交復調部11、フレーム同期検出部12、AFC(Automatic Frequency Control:自動周波数制御)部13、PHY(PHYsical layer:物理層)ヘッダ復調・解析部14、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)復調部15、デマッピング部16、復号部17、受信データ保持部18、フレーム長・処理遅延検出部19、適応変調制御部20、送信タイミング算出部21、送信タイミング制御部22、送信データ保持部23、符号化部24、マッピング部25、OFDM変調部26、GI(Guard Interval:ガードインターバル)付加部27、TDDフレーム生成部28、直交変調部29、D/A(Digital/Analog:デジタル/アナログ)変換部30、フレーム周期検出カウンタ31、伝搬遅延時間算出部32及びフレーム長制御部(フレーム長設定部)33を備えている。送受信高周波部3は、送受信切替部40、受信高周波部41及び送信高周波部42を備えている。
【0023】
ここで、送受信高周波部3から受信信号を入力してフレーム同期検出部12にてフレーム同期を検出するまでの処理を行う、信号処理部2のA/D変換部10、直交復調部11及びフレーム同期検出部12により、受信処理部が構成される。また、送信データに対し符号化を施してからD/A変換し、送信信号を送受信高周波部3に出力するまでの処理を行う、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統により、送信処理部が構成される。尚、
図2において、実線の矢印は送受信信号を示し、点線の矢印は制御信号等を示す。
【0024】
〔受信処理〕
まず、移動局から送信された信号を受信する処理について説明する。無線基地局の無線通信装置1は、送信処理を行っているときを除いて、基本的に信号受信の待ち受け状態である。
【0025】
図3は、TDDサブフレームの構成を示す図である。このTDDサブフレームは、移動局から送信される信号の構成例を示しており、複数のOFDMシンボルの先頭に既知信号であるプリアンブルが付加されており、このプリアンブルに加え、PHYヘッダ、PHYペイロード及びPHYトレーラにより構成される。
【0026】
図4は、
図3に示したTDDサブフレームの先頭に付加されたプリアンブル信号の波形を示す図である。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸はプリアンブル信号の振幅を示す。移動局から送信されるTDDサブフレームのプリアンブル信号は、
図4に示すように、所定周期にて規則的な振幅を有する時間波形になっている。
【0027】
図2に示す無線基地局の無線通信装置1において、送受信高周波部3は、TDDサブフレームに対し高周波の周波数変換を行うと共に、送受信アンテナ4を介したTDDサブフレームの送受信の切り替えを行う。送受信高周波部3の送受信切替部40は、送信を行っているときを除き、RFスイッチにより送受信アンテナ4と受信高周波部41とを接続して受信待ちの状態とし、送受信アンテナ4を介して、移動局から送信されたTDDサブフレームの信号(受信信号)を受信する。受信高周波部41は、送受信切替部40から受信信号を入力し、入力した受信信号の無線周波数を、デジタル信号処理が可能なIF(Intermediate Frequency:中間周波数)帯の信号に変換する。尚、受信高周波部41の電源は、後述する送信高周波部42と異なり、常にONの状態になっている。
【0028】
信号処理部2のA/D変換部10は、送受信高周波部3の受信高周波部41からIF信号を入力し、アナログのIF信号をデジタルのIF信号に変換する。直交復調部11は、A/D変換部10からデジタルのIF信号を入力し、デジタル直交復調を施す。フレーム同期検出部12は、直交復調部11からデジタル直交復調された信号(TDDサブフレームの信号)を入力し、TDDサブフレームの先頭を検出する。
【0029】
図5は、フレーム同期検出部12においてフレーム先頭を検出するための移動相関値を示す図である。
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は移動相関値を示す。フレーム同期検出部12は、入力した信号(受信信号)と既知のプリアンブルとの間の移動相関処理を時間領域にて行い、
図5に示す移動相関値を算出する。そして、フレーム同期検出部12は、時間領域の移動相関値から相関ピークを検出し、検出した相関ピークの時間位置からTDDサブフレームの先頭を検出する。フレーム同期検出部12は、フレーム先頭を検出すると、TDDサブフレームの先頭の時間位置を示すフレーム同期検出タイミングパルスを生成し、検出した相関ピークの複素信号値をAFC部13に出力し、フレーム同期検出タイミングパルスを送信タイミング算出部21及びフレーム周期検出カウンタ31に出力する。
【0030】
図2に戻って、AFC部13は、フレーム同期検出部12から検出した相関ピークの複素信号値を入力し、周波数偏差に対応する複素信号値の位相情報を用いて移動局と無線基地局との間の周波数偏差を補正する。PHYヘッダ復調・解析部14は、AFC部13から周波数偏差が補正されたTDDサブフレームの信号を入力し、プリアンブルに続くPHYヘッダを復調する。そして、PHYヘッダ復調・解析部14は、復調後のPHYヘッダを解析して受信信号の信号形式(変調方式、符号化率等)を抽出し、受信信号の信号形式を示す符号化及び変調方式の情報をOFDM復調部15及び適応変調制御部20に出力する。また、PHYヘッダ復調・解析部14は、復調したPHYヘッダをフレーム長・処理遅延検出部19に出力する。
【0031】
OFDM復調部15は、AFC部13からTDDサブフレームの信号を入力すると共に、PHYヘッダ復調・解析部14から受信信号の符号化及び変調方式の情報を入力し、TDDサブフレームのPHYヘッダに続くPHYペイロードに格納されたデータを復調する。デマッピング部16は、OFDM復調部15から復調されたデータを入力し、デマッピングを行う。復号部17は、デマッピング部16からデマッピングされたデータを入力し、復号(誤り訂正)を行い、復号したデータを受信データとして受信データ保持部18に保持する。受信データ保持部18に保持された受信データは、上位層へ出力される。
【0032】
フレーム長・処理遅延検出部19は、PHYヘッダ復調・解析部14から復調されたPHYヘッダを入力すると共に、適応変調制御部20から、当該無線基地局の無線通信装置1から送信する次のデータの(次の送信信号の)符号化及び変調方式の情報を入力する。そして、フレーム長・処理遅延検出部19は、入力したPHYヘッダから受信フレーム長(受信サブフレーム長)及び送信フレーム長(送信サブフレーム長)を検出(抽出)し、入力した次の送信信号の符号化及び変調方式並びに送信フレーム長に基づいて、送信系統における処理遅延の時間を検出(設定)する。ここで、受信したTDDサブフレームのPHYヘッダには、当該受信したTDDサブフレームの時間長を示す受信フレーム長、及び、当該無線通信装置1が送信したTDDサブフレームの送信フレーム長が格納されているものとする。尚、当該無線通信装置1は、TDDサブフレームを送信したときに送信フレーム長を保持しておき、フレーム長・処理遅延検出部19は、保持していた送信フレーム長を用いるようにしてもよい。
【0033】
フレーム長・処理遅延検出部19は、受信フレーム長及び送信系統における処理遅延の時間(送信信号の符号化・変調処理時間)を送信タイミング算出部21に出力する。例えば、フレーム長・処理遅延検出部19は、符号化方式、変調方式、送信フレーム長及び送信系統における処理遅延を対応付けたテーブルを用いて、送信信号の符号化・変調処理時間を設定する。また、フレーム長・処理遅延検出部19は、符号化方式、変調方式及び処理遅延を対応付けたテーブルを用いて処理遅延を検索し、処理遅延及び送信フレーム長による所定式を用いて、送信信号の符号化・変調処理時間を設定するようにしてもよい。
【0034】
適応変調制御部20は、PHYヘッダ復調・解析部14から受信信号の符号化及び変調方式の情報を入力すると共に、フレーム長制御部33から送信フレーム長を入力し、入力した受信信号の符号化及び変調方式を、当該無線基地局の無線通信装置1が次に送信するデータの符号化及び変調方式に設定する。また、適応変調制御部20は、入力した送信フレーム長に相当する分量の送信データに対し、符号化部24、マッピング部25及びOFDM変調部26にて処理が行われるように制御する。これにより、後述する符号化部24は、送信フレーム長、符号化率及び変調方式に応じた分量の送信データが読み出される。ここで、移動局から受信した受信信号の符号化及び変調方式の情報は、移動局が、過去に無線基地局から受信した信号の品質情報に基づいて決定したものであり、移動局は、無線基地局から受信した信号の品質情報に基づいて、最適な符号化及び変調方式を決定し、TDDサブフレームのPHYヘッダに当該符号化及び変調方式を格納して無線基地局へ送信する適応変調制御を行っているものとする。
【0035】
適応変調制御部20は、設定した次の送信信号の符号化及び変調方式の情報を、フレーム長・処理遅延検出部19、符号化部24、マッピング部25及びOFDM変調部26に出力する。これにより、適応変調制御部20は、送信系統の符号化部24、マッピング部25及びOFDM変調部26を制御することができる。
【0036】
尚、TDD方式を用いる場合は、移動局から無線基地局への上り回線と、無線基地局から移動局への下り回線との伝搬路が共通であるため、移動局から受信した信号の品質を無線基地局で観測するようにしてもよい。この場合、無線基地局に設けられた無線通信装置1の適応変調制御部20は、その観測した品質情報に基づいて、送信信号の符号化及び変調方式を決定する。
【0037】
送信タイミング算出部21は、フレーム同期検出部12からTDDサブフレームの先頭の時間位置を示すフレーム同期検出タイミングパルスを入力すると共に、フレーム長・処理遅延検出部19から受信フレーム長及び送信信号の符号化・変調処理時間を入力する。そして、送信タイミング算出部21は、受信フレーム長及び送信信号の符号化・変調処理時間等に基づいて、フレーム同期検出タイミングから送信タイミングまでの間の時間を示す送信タイミング調整時間を、後述する数式(2)を用いて算出し、フレーム同期検出タイミングパルス、送信タイミング調整時間及び送信信号の符号化・変調処理時間を送信タイミング制御部22に出力する。
【0038】
送信タイミング制御部22は、送信タイミング算出部21からフレーム同期検出タイミングパルス、送信タイミング調整時間及び送信信号の符号化・変調処理時間を入力し、フレーム同期検出タイミングパルスの時点から送信タイミング調整時間の経過後のタイミングにて、送信タイミング信号を生成し、生成した送信タイミング信号を送信データ保持部23に出力する。また、送信タイミング制御部22は、送信タイミング信号の時点から送信信号の符号化・変調処理時間の経過後のタイミングにて、切替タイミング信号を生成し、生成した切替タイミング信号を送受信切替部40及び送信高周波部42に出力する。この切替タイミング信号は、送受信高周波部3の送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40のRFスイッチを受信高周波部41から送信高周波部42へ切り替えるタイミングを示す信号であり、移動局から送信されたTDDサブフレームの受信が完了するタイミングを示す信号でもある。
【0039】
送信タイミング信号と切替タイミング信号とを出力するタイミングが異なるのは、送信のための符号化及び変調方式の処理を開始するタイミングと、送受信高周波部3の送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40のRFスイッチを受信高周波部41から送信高周波部42へ切り替えるタイミングとが異なるからである。これにより、送信信号がD/A変換部30にてD/A変換されると同時に、送信高周波部42の電源がONとなり、送受信切替部40において送受信アンテナ4と送信高周波部42とが接続される。そして、送信信号(TDDサブフレームの信号)は、無線信号として送受信アンテナ4から出力される。
【0040】
送信高周波部42が送受信切替部40及び送受信アンテナ4を介して送信信号を出力した後、送受信切替部40は、直ちに送受信アンテナ4と受信高周波部41とを接続し、送信高周波部42の電源がOFFになる。これにより、無線通信装置1は、移動局からの信号受信の待ち受け状態となる。
【0041】
〔送信処理〕
次に、無線基地局から信号を送信する処理について説明する。送信データ保持部23は、上位層から送信データを入力してバッファに保持し、送信タイミング制御部22から送信タイミング信号を入力すると、入力したタイミングにて、バッファから送信データを読み出して符号化部24に出力する。
【0042】
符号化部24は、適応変調制御部20から送信フレーム長、符号化及び変調方式の情報を入力し、送信データ保持部23から、送信フレーム長、符号化及び変調方式に応じた所定分量の送信データを入力する。そして、符号化部24は、入力した情報が示す符号化方式で送信データを符号化する。符号化された送信データは、移動局の復号部において誤り訂正処理が施される。マッピング部25は、適応変調制御部20から送信フレーム長、符号化及び変調方式の情報を入力すると共に、符号化部24から符号化されたデータを入力し、入力した情報が示す変調方式に基づいて、入力した所定分量のデータの1ビットまたは複数ビットを1つのサブキャリアに割り当てるため、入力したデータを複素平面上の1つの信号点に割り当てる(マッピングする)。OFDM変調部26は、適応変調制御部20から送信フレーム長、符号化及び変調方式の情報を入力すると共に、マッピング部25からマッピングされたデータを入力し、入力した情報が示す変調方式に基づいて、入力した所定分量のデータについてサブキャリア毎の複素信号値をFFT演算により時間領域の信号に変換する。GI付加部27は、OFDM変調部26から時間領域の信号を入力し、入力した時間領域の信号にGIを付加する。
【0043】
TDDフレーム生成部28は、GI付加部27からGIが付加された時間領域の信号を入力すると共に、フレーム長制御部33から送信フレーム長を入力し、複数のOFDMシンボルを、入力した送信フレーム長になるように1つのTDDサブフレームとして生成する。直交変調部29は、TDDフレーム生成部28により生成されたTDDサブフレームをデジタル直交変調する。D/A変換部30は、直交変調部29によりデジタル直交変調されたデジタルの信号をアナログの信号に変換する。D/A変換部30により変換された送信信号は、送受信高周波部3の送信高周波部42に出力される。
【0044】
尚、フレーム周期検出カウンタ31、伝搬遅延時間算出部32及びフレーム長制御部33については、後述するフレーム長設定処理において説明する。
【0045】
送信高周波部42及び送受信切替部40は、送信タイミング制御部22から切替タイミング信号を入力し、その入力した時点にて、送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40においてRFスイッチにより送受信アンテナ4と送信高周波部42とを接続する。送信高周波部42は、D/A変換部30から送信信号を入力し、入力した送信信号のIF帯を無線周波数帯に変換して増幅し、送受信切替部40及び送受信アンテナ4を介して、送信信号(TDDサブフレームの信号)として出力する。その後、送受信切替部40は、送受信アンテナ4と受信高周波部41とを接続し、送信高周波部42の電源がOFFになり、無線通信装置1は、移動局からの信号受信の待ち受け状態となる。
【0046】
このような受信処理及び送信処理により、無線基地局から送信された信号が移動局で受信され、受信が完了すると、再び移動局から無線基地局へ信号が送信され、上記動作が繰り返し実行される。
【0047】
〔フレーム長設定処理〕
次に、フレーム長設定処理について説明する。フレーム長設定処理は、フレーム周期検出カウンタ31、伝搬遅延時間算出部32及びフレーム長制御部33により行われる。
図6は、フレーム長設定処理を示すフローチャートである。
【0048】
フレーム周期検出カウンタ31は、フレーム同期検出部12からTDDサブフレームの先頭の時間位置を示すフレーム同期検出タイミングパルスを入力し(ステップS601)、前回入力したフレーム同期検出タイミングパルスと今回入力したフレーム同期検出タイミングパルスとの間で、内部クロックに同期した信号パルスをカウントし、カウントしたパルス数を伝搬遅延時間算出部32に出力する(ステップS602)。
【0049】
伝搬遅延時間算出部32は、フレーム周期検出カウンタ31からフレーム同期検出タイミングパルス間でカウントしたパルス数を入力し、入力したパルス数からフレーム受信周期T
cntを算出する(ステップS603)。パルス数は内部クロックに同期した信号から求められ、1パルスあたりの時間は既知であるから、パルス数からフレーム受信周期T
cntを算出することができる。そして、伝搬遅延時間算出部32は、算出したフレーム受信周期T
cnt、上り回線のサブフレーム長T
UL、下り回線のサブレーム長T
DL、及び送受信高周波部3の送受信切替部40及び送信高周波部42における送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5から、伝搬遅延時間Δτ
1を次式に従って算出する(ステップS604)。
[数1]
Δτ
1={(T
cnt−T
UL−T
DL)/2}−Δτ
5 ・・・(1)
上り回線のサブフレーム長T
ULは、フレーム長・処理遅延検出部19にて検出された受信フレーム長であり、受信信号であるTDDサブフレームのPHYヘッダから抽出される。下り回線のサブレーム長T
DLも、フレーム長・処理遅延検出部19にて検出された送信フレーム長であり、前回の送信処理にて送信されたTDDサブフレームの送信フレーム長である。また、送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5は、当該無線通信装置1に応じて予め設定される時間であり、詳細については後述する。尚、前記数式(1)の導出根拠については、後述する
図8にて説明する。
【0050】
フレーム長制御部33は、伝搬遅延時間算出部32から伝搬遅延時間Δτ
1を入力し、伝搬遅延時間Δτ
1に基づいて、伝搬遅延時間Δτ
1が長い場合はフレーム長が長くなるように、伝搬遅延時間Δτ
1が短い場合は短くなるように、フレーム長を設定する(ステップS605)。
【0051】
例えば、フレーム長制御部33は、伝搬遅延時間Δτ
1とフレーム長との対応関係が定義されたテーブルを用いて、伝搬遅延時間Δτ
1が83μs未満の場合、フレーム長を5msに設定し、伝搬遅延時間Δτ
1が83μs以上166μs未満の場合、フレーム長を10msに設定し、伝搬遅延時間Δτ
1が166μs以上333μs未満の場合、フレーム長を20msに設定し、伝搬遅延時間Δτ
1が333μs以上667μs未満の場合、フレーム長を40msに設定する。これにより、最大伝搬距離100kmの通信において、伝搬距離の長短に関わらず、時間利用効率を98%以上に維持することが可能となる。
【0052】
フレーム長制御部33は、設定したフレーム長から送信フレーム長を算出し、送信フレーム長を適応変調制御部20及びTDDフレーム生成部28に出力する(ステップS606)。送信フレーム長は、フレーム長、受信フレーム長、伝搬遅延時間Δτ
1及び送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5により算出される。後述する
図9(b)を参照して、送信フレーム長は、送信フレーム長T
DL1=フレーム長T
1−受信フレーム長T
UL1−2×伝搬遅延時間Δτ
1−2×送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5)により算出され、この式は前記数式(1)と同じである。
【0053】
〔送信タイミング制御〕
次に、送信タイミング制御について説明する。
図7は、送信タイミング制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートには、送信タイミング制御のための主な処理のみが示されている。
【0054】
図7において、無線通信装置1は、移動局からTDDサブフレームを受信し(ステップS701)、フレーム同期検出部12は、TDDサブフレームのフレーム先頭を検出し、フレーム同期検出タイミングパルスを生成する(ステップS702)。
【0055】
PHYヘッダ復調・解析部14は、TDDサブフレームのPHYヘッダから、受信信号の符号化及び変調方式を抽出し(ステップS703)、適応変調制御部20は、受信信号の符号化及び変調方式を、送信信号の符号化及び変調方式に設定する(ステップS704)。そして、フレーム長・処理遅延検出部19は、TDDサブフレームのPHYヘッダから受信フレーム長及び送信フレーム長を検出(抽出)し、送信信号の符号化及び変調方式並びに送信フレーム長から送信系統の遅延時間(送信信号の符号化・変調処理時間)を検出(設定)する(ステップS705)。そして、送信タイミング算出部21は、後述する数式(2)を用いて、送信タイミング調整時間を算出する(ステップS706)。そして、送信タイミング制御部22は、フレーム同期検出タイミングパルスの時点から送信タイミング調整時間の経過後に、送信タイミング信号を生成して出力すると共に、送信タイミング信号の時点から送信信号の符号化・変調処理時間の経過後に、切替タイミング信号を生成して出力する(ステップS707)。
【0056】
送信系統の符号化部24〜D/A変換部30は、送信タイミング信号の時点にて、送信信号の符号化及び変調方式並びに送信フレーム長に従って処理を行う(ステップS708)。そして、切替タイミング信号の時点にて、送信高周波部42は電源をONし、送受信切替部40は送受信アンテナ4と送信高周波部42とを接続する(ステップS709)。そして、無線通信装置1は、無線基地局からTDDサブフレームを送信する(ステップS710)。
【0057】
尚、移動局では、前述した無線基地局と同様の処理が行われ、再び移動局から無線基地局へ信号が送信され、上記処理が繰り返される。
【0058】
〔送信タイミング調整時間Δτ
3〕
前述のとおり、送信タイミング算出部21は、フレーム同期検出タイミングパルス、受信フレーム長及び送信信号の符号化・変調処理時間等に基づいて、送信のための符号化及び変調方式の処理を開始する最適な送信タイミングを求め、フレーム同期検出タイミングから送信処理を開始する送信タイミング信号を出力するまでの間の時間を示す送信タイミング調整時間Δτ
3を算出する。
【0059】
具体的には、以下の式により、送信タイミング調整時間Δτ
3を算出する。
[数2]
Δτ
3=T
UL−Δτ
2−Δτ
4+Δτ
5 ・・・(2)
ここで、T
ULは、移動局から無線基地局へ送信される信号のTDDサブフレーム長であり、フレーム長・処理遅延検出部19により検出される受信フレーム長に相当する。Δτ
2は、信号を受信したときから同期検出までの処理遅延時間であり、予め設定される。Δτ
4は、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて符号化及び変調方式の処理のために要する時間であり、フレーム長・処理遅延検出部19により検出される送信系統の遅延時間(送信信号の符号化・変調処理時間)に相当する。Δτ
5は、予め設定される送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間であり、送信高周波部42の電源ONから安定動作するまでの起動時間と、送受信切替部40のRFスイッチを、送受信アンテナ4において受信アンテナから送信アンテナに切り替えるための遷移時間とを比較した場合に、時間の大きい方である。
【0060】
尚、フレーム長Tを送信信号の周期と定義すると、次式で表わされる。
[数3]
T=T
UL+T
DL+2Δτ
1+2Δτ
5 ・・・(3)
T
DLは、無線基地局から移動局へ送信される信号のTDDサブフレーム長である。従来のTDD方式では、一般にフレーム長は固定であるが、本実施形態では、伝搬遅延時間Δτ
1に合わせてガードタイムが適応的に可変するから、前記数式(3)に従ってフレーム長Tは増減する。
【0061】
〔フレーム長設定処理及び送信タイミング制御の処理のタイミング〕
次に、フレーム長設定処理及び送信タイミング制御の処理のタイミングについて説明する。
図8は、これらの処理を説明するためのタイミングチャートである。
【0062】
MSの送信信号(a)は、移動局であるMSから送信されるTDDサブフレームであり、BSの受信信号(b)は、移動局から所定長離れた無線基地局であるBSの送受信アンテナ4を介して受信するTDDサブフレームである。伝搬遅延時間Δτ
1は、移動局が信号の送信を開始してから、無線基地局がその信号の受信を開始するまでの間の時間である。つまり、無線基地局は、移動局が信号の送信を開始してから伝搬遅延時間Δτ
1経過後に、その信号の受信を開始する。伝搬遅延時間Δτ
1は、移動局と無線基地局との間の距離に依存する時間である。
【0063】
フレーム同期検出タイミングパルス(c)は、フレーム同期検出部12によりTDDサブフレームのフレーム先頭を検出したタイミングを示す信号である。処理遅延時間Δτ
2は、
図2に示した信号処理部2のA/D変換部10、直交復調部11及びフレーム同期検出部12における処理時間である。フレーム同期検出部12がフレーム先頭を検出するのは、信号を受信したときから同期検出までの処理遅延時間Δτ
2だけ経過後のタイミングである。尚、処理遅延時間Δτ
2は、無線通信装置1の回路設計の段階で把握することが可能である。
【0064】
BSの送信タイミング信号(変調前)(d)は、送信タイミング制御部22により生成される信号であり、
図2に示した信号処理部2の符号化部24からD/A変換部30までの送信系統が送信のための符号化及び変調方式の処理を開始するタイミングを示す信号である。送信タイミング調整時間Δτ
3は、フレーム同期検出タイミングから当該送信タイミングまでの間の時間であり、後述する送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5も考慮して、送信タイミング算出部21により、後述する(f)のタイミングで送信信号が送受信アンテナ4から送信されるように、前述の数式(2)を用いて事前に算出される。
【0065】
切替タイミング信号(e)は、送信タイミング制御部22により生成される信号であり、
図2に示した信号処理部2の符号化部24からD/A変換部30までの送信系統が送信のための符号化及び変調方式の処理を開始してから、これらの処理遅延の時間経過後の時点のタイミングを示す信号である。言い換えると、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて生成した送信信号を、送受信高周波部3の送信高周波部42にて周波数変換及び増幅した後、送受信アンテナ4から出力するために、送信高周波部42の電源をONし、送受信切替部40のRFスイッチを切り替えるための指示のタイミングを示す信号である。これは、移動局からの信号の受信完了とほぼ同じタイミングである。ここで、送信高周波部42の電源のON/OFFは、無線基地局で信号を受信している間に、送信信号が増幅されて、受信側の受信高周波部41の回路へ回り込んで干渉することを防ぐことを目的とするものであり、主に、送信高周波部42に備えた図示しない電力増幅器を起動し停止させる。
【0066】
符号化・変調処理時間Δτ
4は、
図2に示した信号処理部2の符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて符号化及び変調方式の処理のために要する時間であり、無線通信装置1の回路設計の段階で把握することが可能である。また、後述するBSの送信信号(f)のタイミングにて、送受信アンテナ4から送信信号が出力されるように、符号化部24からD/A変換部30までの送信系統にて先行して符号化・変調処理が開始される。
【0067】
BSの送信信号(f)は、無線基地局であるBSの送受信アンテナ4を介して送信されるTDDサブフレームである。実際の無線通信装置1では、送信高周波部42の電源ONから安定動作するまでの起動時間と、送受信切替部40のRFスイッチを、送受信アンテナ4において受信アンテナから送信アンテナに切り替えるための遷移時間は有限である。両者の時間で大きい方を送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5とすると、信号受信完了の時点から送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5だけ経過したタイミングにて、BSの送信信号(f)が送受信アンテナ4を介して出力される。
【0068】
実際の装置では、送信高周波部42の電源投入から安定動作するまでの起動時間と、RFスイッチを受信アンテナから送信アンテナに切り替えるための遷移時間は有限である。両者の時間で大きい方をΔτ
5とすると、信号受信完了からΔτ
5だけ経過したタイミングで無線基地局のアンテナから信号が送信される。
【0069】
MSの受信信号(g)は、無線基地局から所定長離れた移動局であるMSにて受信するTDDサブフレームである。伝搬遅延時間Δτ
1は、無線基地局が信号の送信を開始してから、移動局がその信号の受信を開始するまでの間の時間であり、前述した伝搬遅延時間Δτ
1と同じ時間である。つまり、移動局は、無線基地局が信号の送信を開始してから伝搬遅延時間Δτ
1経過後に、その信号の受信を開始する。
【0070】
移動局では、無線基地局と同様の処理が行われる。そして、MSの送信信号(h)が、このタイミングにて、再び移動局から無線基地局へ送信され、BSの受信信号(i)が、このタイミングにて、再び無線基地局にて受信される。同様に、フレーム同期検出タイミングパルス(j)が、このタイミングにて、再びフレーム同期検出部12により生成される。
【0071】
フレーム周期検出カウンタ31によりカウントされるパルス(k)は、内部クロックに同期した信号である。フレーム周期検出カウンタ31により、フレーム同期検出タイミングパルス(c)のタイミングとフレーム同期検出タイミングパルス(j)のタイミングとの間のパルス数がカウントされる。そして、伝搬遅延時間算出部32により、パルス数からフレーム受信周期T
cntが算出され、前記数式(1)を用いて伝搬遅延時間Δτ
1が算出される。
【0072】
ここで、フレーム受信周期T
cntは、BSの受信信号(b)の先頭からBSの受信信号(i)の先頭までの間の時間でもあるから、
図8から以下の式が導出される。
[数4]
T
cnt=T
UL+2(Δτ
5+Δτ1)+T
DL ・・・(4)
この数式(4)から前記数式(1)が導出される。そして、フレーム長制御部33により、伝搬遅延時間Δτ
1からフレーム長が設定される。
【0073】
〔無線基地局及び移動局における送受信タイミング〕
次に、無線基地局及び移動局における送受信タイミングについて説明する。
図9は、フレーム長を固定にした場合(a)及び本発明の実施形態におけるフレーム長を可変にした場合(b)の送受信タイミングチャートである。T
UL1,T’
UL1は、移動局であるMSから無線基地局であるBSへの送信におけるTDDサブフレーム長を示し、T
DL1,T’
DL1は、無線基地局から移動局への送信におけるTDDサブフレーム長を示す。また、T
1,T
2は1フレームの時間長(フレーム長)、Gは移動局及び無線基地局のガードタイム、Δτ
1は伝搬遅延時間、Δτ
5は送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間を示す。尚、ガードタイムGは、伝搬遅延時間Δτ
1と送信高周波部起動・RFスイッチ切替遷移時間Δτ
5との合計時間である。
【0074】
図9(a)は、フレーム長を固定にした場合の送受信タイムチャートである。移動局が信号の送信を開始すると、無線基地局は信号受信の待ち受け状態となるが、実際に信号を受信し始めるのは、伝搬遅延時間Δτ
1だけ経過した後である。そして、無線基地局が信号の送信を開始すると、移動局は信号受信の待ち受け状態となるが、実際に信号を受信し始めるのは、同様に、伝搬遅延時間Δτ
1だけ経過した後である。そして、無線基地局は信号の送信を開始し、このような送受信処理が繰り返される。フレーム長T
1は、繰り返しの送受信処理において固定であるから、送信フレーム長T
UL1,T
DL1もそれぞれ同じ時間長となる。したがって、フレーム長T
1において送受信データが占める割合を示す時間利用効率は、繰り返しの送受信処理において同じである。
【0075】
図9(a)において、伝搬遅延が大きい長距離通信を行う場合には、伝搬遅延時間Δτ
1が長くなるため、ガードタイムG及びフレーム長T
1も長くなり、結果として、時間利用効率は低下する。これを解決するために、本発明の実施形態では、伝搬遅延時間Δτ
1が長い場合はフレーム長T
1が長くなり、伝搬遅延時間Δτ
1が短い場合はフレーム長T
1が短くなるように、伝搬遅延時間Δτ
1に応じてフレーム長T
1を可変制御する。
【0076】
図9(b)は、本発明の実施形態において、伝搬遅延時間Δτ
1に応じてフレーム長を可変にした場合の送受信タイミングチャートである。
図9(a)と同様の繰り返しの送受信処理の中で、移動局は、伝搬遅延時間Δτ
1を算出して次のフレーム長T
2を設定し、設定したフレーム長T
2から送信フレーム長T’
UL1を算出し、送信を開始する。同様に、無線基地局は、伝搬遅延時間Δτ
1を算出して次のフレーム長T
2を設定し、設定したフレーム長T
2から次の送信信号の送信フレーム長T’
DL1を算出し、送信を開始する。フレーム長T
2は、繰り返しの送受信処理において、伝搬遅延時間Δτ
1に応じて可変となるから、送信フレーム長T’
UL1,T’
DL1も同様に可変となる。したがって、フレーム長T
2において送受信データが占める割合を示す時間利用効率は、繰り返しの送受信処理において異なる値となる。
【0077】
伝搬遅延が大きい長距離通信を行う場合には、伝搬遅延時間Δτ
1が長くなるため、ガードタイムGも長くなる。しかし、伝搬遅延時間Δτ
1に応じてフレーム長T
2を長くし、送信フレーム長T’
UL1,T’
DL1も長くなるようにした。これにより、フレーム長T
2におけるガードタイムGの占有率を相対的に低減させ、時間利用効率の低下を回避することができ、高効率な通信を実現することが可能となる。
【0078】
図10は、元のフレーム長をn倍とした場合の時間利用効率ηを説明する図である。Tは1フレームの時間長(フレーム長)を示し、T
UL,T
DL,nT
UL,nT
DLは送信フレーム長を示し、T
GTは、送信信号の送信が完了してから受信信号の受信を開始するまでの間の時間を示す。
図10の上段は、元のフレーム長におけるタイミングチャートを示し、
図10の下段は、元のフレーム長がn倍となった後のタイミングチャートを示す。
【0079】
図10の上段に示すように、元のフレーム長の場合の時間利用効率ηは、以下の式で表される。
[数5]
η=(T
UL+T
DL)/(T
UL+T
DL+T
GT) ・・・(5)
【0080】
また、
図10の下段に示すように、元のフレーム長がn倍となった場合の時間利用効率ηは、以下の式で表される。
[数6]
η=(T
UL+T
DL)/(T
UL+T
DL+T
GT/n) ・・・(6)
【0081】
例えば、フレーム長T=5msに対し、フレーム長T=40msのTDDサブフレームを構成した場合、相対的にガードタイムは1/8となる。このように、伝搬遅延が大きい長距離通信を行う場合に、伝搬遅延時間Δτ
1は長くなるが、伝搬遅延時間Δτ
1に応じて送信フレーム長T
UL,T
DLを長くするようにしたから、結果として、フレーム長Tにおけるガードタイムの占有率を相対的に低減させることができ、時間利用効率ηの低下を回避し、高効率な通信を実現することが可能となる。
【0082】
以上のように、本発明の実施形態による無線通信装置1によれば、フレーム長を、無線基地局と移動局との間の伝搬距離に応じて適応的に可変させるようにした。具体的には、フレーム周期検出カウンタ31は、フレーム同期検出部12により生成された前回のフレーム同期検出タイミングパルスと今回のフレーム同期検出タイミングパルスとの間で、内部クロックに同期した信号パルスをカウントしパルス数を求めるようにした。そして、伝搬遅延時間算出部32は、パルス数からフレーム受信周期T
cntを算出し、前記数式(1)を用いて伝搬遅延時間Δτ
1を算出するようにした。そして、フレーム長制御部33は、伝搬遅延時間Δτ
1に基づいて、伝搬遅延時間Δτ
1が長い場合はフレーム長が長くなるように、次のフレーム長を設定し、フレーム長に応じた送信フレーム長を算出するようにした。これにより、フレーム長制御部33により算出された送信フレーム長の送信信号が送信される。送信フレーム長は、伝搬遅延時間Δτ
1が長い場合に長くなるように算出されるから、フレーム長におけるガードタイムの占有率を相対的に低減させることができ、高効率な通信を実現することが可能となる。したがって、対向する無線基地局と移動局との間の伝搬距離に関わらず、時間利用効率を向上させることができる。
【0083】
また、本発明の実施形態による無線通信装置1によれば、伝搬遅延の変動に対して、瞬時に追従した最適なフレーム長を設定することができるから、ヘリコプター、飛行機、新幹線等を利用した高速移動通信において伝搬距離が大きく変化する場合であっても、通信エリアの制約を受けることなく、高効率な通信を実現することができる。
【0084】
尚、本発明の実施形態による無線通信装置1のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。無線通信装置1は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。無線通信装置1に備えた信号処理部2及び送受信高周波部3の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【0085】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、
図2に示した無線通信装置1の構成は一例であり、本発明はこの構成に限定されるものではなく、信号の待ち受け状態において信号を受信し、信号の受信が完了するのを待って、送受信信号が干渉することなく、送信先へ信号を送信する構成であればよい。