特許第5961535号(P5961535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5961535基板液処理方法、基板液処理システムおよび記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961535
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】基板液処理方法、基板液処理システムおよび記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20160719BHJP
【FI】
   H01L21/304 643C
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648G
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 648K
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-257842(P2012-257842)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-107353(P2014-107353A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】河野 央
(72)【発明者】
【氏名】東 博之
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−114183(JP,A)
【文献】 特開2008−235342(JP,A)
【文献】 特開2004−288858(JP,A)
【文献】 特開2009−088078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液と気体とを混合して前記処理液の液滴を生成するとともに、前記液滴を基板へ噴射することによって前記基板を処理する基板液処理方法であって、
前記処理液は、少なくとも第1薬液と該第1薬液よりも少量の第2薬液とを混合して得られるものであり、
前記第1薬液と前記気体とを混合することによって前記第1薬液の液滴を生成して前記基板へ噴射する第1生成工程と、
前記第1生成工程後、前記第1薬液に少なくとも前記第2薬液を混合し、これにより得られる前記処理液を前記気体と混合することによって前記処理液の液滴を生成して前記基板へ噴射する第2生成工程と
を含むことを特徴とする基板液処理方法。
【請求項2】
前記第1生成工程は、
前記気体の供給を開始した後または前記気体の供給と同時に、前記第1薬液の供給を開始すること
を特徴とする請求項1に記載の基板液処理方法。
【請求項3】
前記第1薬液は、前記基板と化学反応を起こさない薬液であること
を特徴とする請求項1または2に記載の基板液処理方法。
【請求項4】
前記第1薬液は、硫酸であり、
前記第2薬液は、過酸化水素水であること
を特徴とする請求項1、2または3に記載の基板液処理方法。
【請求項5】
前記第1生成工程において、前記第1薬液の供給を制御する第1バルブを開放した後、前記第2生成工程において、前記第2薬液の供給を制御する第2バルブを開放すること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の基板液処理方法。
【請求項6】
前記第2生成工程は、前記処理液の液滴を前記基板へ噴射することによって前記基板に形成されたレジスト膜を除去するレジスト除去工程であること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の基板液処理方法。
【請求項7】
前記第1生成工程は、
前記第2生成工程において供給すべき前記気体の流量よりも少ない流量の前記気体を供給すること
を特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の基板液処理方法。
【請求項8】
前記第2生成工程において前記処理液の液滴が生成され、前記液滴が噴射された後、前記液滴を前記基板の中心から周縁部へ向けて移動させるスキャン工程
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の基板液処理方法。
【請求項9】
液体と気体とを混合して液滴を生成する2流体ノズルを用い、処理液の液滴を生成して基板へ噴射することによって前記基板を処理する基板液処理装置と、
前記基板液処理装置を制御する制御部と
を備え、
前記処理液は、少なくとも第1薬液と該第1薬液よりも少量の第2薬液とを混合して得られるものであり、
前記制御部は、
前記基板液処理装置を制御することによって、前記2流体ノズルの液体供給路に前記第1薬液を供給し、前記2流体ノズルの気体供給路に前記気体を供給することによって前記第1薬液の液滴を生成して前記2流体ノズルから噴射させた後に、前記液体供給路に少なくとも前記第2薬液をさらに供給することによって前記処理液の液滴を生成して前記2流体ノズルから噴射させること
を特徴とする基板液処理システム。
【請求項10】
前記液体供給路への前記第1薬液の供給を制御する第1バルブと、
前記液体供給路への前記第2薬液の供給を制御する第2バルブと
を備え、
前記制御部は、
前記第1バルブを開放した後で、前記第2バルブを開放すること
を特徴とする請求項9に記載の基板液処理システム。
【請求項11】
前記液体供給路に接続され、前記第1薬液を前記液体供給路に供給する第1供給管と、
前記第1供給管に設けられ、前記液体供給路への前記第1薬液の供給を制御する第1バルブと、
前記液体供給路に接続され、前記第1供給管よりも長さが長く、前記第2薬液を前記液体供給路に供給する第2供給管と、
前記第2供給管に設けられ、前記液体供給路への前記第2薬液の供給を制御する第2バルブと
を備え、
前記制御部は、
前記第1バルブと前記第2バルブとを同時に開放すること
を特徴とする請求項9に記載の基板液処理システム。
【請求項12】
前記処理液の液滴を前記基板へ噴射することによって前記基板に形成されたレジスト膜を除去すること
を特徴とする請求項9,10または11に記載の基板液処理システム。
【請求項13】
コンピュータ上で動作し、基板液処理装置を制御するプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、請求項1〜8のいずれか一つに記載の基板液処理方法が行われるように、コンピュータに前記基板液処理装置を制御させること
を特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、基板液処理方法、基板液処理システムおよび記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において基板に処理液を供給する方法として、処理液にガスを衝撃させることによって処理液をミスト化し、ミスト化した処理液を基板に吹き付ける方法が知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、処理液であるSPMを窒素(N2)ガスによってミスト化して基板に吹き付けることによって基板に形成されたレジスト膜を剥離する技術が開示されている。SPMは、硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H2O2)の混合溶液である。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の技術では、硫酸供給管と過酸化水素水供給管と窒素ガス供給管とを2流体ノズルに接続し、これらの供給管を介して硫酸、過酸化水素水および窒素ガスを2流体ノズルから同時に吐出することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−130763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術のように、複数の薬液を混合して得られる処理液を用いる場合、各薬液の2流体ノズルへの供給タイミングを正確に揃えることは困難であり、いずれかの薬液が他の薬液よりも先に2流体ノズルから吐出されるおそれがある。
【0007】
2流体ノズルを用いて薬液と気体とを混合する場合、液滴の粒径、流速が所望の粒径、流速となるように、薬液と気体とが予め決められた割合で混合される。しかしながら、上記のようにいずれかの薬液が他の薬液よりも先に吐出された場合、気体に対する液体の割合が予め決められた割合よりも低くなり、液滴の流速が所望の流速よりも速くなるおそれがある。かかる場合、基板の表面に形成されたパターン等が液滴によって予期せぬダメージを受けるおそれがある。
【0008】
実施形態の一態様は、基板にダメージを与えにくい基板液処理方法、基板液処理システムおよび記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の一態様に係る基板液処理方法では、処理液と気体とを混合して処理液の液滴を生成するとともに、この液滴を基板へ噴射することによって基板を処理する。処理液は、少なくとも第1薬液と該第1薬液よりも少量の第2薬液とを混合して得られるものである。そして、実施形態の一態様に係る基板液処理方法は、第1生成工程と、第2生成工程とを含む。第1生成工程は、第1薬液と気体とを混合することによって第1薬液の液滴を生成して基板へ噴射する。そして、第2生成工程は、第1生成工程後、第1薬液に少なくとも第2薬液を混合し、これにより得られる処理液を気体と混合することによって処理液の液滴を生成して基板へ噴射する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、基板にダメージを与えにくい基板液処理方法、基板液処理システムおよび記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態に係る基板液処理システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、基板液処理装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、2流体ノズルの構成を示す模式図である。
図4図4は、基板液処理装置が実行する基板処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、液処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、窒素ガスの供給開始後における流量変化を示す模式図である。
図7図7は、第1供給管および第2供給管の長さを異ならせる場合の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板液処理方法、基板液処理システムおよび記憶媒体の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る基板液処理システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る基板液処理システムの概略構成を示す模式図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。また、以下では、X軸負方向側を基板液処理システムの前方、X軸正方向側を基板液処理システムの後方と規定する。
【0014】
図1に示すように、基板液処理システム100は、搬入出ステーション1と、搬送ステーション2と、処理ステーション3とを備える。これら搬入出ステーション1、搬送ステーション2および処理ステーション3は、基板液処理システム100の前方から後方へ、搬入出ステーション1、搬送ステーション2および処理ステーション3の順で配置される。
【0015】
搬入出ステーション1は、複数枚(たとえば、25枚)のウェハWを水平状態で収容するキャリアCが載置される場所であり、たとえば4個のキャリアCが搬送ステーション2の前壁に密着させた状態で左右に並べて載置される。
【0016】
搬送ステーション2は、搬入出ステーション1の後方に配置され、内部に基板搬送装置21と基板受渡台22とを備える。かかる搬送ステーション2では、基板搬送装置21が、搬入出ステーション1に載置されたキャリアCと基板受渡台22との間でウェハWの受け渡しを行う。
【0017】
処理ステーション3は、搬送ステーション2の後方に配置される。かかる処理ステーション3には、中央部に基板搬送装置31が配置され、かかる基板搬送装置31の左右両側にそれぞれ複数(ここでは、6個ずつ)の基板液処理装置5が前後方向に並べて配置される。かかる処理ステーション3では、基板搬送装置31が、搬送ステーション2の基板受渡台22と各基板液処理装置5との間でウェハWを1枚ずつ搬送し、各基板液処理装置5が、ウェハWに対して1枚ずつ液処理を行う。
【0018】
また、基板液処理システム100は、制御装置6を備える。制御装置6は、基板液処理システム100の動作を制御する装置である。かかる制御装置6は、たとえばコンピュータであり、制御部61と図示しない記憶部とを備える。記憶部には、液処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部61は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板液処理システム100の動作を制御する。
【0019】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置6の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0020】
なお、図1では、便宜上、制御装置6が、基板液処理システム100の外部に設けられる場合を示しているが、制御装置6は、基板液処理システム100の内部に設けられてもよい。たとえば、制御装置6は、基板液処理装置5の上部スペースに収容することができる。
【0021】
このように構成された基板液処理システム100では、まず、搬送ステーション2の基板搬送装置21が、搬入出ステーション1に載置されたキャリアCから1枚のウェハWを取り出し、取り出したウェハWを基板受渡台22に載置する。基板受渡台22に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置31によって搬送され、いずれかの基板液処理装置5に搬入される。
【0022】
基板液処理装置5に搬入されたウェハWは、かかる基板液処理装置5によって液処理が施された後、基板搬送装置31により基板液処理装置5から搬出され、基板受渡台22に再び載置される。そして、基板受渡台22に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置21によってキャリアCに戻される。
【0023】
次に、基板液処理装置5の構成について図2を参照して説明する。図2は、基板液処理装置5の構成を示す模式図である。なお、図2では、基板液処理装置5の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0024】
図2に示すように、基板液処理装置5は、チャンバ51内に、基板保持部52と、流体供給部53,54と、回収カップ55とを備える。
【0025】
基板保持部52は、チャンバ51の略中央に設けられる。かかる基板保持部52の上面には、ウェハWを側面から把持する把持部521が設けられており、ウェハWは、かかる把持部521によって基板保持部52の上面からわずかに離間した状態で水平保持される。
【0026】
また、基板保持部52は、駆動機構522を備え、かかる駆動機構522によって鉛直軸まわりに回転する。なお、基板保持部52は、軸受523を介してチャンバ51および回収カップ55に回転可能に支持される。
【0027】
流体供給部53は、ウェハWの外方からウェハWの上方に移動し、基板保持部52によって保持されたウェハWの上面へ向けて処理液、具体的には、ミスト化したSPMを供給する。SPMは、硫酸(H2SO4)と過酸化水素水(H2O2)の混合溶液である。
【0028】
流体供給部53は、SPMを窒素ガスと混合することによってミスト化して噴射する2流体ノズル70と、2流体ノズル70を水平に支持するアーム532と、アーム532を旋回および昇降させる旋回昇降機構533とを備える。
【0029】
2流体ノズル70には、SPM供給管130と窒素ガス供給管140とがそれぞれ接続される。SPM供給管130は、硫酸供給管131と過酸化水素水供給管132とに分岐され、硫酸供給管131には第1バルブ111を介して硫酸供給源121が接続され、過酸化水素水供給管132には第2バルブ112を介して過酸化水素水供給源122が接続される。また、窒素ガス供給管140には、第3バルブ113を介して窒素ガス供給源123が接続される。なお、2流体ノズル70の構成については、後述する。
【0030】
流体供給部54は、ウェハWの外方からウェハWの上方に移動し、基板保持部52によって保持されたウェハWの上面へ向けてリンス液であるDIW(純水)を供給する。かかる流体供給部54は、ノズル541と、ノズル541を水平に支持するアーム542と、アーム542を旋回および昇降させる旋回昇降機構543とを備える。ノズル541には、第4バルブ114を介してDIW供給源124が接続され、かかるDIW供給源124から供給されるDIWをウェハW上に供給する。
【0031】
回収カップ55は、処理液の周囲への飛散を防止するために、基板保持部52を取り囲むように配置される。かかる回収カップ55の底部には、排液口551が形成されており、回収カップ55によって捕集された処理液は、かかる排液口551から基板液処理装置5の外部に排出される。
【0032】
次に、2流体ノズル70の構成について図3を参照して説明する。図3は、2流体ノズル70の構成を示す模式図である。なお、図3に示す2流体ノズル70の構成は一例であり、図示の内容に限定されない。たとえば、ここでは2流体ノズル70が内部混合型の2流体ノズルであるものとするが、2流体ノズルは外部混合型であってもよい。
【0033】
図3に示すように、2流体ノズル70は、気体供給路71と、液体供給路72と、導出路73とを備える。なお、2流体ノズル70は、たとえばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素系の樹脂を用いて形成される。
【0034】
気体供給路71は、2流体ノズル70の上部から2流体ノズル70の内部へ気体を供給する。また、液体供給路72は、2流体ノズル70の側部から2流体ノズル70の内部へ液体を供給する。
【0035】
導出路73は、気体供給路71の下部に、気体供給路71と略同軸で設けられる。また、導出路73は、気体供給路71の周囲を取り囲むように環状に形成された液体導入路75を介して液体供給路72と接続される。
【0036】
液体供給路72から2流体ノズル70の内部へ供給された液体は、液体導入路75を旋回しながら導出路73の混合部74へ向かって流れ、気体供給路71から供給された気体と混合部74において混合されてミスト化(液滴化)する。そして、ミスト化した液体(液滴)は、気体供給路71から供給される気体とともに導出路73を経て外部に噴射される。
【0037】
第1の実施形態において、気体供給路71には、窒素ガス供給管140および第3バルブ113を介して窒素ガス供給源123が接続され、窒素ガス供給源123から供給される窒素ガスが気体供給路71から2流体ノズル70の内部へ供給される。
【0038】
また、液体供給路72には、SPM供給管130、硫酸供給管131および第1バルブ111を介して硫酸供給源121が接続されるとともに、SPM供給管130、過酸化水素水供給管132および第2バルブ112を介して過酸化水素水供給源122が接続される。
【0039】
そして、硫酸供給源121から供給される硫酸と過酸化水素水供給源122から供給される過酸化水素水とがSPM供給管130において混合されることによってSPMが生成され、生成されたSPMが液体供給路72から2流体ノズル70の内部へ供給される。
【0040】
第1バルブ111〜第3バルブ113は、それぞれ2流体ノズル70への硫酸、過酸化水素水および窒素ガスの供給を制御する機器であり、制御部61によって開閉が制御される。
【0041】
ここで、液体供給路72から供給されるSPMの流量が窒素ガスの流量に対して少なすぎると、液滴の流速が速くなりウェハW上のパターン等にダメージを与える速さになってしまう。また、SPMの流量が多すぎると、SPMの液滴の粒径が大きくなり、SPMを十分にミスト化することができない。このため、SPMの流量は、SPMを十分にミスト化することができ、かつ、ウェハW上のパターンにダメージを与えない程度の流量に調整される。具体的には、SPMの流量は100〜300mL/min程度に調整される。
【0042】
また、気体供給路71から供給される窒素ガスの流量が多すぎると、SPMの液滴の流速が速くなり過ぎてウェハW上のパターンにダメージを与えてしまう。このため、窒素ガスの流量は、ウェハW上のパターンにダメージを与えない程度の流量に調整される。具体的には、窒素ガスの流量は、40〜60L/min程度であることが好ましい。
【0043】
このように、第1の実施形態に係る基板液処理装置5では、SPMの液滴の粒径、流速が所望の粒径、流速となるように、硫酸、過酸化水素水および窒素ガスの流量が予め決められている。
【0044】
しかしながら、第1の実施形態のように複数の薬液を混合して得られる処理液を用いる場合、各薬液の2流体ノズルへの供給タイミングを正確に揃えることは困難であり、いずれかの薬液が他の薬液よりも先に吐出されるおそれがある。かかる場合、気体に対する液体の割合が予め決められた割合よりも低くなる、すなわち、液体の流量が、基板に対してダメージを与えない所定の流量よりも相対的に少なくなるため、液滴の流速が所望の流速よりも速くなり、基板の表面に形成されたパターン等に対して予期せぬダメージを与えるおそれがある。
【0045】
そこで、第1の実施形態に係る基板液処理装置5では、SPMを構成する硫酸および過酸化水素水のうち、流量のより多い硫酸を敢て過酸化水素水よりも早く2流体ノズル70から吐出させることとした。流量の多い薬液から先に2流体ノズル70から吐出させることで、流量の少ない薬液が先に2流体ノズル70から吐出された場合と比較してウェハWに大きなダメージが与えられることを防止することができる。すなわち、ウェハWに予期せぬダメージを与えにくくすることができる。
【0046】
硫酸および過酸化水素水の2流体ノズル70への供給タイミングは、制御部61によって制御される。具体的には、制御部61が第1バルブ111の開放タイミングと第2バルブ112の開放タイミングとを制御することによって、過酸化水素水よりも先に硫酸を2流体ノズル70から吐出させる。
【0047】
次に、基板液処理装置5の具体的動作について説明する。図4は、基板液処理装置5が実行する基板処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図4に示す各処理手順は、制御部61の制御に基づいて行われる。
【0048】
図4に示すように、基板液処理装置5では、まず、搬入処理が行われる(ステップS101)。かかる搬入処理では、基板搬送装置31が基板液処理装置5の把持部521へウェハWを受け渡す。このときウェハWは、パターン形成面が上向きの状態で把持部521に把持される。その後、駆動機構522によって基板保持部52が回転する。これにより、ウェハWは、基板保持部52に水平保持された状態で基板保持部52とともに回転する。なお、ウェハWの回転速度は、たとえば100〜1500rpmである。
【0049】
つづいて、基板液処理装置5では、液処理が行われる(ステップS102)。ここで、ステップS102の液処理の具体的な処理手順について図5を参照して説明する。図5は、液処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、ここでは液処理として、ウェハWの表面に形成されたレジスト膜を除去する処理が行われるものとする。
【0050】
図5に示すように、まず、2流体ノズル70がウェハWの中央上方に移動する(ステップS201)。つづいて、第3バルブ113(図3参照)が開放されることによって2流体ノズル70内への窒素ガスの供給が開始される(ステップS202)。そして、2流体ノズル70内に窒素ガスが供給された後、第1バルブ111(図3参照)が開放されることによって2流体ノズル70内への硫酸の供給が開始される(ステップS203)。
【0051】
これにより、2流体ノズル70からは、まず、硫酸の液滴が吐出されることとなる。このように、基板液処理装置5によれば、2流体ノズル70から過酸化水素水のみの液滴が吐出されることがないため、過酸化水素水の液滴が先に2流体ノズル70から吐出された場合と比較してウェハWに大きなダメージが与えられることを防止することができる。
【0052】
また、過酸化水素水と硫酸との混合比はおよそ1:10〜20であり、硫酸は、SPMとほとんど変わらない流量で吐出される。このため、硫酸のみを先に2流体ノズル70の内部へ供給することとしても、硫酸の液滴の流速とSPMの液滴の流速とに大きな差が生じない。したがって、硫酸の液滴によるウェハWのダメージは、SPMを吐出したときとほとんど変わらない。
【0053】
また、硫酸自体は、ウェハWと化学反応を起こす薬液ではないため、硫酸を先出ししたとしても、ウェハWに化学的ダメージを与えるおそれもない。
【0054】
2流体ノズル70への硫酸の供給タイミングは、2流体ノズル70への窒素ガスの供給を開始した後、すなわち、第3バルブ113を開放した後、所定時間経過後に開始することが好ましい。このようにすることで、窒素ガスの流量にオーバーシュートが生じた場合におけるウェハWへのダメージを抑えることができる。
【0055】
かかる点について図6を参照して説明する。図6は、窒素ガスの供給開始後における流量変化を示す模式図である。なお、図6に示すグラフは、横軸を時間(s)とし、縦軸を窒素ガスの流量(L/min)とした場合の窒素ガスの流量変化を示している。
【0056】
図6に示すように、窒素ガスの立ち上げ時、つまり、時間「0」において第3バルブ113が開放されてから時間「t1」において窒素ガスの流量が予め決められた流量「q1」に安定するまでの間に、窒素ガスが規定の流量「q1」を超えるオーバーシュートが生じることがある。かかるオーバーシュートの期間、すなわち、窒素ガスの流量が規定の流量よりも多い期間に2流体ノズル70内に硫酸が供給されると、硫酸の流量が相対的に少なくなるため、上述したように硫酸の液滴の流速が速くなり、ウェハW上のパターンにダメージを与えることとなる。
【0057】
そこで、硫酸の2流体ノズル70への供給開始タイミング、具体的には、第1バルブ111の開放タイミングは、時間「t1」において窒素ガスの流量が安定した後であることが好ましい。つまり、制御部61は、時間「0」において第3バルブ113を開放した後、少なくとも時間「t1」が経過した後に、第1バルブ111を開放すればよい。これにより、オーバーシュートに起因するウェハWへのダメージを抑えることができる。
【0058】
図5に戻り、液処理の処理手順についての説明を続ける。基板液処理装置5では、2流体ノズル70内に硫酸が供給された後で、第2バルブ112が開放される(ステップS204)。これにより、SPM供給管130内において硫酸と過酸化水素水とが混合されてSPMが生成され、生成されたSPMの液滴が2流体ノズル70から噴射される。
【0059】
つづいて、SPMの液滴が2流体ノズル70から噴射され始めた後、2流体ノズル70がSPMの液滴を噴射しながらウェハWの中心からウェハWの外周部へ向けて移動する(ステップS205)。かかる2流体ノズル70の移動とウェハWの回転とによってウェハWの表面にSPMが広がり、ウェハWに形成されたレジスト膜が除去される。なお、遠心力によってウェハW上から飛散したSPMは、回収カップ55の排液口551(図2参照)から排出される。
【0060】
このように、基板液処理装置5は、SPMの液滴が生成され、かかる液滴が2流体ノズル70から噴射された状態で、2流体ノズル70をウェハWの中心から周縁部へ向けて移動させる。
【0061】
その後、2流体ノズル70が、SPMの液滴を噴射しながらウェハWの外周部からウェハWの中心部へ向けて移動する(ステップS206)。そして、2流体ノズル70がウェハWの中心部へ到達すると、第1バルブ111〜第3バルブ113が、第3バルブ113、第2バルブ112、第1バルブ111の順に閉鎖する(ステップS207〜S209)。
【0062】
このように、第2バルブ112を閉じた後に第1バルブ111を閉じることにより、すなわち、過酸化水素水の供給を硫酸の供給よりも先に停止することにより、SPMの供給停止時においても、ウェハWに大きなダメージが与えられることを防止することができる。また、第3バルブ113を閉じた後に第2バルブ112および第1バルブ111を閉じることにより、すなわち、過酸化水素水および硫酸の供給を停止する前に窒素ガスの供給を停止することにより、過酸化水素水および硫酸に運動エネルギーを与える要因をなくすことができる。したがって、SPMの供給停止時においてウェハWに大きなダメージが与えられることをより確実に防止することができる。
【0063】
ステップS209の処理が終了すると、2流体ノズル70がウェハW外方の退避位置へ移動して液処理が終了する。
【0064】
図4に戻り、液処理以降の処理手順について説明する。ステップS102の液処理が終了すると、基板液処理装置5では、ウェハWの表面をDIWですすぐリンス処理が行われる(ステップS103)。かかるリンス処理では、第4バルブ114(図2参照)が所定時間開放されることによって、流体供給部54のノズル541からウェハWの表面へDIWが供給され、ウェハWに残存するSPMが洗い流される。
【0065】
なお、リンス処理において、流体供給部54から供給されるDIWの流量はたとえば0.1〜3L/minである。
【0066】
つづいて、基板液処理装置5では、乾燥処理が行われる(ステップS104)。かかる乾燥処理では、ウェハWの回転速度を所定時間増加させることによってウェハWの上面に残存するDIWが振り切られて、ウェハWが乾燥する。その後、ウェハWの回転が停止する。なお、乾燥処理時のウェハWの回転速度は、たとえば1000〜2000rpmである。
【0067】
そして、基板液処理装置5では、搬出処理が行われる(ステップS105)。かかる搬出処理では、基板保持部52に保持されたウェハWが基板搬送装置31へ渡される。かかる搬出処理が完了すると、1枚のウェハWについての基板処理が完了する。
【0068】
上述してきたように、第1の実施形態に係る基板液処理装置5は、液体と気体とを混合して液滴を生成する2流体ノズル70を用い、SPMの液滴を生成してウェハWへ噴射することによってウェハWを処理する。SPMは、硫酸(第1薬液の一例)と硫酸よりも少量の過酸化水素水(第2薬液の一例)とを混合して得られるものである。そして、第1の実施形態に係る基板液処理装置5では、2流体ノズル70の液体供給路72に硫酸が供給され、2流体ノズル70の気体供給路71に窒素ガスが供給されることによって硫酸の液滴が生成された後に、液体供給路72に過酸化水素水がさらに供給されることによってSPMの液滴が生成される。
【0069】
したがって、第1の実施形態に係る基板液処理装置5によれば、ウェハWにダメージを与えにくくすることができる。
【0070】
また、第1の実施形態に係る基板液処理装置5では、気体供給路71への窒素ガスの供給を開始した後、液体供給路72への硫酸の供給を開始することとした。具体的には、窒素ガスの供給を制御する第3バルブ113を開放した後に、硫酸の供給を制御する第1バルブ111を開放することとした。したがって、第1の実施形態に係る基板液処理装置5によれば、窒素ガスのオーバーシュートに起因するウェハWへのダメージを抑えることができる。
【0071】
なお、ここでは、制御部61が第1バルブ111〜第3バルブ113を制御することによって規定の流量の硫酸、過酸化水素水および窒素ガスを2流体ノズル70へ供給することとした。しかし、たとえば硫酸供給管131、過酸化水素水供給管132および窒素ガス供給管140に流量調整弁をさらに設け、制御部61が流量調整弁を制御することによって上記流量の硫酸、過酸化水素水および窒素ガスを2流体ノズル70へ供給することとしてもよい。
【0072】
このようにした場合、第3バルブ113のみを設けた場合と比較して窒素ガスの流量をより精度よく制御することができ、オーバーシュートを抑制することができる。したがって、このような場合には、気体供給路71への窒素ガスの供給と同時に、液体供給路72への硫酸の供給を開始することとしてもよい。
【0073】
また、上述した第1の実施形態では、第3バルブ113を開放した後、規定流量の窒素ガスを気体供給路71へ供給することとした。しかし、仮に、硫酸のみの液滴をウェハWへ供給することによってウェハWがダメージを受ける可能性がある場合には、硫酸のみの液滴をウェハWへ供給する期間、窒素ガスの流量を規定流量よりも少なくしてもよい。具体的には、第3バルブ113を開放した後、第2バルブ112が開放されるまでの期間、第2バルブ112開放後に供給すべき窒素ガスの流量よりも少ない流量の窒素ガスを気体供給路71へ供給する。これにより、ウェハWへのダメージをより与えにくくすることができる。
【0074】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、第1バルブ111を開放した後に第2バルブ112を開放することによって、2流体ノズル70への硫酸の供給を過酸化水素水よりも先に開始することとした。しかし、硫酸および過酸化水素水の2流体ノズル70への供給タイミングは、硫酸供給管および過酸化水素水供給管の配管長を異ならせることによっても制御することができる。
【0075】
以下では、かかる点について図7を参照して説明する。図7は、硫酸供給管および過酸化水素水供給管の長さを異ならせる場合の変形例を示す図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0076】
図7に示すように、硫酸供給源121とSPM供給管130とを接続する硫酸供給管131aは、過酸化水素水供給源122とSPM供給管130とを接続する過酸化水素水供給管132aよりも短い。これにより、制御部61が第1バルブ111と第2バルブ112とを同時に開放したとしても、硫酸を過酸化水素水よりも先に液体供給路72へ供給することができる。
【0077】
このように、硫酸供給管131aの長さを過酸化水素水供給管132aよりも短くすることにより、2流体ノズル70への硫酸の供給を過酸化水素水よりも先に開始することとしてもよい。これにより、制御部61による制御を簡素化することができる。
【0078】
上述してきた各実施形態では、第1薬液である硫酸と第2薬液である過酸化水素水とを混合して得られるSPMを処理液として用いる場合の例について説明した。しかし、処理液は、少なくとも第1薬液と第1薬液よりも少量の第2薬液とを混合して得られるものであればよく、SPM以外の処理液であってもよい。
【0079】
たとえば、処理液は、第1薬液である硫酸と第2薬液であるオゾンとを混合して得られるSOMを処理液として用いてもよい。
【0080】
また、処理液は、混合する薬液が3種類以上であっても構わない。たとえば、処理液は、第1薬液である純水、第2薬液である過酸化水素水および第3薬液であるアンモニアを混合して得られるSC1であってもよい。また、処理液は、第1薬液である純水、第2薬液である過酸化水素水および第3薬液である塩酸を混合して得られるSC2であってもよい。
【0081】
また、上述してきた各実施形態では、2流体ノズル70に供給する気体として窒素ガスを用いる場合の例について説明したが、2流体ノズル70に供給する気体は、窒素ガス以外の気体であってもよい。
【0082】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
W ウェハ
3 処理ステーション
5 基板液処理装置
6 制御装置
61 制御部
70 2流体ノズル
71 気体供給路
72 液体供給路
111 第1バルブ
112 第2バルブ
113 第3バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7