特許第5961709号(P5961709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5961709
(24)【登録日】2016年7月1日
(45)【発行日】2016年8月2日
(54)【発明の名称】正極触媒、及び機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20160719BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20160719BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20160719BHJP
   B01J 23/80 20060101ALI20160719BHJP
   C25B 11/06 20060101ALI20160719BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20160719BHJP
【FI】
   H01M4/90 X
   H01M4/86 M
   H01M12/08 K
   B01J23/80 M
   C25B11/06 A
   C25B9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-559681(P2014-559681)
(86)(22)【出願日】2014年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2014051788
(87)【国際公開番号】WO2014119549
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-15336(P2013-15336)
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発/次世代技術開発/アニオン伝導無機層状酸化物形燃料電池の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176660
【氏名又は名称】株式会社三徳
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】大栗 延章
(72)【発明者】
【氏名】高野 洋
(72)【発明者】
【氏名】室田 忠俊
(72)【発明者】
【氏名】松田 基史
(72)【発明者】
【氏名】竹口 竜弥
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−094281(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/029743(WO,A1)
【文献】 特開2005−190833(JP,A)
【文献】 特開2013−109867(JP,A)
【文献】 JUNG Kyu-Nam et al.,Promoting Li2O2 oxidation by an La1.7Ca0.3Ni0.75Cu0.25O4 layered perovskite in lithium-oxygen better,Chem Commun,2012年 9月28日,Vol.48,No.75,page.9406-9408
【文献】 Tatsuya Takeguchi et al.,Layered Perovskite Oxide: A Reversible Air Electrode for Oxygen Evolution/Reduction in Rechargeable,J.Am.Chem.Soc.,2013年 6月26日,Vol.135,page.11125-11130
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/90
H01M 4/86
H01M 12/08
B01J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とを備え、正極側で下式(1)で表される反応が行われる機器の、前記正極に用いられる正極触媒であって、層状金属酸化物を含有し、
4OH → O + 2HO + 4e ・・・(1)
前記層状金属酸化物が、下式(2)で表されるRuddlesden−Popper型層状ペロブスカイトであることを特徴とする正極触媒。
(La1−x)(Fe1−y(Sr1−z10−a
・・・(2)
(式(2)において、AはLa以外の希土類元素である。BはFe以外の遷移金属である。CはSr以外のアルカリ土類金属である。xは0≦x<1である。yは0≦y<1である。zは0≦z<1である。aは0≦a≦3である。)
【請求項4】
前記機器が、金属−空気二次電池又はアルカリ形水電解装置である請求項1記載の正極触媒。
【請求項5】
正極と負極とを備え、正極側で下式(1)で表される反応が行われる機器であって、前記正極が、層状金属酸化物を含有する正極触媒を用いて形成され、
4OH → O + 2HO + 4e ・・・(1)
前記層状金属酸化物が、下式(2)で表されるRuddlesden−Popper型層状ペロブスカイトであることを特徴とする機器。
(La1−x)(Fe1−y(Sr1−z10−a
・・・(2)
(式(2)において、AはLa以外の希土類元素である。BはFe以外の遷移金属である。CはSr以外のアルカリ土類金属である。xは0≦x<1である。yは0≦y<1である。zは0≦z<1である。aは0≦a≦3である。)
【請求項8】
前記機器が金属−空気二次電池であって、前記負極が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一遷移金属及びAlから選ばれる元素を含む負極活性物質を含有する請求項5記載の機器。
【請求項9】
前記機器がアルカリ形水電解装置であって、前記負極が、Ni、Fe、Pt及びPdから選ばれる負極触媒を含有する請求項5記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−空気二次電池やアルカリ形水電解装置などの機器に用いられる正極触媒、及び、正極と負極とを備えた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
正極と負極とを備え、正極側で下式(1)で表される反応が行われる機器として、金属−空気二次電池やアルカリ形水電解装置などがある。
【0003】
4OH → O + 2HO + 4e ・・・(1)
【0004】
金属−空気二次電池は、負極に、Zn、Li、Al、Feなどの金属を活物質として用い、正極に、空気中の酸素を活物質として用いた二次電池である。小型で高容量が可能であり、自動車用の電源、携帯用の電源、定置用の電源などへの応用が期待されている。
【0005】
負極にZnを用いた金属−空気二次電池の充電反応及び放電反応は以下のようにして表わされる。
【0006】
(充電反応)
正極:4OH → O +2HO + 4e
負極:ZnO + HO + 2e → Zn + 2OH
(放電反応)
正極:O +2HO + 4e → 4OH
負極:Zn + 2OH → ZnO + HO + 2e
【0007】
また、アルカリ形水電解装置での電極反応は以下のようにして表わされる。
【0008】
正極:4OH → O + 2HO +4e
負極:2HO + 2e → H + 2OH
【0009】
しかし、金属−空気二次電池は、充放電時において、正極での高い反応過電圧のため、エネルギー変換効率が低くなるという課題があり、本格的な普及に至っていない。
【0010】
また、アルカリ形水電解装置においても、正極での高い反応過電圧のため、エネルギーロスが大きいという課題を抱えている。
【0011】
特許文献1には、イリジウム及び/又はイリジウム酸化物を担持させたニッケル粉末と、白金などの酸素還元触媒を担持させたニッケル粉末と、結着剤とを混合し成型して金属−空気二次電池の空気極を製造することが開示されている。
【0012】
また、非特許文献1には、正極触媒として、ペロブスカイト酸化物の一種であるLaNiOを用いると、放電時の反応過電圧を320mVに低減できるという報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−158013号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Nature Chemistry,3,(2011),546−550ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、金属−空気二次電池の実用化を図るには、充放電時における正極での反応過電圧の更なる低減が望まれている。
【0016】
また、アルカリ形水電解装置においても、エネルギーロスの減少のため、正極での反応過電圧の更なる低減が望まれている。
【0017】
よって、本発明の目的は、正極での反応過電圧の低減が可能な正極触媒、及び、機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らが鋭意検討した結果、正極触媒に層状金属酸化物を用いることで金属−空気二次電池の充放電時における正極の反応過電圧が低くなることを見出し、上記目的を達成するにいたった。
【0019】
すなわち、本発明の正極触媒は、正極と負極とを備え、正極側で下式(1)で表される反応が行われる機器の、前記正極に用いられる正極触媒であって、層状金属酸化物を含有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の機器は、正極と負極とを備え、正極側で下式(1)で表される反応が行われる機器であって、前記正極が、層状金属酸化物を含有する正極触媒を用いて形成されていることを特徴とする。
【0021】
4OH → O + 2HO + 4e ・・・(1)
【0022】
本発明において、前記層状金属酸化物が、Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイトであることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記層状金属酸化物が、下式(2)で表されるRuddlesden−Popper型層状ペロブスカイトであることが好ましい。
【0024】
(La1−x)(Fe1−y(Sr1−z10−a ・・・(2)
(式(2)において、AはLa以外の希土類元素である。BはFe以外の遷移金属である。CはSr以外のアルカリ土類金属である。xは0≦x<1である。yは0≦y<1である。zは0≦z<1である。aは0≦a≦3である。)
【0025】
本発明において、前記機器が、金属−空気二次電池又はアルカリ形水電解装置であることが好ましい。
【0026】
本発明において、前記機器が金属−空気二次電池であって、前記負極が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一遷移金属及びAlから選ばれる元素を含む負極活性物質を含有することが好ましい。
【0027】
本発明において、前記機器がアルカリ形水電解装置であって、前記負極が、Ni、Fe、Pt及びPdから選ばれる負極触媒を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の正極触媒は、層状金属酸化物を含有するので、正極で行われる上記式(1)の反応の反応過電圧を低減することができる。
【0029】
また、本発明の機器は、正極が層状金属酸化物を含有する正極触媒を用いて形成されているので、充放電時における過電圧ロスが小さく、高いエネルギー変換効率を有する金属−空気二次電池や、エネルギーロスの小さいアルカリ形水電解装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】金属−空気二次電池の概略構成図である。
図2】アルカリ形水電解装置の概略構成図である。
図3】実施例1の金属−空気二次電池の正極での充放電反応の実験結果を示す図である。
図4】実施例で使用したモデルセルの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の正極触媒は、正極と負極とを備え、正極側で下式(1)で表される反応が行われる機器の、正極に用いられる正極触媒であって、層状金属酸化物を含有することを特徴とする。
【0032】
4OH → O + 2HO + 4e ・・・(1)
【0033】
本発明において、層状金属酸化物とは、原子または原子団が平面上に配列してシート構造をつくり、この平面に垂直な方向にシート構造の繰り返しが見られる結晶構造を有する金属酸化物のことを意味する。
【0034】
本発明において、層状金属酸化物としては、NaCo、NaLaTiO、BiSr14Fe2456、Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイト等を好ましく用いることができる。なかでも、Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイトが好ましい。Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイトは、ペロブスカイト層と、岩塩構造層とがc軸方向に交互に積層した構造をなしている。Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイトとしては、下式(2)が好ましい一例として挙げられる。
【0035】
(La1−x)(Fe1−y(Sr1−z10−a ・・・(2)
(式(2)において、AはLa以外の希土類元素である。BはFe以外の遷移金属である。CはSr以外のアルカリ土類金属である。xは0≦x<1である。yは0≦y<1である。zは0≦z<1である。aは0≦a≦3である。)
【0036】
式(2)のRuddlesden−Popper型層状ペロブスカイトの具体例としては、LaFeSr10、LaCo1.5Fe1.5Sr10などが挙げられる。
【0037】
Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイトは、次の理由により、式(1)で表される反応において良好な触媒活性が得られると推測される。一つは、高い電子伝導性によるものであり、もう一つは酸化還元が容易に生じることによるものであると推測される。特に、式(2)のRuddlesden−Popper型層状ペロブスカイトは、結晶格子内の積層したFeO八面体に起因する高い電子伝導性を有し、更には、酸化還元が容易に生じるため、式(1)で表される反応において、特に高い触媒活性を有している。
【0038】
NaCoは、例えば、次のようにして調製できる。まず、酢酸ナトリウムと酢酸コバルト四水和物を所定の比率で溶解させた溶液を乾燥させ、得られた試料を粉砕及び仮焼成を行う。次に、仮焼成後の試料を粉砕した後、ペレット状に成型する。次に、ペレット状に成型した試料を750〜850℃で120〜3000分焼成し、粉砕処理する。このようにして、層状の結晶構造を有するNaCoが得られる。
【0039】
NaLaTiOは、例えば、次のようにして調製できる。まず、Na成分、La成分、Ti成分の酸化物、炭酸塩等の原料粉末を、Na、La、Tiの元素比が1:1:1となるようにボールミルに投入し、各成分が十分に均一に混合するまで混合処理を行う。Na成分としては、NaCO、NaHCO、Na、NaNO等が挙げられる。La成分としては、La、LaC、La(CO、La(NO等が挙げられる。Ti成分としては、TiO、TiO、TiC等が挙げられる。次に、得られた試料をペレット状に成型する。次に、ペレット状に成型した試料を700〜750℃で120〜3000分焼成(一次焼成)し、続けて900〜950℃で120〜3000分焼成(二次焼成)する。焼成後のペレットを粉砕処理したのち、蒸留水で洗浄し、洗浄した試料を乾燥する。このようにして、層状の結晶構造を有するNaLaTiOが得られる。
【0040】
BiSr14Fe2456は、例えば、次のようにして調製できる。まず、Bi成分、Sr成分、Fe成分の酸化物、炭酸塩等の原料粉末を、Bi、Sr、Feの元素比が4:14:24となるようにボールミルに投入し、各成分が十分に均一に混合するまで混合処理を行う。Bi成分としては、Bi、Bi、Bi(CHCOO)、Bi(CO)O、Bi(NO等が挙げられる。Sr成分としては、SrCO、SrC、SrO、SrO、Sr(NO等が挙げられる。Fe成分としては、Fe、Fe、FeO、FeCO、Fe(CO等が挙げられる。次に、得られた試料をペレット状に成型する。次に、ペレット状に成型した試料を、1100〜1200℃で120〜3000分焼成し、粉砕処理する。このようにして、層状の結晶構造を有するBiSr14Fe2456が得られる。
【0041】
Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイトは、原料粉末をRuddlesden−Popper型層状ペロブスカイトの量論比となるように混合し、固相反応させることで調製できる。
【0042】
例えば、LaFeSr10は、次のようにして調製できる。まず、La成分、Sr成分、Fe成分の酸化物、炭酸塩等の原料粉末を、La、Sr、Feの元素比が1:3:3となるようにボールミルに投入し、各成分が十分に均一に混合するまで混合処理を行う。La成分、Sr成分、Fe成分は上述したものと同じものを使用できる。次に、得られた試料をペレット状に成型する。次に、ペレット状に成型した試料を1400〜1500℃で120〜3000分焼成し、粉砕処理する。このようにして、層状の結晶構造を有するLaFeSr10が得られる。
【0043】
また、LaCo1.5Fe1.5Sr10は、次のようにして調製できる。すなわち、La成分、Sr成分、Fe成分、Co成分の酸化物、炭酸塩等の原料粉末を、La、Sr、Fe、Coの元素比が1:3:1.5:1.5となるようにボールミルに投入し、各成分が十分に均一に混合するまで混合処理を行う。La成分、Sr成分、Fe成分は上述したものと同じものを使用できる。Co成分としては、Co、Co、CoO、CoCO等が挙げられる。次に、得られた試料をペレット状に成型する。次に、ペレット状に成型した試料を1400〜1500℃程度の温度で焼成し、粉砕処理する。このようにして、層状の結晶構造を有するLaCo1.5Fe1.5Sr10が得られる。
【0044】
本発明の正極触媒は、層状金属酸化物の他に、導電性材料、イオン導電性材料等を含有してもよい。導電性材料としては、Ni、Ti等の金属や、黒鉛等が挙げられる。正極触媒に導電性材料を含有させることで、正極の電子導電性を高めることができる。イオン導電性材料としてはアニオン交換膜、LiOH、KOH、NaOH等のアルカリ水溶液が挙げられる。正極触媒にイオン導電性材料を含有させることで、正極のイオン導電性を高めることができる。
【0045】
次に、本発明の機器について説明する。
【0046】
本発明の機器は、正極と負極とを備え、正極側で上式(1)で表される反応が行われる機器であって、正極が、本発明の正極触媒を用いて形成されている。
【0047】
正極側で式(1)で表される反応が行われる機器としては、金属−空気二次電池、アルカリ形水電解装置等が挙げられる。これらの装置は、本発明の正極触媒を用いて形成された正極を備える以外は、従来公知の装置構成とすることができる。
【0048】
本発明の機器の一実施形態について、図1を用いて説明する。
【0049】
図1に示す機器は、金属−空気二次電池である。この金属−空気二次電池は、正極2と、負極3との間に電解質層1が配置されている。
【0050】
電解質層1は、水酸化物イオン(OH)の伝導を担う層である。電解質層1としては、LiOH、KOH、NaOH等のアルカリ水溶液、アニオン交換膜等が挙げられる。
【0051】
正極2は、本発明の正極触媒で形成された正極触媒層2aと、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンフェルト、金属メッシュ等の導電性を有する多孔質シートで形成されたガス拡散層2bとで構成されている。正極触媒層2aは、ガス拡散層2bの電解質層側の面に形成されている。
【0052】
正極触媒層2aは、スラリーコート法、スプレーコート法、焼成法など従来公知の方法により形成できる。
【0053】
正極2の外側、すなわちガス拡散層2bの外側には、ガス流路5が形成された集電体6が配置されている。集電体6の材料としては、導電性を有するものであればよく、特に限定は無い。ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等が挙げられる。
【0054】
負極3は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一遷移金属及びアルミニウムから選ばれる元素を含む負極活性物質を含有する負極層で構成されている。アルカリ金属としては、Li、Na、K等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、Mg、Ca等が挙げられる。第一遷移金属としては、Zn、Fe、Ti、Ni、Co、Cu、Mn、Cr等が挙げられる。負極活性物質としては、上記元素からなる金属、上記元素を含む合金、上記元素を含む化合物等が挙げられる。化合物としては、上記元素の酸化物、窒化物、炭酸塩等が挙げられる。
【0055】
負極3は、負極活性物質の他に、導電性材料、イオン導電性材料等を含有してもよい。導電性材料、イオン導電性材料としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0056】
負極3の外側には、集電体7が配置されている。集電体7の材質としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
【0057】
負極にZnを用いた金属−空気二次電池の充電反応及び放電反応は以下のようにして表わされる。
【0058】
(充電反応)
正極:4OH → O +2HO + 4e
負極:ZnO + HO + 2e → Zn + 2OH
(放電反応)
正極:O +2HO + 4e → 4OH
負極:Zn + 2OH → ZnO + HO + 2e
【0059】
本発明では、正極触媒として層状金属酸化物を用いたことにより、充放電時に正極で行われる反応の反応過電圧を低減することができ、過電圧ロスが小さく、高いエネルギー変換効率を有する金属−空気二次電池とすることができる。
【0060】
本発明の機器の他の実施形態について、図2を用いて説明する。
【0061】
図2に示す機器は、アルカリ形水電解装置である。このアルカリ形水電解装置は、LiOH、KOH、NaOH等の電解液14が導入される電解槽11に、本発明の正極触媒を備える正極12と、Ni、Fe、Pt、Pd等の負極触媒を備える負極13とが配置されている。
【0062】
正極12および負極13は、スラリーコート法、スプレーコート法、焼成法など従来公知の方法により形成できる。
【0063】
このアルカリ形水電解装置は、正極12に正の電圧、負極13に負の電圧が印加することで、両電極で下記反応が行われて、電解槽11内の電解液が電気分解される。
【0064】
正極:4OH → O + 2HO +4e
負極:2HO + 2e → H + 2OH
【0065】
本発明では、正極触媒として層状金属酸化物を用いたことにより、正極で行われる反応の反応過電圧を低減することができ、エネルギーロスの小さいアルカリ形水電解装置とすることができる。
【0066】
なお、上記の例には機器として金属−空気二次電池やアルカリ形水電解装置の例を示したが、他の機器についても、同様に、正極触媒として層状金属酸化物を用いることで、正極で行われる反応の反応過電圧を低減することができ、エネルギーロスの小さい機器とすることができる。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
以下、金属−空気二次電池やアルカリ形水電解装置のモデルセルとして図4に示す構造のモデルセルを製造した。
【0068】
La粉末と、SrCO粉末と、Fe粉末とを、La、Sr、Feの元素比が1:3:3となるようにボールミルに投入し、混合した。混合した粉末を1400℃で2時間焼成して、Ruddlesden−Popper型層状ペロブスカイトであるLaFeSr10粉末(正極触媒)を得た。得られた粉末を粉砕した後、金型を用いて1MPaの圧力で直径20mm、厚さ0.5mmのディスク状に成型した。ディスク状の成型体を温度1000℃で3時間焼成して、気孔率30%のLaFeSr10焼結体(正極触媒層)22aを製造した。
【0069】
得られたLaFeSr10焼結体22aを、ポリプロピレン微多孔膜に6M−KOH水溶液を染み込ませた電解質層21に押し当て、その上にチタンメッシュ22bを配置して正極22とした。正極22のチタンメッシュ22b側に、ステンレスを成形して溝形状をつけたガス流路25を配置した。なお、上記のガス流路25は集電板26を兼ねて使用した。
【0070】
電解質層21の反対側には、対極/参照極を兼ねた水素極23を配置した。水素極23は、PTFEで撥水処理したカーボンペーパ上に、50質量%のPt/Cと、アニオン伝導性イオン交換樹脂を、質量比で1:0.4の割合で混合し、超音波で10分間分散して作成した触媒ペーストをスラリーコート法でPt担持量が0.3mg/cmになるように塗布して形成した。水素極23にも正極22と同様にガス流路26及び集電板27を設け、水素を流すことにより、基準電位とした。
【0071】
このモデルセル用いて、正極での充放電反応のモデル実験を行った。
【0072】
セル温度60℃にて、水素極23に飽和加湿したHガスを50mL/min、正極22に飽和加湿したOガスを50mL/minで供給した。充電反応試験は、ポテンシオスタットを用いて正極22に+方向の電流を0.9mA/sで走査した際のセル電圧を測定する事で行った。放電反応試験は、正極22に−方向の電流を0.9mA/sで走査した際のセル電圧を測定する事で行った。本モデルセルを用いて行った正極での充放電反応の実験結果を図3に示す。正極電位を基準電位として、10mA/cm時の充電の分極は0.06Vで、10mA/cm時の放電の分極は0.05Vであった。
【0073】
(比較例1)
正極触媒として、ペロブスカイト酸化物であるLaNiOを用いた以外は実施例1と同じ構成としてモデルセルを製造した。実施例1と同様に充放電反応のモデル実験を行ったところ、正極電位を基準電位として、10mA/cm時の充電の分極は0.195Vで、10mA/cm時の放電の分極は0.355Vであった。
【符号の説明】
【0074】
1:電解質層
2:正極
2a:正極触媒層
2b:ガス拡散層
3:負極
5:ガス流路
6、7:集電体
11:電解槽
12:正極
13:負極
14:電解液
図1
図2
図3
図4